説明

神経病理学的疾患の処置及び/又は予防のためのウロキナーゼ阻害剤の使用

本発明は、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の処置及び/又は予防のための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、筋萎縮性側索硬化症の処置におけるウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターの阻害剤の新規使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の処置及び/又は予防のための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、筋萎縮性側索硬化症の処置におけるウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターの阻害剤の新規使用を提供する。
【0002】
発明の背景
プラスミノゲン活性化系
血液循環からの血餅の除去及び細胞外マトリックスタンパク質のターンオーバーは、特殊化された酵素により促進される。この調節における極めて重要な一酵素は、プラスミンである。プラスミンは多くの機能を果たすが、しかし、その主要な役割は、フィブリン、すなわち血餅の構造上の足場を分解することにあることが一般的に認められている。セリンプロテアーゼ組織型プラスミノゲンアクチベーター(t−PA)及びウロキナーゼ(u−PA)は、その不活性前駆物質プラスミノゲンからプラスミンの生成を媒介する。特殊な生理学的セリンプロテアーゼ阻害剤、例えばプラスミノゲンアクチベーター阻害剤(PAI)−1及びPAI−2はそしてまた、t−PA及びu−PAのタンパク分解活性を調節する。u−PAのための特殊な細胞表面レセプターもまた存在し、このレセプターは、細胞周囲の環境中での局在的なタンパク分解活性を発生させる手段を提供するだけでなく、隣接した膜貫通タンパク質の助けを借りて、信号を細胞核に伝達することができ、かつその他の遺伝子の発現パターンに影響を及ぼすことができる。
【0003】
プラスミノゲン活性化系はまた、細胞運動、創傷治癒及びガンの転移拡大に積極的に関係する。最後に、さらに加えて、プラスミノゲン活性化系が中枢神経系中での細胞外マトリックスのターンオーバーにも寄与する証拠がある。
【0004】
脳中でのウロキナーゼ系の機能は、可塑性及び神経疾患及び神経性及び/又は膠性の誘導腫瘍を含めた、多様な正常の事象及び病的な事象に見出されるとも考えられる。故に、中枢神経系中で発現されるウロキナーゼ及びそのレセプターは、ニューロン細胞及び/又は(星状)膠細胞の移動、シナプス形成、リモデリング及び反応プロセスにおいて役割を果たすように思われる(Del Biglio他, Int J Dev Neurosci, 1999, 17, 387-99)。例えば、t−PAは、認知記憶において役割を果たすことが示されており、視覚皮質の逆の閉塞の可塑性(reverse occlusion plasticity)を媒介することができ、かつ神経変性を促進する。
マクロファージ及び小膠細胞は、多様な条件下にプラスミノゲンアクチベーターを分泌する。興味深いことに、小膠細胞及びマクロファージは、増殖し、かつ損傷された脳領域中に蓄積し、その際にもしかすると、他の効果に加えて、細胞外タンパク質分解の引き金となる。細胞外マトリックスタンパク質の破壊は、二次性脳損傷だけでなく血管形成も含む。さらに、脳中のuPAが食品消費の調節において役割を果たしうることが記載されている(Miskin及びMasos, J Gerontol. A Biol Sci Med Sci, 1997, 52, B118-24)。最近の発見は、学習関連可塑性におけるウロキナーゼ系の介在を示している(Meiri他, Proc Natl. Acad Sci, 1994, 91, 3196-3200)。
【0005】
脳腫瘍、例えば悪性神経膠腫に加えて、セリンプロテアーゼが有意な役割を果たしうる神経病理学的疾患に罹っている西洋人口の百分率が着実に増加している。
【0006】
セリンプロテアーゼは、神経筋接合部の可塑性において積極的な役割を果たすように思われ、故に神経性の機能及び機能障害に対する有数の主題アプローチである。プラスミノゲン系は、脳外傷及び炎症におけるタンパク分解プロセス中にも含まれており、かつ、一緒になって、神経変性疾患、例えば、例えばアルツハイマー病、クロイツフェルト−ヤコブ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病等の病因に寄与しうる。
【0007】
多発性硬化症(MS)病変においてプラスミノゲンアクチベーター系の成分は特性決定されており、かつ炎症細胞上に濃縮されると思われる。MS病変でのウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーターの増加が、脳実質中への細胞浸潤を促進しうるものであり、かつこうしてMS患者の中枢神経系中での炎症プロセスを支えうることが提案されている(Washington他, J Neurosci. Re 1998, 45, 392-399)。
【0008】
ALSは、運動ニューロンの喪失が増加することにより特徴付けられており、その病的変化は、顕著な筋肉衰弱をまねき、診断後2〜5年の経過で罹った患者の大部分を死に至らしめる。その病理学は、脊髄の前角細胞、大脳皮質中のベッツ細胞の喪失及び皮質脊髄路の変性として20世紀の初めに既に記載されていた(Holmes, 1909)。
【0009】
ゼラチナーゼMMP−2及びMMP−9の増加された発現は、ALS患者の中枢神経系及び脊髄中で示されており、その際に、MMP−9の最高濃度は、胸部及び腰部の切片中に見出される。対照群と比較して統計学的に有意な差異が、ALS患者の前頭及び後頭の皮質中で並びに脊髄全体で見出された(Lim他, J Neurochem. 1996,67, 251-9)。ALS患者の血漿は、MMP−2濃度の有意な増加を示す(Beuche他, Neuroreport, 2000, 11, 3419-22)。他方では、TIMP−1、すなわちMMP−2の重要な対抗調節剤(counter regulator)の濃度は、対照群と比較した場合に変わらない。これらのデータは、ALSにおけるMMP類の潜在的な病原性の役割の示唆を提供する。
【0010】
ALSの家族性の形で、突然変異は、Cu2+/Zn2+スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)遺伝子中で同定された(Deng他, Science, 1993, 261, 1047-51;Rosen他, Am J Med Genet, 1994, 51, 61-9)。さらに加えて、細胞を取り巻くマトリックス中での特異的な変質が、神経筋終板で発生されたタンパク質分解の結果であることが記載されていた(Maselli他, Muscle Nerve, 1993, 16,1193-203;Tsujihata他, Muscle Nerve, 1984, 7, 243-9)。
【0011】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、フリーラジカルによる損傷からの細胞の傑出した保護的役割を果たす酵素のファミリーを含む(Fridovich J Biol Chem, 1989, 264, 7761-4)。SOD1は、多数の真核細胞の細胞質並びに核中に見出され、長さが153個のアミノ酸の可溶性ホモ二量体である。この酵素の主な機能は、スーパーオキシドアニオンラジカル及び付随して合成される過酸化水素の解毒にある。生じる過酸化水素は、グルタチオンペルオキシダーゼ又はカタラーゼのいずれかの作用を通じて水に変換される(Halliwell J Neurochem, 1992, 59, 1609-23;Ann Neurol, 1992, 32, Suppl. S10-5)。
