説明

移動に基づくコンテンツ配信を含む無線通信システム

【課題】無線通信リンクを介するコンテンツの配信が、無線トランシーバのモビリティ状態に基づいて行われるようにする。
【解決手段】システムは、特定のコンテンツに対する各加入者のモビリティに基づく享受権に相当する料金段階を利用する。すなわち、静止したユーザと同一のサービス品質を移動式ユーザが維持するためには、移動式ユーザにオプション料金が課される。したがって、移動式加入者としては、帯域幅の減少を経験することによって、または、より高い加入料金を負担することによって、モビリティの影響を被る。コンテンツ配信を制限することで、無線資源全体に対する移動と類似の現象による影響を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ配信を含む無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置および無線通信サービスに対する需要が、世界中で前例のない速度で増加し続けている。このようなシステムは、ますます、社会の成長部門にとって、音声およびデータ通信を提供するのに一般に利用される。これらのシステムは元はアナログ信号送受信技術に依存していたが、将来のシステムは種々のデジタル信号暗号化方式に基づいたものになるであろうとの点で、大方の意見が一致している。
【0003】
典型的な無線通信システムはポイント・ツー・マルチポイント型であり、1つの中央の基地局が、セルとして知られている受信可能範囲のローカル地理領域内に配置された複数の遠隔ユニットと通信する。このシステムは多重通信を提供し、フォワード方向(順方向)(基地局から遠隔ユニットへの方向)およびリバース方向(逆方向)(移動式遠隔ユニットから基地局への方向)の両方に信号を送ることができる。公衆交換機電話網(Public Switched Telephone Network, PSTN)のようなネットワーク、および遠隔ユニット、またはインターネットのようなデータ・ネットワークの間の通信をサポートするために、無線システムは、種々の論理構成要素と機能実体を規定しなければならない。
【0004】
現在広く使われている符号分割多重アクセス(CDMA)方式や時分割多重アクセス(TDMA)方式を検討してみる。いずれの方式も、フォワード・リンクおよびリバース・リンクを構成する無線チャネルの一定の論理形式を規定する。特に、フォワード・リンク・チャネルは、多くの場合、パイロット・チャネル、ページング・チャネル、および多数のフォワード・リンク・トラフィック・チャネルを有する。トラフィック・チャネルは、基地局と移動式ユニットとの間でペイロード・データを搬送するのに使われる。また、パイロット・チャネルは、一般に遠隔ユニットが基地局と同期した状態を維持するのに必要なものである。ページング・チャネルは、基地局が遠隔ユニットに対して、特定の接続と加入者ユニットのいずれか、または両方に対するフォワード・トラフィック・チャネルの割当てのような制御情報を通知するための仕組みを提供する。
【0005】
同様に、アクセス・チャネルがリバース方向にもリバース方向トラフィック・チャネルに加えて備わっている。アクセス・チャネルにより、遠隔ユニットは基地局に制御情報を伝達できる。例えば、要求されたように接続の割当てまたは割当て解除の必要を通知するメッセージを送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信システムの性能は種々の環境条件によって影響を受ける。これらの環境条件には大気圏での信号路損失が挙げられ、これによりフェージングや干渉が起こる。このフェージングには、セル内での特定の地勢によりもたらされるフェージングのみならず、受信信号強度の変動をもたらす建物のような特定の形体からの信号反射に起因する多重伝送路フェージングなども含まれる。遠隔ユニットが特に自動車で用いられる携帯電話機のように高速度で動作する可能性のある移動式ユニットであるシステムは、多重伝送路フェージングの影響を受けやすい。このような環境では、信号路が頻繁に高速度で切り替わる。
【0007】
