説明

神経伝達障害に関係のある障害を予防および治療するための新規薬剤

本発明は、特に神経伝達障害に関係のある障害の治療および/または予防のための医薬品としての使用のための、式(I)のクマリンエーテル、好ましくはオブリキン、ならびにかかるクマリンエーテルを含有する食物および医薬組成物ならびに植物エキス、ならびにそれらの使用に関し、式中、RがH、OHまたは(E)−3−メチル−ブト−2−エニルであり、Rがメチル、3−(4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−4−フラノン−2−イル)−2−(E/Z)−ブテニル、(E/Z)−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−2−オクテン−6−オン−イルおよび(E/Z,E/Z)−11−アセチル−オキシ−3,7,11,11−テトラメチル−ウンデカ−2,7−ジエン−10−オン−イルからなる群より選択され、RがHであり、ともに−O−C(C(=CH)CH)H−CH−O−基もしくは−C(H)=C(H)−C(CH−O−基のためのRおよびRO、またはROおよびRがともに−O−C(H)(C(CH(H)−O−C(O)CH)−CH−基を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に神経伝達障害に関係のある障害の治療のための、医薬品としての使用のためのクマリンエーテル、ならびにかかるクマリンエーテルを含有する食物および医薬組成物ならびに植物物質および抽出物、ならびにそれらの使用に関する。
【0002】
神経伝達障害、例えば低い神経伝達物質レベルが、うつ病等の精神病に関係があることが周知である。
【0003】
脳中の神経伝達物質レベルを増大させる化合物、したがってそれらの伝達を促進する化合物は、したがって、種々の他の精神障害に対して、抗うつ特性ならびに有益な効果を示す(「ニューロトランスミッターズ、ドラッグス・アンド・ブレイン・ファンクション(Neurotransmitters,drugs and brain function)」R.A.ウェブスター(Webster)(編)、ニューヨークのジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley&Sons、New York)2001年、187−211頁、289−452頁、477−498頁)。主な神経伝達物質は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン(=ノルエピネフリン)、アセチルコリン、グルタミン酸、γ−アミノ−酪酸、ならびに神経ペプチドである。神経伝達の増大は、シナプス前神経末端への再取り込みの阻害を通じてシナプス間隙中の神経伝達物質の濃度を増大させて、そのようにして増大または延長した神経伝達に利用可能にすることによって、または、モノアミノオキシダーゼAおよびB等の分解酵素の阻害によって神経伝達物質異化を防ぐことによって、達成される。
【0004】
イミプラミン、アミトリプチリンおよびクロミプラミン等の三環系抗うつ化合物(TCA)は、例えば、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを阻害する。これらは、最も効果的な、利用可能な抗うつ薬のうちにあると広く考えられているが、これらは多くの脳受容体、例えばコリン作動性受容体と相互作用するので、多くの欠点を有する。最も重要なことに、TCAは過剰に摂取された場合に安全ではなく、頻繁に急性の心臓毒性を示す。
【0005】
別の種類の抗うつ薬は、セロトニンの再取り込みによってセロトニン作動性神経伝達を終了させる高親和性塩化ナトリウム依存性神経伝達物質トランスポーターであるセロトニントランスポーター(SERT)をブロックする、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、フルボキサミンを含む、いわゆるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)である。これらは、うつ病および不安の治療において効果的であることが証明されており、通常TCAよりもよく許容される。これらの投薬は、典型的には、低い投薬で開始され、治療レベルに達するまで増大され得る。一般的な副作用は、悪心である。他の可能性のある副作用としては、食欲減退、口渇、発汗、感染、便秘、あくび、振せん、眠けおよび性機能不全が挙げられる。
【0006】
また、モノアミノオキシダーゼ(MAO)AおよびBを阻害することによってより広範に神経伝達物質の異化を防ぐ化合物が、抗うつ効果を示す。MAOは、セロトニン、ノルアドレナリンおよびドーパミン等のアミノ基含有神経伝達物質の酸化を触媒する。
【0007】
さらに、神経伝達の調節因子は、精神および認知の機能に対して、多面作用性の効果を発揮する。
【0008】
公知の抗うつ薬の負の副作用を示さない、精神病および/または障害の治療または予防のための化合物に対する必要性がある。多くの患者は、薬物の高用量に関連する副作用を最小限にし得、付加的な臨床上の利益を生じ得る、代替療法に関心を持っている。重症のうつ病は、長期にわたる、再発する疾患であり、通常は、不十分にしか診断されない。さらに、多くの患者は、軽度または中程度の重症度のうつ病に罹患している。したがって、精神病/障害の治療またはリスクのある人々におけるうつ病等の精神病/障害の発症の予防、および気分の安定化に用いられ得る、化合物ならびに医薬および/または食物組成物の開発への関心が高まっている。
【0009】
本発明によると、この要求は、式I
【化1】


(式中、
がH、OHまたは(E)−3−メチル−ブト−2−エニルであり、Rがメチル、3−(4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−4−フラノン−2−イル)−2−(E/Z)−ブテニル、(E/Z)−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−2−オクテン−6−オン−イルおよび(E/Z,E/Z)−11−アセチルオキシ−3,7,11,11−テトラメチル−ウンデカ−2,7−ジエン−10−オン−イルからなる群より選択され、RがHであり、RおよびROがともに−O−C(C(=CH)CH)H−CH−O−基もしくは−C(H)=C(H)−C(CH−O−基を形成し、またはROおよびRがともに−O−C(H)(C(CH(H)−O−C(O)CH)−CH−基を形成する)のクマリンエーテルによって満たされる。
