説明

神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントを利用した神経軸索の形成・伸長と神経再生への応用

【課題】 神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導、促進する新たな方法等を提供すること。
【解決手段】 神経細胞の極性形成前後で発現変動し、かつ、軸索の形成・伸長に重要な軸索先端の成長円錐に存在する新規分子としてShootin1が同定された。このShootin1は脳に特異的に発現し、その発現量は個体において軸索の形成が盛んな時期に大きく上昇する。Shootin1は軸索先端の成長円錐に強い濃縮が認められ、また、Shootin1を培養神経細胞に外来性に発現させると複数の軸索の形成が誘導された。このようにShootin1は軸索形成能を有することから、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現または活性を正に制御することによって、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導、促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントを利用して、神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導、促進する方法に関する。本発明は、とりわけ新たな神経再生技術の開発に貢献し得るものであり、たとえば脳卒中や脊髄損傷などで引き起こされる中枢神経および末梢神経の障害に対する有効な治療法として、軸索再生医療技術の確立およびその研究開発段階において利用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
神経細胞は、細胞自体に極性すなわち方向性を有する細胞である。つまり、複数の樹状突起と単一の軸索を持ち、他の神経細胞からの情報を樹状突起において受け取り、細胞体で統合を行い、活動電位という形に変換して軸索上を細胞体側からシナプス末端側に伝達する。そして、シナプス末端において神経伝達物質を放出することにより標的細胞に情報を伝達している。この現象が、高等生物において記憶、学習、運動などの高次生命活動の根幹を担っている。しかし、神経細胞の極性形成および維持の分子機構は未知の部分が多くなぞに包まれている(極性形成に関する研究については、たとえば下記の非特許文献1参照)。
【0003】
神経細胞の極性形成の分子機構を明らかにすることは、発生段階などにおける神経軸索の形成および伸長、ひいては神経回路網形成の分子メカニズムを解明することにつながる。神経細胞の極性形成は一面において神経軸索の形成であるから、極性形成に関与する分子を同定することによって、同分子を神経軸索の形成、伸長に利用できる可能性がある。さらに同分子を新たな神経再生技術の開発に利用し、たとえば切断あるいは変性した神経軸索再生の治療法の開発に利用できる可能性がある。
【0004】
このような治療法の開発は重要である。たとえば脳卒中や外傷などで引き起こされる中枢神経および末梢神経の障害は、軸索再生に関して有効な薬物治療法がないため、治療が困難な現代の難病のひとつであり、現在リハビリテーションによる機能回復が主な医療手段である。特に中枢神経の軸索はいったん障害を受けると再生することができないため、患者は一生車椅子等の不自由な生活を強いられることが多く、その障害は患者や家族、社会にとって重い負担となる。
【0005】
ところで下記の非特許文献2には、生後0日の新生マウス小脳ライブラリーからクローニングされた遺伝子のcDNA配列、およびその推定アミノ酸配列が開示されている。もっとも、当該遺伝子およびそのタンパク質の有する機能については同文献に何ら開示、示唆されていない。
【0006】
【非特許文献1】Dotti, C.G., Sullivan, C.A., Banker, G.A. (1988) The establishment of polarity by hippocampal neurons in culture. J. Neurosci. 8, 1454-1468
【非特許文献2】DDBJ/EMBL/GenBank databases:アクセッション番号AK082304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の課題は、2次元電気泳動法および質量分析法等のプロテオーム解析を用いて神経細胞の極性形成前後で発現変動し、かつ、軸索の形成・伸長に重要な軸索先端の成長円錐に存在する分子を同定し、同分子の機能解析を行うことによって、神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導、促進する新たな方法を開発、提供することである。本発明の第2の課題は、この方法に使用することができ、また中枢神経および末梢神経の障害に対する神経再生治療においても利用可能な新規遺伝子および新規タンパク質を提供することである。さらに本発明の第3の課題は、上記分子を標的、プローブとした、神経再生用治療薬のスクリーニング方法および研究用試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、独自に開発した高感度2次元電気泳動法(Inagaki N. and Katsuta K, Curr. Proteomics 1, 35-39, 2004)をベースとしたプロテオミクスを用いて、ラット海馬培養神経細胞のタンパク質のスクリーニングを行い、軸索形成に伴って発現量が上昇するタンパク質を網羅的に解析した。