加入者ユニットが基地局に対して移動しても、同様の影響がシステム性能に及ぶ。一旦動けば、基地局は加入者ユニットの位置を正確に見つけるのは困難である。その上、信号路は移動速度に比例する速度で絶えず切り替わっている。無線リンクを維持するためには、移動式加入者に対して余分のパワーとトラフィック・チャネルとを割り当てることが考えられる。このように無線資源を余分に割り当てると、他の加入者に割り当てることのできる資源まで奪ってしまうことになる。他の加入者に対するこのような有害な影響は、急速に移動している間や、無線リンクにおいてデータ・レートを高水準に維持するような場合に、無視できないものと感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、総じて無線ユーザの地域における移動および類似の現象によってもたらされる影響を緩和する。本発明のシステムは、特定のコンテンツに対する各加入者のモビリティ(移動)に基づく享受権に相当する料金段階を用いる。すなわち、静止したユーザと同一のサービス品質を移動式ユーザが維持するためには、当該移動式ユーザにオプション料金が課される。したがって、移動式加入者としては、帯域幅の減少を経験することによって、または、より高い加入料金を負担することによって、モビリティの影響を被る。
【0009】
本発明の特定の実施形態は、ポータブル式(移動できる)無線装置にコンテンツを配信する方法を含む。無線通信リンクが、ポータブル装置と基地局との間に確立される。この無線通信リンクは符号分割多重アクセス(CDMA)プロトコルを含むことができる。
【0010】
さらに、ポータブル装置のモビリティ状態を検出する。詳述すれば、このモビリティ状態は、静止、歩行、移動の少なくとも3種類のモビリティ状態から選ばれる。
【0011】
検出されたモビリティ状態に基づいて、限られたコンテンツが通信リンク上を送信される。各モビリティ状態は、複数の利用可能な料金プランのうちの少なくとも一つの料金プランに関連付けられている。これは、料金プランごとに、モビリティ状態に基づく配信可能なコンテンツ種類のセットの決定を含むことができる。
【0012】
また、配信可能なコンテンツの種類は、ポータブル式無線トランシーバのユーザに対してディスプレイを介して表示される。
【0013】
本発明の構成は、無線通信リンク上でのコンテンツの送信に影響を及ぼすコンピュータ・システムで具現化できる。ここで、ポータブル式無線トランシーバが無線通信リンクと通信する。ポータブル式無線トランシーバは、そのサービス・レベルおよびモビリティ状態を有する。コンピュータのプログラム・ルーチンが、サービス・レベルおよびモビリティ状態を管理して、無線通信リンク上を送信されるデータ速度に影響を及ぼす。
【0014】
サービス・レベルは、ポータブル式無線トランシーバの料金プランに基づく。詳細には、サービスの・レベルが、無線通信リンク上を送信できる複数の許容されるコンテンツの種類を特定できる。各許容されるコンテンツの種類は、対応するサービス・ポート番号、対応するプロトコル識別子、または対応するファイル形式によって特定されてもよい。
【0015】
モビリティ状態は、少なくとも3種類のモビリティ状態から選ばれることができる。また、このモビリティ状態は、無線通信リンクに関連する量(metric)、または、ポータブル式無線トランシーバにおけるモビリティ・データから算出できる。
【0016】
コンピュータのプログラム・ルーチンが許容されない送信を判定する。次に、コンピュータのプログラム・ルーチンは、無線通信リンク上の許容されない送信の送信をブロックする。
【0017】
より具体的な通信システムは、無線基地局トランシーバと、該無線基地局トランシーバと無線通信リンク上を通信するポータブル式無線トランシーバとを有する。コンピュータが、ポータブル式無線トランシーバに接続されることができる。ポータブル式無線トランシーバはその料金プランを有することができる。データは、無線リンクを介してトランシーバ間を伝送される。
【0018】
また、基地局におけるモビリティ処理ルーチンが、ポータブル式無線トランシーバのモビリティ状態を格納できる。このモビリティ状態は、基地局のプロセッサによって算出される。特に、モビリティ状態は、無線通信リンクの性能から得られるデータ、または、ポータブル式無線トランシーバが提供するデータから算出される。
【0019】
コンテンツ・フィルタを設けて、料金プランおよびモビリティ状態に基づいて、データが無線リンク上を送信されるのをブロックするようにしてもよい。コンテンツ・フィルタは、さらに、データのコンテンツの種類に基づいてデータをブロックできる。コンテンツの種類は、サービス・ポート番号、メッセージのプロトコル、またはファイル形式によって表される。
