説明

磁気記録媒体の製造方法、及び磁気記録媒体、並びに磁気記録再生装置

【課題】非磁性基板上に、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体において、従来の物理的な磁気層加工型と比較しその磁性層除去工程を排除することにより格段に製造工程を簡略化し、かつ汚染リスクが少なく、表面の平滑性が高い製造方法と、ヘッド浮上特性に優れた有用なディスクリートトラック型磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】非磁性基板上に磁性層を形成した後、その磁性層に部分的に原子を注入し、磁性層の原子を注入した箇所を非磁性化または非晶質化することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する磁気記録媒体の製造方法において、磁性層に部分的に原子を注入する工程が、磁性層を形成した後に表面にレジストとしてSOG(スピン・オン・グラス)膜を塗布し、そのレジストを部分的に除去または膜厚を薄くし、その表面に原子を照射することにより、レジストを除去または薄くした箇所を通して磁性層に部分的に原子を注入する工程を含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体の製造方法並びに磁気記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置、フレキシブルディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大されその重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TMRヘッドなども導入され1年に約100%ものペースで増加を続けている。これらの磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。また、近年では線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
【0003】
最新の磁気記録装置においてはトラック密度110kTPIにも達している。しかし、トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、その境界領域の磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じやすくなる。このことはそのままBit Error rateの低下につながるため記録密度の向上に対して障害となっている。
【0004】
面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。しかし、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じる。
また、トラック間距離が近づくために、磁気記録装置は極めて高精度のトラックサーボ技術を要求されると同時に、記録を幅広く実行し、再生は隣接トラックからの影響をできるだけ排除するために記録時よりも狭く実行する方法が一般的に用いられている。この方法ではトラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、そのために十分なSNRを確保することがむずかしいという問題がある。
【0005】
このような熱揺らぎの問題やSNRの確保、あるいは十分な出力の確保を達成する方法の一つとして、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、記録トラック同士を物理的に分離することによってトラック密度を上げようとする試みがなされている。このような技術を以下にディスクリートトラック法、それによって製造された磁気記録媒体をディスクリートトラック媒体と呼ぶ。
ディスクリートトラック媒体の一例として、表面に凹凸パターンを形成した非磁性基板に磁気記録媒体を形成して、物理的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成してなる磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
この磁気記録媒体は、表面に複数の凹凸のある基板の表面に軟磁性層を介して強磁性層が形成されており、その表面に保護膜を形成したものである。この磁気記録媒体では、凸部領域に周囲と物理的に分断された磁気記録領域が形成されている。
この磁気記録媒体によれば、軟磁性層での磁壁発生を抑制できるため熱揺らぎの影響が出にくく、隣接する信号間の干渉もないので、ノイズの少ない高密度磁気記録媒体を形成できるとされている。
【0007】
ディスクリートトラック法には、何層かの薄膜からなる磁気記録媒体を形成した後にトラックを形成する方法と、あらかじめ基板表面に直接、あるいはトラック形成のための薄膜層に凹凸パターンを形成した後に、磁気記録媒体の薄膜形成を行う方法とがある(例えば、特許文献2,特許文献3参照。)。このうち、前者の方法は、しばしば磁気層加工型とよばれ、表面に対する物理的加工が媒体形成後に実施されるため、媒体が製造工程において汚染されやすいという欠点がありかつ製造工程が非常に複雑であった。一方で、後者はしばしばエンボス加工型とよばれ、製造工程中の汚染はしにくいが基板に形成された凹凸形状が成膜された膜にも引き継がれることになるため、媒体上を浮上しながら記録再生を行う記録再生ヘッドの浮上姿勢、浮上高さが安定しないという問題点があった。
