移動プラットフォームから波の特性を判定するためのシステム及び方法
移動プラットフォームから1つ又は複数の波の特性を判定するシステム及び方法が開示される。超音波ドップラー式多層流向流速計のようなソナー・システムは、プラットフォームに対する水の動きをプロファイルすることができ、地球基準は、固定された地球基準に対するプラットフォームの動きの測度を求めることができる。水のプロファイルと地球基準測度との両方は、プラットフォームの動きを補償するために協働的に採用することができる。方向波スペクトルと非方向波スペクトルは、線形波理論により水面高さスペクトルに翻訳し、且つ有意な波の高さ、ピーク周期、及びピーク方向のような特性を計算するのに用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み入れられる、2009年5月27日に出願された米国特許仮出願第61/181,585号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
開示された技術は、水中音響計測システムに関し、より詳細には、波のスペクトル及び波の特性を計測するのに用いられる超音波ドップラー式多層流向流速計に関する。
【背景技術】
【0003】
参照によりその開示全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,052,334号で説明されるように、流体媒体における流れを計測するためのドップラー・ソナーの使用が十分に確立されている。従来の超音波ドップラー式多層流向流速計(acoustic Doppler current profiler)(ADCP)は、典型的に、周知のヤヌス構成で配列された音響トランスデューサのアレイを用いる。この構成は、直交面内で対を成す4つの音響ビームからなる。ADCPは、ビーム軸に沿って投射され、そのビーム長さが放射された音響パルスのビーム長さのほぼ半分であるレンジ・セルにわたって平均される、速度成分を計測する。平均流れは、ビームにわたって水平方向に一様であるとみなされるので、その成分は、単純に対向するビームの差分をとることによって回収することができる。この手順は、垂直方向の流れ及び/又は未知の計器チルトによる汚染の影響を比較的受けない。
【0004】
しかしながら、流体媒体における波の分析は、はるかに複雑である。波のフィールドは、統計的に定常且つ同次であるが、あらゆる時間の瞬間における波の速度はアレイにわたって変化し、結果として、ビームに沿って計測された速度をサンプル毎に水平成分及び垂直成分に分離することは可能ではない。1つのソナー・ビームが垂直な場合、そこにおける周波数スペクトルを分離することができ、水平速度スペクトルの比から方向の粗い推定が得られる。しかし、位相情報は、この手順を通じて取り返し不能に失われ、推定は、波が一方向に拡散するときに実質的にバイアスされる。結果として、この推定量は、おそらく増大する場合以外は、特に有用ではない。しかしながら、種々のレンジ・ビンの間の相互相関にある位相情報が存在し、この事実は、波向の推定に従来の信号処理技術を適用することを可能にする。
【0005】
方向波スペクトル(wave directional spectrum)(WDS)は、流体媒体内の波の物理的挙動を説明するのに有用な、方位角及び波の周波数の関数としての波向の数学的表現である。方向波スペクトルを得るのに用いられる最も一般的な既存のデバイスは、以下でさらに詳しく説明される、1)ピッチ及びロール・ブイ、及び2)PUVトリプレットである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピッチ及びロール・ブイは、典型的に、加速の垂直成分と共に、波の傾斜の代わりとして2方向のチルトを計測する。バリエーションは、代わりに3つの速度成分のGPS(Global Positioning system(全地球測位システム))計測を用いる。計測された時系列は、フーリエ変換され、自動スペクトル及びクロススペクトルが形成され、結果として各周波数におけるクロススペクトル行列がもたらされる。クロススペクトル行列の要素は、各周波数における方向波スペクトルの方向(2θを通る)の最初の5つのフーリエ係数と直接関係付けられる。これらのブイは、典型的に、より深い水中で用いられる。残念なことに、これらのブイに関する伝達関数は複雑であり、非線形であり、且つ判定するのがしばしば難しい。加えて、ブイのための係船索の存在が、付加された動きに起因して分析に付加的な複雑さを付加する。そのうえ、こうしたブイは、比較的費用がかかり、天候及び盗難の影響を受けやすく、且つ流れ又は波の高さを計測することができない。
【0007】
PUVトリプレット(圧力と水平速度の両方の成分、すなわちu及びvの、それらの計測に起因してそのように名付けられる)は、基本的には一体型の圧力トランスデューサを有する一点電磁気流れメータ(single point electromagnetic current meter)である。PUVトリプレットからの時系列の圧力及び水平速度は、ピッチ及びロール並びにGPSブイによって行われる計測と類似した方法で処理され、同じく各周波数における方向の最初の5つのフーリエ係数のみを与える。PUVトリプレットは、典型的に、船底に設置され、一般に浅い水中でのみ有用である。この顕著な能力の欠如は、水深の増加に伴う波の速度及び圧力の低下から生じる高周波数応答の減少に起因する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシステム、方法、及びコンピュータ可読媒体の各々は、幾つかの態様を有し、そのうちの単体の1つだけが単独でその望ましい属性をもたらすわけではない。この発明の範囲を制限することなく、より際立ったその特徴がここで簡潔に解説されるであろう。
【0009】
一実施形態において、少なくとも1つの波の特性を判定するためのシステムが提供される。システムは、プラットフォームに対する水の動きを示すデータを得るように構成されたソナー・システムを含む。システムはまた、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを得るように構成された地球基準センサを含む。加えて、システムは、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を判定するように構成されたプロセッサを含む。
【0010】
別の実施形態において、少なくとも1つの波の特性を判定する方法が提供される。方法は、超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信することを含む。固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータも基準センサから受信される。ADCP及び基準センサと通信するプロセッサを用いて、受信したデータに基づいて少なくとも1つの波の特性が判定される。
【0011】
別の実施形態において、電子装置上で少なくとも1つの波の特性を判定する方法が提供される。方法は、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信することを含む。受信されたデータの少なくとも一部は、固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換される。変換されたデータに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルが判定される。方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルが判定される。方向波スペクトルと非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性が導出される。
【0012】
別の実施形態において、命令を含むコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。実行されるときに、命令は、超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信し、基準センサから固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを受信し、且つ、ADCP及び基準センサと通信するプロセッサを用いて、受信したデータに基づいて少なくとも1つの波の特性を判定する方法を行う。
【0013】
さらに別の実施形態において、命令を含むコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。実行されるときに、命令は、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信し、受信したデータの少なくとも一部を固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換し、変換したデータに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定し、方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定し、且つ、方向波スペクトルと非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出する方法を行う。
【0014】
本発明及び従来技術を越えて達成される利点を要約するために、本発明の或る目的及び利点が本明細書の上記で説明されている。もちろん、本発明のあらゆる特定の実施形態に従って必ずしもすべてのこうした目的又は利点が達成される必要はないことが理解されるであろう。したがって、例えば、本発明は、本明細書で教示され又は提案される場合があるような他の目的又は利点を必ずしも達成する必要なしに本明細書で教示され又は提案される場合の1つの利点又は利点の群を達成する又は最適化する方法で具体化され又は実施されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0015】
これらの実施形態のすべては、本明細書で開示された本発明の範囲内となることを意図される。これらの及び他の実施形態は、添付の図面への参照を行う好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなり、本発明は、開示された如何なる特定の好ましい実施形態(単数又は複数)にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、潜水式の(submerged)移動プラットフォーム上に設置されている。
【図1B】方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる船底に設置された音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、海上移動式のプラットフォーム上に下向き方向に設置されている。
【図2】本明細書で開示された一実施形態に係る1つ又は複数の波の特性を判定するためのシステムの機能ブロック図である。
【図3】図2のブロードバンド超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)のための電子装置の例示的な実施形態のブロック図である。
【図4A】一実施形態に係る少なくとも1つの波の特性を計算するためのシステムのトップレベル・プロセス・ブロック図である。
【図4B】一実施形態に係る少なくとも1つの波の特性を計算するためのプロセスの流れ図である。
【図5】図4のシステムにおけるデータ収集のためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図6】図4のシステムにおけるデータを前処理するためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図7】図4のシステムにおける波の処理のためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図8A】図7のプロセスにおける品質に関してスクリーニングされる例となるデータを例証する図である。
【図8B】図7のプロセスにおける品質に関してスクリーニングされる例となるデータを例証する図である。
【図9A】図7のプロセスにおける方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図9B】図7のプロセスにおける方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図10】図9A及び図9Bのプロセスにおける時系列データを重なりセグメントに区切るプロセスを例証する図である。
【図11】図9A及び図9Bのプロセスにおける周波数空間係数を再マッピングするプロセスを例証する図である。
【図12A】観測された周波数と水基準座標系の周波数との間の関係性を例証する図である。
【図12B】観測された周波数と水基準座標系の周波数との間の関係性を例証する図である。
【図13A】図7のプロセスにおける非方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図13B】図7のプロセスにおける非方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図14】図13A及び図13Bのプロセスにおけるデミーンされた(demeaned)時系列データを例証する図である。
【図15】図13A及び図13Bのプロセスにおける周波数空間及びパワーを再マッピングするプロセスを例証する図である。
【図16】水面トラック・データを使用して1つ又は複数の波の特性を判定するためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で説明される実施形態は、流体中で伝搬する波の特性を判定することを含む。一実施形態は、水中で又は水面で動いているプラットフォームから、海面での波の高さ、周期、及び方向を含むことがある少なくとも1つの波の特性を判定することを含む。こうした実施形態は、プラットフォームに対する水の動きをプロファイルする超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)と、プラットフォームの動きの地球基準(earth referenced)(ER)測度を判定する地球基準手段とを採用することができる。地球基準手段は、慣性系、地球に対するプラットフォームの動きを計測するボトムトラッキングADCP、又は移動プラットフォームに対する固定された地球基準の位置を追跡することができるあらゆる適切な手段、例えばGPSシステムを備えることができる。水のプロファイルと地球基準計測との両方は、プラットフォームの動きを補償するために協働的に採用することができ、プラットフォームは、或る未知の部分的に相関した様式で波と共に動くことができる。地球基準データとプロファイル・データとを組み合わせることによって、潜流の軌道速度の対地計測を構築することができる。時系列の地球基準軌道速度に波の処理を適用することができ、結果として得られるスペクトルは、異なる時間スケールでの動きを補正することができる。スペクトルがドップラーシフトを補正されることが可能となるように、プラットフォームの速度及び姿勢、並びに地球基準平均流れを保存することができる。結果として得られる方向波スペクトル(DWS)と非方向波スペクトル(NDWS)は、線形波理論により水面高さスペクトルに翻訳し、且つ有意な波の高さ(Hs)、ピーク周期(Tp)、ピーク方向(Dp)、波の軌道速度、及び/又は波の軌道エクスカーションのようなパラメータを計算するのに用いることができる。
【0018】
ADCP波計測の背後にある1つの原理は、海面の下の波の軌道速度をADCPによって計測することができることである。ADCPは、船底に上向きに設置され、且つ潮流と平均水深を計測するための圧力センサを有することができる。時系列の速度を累算することができ、これらの時系列の速度から、速度パワースペクトルを計算することができる。水面高さスペクトルを得るために、線形波の運動学を用いて速度スペクトルを水面変位に翻訳することができる。この翻訳を計算するために、計測された各ビンの深さと全水深を用いることができる。方向スペクトルを計算するために、位相情報を保存し、且つこの計算に用いることができる。各ビームにおける各ビンは、アレイにおける独立したセンサであってもよい。アレイにおける各センサと他のすべてのセンサとの間でクロススペクトルを計算することができる。結果は、各周波数帯での各センサと他のすべてのセンサとの間のパスにおける位相情報を含んでもよいクロススペクトル行列である。特定の周波数でのクロススペクトルは、特定の周波数での方向スペクトルと直線的に関係付けられてもよい。この前進関係を逆にすることによって、我々は方向スペクトルを解明することができる。この位相コヒーレント手法は、固定されたADCPに関する多くの利点を有するが、これは、動的に動いているADCPに関する欠点を有する場合がある。
【0019】
しかしながら、他の実施形態において、位相コヒーレント手法は、動的に動いているADCPと共に用いることができる。軌道速度のADCP計測はまた、移動プラットフォームのアルゴリズムの使用をサポートすることができる。非位相コヒーレント手法よりも問題をやや扱い難くするコヒーレントの処理及び動きと関連付けられたキャッチ22が存在する。位相コヒーレント手法により、波の方向が計測されることを可能にする計測された情報は、アレイを横切って広がる波の空間的な位相差とすることができる。固定された状況において、この情報は、波向の統計的測度を構築するために、時間にわたって組み合わせることができる。アレイによって計測されるサンプルとサンプルとで情報を組み合わせるのに必要なのは、計測が空間的に実質的に同一であることである可能性がある。しかしながら、アレイにおけるセンサが、位置及び配向を1つのサンプルから次のサンプルへと変化させている場合、それらを時間において組み合わせることは、りんごとみかんを平均する効果を有するであろう。波についての貴重な位相情報は、アレイの動きによって導入される位相の変化によって混同されるであろう。1つには、アレイの正確な動きの追跡を保ち、且つそれが固定された場所及び配向でアレイによって行われたかのように1つ1つの計測を時間において翻訳し、次いで、時間において情報を組み合わせることができる可能性がある。しかしながら、これを行うために、1つには、正確に各瞬間に波がどこにあったかを知る必要があり、波のスペクトルを計算する目的は頓挫するであろう。この問題の難しさ故に、本開示で非位相コヒーレント手法が強調される。時間領域処理ではなく、空間領域処理が、位相コヒーレントの課題に対処することができる。
【0020】
本明細書に記載のシステム及び方法は、限定ではなしに、係留中の動き、固定された速度及び方向、動的速度及び方向、並びに流れを含む、多くの種類の動きを説明することができる。波の伝搬は、物理学の長く研究されている分野である。幾つかの波は、水中で伝搬する。平均流れは、水を地球に対して動かすことができる。そこから水の速度が計測されるプラットフォームは、それ独自の独立した動きを有する場合がある。これらの基準座標系(水、プラットフォーム、及び地球)の各々は、それ独自の速度及び方向を有することがある。加えて、多くの時間スケールにわたる、これらの基準座標系の相対的な動きにおける動的変化が存在することがある。
【0021】
係留中の動きは、システムが係船索に取り付けられた場合に見る場合がある種類の動きを含意する。波の軌道速度に伴う回転、チルト、及び軌道の動きのすべては、短い(0.5秒)時間スケールでの各サンプルの計測に影響を及ぼす種類の動きである。例えば、システムが、回転しているつりあい浮標水中プラットフォーム(neutrally buoyant underwater platform)に取り付けられる場合、システムは、潜流のエネルギーによりピッチ、ロール、及び上下浮動(heave)する可能性がある。システムの平均速度は0とすることができる。係留する動きは、時系列のデータを構築する1つの方法は、船首方位、ピッチ、及びロールを用いてすべてのサンプルを共通の基準座標系に変換することを含むため、特に難題である。加えて、システムは、或る部分的に相関した様式で波と共に動いてもよい。システムが波と共に常に動いている場合(波に追従するブイの場合のように)又はシステムが常に静止している場合(船底に設置されたシステムのように)、1つの計測のみが要求されるすべてである場合がある。しかしながら、システムの基準座標系は、波と共に、部分的に動く、完全に動く、又はまったく動かない可能性があり、この応答は、時間と共に変化する可能性があるので、幾つかの実施形態において、それにシステムが取り付けられるプラットフォームの地球に対する動きと、システムに対する水の動きとの、2つの計測を行うことが有益な場合がある。この動きは、速度の3軸と、船首方位、ピッチ、ロールを含むことができる。
【0022】
固定された速度及び方向は、波のサンプリング・インターバルの持続時間、例えば10〜20分にわたって、システムが比較的固定された平均速度及び方向並びに深さを有することを含意する。平均速度は、システムが波を地球基準座標系においてそれらが実際にそうであるのとは異なる周波数で観測することがあるので、この問題への解決策に影響を及ぼす可能性がある。例えば、あなたは反対方向に動いている波の中に航走しているボートに乗っている。地球基準座標系における実際の周期(波の山の間の時間)は8秒である。しかしながら、あなたは波の方に動いているため、あなたは、波の山を6秒ごとに観測する。波はあなたの動きによって地球上で変化しないが、それらの周波数のあなたの観測は変化する。前進の動きの方向の波の成分(cos[船首方位−波向])は、結果に影響を及ぼす。
【0023】
動的速度及び方向は、たとえば10〜20分の波のサンプリング・インターバルの間に、システムが速度、方向、又は深さを、平均がもはや代表的なものではないようにするのに十分なだけ顕著に変えることを含意する。例えば、自律型水中航走体(Automated Underwater Vehicle)(AUV)は、深さ10mで2分間にわたって10ノットで北に、次いで、深さ20mで5分間にわたって3ノットで東に航行する。動的速度は、固定された速度と同様の効果を有する可能性があるが、これはまた、より短い時間スケールで異なる効果を与える可能性がある。例えば、あなたは、波の中に10分間にわたって航走し、次いで、方向転換し、波と共に10分間にわたってバックして航走する。往路の波は、より高いドップラーシフトされた周波数で観測される。復路の波は、より低い周波数で観測される。データセットは、もはや「りんごとみかんを混ぜること」なしに統計的に安定な20分のセットに組み合わせることはできない可能性がある。一実施形態において、各10分セグメントは、その動きを個々に補正される。
【0024】
海流は、小さいことがあるが、平均流れ上で伝搬する波が、そうでなければ標準分散関係によって表される波長とは異なる波長にドップラーシフトされるため、依然として波の計測に影響を及ぼす可能性がある。これは、我々が前進の動きに起因する波の周波数の観測されたドップラーシフトを補正するときに重要な場合がある。2つのドップラーシフトの間の1つの相違は、前進の動きは地球基準座標系における波の周波数を顕著に変化させないが、観測された基準座標系における観測された周波数を変化させる可能性があるということである。そのため、我々は波を移動プラットフォームとは別なように観測する場合があるが、我々がそこにいなかったかのように、それらは標準分散関係に従って水を通して依然として伝搬している。それに対して、平均流れは周波数を顕著に変化させないが、所与の周波数での波の波長を修正する場合がある。これは、地球基準座標系において所与の周波数の波が伝搬する方法を変化させることがある。例えば、流れは存在せず、あなたは接近してくる波の中へ動いている。波は、実際には8秒周期であるが、あなたは6秒周期で観測する。深さ10メートルで感じられる軌道速度は、8秒周期の波のものである。別の例として、あなたは地球に対して静止して座っている。平均流れに対して伝搬する8秒周期の波が存在する。流れは、波長を短くして、深さ1メートルで感じられる軌道速度を、典型的な8秒周期の波よりもかなり小さいものにする。
【0025】
図1A及び図1Bは、波のスペクトルを判定する際の上記で説明された動きの種類のいずれかを説明することができる計測値を得ることができるシステムを例証する。図1Aは、方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、潜水式の移動プラットフォーム上に設置されている。システム100は、潜水艦又はAUV(自律型水中航走体)のような移動プラットフォームに設置され、且つ、ソナー電子装置及び処理装置を収容する本体要素と、ヤヌス構成で配列された個々のトランスデューサ要素を有するマルチ・トランスデューサ・アレイ103とを含む。このトランスデューサ・アレイ103は、流体媒体110の水面と平行な水平面108からさらに発散する垂直面106と同一平面内にある音響ビーム104を生成する。流体媒体110は、ほとんどの場合、自然の又は人工の水塊、特に海洋である。図1Aの実施形態ではヤヌスアレイ構成が用いられるが、水平面108に対し角度をなす関係性を有するビームを形成する他のアレイ構成が用いられてもよいことに注目されたい。例えば、「ピンホイール(pinwheel)」アレイ(たとえば、音響ビームがアレイの縦軸から斜めに発散するようなアレイ)、又は「スター(star)」アレイ(同一平面内ではない、斜めになっていないビーム)が用いられてもよい。加えて、本明細書で開示された実施形態と併せて位相又は時間遅延されたアレイが用いられてもよい。前述のように、システム100は、ボトムトラッキングADCP、慣性系、又は全地球測位システム(GPS)ベースの測位システムのような地球基準システムをさらに備えてもよい。
【0026】
図1Bに示すように、トランスデューサ・アレイ103はまた、下向きに投射される音響ビーム104が生成されるように、水上艦艇120の船体内のような水面又は水面付近での用途に用いるために、反転されてもよい。このようにして、種々の深さにおける及び流体体積110のボトムにおけるWDS又は流れ速度を計測することができる。水深とは異なる場合がある、ボトムよりも上のアレイの高度(たとえば、局所的なボトムよりも上のアレイの高さ)もまた、この構成を用いて計測することができる。
【0027】
図2は、本明細書で開示された一実施形態に係るシステムの機能ブロック図である。例証されたシステム200は、プロセッサ210への入力としてADCP202と地球基準システム204とを含む。プロセッサ210はまた、ユーザから又は環境からデータを受信するために他の入力デバイス206に接続することができる。適切な入力デバイス206は、キーボード、ボタン、キー、スイッチ、ポインティング・デバイス、マウス、ジョイスティック、遠隔制御、赤外線検出器、ビデオカメラ(たとえば、手での合図又は顔での合図を検出するためにビデオ処理ソフトウェアと接続される可能性がある)、動き検出器、又はマイクロフォン(たとえば、ボイス・コマンドを検出するために音声処理ソフトウェアと接続される可能性がある)を含むがこれらに限定されない。温度センサ、圧力センサ、及び音響トランスデューサのような他の入力デバイス206もまた、プロセッサ210にデータを提供することができる。
【0028】
プロセッサ210は、ハードウェア、ソフトウェア、コンピュータ可読媒体上に格納されたファームウェア、又はこれらの幾つかの組合せに組み込まれてもよい命令に従って受信したデータを処理することができる。生データ、部分的に処理されたデータ、又は十分に処理されたデータを、システム200のメモリ220に格納することができる。情報はまた、システム200のディスプレイ230上に示す又は別の出力デバイス240によって出力することができる。適切な出力デバイス240は、ディスプレイ及びプリンタを含む視覚出力デバイスと、スピーカ、ヘッドホン、イヤホン、及びアラームを含む音声出力デバイスと、フォース・フィードバック・ゲーム・コントローラ及び振動デバイスを含む触覚出力デバイスとを含むがこれらに限定されない。
【0029】
図3は、本明細書で開示された実施形態のいずれかとの関連において用いることができるTeledyne RD Instrumentsによって販売されているWorkhorse Monitor ADCPのようなブロードバンドADCP300のための電子装置の例示的な実施形態を例証する。以下の解説はADCPシステムを言及するかもしれないが、ユーザの特定の用途及び必要に応じて、ナローバンド・ドップラー・システム又はドップラー・ベースでないシステムのような他のモデル及びタイプのソナー・システムが、本明細書で開示された実施形態と共に用いられてもよい。
【0030】
再び図3を参照すると、トランスデューサ・アレイ103は、ミキサ・ネットワーク172と、ローパスフィルタ・ネットワーク174と、サンプリング・モジュール176と、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)(DSP)178とを含むことができる電子装置組立体170に電気的に接続することができる。音響信号の受信によりトランスデューサ・アレイ要素140によって生成された信号は、送信/受信スイッチ180を介して、電子装置組立体170によるさらなる処理のために信号(単数又は複数)を同調し且つ増幅する前置増幅器182及びレシーバ増幅器184に送ることができる。送信/受信スイッチ180を介して伝送信号をトランスデューサ要素140に送るために、コーダ送信器186及び電力増幅器188をDSP178と併せて用いることができる。したがって、同じトランスデューサ要素を送信機能と受信機能との両方のために用いることができる。例示的なブロードバンドADCPシステムに関する付加的な詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Teledyne RD Instruments、Inc.に譲渡された米国特許第5,208,785号の「Broadband Acoustic Doppler Current Profiler」に含まれる。
【0031】
移動プラットフォーム、例えば、図1A又は図1Bで例証される移動プラットフォーム上に設置されるADCP300は、船体の既存の穴を使用することができる。ADCPは、船体と同じ高さにではなく同一平面にあってもよい。プラットフォームに対するピッチ、ロール、及び船首方位の固定されたオフセットは、これらのオフセットをADCPに入力し、且つADCPに船座標変換を行わせることによって対処することができる。これはまた、オフセットと0の船首方位を用いる地球変換で達成することができる。結果として得られる出力は、ADCPビームに沿うのではなく、右舷、前進、マストの形態となるであろう。これは、さらなる処理を簡単化するのに有用な場合がある。