【0020】
さらに、ゲートウェイが、基地局と広域ネットワークとの間に配置されることができる。このゲートウェイはコンテンツ・フィルタを有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を実現するのに適した特定の通信システムのブロック図である。
【図2A】特定のフォワード無線リンク240のブロック図である。
【図2B】特定のリバース無線リンク260のブロック図である。
【図3】図1のサービス権テーブルの一例を示す説明図である。
【図4】OSIアーキテクチャ・モデルにおけるインターネット・プロトコルのブロック図である。
【図5】図1のモビリティ・データベースの概略図である。
【図6】特定のモビリティ状態処理ルーチンのフローチャートである。
【図7】特定のパケット処理ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
移動に基づくコンテンツ配信を含む無線通信システムの前述およびその他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示す本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面では、同一参照符号は異なる図面においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0023】
図1は、本発明の各実施形態を実現するのに適した特定の通信システムを示す概略図である。図示のように、一つ以上のサーバ2が、インターネット5のような広域ネットワーク(WAN)と通信する。各ネットワーク・サーバ2は、一般に、情報コンテンツ4を格納するデータ・ストア3を備える。このネットワーク・サーバ2は、ネットワーク5を介して、遠隔クライアントと通信し情報を交換する。このために、ネットワーク・サーバ2は、エンドユーザにウェブ・コンテンツを提供するウェブ・サーバを有してもよい。
【0024】
通信システム1は、一つ以上のゲートウェイ・プロセッサ10を介してWAN5へのインタフェースを提供する。各ゲートウェイ10は、通常、権限のないパケットから通信システム1を保護するファイアウォール11と、一つ以上の基地局20へのメッセージおよび基地局20からのメッセージを方向付けるルータまたはスイッチとを備える。また、ゲートウェイ10は、コンテンツ4’を格納するコンテンツ・データベース3’を有するローカルなネットワーク・サーバ2’と、サービス権データベース100(後述)およびモビリティ・データベース190(後述)のようなデータを格納するデータベースすなわちウェアハウス19を有するデータ・サーバ18とへのメッセージおよびこれらからのメッセージのルーティングを行ってもよい。
【0025】
各基地局20は、無線通信リンクを介して複数の加入者アクセス・ユニット(SAU)30と通信する無線トランシーバ23を制御する基地局プロセッサ21を備える。図においては例示のために、無線通信リンク25を有する加入者アクセス・ユニット30は一つしか図示していない。無線通信リンク25は、基地局20から加入者アクセス・ユニット30へのフォワード・リンク24と、加入者アクセス・ユニット30から基地局20へのリバース・リンク26とを有する。
【0026】
加入者アクセス・ユニット30は移動可能であり、無線リンク25を介して通信するための無線トランシーバ33を制御する加入者用プロセッサ31を備える。加入者アクセス・ユニット30は、ラップトップ・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、PDA(携帯情報端末)、インターネット・アプライアンス、またはその他の適当な装置のようなコンピュータ装置40と通信できる。加入者アクセス・ユニット30とコンピュータ装置40とは、インターネットが可能な電話のような一つのパッケージに一体化されてもよいことは、当業者には容易に理解されるところである。また、加入者アクセス・ユニット30それぞれが同一でなくてもよいことも、当業者には容易に理解されるところである。
【0027】