その結果、分子量52.6 kDの新規タンパク質(Shootin1)を同定した。さらにこの分子について解析を進めた結果、(1)脳に特異的に発現し、その発現量は軸索が形成される生後4日目に大きな上昇が見られること、(2)Shootin1は、軸索先端の成長円錐に強い濃縮が認められること、(3)Shootin1を培養神経細胞に外来性に発現させると(すなわち内在性の遺伝子ではなく、外部から遺伝子を導入し発現させると)複数の軸索の形成が誘導されること、(4)Shootin1は軸索の形成、伸長中の成長円錐に小胞状に局在し、成長円錐においてダイナミックな動きを示すこと、(5)Shootin1には他に2つのスプライシングバリアントが存在すること、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、産業上および医学上有用な発明として、下記A)〜O)の発明を含むものである。
A) 神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現または活性を正に制御することにより、神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導する方法。
上記Shootin1等の「発現または活性を正に制御する」方法としては、(1)Shootin1遺伝子等を神経細胞に導入して外来性のShootin1等を発現させ、その細胞内発現量を高める方法、(2)内在性のShootin1等の発現を高める方法、および、(3)Shootin1等の活性を高める方法、などを挙げることができ、これらの方法を組み合わせてもよい。
また、上記「スプライシングバリアント」とは、alternative splicingにより形成されたmRNAから翻訳されたタンパク質の意味である。Shootin1の「スプライシングバリアント」としては、ゲノム解析により同定された後述のShootin2(p52b)、Shootin3(p52c)を挙げることができる。
【0010】
B) Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞に導入することにより、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの細胞内発現を正に制御することを特徴とする、上記A)記載の神経軸索形成/伸長誘導法。
神経細胞への遺伝子導入は、組換え発現ベクターを細胞にトランスフェクションする通常の方法にしたがって行うことができる。
【0011】
C) 神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞において発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる神経軸索形成/伸長誘導剤。
「組換え発現ベクター」は、ウイルスベクター、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを使用することができ、特に限定されるものではない。また、宿主内で機能するプロモーターには様々なものが存在するので、目的用途に応じたプロモーターを選択し、Shootin1遺伝子等の上流に配置すればよい。
【0012】
D) 組換え発現ベクターが、ヒト、ラットまたはマウス由来のShootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を発現するよう構築された、上記C)記載の神経軸索形成/伸長誘導剤。
ヒト、ラット、およびマウス由来のShootin1のcDNA配列とアミノ酸配列については、それぞれ、配列表の配列番号1−3、4−6、7−9に示され、これらの情報に基づいて組換え発現ベクターを調製することができる。
【0013】
E) 神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞において発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる神経再生用遺伝子治療薬。
上記遺伝子治療薬は、切断あるいは変性した神経細胞、神経組織の軸索再生治療に利用することができる。
【0014】
F) 組換え発現ベクターが、ヒト、ラットまたはマウス由来のShootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を発現するよう構築された、上記E)記載の神経再生用遺伝子治療薬。
【0015】
G) 以下の(a)又は(b)に示されるヒト由来Shootin1タンパク質。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質。
本発明の「Shootin1タンパク質」は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。このようなポリペプチドが付加される場合としては、たとえばHis やMyc 、flag等によってエピトープ標識されるような場合が挙げられる。
また、「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の変異タンパク質作製法により欠失、置換及び/又は付加できる程度の数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されることを意味する。このように、上記(b)のタンパク質は、換言すれば、上記(a)のタンパク質の変異タンパク質であり、ここにいう「変異」は、主として変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。