【0010】
したがって、ある態様において、本発明は、神経伝達障害に関係のある障害の治療のための医薬品としての使用のための、上記のR、RおよびRの定義を有する式Iのクマリンエーテル、好ましくはRおよびROがともに−O−C(C(=CH)CH)H−CH−O−基を形成するクマリンエーテル、より好ましくはオブリキン、最も好ましくは(S)−オブリキンに関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、神経伝達障害に関係のある障害の治療のための組成物の製造、特に抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、状態改善剤、不安の抑制剤および/または強迫的行動の抑制剤の製造のための、上記で定義される式Iのクマリンエーテルの使用に関する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1つの上記で定義された式Iのクマリンエーテルを含む食物組成物、ならびに少なくとも1つの上記で定義された式Iのクマリンエーテルおよび従来の医薬担体を含む医薬組成物に関する。
【0013】
さらに、本発明は、ヒトを含む動物における神経伝達障害に関係のある障害の治療の方法に関し、前記方法は、有効量の、上記で定義された式Iのクマリンエーテルを、それを必要とするヒトを含む動物に投与することを含む。
【0014】
本発明の関係における動物としてはヒトが挙げられ、哺乳動物、魚類および鳥類が包含される。好ましい「動物」は、ヒト、ペットおよび家畜である。
【0015】
ペットの例は、イヌ、ネコ、鳥、小型の魚、モルモット、(ジャック)ウサギ、野ウサギおよびフェレットである。家畜の例は、魚、ブタ、ウマ、反芻動物(畜牛、ヒツジおよびヤギ)および家禽である。
【0016】
本発明の好ましい態様において、式Iのクマリンエーテルは、オブリキン(式IIの化合物、図1参照)、キサンチレチン(式IIIの化合物、図1参照)、スベロシン(式IVの化合物、図1参照)、7−ゲラニルオキシクマリン(式Vの化合物、図1参照)、6’−デヒドロマルミン(式VIの化合物、図1参照)、ゲイパーバリン(式VIIIの化合物、図1参照)、O−アセチルコロンビアネチン(式IXの化合物、図1参照)および式VIIの化合物(図1参照)からなる群より選択される。より好ましくは、式Iのクマリンエーテルはオブリキンであり、最も好ましくは、式Iのクマリンエーテルは(S)−オブリキンである。
【0017】
用語「式Iのクマリンエーテル」はまた、式Iのかかるクマリンエーテルを含有する、植物の任意の物質または抽出物、特に植物物質または抽出物の総重量に基づいて少なくとも90重量%の式Iのかかるクマリンエーテルを含む、植物の任意の物質または抽出物を包含する。用語「植物の物質」および「植物物質」は、本発明の関係において用いられる場合、植物の任意の部分をいう。
【0018】
「オブリキン」は、ラセミ混合物ならびに純粋なR−オブリキンもしくはS−オブリキン、またはそれらの任意の混合物を意味する。オブリキンは、セドレロプシス・グレベイ、プタエロクシロン・オブリクウム、レオントポディウム・アルピヌム、ヘリクリサム種、イフロガ・スピカタ、ニドレラ・アノマラ、クネオルム・トリコッカム、フェノコマ・プロリフェラおよびセドレロプシス・ミクロフォリアタのような、しかしこれらに限定されない植物から単離され得る(ジャーナル・オブ・ナチュラル・プロダクツ(Journal of Natural Products)2002年、65、1349−1352頁)。
【0019】
従って、オブリキンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物、または任意の他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「オブリキン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)オブリキンの両方を意味する。
【0020】
オブリキンの合成は、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー(J.Chem.Soc.)(C)1969年、526−531頁、ならびにファイトケミストリー(Phytochemistry)1973年、12、726−727頁に記載されている。
【0021】
7−ゲラニルオキシクマリンは、「オーラプテン」とも呼ばれ、シトラス種、アエグレ・マルメロス、ポンシラス・トリフォリアタ、アフラエグレ・パニキュラタ、セベリニア・ブクシフォリア、アタランティア・モノフィーラ、プテレア・トリフォリアタおよびフォルツネラ・ヒンドシイのような、しかしこれらに限定されない植物から単離され得る。
【0022】
したがって、7−ゲラニルオキシクマリンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物または他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「7−ゲラニルオキシクマリン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)7−ゲラニルオキシクマリンの両方を意味する。
【0023】
7−ゲラニルオキシクマリンは、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)28(23)、2579−82頁、1987年に従って調製され得る。
【0024】
スベロシンは、プランバゴ・ゼイラニカ、セセリ種、ヘラクレアム・カンジカンス、シトラス種、プランゴス・リプスキイおよびプランゴス・ロフォプテラのような、しかしこれらに限定されない植物から単離され得る。したがって、スベロシンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物または他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「スベロシン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)スベロシンの両方を意味する。
【0025】