通信システム1は、デマンド・アクセス型ポイント・ツー・マルチポイントの無線通信システムである。すなわち、コンピュータ40は、フォワード・リンク24とリバース・リンク26上で実現される双方向無線通信を介してネットワーク・サーバ2,2’に対してデータの送受信を行う。なお、図示のポイント・ツー・マルチポイントの多重アクセス無線通信システム1において、特定の基地局20は、携帯電話通信ネットワークと同様の態様で、多数の異なった加入者アクセス・ユニット30との通信をサポートするのが一般的と理解すべきである。
【0028】
また、前述したように、ゲートウェイ10は複数の基地局20と通信できる。当業者には、各基地局20は、該当するゲートウェイ10を介してWAN5へのインタフェースとなることが容易に理解されるところである。この場合、複数のゲートウェイ10がトンネリング・プロトコルを利用して、加入者アクセス・ユニット30が一つの基地局から他の基地局へと移る際に加入者データを交換するものであってもよい。
【0029】
本発明の特定の実施形態によれば、無線通信リンク25は、符号分割多重アクセス(CDMA)プロトコルのような標準的なデジタル無線プロトコルを遵守する。ここで述べる技術は、時分割多重アクセス(TDMA)プロトコルを含むその他の無線プロトコルにも適用できる。また、本発明を実施するに当たっては、その他の標準的なプロトコルまたは独自プロトコル(proprietary protocol)を利用してもよいことは、当業者には容易に理解されるところである。
【0030】
図2Aは、特定のフォワード無線リンク240の概略ブロック図である。CDMA技術に従い、フォワード・リンクは、パイロット・チャネル242と、ページング・チャネル244と、複数のフォワード・トラフィック・チャネル246−1,…,246−Nとを有する。基地局20は、サービス品質(QOS)パラメータに基づいて、フォワード・トラフィック・チャネル246を加入者アクセス・ユニット30に割り当てる。特に、加入者アクセス・ユニット30は、所望のビット・レートを維持するために、フォワード・トラフィック・チャネル246の数を増やすことを要求してもよい。
【0031】
図2Bは、特定のリバース無線リンク260の概略ブロック図である。CDMA技術に従い、リバース・リンクは、アクセス・チャネル262と、複数のリバース・トラフィック・チャネル266−1,…,266−Mとを有する。フォワード・トラフィック・チャネル246と同様に、リバース・トラフィック・チャネル266の数は所望のビット・レートに応じて変わる。
【0032】
CDMAアーキテクチャにおいて、特定の加入者アクセス・ユニット30に対してより多くのチャネルを割り当てると、他の加入者アクセス・ユニットが利用できる資源が減少する。これにより、他の利用者に提供されるサービス品質が劣化する。加入者アクセス・ユニットが追加のトラフィック・チャネルを要求する一つの原因は移動環境下である。加入者アクセス・ユニット30が移動するのに伴い、静止した基地局20は、当該加入者アクセス・ユニット30に対してデータを提供するのが困難になってくる。これに対する対処策として、基地局はパワーを上げて、追加のトラフィック・チャネルを無線通信リンク25に割り当てる。これに対して、静止した加入者アクセス・ユニット30は、より低いパワーおよびより少ないトラフィック・チャネルを消費しながら、同一のデータ・レートを達成できる。基地局20としては、一つ以上の移動式ユニットにサービスを提供するために、安定している、すなわち、より一層静止している加入者に対してペナルティを課すのは望ましくない。しかし、静止した加入者アクセス・ユニット30に限られる種々の電磁界の干渉、または、無線リンク25における種々の電磁界の干渉により、静止した加入者でさえ基地局にとって移動しているものと見えることがある。
【0033】
本発明の実施形態によれば、加入者のサービス品質は料金プランまたはレベルに応じて決まる。すなわち、移動するユーザに対して、静止したユーザと同一のサービス品質を維持するためにオプション料金を課す。本発明の特定の実施形態によれば、3種類のモビリティ・レベル、すなわち、静止、歩行、移動を規定している。この3種類のモビリティ・レベルの定義と技術的な違いについては、ホストの無線通信システムの特色に基づく技術上の選択事項である。同様に、料金プランの詳細についても、通信システムの技術的パラメータと顧客のデモグラフィックス(平均年齢、収入、教育水準などを分析した統計的データ)に基づく技術上および営業活動上の選択事項である。
【0034】