【0032】
移動プラットフォームから波と流れを計測することは、多数の基準座標系及び座標系を使用することができる。幾つかの実施形態は、波に対するトリプレット処理を使用するため、座標変換を用いてビームにわたるデータを組み合わせることが可能である。計器に速度データをビーム座標から船座標に前処理させて、船へのピッチ及びロール・オフセットを補正することが便利な場合がある。このシステムにおいて行われるその後の処理は、プロファイル・データがインストール・オフセットを既に補正され、且つ船座標にあるとみなすことができる。
【0033】
図4Aは、一実施形態に係る1つ又は複数の波の特性を判定することができるシステム400Aのトップレベルブロック図である。例証されるシステム400Aは、プロファイリングADCP402、慣性系404、ボトムトラッキングADCP406、及びGPS408のあらゆる組合せを用いてデータを得ることができる。システム400Aはまた、データ収集システム410、前処理システム420、及び波の処理システム430を含むことができる。データ収集システム410、前処理システム420、及び波の処理システム430のうちの1つ又は複数の少なくとも一部は、プロセッサ、例えば、プロセッサ210(図2)上に実装することができる。
【0034】
プロファイリングADCP402は、移動プラットフォーム、例えば、図1A又は図1Bで例証されるプラットフォーム上に設置することができる。プロファイリングADCP402はまた、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。プロファイリングADCP402は、移動プラットフォームに対する波のデータ・プロファイルを得るために用いることができる。
【0035】
慣性系404は、地球基準として用いることができる。例えば、一実施形態において、慣性系404は、地球基準システム204(図2)とすることができる。航行に要求されるよりもかなり低い性能をもつ慣性系を、波の処理のために地球基準に対して用いることができる。慣性データがドリフトを被る場合であっても、波の周波数を計測するために慣性系のデータを用いることができる。慣性系は、波の計測システムに速度(X、Y、Z)と配向(H、P、R)を提供することができる。慣性系は非常に精密なものとすることができるが、慣性系の共通の制限は、それらが時間と共にドリフトする可能性があるということである。シューラ振動は、しばしば、例えば約82分の周期でオフセット又はドリフトを引き起こすことがある。慣性系はドリフトを被るが、それらは一般に小さいスケールファクタ誤差を有する。波の計測は、典型的には、スケールファクタが良好である限り、慣性ドリフトオフセットによる影響を受けない。波の軌道速度の大きさは、適正にスケール変更されるが、平均速度及びドリフト誤差上にスーパーインポーズされることがある。オフセットはFFT処理によって除去することができるので、波長帯の周波数を完全な状態のまま残すことができる。
【0036】
代替的に又は加えて、ボトムトラッキングADCP406を地球基準として用いることができる。例えば、一実施形態において、ボトムトラッキングADCP406は、地球基準システム204(図2)とすることができる。ボトムトラッキングADCPは、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。ボトムトラッキングADCP402は、地球に対するプラットフォームの動きのデータ・プロファイルを得るために用いることができる。このデータは非同期性であってもよい。
【0037】
代替的に又は加えて、GPS408からのデータを、地球基準速度のソースとして用いることができる。例えば、地球基準システム204(図2)は、GPSシステムを備えることができる。水面プラットフォームに対して、例えば、図1Bに示すように、GPSシステムを用いることが有利な可能性がある。
【0038】
データ収集システム410は、プロファイリングADCP402、慣性系404、ボトムトラッキングADCP406、及びGPS408のあらゆる組合せからデータを受信することができる。加えて又は代替的に、データ収集システム410は、あらゆる地球基準204(図2)からのデータ及び/又はユーザ入力デバイス206(図2)からのあらゆる入力を受信することができる。加えて、データ収集システム410は、受信したデータを同期させることができる。データ収集システム410に関するさらなる詳細は、後で図5との関連において提供される。
【0039】
前処理システム420は、データ収集システム410に接続することができ、これによりデータ収集システム410によって得られるデータのいずれかを受信する。前処理システム420は、プラットフォーム、水、及び地球基準座標系を分離することができる。前処理システム420はまた、受信したデータの少なくとも一部を同じ座標系にもっていくために、1つ又は複数の座標変換を行うことができる。前処理システム420によってレバー・アーム補正も行うことができる。加えて、前処理システム420は、波のバースト累算を行うことができる。前処理システム420に関するさらなる詳細は、後で図6との関連において提供される。
【0040】
波の処理システム430は、前処理されたデータを得るために前処理システム420に接続することができる。波の処理システム430は、以下の機能、すなわち、データを予めスクリーニングすること、プラットフォームの動きを除去すること、方向波スペクトルを判定すること、非方向波スペクトルを判定すること、波のスペクトルを再びスケール変更すること、及び1つ又は複数の波のパラメータを判定すること、のうちの1つ又は複数を含むことができる。1つ又は複数の波の特性を、波の処理システム430から出力することができる。このデータは、電子装置、例えば、ディスプレイ230(図2)に出力することができる。波システム430に関するさらなる詳細は、後で図7との関連において提供される。
【0041】
図4Bを参照すると、1つ又は複数の波の特性を判定するプロセス400Bが提供される。一実施形態において、プロセス400Bは、以下のステップ、すなわち、プラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信するステップ440と、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを受信するステップ445と、受信したデータを固定された基準に対する水の動きを示すデータに変換するステップ450と、方向波スペクトルを判定するステップ455と、非方向波スペクトルを判定するステップ460と、1つ又は複数の波の特性を導出するステップ465とを含む。
【0042】
図5は、データ収集プロセス410’の流れ図である。データ収集プロセス410’は、データ収集システム410(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。一実施形態において、データ収集プロセス410’は、以下のステップ、すなわち、船座標におけるADCPプロファイルを受信するステップ412と、地球座標における慣性データを受信するステップ414と、ADCPデータと慣性データとを同期させるステップ416と、ADCPからボトムトラック・データを受信するステップ418と、前処理のためにデータを出力するステップ419とを含む。
【0043】
ステップ416において、ADCPデータは、慣性データと同期させることができる。例えば、プロファイリングADCP402(図4A)からのデータを、慣性系404(図4A)からのデータと同期させることができる。プラットフォーム速度と水プロファイル速度とを時間において組み合わせることは、関心ある波の周期に対するタイミング誤差が小さい程度に同期したデータを使用することができる。同期していないが比較的同期可能なデータを用いることもできる。例えば、2つの入力の間の1秒のタイミング待ち時間は、地球基準の組合せにおいて1秒の位相誤差を導入する。関心ある波の周期が8秒から25秒までの間である場合、1/8(1 part in 8)の誤差が潜在的に導入されることがある。位相誤差が4秒であり、且つ波の周期が8秒である場合、誤差は波の軌道を完全に打ち消す可能性がある。これに基づいて、0.5秒未満のタイミング誤差を有することが有利なことがある。
【0044】
同期は、波を用いて確かめることができる。地球基準座標系における波を計測するために、我々はプラットフォームに対する水の軌道速度を計測し、次いで、プラットフォームによって吸収された波のエネルギーのいずれかを水の計測に取り戻すことができる。地球基準水プロファイルの最大分散は、それが我々が波のエネルギーのすべてを水に取り戻したことを含意するため、水の速度計測とプラットフォームの速度計測との間の最適なラグをマークする。例えば、浮標プラットフォームに固定されたADCPは、正確に波の軌道エクスカーションと共に動く。プラットフォームは完全に波と共に動くので、水プロファイルは速度を計測しない。速度のすべてはプラットフォームの動きに吸収されている。
【0045】
本明細書で開示された実施形態は、同期したデータを採用することができる。しかしながら、共通のタイムスタンプが確実に待ち時間をなくすことが常に保証されるわけではない。同期度を経験的に計測する1つの方法は、信号における波を用いることである。実際には、計測ノイズは、水の速度プロファイルと慣性からの地球基準データとの両方に対して非常に小さいことがある。したがって、両方の計測における波のエネルギーは、分散の主な発生源である可能性がある。我々がプラットフォームによって吸収される波のエネルギーを水プロファイルに適正に取り戻した場合、結果は最大となるはずである。2つの計測の間のあらゆる待ち時間は、位相誤差を導入し、且つ波のエネルギーのすべてを水プロファイルに取り戻さないであろう。2つの計測の間の待ち時間を判定するテストは、水プロファイルからプラットフォームの動きを差し引き、分散を計算することである。次いで、プロファイルにおけるデータを1サンプルだけシフトさせ、繰返す。10〜20サンプルを各方向にシフトさせ、分散を計算することによって、我々は最大分散をもたらすシフトを、したがって2つの計測の間の待ち時間を見つけ出すことができる。この待ち時間は一貫している可能性がある。
【0046】
図6を参照すると、一実施形態に係るデータを前処理するプロセス420’の流れ図が提供される。前処理プロセス420’は、前処理システム420(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。データ収集プロセス410’は、ステップ4202での船座標におけるADCPプロファイルによる前処理プロセス420’、ステップ4204での地球座標における同期した地球基準プラットフォーム速度及び配向、及びステップ4206での船座標における非同期ADCPボトムトラック・データを提供することができる。非同期ADCPデータはまた、ステップ4206で地球座標における速度及び配向を含むことができる。
【0047】
ステップ4210において、慣性データから船首方位、ピッチ、及びロールを抽出し、且つ同期したタイムスタンプをもつADCPアンサンブルに挿入することができる。ADCPデータが既に船座標にある場合、船の姿勢をADCPデータに適用するために翻訳は必要とならない可能性がある。1つには、ADCPはプラットフォームに対して固定されると仮定してもよい。
【0048】
トリプレット処理は、方向幅及び多方向波に関する制限を導入する可能性があるが、この手法は、より洗練されたアレイ処理で対処するのが難しいか又は不可能な場合がある多くの種類の動きを説明することができるようにする。トリプレット処理は、あなたが一点で計測を行っていると仮定する。ビーム(Bl、B2、B3、B4)から計器座標(U、V、W)への座標変換を行うことによって、我々はビームにわたる情報を組み合わせる。しかし、これは波についての空間的位相情報を棄却する場合があり、これは、水平成分U及びVの相対振幅における波向情報を保存することがある。U及びVは、方向の軸についての情報を提供する。垂直(W)成分は、水平方向に90度だけ位相がずれているとみなすことができ、それを又はそれから解明するのに用いられる(used to resolve to or from)。
【0049】
さらに、デカルト座標データを地球座標に変換し、サンプルからサンプルへのH、P、Rの変化を補正し、したがって各サンプルを地球基準座標系における共通の配向に動かすことができる。
【0050】
対照的に、アレイ処理は、位相コヒーレントであり、固定されたアレイにわたる空間的位相差を使用して、波についてのその方向情報の多くを導出する。アレイが動いている場合、1つには、データを時間において組み合わせるために、アレイの場所が共通である基準座標系に対し計測を補正することができる。この種類の動きに関する時間領域におけるデータを補正するために、波の周期及び方向がどのようなものであるかを正確に知ることが特に有用である。幾つかの実施形態において、これは我々が確かめようとしている情報の少なくとも一部である。実際には、波は、あらゆる所与の瞬間の多くの周波数の重ね合わせとすることができ、アレイの動きを補正しようとすることは、条件付きの問題とすることができる。他の実施形態において、しかしながら、アレイ処理を用いることができる。例えば、アレイ要素の間の波の相対的な位相はその瞬間その瞬間でアレイ配向と共に変化するため、アレイが円形にゆっくりとドリフトするデータと共にアレイ処理を行うことは、回転の全体にわたって汚れた(smeared)結果をもたらすことがある。
【0051】
ステップ4212において、ADCPプロファイルを地球座標に変換することができる。トリプレット処理は、方向スペクトルを判定するために用いることができるので、1つには、計測が点源によって行われたかのようにビームにわたる速度を組み合わせることができる。1つには、こうした組合せの前に、ビームにわたる空間的分離が関心ある波長に対して小さいかどうかを判定することができる。地球座標変換は、船首方位、ピッチ、及びロールをとり、これを船座標ADCPプロファイルに適用して地球座標プロファイル(東、北、Z、誤差)をもたらす。
【0052】
プロセス420’は、ADCPが磁気船首方位センサが働くことを許容しない環境内にインストールされてもよいので、外部ソースからの姿勢情報を用いることができる。しかしながら、プラットフォームの動きに関する基準速度データは、ボトムトラッキングADCPと慣性系とのいずれかから、この両方から、又は固定された基準に対するプラットフォームの動きをトラッキングすることができる他のシステムから来ることができる。例えば、ボトムが範囲外にあるときには慣性基準を用いることができ、ボトムトラック・データが良好であるときにはADCPを用いることができる。慣性系は、常に地球基準速度を提供することができるが、時間と共にドリフトし、平均流れ及びドップラーシフトに影響を及ぼす可能性がある。ボトムトラッキングADCPは、地球基準速度に関する安定した、バイアスのないソースであるが、限られたボトムトラッキング範囲を有し、深い水中では利用可能ではない場合がある。他の実施形態において、あらゆる地球基準204(図2)からのデータ及び/又はユーザ入力デバイス206(図2)からのあらゆる入力を、地球基準速度のソースとして用いることができる。例えば、GPSシステム408(図4A)からのデータは、水上艦のための波の処理システムで用いることができる。
【0053】
ステップ4220において、前処理プロセス420’は、速度に関する地球基準としてボトムトラック又は慣性のいずれを使用するかを決めることができる。ステップ4220で慣性データが地球基準として選ばれる場合、ステップ4222はレバー・アームを補正することができる。船の慣性からの速度データとADCPとを組み合わせることは、データが共通の座標系において同期しており、且つ空間において同じ場所を基準とする場合に、容易にされる可能性がある。プラットフォームの動きの慣性計測は、船の慣性(中央に位置付けられる)を基準とすることができる。ADCPは、この場所から実質的にオフセットされた場所に位置付けられてもよい。ピッチ、ロール、及び船首方位の変化は、慣性系では見られないADCPにおける速度を導入することがある。ADCPと慣性データとを組み合わせるために、これらのレバー・アームが対応してもよい。このシステムは、ADCPの場所で見られるであろう程度に慣性データをシフトさせる。導入される速度は、下の表1に含まれる以下のパラメータのいずれかを含むことができるが、これらに限定されない。
【表1】
レバー・アームが導入した速度が判定された後で、それらは船座標から地球座標に変換することができ、そのためそれらを基本慣性速度に加えることができる。
【0054】
加えて、ADCPと計測された水体積との間の空間的オフセットは、ステップ4222で補正される必要はない場合がある。ADCPとそのプロファイルのビンとの間のレバー・アームは大きいことがあるが、姿勢の動力学は、このレバー・アームに沿った速度を導入しない場合がある。幾つかのADCPは、ビームに沿った速度のみを計測する。ADCP中心の周りの姿勢の変化は、ビーム方向に対し垂直な速度成分を有する可能性があり、したがって計測されない。他の実施形態において、ADCPと計測された水の値との間の空間的オフセットを補正することができる。
【0055】
レバー(level)・アームを補正した後で、ステップ4224でプラットフォーム速度をボトム速度に変換することができる。慣性系は、地球に対するプラットフォーム速度を計測することができる。ボトムトラッキングADCPは、プラットフォームに対する地球の動きを計測することができる。2つの基準座標系の間の変換は、速度に負符号を適用することによって行われてもよいが、このデータに対する規約を選び出すことは、プロセスにとって有益な場合がある。一実施形態において、規約はボトム速度であり、そのためプラットフォームの動きがボトムトラック・データとしてADCPアンサンブルに格納される。慣性により導出されたプラットフォーム速度は、それらがボトムトラックとして格納される前に無効にする(negated)ことができる。
【0056】
代替的に、ステップ4220でボトムトラックが地球基準として選ばれる場合、異なる前処理を行うことができる。ステップ4226において、船首方位(heading)、ピッチ(pitch)、ロールデータ(roll data)(HPRD)をボトムトラックADCPアンサンブルに挿入することができる。一実施形態において、ボトムトラッキングADCPと、船首方位、ピッチ、ロールの外部ソース、例えば、慣性からの速度は、システムに姿勢データを提供することができる。これは、後の使用のためにADCPデータ構造に挿入することができる。ADCPデータがビーム座標である場合、船の姿勢データをADCP姿勢に変換することができる。ADCPデータが既に船座標にあり、船に対する船首方位、ピッチ、ロールのオフセットが計器において説明されている場合、姿勢データの変換はスキップされてもよい。
【0057】
ステップ4226でHPRDを挿入した後で、ステップ4227でボトムトラック・データを地球座標に変換することができる。しかしながら、このデータは、船座標におけるADCPプロファイルと同期されなくてもよい。データが同期した様式で収集されるとき、異なるシステムからの速度を比較的簡単に組み合わせることができる。しかしながら、ボトムトラックと関連付けられたタイミングは、ボトムへのレンジが環境と共に変化するためにしばしば非同期であることがある。プロファイリングADCPは、規則的なピング・サンプル・タイミングを常に有してもよい。例えば、プロファイリングADCPは、0.5秒おきにサンプルを得ることができ、ボトムトラッキングADCPは、0.8〜3.0秒ごとにサンプルを得ることができる。プロファイリングADCPと同期しているボトムトラッキングADCPからデータセットを作成する第1のステップは、トップ及びボトムADCPデータを、有効期限(Time of Validity)(TOV)タイムスタンプに基づいて時間において順番に配置することができる。
【0058】
データが順序付けられると、これはステップ4229で同期化することができる。トップ(プロファイリング)データとボトムADCP(ボトムトラック)データとを組み合わせるために、システム420の一実施形態は、例えば、すべての2Hzプロファイル・サンプルに対して、ボトムトラック速度サンプルを用いる。ボトムトラック・データは、異なるサンプルレートでサンプリングすることができ、プロファイルのタイミングと位相がずれている場合がある。2つのデータセットの間のサンプルレートの差異とタイミング・オフセットは環境と共に変化することがあるので、このタイミング問題は変動する可能性がある。一実施形態において、プロファイル及びボトムトラック・データは、ステップ4229で最初に順番に配置され、次いで、最も近い実際のサンプルから補間することによって各プロファイル・サンプル・タイムでボトムトラック・サンプルが作成される。
【0059】
最初の前処理の後で、ステップ4214で同期したボトムトラック速度をADCPプロファイル・アンサンブルに挿入することができる。プラットフォームの動きの計測値が慣性又はADCPのいずれから来ようとも、これはADCPプロファイル・データと組み合わせることを可能にする形態で入れることができる。プラットフォームの動きの地球基準測度は、ADCPボトムトラック構造に挿入する前に、以下の演算の1つ又は複数によって補正することができる。プラットフォームの動きの地球基準測度は、同期化し、共通の座標系に翻訳し、レバー・アームに関してADCPの場所で空間的に観測されるであろうものに翻訳し、且つプラットフォームの動きの規約からボトムの動きの規約に変換することができる。これらの演算のうちの1つ又は複数が行われると、データは、ADCPアンサンブルに「りんごとりんご」として挿入することができる。
【0060】
次に、ステップ4216において、波のバーストを累算することができる。波の処理は、周波数ドメインにおいて行われてもよく、且つ公称期間、例えば20分間にわたって累算された時系列のサンプルを用いることができる。これらの時系列は、次いで、例えば2Hzでの2048サンプルのバーストとして波の処理に渡すことができる。波の処理に提供されることになるサンプルのバーストは、実質的に中断されないものであってもよい。例えば、データの10分が30秒中断され、その後、データの別の10分が続くことは、これにおける大きい不連続性を有し、スペクトルを損傷し且つデータ品質を損う可能性がある。
【0061】
図7を参照すると、波の処理プロセス430’の流れ図が提供される。波の処理プロセス430’は、波の処理システム430(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。最初に、ステップ432で、データ品質のために時系列の速度データを事前にスクリーニングすることができる。このプロセスは、以下の動作、すなわち、計器から来る既に粗悪とマークされる可能性があるデータを識別すること、平均からの4つの標準偏差を超えるデータ点を反復的に除去すること、最小閾値及び最大閾値を超えるデータ点を粗悪としてマークすること、すべてのフラグ付きデータに基づいて良質なデータの割合を判定すること、良質なデータの割合が所定の閾値、例えば90%を満足させるときに、補間されたデータを粗悪フラグ付きデータ点に挿入すること、の1つ又は複数を含むことができる。
【0062】
上側カットオフ周波数のデータ適応判定は、動的環境において有利なことがある。上側カットオフ周波数に強く影響を及ぼすことがある波の環境、デプロイメント深さ、及びADCP設定の広い多様性が存在する。固定された動かないデプロイメントでは、単一の上側カットオフ周波数を用いることができる。しかしながら、移動プラットフォームから計測される波は、絶えず変化する高度、深さ、速度、及び方向を有する場合がある。これらのパラメータのすべては、最も高い使用可能な波の周波数に強く影響を及ぼすことがある。理論上の限界に関係なく実際の信号に基づいて最も高い使用可能な周波数を判定するデータ適応手法が、以下で提示される。
【0063】
波のエネルギーは、水面の下の深さ及び周波数と共に指数関数的に減衰されることがある。ADCPは、潜流の軌道速度を計測し、次いで、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの幾つかの組合せが、線形波理論を用いてこれを水面変位に取り戻す。より大きい深さ及びより高い波の周波数では、波の軌道速度は小さくなり、計器ノイズ・フロアよりも低く低下する。より高い波の周波数では、システムが文字どおりに何も計測しないという可観測性問題がある。特に、信号(波のエネルギー)とノイズ(ADCP+環境)との両方は、デプロイメントの時間スケール及びバーストの時間スケールの間に、1つのデプロイメントから次のデプロイメントへと動的に変化することがある。信号とノイズとの両方はまた、1つのセンサ(ビン、ビーム)から次のセンサへと変化することがある
【0064】
加えて、多くの既存のアルゴリズムは、スクリーニングを行う帯域平均がワイルド・ポイントに曝される前に計算を行うことができる。そのうえ、信号が最も小さく、且つデータ品質が最も低い可能性があるとき、水面変位に戻る増幅が大きいことがある。そのうえ、深いデプロイメントでは、単一の周波数帯による上側カットオフ周波数の置き違えが高すぎて、結果として生じるスペクトルがスペクトルの下の面積を2倍にする可能性があり、Hs、Tp、Dpを不正確に表すことがある。
【0065】
これらの理由のため、良質なデータのみを与えることが有利なことがある。ステップ433でデータが良質であるかどうかの判定を下すことは、データ適応上側カットオフ周波数を判定すること及び/又はすべてのスペクトル周波数を承認(qualifying)することを含むことができる。
【0066】
データが良質であるかを判定する1つの手法はデータ適応手法である。図8Aは、一実施形態における周波数とスペクトルパワーとの間の関係性を例証する。より高い周波数を水面変位に翻訳するゲイン、又はスケールファクタは大きいことがあるため、これらのデータ点がスペクトルパワー全体に対してもつことがある影響は大きいことがある。一実施形態において、スペクトルの端を迅速にカットオフする鋭いポインタが存在し、この場合、ノイズ・フロアはこの大きいゲインによって増幅されていく場合がある。1つの関心事は、上側周波数であっても、依然として有効な波のエネルギーを有するということであり、それらの上にスーパーインポーズされるノイズ・フロアの変動は、翻訳後にエネルギー全体に対する顕著な影響を有するであろう。ゲイン×ノイズ÷信号は、最後の良質なデータへの鋭いポインタを提供することができる。
【0067】
例えば、一実施形態において、ノイズは、翻訳されていない速度パワースペクトルの4つの標準偏差(STD)を表すことができ、この場合、STDは、周波帯の外に0.75Hzから1Hzまでである。これは、99%包絡線を生じることがある。ノイズは、周波数に依存しない場合がある。この例において、信号は、各周波数における翻訳されていない速度パワースペクトルを表すことができる。この例において、ゲインは、水面変位への平均された翻訳を表すことができる。プロセスの早期に帯域平均することは、ワイルド・ポイントなしにこの種類のスクリーニング及びプロセスが起こることを可能にすることができる。集合的な(たとえば、最小2乗)翻訳されていない速度スペクトルを保存することは、ソース・データ上の増幅の前にスクリーニングが起こることを可能にする。ゲインがスペクトルの大きい端にあるとき、保守的な信号対ノイズ比を有することが望ましいことがある。大きいゲインは、高品質の、明白な入力スペクトルを有することなく適用するために望ましくないことがある。
【0068】
ゲイン×ノイズ÷信号(GN/S)が、或る閾値、例えば100よりも増大するとき、これは、上側カットオフを表すことができる。図8Bに示すように、速度スペクトルは、点850でGN/Sが閾値を超えるときに棄却することができる。GN/Sが点850で閾値を超えるとき、用いられるスペクトルは、該用いられるスペクトルを表す曲線の部分860でゼロに近いものとすることができる。上側カットオフが得られると、データは、カットオフを満足させる信号対ノイズ比に関してスクリーニングすることができる。この2段階手法は、2項のスペクトルの堅牢な取扱を可能にする場合がある。2つのピークが存在する場合、これらの周波数において信号対ノイズが依然として有効であるため、上側カットオフは第2のピークよりも上に設定することができる。真のパワーを含まないピークの間のデータは、4つのシグマ要件によってスクリーニングすることができる。
【0069】
GN/Sは、多くの理由で有利に用いることができる。この式の1つの目的は、あらゆる所与の波のパワースペクトルにおける一番最後の実行可能な周波数帯への鋭いポインタを作成することである。危険なのは、我々が水面変位を得るために大きい可能性があるゲイン(G)によって速度スペクトルの端でのノイズ・フロアを増幅することである。幾つかの条件の下では、単一の周波数帯が高すぎても、パワースペクトルの下の面積を実質的に偽ることがある。これは、我々がデータを増幅すること又はこれを用いて方向を判定することを考える前に良好な信号対ノイズ比を保証することを我々が望む理由を表す。そのため、我々は、最初にノイズ/信号項を導入し、この場合、ノイズは、信号が存在しない実際のパワースペクトルの標準偏差の4〜6倍である。信号は、各周波数帯におけるスペクトルのパワーである。これらの基準は、計測ノイズ・フロアよりも際立つ真の波のパワーを明白に有する周波数帯を分離することができる。上側カットオフ周波数を判定するために付加的な処理が要求される場合がある。これを行うために、我々は、N/Sにゲインを掛け、この場合、ゲインは水面変位への増幅である。より大きいゲインは、我々がノイズを誤って増幅しないようにするためにより重要であることから、これは妥当である。深さが大きいとき、Gは大きくなり(周波数と共に指数関数的に急激に)、G*N/Sが上昇する速度もまた急激となるであろう。そのため、ポインタは、これがそうするのが妥当なときにより保守的となる。G*N/Sが或る閾値よりも大きいとき、この周波数で止まる。
【0070】
4つのシグマ(標準偏差)は、一般に、計測のノイズの周りの良質な包絡線とすることができる。この値は、特定の用途に応じて、より保守的な6つのシグマ又はあらゆる他の値に設定することができる。良好な信号対ノイズ比に関してデータをスクリーニングする少なくとも2つの理由がある。1つの理由は、データがこれを水面変位に増幅する前に良好な信号対ノイズ比を有することを要求するためである。別の理由は、これを波の方向に対して用いる前にデータが良好な信号対ノイズ比を有することを要求するためである。