【0012】
ALS病因の調査における重要な進展は、家族性ALSと診断された患者の15〜20%におけるSOD1遺伝子中の突然変異の発見であった(Rosen他, Nature, 1993, 362, 59-62)。これらの突然変異は、SOD1が、前記酵素の生体内での減少した酵素活性及び減少した半減期を引き起こすようにする(Bowling他, 1993, J. Neurochem, 61, 2322-2325; Borchelt他 1994, Proc. Natl Acad Sci USA, 91 8292-8296)。しかしながら、最近の調査の結果は、突然変異した酵素の機能の喪失に近づいている。しかしながら、機能の全喪失に対する強い主張は、前記疾患の優性遺伝及び機能の喪失と前記疾患の臨床上の経過との相関を含む(Brown 1995, Cell, 80, 687-692)。SOD1遺伝子の欠いているトランスジェニックマウスは、短くなった寿命を有さず、かつ運動ニューロン関連疾患を発症しない(Reaume他, 1996, Nature Genet, 13, 43-47)。さらに、内因性マウスSODに比較して等量レベルの自然のままの突然変異していないヒトSOD1を発現するマウスも、運動ニューロン随伴疾患を発症しない。それとは異なり、より高いSOD1活性となるヒトSOD1遺伝子のG93A又はG37R突然変異を発現するトランスジェニックマウス、又は内因性レベルに匹敵しうるタンパク質及び活性濃度となるG85R SOD1突然変異を発現するマウスは、進行性の不全対麻痺及び顕著な筋肉萎縮を示す(Bruijn他, 1997, Neuron, 18, 327-338;Gurney他, 1994, Science, 264, 1772-1775;Wong他, 1995, Neuron, 14, 1105-1116)。
【0013】
基本的には2つの仮説が、SOD1突然変異によるALSの発症を説明することを試みている。1つの仮説によれば、突然変異したタンパク質の間違った折り畳みが、有毒な細胞内凝集体の沈殿及び形成をまねく。第二の仮説は、突然変異したSOD1が、変化した基質特異性を有し、これが有毒な副生成物の形成をまねくことを主張する。
【0014】
突然変異したSOD1は、酵素の活性部位での触媒銅イオンの変化された基質結合並びにその他の基質の結合の変化を示す。(Deng他, 1993, Science, 261, 1047-1051)。特に、過酸化水素及びペルオキシ亜硝酸イオンの基質結合が促進されると思われる(Beckman及びCrow, 1993, Biochem Soc Trans, 21, 330-334)。ペルオキシ亜硝酸イオンは、突然変異した酵素の触媒銅を経て高度に反応性のニトロニウム中間体に変換されうる。このニトロニウム中間体は再び、タンパク質誘導チロシン残基をニトロ化することができる。対照的に、亜鉛の結合は、顕著であるとはいえない(Crow他, 1997, J Neurochem, 69, 1936-1944;Lyons他, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 12240-12244)。この不十分な亜鉛結合は前記酵素を不安定にし、その際に、増加されたニトロニウムイオン産生をまねく。これは、ニューロフィラメント軽鎖のニトロ化をまねきうるものであり、これはそしてまたニューロフィラメントトリプレット形成を防止する(Crow他, 1997, J Neurochem, 69, 1936-1944)。この反応は、ALSにとって疾病特徴的である細胞骨格変化の一部の原因である(Sasaki他, 1990, J. Neurol. Sci, 97, 233-240;Rouleau他, 1996, Ann Neuro., 39, 128-131)。3−ニトロチロシンの濃度は、G37R又はG93A−突然変異を有するトランスジェニックマウス中で増加される(Bruijn他, 1997, Neuron, 18, 327-338;Ferrante他, 1997, Ann Neurol, 42, 326-334)。増加された3−ニトロチロシン濃度の検出は、その後、散発性及び家族性ALSの患者の脊髄中でも、記載されていた(Beal他, 1997, Ann Neurol. 42, 646-654)。
【0015】
突然変異したSOD1酵素と過酸化水素との間のさらに潜在的な有毒な相互作用が記載されている。突然変異したSOD1酵素が、自然のままの酵素よりも、過酸化水素とより容易に反応して、ヒドロキシルラジカルを生成することが試験管内で示されていた(Wiedau-Pazo他, 1996, Science, 271, 515-518;Yim他, 1997, J. Biol. Chem, 272, 8861-8863)。PC−12細胞中の突然変異したSOD1の発現は、フリー酸素ラジカルの増加された産生に随伴される。銅キレート化剤、Bcl−2、グルタチオン、ビタミンE及びカスパーゼ阻害剤を添加することにより、生じる細胞死を減少させることができる(Ghadge他, 1997, J Neurosci, 17, 8756-8766)。さらに加えて、突然変異したSOD1を有する培養細胞、しかし野生型SOD1を有するものではない細胞が、アポトーシスの速度の増加を引き起こすことが示されていた(Wiedau-Pazo他, 1996, Science, 271, 515-518;Ghadge他, 1997, J Neurosci, 17, 8756-8766)。酸素ラジカルの増加された産生及び酸素ラジカルを通じて増加されたタンパク質損傷は、SOD1のG93A−突然変異を有するトランスジェニックマウスにおいて証明されていた(Liu他, 1998, Ann. Neurol. 44, 763-770;Andrus他, 1998, J. Neurochem, 71, 2041-2048)。
【0016】
G93A−トランスジェニックマウスは、ALSのためのモデル系として使用される。G93A−マウスにおけるニューロン変性の時間経過は知られている。臨床上の症候の発症は、ほぼ90日齢での四肢の細かい振戦、引き続き麻痺及び続けて120−10日齢での死により特徴付けられている(Dal Canto及びGurney, 1994, 及び1995, Brain Res 676, 25-40;Chiu他, 1995, Molec. Cell. Neurosci. 6, 349-363)。最も早い病的変化は、脊髄の運動ニューロン中のミトコンドリア液胞化に現れ、これは、37日目から、最初に基部軸索中で、及び後で45日齢で細胞体中で観察されることができる(Chiu他, 1995, Molec. Cell. Neurosci. 6, 349-363)。70日齢でこれらの変化は、ほぼ全ての運動ニューロン中に見出されることができ、90日齢からの運動ニューロンの有意な喪失が続く。ミトコンドリア液胞化は直接的に、急速に進行する筋無力症、ひいては病態生理学的意義の相より先に起こる(Kong及びXu, 1997, Soc. Neurosci Abst. 23, 1913)。G93A SOD1突然変異体の発現は、試験管内でミトコンドリア膜電位の喪失並びにサイトゾルカルシウム濃度の増加を引き起こす(Carri他, 1997, FEBS Lett. 414, 365-368)。さらに、G93A−マウスは、軸索類球体(axonal spheroids)中でのニューロフィラメントの蓄積を発生させる(Tu他, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 3155-3160)。
【0017】