サービス権テーブルの一例を図3に示す。図示のように、表100には3種類の規定されたモビリティ状態110、静止、歩行、移動を示す3つの縦列がある。横行は、利用可能な料金プラン120を表す。表のデータ欄が、加入者のサービス権を特定する。特定の実施形態において、データ欄はサービス権のビット・マップである。
【0035】
このような簡単な例において、加入者は歩行状態と移動状態において三階層のサービス、すなわち、完全サービス、部分サービス、サービス無しのいずれかを得ることができる。例えば、料金プランIIにあっては、加入者は静止時に完全サービスを、歩行レベルで動作しているときは制限付きサービスを、また、完全に移動しているときはサービス無しを受ける。これら3種類のモビリティ状態にわたって、コンテンツをいかに配分するかという問題が生じる。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、コンテンツは、開放型システム間相互接続(OSI)モデルを遵守するプロトコルにしたがって加入者アクセス・ユニットに提供される。詳細には、通信システム1は、TCP/IP規格を遵守する。よって、コンテンツの選択の仕方は、TCP/IP規格とインターネットの手法に従う。
【0037】
図4は、OSIアーキテクチャ・モデルにおけるインターネット・プロトコルのブロック図を示す。図示のように、OSIアーキテクチャ50は、物理層51、データ・リンク層52、ネットワーク層53、トランスポート層54、セッション層55、プレゼンテーション層56、アプリケーション層57の7つのプロトコル層を有する。各層は、それぞれ複数のプロトコルを含むことができる。一般に、コンテンツはアプリケーション層57のアプリケーション間で交換される。受信側アプリケーションにコンテンツを送信するために、コンテンツは、特定のアプリケーションのプロトコルにしたがってフォーマットされ、下位のプロトコルによりカプセル化される。宛て先で受信されると、下位のプロトコルが取り省かれてコンテンツが現れる。ネットワークにおけるコンピュータ間で伝送されるメッセージのサイズを減らすために、コンテンツは小さい単位に分割されてパケットとして配信される。インターネット5全体にわたって、これらのパケットはインターネット・プロトコル(IP)を遵守する。現に、ゲートウェイ10はTCP/IP規格を利用して、ローカル・ネットワーク・サーバ2’、データ・サーバ18および基地局とも通信できる。
【0038】
パワーやチャネル割当てのような無線資源が比較的長時間にわたって高速データ・レートを要求する加入者に取られると、他の加入者に対する影響が極めて大きくなるため、要求された帯域幅に応じて、提供されるサービスが選択されるか、除外される。このような場合、パワー、チャネルおよび特定のセルにおけるユーザ飽和度の結果として無線量(wireless metric)を選択してもよい。現に、加入者のモビリティが、サービス権テーブル100に基づいて当該加入者にパワーおよびチャネル割当てを与えるのに用いることができる。
【0039】
しかし、このような方法では、個々のパケットにおけるペイロード・コンテンツを認識しなければならない。また、ゲートウェイ10は、パケットを他の加入者に配信する影響を評価する必要が生ずる場合もある。このようなタスクは、パケットがバラバラになった状態で到着するという事実により複雑である。通常、すべてのパケットが受信されたか否かの判断やペイロード・コンテンツの最終的なサイズの判断は、宛て先のホスト・コンピュータ(すなわち、コンピュータ40)に任されている。宛て先ホストから流れてきたこのデータを分析することは、ゲートウェイ10に対して余分で、しかもおそらくは冗長な処理を課することになる。
【0040】
別の方法として、ファイル形式のようなコンテンツの概略的な特性に基づいて配信選択を行うことが挙げられる。ある種のファイル形式では、帯域幅および他のファイル形式を一層要求していることが、知られている。例えば、スクリプトは一般にほとんどコンテンツを有することなく、既にコンピュータ40上にあるソフトウェアに対して、予め定義づけた機能を実行するように命令する。テキスト形式のコンテンツも、このテキストがHTML形式のファイルの一部、電子メールのメッセージ、またはショート・メッセージのいずれであろうとも、集約度の大きい帯域幅(bandwidth intensive)、つまり高い帯域幅をほとんど必要としない。これに対して、音声および映像のコンテンツのストリーミングは、高い帯域幅を必要とする。