【0071】
4つのシグマは、スペクトルの端でノイズ・フロアを増幅するのを回避するために垂直システムと共に用いられるときに良好な測度とすることができる。水平方向のシステムにより、堅牢な方向波を得るために、より保守的な基準(たとえば、6つのシグマ)が用いられてもよい。これは、水平方向のシステムに対する応答(したがってノイズ閾値)が異方性であるという事実と関連付けられてもよい。沖合での用途に用いられるシステムに共通したアレイの動きと共に行う必要もある場合がある。
【0072】
図7に戻って参照すると、ステップ433でデータが粗悪であると判定される場合、波の処理プロセス430’は止まることができる。代替的に、ステップ433でデータが良質であると判定される場合、ステップ434で良質なデータからプラットフォームの動きのデータを除去することができる。幾つかの実施形態において、この点までの処理において、プラットフォームの動きは、同様の計測(同じ座標系、規約、タイミング、場所など)に変換されてもよいが、プラットフォームの動き、たとえば、ボトムトラック及びプロファイルは分離したまま保たれてもよい。こうした実施形態において、次いで、プラットフォームの動きを誘起させたあらゆる波のエネルギーを取り戻して水の速度プロファイルに戻すために、プラットフォームの動きをプロファイルから差し引くことができる。このステップは、プラットフォームの動力学に関して水の速度プロファイルを地球基準座標系に取り戻すことができる。このステップは、波の周期的な動きのすべてを水プロファイルに取り戻すが、これは平均の前進の動きと関連付けられた波の周波数のドップラーシフトを補正しない場合がある。
【0073】
移動プラットフォームから波の計測に影響を及ぼすことがある多数の因子が存在する。こうした因子は、限定ではなしに、プラットフォームの速度、プラットフォームの方向、波の周波数、波向、プラットフォームの応答、プラットフォームの高度、プラットフォームの深さ、及び平均流れを含むことができる。これらの因子のほとんどは、周波数に依存する。例えば、20分間の波のサンプリング・インターバルの過程で深さが20mから40mに変化する場合、不正確さは、スペクトルが水面変位に翻訳されるときに平均深さを用いることから生じる場合がある。深さは、周波数と共に水面変位への翻訳に強く且つ非直線的に影響を及ぼすことがある。
【0074】
ステップ434でプラットフォームの動きを除去することはまた、異なる時間スケールでの動きを補正することを含むことができる。これは、以下のアクションの1つ又は複数を含むことができる。
A.プラットフォームによって吸収されたあらゆる波のエネルギーを取り戻してプラットフォームに対する水の速度計測に戻すこと。
B.単一サンプルベースで船首方位、ピッチ、及びロールに伴う動力学を説明するために、プロファイル速度データ上の地球座標変換を用いること。これは、それらを時系列に効率よく組み合わせることができるように、計測を地球基準座標系(東、北、Z)に補正するために用いられてもよい。
C.観測された基準座標系における波の周波数のドップラーシフトを補正し、且つ対地流れによる波数のドップラーシフトを補正すること。
D.速度、深さ、及び方向のような周波数に依存するパラメータを各波の周波数帯に短い時間スケールで適用すること。
E.短い時間スケールのスペクトルが個々に計算され且つ動きを補正されると、それらを平均して単一の統計的により静穏な結果をもたらすことができ、且つこの時間スケールで波のパラメータを判定することができる。
F.17分の長さのウィンドウを、データを通して一度に5分スライディングすることは、データの最後の17分を含む5分の更新を可能にする。
【表2】
【0075】
表2は、一実施形態において考慮されてもよい時間スケールの相対的サイズを例証する、例示的な時間スケールを与える。当該技術分野の当業者は、他の時間スケールが採用されてもよいことを理解するであろう。
【0076】
他の時間スケールの課題は、以下のことを含む可能性がある。
1.波の時間スケール(たとえば、<30秒)での動きを1つ1つのサンプルに関する共通の基準座標系に対して補正することができる。
2.深さに伴う波の伝搬及び減衰は、周波数に強く依存する場合があり、そのため、動的に変化する環境から計測される単一の時系列にデータを組み合わせることから結果として不正確さが生じる場合がある。波に影響を及ぼす周波数に依存するパラメータは、サンプリング・インターバルの間は合理的に安定であってもよい。
3.短い時間枠をとり、各セグメントに適宜動力学を適用することができるように、それに対して波の処理を行うことが望ましいことがある。
4.関心ある波の周期は、たとえば5〜30秒である。0.5Hzのサンプルレートは、最も短い妥当なサンプリング・インターバルを境界付けることができる。
5.中程度の(たとえば、<2分)時間スケールの動力学(平均速度、方向、深さにおける変化)に対処するために、適切な分解能及び分散をもつスペクトルを依然として統計的にもたらすことができる最も短い時系列は、約2〜2.5分とすることができる。
6.中程度の時間スケールのセグメントを個々に補正することができるが、それらは依然として統計的にノイズがある場合がある。この影響は、補正後にセグメントを平均することによって少なくすることができる。
【0077】
プラットフォームの動きを除去することはまた、プラットフォームの応答関数から独立していることがある。プラットフォームは、あらゆる様式(遅延した様式、波形の様式、ブラウン運動の様式、まったく動きの無い様式など)で波に応答することができる。プラットフォームに対する水の速度と、地球に対するプラットフォームの速度との同期した計測により、我々は、応答関数がそうである場合があるものから独立して、吸収されたプラットフォームの動きを水プロファイルに取り戻すことができる。他の実施形態において、計測は、同期していなくてもよいが、既知の因子によって遅延されることがある。この既知の因子はまた動的なものである場合がある。他の実施形態において、計測は、正確に同期してはいないが、関心ある波の周期に対するタイミング誤差が小さい程度に変化する。
【0078】
プラットフォームの動きは、時間領域において除去することができる。時間領域においてプラットフォームの動きを除去することは、周波数ドメインにおいてプラットフォームの動きを除去することに比べて利点を提供することができる。本発明の実施形態は、位相差が互いに打ち消しあうので(位相情報と合わさった)周波数スペクトルの平均が0に収束する場合があることから、パワースペクトルで演算する。我々がパワースペクトルを累算する場合、結果は、時間領域の累算よりもクロスタームだけ異なることがある。例えば、(A+B)2≠(A2+B2)。
【0079】
ステップ434でプラットフォームの動きを除去した後で、ステップ435で方向スペクトルを計算することができる。例えば、2mの水の体積を20分の時系列の東、北、及びZ速度に平均することによって、方向スペクトルの計算を始めることができる。Overlap−add技術は、データをより短い断片に分割するために用いることができる。トリプレット手法によって各セグメントに関するクロススペクトルを計算し、次いで、係数を計算することができる。各時間セグメントに関するピーク方向を用いて(ドップラーシフトに関する)周波数空間における係数の再マッピングを行うことができる。次いで、より静穏な方向推定をもたらすために、各セグメントでの再マップされた係数を、バースト・インターバルにわたって平均することができる。方向スペクトルを計算することに関係するさらなる詳細は、後で図9A及び図9Bとの関連において提供される。
【0080】
次いで、ステップ437で非方向スペクトルを計算することができる。非方向スペクトルを計算することに関するさらなる詳細は、後で図13A及び図13Bとの関連において提供される。
【0081】
方向又は非方向スペクトルを同時に又はあらゆる順序で計算することができるが、特定の順序の計算は、或る利点を提供することができる。方向波スペクトルと非方向パワースペクトルの計算は、独立して行うことができ、この場合、制約されることになるより少ないディメンションで各問題がより簡単に解決される。しかしながら、幾つかの実施形態において、2つのアルゴリズムの間に依存性が存在する場合がある。例えば、非方向パワースペクトルP(f)を判定するために、1つには、前進の動き及び平均流れと関連付けられたドップラーシフトを補正することができる。これは、観測された周波数空間における各周波数でのピーク波向の知識を含むことができる。別の例として、全周波数−方向スペクトルD(f,θ)を判定するために、我々は、地球基準座標系における各周波数での波向とパワーとの両方についての情報を用いることができる。
【0082】
有利には、以下の順序の演算を実行することができる。観測された各周波数において、正規化された波の方向分布Dnorm(fobs,θ)を計算することができる。観測された各周波数におけるピーク方向Dpeak(fobs)を得て、後の処理のために保存することができる。正規化された方向分布Dnorm(fearth,θ)は、ピーク方向に基づいて、観測された周波数空間から地球周波数空間にマップし、後の処理のために保存することができる。非方向パワースペクトルPobs(fobs)は、観測された周波数空間において計算することができる。非方向パワースペクトルを地球基準周波数空間に再マッピングするために、以前に計算された、観測されたピーク方向P(fearth)を適用することができる。正規化され、再マップされた、方向分布D(fearth,θ)を、各周波数において同様に再マップされた非方向パワーによってスケール変更することができる。しかしながら、データ依存性の利点を実現するために、これらのステップのあらゆる順序又は組合せを実行することができる。
【0083】
図7に戻って参照すると、ステップ438で、非方向パワーによって方向スペクトルを再びスケール変更することができる。これは、波のパラメータを計算するために方向スペクトル及び非方向スペクトルを正規化することができる。代替的に又は加えて、非方向スペクトルは、方向スペクトルによってスケール変更することができる。そして、幾つかの実施形態において、再びスケール変更することが全く必要とされない場合がある。
【0084】
ステップ439で、方向スペクトル及び/又は非方向スペクトルから波のパラメータ又は特性を計算することができる。限定ではなしに、有意な波の高さ、ピーク周期、ピーク方向、波の軌道速度、及び/又は波の軌道エクスカーションを含む、波のパラメータ又は特性を、周知の技術を用いてこれらのスペクトルから計算することができる。
【0085】
例えば、有意な波の高さ、Hsは、パワースペクトルから計算することができる。下側カットオフ周波数と上側カットオフ周波数との間のパワースペクトルの下の面積を累算することができる。一実施形態において、有意な波の高さは、以下の式によって示されるように、周波数帯の幅によって正規化されるパワースペクトルの下の面積の平方根を4倍することによって表すことができる。これは、時間領域分析における4つの標準偏差と同等のもの(equivalent)とすることができ、且つH1/3とほぼ同等のものとすることができる。
【数1】
【0086】
別の例として、ピーク周波数、Tpは、最大値に対する非方向波の高さスペクトルの有効な領域を探し出すことによって判定することができる。このピークが見つけ出されると、ピーク周期は、次式に示すように、ピーク周波数の逆数によって表すことができる。
【数2】
【0087】
ピーク周期データの解釈又は比較は、スペクトルにほぼ同じ高さの2つのピークが存在するのは普通であることがあるため、扱いに注意を要することがある。これが起こるとき、ピーク周期は2つの値の間で揺れ動く場合がある。これは、環境の正確な表現であることがある。
【0088】
別の例として、ピーク周期における方向分布のピークを見つけ出すことによって、ピーク方向、Dpを判定することができる。分解能が1度未満である場合、より良好な分解能を得るためにピーク方向を補間することができる。ピーク方向は、次式によって表すことができる。
【数3】
ここで、fpは、ピーク周波数を表す。
【0089】
図9A及び図9Bは、方向波スペクトル(DWS)を計算するためのプロセス435の流れ図を例証する。プロセス435は、図7のステップ435に関するさらなる詳細を提供する。ステップ900において、プロセス435は、周波数分解能が減少することによって始まる。比較的短い時系列から導出される方向推定の分散及び安定性を改善するために、方向スペクトルの周波数分解能を減少させることができる。これは、周波数分解能の起こりうる犠牲のもとで、各推定に関する自由度を増加させることができる。波向はグループ化する傾向があり、方向推定の静穏性は後の再マッピング・プロセスに強く影響を及ぼすことがあるので、これは妥当なトレードオフである場合がある。波の高さはドップラーシフトに関する周波数空間の再マッピングの正確さに強く依存する場合があるため、非方向スペクトルは、より高い分解能において望ましい場合がある。例えば、非方向スペクトルは、0から1Hzまでの128の周波数帯を各々提供する、15の重なりをもつ、各々2+分にわたる256のサンプル・セグメントと共に計算することができる。例えば、方向アルゴリズムは、0から1Hzまでの128の周波数帯を各々提供する、31の重なりをもつ、少なくとも2分にわたる128のサンプル・セグメントと共に計算することができる。
【0090】
ステップ902において、プロセス435は、時系列データを重なりセグメントに区切ることができる。図10で例証されるように、overlap−addスペクトル処理は、時系列データのセグメント1010(たとえば、2048のサンプル)を、多数の重なりセグメント1020、1030に分割することができる。各セグメントは、周波数ドメインにフーリエ変換することができ、次いで、結果として得られたスペクトル1050、1060を平均することができる。この手法は、深さ及び速度のような周波数に依存するパラメータを、それらが平均される前に各セグメント・スペクトルに適用することができる。
【0091】
離散フーリエ変換は、端点(典型的に問題を有さない無限に長い時系列)に対して敏感なことがあり、より小さいセグメントに対してウィンドウ処理を用いることができる。overlap−add手法は、個々の各セグメントをウィンドウ処理して端点に近いデータを減ずる(attenuate)ことによって、端点の効果を緩和することができる。ウィンドウ処理は、各セグメントにおける独立したサンプルの有効数を減少させる。重なりセグメントは、失われた自由度をウィンドウ処理に取り戻すことができる。
【0092】
帯域平均の代わりにOverlap−add処理を用いることができる。帯域平均は、単一の大規模高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)(FFT)(たとえば2048個のサンプル)を行い、次いで、隣接する周波数帯を平均して、より低い分解能をもつがしかし改善された分散をもつスペクトルをもたらすことに関係することがある。Overlap−add処理は、より大きい自由度によって改善されるスペクトルに対して非線形プロセスが行われるときに望ましいことがある。しかしながら、他の実施形態において、overlap−add処理の代わりに帯域平均を用いることができる。
【0093】
より短い時間スケールでの周波数に依存するパラメータの変化に対処するために、とにかく時系列をより小さいセグメントに区切ることが望ましいことがあるため、overlap−add手法は、動的環境における波を処理するために用いることができる。速度、方向、又は深さの変化がゆっくりと起こる場合、各2分セグメントに対する平均値は、該時間枠の代表的なものとなるであろう。変化が急に起こる場合、手法は、こうした変化が稀である場合に、実用的な目的のために依然として働くことができる。例えば、プラットフォームは、波の中に10分間移動し、次いで、180度旋回し、そして波と共に10分間移動し、20分のデータがoverlap−addを用いて処理される。往路からのデータ・セグメントが処理され、スペクトルは、波の中に動くことによって誘起されたドップラーシフトを補正される。同様に、復路のセグメントが処理され、波と共に動くことによって誘起されたドップラーシフトを補正される。ターンにまたがるデータのセグメントは、これがデータに両方のドップラーシフトを不正確に組み合わせるため、高品質ではない場合がある。誤りセグメントは、データの20分の外の1つの2分セグメントであり、そのため、残りのセグメントが正しい限り、その寄与は小さい。
【0094】
図9Aに戻って参照すると、ステップ902において生成された重なりセグメント1020、1030(図10)を各々別々に処理することができる。ステップ904において、セグメント固有統計を計算することができる。一実施形態において、周波数に依存するパラメータのすべてに対する平均、メジアン、モード、分散及び/又は標準偏差のような統計は、限定はされないが、深さ、高度、プラットフォームの速度、プラットフォーム方向、流れ速度、及び流れ方向を含む各セグメントに対して累算される。別の実施形態において、周波数に依存するパラメータのうちの1つ又は複数に対して少なくとも1つの統計値を計算することができる。各セグメントは、これらのパラメータの平均値のような平均値の代表的な統計値を用いて個々に修正することができる。平均値が代表的なものであるかを判定するために、標準偏差のような変動性の代表的な統計値を用いることができる。例えば、プラットフォームは、深さ100メートルで5分間動き、次いで、深さ10メートルに5分間上昇する。平均深さは55メートルであるが、しかしながら、深さに伴う波のエネルギーの周波数に依存する減衰は強く非線形であるため、セグメントは用いられるべきではない。
【0095】
ステップ906でセグメント固有クロススペクトルを判定することができる。クロススペクトルは、各ウィンドウ処理されたセグメントから計算することができる。各トリプレット上でFFTを行うことができる。トリプレットと、それらのそれぞれのFFTは、以下の式によって表すことができる。
【数4】
次いで、クロススペクトルは、以下の通りとすることができる。
【数5】
【0096】
セグメント固有クロススペクトルが計算された後で、ステップ908で、セグメント固有トリプレット係数を判定することができる。これらは、例えば、波向を表すフーリエ級数の最初の3つの又は最初の5つの係数とすることができる。
【0097】
5つの係数によって表される3つの項のみの方向情報が、制限されることがある。これらの係数は制限されるが、それらは利用可能な方向情報の実質的にすべてを含むことができる。θではなくこれらの係数D(f,coeffs)の項で方向分布を表すことが便利なことがある。方向分布が平均されるとき、それらは係数として平均することができる。これは、データ級数における各重なりセグメントに対する一組の係数を我々が計算できるようにすることによって、overlap−add手法を簡単化することができる。これらの係数は、全方向分布ではなく平均することができる。
【0098】
トリプレット処理の一実施形態は、フーリエ級数の最初の5つの係数と共に、各周波数における波の方向分布を表すことができる。係数は、次式によって表すことができる。
【数6】
【0099】
トリプレット処理の制限は、方向が広く分離されない限り、同じ周波数における複数の方向からの波を典型的に表わすことができないという事実を含む。加えて、方向幅は、5つの係数によってほとんどの場合に判定されない。係数は、ピーク方向のみについての情報を実質的に提供することができ、方向幅を正確にもたらすことはできない場合があることを知るのは意義のあることがある。この知識に基づいて、1つには、ピーク方向を容易にグラフで伝える若干現実的な方向幅を単純に選び出すことができる。例えば、これが輪郭プロット上でピーク方向を明らかに見るのに十分なだけ広く、且つ周波数に伴う方向トレンドを示すのに十分なだけ小さいことから、幅10度のガウスを選定することができる。
【0100】
ステップ910で、周波数空間を再マッピングする前にセグメント固有方向ピークを識別することができる。観測された各周波数におけるピーク方向は、係数によって表される方向分布の最大を見つけ出すことによって判定することができる。これは、ドップラーシフトに対する周波数空間を再マップするために後で用いることができる。次式は、ピーク方向を判定するために用いることができる。
【数7】
【0101】
ピーク方向のマップは、非方向スペクトル・アルゴリズムによる使用のために時間において整合することができる。幾つかの実施形態において、方向アルゴリズムは、非方向アルゴリズムよりも例えば2又は4のファクタだけ低い分解能を用いることができる。これは、ドップラーシフトされたスペクトルを地球基準座標系に取り戻す再マッピング・プロセスへの誤差源を最小にする場合がある。静穏な方向推定θと適切な非方向分解能との両方の恩恵を得るために、我々は、各プロセスに対するセグメントサイズと周波数バンディングを最適化することができる。しかしながら、非方向アルゴリズムは、方向スペクトル・アルゴリズムから導出される各周波数帯におけるピーク方向のマップに依存する場合がある。この依存関係をサポートするために、1つには、各セグメントに対するピーク方向のマップを非方向スペクトルの周波数分解能に補間することができる。幾つかの実施形態において、時間において異なるようにラインアップされる各アルゴリズムに異なる数のセグメントが存在する場合がある。この課題に対処するために、各方向セグメントに対するピーク方向のマップは、非方向アルゴリズムにおけるセグメントの各々の時間枠に基づくピーク方向の推定が存在するように、再整合することができる。
【0102】
ステップ914で係数のセグメント固有再マッピングを行うことができる。これは、観測された周波数空間におけるドップラーシフトを補正するために、周波数空間における方向を表す係数を再分布することができる。このステップで、ピーク方向は、追加の平均(減少した分解能は、より広い周波数帯につながることがある)によって平滑化することができ、且つ係数と同じ分解能を有する。周波数空間を再マップするためにすべての方向分布が用いられなくてもよく、幾つかの実施形態において、ピーク方向のみが用いられてもよい。このプロセスは、観測された各周波数に対して繰返すことができる。各周波数に対して繰返すことができる周波数空間の例となるマッピングが図11で提供される。
【0103】
図11で例証されるように、我々は方向幅の少しの知識を有する場合があるので、ピーク方向のみに基づいて周波数空間における方向スペクトルの再マッピングを行うことができる。数学的に、「Ucos」計算に基づいて方向スペクトルを再マップすることが有益なことがあり、この場合、該周波数における方向分布D(θ)を用いて各周波数fに対するUcosを計算することができ、D(θi、,fj)は、Ucos(θi−φ)を用いて再マップされる。
【0104】
周波数−方向スペクトルD(θ,f)が真の方向分布を表す場合、上記の手法は理想となるであろう。しかしながら、トリプレット・ベースの波計測は、上記の実施形態に関して説明したように、これが無限フーリエ級数の最初の3つの項(5つの係数)だけからなるため、方向幅を表すその能力に本質的に限界があることがある。プロセスにおける少しの本物の方向幅情報が存在する可能性があることを知ることで、実際に存在する場合がある又は存在しない場合がある方向幅に基づいて方向スペクトルを再マップすることが不利な場合がある。1つには、一般に各周波数におけるピーク波向に依存することがある。
【0105】
前進の動きに起因するドップラーシフトを補正するために観測された周波数空間を再マッピングすることは、複数の解決策及び境界によって複雑にされる非線形の周波数に依存するプロセスとなる場合がある。再マッピングのために用いられるデータにおける誤差と関連付けられたリスクは、速度が高くなるにつれてより大きくなることがある。波のフィールドを通して動いているとき、1つには、システムが水基準座標系に固定された場合とは異なる波の周波数を観測する。顕著な動きは、波の伝搬方向の平均速度の成分である場合がある。
【0106】
動きに伴う周波数スペクトルのドップラーシフトに影響を及ぼす幾つかのパラメータは、ピーク波向θ、観測された波の周波数fobs、水基準座標系における波の周波数fwater、プラットフォーム方向φ、プラットフォームの速度U、及び波数kwaterを含むことがある。Ucos(θ−φ)は、波の方向のプラットフォーム速度成分を表すことができる。ピーク方向のみに基づいてUcos(θpeak(f)−φ)を用いて各周波数における方向分布D(θ)を再マップすることが有益な場合がある。こうした事例において、D(θi,fj)は、Ucos(θpeak(f)−φ)を用いて再マップされる。
【0107】
同じく図11に示されるように、実際の波の周波数に基づいて観測された波の周波数を判定するための前進関係式は、次式によって表すことができる
【数8】
フォワー関係式は、単刀直入なことがあるが、しかしながら、我々は、観測された周波数空間を計測し、我々の観測をもたらす水基準座標系における波の周波数を判定したいと思う。反復的な数値的手法は、fobsを見つけ出すことができる。
【0108】
観測された波の周波数は、サンプルレートによって定義することができ、そのため問題とならない誤差を有することがある。プラットフォーム速度及び方向は、一般に、ドップラーシフトと共に顕著な変化が起こる規模に比べて小さい誤差を有する。しかしながら、波向は、短いサンプリング・インターバルと、本物の環境の変動性によって導入されるノイズと共に顕著に変化することがある。波向における誤差は、再マッピングにどれだけのドップラーシフトが適用されるかを変化させることがあるUcosにおける誤差を導入することがある。波の周波数の再マッピングは典型的に非線形であることから、Ucosにおける誤差は、その成分のうちの1つにおける誤差が増幅されないように境界付けることができる。例えば、Uにおける最悪の場合の誤差は、1%となることがある。プラットフォームが波と共に整合して移動する場合、Ucosは1%だけの誤差を含むものとなるであろう。別の例として、波向の推定における分散は、時間の特定のセグメントに対して30度の誤差を引き起こす。プラットフォームが12ノットで波と垂直に移動している場合、正しい波向に伴うUcosにおける誤差は、0となるであろう。波向における30度の誤差を伴うUcosにおける誤差は、このとき6ノットである。波がプラットフォームと整合される場合、30度の誤差が、Ucosを12ノットから10.39まで変化させる。
【0109】
方向の誤差は、周波数の非線形再マッピングに対して破局的なことがあり、本明細書に記載の実施形態は、こうした誤差が伝搬されるのを防止する。統計的に、波向は、かなりの量のデータが用いられるときには、普通は非常に安定である。短いサンプル・インターバルから導出される方向推定の変動性に対処する1つの方法は、「同じ」方向を共有する周波数帯を組み合わせることである。ステップ1312(図13A)との関連において後で説明される加重平均ピーク方向を参照して説明されるように、加重平均ピーク方向は、Ucosの適用のための方向のより良好な推定を提供する場合がある。幾つかの実施形態において、波向の堅牢な判定が分解能の犠牲のもとでさらなる周波数帯平均を有するようにすることが有利な可能性がある。
【0110】
我々は、その実際の周波数を与える観測された周波数を容易に計算することができる。逆数は、反復を介して解くことができ、時々あいまいさ(ambiguity)及び漸近線を伴う。観測された周波数fobsを与えるfwaterを見つけ出す1つの方法は、水に対する周波数空間全体を高分解能でステップ・スルーし、fobsを計算し、次いで、入力fobsと計算されたfobsとの間のベストマッチを探すことである。この手法は、強引なものであるが、演算上の境界を簡単にチェックし、多くの解を解くことを可能にする。
【0111】
ステップ912で再マッピングのために用いられる波の方向推定を安定化させるために用いることができる別の手法は、時間において反復的に平均される。例えば、overlap−add手法との関連において上記で説明されたように、短い時間間隔は、これが、我々がプラットフォームの動きにおける変化をより短い時間スケールで補正することを可能にすることから処理することができる。これらのより短い時間セグメントから導出される方向推定は、観測された周波数空間の精密な再マッピングのために用いるにはノイズが多すぎることがある。我々はプラットフォーム動力学を取り扱うために時間において短いセグメントを用いる動機を与えられるが、波向は短い時間スケール(たとえば2分)では変化しないということが一般に良好な仮定である。たとえば、プラットフォームの動きにおける変化に対処するために我々が時間を重なる2分セグメントに分割する、データの20分を処理し、次いで、20分にわたる再マップされた方向推定を平均することが可能である。それらに第2の反復を行うことができ、この場合、個々の2分セグメントは、波向の20分の平均された推定に対するプラットフォームの動きを補正される。平均された波向を個々のセグメントの再マッピングに適用するために、平均された方向は、マッピング解除して、プラットフォーム速度に基づいて観測された周波数空間に戻すことができる。これは、我々が対処することを試みる波向に伴う問題が短い時系列に起因する分散であるときに、特に良好に働く。
【0112】
ステップ912で方向スペクトルの係数を再マッピングする際の別の考慮事項は、波のドップラーシフトは、それが方向分布を異なる周波数に単純にシフトする方向計測に影響しない場合があることとすることができる。これは、幾つかの実施形態において、方向情報の主なソースは、各周波数での軌道速度(U及びV)の2つの水平成分の相対振幅とすることができるためである。各周波数は、独立して扱うことができるので、UとVの比率は、ドップラーシフトと共に変化せず、これは単純に別の周波数に動かされる。
【0113】
図12Aは、水基準座標系の周波数と観測された周波数との間の関係性を示すことによって、波に対して動くときのドップラーシフトされた波の周波数を例証する。図12Aで例証されるように、近づいてくる波の中に動いているとき、観測された周波数は、水基準座標系にあるよりも高くなるであろう。速度Uをもつプラットフォームに対して、計測することができる我々のサンプルレートよりも速く波の山が接近する、或る波の周波数が存在する。1つには、観測された周波数空間がドップラーシフトされるため、ナイキスト限界に時期尚早に行き当たる。図12Aのチャートでは、実線のfobs曲線がチャートの頂部と交わる場所がナイキスト限界である。これは、第1の停止部とすることができる。1つには、この限界よりも大きいドップラーで波のエネルギーを計測することはできないというわけではなく、1つには、周波数を明らかに識別することはできないのである。