スベロシンの合成は、いくつかの論文、すなわち、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー、ケミカル・コミュニケーションズ(Journal of Chemical Society、Chemical Communications)1986年、16、1264−1266頁に記載されている。
【0026】
式VIIの化合物(CAS[374702−57−5])は、フェルラ・タドシコルムおよび他の植物から単離され得る。したがって、式VIIの化合物を含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物または他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「式VIIの化合物」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)の両方を意味する。
【0027】
6’−デヒドロマルミンは、ゲイィエラ・パルビフローラおよび他の植物の果実から単離され得る。したがって、6’−デヒドロマルミンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物または他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「6’−デヒドロマルミン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)6’−デヒドロマルミンの両方を意味する。
【0028】
ゲイパーバリンは、ゲイィエラ・パルビフローラおよび他の植物の葉から単離され得る。したがって、ゲイパーバリンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物または他の植物物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「ゲイパーバリン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)ゲイパーバリンの両方を意味する。
【0029】
ゲイパーバリンは、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)1985年、50(21)、3997−4005頁またはバイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters)2002年、12(24)、3551−3555頁に記載されている方法に従って調製され得る。
【0030】
(S)−O−アセチルコロンビアネチンは、クニディウム・モンニエリおよびアンゲリカ種のような、しかしこれらに限定されない植物から単離され得る。したがって、O−アセチルコロンビアネチンを含む、これらの植物の任意の物質もしくは抽出物もまた、この表現に包含される。「O−アセチルコロンビアネチン」は、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)O−アセチルコロンビアネチンの両方を意味する。
【0031】
(純粋な)化合物オブリキン、キサンチレチン、7−ゲラニルオキシクマリン、スベロシン、6’−デヒドロマルミン、ゲイパーバリン、O−アセチルコロンビアネチンおよび式VIIの化合物に加えて、植物物質/抽出物の総重量に基づいて少なくとも90重量%のこれらの化合物を含む植物物質および植物抽出物が特に好ましい。
【0032】
本発明によると、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式I自体のクマリンエーテルだけでなく、それらを含む植物物質および抽出物、ならびにそれらを含む食物および医薬組成物もまた、特に神経伝達障害に関係のある障害の治療のための、医薬品として用いられ得る。
【0033】
本発明の食物組成物は、(ゴム、タンパク質、加工デンプン等の)保護親水コロイド、結合剤、フィルム形成剤、カプセル化剤/物質、壁/シェル物質、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチン等)、吸着剤、担体、充填剤、co化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、味覚遮蔽剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤および抗菌剤をさらに含み得る。
【0034】
用語「食物組成物」は、臨床栄養も栄養補助食品も含む、(強化)食品/飼料および飲料任意の型の栄養を含む。
【0035】
薬学的に許容され得る担体および少なくとも1つの、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルに加えて、本発明の医薬組成物は、水、任意の起源のゼラチン、植物性ゴム、リグニンスルホン酸塩型界面活性剤、滑石、糖、デンプン、アラビアゴム、植物性油、ポリアルキレングリコール、香料、防腐剤、安定化剤、乳化剤、バッファー、潤滑剤、着色料、湿潤剤、充填剤等を含むがこれらに限定されない、従来の医薬添加物および補助物質、賦形剤または希釈剤をさらに含み得る。担体物質は、経口/非経口/注射可能投与に適した、有機または無機の不活性な担体物質であり得る。
【0036】
本発明の食物および医薬組成物は、人体を含む動物の体への投与に適した任意の本草薬形態、特に経口投与のために慣習的な任意の形態、例えば、食品もしくは飼料、食品もしくは飼料プレミックス、強化食品もしくは飼料、錠剤、丸剤、顆粒剤、糖剤、カプセル剤ならびに粉末および錠剤等の発泡性製剤(のための添加物/サプリメント)等の固体形態、または、例えば飲料、ペーストおよび油性懸濁液としての、溶液、エマルジョンまたは懸濁液等の液体形態であり得る。ペーストは、ハードまたはソフトシェルカプセル中に充填されて、それによって、カプセルは、例えば(魚、ブタ、家禽、ウシ)ゼラチンのマトリックス、植物性タンパク質またはリグニンスルホン酸塩型界面活性剤の特徴を有し得る。他の適用形態の例は、経皮、非経口または注射可能投与のための形態である。食物および医薬組成物は、徐放性(遅延放出)製剤の形態であり得る。
【0037】
食品の例は、ヨーグルト等の乳製品である。
【0038】
強化食品の例は、シリアルバー、ケーキおよびクッキー等のパン・菓子類である。
【0039】
飲料は、ノンアルコールおよびアルコール飲料、ならびに飲料水および流動食に添加される液体調製物を包含する。ノンアルコール飲料は、例えば、ソフトドリンク、スポーツドリンク、フルーツジュース、レモネード、茶および牛乳ベースの飲料である。流動食は、例えば、スープおよび乳製品(例えばムースリ飲料)である。