【0008】
また、ディスクリートトラック媒体の磁気トラック間領域を、あらかじめ形成した磁性層に窒素イオンや酸素イオンを注入し、または、レーザを照射することにより形成する方法が開示されている(特許文献4参照。)。しかしながら、この文献にはイオン注入等に際し、レジストやマスク等を設けることの記載がないが、レジストやマスク等を設けないとイオン注入等を磁気トラック間領域のみに制御するのが難しい。
【0009】
さらに、磁気記録パターンが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアの製造において、磁気記録パターンをイオン照射によるエッチングや、磁性層を非晶質化することで形成することが開示されている(非特許文献1、および、特許文献5参照。)。
この特許文献5には磁性層上の磁気トラック間領域以外の領域にはマスクを設け、イオン等の照射を行っているが、マスクとしてSOGは記載されていない。
イオン注入によるマスクとして、有機レジストあるいは、媒体表面に金属あるいはSiO2などの酸化物層を被覆し、これを有機レジストを用いて加工した歯ハードマスクなどが用いられる。
しかしながら、これらのマスクでは以下の点で問題がある。
有機レジストでは、イオン注入に用いる高エネルギーのイオンの衝撃に対して、密度が小さいため、十分な遮蔽効果が得られない。また、結合が弱く、イオンとの衝突により容易に飛散してしまい、十分な耐性(エッチング耐性)を付与できない。
【0010】
一方で、金属や酸化物層を設け、マスクとする場合、イオン注入に対してある程度の遮蔽効果および耐性を有している。しかし、別途に有機レジストなどを用いて一次マスクとし、ドライエッチングなどにより金属や酸化物層をマスクとして加工するという手間がかかる。その分、工程が煩雑化することで、収率やコスト、などが悪化するという欠点がある。
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【特許文献2】特開2004−178793号公報
【特許文献3】特開2004−178794号公報
【特許文献4】特開平5−205257号公報
【特許文献5】米国特許第6,331,364号公報
【非特許文献1】信学技報、IEICE Technical Report MR2005-55(2006-02)、21頁〜26頁(社団法人 電子情報通信学会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、記録密度の増加に伴い、技術的困難に直面している磁気記録装置において、従来と同等以上の記録再生特性を確保しつつ、記録密度を大幅に増加させ、また磁気記録パターン部間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、しいては面記録密度を増加させようとするものである。特に、基板上に磁性層を成膜したのちに凹凸を形成するディスクリートトラック型磁気記録媒体に対して、従来の磁気層加工型と比較しその磁性層除去工程を排除し、さらに基本骨格がSiOよりなるSOGをマスクとすることで、イオン注入に適したマスクを、工程を増やすことなく形成することで格段に製造工程を簡略化し、かつ汚染リスクがすくない製造方法と、表面平滑度が高くヘッド浮上特性に優れた有用な磁気記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)非磁性基板上に磁性層を形成した後、その磁性層に部分的に原子を注入し、磁性層の原子を注入した箇所を非磁性化または非晶質化することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する磁気記録媒体の製造方法であって、磁性層に部分的に原子を注入する工程が、磁性層を形成した後に表面にレジストとしてSOG(スピン・オン・グラス)膜を塗布し、そのレジストを部分的に除去または膜厚を薄くし、その表面に原子を照射することにより、レジストを除去または薄くした箇所を通して磁性層に部分的に原子を注入する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2)原子を照射する際のSOG膜中のSi−O結合を、SOG膜中の全体の結合に対して70%以上含むことを特徴とする上記(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0013】
(3)レジストを部分的に除去または薄くする工程を、塗布したレジストの表面に、凹凸形状を表面に形成したスタンプを用いて、その凹凸形状をレジスト表面に転写することにより行うこと特徴とする上記(1)または(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4)凹凸形状を転写する直前のSOG膜中のSi−O結合を、SOG膜中の全体の結合に対して10%〜30%の範囲内で含むことを特徴とする上記(3)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5)レジストを部分的に除去または薄くする工程を、塗布したレジストの表面を部分的にエッチングすることにより行うこと特徴とする上記(1)または(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0014】