SOD機能障害とMMP発現との間の関連性は近頃論じられている。CuZn−SODの阻害は、皮膚線維芽細胞中でのMMP−1のmRNAレベルを有意に減少させた(Brenneisen他, 1997, Free. Rad. Biol. Med. 22, 515-524)。この研究は、この効果が、細胞内の過酸化水素の減少された産生と結び付いていることをさらに証明した。マンガン−SODを阻害することにより、MMP−1 mRNAの上昇を駆り立てる過酸化水素が見出され、これにより部分的に転写因子AP−1が媒介された(Wenk他, 1999, J. Biol. Chem. 274, 25869-25876)。マンガン−SODの過酸化水素産生は、多様なMMP類、例えばMMP−1、MMP−3及びMMP−7の活性化と相互に関係していると考えられる(Ranganathan 他, 2001, )。さらに過酸化水素は、試験管内でのヒト内皮細胞中のMMP類の発現を刺激する(Belkhiri他, 1997, Lab. Invest. 77, 533-539)。フリーラジカルの産生の増加は、SOD1−突然変異の結果であると思われ、かつ増加されたMMP−発現をまねきうるものであり、これはそしてまた、ニューロン細胞死をまねきうる。故に、フリー酸素ラジカルの産生とMMP類の発現との間の密接な関係が、一方では結論が下されうるのに対し、他方ではMMP−発現は、CuZnSODの突然変異により開始されうる。
【0018】
筋萎縮性側索硬化症における最初の治療アプローチ及び待期的処置を通じて改善される患者ケアにもかかわらず、この疾患の予後は依然として悪い。一般的に、罹った患者は診断後2年以内に死亡する。主な原因の1つは、進行性筋無力症であり、場合により補助呼吸筋の麻痺をまねく。基礎をなす複雑な病態生理学的機構は、部分的に知られているに過ぎない。現在、ヒトにおけるSOD1−突然変異の役割を分析するか、又は疾患進行における定義された時点でヒト臓器について広範にわたる病理組織的検査を実施する手段は存在しない。興味深いことに、トランスジェニックマウスは、ヒト疾患に見出されるのに匹敵しうる病態生理学的な変化及び臨床上の所見、例えば進行性の不全対麻痺及び筋無力症を示す。
【0019】
ALSの有病数は、毎年100 000人中1.5〜2人の発生率で100 000人中約6〜8人であり、増加する傾向を有する。最も多くの場合は、40〜70歳で診断され、より高い年齢で発生率は増加する。前記疾患は一般的に急速に進行し、かつ患者は診断の2〜5年以内に死亡する。前記疾患の最終段階は、躯幹及び呼吸筋系が侵されることにより特徴付けられており、その際に、患者は、しばしば嚥下性肺炎により随伴される呼吸機能不全で死亡する。
【0020】
ALSの正確な原因は知られておらず、かつ多数の仮説が、神経伝達物質ハウスキーピングにおける免疫学的干渉、慢性中毒、代謝脱線、ウイルス感染、神経栄養因子欠乏症及び撹乱されたDNA修復機構を介して原因を説明することを試みている。
【0021】
殆ど答えがでていないのは、示唆される病原性機構に対する運動ニューロンの脆弱性に関する疑問である。おそらく、活性化された小膠細胞又はニューロンを通じたMMP類の発現が、アポトーシス細胞死の発生において役割を果たしうる。
【0022】
ただ一つ知られた治療アプローチは、リルゾール(riluzole)、すなわち、他にグルタマートの分泌を減少させる物質での処置を含む。これらの処置は、症候を減少させ、かつ物理的な能力障害の進行を遅らせることが示されている。これらの処置は約3ヶ月の延命をもたらす。
【0023】
ALSの病因におけるプラスミノゲン系の役割は、シナプス変性の概念を解明するために、より詳細に研究された。ALSは、前記の通り、脊髄中の運動ニューロンに関して破局的波及(catastrophic repercussions)を伴いシナプス結合を撹乱する細胞外に作用するプロテアーゼのカスケードを活性化する刺激又は薬剤によって引き起こされる疾患である。動物研究及び細胞培養実験は、ALS又は除神経の他の形に生じる撹乱を予防するために生理学的阻害剤により慎重に適合された、神経筋接合部でのリモデリングの重要な調節剤でありうるセリンプロテアーゼの介在に向けられていた。これは、中枢神経系中でのその他の類似のシナプス変性も意味しうる。
【0024】
ウロキナーゼの意外な役割は、この衰弱させる疾患中で見出された。これらの発見は、ウロキナーゼ依存性の神経病理的疾患及び/又は神経変性疾患の患者における予防的又は治療上の戦略にとって重要な結果を有しうる。
【0025】
発明の目的
本発明は、ウロキナーゼ依存性の神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の結果に罹っている患者の健康を改善するための治療を提供することを目的とするものである。特に本発明は、そのような神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患に罹っている患者を処置するための、医薬の製造のためのウロキナーゼ阻害剤の使用を提供することを目的とするものである。本発明の別の目的は、挙げられた処置における使用のための薬剤学的組成物を提供することであり、かつ本発明のさらに別の目的は、そのようなウロキナーゼ依存性の神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患に罹っている患者を処置する方法を提供することである。
【0026】
発明の詳細な説明
次の例に示されるように、本発明は、神経変性疾患ALSへのウロキナーゼ阻害剤の意外な治療活性を明らかにする。本発明は、ウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーターが、神経変性疾患において固有の生物学的活性を有すると思われるという観察を提示する。そのような活性を特異的及び/又は選択的なウロキナーゼ阻害剤で遮断することによって、肯定的な治療効果が発生されうる。
【0027】
幾つかの刊行物には、本発明における使用に適しているウロキナーゼ阻害剤が記載されている。好ましい化合物及び薬剤学的組成物は、米国特許第5,340,833号明細書、米国特許第5,550,213号明細書、米国特許第6,207,701号明細書、米国特許第6,093,731号明細書、米国特許第5,952,307号明細書、スイス国特許(CH)第689611号明細書、国際公開(WO)第00/06154号パンフレット、国際公開(WO)第00/05245号パンフレット、国際公開(WO)第00/05214号パンフレット、国際公開(WO)第01/14324号パンフレット、国際公開(WO)第99/40088号パンフレット、国際公開(WO)第99/20608号パンフレット、国際公開(WO)第99/05096号パンフレット、国際公開(WO)第98/11089号パンフレット、国際公開(WO)第01/44172号パンフレット、欧州特許(EP)第1044967号明細書、欧州特許(EP)第568289号明細書、国際公開(WO)第00/04954号パンフレット、国際公開(WO)第03/103644号パンフレット、国際公開(WO)第00/17158号パンフレット、国際公開(WO)第02/74756号パンフレット、国際公開(WO)第01/14324号パンフレット、国際公開(WO)第01/70204号パンフレット、国際公開(WO)第03/053999号パンフレット、国際公開(WO)第98/46632号パンフレット、米国特許(US)第6,586,405号明細書、欧州特許(EP-A)第1 182 207号明細書、国際公開(WO)第02/14349号パンフレット、国際公開(WO)第00/05245号パンフレット、国際公開(WO)第03/048127号パンフレット、国際公開(WO)第03/076391号パンフレット、国際公開(WO)第01/96286号パンフレット;国際公開(WO)第2004/103984号パンフレットに記載されており、それらの開示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0028】
好ましいウロキナーゼ阻害剤は、米国特許出願公開(US)第2004/0266766号明細書に記載されており、その開示は参照により本明細書に取り込まれ、すなわち、一般式I
【化1】

