説明

神経系障害及び状態の処置方法

本発明は、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、並びに特に血管運動症状(VMS)及び慢性疼痛を含む特定の神経系障害及び状態を処置するためのそれらの使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、並びに特に血管運動症状(VMS)及び慢性疼痛を含む特定の神経系障害及び状態を処置するためのそれらの使用方法に関する。
【0002】
関連文献の相互参照
本出願は、2004年7月22日に出願された米国出願番号第60/590,203号の優先権を主張する。該文献の開示内容は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【背景技術】
【0003】
体熱感(Hot flush)及び寝汗として言及される血管運動症状(VMS)は、最も一般的な閉経関連症状であり、自然閉経又は手術的に誘導された閉経後に、全女性の60%〜80%に生じる。VMSは減退する性ステロイドに対する中枢神経系(CNS)の適応反応であるようだ。現在まで、VMSのために最も有効な療法は、エストロゲン及び/又は一部のプロゲスチンを含むホルモンに基づく処置である。ホルモン療法はVMSの緩和に非常に有効であるが、それらは全ての女性に適している訳ではない。VMSは性ステロイドレベルの変動により惹起され、男女双方で混乱及び障害を来し得ることが十分に認識されている。体熱感は最大で30分間持続し、及びその頻度は1週間につき数回から1日につき多数回までと様々であり得る。患者は体熱感を突然の熱感として経験し、これは顔面から胸部及び背部、そして身体の残りの部分へと急速に拡散する。通常は突然の多量の発汗を伴う。それは、1時間に数回生じることもあり、及び夜間に生じることも多い。夜間に生じる体熱感及び突然の発汗は睡眠不足を惹起し得る。観察される精神的及び感情的症状、例えば、緊張感、疲労感、いらいら、不眠、鬱、記憶喪失、頭痛、不安、緊張感又は集中力欠如は、体熱感及び寝汗後の睡眠不足により惹起されると考えられる(Kramerら,In:Murphyら,3rd Int’l Symposium on Recent Advances in Urological Cancer Diagnosis and Treatment−Proceedings,Paris,France:SCI:3−7(1992))。
【0004】
幾つかの理由:(1)乳癌生存者の多くが、その最も一般的な副作用が体熱感であるタモキシフェンを投与されており;(2)乳癌処置を受けた女性の多数は化学療法に起因して早期閉経を経験し;(3)乳癌の病歴を有する女性は乳癌の再発可能性を懸念するために一般的にエストロゲン療法を拒否する:ために、体熱感は、乳癌処置を受けた女性においてその重篤度がさらに高くなり得る:(Loprinzi,ら,Lancet,2000,356(9247):2059−2063)。
【0005】
男性もステロイドホルモン(アンドロゲン)消退後に体熱感を経験する。これは加齢に関連するアンドロゲン減少の場合(Katovich,ら,Proceedings of the Society for Experimental Biology&Medicine,1990,193(2):129−35)及び前立腺癌の処置に関連したホルモン欠乏の極端な場合(Berendsen,ら,European Journal of Pharmacology,2001,419(1):47−54)に当てはまる。これらの患者の3分の1もが非常な不快感かつ不自由さを惹起するのに十分な程に重度の持続性かつ頻回症状を経験し得る。
【0006】
VMSの正確な機序は不明であるが、一般的に、体温調節及び血管運動活性を調節する通常の恒常性維持機構に対する障害を示すと考えられる(Kronenbergら,“Thermoregulatory Physiology of Menopausal Hot Flashes:A Review,”Can.J.Physiol.Pharmacol.,1987,65:1312−1324)。
【0007】
エストロゲン処置(例えば、エストロゲン補充療法)が前記症状を緩和するという事実は、これらの症状及びエストロゲン欠乏の間の関連性を実証する。例えば、閉経期の生活は、上記したように広範な他の急性症状と関連し、及びこれらの症状は一般的にエストロゲン応答性である。
【0008】
エストロゲンがノルエピネフリン(NE)及び/又はセロトニン(5−HT)系両方の活性を刺激し得ることが示唆されている(J.Pharmacology&Experimental Therapeutics,1986,236(3)646−652)。エストロゲンがNE及び5−HTレベルを調節し、視床下部の体温調節中枢においてホメオスタシスを提供すると考えられている。脳幹/脊髄及び副腎を経由する視床下部から皮膚までの下行経路は通常の皮膚温度の維持に関与する。NE及び5−HT再取り込み阻害剤の作用はCNS及び末梢神経系(PNS)の両方に影響することが知られている。VMSの病態生理学は中枢及び末梢機序の両方により媒介され、それ故に、CNS及びPNS間の相互作用は、体温調節障害の処置における二重作用SRI/NRIの有効性を説明できよう。実際、VMSにおける生理学的側面及びCNS/PNS関与は、鬱の行動側面を処置するために用いられる用量と比較して、VMSを処置するために提案されている用量の低さを説明できよう(Loprinzi,ら,Lancet,2000,356:2059−2063;Stearnsら,JAMA,2003,289:2827−2834)。VMSの病態生理学におけるCNS/PNSの相互作用及び本明細書にて示されるデータを用いて、ノルエピネフリン系を標的にしてVMSを処置できるという主張を支持した。
【0009】
最も一般的には、VMSを有する患者はホルモン療法(経口、経皮又は移植)により処置されるが、一部の患者はエストロゲン処置を許容できない(Berendsen,Maturitas,2000,36(3):155−164,Finkら,Nature,1996,383(6598):306)。加えて、通常、ホルモン補充療法はホルモン感受性癌(例えば、乳癌または前立腺癌)に罹患している又はその危険性のある女性又は男性には推奨されない。故に、非ホルモン療法(例えば、フルオキセチン、パロキセチン[SRI]及びクロニジン)が臨床的に評価されている。WO9944601は、フルオキセチンを投与することによりヒト女性における体熱感を軽減するための方法を開示している。ステロイド、アルファ−アドレナリンアゴニスト及びベータ−遮断薬を含む他の選択肢も体熱感の処置に関して研究されており、成果の度合いは様々であった(Waldingerら,Maturitas,2000,36(3):165−168)。
【0010】
α−アドレナリン受容体は体温調節障害において機能することが報告されている(Freedmanら,Fertility&Sterility,2000,74(1):20−3)。これらの受容体はシナプス前後の両方に位置し、並びに中枢及び末梢神経系における阻害的役割を仲介する。アドレナリンα2受容体には4つの異なるサブタイプ、すなわち、α2A、α2B、α2C及びα2Dがある(Mackinnonら,TIPS,1994,15:119;French,Pharmacol.Ther.,1995,68:175)。非選択的α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、ヨヒンビンが体熱感を誘導し、及びα−アドレナリン受容体アゴニスト、クロニジンがヨヒンビン効果を軽減することが報告されている(Katovich,ら,Proceedings of the Society for Experimental Biology&Medicine,1990,193(2):129−35,Freedmanら,Fertility&Sterility,2000,74(1):20−3)。クロニジンは体熱感を処置するために用いられている。しかし、かかる処置の使用は、本明細書に記載の及び関連技術分野で周知の、体熱感を軽減するために必要な高用量により惹起される望ましくない副作用に関連する。
【0011】
体温調節の恒常性を維持する上での体温調節の複雑で多面的な性質並びにCNS及びPNS間の相互作用を考慮すると、複数の療法及びアプローチを開発して、血管運動症状を標的とすることができる。本発明は、神経系障害及び状態を処置するためのこれら及び他の重要な使用に関する方法に焦点を当てる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、全てノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)である、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、及び特に血管運動症状(VMS)及び慢性疼痛を含む神経系障害又は状態を処置するためのそれらの使用方法に関する。
【0013】
一の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置するための方法であって、該対象へ有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法であり;ここで、該神経系障害又は状態が、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、季節性情動障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、禁断症候群、双極性障害、気分循環性障害、気分変調性障害、全般性不安障害、対人恐怖、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害又はそれらの組み合わせである方法に関する。
【0014】
別の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置するための方法であって、該対象へ有効量の(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法であり;ここで、該神経系障害又は状態が、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、季節性情動障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、禁断症候群、多動性障害を伴う又は伴わない注意力欠如障害、双極性障害、気分循環性障害、気分変調性障害、全般性不安障害、対人恐怖、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害、多動症候群又はそれらの組み合わせである方法に関する。