【0114】
再マッピングは、より高い周波数にわたって分散するエネルギーをとり、且つこれをより低い周波数に取り戻すことができる。スペクトルはノイズ・フロアを有するため、ノイズ・フロアよりも高く上昇しない周波数帯を再マップしないことが有利なことがある。これは、高い周波数からのノイズ・フロアを再マッピングしてこれをより低い周波数で集群(bunch)する可能性を回避する。
【0115】
図12Bは、水基準座標系の周波数と観測された周波数との間の関係性を示すことによって、波と共に動いているときのドップラーシフトされた波の周波数を例証する。図12Bに示すように、波向と共に動いているときに、波は、観測された空間においてより低い周波数で現れるであろう。速度に応じて、多くの解決策が存在する可能性がある。これは、第1の停止部とすることができる。我々が観測する周波数として現れることができる1つよりも多い水基準座標系の波の周波数が存在する。第1の解決策は、最も低い周波数の解決策とすることができ、且つより演算上の有意となる可能性がある。これは、図12Bにおける実線のfobs曲線の立ち上がり端に対応する。これらの周波数において、波は、プラットフォームよりも依然として速く動くことができるが、速度における差異は0に近づく。fobs曲線の頂部は平らとすることができ、且つ観測された周波数が水に対する周波数のより広い範囲にわたって大きく変化しない領域に対応することができる。これは、プラットフォーム速度がグループ速度Cgとマッチする場所とすることができる。
【0116】
第2の解決策は、図12Bにおける実線のfobs曲線の下向きのスロープとすることができる。この領域は、プラットフォームがグループ速度Cgよりも速いが位相速度よりも遅く動くことができる場所とすることができる。図12Bの右に動くと、プラットフォームの速度は、これらの周波数における波の位相速度に近づく。この領域は、可測性問題を提示することがある。1つには、波の山と同じ速度及び方向で動いている(サーフィンの)場合、計測は、波のあらゆる他の部分をサンプリングしない場合がある。
【0117】
より高い周波数では、プラットフォーム速度は、波よりも速く動くことがあり、且つそれらを追い抜くことがある。この負の観測された周波数空間は、計測可能とすることができるが、典型的には、典型的に再マップするよりも高い、水に対する周波数である。0との交差部は、プラットフォーム速度が波の位相速度とほとんど正確にマッチする場所とすることができる。
【0118】
適正に計測された観測された周波数スペクトルは、図12Bにおける実線のfobs曲線よりも上の周波数における如何なるパワーをも有するべきでないことに注目されたい。ほとんどすべての本物の水に対する周波数は、ピーク上に又はピークよりも下になるべきである。これは、観測された周波数空間に対する上側カットオフ閾値(fupper)が設定されることを可能にする。平均流れの存在の下でそれらが計算に含まれない場合に、これへの例外が起こることがある。
【0119】
平均流れに起因する波数のドップラーシフトもまた、考慮に入れることができる。水が地球に対して動いていない場合、水基準座標系は地球基準座標系である。平均流れの存在の下で、2つの基準座標系は等しいものではない。波は、水中で伝搬し、そのため我々が地球基準座標系における波を計測することを望む場合、我々は、この状況の特別な取扱いを採用することができる。平均流れ上を伝搬する波は、周波数を変化させないが、しかしながら、対地流れは、波長を変化させるであろう。ラジアン周波数ωから波数k又は波長(2π/k)を判定するために標準分散関係式が用いられる。
【数9】
平均流れ上を伝搬する波は、ドップラーシフトされた分散関係に従うことができる。
【数10】
Uは、速度を表すことができ、αは、波向と平均流れ方向との間の角度を表すことができる。直観的に、平均流れと共に動く所与の周波数における波は、より大きい波長に引き伸ばされるであろう。平均流れに対して動いている波は、典型的に、より短い波長に圧縮されるであろう。海流は、関心ある周波数における波の速さに比べて一般に小さいが、この現象は、依然として説明することができる。平均流れは、水面変位への翻訳と、周波数空間の再マッピングとの2つの理由に該当する場合がある。
【0120】
水面変位への翻訳に関して、波長は、波のエネルギーが感じられる深さを決定付けることができる。波の長さが平均流れによって修正される場合、波が感じられる深さを修正することができる。実際の波数/波長は、深さにおける軌道速度計測を表面波の高さに正確に翻訳するために、ドップラーシフトされた分散関係を用いて計算することができる。
【0121】
周波数空間を再マッピングすることに関して、幾つかの実施形態において、我々は地球基準座標系における波を計測することを要望する。プラットフォームが波と共に又は波に対して動いているとき、観測された周波数はドップラーシフトされる。平均流れの存在の下で、地球基準座標系における波の位相速度及び波数が修正される。観測された周波数を地球基準周波数に再マップするために、我々は我々が知っている対地波数が修正されることを要求する。
【0122】
平均流れの課題に対処する1つの方法は、再マッピングのために用いられるプラットフォーム速度から平均流れを除去することである。これは、本質的に水に対するプラットフォーム速度を用いて再マップする。例えば、あなたは波と共に3m/sで動いており、平均流れは同じ方向に1m/sで動いている。波は、プラットフォーム速度のために、より低い周波数で集群化するように観測される。速度Uとして3m/sを用いて単純に再マッピングすることは、誤差を導入する。誤差は、観測されたスペクトルは3m/sのドップラーシフトで観測可能であるべき周波数よりも高い周波数での波のエネルギーを有することから表される。流れもまた波と共に動いていることから、より高い周波数が生じた。これは、波は水基準座標系において伝搬しており、且つ水はプラットフォームと共に1m/sで動いていることから、観測された波の周波数は、本当はたったの2m/sだけドップラーシフトされたことを意味する。
【0123】
結果として、平均流れは、波数を修正するが周波数は変化させないため、一実施形態において、前進の動きに起因してドップラーシフトを判定するために用いられる速度は、プラットフォームの対地速度ではないが、プラットフォームの対水速度である。
【0124】
図9Aに戻って参照すると、ステップ916でセグメント固有方向上側カットオフ周波数を実行することができる。幾つかの実施形態において、再マッピング・プロセスの間に判定されているあらゆる周波数境界を保存することができる。図13A及び図13Bとの関連においてさらなる詳細が提供される。
【0125】
ステップ916でセグメント係数を累算することができる。ドップラーシフトを補正するために周波数において各セグメントに対する係数がシフトされると、それらは、水の各周波数における各セグメントに対する係数を加えることによって累算することができる。係数の和は、次式によって表すことができる。
【数11】
【0126】
セグメント固有DWSの処理は、ステップ918に示すように、各セグメントが処理されるまで繰返すことができる。次いで、ステップ920で、ステップ904の反復において計算されたセグメント固有統計を、バースト・インターバルにわたって平均することができる。これは、周波数に依存するパラメータに対する変動(たとえば、標準偏差)又は平均値(たとえば、平均)を示す統計に対する周波数に依存するパラメータを平均することを含むことができる。平均された係数は、ステップ922でピーク検出のために提供された式(18)に基づいてDWSに変換することができる。
【0127】
分布は、非常に広く、ピーク方向の使用以上に特に有用ではない場合がある。これは、フーリエ級数の項の残りを、波向(U、V、W)の3つの独立した測度のみに基づいて判定することはできない場合があり、及び難しいことがあるという事実に起因する場合がある。幾つかの実施形態は、多方向波及び方向幅を判定するそれらの能力に限界があることがあるため、ピーク方向を単純に抽出することが有用な場合がある。係数から導出される方向幅はブロードであり、グラフではあまり有用ではないので、1つには、ピーク方向を望ましい様式でグラフで表す方向幅を選び出すことができる。これが広すぎる場合、これはピーク方向への良好なポインタを作成しない場合がある。これが狭すぎる場合、ユーザは、輪郭プロット上でピークを見ることができない場合がある。一実施形態において、ピーク方向は、係数から導出され、幅10度のガウス分布によって表される。ガウス分布は、次式によって表すことができる。
【数12】
【0128】
ステップ924において、周波数分解能を増加させることができる。方向は、周波数分解能を減少させる(平均を増加させる)、短い時間枠のセグメントと共により安定な場合があるため、方向スペクトルは、非方向スペクトルと同じ分解能において長くない場合がある。後で、そのように非方向パワーによって方向スペクトルを再びスケール変更することができ、一方、真の分解能は取り戻されない場合があり、方向スペクトルは、後の使用のために周波数帯の数を2倍にする状態で構造にマップすることができる。
【0129】
ステップ926において、DWSを正規化することができる。各周波数帯における非方向パワーは別のアルゴリズムによって別々に判定されるので、以下の式によって示されるように、後で再びスケール変更することに備えて各方向分布を1の面積に正規化することができる。
【数13】
【0130】
図13A及び図13Bは、非方向波スペクトルを計算するプロセス437を例証する。プロセス437は、図7のステップ437に関するさらなる詳細を提供する。一実施形態において、動きを取り扱うための戦略は、方向アルゴリズムに対する場合と同様に非方向アルゴリズムに対して実質的に同じである。しかしながら、他の実施形態において、手法は、非方向波に対して異なるように最適化することができる。一実施形態において、例えば20分のバースト・インターバルは、より短いセグメントに分割することができ、周波数に依存するパラメータを、それらを累算する前に各セグメントに独立して適用することによって動力学に対処することがある。我々が推定する情報の唯一の断片は方向であるため、方向アルゴリズム、例えば、プロセス435(図9A、9B)は、小さな誤差に対して若干回復の速いものとすることができる。それに対して、プロセス437の非方向アルゴリズムは、こうした非線形プロセスにおける小さい誤差は、海面の波の高さの推定における大きい誤差につながることがあるため、微妙な不正確さに対処することがある。
【0131】
ステップ1302において、プロセス437は、時系列データを重なりセグメントに区切ることができる。これは、方向プロセス435のステップ902(図9A)を参照して上記で説明された特徴と、図10との関連で説明される特徴とのいずれかを含むことができる。
【0132】
一実施形態において、方向アルゴリズム435は、地球座標に座標変換された水の単一の大きい体積を用いてセグメントを累算することができる。それに対して、非方向アルゴリズム437は、セグメント及びセンサ(たとえば、ビン、ビームなど)にわたって累算することができる。そのため、時系列の速度が、非方向アルゴリズム437に対するビーム座標に戻されてもよい。
【0133】
ステップ1302のoverlap−addプロセスの一部として、座標をビーム座標に変換することができる。以下で詳述されるステップ1308の加重最小2乗法は、異なる深さでの異なるセンサからのデータを組み合わせる堅牢な方法とすることができる。1つには、センサとセグメントとを組み合わせることによって、この動作中のアルゴリズムを利用することができる。広範囲の深さ及びセグメント環境は、その推定を改善する場合がある。
【0134】
サンプル・インターバルは、セグメントに区切ることができる。周波数空間の再マッピングをサポートするために周波数分解能を改善することができる。これを行うために、時間分解能が犠牲にされる場合がある。例えば2分のセグメントを用いるのではなく、1つには、例えば4分のセグメントを用いることができる。これは、スペクトルの周波数分解能を2のファクタだけ改善することができるが、4分の時間枠にわたって起こる実質的な動力学に正確に応答することができないことを意味する場合がある。
【0135】
ステップ1302において作成された各重なりセグメントは、セグメント固有ステップ1304〜1320によって別々に処理することができる。セグメントは、ステップ1304でデミーン(demeaned)することができる。バースト・インターバルの間の速度データにおけるトレンドの1つの結果は、パワーをより低い周波数にブリードすることができることである。プラットフォームの動きが除去されると、1つには、速度時系列が0平均に近くなることが期待されるであろう。なぜ残りのオフセットが存在する可能性があるかの少なくとも2つの主な理由がある。第1に、平均流れは、平均をオフセットすることがある。第2に、プラットフォーム速度の推定におけるオフセット誤差もまた、平均をオフセットすることがある。
【0136】
流れは、一般に小さいが、依然として有意である可能性がある。地球基準プラットフォーム速度のソースとして慣性を用いることは、或る潜在的な不正確さを含む場合がある。幾つかの慣性系は、良好なスケールファクタ誤差を有するが、それらが独立した固定値(fix)を有さない場合、時間と共にドリフト又はオフセットすることがある。一実施形態において、波の処理システムは、データがデミーンされるため、及びスケールファクタ誤差が小さいため、それがドリフトされた場合であってもプラットフォーム速度に対する推定として慣性を用いることができる。波は、正しい大きさを有することができるが、ゆっくりと変化する未知のオフセット誤差上にスーパーインポーズすることができる。
【0137】
この事例におけるデミーニング(Demeaning)は、ハイパスフィルタに関係することがある。オフセットは、固定されることになるデータを中心とする、スライディング平均を計算し、平均を差し引くことによって除去することができる。一実施形態において、ハイパスフィルタ幅は、120サンプルとすることができる。これは、例えば、20分のバースト・インターバルの間のプラットフォームの動きの変化に応答するのに十分なだけ狭いが、波の周波数(<30秒周期)を完全な状態のまま残すのに十分なだけ広い場合がある。この関係性は、次式によって表すことができる。
【数14】
【0138】
図14は、セグメントの速度データのデミーニングをグラフで例証する。曲線1400は速度データを表し、曲線1410は局所平均(local mean)データを表し、曲線1430はデミーンされたデータを表す。デミーンされたデータ曲線1430は、オフセットを除去しながら速度曲線1400の特徴を保つことができる。図14に示すように、オフセットは変化することができる。
【0139】
図13Aに戻って参照すると、各セグメントは、ステップ1306で、ウィンドウ処理し、FFTで周波数ドメインに変換し、且つセグメント固有パワースペクトルを計算することができる。一実施形態において、標準バートレット・ウィンドウが適用される。ウィンドウは時間領域において適用されることから、パワースペクトルは、バートレット・ウィンドウの二乗によって導入されるパワーを説明するために後で正規化することができる。他の実施形態において、当業者に公知のあらゆるウィンドウを用いることができる。一実施形態において、標準FFTアルゴリズムが用いられる。時間領域データを周波数ドメインに変換するために、他のアルゴリズムが用いられてもよい。パワースペクトルは、以下の式に示されるように、その複素共役を掛けた周波数スペクトルによって表すことができる。
【数15】
各セグメントに対する翻訳されていない、再マップされていない(観測された)パワースペクトルを、後の使用のために保存することができる。これらの生計測値は、信号対ノイズ比の代表的なものとすることができ、上側カットオフ周波数を後で判定するのに有用なことがある。
【0140】
ウィンドウの選定は、スペクトル・ブリーディング及び分解能に起因する誤差の伝搬を減少させることができる。波と同じ方向の前進の動きに起因するドップラーシフトは、観測されたスペクトルをより低い周波数に動かし、これにより細い、より集群化された形状を与える傾向がある。処理又は分解能の制限に起因して観測されたスペクトルがより高い周波数にブリードされた場合、再マッピング関数がこの誤差を増幅することがある。ドップラーシフトは周波数と共に強く非線形であることから、観測された空間におけるスペクトルパワーの僅かな置き違えは、再マップされた地球−周波数空間における破局的な置き違えと化すことがある。この誤差は、水面変位への周波数に依存する非線形の翻訳によってさらに増幅されることがある。
【表3】
【0141】
例えば、プラットフォームは、深さ100mで波と共に6m/sで動いている。波のエネルギーは、ドップラーシフトによってより低い周波数で集群化される。実際の波の周波数は0.083Hzであるが、観測された空間において0.056Hzにドップラーシフトされている。スペクトル・ブリーディング及びコース分解能は、0.056Hz帯域におけるパワーの或る部分を、次の隣接する帯域(0.064Hz)において出現させる。この帯域に誤ってブリードされたパワーは、地球周波数空間における0.12Hzに再マップされるであろう。この周波数における水面変位に翻訳するためのゲインは、真の周波数に対するゲインよりも100倍大きい。
【0142】
結果として、そうでなければ多くの周波数帯にわたって分布される典型的なスペクトルは、分解能とスペクトル・ブリーディングが問題となる程にドップラーシフトによって圧縮されることがある。このリスクを緩和するために、1つには、非方向スペクトルを処理するときに適切なスペクトル分解能及びウィンドウ処理を有してもよい。
【0143】
上記で説明されたスペクトル・ブリーディングに関係する再マッピングと関連付けられた誤差源の分析は、幾つかの実施形態において、非方向アルゴリズムは分解能を支持することが望ましいことを示す。図11との関連において上記で説明された方向推定におけるノイズに起因する伝搬誤差のさらなる分析は、幾つかの実施形態において、方向アルゴリズムは方向推定の安定性を改善するために分解能の犠牲のもとにさらなる周波数帯の平均を行うことが望ましいことを示す。2つのアルゴリズムは、互いに依存することがあり、且つスペクトル情報の交換を要求することがあるため、これらの競合する設計基準は顕著なものとなることがある。
【0144】
1つの解決策は、非方向アルゴリズムよりも方向アルゴリズムに対する異なる周波数バンディングを可能にし、2つのプロセスの間で渡されるあらゆるデータを同じ分解能に補間することである。例えば、0から1Hzまでの128の周波数帯をもつ方向スペクトルを処理し、且つ0から1Hzまでの256帯域をもつ非方向スペクトルを処理することによって、我々は両方の世界の最善を得ることができる。非方向スペクトルは、狭いピークを分離するのに適切な分解能を有し、且つスペクトル・ブリーディングを回避し、一方、方向スペクトルは、さらなる平均と関連付けられた方向安定性からの恩恵を受ける。2つのアルゴリズムの間の重要な依存関係は、非方向スペクトルを再マップするための波向情報の必要性とすることができる。ピーク方向と各周波数とのマップは、それが用いられる前に非方向スペクトルのより高い分解能に補間することができる。
【0145】
ステップ1308でセグメント固有バイアスを除去することができる。有意な波の高さはパワースペクトルの下の面積を用いて判定されてもよいことから、バイアスの除去を行うことができる。計器ノイズ・フロアは、スペクトル全体をオフセットするホワイトノイズとしてモデル化することができる。ノイズ・フロアによって導入される面積は普通は小さいが、これは明らかに波ではない。除去は、スペクトル・ノイズ・フロアの計測と、水面変位に翻訳する前にスペクトル全体からこのオフセットを差し引くことに関係する。スペクトル・ノイズ・フロアを判定するために、1つには、例えば0.8から1.0Hzまでの多くの真の波のエネルギーを典型的に有さないスペクトルの領域を用いることができる。典型的に、この領域は、環境ノイズではなく計測ノイズの代表的なものである。ADCPのノイズ・フロアは、レンジ、システム周波数、及びビンサイズと共に変化することがあり、そのため値は経験的に判定されてもよい。
【0146】
ステップ1310でセグメント固有統計を計算することができる。このステップは、ステップ904(図9A)を参照して上記で説明された特徴のいずれかを実装することができる。
【0147】
ステップ1312でセグメント固有平均ピーク方向を判定することができる。セグメントに対する観測されたパワースペクトルが判定されると、これは、方向推定をさらに安定化させるために用いることができる。周波数空間を再マップするために各セグメントに対する個々の各周波数帯における波向が用いられるとき、再マップされたスペクトルの品質は疑わしい場合がある。これは、単一の2〜4分セグメントは非常に多くのサンプルを収容しないという事実に起因して、方向推定はノイズのあるものであるかもしれないためである。1つの手法は、真に類似した方向をもつ波は単一の方向(暴風又は風事象)から来るという考えに基づいて、さらなる帯域平均を行うことである。実際には、パワーのピークから導出される単一の方向を用いることは、周波数空間を再マッピングするときに、より堅牢な且つ現実的な結果を与える。これを知ることで、第1の判定は、共通の方向を共有する隣接する周波数帯をグループ化するアルゴリズムを用いることができる。第2に、信号対ノイズ比が高いときの波の方向推定の信頼性はより高いため、それらが顕著なパワーを有するときに波向推定により多く加重するアルゴリズムを用いることができる。
【0148】
これは、海洋上の風事象及び暴風によって波が生成されるとみなす。ほとんどの場合、特定の暴風から到来する波は共通の方向を有する。別の方向における別の異なる暴風は、新しい方向から来るように見えるであろうそれ独自のスペクトルを生み出すであろう。
【0149】
幾つかの実施形態は短い時間間隔(たとえば2分)を用いるため、方向データは、大きい分散を有することができる。この分散は、実質的な誤差に伝搬することがある。共通の波向(及び多分、共通のソース)を有する周波数帯をグループ化することによって、方向推定の分散を減少させるために、これらの隣接する帯域のピーク方向を平均することができる。
【0150】
幾つかの実施形態において、ピークパワーの周波数における波向の60度以内で来る波は、共通の波向にあると考えられる。30度又は45度のようなレンジに対する他の値が用いられてもよい。プロセスの一実施形態は以下のとおりである。
1.観測された非方向パワースペクトルを用いて、ほとんどのパワーをもつ観測された周波数(fpeak)を見つけ出す。
2.このピーク周波数において、観測された(再マップされていない)方向スペクトルにおけるピーク方向θpeakを見つけ出す。
3.60度以内のピーク方向を有する隣接する周波数帯をグループ化するために、パワーのピークから前進と後進との両方を見つけ出す。
4.周波数帯がこの閾値外の波向を有するところに達したときに停止する。
5.残りのグループ化されていない周波数帯のみを用いて、非方向パワーの新しいピークを見つけ出す。
6.グループ分けプロセスを繰り返す。
7.3度目を繰返す。
8.ステップ1〜7は、周波数帯を共通の方向によって3つの可能な方向にグループ化することができる。次に、パワー加重平均を各グループに適用することができる。これは、方向推定を静穏にするために帯域平均する恩恵と、良好な信号対ノイズ比をもつ周波数帯はより正確であり且つより加重されるべきであるという推定を提供することができる。
9.方向の平均は、ベクトル平均であり、サイン及びコサイン成分において累算することができる。
10.次式に従って、各グループにおける周波数にわたる加重サイン成分を累算する。
【数16】
11. 個々の大きさではなくサインとコサインとの比だけが重要な場合があることから、正規化は要求されない場合がある。最後に、ピーク方向のこれらの平滑化された推定は、再マッピングのために用いることができる。
【0151】
ステップ1314において、周波数空間のセグメント固有再マッピングを行うことができる。観測されたパワースペクトルを水に対する周波数空間に再マッピングする一実施形態は、方向アルゴリズムのために用いられる手順と類似している。さらに、再マッピングは、非方向スペクトルとの違いを含むことがある。例えば、方向推定は、例えば、ステップ1312でピーク検出を平均することによってさらに磨きをかけることができる。加えて、周波数空間は非線形の様式で引き伸ばす又は圧縮することができるため、1つには、パワーを新しい周波数に動かすことと、各周波数帯におけるパワーをスケール変更して、新しい帯域幅、すなわちΔfにおけるパワーを保存することとの両方が可能である。別の違いは、ドップラーシフトによってほんの幾つかの帯域に圧縮されているスペクトルを取り戻そうとするときに再マッピングにおける誤差が生じないように、周波数分解能はより高いことがあることである。加えて、再マッピング・アルゴリズムによってアサートされる演算上の停止は、最も高い使用可能な周波数の判定に寄与する場合がある。図15は、非方向スペクトルに対する周波数空間の再マッピングを例証する。
【0152】
ステップ1316でセグメントを水面変位に翻訳することができる。深さにおける軌道速度から水面変位への翻訳は、線形波理論とシステムの幾何学的形状から導出することができる。翻訳式T(f)は、該セグメントの間の深さ、高度、及びセンサの幾何学的形状に基づいて、各セグメント及び各センサに対して見つけ出すことができる。翻訳されることになる軌道速度スペクトルは、前進の動きに起因するドップラーシフトを既に補正されていると思われる。水面変位に関する式は、以下の通りである。
【数17】
この式において、ωは、ラジアンの周波数を表すことができ、kは、波数を表すことができ、Vは、ビーム半径方向速度を表すことができ、hは、水深を表すことができ、zは、センサにおける没水度(submergence)を表すことができ、Jは、ヤヌスビーム角を表すことができる。
【0153】
ステップ1312でセグメントに対して表面スペクトルSH、SV、及び再マップされたSVの「加重最小2乗」計算を行うことができる。各周波数におけるセンサ及びセグメントにわたって以下の和を累算することができる。
【数18】
これらの和において、SVは、深さにおける軌道速度スペクトルを表すことができ、SRは、ドップラーシフトを補正するために再マップされる軌道速度を表すことができ、SHは、地球基準表面スペクトルを表すことができ、Tは、翻訳式を表すことができ、mは、センサ又はビームの数×レンジ・セルを表すことができ、nは、セグメントの数を表すことができ、Nは、n×mを表すことができる。
【0154】
上記で提供された和に加えて、周波数/深さに依存する翻訳式を含むTではなくTを1に等しく設定する状態で、これらを重複する累算を行うことができる。これは、スクリーニング・アルゴリズム及び上側カットオフ周波数アルゴリズムと共に用いるために、当てはめられ、平均された軌道速度スペクトルを我々が後で判定することを可能にする。
【0155】
一実施形態において、ステップ1312は、翻訳式Tが適用されるときの深さにおける速度スペクトルSVを再現する表面スペクトルSHに対する最良の適合を推定する。手法の幾つかの実施形態は、最小2乗の当てはめとは異なる。正確に最小2乗の当てはめではない、この手法への少なくとも3つの革新が存在する。すべてのセンサにわたってデータを累算するのではなく、実装は、センサとセグメントとの両方にわたって累算するように一般化することができる。考えというのは、累算は、両方の種類の平均に対処することができるということである。すべてのセンサにわたるデータを累算するのではなく、実装は、上記で提供された式(36)〜(40)によって示されるように、センサとセグメントとの両方にわたって累算するように一般化することができる。考えというのは、累算は、両方の種類の平均に対処することができるということである。以下の式で示されるように、水面高さだけでなく、再マップされた軌道速度スペクトルと再マップされていない軌道速度スペクトルとに対する最良の適合を我々が判定するように、項を追加することができる。式(41)は、水面高さだけでなく、再マップされた軌道速度スペクトルと再マップされていない軌道速度スペクトルとに対する最良の適合を我々が判定するように項を追加する。
【数19】
【0156】
ドップラーシフトを補正するために再マップされた軌道速度を表す式(41)を用いて、地球基準表面スペクトルは、次式によって表すことができる。
【数20】
【0157】
これは、水面変位に対する最終式とすることができる。しかしながら、幾つかの実施形態において、翻訳されていない再マップされたスペクトルと、翻訳されていない再マップされていないスペクトルとを同様に計算することができる。すべてのセンサ及びセグメントに対して、T=1である、同じ式を用いることができる。これは、翻訳されていないスペクトルを提供し、且つ次式によって表されるように、再マップされていないスペクトルに対するSRではなくSV累算を用いることができる。
【数21】
【0158】
最小2乗法を用いる別の実施形態において、式は、以下のように表すことができる。
【数22】
しかしながら、深さに伴う非常に小さい変動が存在するとき、分母が0に行くことからプロセスは崩壊する。代わりに、水柱におけるより高い値は、分母からファクタNを除去することによってより有意なように加重することができる。これは、次式に簡略化される。
【数23】
一実施形態において、これは、水面変位に対する最終式とすることができる。しかしながら、翻訳されていない再マップされたスペクトルと、翻訳されていない再マップされていないスペクトルを、同じく計算することができる。次式によって表されるように、翻訳されていないスペクトルを得て、再マップされていないスペクトルに対するSrではなくSv累算を用いるために、すべてのセンサ及びセグメントに対して、T=1である、同じ式を用いることができる。
【数24】
【0159】
図13Aに戻って参照すると、ステップ1320は、すべてのセグメントが処理されるかどうかを判定することができる。ステップ1304〜1320は、すべてのセグメントが処理されるまで繰返すことができる。次いで、ステップ1322においてすべてのセグメントに対して最小2乗計算を計算することができる。これは、当てはめられ、観測された速度スペクトルSc、再マップされた速度スペクトルSr、及び表面スペクトルShを出力することができる。
【0160】
ステップ1324において、上側カットオフ周波数を計算することができる。ステップ1324は、ステップ914(図9A)との関連において説明された特徴のいずれかを実装することができる。ステップ1324の一実施形態は、実際のデータにおける信号対ノイズ比に基づいて最も高い使用可能な周波数と、信号/ノイズが増幅されてもよい程度とを判定する。プロセスの一実施形態を以下で概説する。