【0041】
ファイル転送プロトコル(FTP)により転送されるファイルは、さらに複雑である。
第1に、このようなファイルはサイズが不定である。第2に、このようなファイルはアプリケーション・プログラムにより圧縮されているので、そのファイル形式がパケット化された情報からでは判断できない。
【0042】
下位のプロトコルが上位のプロトコルをカプセル化しているので、各プロトコルはパケット内で識別できる。例えば、HTMLファイルは、アプリケーション層57においてハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)を遵守する。同様に、ストリーミング・データはアプリケーション層57においてリアルタイム・ストリーミング・プロトコル(RTSP)を遵守する。受信したIPパケットをアンパックすることで、通信システム1は内在するアプリケーションのプロトコルを識別することができる。
【0043】
すべてのパケットをアンパックすることは、それ自体は効果的ではあるが、コンピュータシステム1のゲートウェイ10および基地局20のノードに余分な処理を強いることになる。幸い、パケットのペイロード・コンテンツの別の概略的な指標が、中間コンピュータ、特にゲートウェイ10によって通常検査されるサービス・ポート番号により提供される。例えば、ポート80は一般にHTTPすなわちブラウザ・アクティビティを示している。
【0044】
本発明の特定の実施形態によれば、ゲートウェイ10がコンテンツをそのルーティングまたはファイアウォール処理の一部の際中に識別する。その後、ゲートウェイ10が、加入者の対応する基地局20に対してパケットを配信すべきか否かを判断する責任を持つ。
この処理を促進するために、モビリティ・テーブル190がゲートウェイ10と基地局20により維持されている。モビリティ・テーブル190はデータ・サーバ18のウェアハウス19にリレーショナル・データベース・テーブルとして格納されている。
【0045】
図5は、モビリティ・データベース190の概略図である。図示のように、3つのフィールド、すなわち、加入者識別フィールド192、料金プラン識別フィールド194およびモビリティ・レベル識別フィールド196を有する。各加入者に対する料金プランはシステム管理者によって定められているので、料金データ識別フィールド194は、サービス権テーブル100に反映されている加入者が選んだ料金プランを示す。これに対して、モビリティ・レベルは変動する。現在のところ特定の加入者が関わる基地局は、加入者アクセス・ユニット30の現在のモビリティ状態に基づいてモビリティ・データベース190におけるモビリティ・レベル識別フィールド196を定期的に更新する。
【0046】
特定のモビリティ状態処理ルーチンのフローチャートを図6に示す。基地局プロセッサ20がユーザのモビリティ状態を検出する。ルーチン210は、各加入者アクセス・ユニットのモビリティ状態を定期的に算出する。ステップ211におけるタイマ割込みによって、各繰返しが開始される。
【0047】
モビリティ状態の判定には、加入者アクセス・ユニット30でのモビリティ検出(たとえば、水銀スイッチによるもの)、およびリバース方向アクセス・チャネル262またはリバース方向トラフィック・チャネル266からの算出したデータなどを含む適当な技法を利用することができる。ステップ213では、システムと加入者アクセス・ユニット30とで利用する実用方法に特有なモビリティ量を測定する。
【0048】
モビリティ量から、ステップ215においてモビリティ状態を算出する。さらに、加入者アクセス・ユニットの実際の動き、または、干渉に起因する性能の劣化を、算出した状態に反映してもよい。ステップ217において、算出したモビリティ状態がモビリティ・テーブル190の加入者モビリティ・フィールドに格納される。
【0049】
加入者が移動していないこともあることから、ルーチン210ではステップ219において加入者アクセス・ユニット30にメッセージを送出して、現在のモビリティ状態およびサービス・レベルを知らせる。この情報は、コンピュータ40を利用する加入者のディスプレイに表示される。特に、現在のモビリティ状態を表すアイコン45(図1)が加入者のコンピュータのディスプレイ42上に表示される。加入者としては、このアイコンを選択することで、現在のサービス・レベルの詳細を表示させることができる。
【0050】