【0015】
図の簡単な説明
本発明は、以下の詳細な記載及び本出願の一部を成す添付の図面からより十分に理解され得る。
【0016】
図1は、ノルエピネフリン/セロトニン介在体温調節に対するエストロゲン作用の概略である。
【0017】
図2は、ノルエピネフリン及びセロトニン及びそれらの各受容体(5−HT2a、α及びα−アドレナリン)の相互作用の概略図である。
【0018】
図3は、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンのためのノルエピネフリン(NE)取り込みアッセイ、セロトニン(5−HT)取り込みアッセイ及びドーパミントランスポーター(hDAT)膜結合アッセイに関する濃度の関数としての%取り込みのプロットである(実施例1を参照のこと)。
【0019】
図4、5及び6は、卵巣摘出誘導性体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg、sc)でのラセミ−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの投与の結果を示す(実施例2を参照のこと)。
【0020】
図7は、術前(Pre)、ベースライン(BL)並びにラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及びビヒクルの投与から30、60、100、180及び300分後における、Dixonノンパラメトリック検定により評価した50%感受性閾値(50%閾値,力g)のプロットである(実施例3を参照のこと)。
【0021】
図8は、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ガバペンチン及びビヒクルの投与から30、60、100、180及び300分後における、%反転のプロットである(実施例3を参照のこと)。
【0022】
発明の詳細な記載
本発明は、全てノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)であるラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジンとしても知られている)及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン((1S,5R)−1−((4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンとしても知られている)並びに特に血管運動症状(VMS)及び慢性疼痛を含む神経系障害及び状態を処置するためのそれらの使用方法に関する。
【0023】
以下の定義は、本明細書にて用いられる用語及び省略形を十分に理解するために提供される。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲にて用いる単数形は、文脈上明確に別記されない限り、複数への言及を含む。故に、例えば、「1つのアンタゴニスト」への言及は複数のかかるアンタゴニストを含み、及び「1つの化合物」への言及は、1以上の化合物及び当業者に知られているその等価物などへの言及と等しい。
【0025】
本明細書中の省略形は以下のように測定単位、技法、特性又は化合物に相当し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmole」はミリモルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「SEM」は平均値の標準誤差を意味し、及び「IU」は国際単位を意味する。「ED50値」は、観察される状態又は効果の50%緩和(50%平均最大エンドポイント)をもたらす用量を意味する。別記しない限り、旋光度はHCI塩形態の化合物に関して測定される。
【0026】
「ノルエピネフリントランスポーター」はNETと省略される。
「ヒトノルエピネフリントランスポーター」はhNETと省略される。
「セロトニントランスポーター」はSERTと省略される。
「ヒトセロトニントランスポーター」はhSERTと省略される。
「ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」はNRIと省略される。
「選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」はSNRIと省略される。
「セロトニン再取り込み阻害剤」はSRIと省略される。
「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」はSSRIと省略される。
「ノルエピネフリン」はNEと省略される。
「セロトニン」は5−HTと省略される。
「皮下」はscと省略される。
「腹腔内」はipと省略される。
「経口」はpoと省略される。
【0027】
本明細書中用いる用語「処置」は、予防的、治癒的又は緩和的処置を含み、及び本明細書中用いる「処置する」も予防的、治癒的及び緩和的処置を含む。
【0028】
本明細書中用いる用語「有効量」は、神経系障害又は状態の処置に関して所望の結果を達成するための投与量及び必要期間に関しての有効な用量を言う。特に、血管運動症状に関して、「有効量」は、血管運動症状に苦しむ対象においてノルエピネフリンレベルを増大させてステロイド有効性の欠如の一部又は全てを補填する化合物又は化合物からなる組成物の量を言う。様々なホルモンレベルは、本発明において必要とされる化合物の量に影響し得る。例えば、閉経期前状態は、閉経周辺期状態よりもホルモンレベルが高いために、より低いレベルの化合物を必要とし得る。
【0029】
本発明成分の有効量は、選択される特定の化合物、成分又は組成物、投与経路及び個人において所望の応答を誘導させるような成分の能力(単独で又は1以上の薬剤と組み合わせて)のみならず、因子、例えば、疾患状態又は緩和されるべき状態の重篤度、個人のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の現状及び処置されるべき病理学的状態の重篤度、特定患者が従っている併用薬物療法又は特別食、並びに結局担当医師の裁量である適切な用量に伴う当業者が認め得る他の因子により、患者毎に異なることが理解されよう。投与計画は治療効果の改善を提供するように調節されてもよい。有効量は、治療上有益な効果が成分のあらゆる毒性又は有害効果を上回るものでもある。
【0030】
好ましくは、本発明の方法において有用な化合物は、VMS、特に体熱感の回数が処置開始前のVMSの回数と比べて減少するような用量及び期間で投与される。かかる処置は、処置開始前のVMSの重篤度と比べて、今なお経験している任意のVMS、特に体熱感の全体的な重篤度又は強度分布を軽減するのにも有用であり得る。慢性疼痛を含む他の神経系障害又は状態に関して、本発明の方法において有用な化合物は、疾患又は状態の症状の予防、緩和又は排除をもたらすような用量及び期間で投与される。
【0031】
例えば、罹患患者のために、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又は(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンが、好ましくは、約0.1mg/日〜約200mg/日、より好ましくは、約1mg/日〜約150mg/日、さらにより好ましくは、約1mg/日〜約100mg/日、及び最も好ましくは、約1mg/日〜50mg/日の用量で、神経系障害又は状態、例えば、VMSの回数及び/又は重篤度、及び/又は慢性疼痛の期間及び/又は重篤度を軽減するのに十分な期間で投与されてもよい。
【0032】
本明細書中用いる用語「化合物の組成物」、「化合物」、「薬」、「治療物質」、「薬理活性物質」、「活性物質」及び「医薬」は、本明細書中で同義的に用いられ、対象(ヒト又は動物)に投与される場合、局部及び/又は全身作用により所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する物質をもつ1又は複数の化合物又は組成物を言う。
【0033】
本明細書中用いる用語「調節」は、生物活性又は過程、例えば、受容体結合又はシグナル伝達活性の機能特性を亢進又は阻害するいずれかの能力を言う。かかる亢進又は阻害は、シグナル伝達経路の活性化のごとき特定事象の発現を条件としてもよく、及び/又は特定の細胞型にのみ示されてもよい。該調節物質は、任意の化合物、例えば、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は蛋白質、好ましくは小分子又はペプチドを含むことが意図される。
【0034】
本明細書中用いる用語「阻害剤」は、特定活性、例えば、セロトニン再取り込み活性又はノルエピネフリン再取り込み活性を阻害、抑制、阻止又は減少することにより哺乳類において部分的、完全な、競合的及び/又は阻害的効果を示す任意の化合物又は物質、例えば、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は蛋白質、好ましくは小分子又はペプチドを含むことが意図される。特定の実施態様において、好ましくは、該用語は、ヒトノルエピネフリン再取り込み、又はセロトニン再取り込み及びノルエピネフリン再取り込みの両方の阻害剤を言い、故に、内因性ノルエピネフリン再取り込み又はセロトニン再取り込み及びノルエピネフリン再取り込みの双方に関する一部又は全ての生物学的効果を減少又は遮断、好ましくは、減少する阻害剤を言う。
【0035】
本発明内において、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンは、医薬上許容される塩の形態にて調製されてもよい。本明細書中用いる用語「医薬上許容される塩」は、無機塩及び有機塩を含む医薬上許容される非毒性の酸から調製された塩を言う。適切な非−有機塩は、無機及び有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、洒石酸、p−トルエンスルホン酸などを含む。特に好ましくは、塩酸、臭化水素酸、リン酸及び硫酸酸であり、及び最も好ましくは、塩酸塩である。
【0036】
本明細書中用いる用語「投与する」は、本発明の化合物又は組成物を直接投与するか、又は体内で等価量の活性化合物又は物質を形成し得るプロドラッグ、誘導体又はアナログを投与するかのいずれかを意味する。