(6)部分的に除去または薄くした箇所のレジストの厚さが、0nm〜150nmの範囲内であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7)レジストの除去または薄くした部分の幅を100nm以下、厚い部分の幅を200nm以下とすることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8)レジストの塗布を、磁性層の上に保護膜層を形成した後の表面に行うことを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(9)注入する原子が、B,P,Si,F,H,C,In,Bi,Kr,Ar,Xe,W,As,Ge,Mo,Snからなる群から選ばれた何れか一種以上の原子であることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0015】
(10)注入する原子が、Kr、または、Si原子であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(11)磁性層の厚さが3〜20nmであることを特徴とする上記(1)〜(10)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(12)上記(1)〜(11)の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法で製造した磁気記録媒体。
(13)上記(12)の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせて具備してなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、磁性層を非磁性基板上に成膜したのちに磁気記録パターンを形成する磁気記録媒体において、ヘッド浮上の安定性を確保できて、優れた磁気記録パターン分離性能を有し、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、高記録密度特性に優れた磁気記録媒体を供することができる。また、SOGをマスクとして使用することで、容易にイオン注入に耐えるマスクを形成できるため、従来非常に製造工程が複雑とされてきた磁性層加工型の磁性層除去のためのドライエッチング工程を省くことができるため、生産性向上に大きく寄与できる。
【0017】
また、本発明の磁気記録再生装置は、本発明の磁気記録媒体を使用しているのでヘッドの浮上特性に優れており、磁気記録パターン分離性能に優れ、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けないので、高記録密度特性に優れた磁気記録再生装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、非磁性基板上に磁性層を形成した後、その磁性層に部分的に原子を注入し、磁性層に原子を注入した箇所を非磁性化または非晶質化することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する磁気記録媒体の製造方法において、磁性層に部分的に原子を注入する工程が、磁性層を形成した後に表面にレジストとしてSOG(スピン・オン・グラス)膜を塗布し、そのレジストを部分的に除去または膜厚を薄くし、その表面に原子を照射することにより、レジストを除去または厚さを薄くした箇所を通して磁性層に部分的に原子を注入する工程を含むことを特徴とする。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、非磁性基板の少なくとも一方の表面に、磁気的に分離した磁気記録パターンを有する磁気記録媒体に関し、磁気記録パターン部を磁気的に分離する非磁性部を、すでに成膜された磁性層に原子を注入して製造することを特徴とする。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、磁気記録パターン部を磁気的に分離するのに際して、従来の製造方法とは異なり、磁性層を直接、ドライエッチングや、スタンプ加工等による、磁気記録パターンを物理的に分離する工程を有さないことを特徴とする。
【0021】
本発明の磁気記録パターン部とは、磁気記録パターンが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアや、磁気記録パターンが、トラック状に配置されたメディアや、その他、サーボ信号パターン等を含んでいる。
この中で本発明は、磁気的に分離した磁気記録パターンが、磁気記録トラック及びサーボ信号パターンである、いわゆる、ディスクリート型磁気記録媒体に適用するのが、その製造における簡便性から好ましい。
本発明を、ディスクリート型磁気記録媒体を例にして説明する。
【0022】
図1に本発明のディスクリート型磁気記録媒体の断面構造を例示す。本発明の磁気記録媒体30は、非磁性基板1の表面に軟磁性層および中間層2、磁気的パターンが形成された磁性層3および非磁性化層4と保護膜層5が形成されており、さらに最表面に図示省略の潤滑膜が形成された構造を有している。