[式中、
Arは、芳香族環系又はヘテロ芳香族環系を表し、
Eは、
【化2】

を表すか、
又はAr及びEは一緒になって、
【化3】

{ここで、Zは、O、NH又はC=Oであってよく、かつX4は、C=O、NH又はCH2であってよく、かつWは、N、CR3又はCR6であってよく、かつX5は、CH、CR、CR6又はNであってよい}で示される残基を形成し、
Bは、−SO2−、−CR32−、−NR3−又は−NH−を表し、
1は、NR134、OR3、SR3、COOR3、CONR34又はCOR5を表し、
1は、H、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5を表し、
2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表し、
3は、H又は任意の有機残基を表し、
13は、一般式(IIa)又は(IIb)の基を表し、
【化4】

2は、NH、NR4、O又はSを表し、
3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表し、
Yは、C(R82、NH又はNR3を表し、
4は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ−アルキル、カルボキシ−アルケニル、カルボキシル−アルキニル、カルボキシ−アリール、カルボキシ−ヘテロアリール、−(CO)NR34又は−COO−R3を表し、ここで、前記のアルキル、アリール及びヘテロアリール残基は、場合により置換されていてよく、
6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFであり、
7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、
8は、その都度独立して、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル残基又は/及び置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
9は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表し、
10は、残基(C(R12o−X35を表し、
11は、H、カルボニル残基−CO−R12、カルボンアミド残基−CONR122、オキシカルボニル残基−COO−R12又は特に好ましくはスルホニル残基−SO212を表し、
12は、H、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は置換又は非置換の環式アルキル残基又は置換又は非置換のアラルキル、アルキルアリール又はヘテロアラルキル残基又は置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
15は、C=X2、NR3又はCR32を表し、
nは、0〜2の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
oは、1〜5の整数であり、
pは、1〜5の整数である]
で示される化合物又はこれらの化合物の塩である。
【0029】
より好ましいウロキナーゼ阻害剤は、一般式III
【化5】

[式中、
Arは、芳香族環系又はヘテロ芳香族環系を表し、
1は、NR134、OR3、SR3、COOR3、CONR34又はCOR5を表し、
1は、H、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5を表し、
2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表し、
3は、H又は任意の有機残基を表し、
13は、一般式(IVa)又は(IVb)の基を表し、
【化6】

2は、NH、NR4、O又はSを表し、
3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表し、
Yは、C(R82、NH又はNR3を表し、
4は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ−アルキル、カルボキシ−アルケニル、カルボキシル−アルキニル、カルボキシ−アリール、カルボキシ−ヘテロアリール、−(CO)NR34又は−COO−R3を表し、ここで、前記のアルキル、アリール及びヘテロアリール残基は、場合により置換されていてよく、
6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFであり、
7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、
8は、その都度独立して、H、ハロゲン、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又は/及び(CH2m−OHを表し、
9は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表し、
10は、残基(C(R12o−X35を表し、
11は、H、カルボニル残基−CO−R12、オキシカルボニル残基−COO−R12又は特に好ましくはスルホニル残基−SO212を表し、
12は、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は置換又は非置換の環式アルキル残基又は置換又は非置換のアラルキル、アルキルアリール又はヘテロアラルキル残基又は置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
nは、0〜2の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
oは、1〜5の整数である]
で示される化合物又はこれらの化合物の塩である。
【0030】
前記化合物は、塩として、好ましくは生理学的に受け入れることができる酸性塩として、例えば鉱酸の塩として、特に好ましくは塩酸塩として、又は適した有機酸の塩として存在していてよい。前記グアニジニウム基は、生理学的条件下に好ましくは開裂されることができる保護官能基を場合により有していてよい。前記化合物は、光学的に純粋な化合物として又は鏡像体又は/及びジアステレオ異性体の混合物として存在していてよい。
【0031】
環系Arは好ましくは、炭素原子4〜30個及び特に5〜10個を有する。一般式(I)又は(III)の化合物中で、Arは好ましくは、1つの環を有する芳香族環系又はヘテロ芳香族環系である。Ar及びEが一緒になって二環式系を形成する化合物も好ましい。ヘテロ芳香族系は好ましくは、1個又はそれ以上のO、S又は/及びN原子を有する。好ましい芳香族環系は、ベンゼン環であり;好ましいヘテロ芳香族環系は、特に2位に窒素を有する、ピリジニル、ピリミジニル又はピラジニルである。好ましい二環式の環系は、Z又はW位に窒素又は酸素を有する環系である。Arは、最も好ましくはベンゼン環である。
【0032】
次の構造要素を有する化合物が特に好ましい
【化7】