【0040】
上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルは、神経伝達障害に関係のある障害の治療のための医薬品の製造に用いられ得る。
【0041】
本発明の関係において、「治療」はまた、同時治療ならびに予防を包含する。「予防」は、最初の発生の予防(一次予防)または再発の予防(二次予防)であり得る。
【0042】
したがって、本発明はまた、ヒトを含む動物における、神経伝達障害に関係のある障害の予防のための方法に関し、前記方法は、有効量の、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式I自体のクマリンエーテルを、それを必要とする、ヒトを含む動物に投与することを含む。これに関して、有効量の、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式I自体のクマリンエーテルは、特に、精神的健康の維持、安定した認知機能の維持、気分変動のリスクの減少の促進、積極的な気分の保持の促進および認知の健康の支持のために用いられ得る。
【0043】
本発明の関係において、用語「障害」は、疾患も包含する。
【0044】
神経伝達障害に関係のある障害の治療のための医薬品は、抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、状態改善剤、不安抑制剤および強迫的行動抑制剤を包含する。これらは全て、特に中枢神経系において、生理的神経伝達を改善、促進および支持し、したがって、精神的機能不全を緩和する。
【0045】
抗うつ薬は、例えば単極性うつ病、双極性うつ病、急性うつ病、慢性うつ病、亜慢性うつ病、気分変調、産後うつ病、月経前不快気分/症候群(PMS)、更年期うつ症状、攻撃性、注意欠陥障害(ADS)、社会不安障害、季節性感情障害、不安(障害)、線維痛症候群、慢性疲労、睡眠障害(不眠症)、心的外傷後ストレス障害、恐慌性障害、強迫性障害、不穏下肢症候群、神経質、偏頭痛/原発性頭痛および一般的な痛み、嘔吐、過食症、神経性食欲不振、過食症、胃腸障害、燃え尽き症候群、被刺激性ならびに疲労等の、精神、行動および情動/感情、神経、神経変性、摂食およびストレス関連障害を治療するための医薬品である。
【0046】
抗うつ薬はまた、一次および二次予防ならびに/または神経認知障害の治療(のための組成物の製造)に用いられ得る。さらに、これらはまた、心臓血管疾患、脳卒中、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病および他のもの等の慢性疾患における共存症として起こる神経伝達障害に関連する、抑うつ性症状または他の症状の治療に効果的である。
【0047】
上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルならびに(本質的に)それらを含む植物物質および植物抽出物ならびにそれらを含む食物/医薬組成物は、したがって、ヒトを含む動物の治療に適している。
【0048】
特に、ペットおよび家畜は、促進または改善された神経伝達を必要とする状態にあり得る。かかる状態は、例えば、動物が類似した障害を発症し、困窮するかもしくは攻撃的になるか、または型にはまった行動もしくは不安および強迫的行動を示す、捕獲もしくは輸送後、または囲いをされて起こる。
【0049】
したがって、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルは、一般に、ヒトを含む動物、好ましくはヒト、ペットおよび家畜のための、抗うつ薬として用いられ得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルは、一般的な気分改善剤としての使用、ならびにかかる使用のための組成物(植物物質/抽出物、食物/医薬組成物)の製造のための使用を提供する。「気分改善剤」または「情動的健康増進剤」は、それで処理された人の気分が促進されること、自尊心が増大すること、ならびに/または消極的思考および/もしくは消極的緊張が減少することを意味する。これはまた、情動が安定すること、および/または一般的、特に精神的健康が改善または維持されること、ならびに気分変動のリスクが減少(するのを促進)されること、および積極的な気分が保持(するのを促進)されることを意味する。
【0051】
さらに、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルならびに有効量のそれらを含む組成物は、ストレス関連症状の治療、予防および緩和のため、労働過負荷、疲はいおよび/または燃え尽きに関連する症状の治療、予防および緩和のため、ストレスに対する抵抗性または耐性の増大のため、ならびに/または正常な健康な個体におけるリラクゼーションに有利である、またはこれを容易にするために有用であり、すなわち、かかる組成物は、「ストレス緩和剤」としての効果を有する。
【0052】
さらに、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルならびに有効量のそれらを含む組成物は、ヒトおよび動物における、不安および強迫的行動の治療、予防および緩和に有用である。
【0053】
本発明のさらなる実施形態は、疾患のある、または正常な健康な個体における、「状態改善剤」としての、すなわち被刺激性および疲労を減少させる手段、肉体的および精神的疲労を減少または予防または緩和する手段、障害のない睡眠に有利である、すなわち不眠および睡眠障害に対して作用しておよび睡眠を改善する手段、ならびに、より一般的な用語では、エネルギーを増大させる、特に脳エネルギー生産を増大させる手段としての、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルの使用、およびそれらを含む組成物(植物抽出物、食物/医薬組成物)の使用に関する。さらに、記憶および記憶の能力、学習能力、言語処理、問題解決および知的機能の、一般的な認知改善のために、および特に注意および集中の維持または改善、短期記憶の改善、精神的用心深さの増大、精神的覚醒の促進、精神的疲労の減少、認知の健康の支持、安定した認知機能の維持、空腹および飽満の調節、ならびに運動活性の調節のため。
【0054】