【0016】
H) 以下の(a)又は(b)に示されるラット由来Shootin1タンパク質。
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質。
【0017】
I) 上記G)又はH)記載のタンパク質をコードするShootin1遺伝子。
たとえば配列番号1または4に示される塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。本発明の「遺伝子」としてはcDNAが好ましいが、特に限定されるものではなく、RNAであってもゲノムDNAであってもよい。また、本発明の「遺伝子」は、Shootin1タンパク質をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0018】
J) 以下の(a)〜(c)のいずれかのDNA。
(a)配列番号1又は4に示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号1又は4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)抗Shootin1抗体により発現ライブラリーをスクリーニングして得られ、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質をコードするDNA。
【0019】
K) 神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現または活性を正に制御する物質を探索することを特徴とする、神経再生用治療薬のスクリーニング方法。
たとえば、(1)アフィニティーカラム法やYeast-two-hybrid法、免疫沈降法などのbinding assayによってShootin1等と結合し、その活性を高める物質のスクリーニング方法、(2)候補物質を神経細胞に投与し、内在性のShootin1等の発現量を上昇させる物質をスクリーニングする方法、を挙げることができる。
【0020】
L) 神経軸索の形成もしくは伸長又は神経再生に関する研究用試薬であって、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントを特異的に検出する抗体。
本発明の「抗体」は、検出対象となるShootin1等のタンパク質、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の方法によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得られる抗体である。
【0021】
M) ヒト又はラット由来のShootin1タンパク質を特異的に検出する抗Shootin1抗体である、上記L)記載の抗体。
【0022】
N) 上記J)記載のDNAのうち(c)に示されるDNAであって、抗体が上記L)またはM)の抗体である、DNA。
【0023】
O) 神経軸索の形成もしくは伸長又は神経再生に関する研究用試薬であって、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現を特異的に抑制するために細胞内に導入されるRNAi試薬。
RNAi試薬は、siRNA(short interference RNA)であってもよいし、RNAi発現ベクターであってもよい。siRNAおよびRNAi発現ベクターは、抑制対象となるShootin1等の遺伝子配列をもとに公知の方法にしたがって設計することができる。また、RNAi発現ベクターは、(1)1本のRNAで適当な長さのヘアピン構造をもつdsRNAを対象細胞内で発現させるように設計されたもの、(2)センス鎖、アンチセンス鎖それぞれを対象細胞内で発現させ、会合させるように設計されたもの、のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記Shootin1は、後述の実施例に示すように、培養神経細胞に外来性に発現させると複数の軸索の形成を誘導する作用等が認められた。このようにShootin1は神経軸索形成能を持つため、中枢神経や末梢神経における軸索再生治療の標的分子となりうる点で、医学・薬学の分野における応用が可能である。第一に、Shootin1そのものが軸索形成を促進するため、障害を受けた患者の神経細胞、神経組織にウイルス等のベクターを介してShootin1を外来性に発現させることによって、神経軸索の再生を引き起こさせることが可能と考えられる。また、本発明のスクリーニング方法により、たとえばShootin1と相互作用し、内在性Shootin1を活性化する分子を見出せば、同分子は神経軸索再生治療薬の候補物質になりうる。さらに、ヒトおよびラット由来の新規Shootin1遺伝子およびShootin1タンパク質、これらの抗体、RNAi試薬は、神経再生等の研究用試薬として利用することができる。
【0025】
Shootin1のスプライシングバリアント(後述のShootin2、Shootin3)も、図2に示すように構造上Shootin1と類似し、共通する構造を有するため同様の機能を有していると考えられ、Shootin1と同様に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的態様等について詳しく説明する。