【0033】
一般式(I)又は(III)の化合物中で、環系Ar中で置換基B、例えばCHX11及びE、例えばNHC(NH)NH2(グアニジノ)又はNH2CNH(アミジノ)は、相互に対して、好ましくはメタ又はパラ位に及び特に好ましくはパラ位にある。さらに、Arは、水素とは異なる、1つ又はそれ以上のさらに付加的な置換基R2を有していてよい。置換基R2の数は、好ましくは0、1、2又は3、特に好ましくは0又は1及び最も好ましくは0である。R2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表してよく、この場合に、R6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFである。R2の好ましい例は、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、CH3、CF3、OH、OCH3又はOCF3である。
【0034】
本発明による化合物は、グアニジノ基を有し、かつ高い選択性により特徴付けられている。この理由のために、Eは、しばしば好ましくは−NH−C(NH)−NH2である。
【0035】
式(I)中の置換基B又は式(III)中の−CHX11は、阻害剤活性にとって重要である。Bは好ましくは、−SO2−、−NR3−、−NH−又は/及び−CR32−、特に−CR12−から選択される。
【0036】
1は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5であってよい。R1は、最も好ましくはHである。
【0037】
他に述べられていない場合には、本明細書で使用される通りのアルキル残基は、好ましくは直鎖又は分枝鎖状のC1〜C30アルキル基、好ましくはC1〜C10アルキル基、特にC1〜C4アルキル基又はC3〜C30シクロアルキル基、特にC3〜C8シクロアルキル基であり、これらは、例えば、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、スルホニル、ニトロ、シアノ、オキソ又は/及びハロゲンで並びにアリール又はヘテロアリール残基で置換されていてよい。他に述べられていない場合には、アルケニル及びアルキニル残基は、本明細書中で、既に述べた通り場合により置換されていてよい、好ましくはC2〜C10基、特にC2〜C4基である。アリール及びヘテロアリール残基は、例えば、C1〜C6アルキル、C1〜C3アルコキシ−ヒドロキシル、カルボキシル、スルホニル、ニトロ、シアノ又は/及びオキソで置換されていてよい。アリール及びヘテロアリール残基は好ましくは、炭素原子3〜30個、特に4〜20個、好ましくは5〜15個及び最も好ましくは6〜10個を有する。
【0038】
1は好ましくは、NR134を表す。
【0039】
3はH又は任意の有機残基を表してよい。有機残基は、特に、炭素原子1〜30個を有する残基である。この残基は、飽和又は不飽和、線状、分枝鎖状又は環状であってよく、かつ場合により置換基を有していてよい。好ましい一実施態様において、R3は、特に基B=−CR32−中でHである。
【0040】
特に好ましい一実施態様において、Bは、基−SO2−を表すので、これらはスルホ化合物である。このSO2基は、CH2基とアイソステリック(isosteric)である。CH2基をアイソステリックなSO2基により置換することによって、阻害活性をさらに改善するウロキナーゼのGly 193、Asp 194及びSer 195のNH基へのさらに付加的な水素結合の形成を可能にする(図1参照)。
【0041】
13は、式(IIa)又は(IIb)の基を表す
【化8】

【0042】
式(IIa)中で、R15は、C=X2又はCR3を表し、ここで、X2は、NH、NR4、O又はSを表し、かつX3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表す。Yは、C(R82、NH又はNR3である。R4はそしてまた、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表す。R7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、ここで、R9はそしてまた、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表す。
【0043】
13は好ましくは、式(IIb)の基である。
【0044】
さらに加えて、R13は、特に式(III)の化合物中で、式(VIa)又は(VIb)の基を好ましくは表す。
【0045】
【化9】

【0046】
式(IVa)中で、X2は好ましくは、NH、NR4、O又はS、特にOを表し、かつX3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表す。Yは、C(R82、NH又はNR3を表す。R4はそしてまた、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表す。R7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、ここで、R9はそしてまた、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表す。式(III)の化合物中で、R13は好ましくは、式(IVb)の基を表す。
【0047】
8は、好ましくは水素又は(CH2m−OH及び特に好ましくはHである。R10は、残基(CRR12o−X35を表す。この場合にR1は、特に好ましくは水素であり、X3は特に好ましくは酸素であり、R5は特に好ましくは水素であり、かつoは特に好ましくは1である。
【0048】
11は特に好ましくは、スルホニル残基−SO2−R12を表し、ここで、R12は、好ましくはアラルキル残基及び特にベンジル残基である。特に好ましい実施態様において、ベンジル残基は、メタ及び/又はパラ位で、ハロゲン及び最も好ましくはClで置換されている。好ましい別の実施態様において、R12は、アダマンチル又はカンファー残基である。
【0049】
15は、特に好ましくは、カルボニル残基−CO、アミン残基−NR3−又は/及びアルキル残基−CR32、好ましくは−CR12−及び最も好ましくは−CH2−を表す。R15がCH2を表す化合物は、特に単純な合成により特徴付けられている。この位置は、ウロキナーゼとの水素結合の形成に介在されないので、CH2基は、カルボニルの代わりに、阻害活性の喪失に随伴されることなく、存在することができる。
【0050】
特に残基R10のための、構成要素としての非天然アミノ酸を含有する化合物も好ましい。さらに、例えばY=NH及びn=1である基NH−NHを有するアザ化合物が好ましい(式IIbの化合物)。
【0051】
特に好ましい他の化合物は、ビスルホンアミド、すなわち、要素−SO2−NHを2個有する化合物である。R13が式IIbの基を表し、かつYが−C(R82−を表し、ここでR8は一方が、Hを表し、かつもう一方が、芳香族基及び特に−CH2−CH2−C65を有する残基を表す化合物も好ましい。
【0052】
1が、
【化10】