図7は、特定のパケット処理ルーチンを示す。ゲートウェイ10(図1)のファイアウォール処理の間に、当該ゲートウェイ10が各パケットを処理できる。このパケット処理ルーチン120は、宛て先の加入者アクセス・ユニット30のモビリティ状態を判定するステップ121からスタートする。このモビリティ状態の判定は、加入者の識別子をキーとして用いてモビリティ・テーブル190にアクセスし、その後、レコードからモビリティ状態196および料金プラン194を取り出すことにより達成できる。
【0051】
ステップ123では、取り出された料金プランおよびモビリティ状態の値に基づいて、サービス権テーブル100から、許容されるサービスを調べる。
【0052】
許容されるサービスが特定されると、コンテンツをフィルタリングするために、対応するビットマップが使われる。ステップ125では、許容されるサービスのビットマップと、パケットからのコンテンツ形式との論理和が取られる。加入者アクセス・ユニット30がこのコンテンツの受信を許容されれば(論理和の結果が1)、ステップ127においてフォワード・トラフィック・チャネル上を加入者アクセス・ユニットにパケットが転送される。しかし、加入者アクセス・ユニット30にパケットを送出できない場合(論理和の結果が0)、ゲートウェイ10がステップ129において許容されないパケットに応じてさらなる処理を行う。
【0053】
許容されないパケットに応じて、ゲートウェイ10は、加入者アクセス・ユニット30に後で配信されるように、データ・ウェアハウス19においてパケットを待ち行列につなげる。この場合、待ち行列のデータ・パケットを格納して管理するのに余分なオーバーヘッドを伴う。インターネットの手法により適った別の方法としては、インターネット制御メッセージをコンテンツのソース側ホストに戻して、ソースに対して以後のコンテンツ配信を停止するように要請することが考えられる。これは、例えばインターネット制御メッセージ・プロトコル(ICMP)における宛て先到達不能メッセージを利用することにより達成できる。代わりに、ソース側サーバ2,2’にICMP発信抑制(squelch)メッセージを送って、パケットのスループットを減少させて加入者アクセス・ユニット30に割り当てた無線帯域幅により厳密に一致させる。
【0054】
パケット処理ルーチン120はゲートウェイ10により処理されるものとして説明したが、このルーチンは、その全部または一部が加入者アクセス・ユニット30と通信する基地局のプロセッサ20で実行されるようにしてもよい。現に、ゲートウェイ10に大きな負荷をかけることと、当該ゲートウェイ10と基地局プロセッサ20の間のデータ路に大きな負荷をかけることとのいずれを採るか、これについては技術的な見地から選択が行われる。ゲートウェイ10に余分な処理が加わっても、コンテンツのスループットに対して極めて大きく待ち時間が増加するようなことはないと期待される。このことは、各基地局20が専用ゲートウェイ10と通信している場合に特に該当する。
【0055】
前述の実施形態の説明は、加入者アクセス・ユニット30に送出されるコンテンツに焦点を合わせている。加入者アクセス・ユニット30から要求を送る場合にも、前述のシステムを適用できるのが好ましい。すなわち、基地局20が、サービス権テーブル100から判定して加入者の現在のサービス・レベルと一致しないコンテンツに対する要求を廃棄できる。例えば、移動レベルIの加入者は、例示のサービス権テーブル100によれば、いかなるコンテンツの受信または要求もできない。したがって、加入者からのHTTP要求はいずれも、要求がサーバ2,2’によって提供されるのを待ってコンテンツをブロックすることなく、基地局によりブロックされる。加入者のモビリティ状態は要求の送信後に変更することがあるので、当該要求が送信された時におけるモビリティ状態に関係なく、コンテンツはなおブロックされ得る状態にある。
【0056】
したがって、本発明の特定の実施形態では、フォワード方向(SAU30への方向)へのパケットのみならず、リバース方向(SAU30から離れる方向)へのパケットを検証する。詳述すれば、許容されないサービス・ポートのアクティビティは、メッセージのソースとは無関係にブロックされる。この処理は、ゲートウェイ10と基地局20のノードで統合される。
【0057】