本発明は、医薬品としての使用、特に神経伝達障害に関係のある障害の治療のための医薬品としての使用のための、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルならびにそれらの組成物(すなわち、本質的にそれらを含む植物抽出物、それらを含む食物/医薬組成物)だけでなく、すでに述べたように、かかる障害自体の治療の方法にも関する。
【0055】
かかる方法の特に好ましい実施形態において、障害が囲い、捕獲または輸送に関連しているペットまたは家畜動物が治療され、これは不安または強迫的行動の形で現れ得る。
【0056】
ヒトに関して、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルの、本発明の目的のために適した日用量は、1日あたり、体重1kgあたり0.001mg〜体重1kgあたり約20mgの範囲内であり得る。体重1kgあたり約0.01〜約10mgの日用量が、より好ましく、体重1kgあたり約0.05〜5.0mgの日用量が、特に好ましい。かかる式Iのクマリンエーテルを含む植物物質または植物抽出物の量は、これに従って計算され得る。
【0057】
ヒトのための固体投薬単位製剤において、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルは、投薬単位あたり、約0.1mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約500mgの量で、適当に存在する。
【0058】
食物組成物、特にヒトのための食品および飲料において、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルは、食品または飲料の総重量に基づいて、0.0001(1mg/kg)〜約5重量%(50g/kg)、好ましくは約0.001%(10mg/kg)〜約1重量%(10g/kg)、より好ましくは約0.01(100mg/kg)〜約0.5重量%(5g/kg)の量で、適当に存在する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態における食品および飲料において、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルの量は、1食あたり10〜30mg、すなわち食品または飲料1kgあたり120mgである。
【0060】
ヒトを除く動物に関して、上記のR、RおよびRの定義ならびに選択を有する式Iのクマリンエーテルの、本発明の目的に適した日用量は、1日あたり、体重1kgあたり0.001mg〜体重1kgあたり約1000mgの範囲内であり得る。体重1kgあたり約0.1mg〜約500mgの日用量がより好ましく、体重1kgあたり約1mg〜100mgの日用量が特に好ましい。
【0061】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。
【0062】
実施例
実施例1において、米国06755コネチカット州ゲイローズビル、ジョージ・ワシントン・プラザ21のマイクロソース・ディスカバリー・システムズ・インコーポレーテッド(MicroSource Discovery Systems Inc、21 Geoge Washington Plaza、Gaylordsville、CT 06755 USA)から得たオブリキンのラセミ混合物を用いた。これは、96%以上の純度を有した。実施例2および3においては、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー(J.Chem.Soc.)(C)1969年、526−531頁に従って合成したオブリキンのラセミ混合物を用いた。キサンチレチンも、マイクロソース(Microsource)から得た。7−ゲラニルオキシクマリン、6’−デヒドロマルミン、ゲイパーバリン、(S)−O−アセチルコロンビアネチンおよびスベロシンは、英国OX14 4RU、オックスフォード、アビンドン、ミルトンパーク43dのAPINケミカル(APIN Chemicals、43d Milton Park、Abingdon、Oxon、OX14 4RU、United Kingdom)から得た。式VIIの化合物は、ロシア、チェルノゴロフカ 142432 7a、インスティチュートスキープロスペクトのインターバイオスクリーン・リミテッド(InterBioScreen Ltd.、Institutsky Prospect、7a 142432 Chernogolovka、Russia)から得た。
【0063】
実施例1:式Iのクマリンエーテルによるセロトニン取り込み阻害および標識シタロプラム置換
ヒトセロトニン再取り込みトランスポーター(hSERT)を安定して発現しているHEK−293細胞を、米国バンダービルト大学(Vanderbilt University)のR.ブレイクリー(Blakely)から得た。細胞を、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミンおよび抗生物質G418を含む、スイス、アルシュビルのバイオコンセプト(Bioconcept、Allschwil、Switzerland)から購入したダルベッコ改変イーグル培地中で、通法により増殖させ、トリプシン化によって継代した。アッセイの1日前に、前述の培地に細胞を播種した。アッセイの直前に、培地を、35μMパルジリン、2.2mM CaCl、1mMアスコルビン酸および5mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(「Hepes」と呼ばれるバッファー)を補充した、シグマ・ケミカルズ・リミテッド(Sigma Chemicals Ltd.)から購入したクレブスリンガー炭酸水素バッファーで置換した。放射性同位体標識(3H)セロトニン(英国スラウのアマシャム・バイオサイエンス GEヘルスケア(Amersham Biosciences GE Healthcare、Slough、UK))を20nMの濃度まで添加し、30分室温でインキュベートすることによって、細胞へのセロトニン取り込みを測定した。上記バッファーで穏やかに3回洗浄することによって、取り込まれていない標識を除去した後、液体シンチレーション計数によって、取り込まれたセロトニンを定量した。
【0064】