記録密度を高めるため、磁気的パターンを有する磁性層3の磁性部幅Wは200nm以下、非磁性部幅Lは100nm以下とすることが好ましい。従ってトラックピッチP(=W+L)は300nm以下の範囲で、記録密度を高めるためにはできるだけ狭くする。このようにするにはレジストの厚い方の幅は上記Wと等しく200nm以下とし、薄い方の幅は上記Lと等しく100nm以下にして原子を注入すればよい。
【0023】
本発明で使用する非磁性基板としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス等のガラス製基板またはシリコン基板を用いることが好ましい。またこれら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下、さらには0.5nm以下であることが好ましく、中でも0.1nm以下であることが好ましい。本発明ではこの基板の表面に、例えば、軟磁性層としてFeCoB層、中間層としてRu層を形成する。この軟磁性層および中間層は垂直方式の磁気記録媒体で必要となる層である。
【0024】
本発明の磁性層は、面内磁気記録層でも垂直磁気記録層でもかまわないがより高い記録密度を実現するためには垂直磁気記録層が好ましい。これら磁気記録層は主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。
例えば、面内磁気記録媒体用の磁気記録層としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層からなる積層構造が利用できる。
【0025】
垂直磁気記録媒体用の磁気記録層としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる裏打ち層と、Pt、Pd、NiCr、NiFeCrなどの配向制御膜と、必要によりRu等の中間膜、及び70Co−15Cr−15Pt合金(Coが70原子%、Crが15原子%、Ptが15原子%の合金。以下、同じ)や70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる磁性層を積層したものを利用することがきる。
【0026】
磁気記録層の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とする。磁気記録層は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。磁性層の膜厚は再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
【0027】
通常、磁気記録層はスパッタ法により薄膜として形成する。
本発明では、この磁気記録層に、磁気的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成する。この工程は、磁気記録層を設ける工程の直後に行っても良いが、磁気記録層の表面に保護膜層5を設けた後で潤滑層を設ける前に行っても良い。
保護膜層5としては、炭素(C)、水素化炭素(HxC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO2、Zr23、TiNなど、通常用いられる保護膜層材料を用いることができる。また、保護膜層が2層以上の層から構成されていてもよい。
【0028】
保護膜層5の膜厚は10nm以下とする必要がある。保護膜層の膜厚が10nmを越えるとヘッドと磁性層との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるからである。通常、保護膜層はスパッタ法もしくはCVD法により形成される。
保護膜層の上には潤滑層を形成することが好ましい。潤滑層に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等が挙げられ、通常1〜4nmの厚さで潤滑層を形成する。
【0029】
次に、本発明の磁気記録層に、磁気的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成する工程について具体的に説明する。前述のように本工程は、磁気記録層を設ける工程の直後に行っても良いが、磁気記録層の表面に保護膜層を設けた後に行っても良い。以下は、磁気記録層の表面に保護膜層を設けた後に、磁気記録層に、磁気的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成する工程を設ける例である。
本発明では、例えば磁性層として70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金、保護層としてCarbonを成膜する。その後、保護層の表面にレジストを塗布しフォトリソグラフィー技術を用いて磁気的に分離した磁気記録トラック及びサーボ信号パターンを形成する。
【0030】
本発明は、このレジストとして、SOGを用いることを特徴とする。SOGとは、スピン・オン・グラスの略称であり、ガラス膜をスピンコートで形成する材料である。本発明では、SOGが有する液体の塗布という特徴を活かして、SOGを、磁性層に部分的に原子を注入する際のマスク材として利用する。すなわち、SOGは、イオン注入時におけるエッチング耐性が高く、また、加熱等によりその軟化度を制御することが可能であり、さらに、スタンプにより表面に凹凸形状を転写する際の形状維持性が優れている。SOGには、シリケート系SOG、メチルシロキサン系SOG、ハイメチルシロキサン系SOG等があるが、これらの何れも使用できる。