を表す化合物も好ましい。
【0053】
次の化合物が最も好ましい:N−[2−(4−グアニジノ−ベンゼンスルホニル−アミノ)−エチル]−3−ヒドロキシ−2−フェニルメタンスルホニルアミノプロピオンアミド塩酸塩、Bz−SO2−(D)−Ser−(アザ−Gly)−4−グアニジノ−ベンジルアミド塩酸塩又はN−(4−グアニジノ−ベンジル)−2−(3−ヒドロキシ−2−フェニルメタン−スルホニルアミノプロピオニル−アミノ)−4−フェニル−ブチルアミド塩酸塩及びN−[(4−グアニジノ−ベンジルカルバモイル)−メチル]−3−ヒドロキシ−2−フェニルメタンスルホニルアミノプロピオンアミド(図2も参照:WX−508)。さらに好ましい化合物は、3−ニトロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩(WXC−316)、3−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩(WXC−318)、4−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩(WXC−340)、ベンジルスルホニル−(D)−Ser−Ala−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩(WX−532)、4−クロロベンジルスルホニル−(D)−Ser−N−Me−Ala−(4−グアニジノベンジル)アミド(WX−582)又はベンジルスルホニル−(D)−Ser−N−Me−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド(WX−538)である。
【0054】
特に好ましい化合物は、4−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド、又はその薬剤学的に受け入れることができる塩、例えば塩酸塩(WX−C340)である。
【0055】
故に、第一の態様において、本発明は、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患、特にALS、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病及び細菌性髄膜炎の処置のための薬剤学的組成物の製造におけるウロキナーゼ阻害剤の使用に関する。
【0056】
特に、本発明は、ウロキナーゼ依存性の神経病理学及び/又は神経変性に随伴される疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのウロキナーゼ阻害剤の使用を提供する。
【0057】
"ウロキナーゼ阻害剤"という用語はまた、化合物の光学異性体、光学異性体の混合物、薬剤学的に受け入れることができる塩、溶媒和物又は誘導体、例えば薬剤学的に受け入れることができる誘導体、例えばエステル又はアミドも包含する。さらに、前記用語は、それ自体がウロキナーゼ阻害剤ではないが、投与の際に活性なウロキナーゼ阻害剤に変換されるプロドラッグを包含する。
【0058】
ウロキナーゼを阻害する活性は、例えば、米国特許出願公開(US)第2004/0266766号明細書に記載された通りに決定されることができる。
【0059】
ウロキナーゼ阻害剤は、単独で投与されてよく、又は好ましくは薬剤学的組成物として処方されてよい。さらに、前記活性化合物は、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の処置に使用される他の知られた薬剤学的化合物との組合せで投与されることができる。例えば、ウロキナーゼ阻害剤は、スーパーオキシドジスムターゼ/カタラーゼ擬態(catalase mimetics)及び/又はその他の合成又は非合成の触媒スカベンジャー、例えば化合物EUK−8、EUK−134、EUK−189、EUK−207との組合せで、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の処置のために投与されることもできる。
【0060】
薬剤学的製剤は、ヒト及び動物に、局所に、経口に、直腸に又は非経口的に、例えば静脈内に、皮下に、筋肉内に、腹膜内に、舌下に、鼻に又は/及び吸入により、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ペレット、坐剤、溶液、乳濁液、懸濁剤、リポソーム、吸入スプレー又は経皮系、例えばプラスターの形で、投与されることができる。
【0061】
本発明は、一般式(I)の少なくとも1つの化合物の有効量の投与により、生きている生物、特にヒトにおけるウロキナーゼの阻害方法を提供する。前記化合物の用量は、通常、1日あたり0.01〜100mg/kg体重の範囲内である。処置の期間は、疾患の重度に依存し、かつ単一投与から、場合により間隔をあけて繰り返されてよい数週間又は数ヶ月すら持続する処置までにわたっていてよい。
【0062】
図の説明
図1: 1A−1Dは、抗uPAR抗体での免疫組織化学的な染色後のALS患者の脊髄切片中のウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーターレセプター(uPAR)の発現を示す。矢印は、染色されたニューロンを強調する。染色は、細胞膜中でより顕著であるように思われる。A)及びB)は、対照事例の脊髄の切片を示す。免疫反応性は、脊髄ニューロン中に見られない。C)及びD)には、ALS事例の脊髄切片が見られる。これらの場合に、uPAR抗体は、特異的なニューロンを弱く標識付けした。
【0063】
図2a: G93A SOD1突然変異体マウスの脊髄中のuPAR発現のPCR分析。略符号:MW=平均;STD=標準偏差。uPARのレベルは、トランスジェニックALSマウス中の疾患進行の間に増加する。
【0064】
図2b及び2c: 齢の異なる時間の間のG93Aマウスの脊髄中のuPA−及びuPAR−mRNAの発現プロフィール(d=日、最終=最終段階、対照=120日齢の非トランスジェニック同腹児)。90日齢で、uPA−及びuPAR−mRNAの有意に増加された発現が、対照群と比較してG93Aマウスの脊髄中に見出すことができる。*p<0,05;***p<0,001。
【0065】
図3a: G93A SOD1突然変異体マウスの脊髄中のウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(uPA)発現のPCR分析。
【0066】
図3b及び3c: 脊髄ホモジェネートのザイモグラフィー(b)及び光学バンド密度(c)の代表例。uPA依存性のプラスミノゲン活性化は、対照群と比較してG93Aマウス中で有意に増加した。***p<0,001。
【0067】
図4: uPA阻害剤WX−C340でのG93A突然変異体マウスの処置の結果。
【0068】
カプラン−マイヤー(Kaplan-Meyer)分析、G93A−ALS−モデル:毎日腹膜内のWX−C340 10mg/kgで処置された動物(処置開始日30、n=18)との対照群動物(N=42)の生存の比較。
【0069】
実施例
1.生存分析
FALSマウス(G93A)は、約90日齢で行動症候を示し始めるのに対し、G85Rマウスは、約8ヶ月齢で症候を発症する。初期の症候は、高頻度の安静時振戦である。これは、歩行異常及び協同を欠いた運動に進行する。後で、マウスは後肢の麻痺を示し始め、その際に場合により前肢の麻痺及び最終的には完全麻痺に進行する。動物を、それらの側部で押して10秒以内にそれらが寝返りをうつことができなかった時に殺した。この時点が、死亡の時とみなされる。
【0070】
2.行動試験−回転棒
マウスに、回転棒装置(Columbus Instruments、Columbus、OH)をよく知るようにするために試験前に2日間与えた。試験を初期設定し、その際に前記動物は1rpmで回転する棒上にいるように努力する。次の試行において、速さを、前記動物が落ちるまで10秒おきに1rpmだけ増加させた。各マウスは3回の試行を有した。マウスが落ちた時の棒回転の速さを、この課題の能力の尺度として使用した。動物を、それらが課題を果たすことができなくなるまで1日おきに試験した。
【0071】
3.ザイモグラフィー
カゼイン分解(uPA)活性を、ザイモグラフィーによりトランスジェニックマウスの組織標本中で測定した。カゼイン分解活性を有するプロテイナーゼを、カゼイン1mg/mlを含有する15%ポリアクリルアミドゲル(Sigma)中でSDS−PAGEにより同定した。
【0072】
試料16μl(等しいタンパク質濃度を有する)を、62.5mMトリス−HCL、2% SDS、25%グリセリン、0.01%ブロモフェノールブルーを含有する試料緩衝液4μlで希釈し、4℃で1h30min、25mAで電気泳動にかけた。電気泳動後に、ゲルを、2%Triton X-100(VWR Scientific products、West Chester、PA)中で30min、2回洗浄し、恒温保持緩衝液(50mMトリス塩基、5mM CaCl2、1μM ZnCl2、0.01%アジ化ナトリウム、pH 7.5)中で37℃で20h恒温保持した。恒温保持後に、ゲルを、20%トリクロロ酢酸(Sigma T-4885)中で30min固定し、0.5%クーマシーブリリアントブルー(Sigma B-7920)中で90min染色した。染色後に、ゲルを、エタノール35%及び酢酸10%中で60min脱色した。ゼラチン分解活性は、青色の背景上でクリアなバンドとして目に見えた。標準タンパク質マーカー(BioRad)を、ゲル上のカゼイン分解バンドを同定するのに使用した。
【0073】
4.RT−PCR
全RNAを、2段階プロトコルを用いて、組織試料から抽出した。凍結組織を粉末化し、RNAを、第一段階において、Chomczynski及びSacchiによるグアニジニウムチオシアン化物法(Chomczynski及びSacchi、1987)を用いることにより調製した。イソプロパノールでの沈殿後に、RNAを、RNeasy mini kit(Qiagen、Hilden、独国)からの溶解緩衝液(lysis buffer)中に再溶解させ、製造者の指示書に従って調製した。全RNA(15μg)を、ホルムアルデヒド2.2mol/Lを含有する1.4%変性アガロースゲル中で分離し、一晩でキャピラリーブロットによりDuralton紫外膜(Stratagene、La Jolla、CA)上へ移し、紫外架橋剤(Stratagen)で架橋した。前記膜を、DNAプローブと共にランダムプライムド32P−標識cDNAで、68℃でQuick Hyb(Stratagene)中で1時間ハイブリダイズした。
【0074】
前記膜を、2×標準食塩クエン酸緩衝液、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中で60℃で15min、2回及び最後に0.1%標準食塩クエン酸緩衝液及び0.1%SDS中で30min、洗浄し、増感紙を有するBiomax MRフィルム(Kodak)に−80℃で18〜48h露光した。mRNAレベルを、Fluor-S Multimager system(BioRad)及びQuantity one version 4.1.0. (BioRad)を用いて、比重分析により定量した。GAPDHを、ローディングコントロールとして使用する。
【0075】
全細胞RNAを、前記の通り抽出した。逆転写系(Promega、Madison、WI)を、製造者の指示書に従って最初のcDNA鎖を生成するために使用した。その後に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、逆転写反応及びTaqポリメラーゼ(高適合度;Boehringer Mannheim、Germany)2μlを用いて、次の熱サイクルパラメーターで実施した:94℃で4分;94℃で45秒、55℃で1min及び72℃で1minの31サイクル;及び72℃で7min。
【0076】
GAPDHプライマーを、ローディングコントロールとして使用した。ネガティブコントロールとして、逆転写−PCRを、RNAの不在で実施した。増幅産物を、1.5%アガロースゲル中で分離した。
【0077】
5.ALSの患者及び対照群からの脊髄組織中のuPARの免疫組織化学
ALSの患者及び対照群中でのuPARの解剖学的分布を評価するために、免疫組織化学を、抗uPAR抗体IIIF10を用いて実施した。臨床上及び神経病理学的に定義されたALS患者の5つの神経病理学的に確認された事例及び3つの対照患者からのヒト脳組織を研究した。顕微鏡検査を、多様な皮質領域(前頭、頭頂、海馬)、脳幹及び胸髄及び腰部脊髄標本から取り出したホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロックからの10μm切片を用いて実施した。前記切片を、20%正常ヤギ血清(Vector、Burlingham、CA、USA)を含有する遮断溶液と共に恒温保持し、推奨される希釈でuPAR抗体と反応させた。免疫組織化学を、アビジン−ビオチン技術(ベクター)を用いて実施し、核をヘマトキシリン/エオシンで対比染色した。ネガティブコントロールとして、切片を、一次抗体なしで恒温保持した。
【0078】
6.uPA阻害剤WX−C340での処置
FALSマウスへのWX−C340 10mgの毎日の腹膜内投与は、図4に示されている通り、疾患(前脚の麻痺の発症)の進行を遅延し、かつ動物の生存を有意に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】抗uPAR抗体での免疫組織化学的な染色後のALS患者の脊髄切片中のウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーターレセプター(uPAR)の発現を示す図。
【図2a】G93A SOD1突然変異体マウスの脊髄中のuPAR発現のPCR分析を示す図。
【図2b】齢の異なる時間の間のG93Aマウスの脊髄中のuPA−及びuPAR−mRNAの発現プロフィールを示す図。
【図2c】齢の異なる時間の間のG93Aマウスの脊髄中のuPA−及びuPAR−mRNAの発現プロフィールを示す図。
【図3a】G93A SOD1突然変異体マウスの脊髄中のウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(uPA)発現のPCR分析を示す図。
【図3b】脊髄ホモジェネートのザイモグラフィーの代表例を示す図。
【図3c】脊髄ホモジェネートの光学バンド密度の代表例を示す図。
【図4】uPA阻害剤WX−C340でのG93A突然変異体マウスの処置の結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤学的組成物の製造における、一般式I
【化1】