フォワード・トラフィックを制限することで、すべての利用者が、容認できるサービス品質を維持できる。このことは、リバース・トラフィック・チャネル上を短いユニバーサル・リソース・ロケータ(URL)ストリングの転送を要求するのみである、ウェブのブラウジングを加入者が行う場合に、特に該当する。しかし、加入者がリバース・トラフィック・チャネル上を大量のデータ・ファイルを送信しようと試みる状態もある。その一例としてはFTPファイル転送が挙げられる。
【0058】
リバース・トラフィック・チャネルを保つために、図7に示したパケット処理ルーチン120の少なくとも一部が、加入者アクセス・ユニット30で再現される。サービス権は基地局20で算出され、加入者アクセス・ユニット30に転送されて利用者に表示されるので、サービス権の算出処理は加入者アクセス・ユニット30において必要とされない。
【0059】
再び図7を参照して、加入者アクセス・ユニット30における処理はステップ125から開始する。ここで、許容されるサービスのビットマップとパケットからのコンテンツ形式との論理和が取られる。加入者アクセス・ユニットからこのコンテンツの送信が許容されれば(論理和の結果が1)、ステップ127においてリバース・トラフィック・チャネル上を基地局にパケットが転送される。しかし、パケットが転送できない場合(論理和の結果が0)、ステップ129において加入者アクセス・ユニットは許容されないパケットを転送しない。
【0060】
モビリティに基づくコンテンツ配信を含む無線通信システムは、コンピュータで利用可能な媒体を含むコンピュータ・プログラム製品として実現できることは、当業者には容易に理解されるところである。例えば、このようなコンピュータで利用可能な媒体としては、固体メモリ装置、ハード・ドライブ装置、CD―ROM、DVD―ROMまたはコンピュータ・ディスケットのような読取り可能メモリ装置が挙げられ、これらにはコンピュータで読取り可能なプログラムのコード・セグメントが格納されている。コンピュータ読取り可能媒体には、光学式、有線式もしくは無線式のバスもしくは通信リンクのような通信または転送媒体が含まれ、デジタル・データ信号もしくはアナログ・データ信号としてプログラムのコード・セグメントが運ばれる。
【0061】
以上、特定の実施形態について通信システムを詳述するとともに、図示したが、当業者には、特許請求の範囲で規定の本発明の範囲から逸脱しなくとも、種々の改変などが容易に考えられるところである。例えば、本発明の方法は種々の環境に適用できるものであり、したがって本願明細書で説明した環境に限られるものではない。特に、通信システム1における共有チャネル資源は無線用チャネルとして説明した。しかし、本願明細書で説明した技術は、アクセスがデマンド駆動で許可される、電話接続、コンピュータ・ネットワーク接続、ケーブル接続およびその他の物理媒体のような無線用チャネルとは別の媒体への共有アクセスを認める場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
20…基地局、23…無線トランシーバ、25…無線通信リンク、33…ポータブル式無線トランシーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル式無線トランシーバにコンテンツを配信するシステムであって、
無線通信リンクを介して第2無線トランシーバと通信する第1無線トランシーバであって、少なくとも1つの無線トランシーバがポータブル式無線トランシーバである、第1無線トランシーバと、
前記ポータブル式無線トランシーバのモビリティ状態と、
モビリティ状態に基づいて、前記通信リンク上のコンテンツ送信を制限するモジュールとを備えたコンテンツ配信システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−105971(P2009−105971A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26452(P2009−26452)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【分割の表示】特願2002−586650(P2002−586650)の分割
【原出願日】平成14年4月30日(2002.4.30)
【出願人】(504407103)アイピーアール ライセンシング インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】