1.計測データの集合的なスペクトル・ノイズ・フロアσを計算する。
【数25】
2.我々はこれらの周波数における波のエネルギーが小さい又は計測可能でないことを期待するので、ノイズ・フロアの代表的なものとしてスペクトルの最高周波数部分を用いる
3.再マップされた軌道速度パワースペクトルの大きさを用いて信号を計算する。
【数26】
4.水面変位T(f)への平均翻訳を計算する。平均又は最大のいずれかを用いることができる。最大は、深さにおける動力学が存在する場合には、より保守的である。
【数27】
5.GN2Sを周波数の関数として計算する。
【数28】
6.再マップされたスペクトルのピーク周波数を見つけ出す。
【数29】
7.GN2S(f)>100までピークの前進を見つけ出す。これが起こる周波数は、我々の上側カットオフとなる。
【0161】
ステップ1326でスペクトルをスクリーニングすることができる。信号対ノイズ比に関してスペクトルをスクリーニングすることは、計器ノイズ・フロアよりも上の適切な波の信号を要求することに基づいて個々の周波数を我々が却下することを可能にする。スペクトルをスクリーニングするためのプロセスの一実施形態を以下で概説する。
1.計測データの集合的なスペクトル・ノイズ・フロアσを計算する。
【数30】
2.我々はこれらの周波数における波のエネルギーが小さい又は計測可能でないことを期待するので、ノイズ・フロアの代表的なものとしてスペクトルの最高周波数部分を用いる。
3.再マップされた軌道速度パワースペクトルの大きさを用いて信号を計算する。
【数31】
信号対ノイズ比は、
【数32】
これは、信号が4σよりも大きいことを要求することがある。
4.この基準に基づいて翻訳されたスペクトルをスクリーニングする。
【数33】
【0162】
次いで、ステップ1328において、上側周波数を外挿することができる。波のエネルギーが最後の良質な値から指数関数的に低下するという仮定を用いて、信号が小さすぎることがあるため判定するのが難しいことがあるスペクトルの上側部分を外挿することができる。この外挿のためのシードとして1つよりも多い最後のデータ点を使用することは時々より堅牢である。
【数34】
非方向パワースペクトルと正規化された方向スペクトルとの両方が独立して計算されると、正規化された方向分布を非方向パワーによってスケール変更することができる。
【数35】
これにより、
【数36】
次いで、標準的方法を用いて方向スペクトル及び非方向スペクトルから波のパラメータを計算することができる。例えば、図7を参照して上記で説明したものである。
【0163】
図16を参照すると、水面トラックを使用して1つ又は複数の波の特性を判定するためのプロセス1600が提供される。プロセス1600は、上記で説明された軌道速度手法のいずれかへの代替として又はそれに加えて実行することができる。水面トラック手法は、上記で説明された軌道速度手法のいずれかと類似している可能性がある。水面トラック手法は、サンプリング周期を時間においてより短い重なりセグメントに分割し、次いで、各セグメントを該時間の間に生じた固有のプラットフォームの動きに関して補正することによって、非方向スペクトルを判定することができる。
【0164】
プロセス1600は、ステップ1602において水面トラック・データを収集することができる。水面トラック・データは、上向きのADCPから得ることができる。上向きのADCP402は、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを含むことができる。水面トラック・データは、水面へのレンジを突き止める時系列のエコーを含むことができる。典型的に、時系列データは、2Hz以上の周波数でサンプリングされる。
【0165】
水面トラック・データは、ステップ1604において、例えば、プロセス435(図9A及び図9B)との関連において説明された技術のあらゆる組合せを用いてピーク波向を判定するのに用いることができる。ピーク波向は、水面トラック・データの各セグメントに対して各周波数において判定することができる。
【0166】
水面へのレンジを突き止める時系列のエコーは、典型的に、ステップ1606においてサンプリングされ、且つプラットフォームの動きの同期した測度と組み合わされる。例えば、プラットフォームの動きと平均流れの同期した又は同期していない測度は、データ収集システム410(図4A)及び/又はデータ収集プロセス410’(図5)を参照して説明された技術のいずれかを用いて水面トラック・データと同期させることができる。ステップ1606において、出力は、サンプルレートでのプラットフォームの東方向、北方向、及びZ方向速度を含むことができる。
【0167】
ステップ1608において、プラットフォームの動きの時系列データをプラットフォーム・オフセットに統合することができる。時系列データは、サンプルレートでのプラットフォームに対するX、Y、Z位置オフセットを含むことができる。加えて、ステップ1608での減算によって水面トラック・データからプラットフォームの動きを除去することができる。結果として得られる時系列は、プラットフォーム応答によるバイアスのない水面隆起(対地垂直レンジ)のみを含むことができる。
【0168】
時系列データは、ステップ1610で重なりセグメントに区切ることができる。例えば、これは、ステップ1302(図13A)を参照して説明されるように行うことができる。
【0169】
セグメント固有処理は、ステップ1612〜1620において行うことができる。これは、ステップ1612でFFTを介して時系列データをパワースペクトルに変換し、且つセグメント固有統計を計算することを含むことができる。セグメント固有統計は、データにおける平均値及び/又は変動を示す統計を含むことができる。プロセス1600は、次いで、ドップラーシフトを補正するために、ピーク波向(方向波アルゴリズムによって前もって判定される)と、セグメントのサンプリング周期の間の平均プラットフォーム速度とを使用することができる。結果として得られる水に対するスペクトルを、次いで、ピーク波向及び平均流れを用いて地球基準座標系に対して補正することができる。これは、ステップ1614で各セグメントに関する前進の動きを用いて観測されたスペクトルからの周波数空間を水基準に再マッピングすることによって達成することができる。ステップ1614によって提供された水に対する表面スペクトルを、次いで、ステップ1616で平均流れを用いて地球基準に対して再マップすることができる。ステップ1618でセグメント固有対地表面スペクトルを累算することができる。これは、個々に補正されたセグメントを互いに平均することを含むことができる。各セグメントが処理されるまでに、サンプリング周期全体に関する代表的な非方向スペクトルを作成することができる。
【0170】
ステップ1620でセグメント固有処理が行われることが決定された後で、付加的な後処理を行うことができる。次いで、ステップ1622で方向波スペクトル及び/又は非方向波スペクトルから1つ又は複数の波の特性を判定することができる。したがって、移動プラットフォームから1つ又は複数の波の特性を判定する軌道速度手法への代替として又はそれに加えて水面トラック・データを用いることができる。
【0171】
移動プラットフォームを用いて波の特性を判定するシステム及び方法の固有の実施形態が本明細書で説明される。明細書は、本発明の特定の例を説明するが、当業者は、発明概念から逸脱することなく本発明の変形を考案することができる。
【0172】
結言
当業者は、種々の異なるテクノロジー及び技術のいずれかを用いて情報及び信号が表わされてもよいことを理解するであろう。例えば、上記の説明を通して言及される場合があるデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、及びチップは、電圧、流れ、電磁波、磁場又は磁性粒子、光学場又は光学粒子、又はその任意の組合せによって表されてもよい。
【0173】
当業者は、本明細書で開示された例との関連において説明された種々の例証となる論理ブロック、モジュール、回路、方法、及びアルゴリズムは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はこの両方の組合せとして実装されてもよいことをさらに理解するであろう。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例証するために、種々の例証となる成分、ブロック、モジュール、回路、方法、及びアルゴリズムが上記で一般にそれらの機能性の点で説明されている。こうした機能性は、システム全体に課される特定の用途及び設計制約に応じてハードウェア又はソフトウェアのいずれかとして実装される。当業者は、説明された機能性を特定の各用途に対する種々の方法で実装してもよいが、こうした実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0174】
本明細書で開示された例との関連において説明された種々の例証となる論理ブロック、モジュール、及び回路は、本明細書で説明された機能を行うように設計された汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は他のプログラム可能論理デバイス、個別のゲート又はトランジスタ論理、個別のハードウェア・コンポーネント、又はその任意の組合せと共に実装され又は行われてもよい。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替法において、プロセッサは、あらゆる従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又は状態マシンであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティング・デバイスの組合せ、たとえば、DSPと、マイクロプロセッサ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併せられる1つ又は複数のマイクロプロセッサとの組合せ、又はあらゆる他のこうした構成として実装されてもよい。
【0175】
本明細書で開示された例との関連において説明された方法又はアルゴリズムは、直接ハードウェアにおいて、プロセッサによって実行されるソフトウェア・モジュールにおいて、又はこの2つの組合せにおいて具体化されてもよい。ソフトウェア・モジュールは、当該技術分野では公知のRAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、又はあらゆる他の形態の記憶媒体に存在してもよい。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し且つ記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに接続されてもよい。代替法において、記憶媒体は、プロセッサと一体にされてもよい。プロセッサと記憶媒体は、ASICに存在してもよい。
【0176】
実施形態に応じて、本明細書に記載の方法のいずれかの或る作動、事象、又は機能は、すべて一緒に、異なる順序で行うことができ、追加することができ、融合することができ、又は省略することができる(たとえば、説明された作動又は事象のすべてが、方法の実施にとって必要不可欠なわけではない)。そのうえ、特定の実施形態において、作動又は事象は、順次にではなく同時に行うことができる。
【0177】
1つ又は複数の例示的な実施形態において、説明された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はその任意の組合せにおいて実装されてもよい。ソフトウェアに実装された場合、機能は、1つ又は複数の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納され又はコンピュータ可読媒体上で伝送されてもよい。コンピュータ可読媒体は、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの伝送を容易にするあらゆる媒体を含む、コンピュータ記憶媒体と通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、汎用又は特殊用途のコンピュータによってアクセス可能なあらゆる利用可能な媒体であってもよい。単なる例として、限定ではなく、こうしたコンピュータ可読媒体は、命令又はデータ構造の形態の所望のプログラムコード手段を搬送する又は格納するために用いることができ、且つ汎用又は特殊用途のコンピュータ、若しくは汎用又は特殊用途のプロセッサによってアクセス可能な、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROM、又は他の光ディスク・ストレージ、磁気ディスク・ストレージ、又は他の磁気ストレージ・デバイス、若しくはあらゆる他の媒体を含むことができる。また、あらゆる接続が、コンピュータ可読媒体と適正に呼ばれる。例えば、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(digital subscriber line)(DSL)、又は赤外線、無線、及びマイクロ波のような無線技術を用いて、ソフトウェアが、ウェブサイト、サーバ、又は他の遠隔ソースから伝送される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、又は赤外線、無線、及びマイクロ波のような無線技術が媒体の定義に含まれる。本明細書で用いられる場合のディスク(Disk)及びディスク(disc)は、コンパクト・ディスク(compact disc)(CD)、レーザ・ディスク(laser disc)、光ディスク(optical disc)、デジタル・バーサタイル・ディスク(digital versatile disc)(DVD)、フロッピー(登録商標)・ディスク(floppy disk)、及びブルーレイ・ディスク(blu−ray disc)を含み、この場合、ディスク(disk)は、普通はデータを磁気的に再生し、一方、ディスク(disc)は、データをレーザで光学的に再生する。上記の組合せはまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0178】
そのうえ、数ある中でも、「できる(can)」、「可能性がある(could)」、「場合がある(might)」、「ことがある(can)」、「たとえば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「のような(such as)」などのような本明細書で用いられる条件付き言語は、特にそれ以外の指定のない限り、又は用いられる場合の文脈内で別なように理解されない限り、一般に、他の実施形態は含まないが或る実施形態が或る特徴、要素、及び/又は状態を含むことを伝えることを意図される。したがって、こうした条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又は状態が1つ又は複数の実施形態に対して多少なりとも要求されること、若しくは、これらの特徴、要素及び/又は状態があらゆる特定の実施形態に含まれる又はあらゆる特定の実施形態において行われるかのいずれであろうとも、1つ又は複数の実施形態が、著者の入力又はプロンプティングにより又は著者の入力又はプロンプティングなしで、決定するための論理を必然的に含むことを含意することは意図されない。
【0179】
開示された例の前の説明は、当業者が本発明を行う又は用いることを可能にするために提供される。これらの例への種々の修正は、当業者には容易に明らかとなるであろうし、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく他の例に適用されてもよい。認識されるように、本明細書に記載の本発明の或る実施形態は、幾つかの特徴を他のものとは別に用いる又は実施することができるので、本明細書に記載された特徴及び利点のすべてを提供するわけではない形態内で具体化することができる。本明細書で開示された或る発明の範囲は、上記の説明によってではなく付属の請求項によって示される。請求項の均等物の意味及び範囲内に入るすべての変化は、それらの範囲内に包含されることになる。したがって、本発明は、本明細書で示された例に限定されることを意図されないが、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に従うことになる。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み入れられる、2009年5月27日に出願された米国特許仮出願第61/181,585号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
開示された技術は、水中音響計測システムに関し、より詳細には、波のスペクトル及び波の特性を計測するのに用いられる超音波ドップラー式多層流向流速計に関する。
【背景技術】
【0003】
参照によりその開示全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,052,334号で説明されるように、流体媒体における流れを計測するためのドップラー・ソナーの使用が十分に確立されている。従来の超音波ドップラー式多層流向流速計(acoustic Doppler current profiler)(ADCP)は、典型的に、周知のヤヌス構成で配列された音響トランスデューサのアレイを用いる。この構成は、直交面内で対を成す4つの音響ビームからなる。ADCPは、ビーム軸に沿って投射され、そのビーム長さが放射された音響パルスのビーム長さのほぼ半分であるレンジ・セルにわたって平均される、速度成分を計測する。平均流れは、ビームにわたって水平方向に一様であるとみなされるので、その成分は、単純に対向するビームの差分をとることによって回収することができる。この手順は、垂直方向の流れ及び/又は未知の計器チルトによる汚染の影響を比較的受けない。
【0004】
しかしながら、流体媒体における波の分析は、はるかに複雑である。波のフィールドは、統計的に定常且つ同次であるが、あらゆる時間の瞬間における波の速度はアレイにわたって変化し、結果として、ビームに沿って計測された速度をサンプル毎に水平成分及び垂直成分に分離することは可能ではない。1つのソナー・ビームが垂直な場合、そこにおける周波数スペクトルを分離することができ、水平速度スペクトルの比から方向の粗い推定が得られる。しかし、位相情報は、この手順を通じて取り返し不能に失われ、推定は、波が一方向に拡散するときに実質的にバイアスされる。結果として、この推定量は、おそらく増大する場合以外は、特に有用ではない。しかしながら、種々のレンジ・ビンの間の相互相関にある位相情報が存在し、この事実は、波向の推定に従来の信号処理技術を適用することを可能にする。
【0005】
方向波スペクトル(wave directional spectrum)(WDS)は、流体媒体内の波の物理的挙動を説明するのに有用な、方位角及び波の周波数の関数としての波向の数学的表現である。方向波スペクトルを得るのに用いられる最も一般的な既存のデバイスは、以下でさらに詳しく説明される、1)ピッチ及びロール・ブイ、及び2)PUVトリプレットである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピッチ及びロール・ブイは、典型的に、加速の垂直成分と共に、波の傾斜の代わりとして2方向のチルトを計測する。バリエーションは、代わりに3つの速度成分のGPS(Global Positioning system(全地球測位システム))計測を用いる。計測された時系列は、フーリエ変換され、自動スペクトル及びクロススペクトルが形成され、結果として各周波数におけるクロススペクトル行列がもたらされる。クロススペクトル行列の要素は、各周波数における方向波スペクトルの方向(2θを通る)の最初の5つのフーリエ係数と直接関係付けられる。これらのブイは、典型的に、より深い水中で用いられる。残念なことに、これらのブイに関する伝達関数は複雑であり、非線形であり、且つ判定するのがしばしば難しい。加えて、ブイのための係船索の存在が、付加された動きに起因して分析に付加的な複雑さを付加する。そのうえ、こうしたブイは、比較的費用がかかり、天候及び盗難の影響を受けやすく、且つ流れ又は波の高さを計測することができない。
【0007】
PUVトリプレット(圧力と水平速度の両方の成分、すなわちu及びvの、それらの計測に起因してそのように名付けられる)は、基本的には一体型の圧力トランスデューサを有する一点電磁気流れメータ(single point electromagnetic current meter)である。PUVトリプレットからの時系列の圧力及び水平速度は、ピッチ及びロール並びにGPSブイによって行われる計測と類似した方法で処理され、同じく各周波数における方向の最初の5つのフーリエ係数のみを与える。PUVトリプレットは、典型的に、船底に設置され、一般に浅い水中でのみ有用である。この顕著な能力の欠如は、水深の増加に伴う波の速度及び圧力の低下から生じる高周波数応答の減少に起因する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシステム、方法、及びコンピュータ可読媒体の各々は、幾つかの態様を有し、そのうちの単体の1つだけが単独でその望ましい属性をもたらすわけではない。この発明の範囲を制限することなく、より際立ったその特徴がここで簡潔に解説されるであろう。
【0009】
一実施形態において、少なくとも1つの波の特性を判定するためのシステムが提供される。システムは、プラットフォームに対する水の動きを示すデータを得るように構成されたソナー・システムを含む。システムはまた、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを得るように構成された地球基準センサを含む。加えて、システムは、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を判定するように構成されたプロセッサを含む。
【0010】
別の実施形態において、少なくとも1つの波の特性を判定する方法が提供される。方法は、超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信することを含む。固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータも基準センサから受信される。ADCP及び基準センサと通信するプロセッサを用いて、受信したデータに基づいて少なくとも1つの波の特性が判定される。
【0011】
別の実施形態において、電子装置上で少なくとも1つの波の特性を判定する方法が提供される。方法は、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信することを含む。受信されたデータの少なくとも一部は、固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換される。変換されたデータに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルが判定される。方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルが判定される。方向波スペクトルと非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性が導出される。
【0012】
別の実施形態において、命令を含むコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。実行されるときに、命令は、超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信し、基準センサから固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを受信し、且つ、ADCP及び基準センサと通信するプロセッサを用いて、受信したデータに基づいて少なくとも1つの波の特性を判定する方法を行う。
【0013】
さらに別の実施形態において、命令を含むコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。実行されるときに、命令は、プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信し、受信したデータの少なくとも一部を固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換し、変換したデータに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定し、方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定し、且つ、方向波スペクトルと非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出する方法を行う。
【0014】
本発明及び従来技術を越えて達成される利点を要約するために、本発明の或る目的及び利点が本明細書の上記で説明されている。もちろん、本発明のあらゆる特定の実施形態に従って必ずしもすべてのこうした目的又は利点が達成される必要はないことが理解されるであろう。したがって、例えば、本発明は、本明細書で教示され又は提案される場合があるような他の目的又は利点を必ずしも達成する必要なしに本明細書で教示され又は提案される場合の1つの利点又は利点の群を達成する又は最適化する方法で具体化され又は実施されてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0015】
これらの実施形態のすべては、本明細書で開示された本発明の範囲内となることを意図される。これらの及び他の実施形態は、添付の図面への参照を行う好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなり、本発明は、開示された如何なる特定の好ましい実施形態(単数又は複数)にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、潜水式の(submerged)移動プラットフォーム上に設置されている。
【図1B】方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる船底に設置された音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、海上移動式のプラットフォーム上に下向き方向に設置されている。
【図2】本明細書で開示された一実施形態に係る1つ又は複数の波の特性を判定するためのシステムの機能ブロック図である。
【図3】図2のブロードバンド超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)のための電子装置の例示的な実施形態のブロック図である。
【図4A】一実施形態に係る少なくとも1つの波の特性を計算するためのシステムのトップレベル・プロセス・ブロック図である。
【図4B】一実施形態に係る少なくとも1つの波の特性を計算するためのプロセスの流れ図である。
【図5】図4のシステムにおけるデータ収集のためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図6】図4のシステムにおけるデータを前処理するためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図7】図4のシステムにおける波の処理のためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【図8A】図7のプロセスにおける品質に関してスクリーニングされる例となるデータを例証する図である。
【図8B】図7のプロセスにおける品質に関してスクリーニングされる例となるデータを例証する図である。
【図9A】図7のプロセスにおける方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図9B】図7のプロセスにおける方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図10】図9A及び図9Bのプロセスにおける時系列データを重なりセグメントに区切るプロセスを例証する図である。
【図11】図9A及び図9Bのプロセスにおける周波数空間係数を再マッピングするプロセスを例証する図である。
【図12A】観測された周波数と水基準座標系の周波数との間の関係性を例証する図である。
【図12B】観測された周波数と水基準座標系の周波数との間の関係性を例証する図である。
【図13A】図7のプロセスにおける非方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図13B】図7のプロセスにおける非方向波スペクトルを計算するプロセスの実施形態を例証する図である。
【図14】図13A及び図13Bのプロセスにおけるデミーンされた(demeaned)時系列データを例証する図である。
【図15】図13A及び図13Bのプロセスにおける周波数空間及びパワーを再マッピングするプロセスを例証する図である。
【図16】水面トラック・データを使用して1つ又は複数の波の特性を判定するためのプロセスの実施形態を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で説明される実施形態は、流体中で伝搬する波の特性を判定することを含む。一実施形態は、水中で又は水面で動いているプラットフォームから、海面での波の高さ、周期、及び方向を含むことがある少なくとも1つの波の特性を判定することを含む。こうした実施形態は、プラットフォームに対する水の動きをプロファイルする超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)と、プラットフォームの動きの地球基準(earth referenced)(ER)測度を判定する地球基準手段とを採用することができる。地球基準手段は、慣性系、地球に対するプラットフォームの動きを計測するボトムトラッキングADCP、又は移動プラットフォームに対する固定された地球基準の位置を追跡することができるあらゆる適切な手段、例えばGPSシステムを備えることができる。水のプロファイルと地球基準計測との両方は、プラットフォームの動きを補償するために協働的に採用することができ、プラットフォームは、或る未知の部分的に相関した様式で波と共に動くことができる。地球基準データとプロファイル・データとを組み合わせることによって、潜流の軌道速度の対地計測を構築することができる。時系列の地球基準軌道速度に波の処理を適用することができ、結果として得られるスペクトルは、異なる時間スケールでの動きを補正することができる。スペクトルがドップラーシフトを補正されることが可能となるように、プラットフォームの速度及び姿勢、並びに地球基準平均流れを保存することができる。結果として得られる方向波スペクトル(DWS)と非方向波スペクトル(NDWS)は、線形波理論により水面高さスペクトルに翻訳し、且つ有意な波の高さ(Hs)、ピーク周期(Tp)、ピーク方向(Dp)、波の軌道速度、及び/又は波の軌道エクスカーションのようなパラメータを計算するのに用いることができる。