[式中、
Arは、芳香族環系又はヘテロ芳香族環系を表し、
Eは、
【化2】

を表すか、
又はAr及びEは一緒になって、
【化3】

{ここで、Zは、O、NH又はC=Oであってよく、かつX4は、C=O、NH又はCH2であってよく、かつWは、N、CR3又はCR6であってよく、かつX5は、CH、CR、CR6又はNであってよい}で示される残基を形成し、
Bは、−SO2−、−CR32−、−NR3−又は−NH−を表し、
1は、NR134、OR3、SR3、COOR3、CONR34又はCOR5を表し、
1は、H、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5を表し、
2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表し、
3は、H又は任意の有機残基を表し、
13は、一般式(IIa)又は(IIb)の基を表し、
【化4】

2は、NH、NR4、O又はSを表し、
3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表し、
Yは、C(R82、NH又はNR3を表し、
4は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ−アルキル、カルボキシ−アルケニル、カルボキシル−アルキニル、カルボキシ−アリール、カルボキシ−ヘテロアリール、−(CO)NR34又は−COO−R3を表し、ここで、前記のアルキル、アリール及びヘテロアリール残基は、場合により置換されていてよく、
6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFであり、
7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、
8は、その都度独立して、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル残基又は/及び置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
9は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表し、
10は、残基(C(R12o−X35を表し、
11は、H、カルボニル残基−CO−R12、カルボンアミド残基−CONR122、オキシカルボニル残基−COO−R12又は特に好ましくはスルホニル残基−SO212を表し、
12は、H、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は置換又は非置換の環式アルキル残基又は置換又は非置換のアラルキル、アルキルアリール又はヘテロアラルキル残基又は置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
15は、C=X2、NR3又はCR32を表し、
nは、0〜2の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
oは、1〜5の整数であり、
pは、1〜5の整数である]
で示されるウロキナーゼ阻害剤又はこれらの化合物の塩の使用。
【請求項2】
神経変性疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ウロキナーゼ阻害剤が、4−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド又はその薬剤学的に受け入れることができる塩、例えば塩酸塩である、請求項1及び2のいずれか1項記載の使用。
【請求項4】
神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患におけるウロキナーゼの活性を阻害する方法であって、一般式I
【化5】