【0037】
本明細書中用いる用語「対象」又は「患者」は、本発明の組成物及び/又は方法を用いて処置可能なヒト種を含む動物を言う。該用語「対象」は、一方の性別を具体的に指示しない限り、男性及び女性の両方に言及することを意図する。従って、該用語「患者」は、特に血管運動症状及び/又は慢性疼痛を含む神経系障害又は状態の処置により恩恵を享受し得る任意の哺乳類を含み、例えば、ヒト、特に、哺乳類が女性ならば、閉経期前、閉経周辺期又は閉経期後いずれかの期間の女性を含む。さらに、該患者なる用語は、ヒトを含む動物の雌を含み、及びヒトの中では、既に閉経を迎えた高齢の女性だけでなく、子宮摘出を受けたか又は幾つかの他の理由でエストロゲン産生が抑制された女性、例えば、コルチコステロイドの長期投与を受けた女性、クッシング症候群を被っている女性又は性腺発育障害を有する女性を含む。しかし、該用語「患者」を女性に限定する意図はない。
【0038】
本明細書中用いる用語「血管運動症状」、「血管運動不安定症状」及び「血管運動障害」は、特に、体温調節障害により惹起される、体熱感(フラッシュ)、不眠、睡眠障害、気分障害、いらいら、過度の発汗、寝汗、疲労感などを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書中用いる用語「体熱感」は、当該分野において認識されている用語であり、典型的には突然の皮膚体熱感からなり、通常は発汗を伴う、対象における体温の一時的異常を言う。
【0040】
本明細書中用いる用語「早期閉経」又は「人為的閉経」は、40歳前に生じ得る原因不明の卵巣不全を言う。それは、喫煙、高地での生活又は栄養不良状態に関連していてもよい。人為的閉経は、卵巣摘出術、化学療法、骨盤の放射線療法、又は卵巣血液供給を低下させる任意の過程に起因していてもよい。
【0041】
本明細書中用いる用語「閉経期前」は、閉経の前を意味し、用語「閉経周辺期」は閉経期間中を意味し、及び用語「閉経後」は閉経の後を意味する。「卵巣摘出術」は、一方又は両方の卵巣の除去を意味し、及びMerchenthalerら,Maturitas,1998,30(3):307−316に従って成し遂げられ得る。
【0042】
本明細書中用いる用語「慢性疼痛」は、強烈な、局部的な、鋭い又は刺すような及び/又は鈍い、うずくような、拡散した又はひりひりする性質の、及び長期間にわたって生じる(すなわち、持続性の)中枢性又は末梢性疼痛を言い、本発明の目的のためには神経因性疼痛及び癌疼痛を含む。慢性疼痛は神経因性疼痛、痛覚過敏及び/又は異痛を含む。
【0043】
本明細書中用いる用語「神経因性疼痛」は、末梢又は中枢神経系への損傷又は該系における病理学的変化により惹起される慢性疼痛を言う。神経因性疼痛に関連する病理学的変化の例は、長期の末梢又は中枢ニューロン感作、神経系の阻害及び/又は呈示機能に対する中枢感作関連損傷並びに副交感神経及び交感神経神経系間の異常な相互作用を含む。広範囲の臨床状態は、例えば、糖尿病、切断術の外傷後疼痛、腰痛、癌、化学的傷害又は毒素、他の大手術、外傷性損傷圧迫に起因する末梢神経損傷、栄養障害、又は帯状疱疹若しくはヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)のごとき感染を含む神経因性疼痛に関連していてもよく、又はその基礎を形成してもよい。神経因性疼痛は、例えば、糖尿病性ニューロパシー、末梢ニューロパシー、帯状庖疹後神経痛、三叉神経痛、腰部又は頸部神経根症、線維筋痛、舌咽神経痛、反射交感神経ジストロフィー、カウザルギー、視床症候群、神経根裂離、或いは幻肢痛、反射交感神経ジストロフィー又は開胸術後疼痛、癌、化学的傷害、毒素、栄養障害のごとき末梢及び/又は中枢感作に至る損傷により惹起される神経損傷、或いは帯状疱疹又はHIVのごときウイルス又は細菌感染、或いはそれらの組み合わせに関連してもよい。本発明の化合物の使用方法は、神経因性疼痛が、転移性湿潤、有痛脂肪症、火傷、又は視床状態に関連する中枢性疼痛状態、或いはそれらの組み合わせに続発する状態である処置をさらに含む。
【0044】
本明細書中用いる用語「痛覚過敏」は、典型的な有害刺激に対する感受性が増大する疼痛を言う。
【0045】
本明細書中用いる用語「異痛」は、典型的に非有害刺激に対する感受性における増大を言う。
【0046】
本明細書中用いる用語「線維筋痛」は、鬱病、身体化障害、転換性障害、疼痛障害、心気症、身体醜形障害、未分化型身体表現性障害及び身体表現性NOSと関連するFMSを含む、線維筋痛症候群(FMS)及び他の身体表現性障害を包含するが、これらに限定されない。FMS及び他の身体表現性障害は、感覚刺激の全身性高度知覚、痛覚過敏の形態での疼痛知覚の異常及びそれらの組み合わせから選択される生理学的症状が伴う。
【0047】
本明細書中用いる用語「慢性疲労」は、脱力感、筋肉痛及び疼痛、過剰の眠気、倦怠感、熱、咽喉痛、リンパ節圧痛、記憶及び/又は精神集中障害、不眠、睡眠障害、限局性圧痛、びまん性疼痛及び疲労感及びそれらの組み合わせを含む生理学的症状に関連する状態である。
【0048】
本明細書中用いる用語「睡眠障害」は、不眠、ナルコレプシー及び遺尿症を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中用いる用語「対人恐怖」は、社会不安障害を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書中用いる用語「選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群」は、初期の満足できる応答期間の後に患者がSSRI療法に対して満足のいく応答を維持できない状態を言う。
【0051】
本明細書中用いる用語「副作用」は、特に、その投与により利益を得ることを求めた系以外の組織又は器官系において薬剤によって引き起こされる有害作用としての、薬剤又は手段を用いる目的と異なる結果を言う。例えば、高用量のNRI又はNRI/SRI化合物単独の場合、該用語「副作用」は、例えば、嘔吐、悪心、発汗及び体熱感のごとき状態を言ってもよい(Janowsky,ら,Journal of Clinical Psychiatry,1984,45(10 Pt 2):3−9)。
【0052】
本明細書中用いるフレーズ「(−)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を実質的に含有しない」は、組成物の全重量に基づきわずか約5重量%、好ましくは約2重量%未満、及びより好ましくは約1重量%未満の(−)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を意味する。
【0053】
本明細書中用いるフレーズ「(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を実質的に含有しない」は、組成物の全重量に基づいてわずか約5重量%、好ましくは約2重量%未満、及びより好ましくは約1重量%未満の(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン((1S,5R)−1−((4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンとしても知られている)又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を意味する。
【0054】
本発明は、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(HCI塩として測定される(1R,5S)−1−((4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンとしても知られている)並びに特定の神経疾患及び状態の処置のためのそれらの使用方法に関する。記載した本発明は、特に血管運動症状及び/又は慢性疼痛を含む神経系障害及び状態の処置、緩和、阻害及び/又は予防の分野において大幅な進歩を提供すると考えられる。
【0055】
一の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置する方法であって、該対象へ有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法であり、ここで、該神経系障害又は状態は、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、季節性情動障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、禁断症候群、双極性障害、気分循環性障害、気分変調性障害、全般性不安障害、対人恐怖、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害又はそれらの組み合わせである方法に関する。
【0056】
特定の好ましい実施態様において、神経系障害又は状態は、血管運動症状、性機能障害、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、月経前不機嫌性障害又はそれらの組み合わせ、特に、血管運動症状又は慢性疼痛、特に神経因性疼痛及びさらにより具体的には、慢性背痛を除く神経因性疼痛である。
【0057】
別の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置するための方法であって、該対象へ有効量の(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法であり、ここで、該神経系障害又は状態は、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、季節性情動障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、禁断症候群、多動性障害を伴う又は伴わない注意力欠如障害、双極性障害、気分循環性障害、気分変調性障害、全般性不安障害、対人恐怖、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害、多動症候群又はそれらの組み合わせである方法に関する。
【0058】