【0018】
ADCP波計測の背後にある1つの原理は、海面の下の波の軌道速度をADCPによって計測することができることである。ADCPは、船底に上向きに設置され、且つ潮流と平均水深を計測するための圧力センサを有することができる。時系列の速度を累算することができ、これらの時系列の速度から、速度パワースペクトルを計算することができる。水面高さスペクトルを得るために、線形波の運動学を用いて速度スペクトルを水面変位に翻訳することができる。この翻訳を計算するために、計測された各ビンの深さと全水深を用いることができる。方向スペクトルを計算するために、位相情報を保存し、且つこの計算に用いることができる。各ビームにおける各ビンは、アレイにおける独立したセンサであってもよい。アレイにおける各センサと他のすべてのセンサとの間でクロススペクトルを計算することができる。結果は、各周波数帯での各センサと他のすべてのセンサとの間のパスにおける位相情報を含んでもよいクロススペクトル行列である。特定の周波数でのクロススペクトルは、特定の周波数での方向スペクトルと直線的に関係付けられてもよい。この前進関係を逆にすることによって、我々は方向スペクトルを解明することができる。この位相コヒーレント手法は、固定されたADCPに関する多くの利点を有するが、これは、動的に動いているADCPに関する欠点を有する場合がある。
【0019】
しかしながら、他の実施形態において、位相コヒーレント手法は、動的に動いているADCPと共に用いることができる。軌道速度のADCP計測はまた、移動プラットフォームのアルゴリズムの使用をサポートすることができる。非位相コヒーレント手法よりも問題をやや扱い難くするコヒーレントの処理及び動きと関連付けられたキャッチ22が存在する。位相コヒーレント手法により、波の方向が計測されることを可能にする計測された情報は、アレイを横切って広がる波の空間的な位相差とすることができる。固定された状況において、この情報は、波向の統計的測度を構築するために、時間にわたって組み合わせることができる。アレイによって計測されるサンプルとサンプルとで情報を組み合わせるのに必要なのは、計測が空間的に実質的に同一であることである可能性がある。しかしながら、アレイにおけるセンサが、位置及び配向を1つのサンプルから次のサンプルへと変化させている場合、それらを時間において組み合わせることは、りんごとみかんを平均する効果を有するであろう。波についての貴重な位相情報は、アレイの動きによって導入される位相の変化によって混同されるであろう。1つには、アレイの正確な動きの追跡を保ち、且つそれが固定された場所及び配向でアレイによって行われたかのように1つ1つの計測を時間において翻訳し、次いで、時間において情報を組み合わせることができる可能性がある。しかしながら、これを行うために、1つには、正確に各瞬間に波がどこにあったかを知る必要があり、波のスペクトルを計算する目的は頓挫するであろう。この問題の難しさ故に、本開示で非位相コヒーレント手法が強調される。時間領域処理ではなく、空間領域処理が、位相コヒーレントの課題に対処することができる。
【0020】
本明細書に記載のシステム及び方法は、限定ではなしに、係留中の動き、固定された速度及び方向、動的速度及び方向、並びに流れを含む、多くの種類の動きを説明することができる。波の伝搬は、物理学の長く研究されている分野である。幾つかの波は、水中で伝搬する。平均流れは、水を地球に対して動かすことができる。そこから水の速度が計測されるプラットフォームは、それ独自の独立した動きを有する場合がある。これらの基準座標系(水、プラットフォーム、及び地球)の各々は、それ独自の速度及び方向を有することがある。加えて、多くの時間スケールにわたる、これらの基準座標系の相対的な動きにおける動的変化が存在することがある。
【0021】
係留中の動きは、システムが係船索に取り付けられた場合に見る場合がある種類の動きを含意する。波の軌道速度に伴う回転、チルト、及び軌道の動きのすべては、短い(0.5秒)時間スケールでの各サンプルの計測に影響を及ぼす種類の動きである。例えば、システムが、回転しているつりあい浮標水中プラットフォーム(neutrally buoyant underwater platform)に取り付けられる場合、システムは、潜流のエネルギーによりピッチ、ロール、及び上下浮動(heave)する可能性がある。システムの平均速度は0とすることができる。係留する動きは、時系列のデータを構築する1つの方法は、船首方位、ピッチ、及びロールを用いてすべてのサンプルを共通の基準座標系に変換することを含むため、特に難題である。加えて、システムは、或る部分的に相関した様式で波と共に動いてもよい。システムが波と共に常に動いている場合(波に追従するブイの場合のように)又はシステムが常に静止している場合(船底に設置されたシステムのように)、1つの計測のみが要求されるすべてである場合がある。しかしながら、システムの基準座標系は、波と共に、部分的に動く、完全に動く、又はまったく動かない可能性があり、この応答は、時間と共に変化する可能性があるので、幾つかの実施形態において、それにシステムが取り付けられるプラットフォームの地球に対する動きと、システムに対する水の動きとの、2つの計測を行うことが有益な場合がある。この動きは、速度の3軸と、船首方位、ピッチ、ロールを含むことができる。
【0022】
固定された速度及び方向は、波のサンプリング・インターバルの持続時間、例えば10〜20分にわたって、システムが比較的固定された平均速度及び方向並びに深さを有することを含意する。平均速度は、システムが波を地球基準座標系においてそれらが実際にそうであるのとは異なる周波数で観測することがあるので、この問題への解決策に影響を及ぼす可能性がある。例えば、あなたは反対方向に動いている波の中に航走しているボートに乗っている。地球基準座標系における実際の周期(波の山の間の時間)は8秒である。しかしながら、あなたは波の方に動いているため、あなたは、波の山を6秒ごとに観測する。波はあなたの動きによって地球上で変化しないが、それらの周波数のあなたの観測は変化する。前進の動きの方向の波の成分(cos[船首方位−波向])は、結果に影響を及ぼす。
【0023】
動的速度及び方向は、たとえば10〜20分の波のサンプリング・インターバルの間に、システムが速度、方向、又は深さを、平均がもはや代表的なものではないようにするのに十分なだけ顕著に変えることを含意する。例えば、自律型水中航走体(Automated Underwater Vehicle)(AUV)は、深さ10mで2分間にわたって10ノットで北に、次いで、深さ20mで5分間にわたって3ノットで東に航行する。動的速度は、固定された速度と同様の効果を有する可能性があるが、これはまた、より短い時間スケールで異なる効果を与える可能性がある。例えば、あなたは、波の中に10分間にわたって航走し、次いで、方向転換し、波と共に10分間にわたってバックして航走する。往路の波は、より高いドップラーシフトされた周波数で観測される。復路の波は、より低い周波数で観測される。データセットは、もはや「りんごとみかんを混ぜること」なしに統計的に安定な20分のセットに組み合わせることはできない可能性がある。一実施形態において、各10分セグメントは、その動きを個々に補正される。
【0024】
海流は、小さいことがあるが、平均流れ上で伝搬する波が、そうでなければ標準分散関係によって表される波長とは異なる波長にドップラーシフトされるため、依然として波の計測に影響を及ぼす可能性がある。これは、我々が前進の動きに起因する波の周波数の観測されたドップラーシフトを補正するときに重要な場合がある。2つのドップラーシフトの間の1つの相違は、前進の動きは地球基準座標系における波の周波数を顕著に変化させないが、観測された基準座標系における観測された周波数を変化させる可能性があるということである。そのため、我々は波を移動プラットフォームとは別なように観測する場合があるが、我々がそこにいなかったかのように、それらは標準分散関係に従って水を通して依然として伝搬している。それに対して、平均流れは周波数を顕著に変化させないが、所与の周波数での波の波長を修正する場合がある。これは、地球基準座標系において所与の周波数の波が伝搬する方法を変化させることがある。例えば、流れは存在せず、あなたは接近してくる波の中へ動いている。波は、実際には8秒周期であるが、あなたは6秒周期で観測する。深さ10メートルで感じられる軌道速度は、8秒周期の波のものである。別の例として、あなたは地球に対して静止して座っている。平均流れに対して伝搬する8秒周期の波が存在する。流れは、波長を短くして、深さ1メートルで感じられる軌道速度を、典型的な8秒周期の波よりもかなり小さいものにする。
【0025】
図1A及び図1Bは、波のスペクトルを判定する際の上記で説明された動きの種類のいずれかを説明することができる計測値を得ることができるシステムを例証する。図1Aは、方向波スペクトル、波の高さ、及び流れプロファイルを計測するために用いられる音響ソナー・システムの斜視図であり、システムは、潜水式の移動プラットフォーム上に設置されている。システム100は、潜水艦又はAUV(自律型水中航走体)のような移動プラットフォームに設置され、且つ、ソナー電子装置及び処理装置を収容する本体要素と、ヤヌス構成で配列された個々のトランスデューサ要素を有するマルチ・トランスデューサ・アレイ103とを含む。このトランスデューサ・アレイ103は、流体媒体110の水面と平行な水平面108からさらに発散する垂直面106と同一平面内にある音響ビーム104を生成する。流体媒体110は、ほとんどの場合、自然の又は人工の水塊、特に海洋である。図1Aの実施形態ではヤヌスアレイ構成が用いられるが、水平面108に対し角度をなす関係性を有するビームを形成する他のアレイ構成が用いられてもよいことに注目されたい。例えば、「ピンホイール(pinwheel)」アレイ(たとえば、音響ビームがアレイの縦軸から斜めに発散するようなアレイ)、又は「スター(star)」アレイ(同一平面内ではない、斜めになっていないビーム)が用いられてもよい。加えて、本明細書で開示された実施形態と併せて位相又は時間遅延されたアレイが用いられてもよい。前述のように、システム100は、ボトムトラッキングADCP、慣性系、又は全地球測位システム(GPS)ベースの測位システムのような地球基準システムをさらに備えてもよい。
【0026】
図1Bに示すように、トランスデューサ・アレイ103はまた、下向きに投射される音響ビーム104が生成されるように、水上艦艇120の船体内のような水面又は水面付近での用途に用いるために、反転されてもよい。このようにして、種々の深さにおける及び流体体積110のボトムにおけるWDS又は流れ速度を計測することができる。水深とは異なる場合がある、ボトムよりも上のアレイの高度(たとえば、局所的なボトムよりも上のアレイの高さ)もまた、この構成を用いて計測することができる。
【0027】
図2は、本明細書で開示された一実施形態に係るシステムの機能ブロック図である。例証されたシステム200は、プロセッサ210への入力としてADCP202と地球基準システム204とを含む。プロセッサ210はまた、ユーザから又は環境からデータを受信するために他の入力デバイス206に接続することができる。適切な入力デバイス206は、キーボード、ボタン、キー、スイッチ、ポインティング・デバイス、マウス、ジョイスティック、遠隔制御、赤外線検出器、ビデオカメラ(たとえば、手での合図又は顔での合図を検出するためにビデオ処理ソフトウェアと接続される可能性がある)、動き検出器、又はマイクロフォン(たとえば、ボイス・コマンドを検出するために音声処理ソフトウェアと接続される可能性がある)を含むがこれらに限定されない。温度センサ、圧力センサ、及び音響トランスデューサのような他の入力デバイス206もまた、プロセッサ210にデータを提供することができる。
【0028】
プロセッサ210は、ハードウェア、ソフトウェア、コンピュータ可読媒体上に格納されたファームウェア、又はこれらの幾つかの組合せに組み込まれてもよい命令に従って受信したデータを処理することができる。生データ、部分的に処理されたデータ、又は十分に処理されたデータを、システム200のメモリ220に格納することができる。情報はまた、システム200のディスプレイ230上に示す又は別の出力デバイス240によって出力することができる。適切な出力デバイス240は、ディスプレイ及びプリンタを含む視覚出力デバイスと、スピーカ、ヘッドホン、イヤホン、及びアラームを含む音声出力デバイスと、フォース・フィードバック・ゲーム・コントローラ及び振動デバイスを含む触覚出力デバイスとを含むがこれらに限定されない。
【0029】
図3は、本明細書で開示された実施形態のいずれかとの関連において用いることができるTeledyne RD Instrumentsによって販売されているWorkhorse Monitor ADCPのようなブロードバンドADCP300のための電子装置の例示的な実施形態を例証する。以下の解説はADCPシステムを言及するかもしれないが、ユーザの特定の用途及び必要に応じて、ナローバンド・ドップラー・システム又はドップラー・ベースでないシステムのような他のモデル及びタイプのソナー・システムが、本明細書で開示された実施形態と共に用いられてもよい。
【0030】
再び図3を参照すると、トランスデューサ・アレイ103は、ミキサ・ネットワーク172と、ローパスフィルタ・ネットワーク174と、サンプリング・モジュール176と、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)(DSP)178とを含むことができる電子装置組立体170に電気的に接続することができる。音響信号の受信によりトランスデューサ・アレイ要素140によって生成された信号は、送信/受信スイッチ180を介して、電子装置組立体170によるさらなる処理のために信号(単数又は複数)を同調し且つ増幅する前置増幅器182及びレシーバ増幅器184に送ることができる。送信/受信スイッチ180を介して伝送信号をトランスデューサ要素140に送るために、コーダ送信器186及び電力増幅器188をDSP178と併せて用いることができる。したがって、同じトランスデューサ要素を送信機能と受信機能との両方のために用いることができる。例示的なブロードバンドADCPシステムに関する付加的な詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Teledyne RD Instruments、Inc.に譲渡された米国特許第5,208,785号の「Broadband Acoustic Doppler Current Profiler」に含まれる。
【0031】
移動プラットフォーム、例えば、図1A又は図1Bで例証される移動プラットフォーム上に設置されるADCP300は、船体の既存の穴を使用することができる。ADCPは、船体と同じ高さにではなく同一平面にあってもよい。プラットフォームに対するピッチ、ロール、及び船首方位の固定されたオフセットは、これらのオフセットをADCPに入力し、且つADCPに船座標変換を行わせることによって対処することができる。これはまた、オフセットと0の船首方位を用いる地球変換で達成することができる。結果として得られる出力は、ADCPビームに沿うのではなく、右舷、前進、マストの形態となるであろう。これは、さらなる処理を簡単化するのに有用な場合がある。
【0032】
移動プラットフォームから波と流れを計測することは、多数の基準座標系及び座標系を使用することができる。幾つかの実施形態は、波に対するトリプレット処理を使用するため、座標変換を用いてビームにわたるデータを組み合わせることが可能である。計器に速度データをビーム座標から船座標に前処理させて、船へのピッチ及びロール・オフセットを補正することが便利な場合がある。このシステムにおいて行われるその後の処理は、プロファイル・データがインストール・オフセットを既に補正され、且つ船座標にあるとみなすことができる。
【0033】
図4Aは、一実施形態に係る1つ又は複数の波の特性を判定することができるシステム400Aのトップレベルブロック図である。例証されるシステム400Aは、プロファイリングADCP402、慣性系404、ボトムトラッキングADCP406、及びGPS408のあらゆる組合せを用いてデータを得ることができる。システム400Aはまた、データ収集システム410、前処理システム420、及び波の処理システム430を含むことができる。データ収集システム410、前処理システム420、及び波の処理システム430のうちの1つ又は複数の少なくとも一部は、プロセッサ、例えば、プロセッサ210(図2)上に実装することができる。
【0034】
プロファイリングADCP402は、移動プラットフォーム、例えば、図1A又は図1Bで例証されるプラットフォーム上に設置することができる。プロファイリングADCP402はまた、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。プロファイリングADCP402は、移動プラットフォームに対する波のデータ・プロファイルを得るために用いることができる。
【0035】
慣性系404は、地球基準として用いることができる。例えば、一実施形態において、慣性系404は、地球基準システム204(図2)とすることができる。航行に要求されるよりもかなり低い性能をもつ慣性系を、波の処理のために地球基準に対して用いることができる。慣性データがドリフトを被る場合であっても、波の周波数を計測するために慣性系のデータを用いることができる。慣性系は、波の計測システムに速度(X、Y、Z)と配向(H、P、R)を提供することができる。慣性系は非常に精密なものとすることができるが、慣性系の共通の制限は、それらが時間と共にドリフトする可能性があるということである。シューラ振動は、しばしば、例えば約82分の周期でオフセット又はドリフトを引き起こすことがある。慣性系はドリフトを被るが、それらは一般に小さいスケールファクタ誤差を有する。波の計測は、典型的には、スケールファクタが良好である限り、慣性ドリフトオフセットによる影響を受けない。波の軌道速度の大きさは、適正にスケール変更されるが、平均速度及びドリフト誤差上にスーパーインポーズされることがある。オフセットはFFT処理によって除去することができるので、波長帯の周波数を完全な状態のまま残すことができる。
【0036】
代替的に又は加えて、ボトムトラッキングADCP406を地球基準として用いることができる。例えば、一実施形態において、ボトムトラッキングADCP406は、地球基準システム204(図2)とすることができる。ボトムトラッキングADCPは、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。ボトムトラッキングADCP402は、地球に対するプラットフォームの動きのデータ・プロファイルを得るために用いることができる。このデータは非同期性であってもよい。
【0037】
代替的に又は加えて、GPS408からのデータを、地球基準速度のソースとして用いることができる。例えば、地球基準システム204(図2)は、GPSシステムを備えることができる。水面プラットフォームに対して、例えば、図1Bに示すように、GPSシステムを用いることが有利な可能性がある。
【0038】
データ収集システム410は、プロファイリングADCP402、慣性系404、ボトムトラッキングADCP406、及びGPS408のあらゆる組合せからデータを受信することができる。加えて又は代替的に、データ収集システム410は、あらゆる地球基準204(図2)からのデータ及び/又はユーザ入力デバイス206(図2)からのあらゆる入力を受信することができる。加えて、データ収集システム410は、受信したデータを同期させることができる。データ収集システム410に関するさらなる詳細は、後で図5との関連において提供される。
【0039】
前処理システム420は、データ収集システム410に接続することができ、これによりデータ収集システム410によって得られるデータのいずれかを受信する。前処理システム420は、プラットフォーム、水、及び地球基準座標系を分離することができる。前処理システム420はまた、受信したデータの少なくとも一部を同じ座標系にもっていくために、1つ又は複数の座標変換を行うことができる。前処理システム420によってレバー・アーム補正も行うことができる。加えて、前処理システム420は、波のバースト累算を行うことができる。前処理システム420に関するさらなる詳細は、後で図6との関連において提供される。
【0040】
波の処理システム430は、前処理されたデータを得るために前処理システム420に接続することができる。波の処理システム430は、以下の機能、すなわち、データを予めスクリーニングすること、プラットフォームの動きを除去すること、方向波スペクトルを判定すること、非方向波スペクトルを判定すること、波のスペクトルを再びスケール変更すること、及び1つ又は複数の波のパラメータを判定すること、のうちの1つ又は複数を含むことができる。1つ又は複数の波の特性を、波の処理システム430から出力することができる。このデータは、電子装置、例えば、ディスプレイ230(図2)に出力することができる。波システム430に関するさらなる詳細は、後で図7との関連において提供される。
【0041】
図4Bを参照すると、1つ又は複数の波の特性を判定するプロセス400Bが提供される。一実施形態において、プロセス400Bは、以下のステップ、すなわち、プラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信するステップ440と、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータを受信するステップ445と、受信したデータを固定された基準に対する水の動きを示すデータに変換するステップ450と、方向波スペクトルを判定するステップ455と、非方向波スペクトルを判定するステップ460と、1つ又は複数の波の特性を導出するステップ465とを含む。
【0042】
図5は、データ収集プロセス410’の流れ図である。データ収集プロセス410’は、データ収集システム410(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。一実施形態において、データ収集プロセス410’は、以下のステップ、すなわち、船座標におけるADCPプロファイルを受信するステップ412と、地球座標における慣性データを受信するステップ414と、ADCPデータと慣性データとを同期させるステップ416と、ADCPからボトムトラック・データを受信するステップ418と、前処理のためにデータを出力するステップ419とを含む。
【0043】
ステップ416において、ADCPデータは、慣性データと同期させることができる。例えば、プロファイリングADCP402(図4A)からのデータを、慣性系404(図4A)からのデータと同期させることができる。プラットフォーム速度と水プロファイル速度とを時間において組み合わせることは、関心ある波の周期に対するタイミング誤差が小さい程度に同期したデータを使用することができる。同期していないが比較的同期可能なデータを用いることもできる。例えば、2つの入力の間の1秒のタイミング待ち時間は、地球基準の組合せにおいて1秒の位相誤差を導入する。関心ある波の周期が8秒から25秒までの間である場合、1/8(1 part in 8)の誤差が潜在的に導入されることがある。位相誤差が4秒であり、且つ波の周期が8秒である場合、誤差は波の軌道を完全に打ち消す可能性がある。これに基づいて、0.5秒未満のタイミング誤差を有することが有利なことがある。
【0044】
同期は、波を用いて確かめることができる。地球基準座標系における波を計測するために、我々はプラットフォームに対する水の軌道速度を計測し、次いで、プラットフォームによって吸収された波のエネルギーのいずれかを水の計測に取り戻すことができる。地球基準水プロファイルの最大分散は、それが我々が波のエネルギーのすべてを水に取り戻したことを含意するため、水の速度計測とプラットフォームの速度計測との間の最適なラグをマークする。例えば、浮標プラットフォームに固定されたADCPは、正確に波の軌道エクスカーションと共に動く。プラットフォームは完全に波と共に動くので、水プロファイルは速度を計測しない。速度のすべてはプラットフォームの動きに吸収されている。
【0045】
本明細書で開示された実施形態は、同期したデータを採用することができる。しかしながら、共通のタイムスタンプが確実に待ち時間をなくすことが常に保証されるわけではない。同期度を経験的に計測する1つの方法は、信号における波を用いることである。実際には、計測ノイズは、水の速度プロファイルと慣性からの地球基準データとの両方に対して非常に小さいことがある。したがって、両方の計測における波のエネルギーは、分散の主な発生源である可能性がある。我々がプラットフォームによって吸収される波のエネルギーを水プロファイルに適正に取り戻した場合、結果は最大となるはずである。2つの計測の間のあらゆる待ち時間は、位相誤差を導入し、且つ波のエネルギーのすべてを水プロファイルに取り戻さないであろう。2つの計測の間の待ち時間を判定するテストは、水プロファイルからプラットフォームの動きを差し引き、分散を計算することである。次いで、プロファイルにおけるデータを1サンプルだけシフトさせ、繰返す。10〜20サンプルを各方向にシフトさせ、分散を計算することによって、我々は最大分散をもたらすシフトを、したがって2つの計測の間の待ち時間を見つけ出すことができる。この待ち時間は一貫している可能性がある。
【0046】
図6を参照すると、一実施形態に係るデータを前処理するプロセス420’の流れ図が提供される。前処理プロセス420’は、前処理システム420(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。データ収集プロセス410’は、ステップ4202での船座標におけるADCPプロファイルによる前処理プロセス420’、ステップ4204での地球座標における同期した地球基準プラットフォーム速度及び配向、及びステップ4206での船座標における非同期ADCPボトムトラック・データを提供することができる。非同期ADCPデータはまた、ステップ4206で地球座標における速度及び配向を含むことができる。
【0047】
ステップ4210において、慣性データから船首方位、ピッチ、及びロールを抽出し、且つ同期したタイムスタンプをもつADCPアンサンブルに挿入することができる。ADCPデータが既に船座標にある場合、船の姿勢をADCPデータに適用するために翻訳は必要とならない可能性がある。1つには、ADCPはプラットフォームに対して固定されると仮定してもよい。
【0048】
トリプレット処理は、方向幅及び多方向波に関する制限を導入する可能性があるが、この手法は、より洗練されたアレイ処理で対処するのが難しいか又は不可能な場合がある多くの種類の動きを説明することができるようにする。トリプレット処理は、あなたが一点で計測を行っていると仮定する。ビーム(Bl、B2、B3、B4)から計器座標(U、V、W)への座標変換を行うことによって、我々はビームにわたる情報を組み合わせる。しかし、これは波についての空間的位相情報を棄却する場合があり、これは、水平成分U及びVの相対振幅における波向情報を保存することがある。U及びVは、方向の軸についての情報を提供する。垂直(W)成分は、水平方向に90度だけ位相がずれているとみなすことができ、それを又はそれから解明するのに用いられる(used to resolve to or from)。
【0049】
さらに、デカルト座標データを地球座標に変換し、サンプルからサンプルへのH、P、Rの変化を補正し、したがって各サンプルを地球基準座標系における共通の配向に動かすことができる。
【0050】
対照的に、アレイ処理は、位相コヒーレントであり、固定されたアレイにわたる空間的位相差を使用して、波についてのその方向情報の多くを導出する。アレイが動いている場合、1つには、データを時間において組み合わせるために、アレイの場所が共通である基準座標系に対し計測を補正することができる。この種類の動きに関する時間領域におけるデータを補正するために、波の周期及び方向がどのようなものであるかを正確に知ることが特に有用である。幾つかの実施形態において、これは我々が確かめようとしている情報の少なくとも一部である。実際には、波は、あらゆる所与の瞬間の多くの周波数の重ね合わせとすることができ、アレイの動きを補正しようとすることは、条件付きの問題とすることができる。他の実施形態において、しかしながら、アレイ処理を用いることができる。例えば、アレイ要素の間の波の相対的な位相はその瞬間その瞬間でアレイ配向と共に変化するため、アレイが円形にゆっくりとドリフトするデータと共にアレイ処理を行うことは、回転の全体にわたって汚れた(smeared)結果をもたらすことがある。
【0051】
ステップ4212において、ADCPプロファイルを地球座標に変換することができる。トリプレット処理は、方向スペクトルを判定するために用いることができるので、1つには、計測が点源によって行われたかのようにビームにわたる速度を組み合わせることができる。1つには、こうした組合せの前に、ビームにわたる空間的分離が関心ある波長に対して小さいかどうかを判定することができる。地球座標変換は、船首方位、ピッチ、及びロールをとり、これを船座標ADCPプロファイルに適用して地球座標プロファイル(東、北、Z、誤差)をもたらす。
【0052】
プロセス420’は、ADCPが磁気船首方位センサが働くことを許容しない環境内にインストールされてもよいので、外部ソースからの姿勢情報を用いることができる。しかしながら、プラットフォームの動きに関する基準速度データは、ボトムトラッキングADCPと慣性系とのいずれかから、この両方から、又は固定された基準に対するプラットフォームの動きをトラッキングすることができる他のシステムから来ることができる。例えば、ボトムが範囲外にあるときには慣性基準を用いることができ、ボトムトラック・データが良好であるときにはADCPを用いることができる。慣性系は、常に地球基準速度を提供することができるが、時間と共にドリフトし、平均流れ及びドップラーシフトに影響を及ぼす可能性がある。ボトムトラッキングADCPは、地球基準速度に関する安定した、バイアスのないソースであるが、限られたボトムトラッキング範囲を有し、深い水中では利用可能ではない場合がある。他の実施形態において、あらゆる地球基準204(図2)からのデータ及び/又はユーザ入力デバイス206(図2)からのあらゆる入力を、地球基準速度のソースとして用いることができる。例えば、GPSシステム408(図4A)からのデータは、水上艦のための波の処理システムで用いることができる。