[式中、
Arは、芳香族環系又はヘテロ芳香族環系を表し、
Eは、
【化6】

を表すか、
又はAr及びEは一緒になって、
【化7】

{ここで、Zは、O、NH又はC=Oであってよく、かつX4は、C=O、NH又はCH2であってよく、かつWは、N、CR3又はCR6であってよく、かつX5は、CH、CR、CR6又はNであってよい}で示される残基を形成し、
Bは、−SO2−、−CR32−、−NR3−又は−NH−を表し、
1は、NR134、OR3、SR3、COOR3、CONR34又はCOR5を表し、
1は、H、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5を表し、
2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表し、
3は、H又は任意の有機残基を表し、
13は、一般式(IIa)又は(IIb)の基を表し、
【化8】

2は、NH、NR4、O又はSを表し、
3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表し、
Yは、C(R82、NH又はNR3を表し、
4は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ−アルキル、カルボキシ−アルケニル、カルボキシル−アルキニル、カルボキシ−アリール、カルボキシ−ヘテロアリール、−(CO)NR34又は−COO−R3を表し、ここで、前記のアルキル、アリール及びヘテロアリール残基は、場合により置換されていてよく、
6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFであり、
7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、
8は、その都度独立して、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル残基又は/及び置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
9は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表し、
10は、残基(C(R12o−X35を表し、
11は、H、カルボニル残基−CO−R12、カルボンアミド残基−CONR122、オキシカルボニル残基−COO−R12又は特に好ましくはスルホニル残基−SO212を表し、
12は、H、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は置換又は非置換の環式アルキル残基又は置換又は非置換のアラルキル、アルキルアリール又はヘテロアラルキル残基又は置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
15は、C=X2、NR3又はCR32を表し、
nは、0〜2の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
oは、1〜5の整数であり、
pは、1〜5の整数である]
で示されるウロキナーゼ阻害剤又はこれらの化合物の塩の阻害に十分な量を、それを必要とする対象に投与することを特徴とする、神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患におけるウロキナーゼの活性の阻害方法。
【請求項5】
対象がヒトである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ウロキナーゼ阻害剤が4−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩又は前記化合物の他の任意の塩である、請求項4又は5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤学的組成物であって、活性成分として、一般式I
【化9】

[式中、
Arは、芳香族環系又はヘテロ芳香族環系を表し、
Eは、
【化10】

を表すか、
又はAr及びEは一緒になって、
【化11】

{ここで、Zは、O、NH又はC=Oであってよく、かつX4は、C=O、NH又はCH2であってよく、かつWは、N、CR3又はCR6であってよく、かつX5は、CH、CR、CR6又はNであってよい}で示される残基を形成し、
Bは、−SO2−、−CR32−、−NR3−又は−NH−を表し、
1は、NR134、OR3、SR3、COOR3、CONR34又はCOR5を表し、
1は、H、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール残基又はCOOR3、CONR34又はCOR5を表し、
2は、ハロゲン、C(R63、C2(R65、OC(R63又はOC2(R65を表し、
3は、H又は任意の有機残基を表し、
13は、一般式(IIa)又は(IIb)の基を表し、
【化12】

2は、NH、NR4、O又はSを表し、
3は、NH、NR4、O、S、CO、COO、CONH又はCONR4を表し、
Yは、C(R82、NH又はNR3を表し、
4は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニル残基を表し、
5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ−アルキル、カルボキシ−アルケニル、カルボキシル−アルキニル、カルボキシ−アリール、カルボキシ−ヘテロアリール、−(CO)NR34又は−COO−R3を表し、ここで、前記のアルキル、アリール及びヘテロアリール残基は、場合により置換されていてよく、
6は、その都度独立して、H、又はハロゲン及び特にFであり、
7は、H、又は置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は−COR9を表し、
8は、その都度独立して、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル残基又は/及び置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
9は、H、又は分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は/及びヘテロアリール残基を表し、
10は、残基(C(R12o−X35を表し、
11は、H、カルボニル残基−CO−R12、カルボンアミド残基−CONR122、オキシカルボニル残基−COO−R12又は特に好ましくはスルホニル残基−SO212を表し、
12は、H、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール残基又は置換又は非置換の環式アルキル残基又は置換又は非置換のアラルキル、アルキルアリール又はヘテロアラルキル残基又は置換又は非置換の二環式又は多環式の残基を表し、
15は、C=X2、NR3又はCR32を表し、
nは、0〜2の整数であり、
mは、0〜5の整数であり、
oは、1〜5の整数であり、
pは、1〜5の整数である]
で示されるウロキナーゼ阻害剤又はこれらの化合物の塩を含有し、かつ場合によりさらに薬剤学的に受け入れることができる担持剤、希釈剤、補助剤及び/又は付形剤を含有することを特徴とする、ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤学的組成物。
【請求項9】
前記組成物が、活性成分として治療上有効な量のウロキナーゼ阻害剤4−クロロベンジル−スルホニル−(D)−Ser−Gly−(4−グアニジノベンジル)アミド塩酸塩又は前記化合物の他の任意の塩を含有し、かつ場合によりさらに薬剤学的に受け入れることができる担持剤、希釈剤、補助剤及び/又は付形剤を含有する、ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤学的組成物。
【請求項10】
前記ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患が筋萎縮性側索硬化症である、請求項8又は9記載の組成物。
【請求項11】
マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤及び/又はスーパーオキシドジスムターゼ/カタラーゼ阻害剤及び/又は擬態から特に選択される、ウロキナーゼ随伴神経病理学的疾患及び/又は神経変性疾患の予防及び/又は処置に適している薬剤学的に活性な成分をさらに少なくとも1つ含有する、請求項8から10までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
神経病理学的疾患又は神経変性疾患の予防及び/又は処置のための補助プロトコルにおける、請求項8から12までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項13】
疾患が、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病及び/又は細菌性髄膜炎から選択される、請求項12記載の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−543900(P2008−543900A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517418(P2008−517418)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006029
【国際公開番号】WO2006/136419
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(501022343)ヴィレックス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Wilex AG
【住所又は居所原語表記】Grillparzer Strasse 16, D−81675 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】