【0031】
本発明では、このレジストの厚さを部分的に除去または薄くし、その表面に原子を照射することにより、レジストを除去または厚さを薄くした箇所を通して磁性層に部分的に原子を注入することを特徴とする。
磁性層に部分的に原子を注入する工程において、磁性層で原子を注入しない箇所のみにレジストを残し、原子を注入する箇所のレジストを完全に除去して原子を注入すると、原子は効率良く磁性層に注入されるが、これにより磁性層がダメージを受けたり、エッチングされる問題が生ずる場合がある。レジストを完全に除去して原子を注入する方法も例えば保護層がエッチングにより完全に除去されてしまう前に注入を終了させる、あるいは予め減少を見越して十分厚く形成するなど、工夫すれば可能であるが、好ましくは磁性層で、原子を注入する箇所のレジストを完全には除去せず、膜厚を薄くして残すのがよい。これにより、磁性層等の原子を注入した箇所のダメージを著しく緩和でき、該箇所の磁性層の非磁性化や非晶質化を達成すると共に、該箇所の表面平滑性も維持できることができる。
【0032】
本発明の、レジストを部分的に除去または膜厚を薄くする方法は、塗布したレジストの表面に、凹凸形状を表面に形成したスタンプを用いて、その凹凸形状をレジスト表面に転写することにより行うことができる。例えば、保護膜の表面に液体のレジストを塗布した後、そのレジストが完全に硬化する前に、その表面を、凹凸形状を表面に形成したスタンプで押すことにより、その凹凸形状をレジスト表面に転写することができる。また、通常のフォトリソグラフィー技術によりエッチングパターンを光転写し、その後、光転写したパターンをエッチングする場合においては、そのエッチングが完全に終了する前にエッチングを停止し、エッチング部分のレジストを薄く残す方法がある。
【0033】
本発明では、上記の方法で部分的にレジストを除去またはその厚さを薄くするが、その膜厚は、原子の注入に用いるイオンビーム等のエネルギーによって定められる。すなわち、レジストの厚い箇所では照射された原子は磁気記録媒体の表面まで達せず、一方、レジストを除去またはレジストの薄い箇所では、照射された原子は磁性層に達し、その箇所を非磁性化または非晶質化する。さらに磁気記録媒体におけるその照射面において、その面の表面平滑性にダメージを与えない必要がある。このような条件を満たす、厚い箇所のレジストの厚さは、10nm〜1000nmの範囲内であるのが好ましく、除去または薄くした箇所のレジストの厚さは、好ましくは0nm〜150nmの範囲内、より好ましくは5nm〜100nmの範囲内とする。
【0034】
本発明では、原子を照射する際のレジストであるSOG膜中のSi−O結合の数を、SOG膜中のO−H結合等を含めた全体の結合の数に対して70%以上含有させるのが好ましい。SOGは通常は液状であるが、基板表面にスピンコート等により塗布後、SOG内部に含まれる水分、有機物を加熱等により飛散させることにより、徐々に硬化させることができる。SOGを硬化させると、その構造は、式1に示すようなSiとOとの網目状の架橋構造、ガラス、石英等の、SiO2単位を主成分とする構造に変化する。このような構造は、イオン注入時におけるエッチング耐性が高く、磁性層に部分的に原子を注入し、磁性層の原子を注入した箇所を非磁性化または非晶質化する際のマスク材として好適に用いることができる。なお、SOG中に含まれるSi−O結合の数(全体の結合の数に対する割合)は、ESCAによって測定することができる。
【0035】
式1
【化1】


【0036】
本願発明では、磁性層の上にSOGを塗布し、その表面に、凹凸形状を表面に形成したスタンプを用いてその形状を転写するに際し、その転写直前のSOGがSi−O結合の数を、SOG全体の結合の数に対して10%〜30%の範囲内で含むのが好ましい。前述したように、SOGは通常は液状であり、基板表面にスピンコート等によりSOGを塗布後、SOG内部に含まれる水分、有機物を加熱等により飛散させることにより、SOGを徐々に硬化させることができる。本願発明では、SOG表面に凹凸形状を転写する直前において、SOGに含まれるSi−O結合の数を、SOG全体の結合の数に対して10%〜30%の範囲内とすることにより、SOGへの凹凸形状の転写性能を高め、かつ、硬化後のSOGのイオン注入時におけるエッチング耐性および凹凸形状の維持特性を高めることができる。
【0037】
本発明では、その表面に、イオンビーム法等を用いて原子を注入すると、磁気記録トラック及びサーボ信号パターンの間の部分のみに原子が注入される。本発明では、磁気記録層に原子を注入するに際し、原子を加速するために、原子をイオン化するが、磁気記録層内に打ち込まれたイオンは、中性化していると考えられる。
本発明では、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する非磁性部を、すでに成膜された磁性層に原子を注入し磁性層を非磁性化することにより形成し、ディスクリートトラック型磁気記録媒体を製造することを特徴とする。このような方法を用いてディスクリートトラック型磁気記録媒体を製造することにより、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。これは、磁性層に原子を注入することにより、磁性層が非磁性の材料に変化したり、磁性層の結晶構造が変化することにより磁性層が磁性を失ったり、また後述するように、磁性層が非晶質化してその磁性を失うためである。