【0053】
ステップ4220において、前処理プロセス420’は、速度に関する地球基準としてボトムトラック又は慣性のいずれを使用するかを決めることができる。ステップ4220で慣性データが地球基準として選ばれる場合、ステップ4222はレバー・アームを補正することができる。船の慣性からの速度データとADCPとを組み合わせることは、データが共通の座標系において同期しており、且つ空間において同じ場所を基準とする場合に、容易にされる可能性がある。プラットフォームの動きの慣性計測は、船の慣性(中央に位置付けられる)を基準とすることができる。ADCPは、この場所から実質的にオフセットされた場所に位置付けられてもよい。ピッチ、ロール、及び船首方位の変化は、慣性系では見られないADCPにおける速度を導入することがある。ADCPと慣性データとを組み合わせるために、これらのレバー・アームが対応してもよい。このシステムは、ADCPの場所で見られるであろう程度に慣性データをシフトさせる。導入される速度は、下の表1に含まれる以下のパラメータのいずれかを含むことができるが、これらに限定されない。
【表1】
レバー・アームが導入した速度が判定された後で、それらは船座標から地球座標に変換することができ、そのためそれらを基本慣性速度に加えることができる。
【0054】
加えて、ADCPと計測された水体積との間の空間的オフセットは、ステップ4222で補正される必要はない場合がある。ADCPとそのプロファイルのビンとの間のレバー・アームは大きいことがあるが、姿勢の動力学は、このレバー・アームに沿った速度を導入しない場合がある。幾つかのADCPは、ビームに沿った速度のみを計測する。ADCP中心の周りの姿勢の変化は、ビーム方向に対し垂直な速度成分を有する可能性があり、したがって計測されない。他の実施形態において、ADCPと計測された水の値との間の空間的オフセットを補正することができる。
【0055】
レバー(level)・アームを補正した後で、ステップ4224でプラットフォーム速度をボトム速度に変換することができる。慣性系は、地球に対するプラットフォーム速度を計測することができる。ボトムトラッキングADCPは、プラットフォームに対する地球の動きを計測することができる。2つの基準座標系の間の変換は、速度に負符号を適用することによって行われてもよいが、このデータに対する規約を選び出すことは、プロセスにとって有益な場合がある。一実施形態において、規約はボトム速度であり、そのためプラットフォームの動きがボトムトラック・データとしてADCPアンサンブルに格納される。慣性により導出されたプラットフォーム速度は、それらがボトムトラックとして格納される前に無効にする(negated)ことができる。
【0056】
代替的に、ステップ4220でボトムトラックが地球基準として選ばれる場合、異なる前処理を行うことができる。ステップ4226において、船首方位(heading)、ピッチ(pitch)、ロールデータ(roll data)(HPRD)をボトムトラックADCPアンサンブルに挿入することができる。一実施形態において、ボトムトラッキングADCPと、船首方位、ピッチ、ロールの外部ソース、例えば、慣性からの速度は、システムに姿勢データを提供することができる。これは、後の使用のためにADCPデータ構造に挿入することができる。ADCPデータがビーム座標である場合、船の姿勢データをADCP姿勢に変換することができる。ADCPデータが既に船座標にあり、船に対する船首方位、ピッチ、ロールのオフセットが計器において説明されている場合、姿勢データの変換はスキップされてもよい。
【0057】
ステップ4226でHPRDを挿入した後で、ステップ4227でボトムトラック・データを地球座標に変換することができる。しかしながら、このデータは、船座標におけるADCPプロファイルと同期されなくてもよい。データが同期した様式で収集されるとき、異なるシステムからの速度を比較的簡単に組み合わせることができる。しかしながら、ボトムトラックと関連付けられたタイミングは、ボトムへのレンジが環境と共に変化するためにしばしば非同期であることがある。プロファイリングADCPは、規則的なピング・サンプル・タイミングを常に有してもよい。例えば、プロファイリングADCPは、0.5秒おきにサンプルを得ることができ、ボトムトラッキングADCPは、0.8〜3.0秒ごとにサンプルを得ることができる。プロファイリングADCPと同期しているボトムトラッキングADCPからデータセットを作成する第1のステップは、トップ及びボトムADCPデータを、有効期限(Time of Validity)(TOV)タイムスタンプに基づいて時間において順番に配置することができる。
【0058】
データが順序付けられると、これはステップ4229で同期化することができる。トップ(プロファイリング)データとボトムADCP(ボトムトラック)データとを組み合わせるために、システム420の一実施形態は、例えば、すべての2Hzプロファイル・サンプルに対して、ボトムトラック速度サンプルを用いる。ボトムトラック・データは、異なるサンプルレートでサンプリングすることができ、プロファイルのタイミングと位相がずれている場合がある。2つのデータセットの間のサンプルレートの差異とタイミング・オフセットは環境と共に変化することがあるので、このタイミング問題は変動する可能性がある。一実施形態において、プロファイル及びボトムトラック・データは、ステップ4229で最初に順番に配置され、次いで、最も近い実際のサンプルから補間することによって各プロファイル・サンプル・タイムでボトムトラック・サンプルが作成される。
【0059】
最初の前処理の後で、ステップ4214で同期したボトムトラック速度をADCPプロファイル・アンサンブルに挿入することができる。プラットフォームの動きの計測値が慣性又はADCPのいずれから来ようとも、これはADCPプロファイル・データと組み合わせることを可能にする形態で入れることができる。プラットフォームの動きの地球基準測度は、ADCPボトムトラック構造に挿入する前に、以下の演算の1つ又は複数によって補正することができる。プラットフォームの動きの地球基準測度は、同期化し、共通の座標系に翻訳し、レバー・アームに関してADCPの場所で空間的に観測されるであろうものに翻訳し、且つプラットフォームの動きの規約からボトムの動きの規約に変換することができる。これらの演算のうちの1つ又は複数が行われると、データは、ADCPアンサンブルに「りんごとりんご」として挿入することができる。
【0060】
次に、ステップ4216において、波のバーストを累算することができる。波の処理は、周波数ドメインにおいて行われてもよく、且つ公称期間、例えば20分間にわたって累算された時系列のサンプルを用いることができる。これらの時系列は、次いで、例えば2Hzでの2048サンプルのバーストとして波の処理に渡すことができる。波の処理に提供されることになるサンプルのバーストは、実質的に中断されないものであってもよい。例えば、データの10分が30秒中断され、その後、データの別の10分が続くことは、これにおける大きい不連続性を有し、スペクトルを損傷し且つデータ品質を損う可能性がある。
【0061】
図7を参照すると、波の処理プロセス430’の流れ図が提供される。波の処理プロセス430’は、波の処理システム430(図4A)の特徴のあらゆる組合せを実装することができる。最初に、ステップ432で、データ品質のために時系列の速度データを事前にスクリーニングすることができる。このプロセスは、以下の動作、すなわち、計器から来る既に粗悪とマークされる可能性があるデータを識別すること、平均からの4つの標準偏差を超えるデータ点を反復的に除去すること、最小閾値及び最大閾値を超えるデータ点を粗悪としてマークすること、すべてのフラグ付きデータに基づいて良質なデータの割合を判定すること、良質なデータの割合が所定の閾値、例えば90%を満足させるときに、補間されたデータを粗悪フラグ付きデータ点に挿入すること、の1つ又は複数を含むことができる。
【0062】
上側カットオフ周波数のデータ適応判定は、動的環境において有利なことがある。上側カットオフ周波数に強く影響を及ぼすことがある波の環境、デプロイメント深さ、及びADCP設定の広い多様性が存在する。固定された動かないデプロイメントでは、単一の上側カットオフ周波数を用いることができる。しかしながら、移動プラットフォームから計測される波は、絶えず変化する高度、深さ、速度、及び方向を有する場合がある。これらのパラメータのすべては、最も高い使用可能な波の周波数に強く影響を及ぼすことがある。理論上の限界に関係なく実際の信号に基づいて最も高い使用可能な周波数を判定するデータ適応手法が、以下で提示される。
【0063】
波のエネルギーは、水面の下の深さ及び周波数と共に指数関数的に減衰されることがある。ADCPは、潜流の軌道速度を計測し、次いで、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はこれらの幾つかの組合せが、線形波理論を用いてこれを水面変位に取り戻す。より大きい深さ及びより高い波の周波数では、波の軌道速度は小さくなり、計器ノイズ・フロアよりも低く低下する。より高い波の周波数では、システムが文字どおりに何も計測しないという可観測性問題がある。特に、信号(波のエネルギー)とノイズ(ADCP+環境)との両方は、デプロイメントの時間スケール及びバーストの時間スケールの間に、1つのデプロイメントから次のデプロイメントへと動的に変化することがある。信号とノイズとの両方はまた、1つのセンサ(ビン、ビーム)から次のセンサへと変化することがある
【0064】
加えて、多くの既存のアルゴリズムは、スクリーニングを行う帯域平均がワイルド・ポイントに曝される前に計算を行うことができる。そのうえ、信号が最も小さく、且つデータ品質が最も低い可能性があるとき、水面変位に戻る増幅が大きいことがある。そのうえ、深いデプロイメントでは、単一の周波数帯による上側カットオフ周波数の置き違えが高すぎて、結果として生じるスペクトルがスペクトルの下の面積を2倍にする可能性があり、Hs、Tp、Dpを不正確に表すことがある。
【0065】
これらの理由のため、良質なデータのみを与えることが有利なことがある。ステップ433でデータが良質であるかどうかの判定を下すことは、データ適応上側カットオフ周波数を判定すること及び/又はすべてのスペクトル周波数を承認(qualifying)することを含むことができる。
【0066】
データが良質であるかを判定する1つの手法はデータ適応手法である。図8Aは、一実施形態における周波数とスペクトルパワーとの間の関係性を例証する。より高い周波数を水面変位に翻訳するゲイン、又はスケールファクタは大きいことがあるため、これらのデータ点がスペクトルパワー全体に対してもつことがある影響は大きいことがある。一実施形態において、スペクトルの端を迅速にカットオフする鋭いポインタが存在し、この場合、ノイズ・フロアはこの大きいゲインによって増幅されていく場合がある。1つの関心事は、上側周波数であっても、依然として有効な波のエネルギーを有するということであり、それらの上にスーパーインポーズされるノイズ・フロアの変動は、翻訳後にエネルギー全体に対する顕著な影響を有するであろう。ゲイン×ノイズ÷信号は、最後の良質なデータへの鋭いポインタを提供することができる。
【0067】
例えば、一実施形態において、ノイズは、翻訳されていない速度パワースペクトルの4つの標準偏差(STD)を表すことができ、この場合、STDは、周波帯の外に0.75Hzから1Hzまでである。これは、99%包絡線を生じることがある。ノイズは、周波数に依存しない場合がある。この例において、信号は、各周波数における翻訳されていない速度パワースペクトルを表すことができる。この例において、ゲインは、水面変位への平均された翻訳を表すことができる。プロセスの早期に帯域平均することは、ワイルド・ポイントなしにこの種類のスクリーニング及びプロセスが起こることを可能にすることができる。集合的な(たとえば、最小2乗)翻訳されていない速度スペクトルを保存することは、ソース・データ上の増幅の前にスクリーニングが起こることを可能にする。ゲインがスペクトルの大きい端にあるとき、保守的な信号対ノイズ比を有することが望ましいことがある。大きいゲインは、高品質の、明白な入力スペクトルを有することなく適用するために望ましくないことがある。
【0068】
ゲイン×ノイズ÷信号(GN/S)が、或る閾値、例えば100よりも増大するとき、これは、上側カットオフを表すことができる。図8Bに示すように、速度スペクトルは、点850でGN/Sが閾値を超えるときに棄却することができる。GN/Sが点850で閾値を超えるとき、用いられるスペクトルは、該用いられるスペクトルを表す曲線の部分860でゼロに近いものとすることができる。上側カットオフが得られると、データは、カットオフを満足させる信号対ノイズ比に関してスクリーニングすることができる。この2段階手法は、2項のスペクトルの堅牢な取扱を可能にする場合がある。2つのピークが存在する場合、これらの周波数において信号対ノイズが依然として有効であるため、上側カットオフは第2のピークよりも上に設定することができる。真のパワーを含まないピークの間のデータは、4つのシグマ要件によってスクリーニングすることができる。
【0069】
GN/Sは、多くの理由で有利に用いることができる。この式の1つの目的は、あらゆる所与の波のパワースペクトルにおける一番最後の実行可能な周波数帯への鋭いポインタを作成することである。危険なのは、我々が水面変位を得るために大きい可能性があるゲイン(G)によって速度スペクトルの端でのノイズ・フロアを増幅することである。幾つかの条件の下では、単一の周波数帯が高すぎても、パワースペクトルの下の面積を実質的に偽ることがある。これは、我々がデータを増幅すること又はこれを用いて方向を判定することを考える前に良好な信号対ノイズ比を保証することを我々が望む理由を表す。そのため、我々は、最初にノイズ/信号項を導入し、この場合、ノイズは、信号が存在しない実際のパワースペクトルの標準偏差の4〜6倍である。信号は、各周波数帯におけるスペクトルのパワーである。これらの基準は、計測ノイズ・フロアよりも際立つ真の波のパワーを明白に有する周波数帯を分離することができる。上側カットオフ周波数を判定するために付加的な処理が要求される場合がある。これを行うために、我々は、N/Sにゲインを掛け、この場合、ゲインは水面変位への増幅である。より大きいゲインは、我々がノイズを誤って増幅しないようにするためにより重要であることから、これは妥当である。深さが大きいとき、Gは大きくなり(周波数と共に指数関数的に急激に)、G*N/Sが上昇する速度もまた急激となるであろう。そのため、ポインタは、これがそうするのが妥当なときにより保守的となる。G*N/Sが或る閾値よりも大きいとき、この周波数で止まる。
【0070】
4つのシグマ(標準偏差)は、一般に、計測のノイズの周りの良質な包絡線とすることができる。この値は、特定の用途に応じて、より保守的な6つのシグマ又はあらゆる他の値に設定することができる。良好な信号対ノイズ比に関してデータをスクリーニングする少なくとも2つの理由がある。1つの理由は、データがこれを水面変位に増幅する前に良好な信号対ノイズ比を有することを要求するためである。別の理由は、これを波の方向に対して用いる前にデータが良好な信号対ノイズ比を有することを要求するためである。
【0071】
4つのシグマは、スペクトルの端でノイズ・フロアを増幅するのを回避するために垂直システムと共に用いられるときに良好な測度とすることができる。水平方向のシステムにより、堅牢な方向波を得るために、より保守的な基準(たとえば、6つのシグマ)が用いられてもよい。これは、水平方向のシステムに対する応答(したがってノイズ閾値)が異方性であるという事実と関連付けられてもよい。沖合での用途に用いられるシステムに共通したアレイの動きと共に行う必要もある場合がある。
【0072】
図7に戻って参照すると、ステップ433でデータが粗悪であると判定される場合、波の処理プロセス430’は止まることができる。代替的に、ステップ433でデータが良質であると判定される場合、ステップ434で良質なデータからプラットフォームの動きのデータを除去することができる。幾つかの実施形態において、この点までの処理において、プラットフォームの動きは、同様の計測(同じ座標系、規約、タイミング、場所など)に変換されてもよいが、プラットフォームの動き、たとえば、ボトムトラック及びプロファイルは分離したまま保たれてもよい。こうした実施形態において、次いで、プラットフォームの動きを誘起させたあらゆる波のエネルギーを取り戻して水の速度プロファイルに戻すために、プラットフォームの動きをプロファイルから差し引くことができる。このステップは、プラットフォームの動力学に関して水の速度プロファイルを地球基準座標系に取り戻すことができる。このステップは、波の周期的な動きのすべてを水プロファイルに取り戻すが、これは平均の前進の動きと関連付けられた波の周波数のドップラーシフトを補正しない場合がある。
【0073】
移動プラットフォームから波の計測に影響を及ぼすことがある多数の因子が存在する。こうした因子は、限定ではなしに、プラットフォームの速度、プラットフォームの方向、波の周波数、波向、プラットフォームの応答、プラットフォームの高度、プラットフォームの深さ、及び平均流れを含むことができる。これらの因子のほとんどは、周波数に依存する。例えば、20分間の波のサンプリング・インターバルの過程で深さが20mから40mに変化する場合、不正確さは、スペクトルが水面変位に翻訳されるときに平均深さを用いることから生じる場合がある。深さは、周波数と共に水面変位への翻訳に強く且つ非直線的に影響を及ぼすことがある。
【0074】
ステップ434でプラットフォームの動きを除去することはまた、異なる時間スケールでの動きを補正することを含むことができる。これは、以下のアクションの1つ又は複数を含むことができる。
A.プラットフォームによって吸収されたあらゆる波のエネルギーを取り戻してプラットフォームに対する水の速度計測に戻すこと。
B.単一サンプルベースで船首方位、ピッチ、及びロールに伴う動力学を説明するために、プロファイル速度データ上の地球座標変換を用いること。これは、それらを時系列に効率よく組み合わせることができるように、計測を地球基準座標系(東、北、Z)に補正するために用いられてもよい。
C.観測された基準座標系における波の周波数のドップラーシフトを補正し、且つ対地流れによる波数のドップラーシフトを補正すること。
D.速度、深さ、及び方向のような周波数に依存するパラメータを各波の周波数帯に短い時間スケールで適用すること。
E.短い時間スケールのスペクトルが個々に計算され且つ動きを補正されると、それらを平均して単一の統計的により静穏な結果をもたらすことができ、且つこの時間スケールで波のパラメータを判定することができる。
F.17分の長さのウィンドウを、データを通して一度に5分スライディングすることは、データの最後の17分を含む5分の更新を可能にする。
【表2】
【0075】
表2は、一実施形態において考慮されてもよい時間スケールの相対的サイズを例証する、例示的な時間スケールを与える。当該技術分野の当業者は、他の時間スケールが採用されてもよいことを理解するであろう。
【0076】
他の時間スケールの課題は、以下のことを含む可能性がある。
1.波の時間スケール(たとえば、<30秒)での動きを1つ1つのサンプルに関する共通の基準座標系に対して補正することができる。
2.深さに伴う波の伝搬及び減衰は、周波数に強く依存する場合があり、そのため、動的に変化する環境から計測される単一の時系列にデータを組み合わせることから結果として不正確さが生じる場合がある。波に影響を及ぼす周波数に依存するパラメータは、サンプリング・インターバルの間は合理的に安定であってもよい。
3.短い時間枠をとり、各セグメントに適宜動力学を適用することができるように、それに対して波の処理を行うことが望ましいことがある。
4.関心ある波の周期は、たとえば5〜30秒である。0.5Hzのサンプルレートは、最も短い妥当なサンプリング・インターバルを境界付けることができる。
5.中程度の(たとえば、<2分)時間スケールの動力学(平均速度、方向、深さにおける変化)に対処するために、適切な分解能及び分散をもつスペクトルを依然として統計的にもたらすことができる最も短い時系列は、約2〜2.5分とすることができる。
6.中程度の時間スケールのセグメントを個々に補正することができるが、それらは依然として統計的にノイズがある場合がある。この影響は、補正後にセグメントを平均することによって少なくすることができる。
【0077】
プラットフォームの動きを除去することはまた、プラットフォームの応答関数から独立していることがある。プラットフォームは、あらゆる様式(遅延した様式、波形の様式、ブラウン運動の様式、まったく動きの無い様式など)で波に応答することができる。プラットフォームに対する水の速度と、地球に対するプラットフォームの速度との同期した計測により、我々は、応答関数がそうである場合があるものから独立して、吸収されたプラットフォームの動きを水プロファイルに取り戻すことができる。他の実施形態において、計測は、同期していなくてもよいが、既知の因子によって遅延されることがある。この既知の因子はまた動的なものである場合がある。他の実施形態において、計測は、正確に同期してはいないが、関心ある波の周期に対するタイミング誤差が小さい程度に変化する。
【0078】
プラットフォームの動きは、時間領域において除去することができる。時間領域においてプラットフォームの動きを除去することは、周波数ドメインにおいてプラットフォームの動きを除去することに比べて利点を提供することができる。本発明の実施形態は、位相差が互いに打ち消しあうので(位相情報と合わさった)周波数スペクトルの平均が0に収束する場合があることから、パワースペクトルで演算する。我々がパワースペクトルを累算する場合、結果は、時間領域の累算よりもクロスタームだけ異なることがある。例えば、(A+B)2≠(A2+B2)。
【0079】
ステップ434でプラットフォームの動きを除去した後で、ステップ435で方向スペクトルを計算することができる。例えば、2mの水の体積を20分の時系列の東、北、及びZ速度に平均することによって、方向スペクトルの計算を始めることができる。Overlap−add技術は、データをより短い断片に分割するために用いることができる。トリプレット手法によって各セグメントに関するクロススペクトルを計算し、次いで、係数を計算することができる。各時間セグメントに関するピーク方向を用いて(ドップラーシフトに関する)周波数空間における係数の再マッピングを行うことができる。次いで、より静穏な方向推定をもたらすために、各セグメントでの再マップされた係数を、バースト・インターバルにわたって平均することができる。方向スペクトルを計算することに関係するさらなる詳細は、後で図9A及び図9Bとの関連において提供される。
【0080】
次いで、ステップ437で非方向スペクトルを計算することができる。非方向スペクトルを計算することに関するさらなる詳細は、後で図13A及び図13Bとの関連において提供される。
【0081】
方向又は非方向スペクトルを同時に又はあらゆる順序で計算することができるが、特定の順序の計算は、或る利点を提供することができる。方向波スペクトルと非方向パワースペクトルの計算は、独立して行うことができ、この場合、制約されることになるより少ないディメンションで各問題がより簡単に解決される。しかしながら、幾つかの実施形態において、2つのアルゴリズムの間に依存性が存在する場合がある。例えば、非方向パワースペクトルP(f)を判定するために、1つには、前進の動き及び平均流れと関連付けられたドップラーシフトを補正することができる。これは、観測された周波数空間における各周波数でのピーク波向の知識を含むことができる。別の例として、全周波数−方向スペクトルD(f,θ)を判定するために、我々は、地球基準座標系における各周波数での波向とパワーとの両方についての情報を用いることができる。
【0082】
有利には、以下の順序の演算を実行することができる。観測された各周波数において、正規化された波の方向分布Dnorm(fobs,θ)を計算することができる。観測された各周波数におけるピーク方向Dpeak(fobs)を得て、後の処理のために保存することができる。正規化された方向分布Dnorm(fearth,θ)は、ピーク方向に基づいて、観測された周波数空間から地球周波数空間にマップし、後の処理のために保存することができる。非方向パワースペクトルPobs(fobs)は、観測された周波数空間において計算することができる。非方向パワースペクトルを地球基準周波数空間に再マッピングするために、以前に計算された、観測されたピーク方向P(fearth)を適用することができる。正規化され、再マップされた、方向分布D(fearth,θ)を、各周波数において同様に再マップされた非方向パワーによってスケール変更することができる。しかしながら、データ依存性の利点を実現するために、これらのステップのあらゆる順序又は組合せを実行することができる。
【0083】
図7に戻って参照すると、ステップ438で、非方向パワーによって方向スペクトルを再びスケール変更することができる。これは、波のパラメータを計算するために方向スペクトル及び非方向スペクトルを正規化することができる。代替的に又は加えて、非方向スペクトルは、方向スペクトルによってスケール変更することができる。そして、幾つかの実施形態において、再びスケール変更することが全く必要とされない場合がある。
【0084】
ステップ439で、方向スペクトル及び/又は非方向スペクトルから波のパラメータ又は特性を計算することができる。限定ではなしに、有意な波の高さ、ピーク周期、ピーク方向、波の軌道速度、及び/又は波の軌道エクスカーションを含む、波のパラメータ又は特性を、周知の技術を用いてこれらのスペクトルから計算することができる。
【0085】
例えば、有意な波の高さ、Hsは、パワースペクトルから計算することができる。下側カットオフ周波数と上側カットオフ周波数との間のパワースペクトルの下の面積を累算することができる。一実施形態において、有意な波の高さは、以下の式によって示されるように、周波数帯の幅によって正規化されるパワースペクトルの下の面積の平方根を4倍することによって表すことができる。これは、時間領域分析における4つの標準偏差と同等のもの(equivalent)とすることができ、且つH1/3とほぼ同等のものとすることができる。
【数1】
【0086】
別の例として、ピーク周波数、Tpは、最大値に対する非方向波の高さスペクトルの有効な領域を探し出すことによって判定することができる。このピークが見つけ出されると、ピーク周期は、次式に示すように、ピーク周波数の逆数によって表すことができる。
【数2】
【0087】
ピーク周期データの解釈又は比較は、スペクトルにほぼ同じ高さの2つのピークが存在するのは普通であることがあるため、扱いに注意を要することがある。これが起こるとき、ピーク周期は2つの値の間で揺れ動く場合がある。これは、環境の正確な表現であることがある。
【0088】
別の例として、ピーク周期における方向分布のピークを見つけ出すことによって、ピーク方向、Dpを判定することができる。分解能が1度未満である場合、より良好な分解能を得るためにピーク方向を補間することができる。ピーク方向は、次式によって表すことができる。
【数3】
ここで、fpは、ピーク周波数を表す。
【0089】
図9A及び図9Bは、方向波スペクトル(DWS)を計算するためのプロセス435の流れ図を例証する。プロセス435は、図7のステップ435に関するさらなる詳細を提供する。ステップ900において、プロセス435は、周波数分解能が減少することによって始まる。比較的短い時系列から導出される方向推定の分散及び安定性を改善するために、方向スペクトルの周波数分解能を減少させることができる。これは、周波数分解能の起こりうる犠牲のもとで、各推定に関する自由度を増加させることができる。波向はグループ化する傾向があり、方向推定の静穏性は後の再マッピング・プロセスに強く影響を及ぼすことがあるので、これは妥当なトレードオフである場合がある。波の高さはドップラーシフトに関する周波数空間の再マッピングの正確さに強く依存する場合があるため、非方向スペクトルは、より高い分解能において望ましい場合がある。例えば、非方向スペクトルは、0から1Hzまでの128の周波数帯を各々提供する、15の重なりをもつ、各々2+分にわたる256のサンプル・セグメントと共に計算することができる。例えば、方向アルゴリズムは、0から1Hzまでの128の周波数帯を各々提供する、31の重なりをもつ、少なくとも2分にわたる128のサンプル・セグメントと共に計算することができる。
【0090】
ステップ902において、プロセス435は、時系列データを重なりセグメントに区切ることができる。図10で例証されるように、overlap−addスペクトル処理は、時系列データのセグメント1010(たとえば、2048のサンプル)を、多数の重なりセグメント1020、1030に分割することができる。各セグメントは、周波数ドメインにフーリエ変換することができ、次いで、結果として得られたスペクトル1050、1060を平均することができる。この手法は、深さ及び速度のような周波数に依存するパラメータを、それらが平均される前に各セグメント・スペクトルに適用することができる。
【0091】
離散フーリエ変換は、端点(典型的に問題を有さない無限に長い時系列)に対して敏感なことがあり、より小さいセグメントに対してウィンドウ処理を用いることができる。overlap−add手法は、個々の各セグメントをウィンドウ処理して端点に近いデータを減ずる(attenuate)ことによって、端点の効果を緩和することができる。ウィンドウ処理は、各セグメントにおける独立したサンプルの有効数を減少させる。重なりセグメントは、失われた自由度をウィンドウ処理に取り戻すことができる。
【0092】
帯域平均の代わりにOverlap−add処理を用いることができる。帯域平均は、単一の大規模高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)(FFT)(たとえば2048個のサンプル)を行い、次いで、隣接する周波数帯を平均して、より低い分解能をもつがしかし改善された分散をもつスペクトルをもたらすことに関係することがある。Overlap−add処理は、より大きい自由度によって改善されるスペクトルに対して非線形プロセスが行われるときに望ましいことがある。しかしながら、他の実施形態において、overlap−add処理の代わりに帯域平均を用いることができる。