上記細胞系から、ガリ(Galli)ら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー(Journal of Experimental Biology)1995年、198、2197−2212頁に従って、hSERTを含む膜を調製した。データポイントごとに3μgの膜タンパク質および0.8mgのコムギ胚芽凝集素被覆SPA(登録商標)(シンチレーション近接アッセイ)ビーズ(英国スラウのアマシャム・バイオサイエンス GEヘルスケア(Amersham Biosciences GE Healthcare、Slough、UK))を、放射性同位体標識(3H)シタロプラム(英国スラウのアマシャム・バイオサイエンス GEヘルスケア(Amersham Biosciences GE Healthcare、Slough、UK))と、50mM トリス−HCl、300mM NaCl(pH7.4)中で終濃度3.3nMまで混合した。18時間室温でのインキュベート後、結合したシタロプラムを、液体シンチレーション計数によって定量した。
【0065】
セロトニン取り込みおよびシタロプラム結合に対する式Iのクマリンエーテルの効果を、(3H)セロトニン/シタロプラムの添加の前および間に、アッセイに0.03〜100μMの間の濃度の範囲で10分間それを含めることによって、決定した。トランスポーターを介したセロトニン取り込み、およびシタロプラム結合は、両方とも、式Iのクマリンエーテルによって、容量依存的に阻害された。式Iのクマリンエーテルによるセロトニン取り込みおよびシタロプラム結合の阻害に関して、チェン−プルソフ等式(Y.C.チェン(Cheng)、W.H.プルソフ(Prusoff)、バイオケミカル・ファーマコロジー(Biochem.Pharmacol.)1973年、22、3099−3108頁)を用いて測定したIC50から導かれた、計算した阻害係数Kを、表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
1つの実験を2回または数回行う場合、平均値をとった。
【0068】
実施例2:オブリキンによるモノアミノオキシダーゼ阻害
750μlのジメチルスルホキシド(DMSO)中、0.0405gのラセミオブリキンのストック溶液(92.5%、37.5mgの純粋な化合物に等しい)から、反応バッファー(0.05Mリン酸ナトリウム、pH7.4、0.2%DMSO)中4・10−4Mのオブリキンの濃度の、希釈標準溶液を調製した。試験系中のオブリキンの終濃度は、10−4M、10−5M、10−6M、10−7Mであった。
【0069】
モノオキシアミンオキシダーゼの活性の阻害を決定するために、製造業者の使用説明書に従って、アンプレックス(Amplex)レッド・モノアミンオキシダーゼアッセイキット(モレキュラープローブ(Molecular Probes)、番号A.−12214、比色バージョン)を行った。
【0070】
MAO−A酵素(シグマ(Sigma)番号M7316)の基質としてp−チラミン、およびMAO−B酵素(シグマ(Sigma)番号M7441)の基質としてベンジルアミンを用いた。希釈標準溶液中、MAO−A酵素の濃度は8単位/mlであり、MAO−Bのものは4単位/mlであった。
【0071】
MAO−AおよびMAO−Bアッセイ、比色バージョン
アッセイのために、50μlの各希釈標準溶液(上記参照)を用いた。対照溶液として、オブリキン含有希釈標準溶液を、50μlの反応バッファーで置換した。
【0072】
50μlの、終濃度が2単位/mlの希釈MAO−A、および50μlの、終濃度が1単位/mlのMAO−Bを、それぞれ加えた。
【0073】
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(2単位/ml)および基質チラミン(MAO−Aに対して)または基質ベンジルアミン(MAO−Bに対して)を含む100μlのアンプレックス(Amplex)溶液を加えた。
【0074】
バックグラウンド吸光度を引けるようにするため、100μlのアンプレックス(Amplex)溶液および100μlの反応バッファーの混合物を「ブランク」として測定した。
【0075】
試料を室温、暗黒下で1時間インキュベートし、次いで535nmでの吸光度を、ソフトマックス(Softmax)マイクロプレート光度計(モレキュラー・デバイス(Molecular Device))で測定した。
【0076】
結果を表2および3に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
したがって、オブリキンは、MAO−Bに対して、MAO−Aに対するよりも高い特異性でMAO阻害を示した。
【0080】
実施例3:ポーソルト水泳試験
「行動絶望試験」または「ポーソルト強制水泳試験」は、うつ病のための、バリデートされた動物モデルである(T.ナガツ(Nagatsu)、ニューロトキシコロジー(NeuroToxicology)2004年、25、11−20頁、特に16頁右欄中央を、ポーソルト(Porsolt)ら、アーカイブス・オブ・インターナショナル・ファーマコダイナミクス(Arch.Int.Pharmacodyn.)1977年、229、327−336頁と組み合わせて参照のこと)。これは、セロトニン、ドーパミンおよびノルアドレナリンを含む、いくつかの神経伝達物質の伝達の促進に応答する。
【0081】
この試験は、抗うつ活性を検出するものであり、ポーソルト(Porsolt)ら、アーカイブス・オブ・インターナショナル・ファーマコダイナミクス(Arch.Int.Pharmacodyn.)1977年、229、327−336頁によって記載されているように行った。迅速に逃れることのできない状況で泳ぐことを強制されたマウスは、無動になる。抗うつ薬は、無動の持続時間を減少させる。
【0082】
マウスを個々に、それらが逃れることができない10cmの水(22℃)を含むシリンダー(高さ=24cm、直径=13cm)中に置いた。マウスを水中に6分間置き、最後の4分間の間の無動の持続時間を測定した。
【0083】
4つの群のそれぞれにつき、10匹のマウスを調べた。試験は盲検法で行い、すなわち、実験を行う人物は、マウスに注射する人物と異なり、そのため、各マウスが4つの群のどれに属するかを知らなかった。
【0084】
オブリキンを、それぞれ3つの用量、10、30および80mg/kg体重で、試験の30分前に腹腔内投与し、対照群と比較して評価した。このようにして投与したオブリキンを、3重量%のDMSOおよび3重量%のTween(登録商標)80を含む生理食塩水(いわゆる「ビヒクル」)に溶解させた。対照群に対しては、3重量%のDMSOおよび3重量%のTween(登録商標)80を含む生理食塩水からなるビヒクルを腹腔内投与した。