【0038】
以上のようにディスクリートトラック型磁気記録媒体を製造することにより、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
さらに本発明では、磁気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する非磁性部を、すでに成膜された磁性層に、磁性層の厚さ方向に均一に原子を注入し磁性層を非晶質化することにより形成することを特徴とする。
【0039】
本発明で、磁性層を非晶質化するとは、磁性層の原子配列を、長距離秩序を持たない不規則な原子配列の形態とすることを指し、より具体的には、2nm未満の微結晶粒がランダムに配列した状態とすることを指す。そしてこの原子配列状態を分析手法により確認する場合は、X線回折または電子線回折により、結晶面を表すピークが認められず、また、ハローが認められるのみの状態とする。
このような方法を用いてディスクリートトラック型磁気記録媒体を製造することにより、磁気トラック間領域の保磁力、残留磁化を極限まで低減させることにより磁気記録の際の書きにじみをなくし、高い面記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【0040】
本発明で、例えばイオンビーム法等を用いて注入する原子としては、好ましくは、B,P,Si,F,H,C,In,Bi,Kr,Ar,Xe,W,As,Ge,Mo,Snからなる群から選ばれた何れか一種以上の原子、より好ましくは、B,P,Si,F,H,Cからなる群から選ばれた何れか一種以上の原子、もしくは、Si,In,Ge,Bi,Kr,Xe,Wからなる群から選ばれた何れか一種以上の原子、最も好ましくは、Si、Kr原子を用いる。注入する原子として、特許文献4にあるように、OやNを用いた場合は、OやNの原子半径が小さいためその注入効果が小さく、磁気トラック間領域に磁化状態が残留してしまう。また、注入する原子として、OやNを用いた場合は、磁性層を窒化、または、酸化させるため、磁気トラック間領域の保磁力を高め、磁気トラック部に情報を書き込む際に、書きにじみが生ずる。すなわち、これらの原子を用いた場合、本発明で用いる注入原子のように、磁性層を非磁性化、磁性層の非晶質化をはかることができない。
【0041】
本発明では、磁性層に打ち込みトラック間距離に合わせて設計された磁気的なパターンを形成後、レジストを除去して保護層を再形成後、潤滑材を塗布して磁気記録媒体を製造する。
また本発明では、磁性層への原子の注入を、磁性層の上に保護膜を形成した後に行うのが好ましい。このような工程を採用することにより、原子注入を行った後に、保護膜を形成する必要がなくなり、製造工程が簡便になり、生産性の向上および磁気記録媒体の製造工程における汚染の低減の効果が得られる。なお、本発明では、磁性層の形成後、保護膜の形成前でも、原子の注入を行い、磁性層に気記録トラック及びサーボ信号パターン部を磁気的に分離する非磁性部を形成することも可能である。
【0042】
上記イオンビームによるSi等の原子の注入には、市販のイオン注入器を用いて磁性層に注入する。本発明では、磁性層へ原子を注入しその部分の結晶を非晶質化し、かつ、その非晶質部分に注入原子を均一に分布させることが目的であるので、侵入深さは磁気記録層の厚さ方向に均一にする必要がある。原子注入深さは、そのイオン注入器での加速電圧により、侵入させる深さに対して適時決定される。
【0043】
なお前述したように、前記レジスト塗布後のパターン形成には、塗布したレジストの表面に直接スタンパーを密着させ、高圧でプレスすることにより、レジスト表面にトラック形状の凹凸を形成する。あるいは熱硬化型樹脂、UV硬化型樹脂などを利用してエッチングで形成した凹凸パターンを用いても構わない。
前記のプロセスで用いられるスタンパーは、例えば、金属プレートに電子線描画などの方法を用いて微細なトラックパターンを形成したものが使用でき、材料としてはプロセスに耐えうる硬度、耐久性が要求される。たとえばNiなどが使用できるが、前述の目的に合致するものであれば材料は問わない。スタンパーには、通常のデータを記録するトラックの他にバーストパターン、グレイコードパターン、プリアンブルパターンといったサーボ信号のパターンも形成する。
【0044】
レジストの除去に際しては、ドライエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリングなどの手法を用いて表面のレジスト、保護層の一部を除去する。これらの処理の結果磁気的パターンが形成された磁性層ならびに保護層の一部が残る。条件を選ぶことにより保護層まで完全に除去しパターンが形成された磁性層のみを残すことも可能である。
磁気記録媒体の各層のうち、保護膜層3以外の形成には一般的に成膜方法として使用されるRFスパッタリング法やDCスパッタリング法などの使用が可能である。
一方、保護膜層の形成は、一般的にはDiamond Like Carbonの薄膜をP−CVDなどを用いて成膜する方法が行われるが特に限定されるものではない。
【0045】