特定の好ましい実施態様において、神経系障害又は状態は、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、癲癇、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、月経前不機嫌性障害又はそれらの組み合わせ、特に、血管運動症状又は慢性疼痛、特に神経因性疼痛、及びさらにより具体的には、慢性背痛を除く神経因性疼痛である。特定の好ましい実施態様において、組成物は、対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を実質的に含有せず、好ましくは、約2重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩、及びより好ましくは、約1重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を含む。
【0059】
特定の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置するための方法であって、該対象へ有効量のラセミ(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又は(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法であり、ここで、該神経系障害又は状態は、慢性背痛を除く慢性疼痛、特に慢性背痛を除く神経因性疼痛である方法に関する。
【0060】
従って、一の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの血管運動症状を処置するための方法であって、該対象へ有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0061】
別の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において少なくとも1つの血管運動症状を処置するための方法であって、該対象へ有効量の(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法に関し、特定の好ましい実施態様では、組成物は、対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を実質的に含有せず、好ましくは、約2重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩、及びより好ましくは、約1重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を含有する。
【0062】
エストロゲンレベルが低いか又はエストロゲンが存在しない場合、NE及び5−HT間の通常レベルは改変され、及び神経伝達物質レベルにおけるこの改変された変化は体温調節中枢の感受性における変化をもたらしてもよい。改変された化学レベルは体温調節中枢において熱感及び応答として翻訳されてもよく、視床下部は下行性自律神経経路を活性化し、並びに血管拡張及び発汗を介する熱放散(体熱感)をもたらしてもよい(図1)。従って、エストロゲン欠乏は、ノルエピネフリン活性の改変をもたらしてもよい。
【0063】
脳幹の周核体内で合成されたノルエピネフリンは、視床下部及び脳幹内の神経末端において放出される。視床下部において、NEは、体温調節中枢にあるニューロンの活性を調節する。脳幹において、NEは、セロトニン作動性ニューロン(5HT)並びにアドレナリンα1及びアドレナリンα2シナプス後受容体を介する作用を神経支配し、それはセロトニン作動性系の活性を刺激する。それに応じて、5−HTニューロンは体温調節中枢の活性及びNEニューロンに対するフィードバックも調節する。このフィードバック関係を介して、5−HT2a受容体を介して作用する5−HTはNEニューロンの活性を阻害する。シナプス間隙中のノルエピネフリンは、NEニューロン内に位置するNEトランスポーター(NET)によっても取り込まれる。トランスポーターはNEをリサイクルし、及び複数の神経伝達のためにそれを利用可能とする(図2)。
【0064】
本発明は、ノルエピネフリンの減少した活性を回復することによる、すなわち、ノルエピネフリンの再取り込みを阻害することによる、VMS、慢性疼痛及び/又は他の神経系障害の処置方法を提供する。視床下部又は脳幹におけるノルエピネフリン活性は、(i)NEトランスポーターの活性の遮断、(ii)アンタゴニストを用いたシナプス前アドレナリンα2受容体活性の遮断、又は(iii)5−HT2aアンタゴニストを用いたNEニューロンにおける5−HT活性の遮断により高められ得る。
【0065】
さらなる他の実施態様において、本発明は、その必要のある対象において慢性疼痛、特に神経因性疼痛を処置するための方法であって、該対象へ有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0066】
神経因性疼痛は、例えば、糖尿病性ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、複合性局所性疼痛症候群、腰部又は頸部神経根症、線維筋痛、舌咽神経痛、反射交感神経ジストロフィー、カウザルギー、視床症候群、神経根裂離、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)ニューロパシー、サルコイドポリニューロパシー、HIV処置のために用いた薬剤のごとき様々な原因により生じるHIV関連ニューロパシー、末梢ニューロパシー、例えば、結合組織疾患を伴う末梢ニューロパシー、傍腫瘍性感覚ニューロパシー、家族性アミロイドポリニューロパシー、後天性アミロイドポリニューロパシー、遺伝性ニューロパシー、腎不全を伴うニューロパシー、遺伝性感覚性ニューロパシー、ファブリー病、セリアック病、或いは幻肢痛、反射交感神経ジストロフィー又は開胸術後疼痛のごとき末梢及び/又は中枢感作に至る損傷により惹起される神経損傷、疾患を処置するために用いられる化学療法剤又は他の物質により惹起されるニューロパシーを含む癌、化学的傷害、ヒ素ニューロパシーのごとき毒素、栄養障害、或いは帯状疱疹又はHIV−関連ニューロパシーのごときウイルス又は細菌感染、或いはそれらの組み合わせに関連していてもよい。本発明の化合物の使用方法は、神経因性疼痛が転移性湿潤、有痛脂肪症、火傷、又は視床状態に関連する中枢疼痛状態に続発する状態である処置をさらに含む。
【0067】
上記の神経因性疼痛は、幾つかの場合では、「有痛性細径線維ニューロパシー」、例えば、特発性細径線維有痛性感覚ニューロパシー又は「有痛性大径線維ニューロパシー」、例えば、脱髄性ニューロパシー又は軸索ニューロパシー又はそれらの組み合わせとして分類されてもよい。かかるニューロパシーは、例えば,J.Mendellら,N.Engl.J.Med.2003,348:1243−1255においてより詳細に記載されており、該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【0068】
さらなる実施態様において、本発明は、その必要のある対象において慢性疼痛、特に神経因性疼痛を処置するための方法であって、該対象へ有効量の(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.OJヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0069】
特定の好ましい実施態様において、組成物は対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を実質的に含有せず、好ましくは、約2重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩、及びより好ましくは、約1重量%未満の対応する(−)−エナンチオマー又はその医薬上許容される塩を含む。
【0070】
さらなる他の好ましい実施態様において、本発明は、組成物が治療上有効量の少なくとも1つのアドレナリンα2受容体アンタゴニスト又はその医薬上許容される塩をさらに含む方法に関する。特定の好ましい実施態様において、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及びアドレナリンα2受容体アンタゴニストは同時又は一斉に投与される。特定の好ましい実施態様において、アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体、アドレナリンα2B受容体、アドレナリンα2C受容体又はアドレナリンα2D受容体に関して選択的である。
【0071】
アドレナリンα2受容体アンタゴニストは体熱感を誘導することが知られている。しかし、体熱感を緩和するために、アドレナリンα2受容体アンタゴニストをNRI化合物と共投与してもよい。該用量レベルは、体熱感に対する有効性を変化させることなく副作用を遮断するために、投与されるアドレナリンα2受容体アンタゴニストの用量に従って調節される必要があってもよい。当業者は過度の実験を行うことなくかかる用量を決定する方法を知っていよう。
【0072】
アドレナリンα受容体アンタゴニストの例は、アチパメゾール;2−[2−(4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル)エチル]−4,4−ジメチル−1,3−(2H,4H)−イソキノリンジオン二塩酸塩(ARC239二塩酸塩);2−[(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]−2,3−ジヒドロ−1−メチル−1H−イソインドールマレイン酸塩(BRL44408マレイン酸塩);BRL48962;BRL41992;SKF104856;SKF104078;MK912;2−(2−エチル−2,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(エファロキサン塩酸塩);2−(1,4−ベンゾジオキサン−2−イル)−2−イミダゾリン塩酸塩(イダゾキサン塩酸塩);2−(1−エチル−2−インダゾイル)メチル−1,4−ベンゾジオキサン塩酸塩(イミロキサン塩酸塩);17α−ヒドロキシ−20α−ヨヒンバン−16β−カルボン酸、塩酸メチルエステル(rauwolscine塩酸塩);(8αR,12αS,13αS)−5,8,8α,9,10,11,12,12α,13,13α−デキドロ−3−メトキシ−12−(エチルスルホニル)−6H−イソキノ[2,1−γ][1,6]ナフチリジン塩酸塩(RS79948塩酸塩);2−(2,3−ジヒドロ−2−メトキシ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール塩酸塩(RX821002塩酸塩);8−[(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−イル)メチル]−1−フェニル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−4−オン(スピロキサトリン);17α−ヒドロキシヨヒンバン−16α−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(ヨヒンビン塩酸塩);及びそれらの組み合わせ及び医薬上許容される塩を含むが、これらに限定されない。これらの化合物の幾つかはTocris Cookson Inc.,Ellisville,MO.から入手可能である。