【0085】
対応のないスチューデントT検定および分散分析(ANOVA)を用いて、処置群を対照群と比較することによって、データを解析した。これらを表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
したがって、オブリキンを用いて、無動時間が、最高用量群で25%、有意に減少した。全体的に、オブリキンの有意な用量依存的効果があった(ANOVA p<0.05)。
【0088】
実施例4:不安様行動または強迫的行動の試験としてのビー玉埋設試験
「防衛的埋設」行動は、不快な味がする液体を充填した飲水用吐水口(ウィルキー(Wilkie)ら、ジャーナル・オブ・ザ・エクスペリメンタル・アナリシス・オブ・ビヘイバー(Journal of the Experimental Analysis of Behavior)1979年、31、299−306頁)または電気ショック棒(ピネル(Pinel)およびトライト(Treit)、ジャーナル・オブ・コンパラティブ・アンド・フィジオロジカル・サイコロジー(Journal of Comparative and Physiological Psychology)1978年、92、708−712頁)等の侵害対象を埋めるラットによって示された。ビー玉埋設試験は、かかる試験の改変として考案された。ポーリング(Poling)ら(ジャーナル・オブ・ザ・エクスペリメンタル・アナリシス・オブ・ビヘイバー(Journal of the Experimental Analysis of Behavior)1981年、35、31−44頁)は、ラットは、それぞれが25個のビー玉を含む、個体別ケージに、連続した10〜21日間にわたって毎日曝露された。10日間の各日、または21日間の曝露の24時間後に、埋められたビー玉の数が数えられた。著者らは、ビー玉を埋めることは新しさによって決定されず、任意の侵害刺激によることを報告した。
【0089】
マウスによるビー玉埋設行動は、鎮静を誘導しない用量で、SSRI(例えばフルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラム)、三環系抗うつ薬(例えばイミプラミン、デシプラミン)および選択的ノルアドレナリン取り込み阻害剤(例えばレボキセチン)に加えて、マイナー(例えばジアゼパム)およびメジャー(例えばハロペリドール)トランキライザーの範囲に感受性があると報告されている(ブルッカンプ(Broekkamp)ら、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur J Pharmacol.)1986年、126、223−229頁)。このモデルは、不安様または強迫的行動のいずれかを反映し得る(デブール(De Boer)およびコールハース(Koolhaas)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)2003年、463、145−161頁参照)。
【0090】
本明細書中で適用される方法は、ブルッカンプ(Broekkamp)ら(1986年)によって記載されているものに従う。マウス(処置群あたりn=15)を、床の上の5cmのおがくずおよびケージの中央で一団にした25個のビー玉(直径1cm)を含む、透明なプラスチックケージ(33×21×18cm)に個々に入れた。第二の、ひっくり返したケージをふたとした。おがくずで覆われた(少なくとも3分の2まで)ビー玉の数を、30分の試験期間の最後に数えた。試験は、薬物処置プロトコールについて知らされていない研究者によって行った。
【0091】
試験の前に、各ケージ中に15分間10匹の投薬されていないマウスを放置することによって、全ての試験ケージおよびビー玉を「浸透」させた。
【0092】
7−ゲラニル−オキシクマリンを、試験の30分前に腹腔内投与された3、10および30mg/kgで評価し、ビヒクル対照群と比較した。7−ゲラニル−オキシクマリンを、3重量%DMSOおよび3重量%Tween(登録商標)80を含む生理食塩水(いわゆる「ビヒクル」)中に溶解させた。対照群に対しては、3重量%DMSOおよび3重量%Tween(登録商標)80を含む生理食塩水からなるビヒクルを腹腔内投与した。同じ実験条件下で投与したフルオキセチン(32mg/kg)を、標準品として用いた。
【0093】
対応のないスチューデントt検定を用いて処置群をビヒクル対照と比較することによって、データを解析した。
【0094】
結果:
【0095】
【表5】

【0096】
試験の30分前に腹腔内(「i.p.」)投与した7−ゲラニル−オキシクマリン(3、10および30mg/kg)によって、覆われたビー玉の数が、ビヒクル対照と比較して、用量依存的に減少した(それぞれ−27%、p<0.05、−39%、p<0.05および−74%、p<0.001)。
【0097】
同じ実験条件下で投与したフルオキセチン(32mg/kg i.p.)によって、ビー玉埋設は、ビヒクル対照と比較して、殆ど廃止された(−98%、p<0.001)。
【0098】
これらの結果から、7−ゲラニル−オキシクマリンは、SSRIフルオキセチンのように、不安/強迫的行動の減少のための同様の活性を有することが示される。
【0099】
実施例5:軟ゼラチンカプセルの調製
以下の成分を含んで、軟ゼラチンカプセル(500mg)を調製し得る。
【0100】
【表6】

【0101】
軽症慢性気分変調の治療のために、3ヶ月間1日あたり2カプセルをヒト成人に投与し得る。
【0102】
実施例6:軟ゼラチンカプセルの調製
以下の成分を含んで、軟ゼラチンカプセル(600mg)を調製し得る。
【0103】
【表7】

【0104】
月経前症候群および月経前不快気分障害の治療のために、好ましくは月経周期の下半期に、1日あたり1カプセルが14日間摂取され得る。
【0105】
実施例7:錠剤の調製
以下の成分を含んで、400mg錠剤が調製され得る。
【0106】
【表8】

【0107】
一般的な健康、エネルギーを与えること、およびストレスの緩和のために、3ヶ月間1日2回、1錠が摂取され得る。
【0108】
実施例8:インスタント味つきソフトドリンクの調製
【0109】
【表9】

【0110】
全ての成分を混合し、500μmふるいを通して篩過する。得られた粉末を適切な容器に入れ、タービュラーブレンダーで、少なくとも20分間混合する。飲料を調製するために、125gの、得られた混合粉末をとり、1リットルの飲料になるよう水を充填する。