次に、本発明の磁気記録再生装置の構成を図2に示す。本発明の磁気記録再生装置は、上述の本発明の磁気記録媒体30と、これを記録方向に駆動する媒体駆動部11と、記録部と再生部からなる磁気ヘッド27と、磁気ヘッド27を磁気記録媒体30に対して相対運動させるヘッド駆動部28と、磁気ヘッド27への信号入力と磁気ヘッド27からの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせた記録再生信号系29とを具備したものである。これらを組み合わせることにより記録密度の高い磁気記録装置を構成することが可能となる。磁気記録媒体の記録トラックを磁気的に不連続に加工したことによって、従来はトラックエッジ部の磁化遷移領域の影響を排除するために再生ヘッド幅を記録ヘッド幅よりも狭くして対応していたものを、両者をほぼ同じ幅にして動作させることができる。これにより十分な再生出力と高いSNRを得ることができるようになる。
【0046】
さらに上述の磁気ヘッドの再生部をGMRヘッドあるいはTMRヘッドで構成することにより、高記録密度においても十分な信号強度を得ることができ、高記録密度を持った磁気記録装置を実現することができる。またこの磁気ヘッドの浮上量を0.005μm〜0.020μmと従来より低い高さで浮上させると、出力が向上して高い装置SNRが得られ、大容量で高信頼性の磁気記録装置を提供することができる。また、最尤復号法による信号処理回路を組み合わせるとさらに記録密度を向上でき、例えば、トラック密度100kトラック/インチ以上、線記録密度1000kビット/インチ以上、1平方インチ当たり100Gビット以上の記録密度で記録・再生する場合にも十分なSNRが得られる。
【実施例】
【0047】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10-5Pa以下に真空排気した。ここで使用したガラス基板はLi2Si25、Al23−K2O、Al23−K2O、MgO−P25、Sb23−ZnOを構成成分とする結晶化ガラスを材質とし、外径65mm、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)は2オングストロームである。
【0048】
該ガラス基板にDCスパッタリング法を用いて、軟磁性層としてFeCoB、中間層としてRu、磁性層として70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金、P−CVD法を用いてC(カーボン)保護膜層、フッ素系潤滑膜の順に薄膜を積層した。それぞれの層の膜厚は、FeCoB軟磁性層は600Å、Ru中間層は100Å、磁性層は150Å、C(カーボン)保護膜層は平均4nmとした。その後、磁性層に磁気的パターンを形成した。すなわち、保護膜層の上にメチルシロキサン系SOGをスピンコートにより塗布した。その際のSOGの膜厚は400nmとした。このSOGは、Si−O結合を、SOGの全体の結合に対して数(以下同じ)で10%含んでいる。このSOGを加熱硬化させ、SOGに含まれるSi−O結合を、SOGに含まれる全体の結合に対して25%まで高めた。
【0049】
このSOGの表面に、深さ200nmでパターニングした、Ni合金製スタンプを用いて、そのパターンを転写した。転写後の凸部のレジストの厚さは250nm、凹部のレジストの厚さは50nmであった。
その後、SOGを更に加熱硬化させ、SOGに含まれるSi−O結合を、SOGに含まれる全体の結合に対して80%まで高めた。加熱硬化後の凸部のレジストの厚さは150nm、凹部のレジストの厚さは30nmであった。
この後、イオンビーム法により、Ar+原子を打ち込んだ。イオンビームによる注入量、加速電圧などの条件は表1のようにした。得られた磁気記録媒体は図1に示すもので、磁性層の幅Wは100nm、非磁性層の幅Lは100nmである。
なお、イオンビームの注入量、加速電圧の条件は、予備実験であらかじめ設定する必要がある。また、磁性層が非磁性化する条件、磁性層が非晶質化する条件も、あらかじめ、X線回折測定、電子線回折測定等により設定しておく必要がある。
【0050】
実施例で製造した磁気記録媒体についてスピンスタンドを用いて電磁変換特性の評価を実施した。このとき評価用のヘッドには、記録には垂直記録ヘッド、読み込みにはTuMRヘッドを用いた。750kFCIの信号を記録したときのSNR値および3T−squashを測定した。実施例で得られた磁気記録媒体はSNRや3T−squashといったRW特性が優れていた。これはヘッド浮上特性が安定し所定の浮上高さにてリードライトできたため、また、磁気トラック間領域の磁化状態が完全に消失したためと考えられる。また、SNR,3T−squashなどのRW特性が確認されたことにより実施例のサンプルは、トラック間の非磁性部による分離が確認され、凹凸状に形成されたレジストのパターン形状に応じた磁性部、非磁性部の磁気的パターンがイオンビームによるイオン注入により実施例のサンプルの磁性層部に形成されたことも確認された。
【0051】
電磁変換特性の測定終了後、実施例の磁気記録媒体についてAFMを用いて表面粗さを測定した。Digital Instrument社製AFMを用い、10μm視野にて本実施例および比較例にて作成された垂直時記録媒体用非磁性基板の粗さ(Ra)を評価する。その他の設定は、解像度256×256タッピングモード、掃印速度1μm/secにて行った。その結果を表1に記載した。実施例の磁気記録媒体は表面粗さが著しく低い値を示し、これによりヘッド浮上が安定したと考えられる。