図1には、本発明者による解析の結果明らかになったShootin1タンパク質の模式的構造が示される。Shootin1タンパク質は、全長456個のアミノ酸からなり、3箇所のCoiled-coil(図中、C.C1-3)領域と1箇所のProline-rich-regionが存在する。分子量が52.6 kDであったため、当初「p52a」と呼んでいたが、その後の解析により当該分子が神経軸索の先端で流れ星(shooting star)のように動くのが観察されたことから、最終的に「Shootin1」と命名した。
【0027】
Shootin1タンパク質は既知のタンパク質とは相同性を持たず、またゲノム情報より、ラット以外にヒト、ニホンザル、マウス、ゼブラフィッシュおよびフグにホモログタンパクが存在することがわかった。
【0028】
配列番号1−3には、本発明者によって決定されたヒト由来Shootin1のcDNA配列およびアミノ酸配列が示される。他方、配列番号4−6には、本発明者によって決定されたラット由来Shootin1のcDNA配列およびアミノ酸配列が示される。後述の実施例に示すように、これらの遺伝子・タンパク質は本発明者によってはじめてクローニングされた新規遺伝子・新規タンパク質である。
【0029】
なお本発明の遺伝子には、(1)配列番号1に示される塩基配列からなるヒト由来Shootin1遺伝子、および(2)配列番号4に示される塩基配列からなるラット由来Shootin1遺伝子のみならず、(3)配列番号1又は4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、コードするタンパク質が神経軸索の形成(または伸長)促進作用を有する遺伝子も含まれる。
【0030】
上記ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、たとえばMolecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Current Protocols in Molecular Biology; Wiley Interscienceに記載の方法によって行うことができ、具体的には以下の方法が例示される。
【0031】
cDNAライブラリー等のDNA分子を膜に転写し、これと標識したプローブとをハイブリダイゼーションバッファー中でハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションバッファーの組成は、たとえば0.1重量%SDS、5重量%デキストラン硫酸、1/20容のブロッキング試薬、および2〜7×SSCからなる。ブロッキング試薬としては、たとえば100×Denhardt's solution 、2%(重量/容量)Bovine serum albumin、2%(重量/容量)ポリビニルピロリドンを5培濃度で調製したものを1/20に希釈して使用する。
【0032】
ハイブリダイゼーションの温度は、40〜80℃、より好ましくは50〜70℃、更に好ましくは55〜65℃の範囲であり、数時間から一晩のインキュベーションを行った後、洗浄バッファーで洗浄する。洗浄の温度は、好ましくは室温、またはハイブリダイゼーション時の温度である。洗浄バッファーの組成は、好ましくは0.1〜6×SSC+0.1重量%SDS溶液であり、SSCの濃度を変えながら洗浄バッファーで数回膜を洗浄する。その後、プローブがハイブリダイズしたDNA分子を、プローブに付された標識を利用して検出する。
【0033】
配列番号7−9には、マウス由来Shootin1のcDNA配列およびアミノ酸配列が示される。これらの配列自体はDDBJ/EMBL/GenBank databasesのアクセッション番号「AK082304」に開示されており、既知の配列であった。もっとも、その機能については何ら開示・示唆されていない。
【0034】
また、ゲノム情報を解析した結果、上記Shootin1(p52a)には他の2つのスプライシングバリアントShootin2(p52b)およびShootin3(p52c)が存在することがわかった。図2は、Shootin1(図中p52a)、並びにそのスプライシングバリアントであるShootin2(図中p52b)およびShootin3(図中p52c)の概略的構造を比較して示す図である。A−Eはゲノム上の各エクソンに対応する。
【0035】
マウス由来のShootin2(p52b)は631個のアミノ酸からなり、Shootin1(p52a)と共通にエクソンA・Bに対応する領域を有する。他方、ラット由来のShootin3(p52c)は599個のアミノ酸からなり、Shootin1(p52a)と共通にエクソンAに対応する領域を有する。いずれも配列は既知である。マウス由来のShootin2の配列はアクセッション番号「BC030338」に、ラット由来のShootin3のアクセッション番号は「XM_214734」にそれぞれ開示されている。Shootin2、Shootin3は、マウス、ラット以外にゼブラフィッシュなどにも存在し、ヒトホモログも存在すると考えられる。Shootin2、Shootin3は、構造上Shootin1と類似するため、Shootin1と同様の機能すなわち神経軸索の形成、伸長を誘導する作用を有していると考えられる。
【0036】
上記Shootin1について、クローニングしたヒトShootin1を発現させ、またこれをもとに抗Shootin1抗体を作成して解析を進めた結果、以下の知見が得られた(実験方法等の詳細は後述の実施例において説明する)。