【0111】
インスタントソフトドリンクは、一杯(250ml)あたり約30mgオブリキンを含む。
【0112】
増強剤として、および一般的な健康のために、1日あたり2杯(240ml)が飲まれ得る。
【0113】
実施例9:強化された、焼いていないシリアルバーの調製
【0114】
【表10】

【0115】
オブリキンを脱脂粉乳と前もって混合し、遊星型ボウルミキサーに入れる。コーンフレークおよびライスクリスピーを加え、全体を穏やかに混合する。乾燥カットリンゴを加える。第一の料理鍋中で、砂糖、水および塩を、上記の量で混合する(溶液1)。第二の料理鍋中で、グルコース、転化およびソルビトールシロップを、上記の量で混合する(溶液2)。ベーキングファット、パーム核脂肪、レシチンおよび乳化剤の混合物は脂肪相にある。溶液1を110℃に加熱する。溶液2を113℃に加熱し、次いで冷水浴で冷却する。その後、溶液1および2を組み合わせる。脂肪相を水浴中75℃で融解する。脂肪相を、溶液1および2の組み合わせた混合物に加える。リンゴ香料およびクエン酸を、液状の糖−脂肪混合物に加える。液体を乾燥成分に加え、ボウルミキサー中で十分に混合する。塊を大理石プレートに乗せ、所望の厚さまで圧延する。塊を室温まで冷却し、細かく切断する。焼いていないシリアルバーは、1食(30g)あたり約25mgオブリキンを含む。一般的な健康、およびエネルギーを与えるために、1日あたり1〜2個のシリアルバーが食べられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】式II〜Xの化合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの式I
【化1】


のクマリンエーテルを含み、式中RがH、OHまたは(E)−3−メチル−ブト−2−エニルであり、Rがメチル、3−(4,5−ジヒドロ−5,5−ジメチル−4−フラノン−2−イル)−2−(E/Z)−ブテニル、(E/Z)−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−2−オクテン−6−オン−イルおよび(E/Z,E/Z)−11−アセチルオキシ−3,7,11,11−テトラメチル−ウンデカ−2,7−ジエン−10−オン−イルからなる群より選択され、RがHであり、RおよびROがともに−O−C(C(=CH)CH)H−CH−O−基もしくは−C(H)=C(H)−C(CH−O−基を形成し、またはROおよびRがともに−O−C(H)(C(CH(H)−O−C(O)CH)−CH−基を形成し、好ましくはRおよびROがともに−O−C(C(=CH)CH)H−CH−O−基を形成するクマリンエーテルであり、より好ましくはオブリキンである、食物または医薬組成物。
【請求項2】
式Iのクマリンエーテルがオブリキン、キサンチレチン、7−ゲラニルオキシクマリン、スベロシン、6’−デヒドロマルミン、ゲイパーバリン、O−アセチルコロンビアネチンおよび式VII
【化2】


の化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の食物または医薬組成物。
【請求項3】
乳製品(ヨーグルト)等の食品の形態、シリアルバー等の強化食品ならびにケーキおよびクッキー等のパン・菓子類の形態、錠剤、丸剤、顆粒剤、糖剤、カプセル剤および発泡性製剤等の栄養補助食品の形態、ソフトドリンク、スポーツドリンク、フルーツジュース、レモネード、茶および牛乳ベースの飲料等のノンアルコール飲料の形態、スープおよび乳製品(ムースリ飲料)等の流動食の形態である、請求項1または2に記載の食物組成物。
【請求項4】
抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、状態改善剤、不安の抑制剤および/または強迫的行動の抑制剤としての、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食物組成物または請求項1もしくは2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項5】
医薬品としての使用のための、請求項1に記載の式Iのクマリンエーテル。
【請求項6】
神経伝達障害に関係のある障害の治療のための医薬品としての使用のための、請求項1に記載の式Iのクマリンエーテル。
【請求項7】
抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、状態改善剤、不安の抑制剤および/または強迫的行動の抑制剤としての、請求項6に記載の使用のための、請求項1に記載の式Iのクマリンエーテル。
【請求項8】
クマリンエーテルがオブリキン、キサンチレチン、7−ゲラニルオキシクマリン、スベロシン、6’−デヒドロマルミン、ゲイパーバリン、O−アセチルコロンビアネチンおよび式VII
【化3】


の化合物からなる群より選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の、式Iのクマリンエーテル。
【請求項9】
神経伝達障害に関係のある障害の治療のための組成物の製造のための、請求項1に記載の式Iのクマリンエーテルの使用。
【請求項10】
組成物が抗うつ薬、気分改善剤、ストレス緩和剤、状態改善剤、不安の抑制剤および/または強迫的行動の抑制剤である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含む動物における、神経伝達障害に関係のある障害の治療および/または予防のための方法であって、前記方法が、有効量の、請求項1に記載の式Iのクマリンエーテルを、それを必要とするヒトを含む動物に投与することを含む、方法。
【請求項12】
動物がヒト、ペットまたは家畜である、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−517879(P2008−517879A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537097(P2007−537097)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000621
【国際公開番号】WO2006/042441
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】