【0073】
特定の好ましい実施態様において、アドレナリンα2受容体アンタゴニストは、アドレナリンα2A受容体、アドレナリンα2B受容体、アドレナリンα2C受容体又はアドレナリンα2D受容体に関して選択的である。BRL44408及びBRL48962は選択的アドレナリンα2A受容体アンタゴニストであることが知られている。イミロキサンは既知の選択的アドレナリンα2B受容体アンタゴニストである。Rauwolscine及びMK912は既知の選択的アドレナリンα2c受容体アンタゴニストである。
【0074】
本発明は、式Iの化合物のプロドラッグを含む。本明細書中用いる用語「プロドラッグ」は、インビボにおいて代謝手段(例えば、加水分解)により式Iの化合物に変換可能な化合物を意味する。様々な形態のプロドラッグが当該分野において知られており、例えば、Bundgaard,(ed.),Design of Prodrugs,Elsevier(1985);Widder,ら.(ed.),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press(1985);Krogsgaard−Larsen,ら,(ed).“Design and Application of Prodrugs,”Textbook of Drug Design and Development,Chapter 5,113−191(1991),Bundgaard,ら,Journal of Drug Deliver Reviews,1992,8:1−38,Bundgaard,J.of Pharmaceutical Sciences,1988,77:285 et seq.;並びにHiguchi及びStella(eds.)Prodrugs as Novel Drug Delivery System,American Chemical Society (1975)において記載されている。
【0075】
さらに、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンは、非溶媒形態、及び水、エタノールなどのごとき医薬上許容される溶媒との溶媒形態にて存在してもよい。
【0076】
本発明の方法において有用な化合物は、当業者によく知られている多数の方法において調製されてもよい。化合物は、例えば、以下に記載の方法又は当業者が認識するようなその変形法により合成され得る。本発明の化合物の調製において用いられる試薬は市販されているか、又は文献に記載の標準的方法により調製され得る。本発明に関連して開示される全ての過程は、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラム又は商業産業的スケールを含む任意のスケールにて実施されることが熟慮される。
【0077】
容易に理解されようが、存在する官能基は合成過程の間に保護基を含んでもよい。保護基は、ヒドロキシル基及びカルボキシル基のごとき官能基に選択的に付加し及び除去され得る官能基としてそれ自体知られている。これらの基は化合物中に存在し、化合物が曝露される化学反応状態に対してかかる官能基を不活性とする。任意の様々な保護基が本発明にて用いられてもよい。本発明に従って用いられてもよい保護基は、Greene,T.W.及びWuts,P.G.M.,Protective Group in Organic Synthesis 2d.Ed.,Wiley&Sons,1991に記載されていてもよい。
【0078】
ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩は、例えば、US−A−4,131,611、US−A−4,435,419、US−B−6,204,284及びUS−B−6,372,919に記載されているように調製されてもよく、該文献の開示内容は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【0079】
本発明の方法において有用な(+)エナンチオマーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)並びにキラル塩の形成及び結晶化を含む当業者に知られている任意の方法により、そのラセミ混合物から単離されてもよく、又は本明細書に記載の方法により調製されてもよい。例えば、US−B−6,372,912;Jacques,ら,Enantiomers,Racemates and Resolution(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,ら,Tetrahedron,33:2725(1977);Eliel,E.L Stereochemistry of Carbon Compounds,(McGraw−Hill,NY,1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolution,p.268(E.L.Eliel,Ed.,University of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照のこと。
【0080】
幾つかの実施態様において、(+)−エナンチオマーは、キラル多糖固定相及び有機溶離剤を用いて、対応するラセミ混合物を分割することにより得られる。好ましくは、多糖はデンプン又はデンプン誘導体である。キラルHPLCカラムが用いられてもよく、例えば、Diacelにより製造され及びChiral Technologies,Inc.,Exton,Pennsylvaniaから市販されているCHIRALPAK(登録商標)AD HPLCカラム、より好ましくは、1cm×25cmのCHIRALPAK(登録商標)AD HPLCカラムのごときカラムが用いられてもよい。好ましい溶離剤は、混和性極性有機溶媒を用いて極性を調節した炭化水素溶媒である。好ましくは、有機溶離剤は約95%〜約99.5%(容量/容量)で存在する非極性炭化水素溶媒及び約5%〜約0.5%(容量/容量)で存在する極性有機溶媒を含む。好ましい一の実施態様において、炭化水素溶媒はヘキサンであり、及び混和性極性有機溶媒はイソプロピルアミンである。
【0081】
本発明の方法において有用なラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩はニート組成物又は少なくとも1つの医薬上許容される担体を含有する組成物として用いられてもよい。一般的に、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩は組成物の全重量に基づいて約0.1重量%〜約90重量%のレベルで存在し得る。好ましくは、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩は組成物の全重量に基づいて少なくとも約1重量%のレベルで存在し得る。より好ましくは、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩は組成物の全重量に基づいて少なくとも約5重量%のレベルで存在し得る。さらにより好ましくは、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩は組成物の全重量に基づいて少なくとも少なくとも約10重量%のレベルで存在し得る。さらに一層より好ましくは、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩は組成物の全重量に基づいて少なくとも約25重量%のレベルで存在し得る。
【0082】
かかる組成物は許容できる医薬手段、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA(1985)の記載に従って調製される。医薬上許容される担体は、処方中の他の成分に適合し及び生物学的に許容可能なものである。
【0083】
本発明の化合物はニート又は慣用的な医薬担体と組み合わせて経口又は非経口投与されてもよい。適用できる固形担体は、香料、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤又は錠剤崩壊剤又は封入材料として作用し得る1以上の物質を含み得る。散剤において、担体は、微粉化活性成分と混合される微粉化固体である。錠剤において、活性成分は、適切な比率で必須の圧縮特性を有する担体と混合され、次いで、所望の形状及び大きさに成形される。好ましくは、散剤及び錠剤は最高99%の活性成分を含有する。適切な固形担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂を含む。
【0084】
液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエリキシルの調製において用いられてもよい。本発明の活性成分は、医薬上許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、その両方の混合物又は医薬上許容される油又は脂肪中に溶解又は懸濁され得る。液体担体は、他の適切な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、バッファー、防腐剤、甘味料、香料、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定化剤又は浸透圧調節剤を含み得る。経口及び非経口投与用液体担体の適切な例は、水(特に、上記のごとき添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液を含有する)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えば、グリコールを含む)及びそれらの誘導体及び油(例えば、分別ヤシ油及び落花生油)を含む。非経口投与用担体は、油状エステル、例えば、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルであり得る。滅菌液体担体は、非経口投与用の滅菌液体形態組成物中で用いられる。