(1)抗Shootin1抗体を用いたウエスタンブロット解析によりラット各種臓器における発現の有無および発現時期の特異性を調べたところ、Shootin1は脳に特異的に発現し、その発現量は軸索の形成が盛んな生後4日目(P4)の脳に強い発現が認められた(図3)。
(2)Shootin1は、胎生18日のラット海馬より調製した培養神経細胞では伸長しつつある軸索先端の成長円錐に強い濃縮が認められた(図4)。
(3)Shootin1を培養海馬神経細胞に外来性に発現させると複数の軸索の形成が誘導された(図5)。また、Shootin1を神経細胞に外来性に発現させたときにも、Shootin1は軸索先端の成長円錐への局在を示した(図6)。
(4)Shootin1は軸索の形成、伸長中の成長円錐に小胞状に局在し、成長円錐においてダイナミックな動きを示した。
【0037】
これらの結果から、Shootin1は軸索の成長円錐に存在して神経軸索の形成に重要な役割を果たすことが示された。特にShootin1を神経細胞に発現させることによって軸索の形成が誘導されたことから、Shootin1の発現または活性を正に制御することによって、神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導、促進することができる。
【0038】
たとえばウイルスベクター等のベクターを用いてShootin1遺伝子を神経細胞に導入し、外来性のShootin1を発現させることによって神経軸索の形成または伸長を誘導、促進する方法が挙げられる。また、このShootin1遺伝子ベクターを神経再生用遺伝子治療薬として、障害を受けた神経細胞の再生に利用することができる。神経細胞への遺伝子導入はin vivo、ex vivoのいずれかの方法が考えられ、in vivoの場合は効率よく局所的に神経細胞に遺伝子導入するため、公知の遺伝子担体やドラッグデリバリーシステムを使用することができる。
【0039】
Shootin1の発現または活性を正に制御する方法としては、上記の方法以外に、内在性のShootin1の発現を高める方法、および、内在性(または外来性)のShootin1の活性を高める方法、などを挙げることができる。これらの方法は薬剤投与によることが好ましく、そのため、Shootin1の発現、活性を高める物質を探索するスクリーニング方法は有用であり、このようなスクリーニング方法も本発明に含まれる。
【0040】
本発明のスクリーニング方法としては、遺伝子・タンパク質の発現量、タンパク質の活性変化等を調べる従来公知の種々の方法を適用することができ、特に限定されるものではない。また、本発明以降に新たに開発されたスクリーニング方法を使用するものであってもよい。in vitroおよびin vivoスクリーニング系のいずれであってもよいし、cell-free systemでスクリーニングを行ってもよい。また、Shootin1遺伝子・タンパク質は、ヒト由来のもののほか、ラット、マウスその他の動物由来のものを使用してもよい。勿論、Shootin1タンパク質の高次構造の情報を利用してスクリーニングを行ってもよい。
【0041】
上記スクリーニング方法としては、たとえば、(1)アフィニティーカラム法やYeast-two-hybrid法、免疫沈降法などのbinding assayによってShootin1と結合し、その活性を高める物質のスクリーニング方法、(2)候補物質を神経細胞に投与し、内在性のShootin1の発現量を上昇させる物質をスクリーニングする方法、を挙げることができる。
【0042】
前述のように、Shootin1は神経成長円錐に小胞状に局在し、強い濃縮が認められるので、互いに直接または他の分子を介して間接的に結合している可能性が高い。Shootin1がこのような結合能を有しているとすれば、その結合の有無により活性制御されると考えられる。
【0043】
Shootin1は、神経軸索がまさに伸長する部位である成長円錐に高レベル発現し、その発現は軸索の形成を促進する。したがって、Shootin1は神経軸索の再生医療の重要な標的分子である。また、このShootin1を臨床応用するためには、今後Shootin1の軸索形成作用の細胞内分子機序を明らかにすることが重要になる。Shootin1タンパク質を特異的に検出する抗Shootin1抗体、および、Shootin1の発現を特異的に抑制するRNAi試薬は、その研究用試薬として有用である。
【0044】
抗Shootin1抗体は、Shootin1全長タンパク質、またはそのエピトープ領域をもとに合成したペプチドを抗原としてウサギ等に注射し、公知の方法によりポリクローナル抗体として得ることができる。エピトープ領域はKite & Doolittleの方法等により親水性の領域を予測すること等により推定することができる。勿論、公知の方法によりShootin1のモノクローナル抗体を作成してもよい。公知の方法としては、たとえば、Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988))」、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA,講談社(1991)」に記載の方法が挙げられる。
【0045】