実施例の磁気記録媒体についてグライドアバランチ特性を評価した。評価には、グライドライト社製50%スライダーヘッドをもちい、ソニーテクトロ社製DS4100装置にて測定した。測定結果を表1にしめす。実施例の磁気記録媒体はグライドアバランチが低くヘッド浮上特性が良好であることがわかる。
【0052】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、ヘッド浮上の安定性を確保できて、優れた磁気記録パターン分離性能を有し、隣接パターン間の信号干渉の影響を受けず、高記録密度特性に優れた磁気記録媒体を供することができる。また、従来非常に製造工程が複雑とされてきた磁性層加工型の磁性層除去のためのドライエッチング工程を省くことができるため、生産性向上に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明により得られた磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の磁気記録再生装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
1 非磁性基板
2 軟磁性層および中間層
3 磁気記録層
4 非磁性化層
5 保護層
11 媒体駆動部
27 磁気ヘッド
28 ヘッド駆動部
29 記録再生信号系
30 磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に磁性層を形成した後、その磁性層に部分的に原子を注入し、磁性層の原子を注入した箇所を非磁性化または非晶質化することにより、磁気的に分離した磁気記録パターンを形成する磁気記録媒体の製造方法であって、磁性層に部分的に原子を注入する工程が、磁性層を形成した後に表面にレジストとしてSOG(スピン・オン・グラス)膜を塗布し、そのレジストを部分的に除去または膜厚を薄くし、その表面に原子を照射することにより、レジストを除去または薄くした箇所を通して磁性層に部分的に原子を注入する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
原子を照射する際のSOG膜中のSi−O結合を、SOG膜中の全体の結合に対して70%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
レジストを部分的に除去または薄くする工程を、塗布したレジストの表面に、凹凸形状を表面に形成したスタンプを用いて、その凹凸形状をレジスト表面に転写することにより行うこと特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
凹凸形状を転写する直前のSOG膜中のSi−O結合を、SOG膜中の全体の結合に対して10%〜30%の範囲内で含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
レジストを部分的に除去または薄くする工程を、塗布したレジストの表面を部分的にエッチングすることにより行うこと特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
部分的に除去または薄くした箇所のレジストの厚さが、0nm〜150nmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
レジストの除去または薄くした部分の幅を100nm以下、厚い部分の幅を200nm以下とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
レジストの塗布を、磁性層の上に保護膜層を形成した後の表面に行うことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
注入する原子が、B,P,Si,F,H,C,In,Bi,Kr,Ar,Xe,W,As,Ge,Mo,Snからなる群から選ばれた何れか一種以上の原子であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
注入する原子が、Kr、または、Si原子であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
磁性層の厚さが3〜20nmであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法で製造した磁気記録媒体。
【請求項13】
請求項12の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を記録方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、磁気ヘッドへの信号入力と磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を組み合わせて具備してなることを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−77788(P2008−77788A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257153(P2006−257153)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】