【0085】
滅菌溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋内、腹腔内又は皮下注入により投与され得る。滅菌溶液は静脈内にも投与され得る。経口投与は液体又は固形組成物形態のいずれかであってもよい。
【0086】
好ましくは、医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、顆粒剤又は坐剤のごとき単位投与量形態である。かかる形態において、該組成物は、適量の活性成分を含有する単位投与量にさらに分割される;該単位投与量形態は、パッケージ化された組成物、例えば、パック入り散剤、バイアル、アンプル、事前充填シリンジ又は液体含有サシェであり得る。該単位投与量形態は、例えば、カプセル剤又は錠剤そのものであるか、或いはそれはパッケージ形態中の適切な数のかかる任意の組成物であり得る。
【0087】
本発明の別の実施態様において、本発明の方法において有用な化合物は、哺乳類に存在する任意の他の症状を処置するために用いられるべき物質のごとき1以上の他の医薬活性物質と共に哺乳類に投与されてもよい。かかる医薬活性物質の例は、疼痛緩和薬、抗血管新生薬、抗腫瘍薬、抗糖尿病薬、抗感染薬又は胃腸薬又はそれらの組み合わせを含む。
【0088】
1以上の他の医薬活性物質は、本発明の1以上の化合物と同時に(例えば、個別で同時に又は同じ医薬組成物中にて一緒に)及び/又は連続的に治療上有効量で投与されてもよい。
【0089】
用語「併用療法」は、本明細書に記載した治療障害及び状態、例えば、体熱感、発汗、体温調節関連状態若しくは障害又は他のものを処置するための2以上の治療物質又は化合物の投与を言う。かかる投与は、各型の治療物質を同時に使用することを含む。各場合において、該処置計画は、本明細書に記載した状態又は障害の処置において薬物併用の有益な効果をもたらし得る。
【0090】
投与経路は、活性アザビシクロヘキサン化合物又はその医薬上許容される塩を適切な又は所望の作用部位に効果的に輸送する任意の経路であってもよく、例えば、経口、経鼻、経肺、経皮、例えば、受動的若しくはイオン導入による送達、又は非経口、例えば、直腸内、デポー、皮下、静脈内、尿道内、筋内、経鼻内、点眼液又は軟膏である。さらに、アザビシクロヘキサン又はその医薬上許容される塩と他の活性成分の併用投与は同時又は共存的であってもよい。
【0091】
本発明はさらに以下の実施例において定義され、該実施例において、別記しない限り、部分及びパーセンテージは全て重量によるものであり、及び温度は摂氏である。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を示しているが、それは説明のためにのみ提供されることが理解されるはずである。上記記載及びこれらの実施例から、当業者は本発明の必須の特徴を確認することができ、並びに当業者は、様々な用途及び条件に適用させるために、その精神及び範囲を逸脱することなく、本発明に様々な変化及び修飾を施すことができよう。
【実施例】
【0092】
実施例1:ヒトノルエピネフリン(hNET)セロトニン(hSERT)及びドーパミン(hDAT)トランスポーターにおけるラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの活性
細胞系統及び試薬
ヒトhNETで安定にトランスフェクションしたMDCK−Net6細胞[15]を、高グルコースDMEM(Gibco,カタログ番号11995)、10%のFBS(透析,熱失活済み,US Bio−Technologies,Lot FBD1129HI)及び500μg/mlのG418(Gibco,カタログ番号10131)を含有する成長培地にて培養した。細胞を300,000/T75フラスコで播種し、次いで、細胞を週に2回分割した。JAR細胞系統(ヒト胎盤絨毛癌)をATCC(カタログ番号HTB−144)から購入した。該細胞を、RPMI1640(Gibco,カタログ番号72400)、10%のFBS(Irvine,カタログ番号3000)、1%のピルビン酸ナトリウム(Gibco,カタログ番号1136)及び0.25%のグルコース含有の成長培地にて培養した。細胞を250,000細胞/T75フラスコで播種し、次いで、週に2回分割した。細胞に基づくアッセイ用に、細胞をWallac96穴滅菌プレート(PerkinElmer,カタログ番号3983498)上に播種した。ヒトドーパミントランスポーター(hDAT)結合アッセイ用に、組換えhDATを発現する細胞由来の膜をPerkin Elmerから購入し(カタログ番号RBHDATM、ロット番号2227)、次いで、アッセイ当日まで−80℃で維持した。
【0093】
ノルエピネフリン(NE)取り込みアッセイ
1日目、細胞を成長培地中に3,000細胞/穴で播種し、次いで、セルインキュベーター(37℃,5%CO)中に保持した。2日目、成長培地を、0.2mg/mlのアスコルビン酸及び10μMのパーギリンを含有する200μlのアッセイバッファー(25mMのHEPES;120mMのNaCl;5mMのKCl;2.5mMのCaCl;1.2mMのMgSO;2mg/mlのグルコース(pH7.4,37℃))で交換した。化合物を添加する前に、細胞及び200μlのアッセイバッファーを含むプレートを10分間37℃で平衡化した。デシプラミンのストック溶液をDMSO(10mM)で調製し、次いで、細胞を含む三つ組の穴へ移し、1μMの最終試験濃度とした。これらの穴からのデータを用いて、非特異的NE取り込み(最小NE取り込み)を定めた。試験化合物をDMSO(10mM)中で調製し、次いで、試験範囲(1〜10,000nM)に従ってアッセイバッファー中に希釈した。25μlのアッセイバッファー(最大NE取り込み)又は試験化合物を、200μlのアッセイバッファー中に細胞を含む三つ組の穴へ直接加えた。アッセイバッファー中の細胞及び試験化合物を20分間37℃でインキュベーションした。NE取り込みを開始するために、アッセイバッファー中に希釈した[H]NE(120nMの最終アッセイ濃度)を25μlのアリコートで各穴に移し、次いで、プレートを5分間37℃でインキュベーションした。プレートから上清をデカントすることにより反応を終結させた。細胞を含むプレートを200μlのアッセイバッファーで2回洗浄し(37℃)、遊離放射性リガンドを除去した。次いで、プレートを裏返し、2分間乾燥させておき、次いで、再度裏返し、次いで、さらに10分間風乾させた。25μlの0.25NのNaOH溶液(4℃)中に細胞を溶解し、振動台上に置き、次いで、5分間強力攪拌した。細胞溶解後、75μlのシンチレーションカクテルを各穴に加え、次いで、プレートをフィルムテープで密封した。プレートを振動台に戻し、次いで、最低10分間強力攪拌し、有機及び水性溶液が十分に分離していることを確認した。プレートをWallac Microbetaカウンター(PerkinElmer)で計数し、cpm生データを収集した。
【0094】
セロトニン(5−HT)取り込みアッセイ
以前の文献記載を用いて、JAR細胞系統を用いる5−HT機能的再取り込みに関する方法を修正した。1日目、細胞を、成長培地(RPMI1640及び10%のFBS)を含む96穴プレート中に15,000細胞/穴で播種し、次いで、セルインキュベーター(37℃,5%のCO)中に維持した。2日目、細胞をスタウロスポリン(40nM)で刺激して、5−HTトランスポーターの発現を増大させた[17]。3日目、アッセイ2時間前に、細胞をセルインキュベーターから除去し、次いで、室温で維持し、周囲酸素濃度に対して成長培地を平衡化した。その後、成長培地を、0.2mg/mlのアスコルビン酸及び10μMのパーギリン含有の200μlのアッセイバッファー(25mMのHEPES;120mMのNaCl;5mMのKCl;2.5mMのCaCl;1.2mMのMgSO;2mg/mlのグルコース(pH7.4,37℃))で交換した。パロキセチンのストック溶液をDMSO(10mM)中で調製し、次いで、細胞を含む三つ組穴に移し、1μMの最終試験濃度とした。これらの穴からのデータを用いて、非特異的5−HT取り込み(最小5−HT取り込み)を定めた。試験化合物をDMSO(10mM)中で調製し、次いで、試験範囲(1〜1,000nM)に従ってアッセイバッファー中に希釈した。25μlのアッセイバッファー(最大5−HT取り込み)又は試験化合物を、200μlのアッセイバッファー中、細胞を含む三つ組穴へ直接移した。化合物と共に細胞を10分間(37℃)インキュベーションした。反応を開始するために、アッセイバッファー中に希釈した[H]ヒドロキシトリプタミンクレアチニンサルフェートを25μlのアリコートで各穴に移し、15nMの最終試験濃度とした。反応混合物と共に細胞を5分間37℃でインキュベーションした。アッセイバッファーをデカントすることにより、5−HT取り込み反応を終結させた。細胞を200μlのアッセイバッファー(37℃)で2回洗浄し、遊離放射性リガンドを除去した。プレートを裏返し、次いで、2分間乾燥させておき、次いで、再度裏返し、次いで、さらに10分間風乾させた。その後、細胞を25μlの0.25NのNaOH(4℃)中に溶解し、次いで、振動台にセットし、次いで、5分間強力攪拌した。細胞溶解後、75μlのシンチレーションカクテルを該穴に加え、プレートをフィルムテープで密封し、次いで、振動台に最低10分間再度セットした。プレートをWallac Microbetaカウンター(PerkinElmer)でカウントし、cpm生データを収集した。
【0095】
ドーパミントランスポーター(hDAT)膜結合アッセイ