前記抗Shootin1抗体を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすることにより、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子を得ることができる。すなわち、cDNAを発現するようにλファージベクターなどに連結させたものをパッケージグし、大腸菌に感染させて寒天上にまくことでプラークを形成させる。適当な大きさになったプラーク(例えば37℃8時間培養)にニトロセルロース膜又はナイロン膜を被せてcDNA産物を膜に結合させ、これらを通常のウエスタン解析類似の方法で抗体処理することによりShootin1と類似のアミノ酸配列を有するタンパク質を発現するクローンを見出すことができる。抗体処理は典型的には1次抗体としてShootin1抗体、2次抗体としてペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼで標識した抗1次抗体(例えば、1次抗体がウサギ由来であれば抗ウサギIgG抗体)を用いるがShootin1抗体を標識して用いても良い。これらのスクリーニングにより候補プラークが得られればそのcDNA断片をプローブとして当業者に周知の方法により全長のcDNAクローンを得ることができる。または市販のcDNA5’−末端クローニングキットを用いても良い。このようにして得られたクローンを神経細胞に導入して軸索形成、伸長活性をアッセイすることにより、神経軸索形成、伸長活性を有するタンパク質の遺伝子を得ることができる。
【0046】
Shootin1特異的RNAi試薬は、前述のように、siRNAであってもよいし、RNAi発現ベクターであってもよい。また、RNAi試薬は、必ずしもShootin1タンパク質の発現を完全に抑制する必要はなく、細胞内のShootin1タンパク質の発現量を実質的に低下させるものであればよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1:ヒトおよびラットShootin1遺伝子のクローニング〕
本発明者は最近、高感度の2次元電気泳動法を開発した(Inagaki N. and Katsuta K, Curr. Proteomics 1, 35-39, 2004)。この方法を用いてラット培養海馬神経細胞の約6,200個のタンパク質をスクリーニングし、神経軸索形成に伴って発現量が上昇する277個のタンパク質スポットを検出した。
【0049】
また同様に約5,200個のタンパク質をスクリーニングして200個の神経軸索に濃縮するタンパク質スポットを検出した。以上の二つの異なるスクリーニングで共通して検出されたタンパク質のひとつをMALDI-TOF/MS質量分析装置にて解析し、既知のヒトcDNA(KIAA1598)によってコードされるタンパク質中のアミノ酸配列と一致する10個のペプチドを検出した。
【0050】
ヒトcDNA(KIAA1598)は、5’-末端の欠失した446個のアミノ酸をコードする。即ち、本発明者によるBLAST検索等の解析により、この遺伝子はN-末端の10のアミノ酸を欠くことが明らかとなった。そこで次に、全長456個のアミノ酸配列をコードする遺伝子をクローニングすることにした。具体的には、ヒトcDNA(KIAA1598)を鋳型として、下記配列のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてPCRを行った。
フォワードプライマー: 5’-GCGGATCCATGAACAGCTCGGACGAAGAGAAGCAGCTGCAGCTCATTACCAGTCTGAAG(配列番号10)
リバースプライマー:5’-GCGGATCCCTACTGGGAGGCCAGTATTC(配列番号11)
【0051】
このようにしてクローニングした遺伝子および同遺伝子によってコードされるタンパク質を当初「p52a」と呼んでいたが、最終的に「Shootin1」と命名した。Shootin1のcDNA配列およびアミノ酸配列は、配列番号1−3に示される。
【0052】
上記ヒトShootin1と同様の方法により、ラットShootin1遺伝子をクローニングするため、ラットcDNAライブラリー(Clontech)から下記配列のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:5’-CCGCTCGAGATGAACAGCTCGGACGAGGAGAAG(配列番号12)
リバースプライマー:5’-CCGCTCGAGTTACTGGGAGGCCAGGATTCCCTTCAG(配列番号13)
クローニングしたShootin1のcDNA配列およびアミノ酸配列は、配列番号4−6に示される。
【0053】
〔実施例2:ラット各臓器におけるShootin1の組織発現の解析〕
抗Shootin1抗体の作成および精製
上記方法によってクローニングしたヒトShootin1のGST融合タンパク質を大腸菌にて発現させ、Glutathion Sepharose 4Bカラムを用いて精製した。精製タンパク質よりプロテアーゼを用いてGSTを切断除去し、得られたShootin1をウサギに免疫して常法に従い抗体を作成した。また得られた抗体はShootin1をリガンドとしてカラム精製を行い、全ての実験には精製抗体を用いた。
【0054】
イムノブロッティング
Wistar系ラット各種組織よりSDS化サンプルを調製して15μgづつ各サンプルを10%ポリアクリルアミドゲルにて分離した。その後タンパク質をPVDF膜に転写し、上記抗Shootin1抗体(1000倍希釈)、HRP標識抗ウサギIgG抗体(2000倍希釈)およびECL試薬(アマシャムバイオサイエンス)にてShootin1の検出を行った。その結果、図3に示すように、Shootin1は脳に特異的に発現し、その発現量は軸索が形成される生後4日目(P4)に大きな上昇が見られた。