凍結した膜試料を結合バッファー(50mMのトリス−HCl pH7.4,100mMのNaCl)で7.5mlに希釈し、組織破砕機(Polytron PT 1200C, Kinematica AG)を用いてホモゲナイズし、次いで、75μlの容量で、ポリプロピレン96穴プレートの各穴へ加えた。水中0.5%に希釈したポリエチレンイミン(PEI;Sigmaカタログ番号P−3143)を用いて、Millipore MultiScreen−FB不透明96穴プレート(Millipore glass fiber B,カタログ番号MAFBNOB)を室温で最低2時間ブロックした。結合反応はポリプロピレン96穴プレート(Costar General Assay Plate,カタログ番号3359;Lid,カタログ番号3930)で行った。ホモゲナイズした膜調製物を反応プレートの各穴へ75μlの容量で加えた。マジンドールのストック溶液をDMSO(10mM)中で調製し、次いで、膜を含む三つ組穴へ移し、10mMの最終試験濃度とした。これらの穴からのデータを用いて、非特異的(NSB)hDAT結合(最小hDAT結合)を定めた。5μlの結合バッファーを単独で加えることにより、全結合を定めた。試験化合物をDMSO(10mM)中で希釈し、次いで、試験範囲(1〜10,000nM)に従ってアッセイバッファー中に希釈した。結合反応を開始する前に、ホモゲナイズした膜を試験化合物と共に20分間4℃で予めインキュベーションした。結合バッファー中に希釈され、32nMの最終濃度で送達される、25μlのH−WIN35,428(ロット番号2227についてのK 29.7nM)を加えることにより結合反応を開始した。反応物を2時間4℃でインキュベーションした。反応プレートを回収する前に、減圧マニフォールドを用いてフィルタープレートからPEIブロックを吸引する。Zymark Rapid Plate−96自動化ピペットステーションを用いて、各反応のアリコート(各100μlの反応穴の90μl)を反応プレートからフィルタープレートに移す。ブロックされたガラス繊維フィルター上での減圧濾過により、結合反応を終結させた。12チャネル吸引/洗浄系を用いて、5〜10インチHgにてフィルタープレートを吸引し、次いで、200μlの氷冷洗浄バッファー(50mMのトリス−HCl,0.9%のNaCl,pH7.4)で穴を9回洗浄した。プラスチック底部支持体をフィルタープレートから除去し、次いで、プレートをプラスチックホルダーにセットする。100μlのアリコートのシンチレーション流体を各穴に加え、次いで、各プレートの上部を粘着フィルムで密封する。プレートを10〜15分間強力攪拌し、その後、Wallac Microbetaカウンター(Perkin Elmer)を用いてcpm生データを収集する。
【0096】
結果の評価
各実験に関するWallac Microbetaカウンターから収集したcpm値のデータ流をMicrosoft Excel統計アプリケーションプログラムにダウンロードした。Wyeth Biometrics Departmentにより作成された変換両側ロジスティック用量応答プログラムを用いてIC50/EC50値を算出した。統計プログラムは、最大結合(全て)又は取り込み(アッセイバッファー)を示す穴由来の平均cpm値、及び最小結合(NSB)又は取り込み((1μMのデシプラミン(hNET)、1μMのパロキセチン(hSERT)又は10μMのマジンドール)を示す穴由来の平均cpm値を利用する。IC50/EC50値の評価をログスケールにて行い、及び直線は、最大及び最小結合値又は取り込み値の間で適合させた。各データポイントを最大及び最小結合値又は取り込み値に基づく平均パーセントに対して正規化することにより、全グラフデータ表示を作成した。各実験からの生データをプールし、次いで、プールしたデータを1つの実験として解析することにより、複数の実験から報告されたIC50/EC50値を算出した。ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンを用いた全実験は、記載した全てのアッセイに関する別々の実験において最低2回行った。
【0097】
ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンに関する結果を図3に示す。ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンに関する結果を以下に示す:
【0098】
【表1】

【0099】
実施例2:遠隔測定モデル
このモデルは、日周尾部皮膚温度(TST)パターンのエストロゲン調節に関する以前に報告されたプロトコルを修正したものである(Berendsen,ら,European Journal of Pharmacology,2001,419(1):47−54)。24時間にわたって、インタクトなサイクルのラットは、活動(暗)期にTSTを低下し、及び不活動(明)期にはTSTを高めたままである。卵巣切除(OVX)ラットにおいて、TSTは全24時間にわたって上昇しており、故に、活性(暗)期における通常のTSTの低下は消失しており、かくして、活動期のこのTST減少を回復する化合物の能力を測定した。体温及び身体活動の送信機(PhysioTel TA10TA−F40,Data Sciences International)を背側肩甲部に皮下移植し、及び体温プローブの先端は尾部の付け根から2.5cm超えたところで皮下に差し込んだ。7日間の回復期間後、残りの研究に関して、TSTの数値を連続して記録した。尾部皮膚温度の数値を、各動物から5分おきに10秒間のサンプリング周期にわたり得られた値として収集した。試験前日、12時間の活動(暗)期に記録された体温数値を平均することにより、各動物について平均ベースラインTST値を計算した。これらの研究では、暗サイクルの開始約40分前に動物に投与した。
【0100】
統計分析:遠隔測定モデルにおける正常なTSTの低下を回復する化合物の能力の評価は、記録時間にわたって5分毎に得られた12個の温度数値を平均することにより、各動物について計算された1時間毎のTST値を用いて分析した。遠隔測定モデルにおけるΔTSTを分析するために、反復測定二元配置分散分析(two factor repeated measure ANOVA)を実施した。分析に用いたモデルは、ΔTST=GRP(群)+HR(時間)+GRPHR+ベースラインだった。故に、報告された最小二乗平均は、両群が同一のベースライン値を有するものとした予想平均値である。1時間毎のGRPHR試料のPost−hoc試験は、各時間の群間の差のt−検定である。慎重にするため、p−値が0.025未満でない限り、結果は有意であると見なさなかった。全分析をSAS PROC MIXED(SAS,Carey,NC)を用いて実施した。
【0101】
ビヒクル(2%Tween/0.5%メチルセルロース)又は2%Tween/0.5%メチルセルロース中に溶解した30mg/kg,sc試験化合物をラット皮下に注入した。本モデルにおける以下のパラメーター:作用開始、TSTに対する効果持続時間、TSTの最大変化、及び化合物効果の持続時間にわたるTSTの平均変化を評価することにより試験化合物の効果を測定する。
【0102】
ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンは、OVX誘導体温調節障害遠隔測定モデル(遠隔測定モデル),30mg/kg,皮下において正常TSTを回復し、ビヒクル対照と比較して、p<0.05を示す。
【0103】
卵巣摘出に誘導された体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg,sc)でのラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの投与の結果を図4に示す。
【0104】
卵巣摘出に誘導された体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg,sc)でのラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの投与の結果を図5及び図6に示し、さらに以下の表に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
実施例3:
神経因性疼痛の脊髄神経結紮(SNL)モデルにおけるラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)及び(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの評価
材料及び方法
動物の維持及び研究は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに概略が述べられている実験動物の取扱及び使用に関する米国研究審議会(National Research Council)の方針及び指針に従って実施した。実験施設は、米国農務省により認可され、及び米国実験動物管理認定協会(American Association for Accreditation of Laboratory Animal Care)により認定された。研究プロトコルは、IASPの研究及び倫理問題委員会の指針(Zimmermann,1983)に従って、Wyeth研究所動物管理及び使用委員会(Wyeth Institutional Animal Care and Use Committee)により承認された。
【0107】
対象:到着時に150〜200gの体重の雄スプラーグドーリーラット(Indianapolis,IN)を、環境を調節した室内の金網ケージ中に個別に収容した。12時間の明/暗サイクル(6:30に光を当てる)を実施し、並びに食物及び水は自由に摂取させた。
【0108】
手術−脊髄神経結紮:O中の3.5%ハロタンを用いて1L/分でラットに麻酔をかけ、手術中は、O中の1.5%のハロタンを用いて維持した。L5及びL6神経の結紮は、左傍脊柱筋群を通る切開により行った。左側L5及びL6脊髄神経を脊柱近傍で単離し、次いで、6−0絹縫合を用いて後根神経節に対して遠位で堅く結紮した。4−0絹縫合及び創傷クリップを用いて傷を層状に閉じた。術後7日目に試験を開始した。
【0109】
触覚感度の評価:動物を高架金網ケージ内にセットし、次いで、45〜60分間、試験室に順応させた。手術0〜3日前に、一連の修正されたvon Freyモノフィラメント(Stoelting;Wood Dale,IL)を用いてベースライン触覚感度を評価した。Von Freyモノフィラメントを、順次、昇順又は降順で後肢足底部中央に押し当て、必要に応じて、可能な限り応答閾値近くに推移させた。閾値は、刺激に対して活発な回避応答を誘導する最低の力で示した。故に、回避応答は、次のより軽い刺激の呈示に至り、及び回避応答の欠如は次のより強い刺激の呈示に至る。ベースライン閾値が10g未満の力であるラットは研究から排除した。手術3〜4週間後に、触覚感度を再度評価し、及びその後に触覚感度(閾値≧5g)を示さなかった動物をさらに試験から排除した。平均ベースライン及び術後感受性が群間で同様になるように、対象を疑似乱数的に7つの試験群に分けた。確立された感度を反転する単一用量の試験化合物の能力を、経時的手法を用いて評価した。この手法では、30mg/kgの試験化合物又はビヒクルを腹腔内投与し、次いで、投与30、60、100、180及び300分後に感受性を再度評価した。