【0055】
〔実施例3:Shootin1のラット培養海馬神経細胞における細胞内分布の解析〕
ラット培養海馬神経細胞の調製
胎生18日目のWistar系ラットの海馬を摘出し、パパインを用いて酵素消化を行って分離神経細胞を調製した。得られた神経細胞はpoly-D-lysineおよびlamininコートされたカバーグラス上に培養液(Neurobasal Medium、B-27 supplement 、1 mM グルタミン、2.5μM cytosine β-D-arabinofuranoside)中、37℃、5%CO2の条件化で培養した。
【0056】
ラット培養海馬神経細胞の免疫染色
培養3日目のラット培養海馬神経細胞を3.7%ホルマリンにて氷上で10分間固定し、−20℃メタノールにて10分間膜透過処理を行った。その後一次抗体として前記抗Shootin1抗体(5000倍希釈)にて4℃1昼夜反応を行い、さらに2次抗体としてALEXA488標識抗ウサギIgG抗体(1000倍希釈)にて室温1時間反応を行いShootin1の可視化を行った。その結果が図4に示される。同図に示すように、胎生18日のラット海馬より調製した培養神経細胞では、伸長しつつある軸索先端の成長円錐にShootin1の強い濃縮が認められた。
【0057】
〔実施例4:Shootin1の外来性発現による神経軸索形成能の解析〕
Myc-タグを付加したヒトのShootin1をアクチンプロモーターを有する哺乳類細胞発現ベクターpCAGGS(Niwa et al., Gene 108 (1991), p193-200参照)にサブクローニングしてShootin1発現ベクターを作成した。
【0058】
このベクターを胎生18日目のWistar系ラットの海馬より調製した神経細胞にNucleofectorTM(AMAXA biosystems)を用いて遺伝子導入してカバーグラス上に培養した。培養7日目に神経細胞を上記のように固定し、抗myc抗体を用いて外来性Shootin1を発現する神経細胞を可視化しその形態を解析した。その結果が図5に示される。同図矢印に示すように、Shootin1を培養海馬神経細胞に外来性に過剰発現させると、複数の軸索の形成が誘導された。
【0059】
また、図6は、ラット海馬培養神経細胞においてShootin1を外来性に発現させたときの細胞内局在を示す図である。具体的には、胎生18日目のラットより摘出した海馬を分散培養2 日後、mycタグを付加したヒトShootin1発現ベクターをトランスフェクションし、5 日後に免疫染色(1 次抗体anti-myc ×400, 2 次抗体anti-rabbit ×800)により検出した。図6の上段は、トランスフェクションされた神経細胞の全体図であり、下段は、四角で囲まれた軸索成長円錐付近の拡大図である。同図に示すように、Shootin1を外来性発現させたときにも、軸索先端の成長円錐においてShootin1の強い濃縮が認められる。
【0060】
さらに、(1)高解像度セクショニング顕微鏡による解析により、Shootin1は神経成長円錐に小胞状に局在すること、(2)タイムラプス顕微鏡による解析により、Shootin1は神経成長円錐でダイナミックに動くことが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明は、新たな神経再生技術の開発に利用することができる。たとえば脳卒中や脊髄損傷などで引き起こされる中枢神経および末梢神経の障害に対する有効な治療法として、軸索再生医療技術の確立およびその研究開発段階において利用することができる。より詳細には、障害を受けた患者の神経細胞に、軸索形成促進作用を有するShootin1をウイルス等のベクターを介して発現させることによって神経軸索の再生を促す治療法に利用したり、Shootin1をプローブとしてShootin1を活性化する物質を探索することによって神経軸索再生治療薬の開発に利用する、といった臨床面、医薬開発面での様々な利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】解析の結果明らかになったShootin1(p52a)の構造を概略的に示す図である。
【図2】Shootin1(p52a)、並びにそのスプライシングバリアントであるShootin2(p52b)およびShootin3(p52c)の概略的構造を比較して示す図である。図中、A−Eはゲノム上の各エクソンに対応する。
【図3】抗Shootin1抗体を用いてShootin1の各臓器での発現分布および発生段階における脳での発現量の変化を調べた結果を示す図である。
【図4】抗Shootin1抗体を用いて培養海馬神経細胞におけるShootin1の分布を調べた結果を示す図である。
【図5】Shootin1の過剰発現によって培養海馬神経細胞において複数の軸索が形成されたことを示す図であり、anti-myc抗体による免疫染色像と、軸索マーカー抗体(anti-tau1)による免疫染色像とを重ね合わせたものである。
【図6】ラット海馬培養神経細胞においてShootin1を外来性に発現させたときの細胞内局在を示す図であり、上段はShootin1を外来性発現させた神経細胞の全体図、下段は四角で囲まれた軸索成長円錐付近の拡大図である。
【配列表フリーテキスト】
【0063】
配列番号1:ヒト由来Shootin1のcDNA配列
配列番号2:ヒト由来Shootin1のcDNA配列とそれによってコードされるアミノ酸配列
配列番号3:ヒト由来Shootin1のアミノ酸配列
配列番号4:ラット由来Shootin1のcDNA配列
配列番号5:ラット由来Shootin1のcDNA配列とそれによってコードされるアミノ酸配列
配列番号6:ラット由来Shootin1のアミノ酸配列
配列番号7:マウス由来Shootin1のcDNA配列
配列番号8:マウス由来Shootin1のcDNA配列とそれによってコードされるアミノ酸配列
配列番号9:マウス由来Shootin1のアミノ酸配列
配列番号10:ヒトcDNAクローニング用のPCRフォワードプライマー配列
配列番号11:ヒトcDNAクローニング用のPCRリバースプライマー配列
配列番号12:ラットcDNAクローニング用のPCRフォワードプライマー配列
配列番号13:ラットcDNAクローニング用のPCRリバースプライマー配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現または活性を正に制御することにより、神経細胞における軸索の形成または伸長を誘導する方法。
【請求項2】
Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞に導入することにより、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの細胞内発現を正に制御することを特徴とする、請求項1記載の神経軸索形成/伸長誘導法。
【請求項3】
神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞において発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる神経軸索形成/伸長誘導剤。
【請求項4】
組換え発現ベクターが、ヒト、ラットまたはマウス由来のShootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を発現するよう構築された、請求項3記載の神経軸索形成/伸長誘導剤。
【請求項5】
神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を神経細胞において発現するよう構築された組換え発現ベクターからなる神経再生用遺伝子治療薬。
【請求項6】
組換え発現ベクターが、ヒト、ラットまたはマウス由来のShootin1もしくはそのスプライシングバリアントの遺伝子を発現するよう構築された、請求項5記載の神経再生用遺伝子治療薬。
【請求項7】
以下の(a)又は(b)に示されるヒト由来Shootin1タンパク質。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質。
【請求項8】
以下の(a)又は(b)に示されるラット由来Shootin1タンパク質。
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質。
【請求項9】
請求項7又は8記載のタンパク質をコードするShootin1遺伝子。
【請求項10】
以下の(a)〜(c)のいずれかのDNA。
(a)配列番号1又は4に示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号1又は4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)抗Shootin1抗体により発現ライブラリーをスクリーニングして得られ、かつ、神経細胞において軸索の形成または伸長を誘導する作用を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項11】
神経成長円錐局在分子Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現または活性を正に制御する物質を探索することを特徴とする、神経再生用治療薬のスクリーニング方法。
【請求項12】
神経軸索の形成もしくは伸長又は神経再生に関する研究用試薬であって、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントを特異的に検出する抗体。
【請求項13】
ヒト又はラット由来のShootin1タンパク質を特異的に検出する抗Shootin1抗体である、請求項12記載の抗体。
【請求項14】
請求項10のDNAのうち(c)に示されるDNAであって、抗体が請求項12または13の抗体である、DNA。
【請求項15】
神経軸索の形成もしくは伸長又は神経再生に関する研究用試薬であって、Shootin1もしくはそのスプライシングバリアントの発現を特異的に抑制するために細胞内に導入されるRNAi試薬。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−50980(P2006−50980A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235708(P2004−235708)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年2月13日 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学発行の「平成15年度 博士前期課程修士論文要旨集」に発表
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(596175810)財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 (40)
【Fターム(参考)】