【0110】
結果を、Dixonノンパラメトリック試験により評価される50%閾値値(50%閾値,力g)として提供する。15グラムの力を最大力として用いた。個々の触覚感度閾値を平均して、平均応答(±1 SEM)を得た。一元配置分散分析(ANOVA)を用いて統計分析を行った。その後最小有意差分析を行うことにより有意な主効果をさらに分析した。有意差に関する基準はp<0.05だった。
【0111】
触覚感度の反転を、触覚感度のベースラインに対する復帰として定義し、及び以下の等式:
【数1】

[式中、50%閾値薬+術後は神経損傷対象における薬剤投与後の力gの50%閾値であり、50%閾値術後は神経損傷対象における力gの50%閾値であり、及び50%閾値術前は神経損傷前の力gの50%閾値である]
に従って計算した。最大効果の100%反転は、その実験条件での対象の平均術前閾値への復帰を示す。
【0112】
ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンに関する結果を図7に示す。図7に示されるように、ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンは、SNL神経因性疼痛モデルにおける触覚異痛を有意に反転する。(+)−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンもSNL神経因性疼痛モデルにおける触覚異痛を反転すると考えられる。
【0113】
ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ガバペンチン及びビヒクルに関する結果を図8に示す。該図は、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ガバペンチン及びビヒクルの投与から30、60、100、180及び300分後における%反転のプロットである。
【0114】
本明細書にて分子量のごとき物理特性、又は化学式のごとき化学特性について一定の範囲が用いられる場合、本発明の特定の実施態様の範囲にある全てのコンビネーション及びサブコンビネーションが本発明に含まれるべきことが意図される。
【0115】
本明細書に引用又は記載された特許、特許出願及び文献の各開示内容は、出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【0116】
様々な変形及び修飾が本発明の好ましい実施態様に対してなされ、並びにかかる変形及び修飾は本発明の精神から逸脱することなく行われ得ることを当業者は理解しよう。それ故に、添付の特許請求の範囲は本発明の精神及び範囲内にあるかかる全ての均等なバリエーションを包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】ノルエピネフリン/セロトニン介在体温調節に対するエストロゲン作用の概略である。
【図2】ノルエピネフリン及びセロトニン及びそれらの各受容体(5−HT2a、α及びα−アドレナリン)の相互作用の概略図である。
【図3】ラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンのためのノルエピネフリン(NE)取り込みアッセイ、セロトニン(5−HT)取り込みアッセイ及びドーパミントランスポーター(hDAT)膜結合アッセイに関する濃度の関数としての%取り込みのプロットである。
【図4】卵巣摘出誘導性体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg、sc)でのラセミ−1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの投与の結果を示す。
【図5】卵巣摘出誘導性体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg、sc)でのラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)の投与の結果を示す。
【図6】卵巣摘出誘導性体温調節障害の遠隔測定ラットモデルにおける1用量(30mg/kg、sc)での(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサンの投与の結果を示す。
【図7】術前(Pre)、ベースライン(BL)並びにラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン及びビヒクルの投与から30、60、100、180及び300分後における、Dixonノンパラメトリック検定により評価した50%感受性閾値(50%閾値,力g)のプロットである。
【図8】ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(ビシファジン)、(+)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、(−)−1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ガバペンチン及びビヒクルの投与から30、60、100、180及び300分後における、%反転のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象において少なくとも1つの神経系障害又は状態を処置するための方法であって、該対象へ有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有する組成物を投与する工程を含み;ここで、該神経系障害又は状態が、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、パニック障害、広場恐怖症、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害又はそれらの組み合わせである、方法。
【請求項2】
該組成物がさらに少なくとも1つのアドレナリンα2受容体アンタゴニストを含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該組成物がラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有するものである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
該組成物がラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有するものである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項5】
該神経系障害又は状態が血管運動症状である、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該血管運動症状が体熱感である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該対象がヒトである、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該ヒトが女性である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該女性が閉経期前である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該女性が閉経周辺期である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
該女性が閉経期後である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
該ヒトが男性である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
該男性が自然的、化学的又は手術的に男性更年期である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該神経系障害又は状態が慢性疼痛である、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該神経系障害又は状態が神経因性疼痛である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
処置を必要とする対象における少なくとも1つの神経系障害又は状態の処置のための医薬の調製におけるラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩の使用であって、ここで、該神経系障害又は状態が、血管運動症状、性的刺激及び衝動、線維筋痛、慢性疲労、視床下部性無月経、慢性疼痛、老年性認知症関連認知機能障害、記憶喪失、アルツハイマー病、健忘症、自閉症、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群及びその関連疼痛、レノックス症候群、脳血管疾患関連知的障害、統合失調症、統合失調性感情障害、統合失調症様障害、睡眠障害、月経前不機嫌性障害、選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)疲労症候群、広場恐怖症、境界性人格障害、便失禁、意識障害、昏睡、言語障害又はそれらの組み合わせである、使用。
【請求項17】
有効量のラセミ1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ラセミ1−(4−メチルフェニル)−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン又はその医薬上許容される塩を含有し、少なくとも1つのアドレナリンα2受容体アンタゴニストをさらに含有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−507550(P2008−507550A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522782(P2007−522782)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025974
【国際公開番号】WO2006/012474
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】