【0093】
より短い時間スケールでの周波数に依存するパラメータの変化に対処するために、とにかく時系列をより小さいセグメントに区切ることが望ましいことがあるため、overlap−add手法は、動的環境における波を処理するために用いることができる。速度、方向、又は深さの変化がゆっくりと起こる場合、各2分セグメントに対する平均値は、該時間枠の代表的なものとなるであろう。変化が急に起こる場合、手法は、こうした変化が稀である場合に、実用的な目的のために依然として働くことができる。例えば、プラットフォームは、波の中に10分間移動し、次いで、180度旋回し、そして波と共に10分間移動し、20分のデータがoverlap−addを用いて処理される。往路からのデータ・セグメントが処理され、スペクトルは、波の中に動くことによって誘起されたドップラーシフトを補正される。同様に、復路のセグメントが処理され、波と共に動くことによって誘起されたドップラーシフトを補正される。ターンにまたがるデータのセグメントは、これがデータに両方のドップラーシフトを不正確に組み合わせるため、高品質ではない場合がある。誤りセグメントは、データの20分の外の1つの2分セグメントであり、そのため、残りのセグメントが正しい限り、その寄与は小さい。
【0094】
図9Aに戻って参照すると、ステップ902において生成された重なりセグメント1020、1030(図10)を各々別々に処理することができる。ステップ904において、セグメント固有統計を計算することができる。一実施形態において、周波数に依存するパラメータのすべてに対する平均、メジアン、モード、分散及び/又は標準偏差のような統計は、限定はされないが、深さ、高度、プラットフォームの速度、プラットフォーム方向、流れ速度、及び流れ方向を含む各セグメントに対して累算される。別の実施形態において、周波数に依存するパラメータのうちの1つ又は複数に対して少なくとも1つの統計値を計算することができる。各セグメントは、これらのパラメータの平均値のような平均値の代表的な統計値を用いて個々に修正することができる。平均値が代表的なものであるかを判定するために、標準偏差のような変動性の代表的な統計値を用いることができる。例えば、プラットフォームは、深さ100メートルで5分間動き、次いで、深さ10メートルに5分間上昇する。平均深さは55メートルであるが、しかしながら、深さに伴う波のエネルギーの周波数に依存する減衰は強く非線形であるため、セグメントは用いられるべきではない。
【0095】
ステップ906でセグメント固有クロススペクトルを判定することができる。クロススペクトルは、各ウィンドウ処理されたセグメントから計算することができる。各トリプレット上でFFTを行うことができる。トリプレットと、それらのそれぞれのFFTは、以下の式によって表すことができる。
【数4】
次いで、クロススペクトルは、以下の通りとすることができる。
【数5】
【0096】
セグメント固有クロススペクトルが計算された後で、ステップ908で、セグメント固有トリプレット係数を判定することができる。これらは、例えば、波向を表すフーリエ級数の最初の3つの又は最初の5つの係数とすることができる。
【0097】
5つの係数によって表される3つの項のみの方向情報が、制限されることがある。これらの係数は制限されるが、それらは利用可能な方向情報の実質的にすべてを含むことができる。θではなくこれらの係数D(f,coeffs)の項で方向分布を表すことが便利なことがある。方向分布が平均されるとき、それらは係数として平均することができる。これは、データ級数における各重なりセグメントに対する一組の係数を我々が計算できるようにすることによって、overlap−add手法を簡単化することができる。これらの係数は、全方向分布ではなく平均することができる。
【0098】
トリプレット処理の一実施形態は、フーリエ級数の最初の5つの係数と共に、各周波数における波の方向分布を表すことができる。係数は、次式によって表すことができる。
【数6】
【0099】
トリプレット処理の制限は、方向が広く分離されない限り、同じ周波数における複数の方向からの波を典型的に表わすことができないという事実を含む。加えて、方向幅は、5つの係数によってほとんどの場合に判定されない。係数は、ピーク方向のみについての情報を実質的に提供することができ、方向幅を正確にもたらすことはできない場合があることを知るのは意義のあることがある。この知識に基づいて、1つには、ピーク方向を容易にグラフで伝える若干現実的な方向幅を単純に選び出すことができる。例えば、これが輪郭プロット上でピーク方向を明らかに見るのに十分なだけ広く、且つ周波数に伴う方向トレンドを示すのに十分なだけ小さいことから、幅10度のガウスを選定することができる。
【0100】
ステップ910で、周波数空間を再マッピングする前にセグメント固有方向ピークを識別することができる。観測された各周波数におけるピーク方向は、係数によって表される方向分布の最大を見つけ出すことによって判定することができる。これは、ドップラーシフトに対する周波数空間を再マップするために後で用いることができる。次式は、ピーク方向を判定するために用いることができる。
【数7】
【0101】
ピーク方向のマップは、非方向スペクトル・アルゴリズムによる使用のために時間において整合することができる。幾つかの実施形態において、方向アルゴリズムは、非方向アルゴリズムよりも例えば2又は4のファクタだけ低い分解能を用いることができる。これは、ドップラーシフトされたスペクトルを地球基準座標系に取り戻す再マッピング・プロセスへの誤差源を最小にする場合がある。静穏な方向推定θと適切な非方向分解能との両方の恩恵を得るために、我々は、各プロセスに対するセグメントサイズと周波数バンディングを最適化することができる。しかしながら、非方向アルゴリズムは、方向スペクトル・アルゴリズムから導出される各周波数帯におけるピーク方向のマップに依存する場合がある。この依存関係をサポートするために、1つには、各セグメントに対するピーク方向のマップを非方向スペクトルの周波数分解能に補間することができる。幾つかの実施形態において、時間において異なるようにラインアップされる各アルゴリズムに異なる数のセグメントが存在する場合がある。この課題に対処するために、各方向セグメントに対するピーク方向のマップは、非方向アルゴリズムにおけるセグメントの各々の時間枠に基づくピーク方向の推定が存在するように、再整合することができる。
【0102】
ステップ914で係数のセグメント固有再マッピングを行うことができる。これは、観測された周波数空間におけるドップラーシフトを補正するために、周波数空間における方向を表す係数を再分布することができる。このステップで、ピーク方向は、追加の平均(減少した分解能は、より広い周波数帯につながることがある)によって平滑化することができ、且つ係数と同じ分解能を有する。周波数空間を再マップするためにすべての方向分布が用いられなくてもよく、幾つかの実施形態において、ピーク方向のみが用いられてもよい。このプロセスは、観測された各周波数に対して繰返すことができる。各周波数に対して繰返すことができる周波数空間の例となるマッピングが図11で提供される。
【0103】
図11で例証されるように、我々は方向幅の少しの知識を有する場合があるので、ピーク方向のみに基づいて周波数空間における方向スペクトルの再マッピングを行うことができる。数学的に、「Ucos」計算に基づいて方向スペクトルを再マップすることが有益なことがあり、この場合、該周波数における方向分布D(θ)を用いて各周波数fに対するUcosを計算することができ、D(θi、,fj)は、Ucos(θi−φ)を用いて再マップされる。
【0104】
周波数−方向スペクトルD(θ,f)が真の方向分布を表す場合、上記の手法は理想となるであろう。しかしながら、トリプレット・ベースの波計測は、上記の実施形態に関して説明したように、これが無限フーリエ級数の最初の3つの項(5つの係数)だけからなるため、方向幅を表すその能力に本質的に限界があることがある。プロセスにおける少しの本物の方向幅情報が存在する可能性があることを知ることで、実際に存在する場合がある又は存在しない場合がある方向幅に基づいて方向スペクトルを再マップすることが不利な場合がある。1つには、一般に各周波数におけるピーク波向に依存することがある。
【0105】
前進の動きに起因するドップラーシフトを補正するために観測された周波数空間を再マッピングすることは、複数の解決策及び境界によって複雑にされる非線形の周波数に依存するプロセスとなる場合がある。再マッピングのために用いられるデータにおける誤差と関連付けられたリスクは、速度が高くなるにつれてより大きくなることがある。波のフィールドを通して動いているとき、1つには、システムが水基準座標系に固定された場合とは異なる波の周波数を観測する。顕著な動きは、波の伝搬方向の平均速度の成分である場合がある。
【0106】
動きに伴う周波数スペクトルのドップラーシフトに影響を及ぼす幾つかのパラメータは、ピーク波向θ、観測された波の周波数fobs、水基準座標系における波の周波数fwater、プラットフォーム方向φ、プラットフォームの速度U、及び波数kwaterを含むことがある。Ucos(θ−φ)は、波の方向のプラットフォーム速度成分を表すことができる。ピーク方向のみに基づいてUcos(θpeak(f)−φ)を用いて各周波数における方向分布D(θ)を再マップすることが有益な場合がある。こうした事例において、D(θi,fj)は、Ucos(θpeak(f)−φ)を用いて再マップされる。
【0107】
同じく図11に示されるように、実際の波の周波数に基づいて観測された波の周波数を判定するための前進関係式は、次式によって表すことができる
【数8】
フォワー関係式は、単刀直入なことがあるが、しかしながら、我々は、観測された周波数空間を計測し、我々の観測をもたらす水基準座標系における波の周波数を判定したいと思う。反復的な数値的手法は、fobsを見つけ出すことができる。
【0108】
観測された波の周波数は、サンプルレートによって定義することができ、そのため問題とならない誤差を有することがある。プラットフォーム速度及び方向は、一般に、ドップラーシフトと共に顕著な変化が起こる規模に比べて小さい誤差を有する。しかしながら、波向は、短いサンプリング・インターバルと、本物の環境の変動性によって導入されるノイズと共に顕著に変化することがある。波向における誤差は、再マッピングにどれだけのドップラーシフトが適用されるかを変化させることがあるUcosにおける誤差を導入することがある。波の周波数の再マッピングは典型的に非線形であることから、Ucosにおける誤差は、その成分のうちの1つにおける誤差が増幅されないように境界付けることができる。例えば、Uにおける最悪の場合の誤差は、1%となることがある。プラットフォームが波と共に整合して移動する場合、Ucosは1%だけの誤差を含むものとなるであろう。別の例として、波向の推定における分散は、時間の特定のセグメントに対して30度の誤差を引き起こす。プラットフォームが12ノットで波と垂直に移動している場合、正しい波向に伴うUcosにおける誤差は、0となるであろう。波向における30度の誤差を伴うUcosにおける誤差は、このとき6ノットである。波がプラットフォームと整合される場合、30度の誤差が、Ucosを12ノットから10.39まで変化させる。
【0109】
方向の誤差は、周波数の非線形再マッピングに対して破局的なことがあり、本明細書に記載の実施形態は、こうした誤差が伝搬されるのを防止する。統計的に、波向は、かなりの量のデータが用いられるときには、普通は非常に安定である。短いサンプル・インターバルから導出される方向推定の変動性に対処する1つの方法は、「同じ」方向を共有する周波数帯を組み合わせることである。ステップ1312(図13A)との関連において後で説明される加重平均ピーク方向を参照して説明されるように、加重平均ピーク方向は、Ucosの適用のための方向のより良好な推定を提供する場合がある。幾つかの実施形態において、波向の堅牢な判定が分解能の犠牲のもとでさらなる周波数帯平均を有するようにすることが有利な可能性がある。
【0110】
我々は、その実際の周波数を与える観測された周波数を容易に計算することができる。逆数は、反復を介して解くことができ、時々あいまいさ(ambiguity)及び漸近線を伴う。観測された周波数fobsを与えるfwaterを見つけ出す1つの方法は、水に対する周波数空間全体を高分解能でステップ・スルーし、fobsを計算し、次いで、入力fobsと計算されたfobsとの間のベストマッチを探すことである。この手法は、強引なものであるが、演算上の境界を簡単にチェックし、多くの解を解くことを可能にする。
【0111】
ステップ912で再マッピングのために用いられる波の方向推定を安定化させるために用いることができる別の手法は、時間において反復的に平均される。例えば、overlap−add手法との関連において上記で説明されたように、短い時間間隔は、これが、我々がプラットフォームの動きにおける変化をより短い時間スケールで補正することを可能にすることから処理することができる。これらのより短い時間セグメントから導出される方向推定は、観測された周波数空間の精密な再マッピングのために用いるにはノイズが多すぎることがある。我々はプラットフォーム動力学を取り扱うために時間において短いセグメントを用いる動機を与えられるが、波向は短い時間スケール(たとえば2分)では変化しないということが一般に良好な仮定である。たとえば、プラットフォームの動きにおける変化に対処するために我々が時間を重なる2分セグメントに分割する、データの20分を処理し、次いで、20分にわたる再マップされた方向推定を平均することが可能である。それらに第2の反復を行うことができ、この場合、個々の2分セグメントは、波向の20分の平均された推定に対するプラットフォームの動きを補正される。平均された波向を個々のセグメントの再マッピングに適用するために、平均された方向は、マッピング解除して、プラットフォーム速度に基づいて観測された周波数空間に戻すことができる。これは、我々が対処することを試みる波向に伴う問題が短い時系列に起因する分散であるときに、特に良好に働く。
【0112】
ステップ912で方向スペクトルの係数を再マッピングする際の別の考慮事項は、波のドップラーシフトは、それが方向分布を異なる周波数に単純にシフトする方向計測に影響しない場合があることとすることができる。これは、幾つかの実施形態において、方向情報の主なソースは、各周波数での軌道速度(U及びV)の2つの水平成分の相対振幅とすることができるためである。各周波数は、独立して扱うことができるので、UとVの比率は、ドップラーシフトと共に変化せず、これは単純に別の周波数に動かされる。
【0113】
図12Aは、水基準座標系の周波数と観測された周波数との間の関係性を示すことによって、波に対して動くときのドップラーシフトされた波の周波数を例証する。図12Aで例証されるように、近づいてくる波の中に動いているとき、観測された周波数は、水基準座標系にあるよりも高くなるであろう。速度Uをもつプラットフォームに対して、計測することができる我々のサンプルレートよりも速く波の山が接近する、或る波の周波数が存在する。1つには、観測された周波数空間がドップラーシフトされるため、ナイキスト限界に時期尚早に行き当たる。図12Aのチャートでは、実線のfobs曲線がチャートの頂部と交わる場所がナイキスト限界である。これは、第1の停止部とすることができる。1つには、この限界よりも大きいドップラーで波のエネルギーを計測することはできないというわけではなく、1つには、周波数を明らかに識別することはできないのである。
【0114】
再マッピングは、より高い周波数にわたって分散するエネルギーをとり、且つこれをより低い周波数に取り戻すことができる。スペクトルはノイズ・フロアを有するため、ノイズ・フロアよりも高く上昇しない周波数帯を再マップしないことが有利なことがある。これは、高い周波数からのノイズ・フロアを再マッピングしてこれをより低い周波数で集群(bunch)する可能性を回避する。
【0115】
図12Bは、水基準座標系の周波数と観測された周波数との間の関係性を示すことによって、波と共に動いているときのドップラーシフトされた波の周波数を例証する。図12Bに示すように、波向と共に動いているときに、波は、観測された空間においてより低い周波数で現れるであろう。速度に応じて、多くの解決策が存在する可能性がある。これは、第1の停止部とすることができる。我々が観測する周波数として現れることができる1つよりも多い水基準座標系の波の周波数が存在する。第1の解決策は、最も低い周波数の解決策とすることができ、且つより演算上の有意となる可能性がある。これは、図12Bにおける実線のfobs曲線の立ち上がり端に対応する。これらの周波数において、波は、プラットフォームよりも依然として速く動くことができるが、速度における差異は0に近づく。fobs曲線の頂部は平らとすることができ、且つ観測された周波数が水に対する周波数のより広い範囲にわたって大きく変化しない領域に対応することができる。これは、プラットフォーム速度がグループ速度Cgとマッチする場所とすることができる。
【0116】
第2の解決策は、図12Bにおける実線のfobs曲線の下向きのスロープとすることができる。この領域は、プラットフォームがグループ速度Cgよりも速いが位相速度よりも遅く動くことができる場所とすることができる。図12Bの右に動くと、プラットフォームの速度は、これらの周波数における波の位相速度に近づく。この領域は、可測性問題を提示することがある。1つには、波の山と同じ速度及び方向で動いている(サーフィンの)場合、計測は、波のあらゆる他の部分をサンプリングしない場合がある。
【0117】
より高い周波数では、プラットフォーム速度は、波よりも速く動くことがあり、且つそれらを追い抜くことがある。この負の観測された周波数空間は、計測可能とすることができるが、典型的には、典型的に再マップするよりも高い、水に対する周波数である。0との交差部は、プラットフォーム速度が波の位相速度とほとんど正確にマッチする場所とすることができる。
【0118】
適正に計測された観測された周波数スペクトルは、図12Bにおける実線のfobs曲線よりも上の周波数における如何なるパワーをも有するべきでないことに注目されたい。ほとんどすべての本物の水に対する周波数は、ピーク上に又はピークよりも下になるべきである。これは、観測された周波数空間に対する上側カットオフ閾値(fupper)が設定されることを可能にする。平均流れの存在の下でそれらが計算に含まれない場合に、これへの例外が起こることがある。
【0119】
平均流れに起因する波数のドップラーシフトもまた、考慮に入れることができる。水が地球に対して動いていない場合、水基準座標系は地球基準座標系である。平均流れの存在の下で、2つの基準座標系は等しいものではない。波は、水中で伝搬し、そのため我々が地球基準座標系における波を計測することを望む場合、我々は、この状況の特別な取扱いを採用することができる。平均流れ上を伝搬する波は、周波数を変化させないが、しかしながら、対地流れは、波長を変化させるであろう。ラジアン周波数ωから波数k又は波長(2π/k)を判定するために標準分散関係式が用いられる。
【数9】
平均流れ上を伝搬する波は、ドップラーシフトされた分散関係に従うことができる。
【数10】
Uは、速度を表すことができ、αは、波向と平均流れ方向との間の角度を表すことができる。直観的に、平均流れと共に動く所与の周波数における波は、より大きい波長に引き伸ばされるであろう。平均流れに対して動いている波は、典型的に、より短い波長に圧縮されるであろう。海流は、関心ある周波数における波の速さに比べて一般に小さいが、この現象は、依然として説明することができる。平均流れは、水面変位への翻訳と、周波数空間の再マッピングとの2つの理由に該当する場合がある。
【0120】
水面変位への翻訳に関して、波長は、波のエネルギーが感じられる深さを決定付けることができる。波の長さが平均流れによって修正される場合、波が感じられる深さを修正することができる。実際の波数/波長は、深さにおける軌道速度計測を表面波の高さに正確に翻訳するために、ドップラーシフトされた分散関係を用いて計算することができる。
【0121】
周波数空間を再マッピングすることに関して、幾つかの実施形態において、我々は地球基準座標系における波を計測することを要望する。プラットフォームが波と共に又は波に対して動いているとき、観測された周波数はドップラーシフトされる。平均流れの存在の下で、地球基準座標系における波の位相速度及び波数が修正される。観測された周波数を地球基準周波数に再マップするために、我々は我々が知っている対地波数が修正されることを要求する。
【0122】
平均流れの課題に対処する1つの方法は、再マッピングのために用いられるプラットフォーム速度から平均流れを除去することである。これは、本質的に水に対するプラットフォーム速度を用いて再マップする。例えば、あなたは波と共に3m/sで動いており、平均流れは同じ方向に1m/sで動いている。波は、プラットフォーム速度のために、より低い周波数で集群化するように観測される。速度Uとして3m/sを用いて単純に再マッピングすることは、誤差を導入する。誤差は、観測されたスペクトルは3m/sのドップラーシフトで観測可能であるべき周波数よりも高い周波数での波のエネルギーを有することから表される。流れもまた波と共に動いていることから、より高い周波数が生じた。これは、波は水基準座標系において伝搬しており、且つ水はプラットフォームと共に1m/sで動いていることから、観測された波の周波数は、本当はたったの2m/sだけドップラーシフトされたことを意味する。
【0123】
結果として、平均流れは、波数を修正するが周波数は変化させないため、一実施形態において、前進の動きに起因してドップラーシフトを判定するために用いられる速度は、プラットフォームの対地速度ではないが、プラットフォームの対水速度である。
【0124】
図9Aに戻って参照すると、ステップ916でセグメント固有方向上側カットオフ周波数を実行することができる。幾つかの実施形態において、再マッピング・プロセスの間に判定されているあらゆる周波数境界を保存することができる。図13A及び図13Bとの関連においてさらなる詳細が提供される。
【0125】
ステップ916でセグメント係数を累算することができる。ドップラーシフトを補正するために周波数において各セグメントに対する係数がシフトされると、それらは、水の各周波数における各セグメントに対する係数を加えることによって累算することができる。係数の和は、次式によって表すことができる。
【数11】
【0126】
セグメント固有DWSの処理は、ステップ918に示すように、各セグメントが処理されるまで繰返すことができる。次いで、ステップ920で、ステップ904の反復において計算されたセグメント固有統計を、バースト・インターバルにわたって平均することができる。これは、周波数に依存するパラメータに対する変動(たとえば、標準偏差)又は平均値(たとえば、平均)を示す統計に対する周波数に依存するパラメータを平均することを含むことができる。平均された係数は、ステップ922でピーク検出のために提供された式(18)に基づいてDWSに変換することができる。
【0127】
分布は、非常に広く、ピーク方向の使用以上に特に有用ではない場合がある。これは、フーリエ級数の項の残りを、波向(U、V、W)の3つの独立した測度のみに基づいて判定することはできない場合があり、及び難しいことがあるという事実に起因する場合がある。幾つかの実施形態は、多方向波及び方向幅を判定するそれらの能力に限界があることがあるため、ピーク方向を単純に抽出することが有用な場合がある。係数から導出される方向幅はブロードであり、グラフではあまり有用ではないので、1つには、ピーク方向を望ましい様式でグラフで表す方向幅を選び出すことができる。これが広すぎる場合、これはピーク方向への良好なポインタを作成しない場合がある。これが狭すぎる場合、ユーザは、輪郭プロット上でピークを見ることができない場合がある。一実施形態において、ピーク方向は、係数から導出され、幅10度のガウス分布によって表される。ガウス分布は、次式によって表すことができる。
【数12】
【0128】
ステップ924において、周波数分解能を増加させることができる。方向は、周波数分解能を減少させる(平均を増加させる)、短い時間枠のセグメントと共により安定な場合があるため、方向スペクトルは、非方向スペクトルと同じ分解能において長くない場合がある。後で、そのように非方向パワーによって方向スペクトルを再びスケール変更することができ、一方、真の分解能は取り戻されない場合があり、方向スペクトルは、後の使用のために周波数帯の数を2倍にする状態で構造にマップすることができる。
【0129】
ステップ926において、DWSを正規化することができる。各周波数帯における非方向パワーは別のアルゴリズムによって別々に判定されるので、以下の式によって示されるように、後で再びスケール変更することに備えて各方向分布を1の面積に正規化することができる。
【数13】
【0130】
図13A及び図13Bは、非方向波スペクトルを計算するプロセス437を例証する。プロセス437は、図7のステップ437に関するさらなる詳細を提供する。一実施形態において、動きを取り扱うための戦略は、方向アルゴリズムに対する場合と同様に非方向アルゴリズムに対して実質的に同じである。しかしながら、他の実施形態において、手法は、非方向波に対して異なるように最適化することができる。一実施形態において、例えば20分のバースト・インターバルは、より短いセグメントに分割することができ、周波数に依存するパラメータを、それらを累算する前に各セグメントに独立して適用することによって動力学に対処することがある。我々が推定する情報の唯一の断片は方向であるため、方向アルゴリズム、例えば、プロセス435(図9A、9B)は、小さな誤差に対して若干回復の速いものとすることができる。それに対して、プロセス437の非方向アルゴリズムは、こうした非線形プロセスにおける小さい誤差は、海面の波の高さの推定における大きい誤差につながることがあるため、微妙な不正確さに対処することがある。
【0131】
ステップ1302において、プロセス437は、時系列データを重なりセグメントに区切ることができる。これは、方向プロセス435のステップ902(図9A)を参照して上記で説明された特徴と、図10との関連で説明される特徴とのいずれかを含むことができる。
【0132】
一実施形態において、方向アルゴリズム435は、地球座標に座標変換された水の単一の大きい体積を用いてセグメントを累算することができる。それに対して、非方向アルゴリズム437は、セグメント及びセンサ(たとえば、ビン、ビームなど)にわたって累算することができる。そのため、時系列の速度が、非方向アルゴリズム437に対するビーム座標に戻されてもよい。
【0133】
ステップ1302のoverlap−addプロセスの一部として、座標をビーム座標に変換することができる。以下で詳述されるステップ1308の加重最小2乗法は、異なる深さでの異なるセンサからのデータを組み合わせる堅牢な方法とすることができる。1つには、センサとセグメントとを組み合わせることによって、この動作中のアルゴリズムを利用することができる。広範囲の深さ及びセグメント環境は、その推定を改善する場合がある。
【0134】
サンプル・インターバルは、セグメントに区切ることができる。周波数空間の再マッピングをサポートするために周波数分解能を改善することができる。これを行うために、時間分解能が犠牲にされる場合がある。例えば2分のセグメントを用いるのではなく、1つには、例えば4分のセグメントを用いることができる。これは、スペクトルの周波数分解能を2のファクタだけ改善することができるが、4分の時間枠にわたって起こる実質的な動力学に正確に応答することができないことを意味する場合がある。
【0135】
ステップ1302において作成された各重なりセグメントは、セグメント固有ステップ1304〜1320によって別々に処理することができる。セグメントは、ステップ1304でデミーン(demeaned)することができる。バースト・インターバルの間の速度データにおけるトレンドの1つの結果は、パワーをより低い周波数にブリードすることができることである。プラットフォームの動きが除去されると、1つには、速度時系列が0平均に近くなることが期待されるであろう。なぜ残りのオフセットが存在する可能性があるかの少なくとも2つの主な理由がある。第1に、平均流れは、平均をオフセットすることがある。第2に、プラットフォーム速度の推定におけるオフセット誤差もまた、平均をオフセットすることがある。
【0136】
流れは、一般に小さいが、依然として有意である可能性がある。地球基準プラットフォーム速度のソースとして慣性を用いることは、或る潜在的な不正確さを含む場合がある。幾つかの慣性系は、良好なスケールファクタ誤差を有するが、それらが独立した固定値(fix)を有さない場合、時間と共にドリフト又はオフセットすることがある。一実施形態において、波の処理システムは、データがデミーンされるため、及びスケールファクタ誤差が小さいため、それがドリフトされた場合であってもプラットフォーム速度に対する推定として慣性を用いることができる。波は、正しい大きさを有することができるが、ゆっくりと変化する未知のオフセット誤差上にスーパーインポーズすることができる。
【0137】
この事例におけるデミーニング(Demeaning)は、ハイパスフィルタに関係することがある。オフセットは、固定されることになるデータを中心とする、スライディング平均を計算し、平均を差し引くことによって除去することができる。一実施形態において、ハイパスフィルタ幅は、120サンプルとすることができる。これは、例えば、20分のバースト・インターバルの間のプラットフォームの動きの変化に応答するのに十分なだけ狭いが、波の周波数(<30秒周期)を完全な状態のまま残すのに十分なだけ広い場合がある。この関係性は、次式によって表すことができる。
【数14】
【0138】
図14は、セグメントの速度データのデミーニングをグラフで例証する。曲線1400は速度データを表し、曲線1410は局所平均(local mean)データを表し、曲線1430はデミーンされたデータを表す。デミーンされたデータ曲線1430は、オフセットを除去しながら速度曲線1400の特徴を保つことができる。図14に示すように、オフセットは変化することができる。
【0139】
図13Aに戻って参照すると、各セグメントは、ステップ1306で、ウィンドウ処理し、FFTで周波数ドメインに変換し、且つセグメント固有パワースペクトルを計算することができる。一実施形態において、標準バートレット・ウィンドウが適用される。ウィンドウは時間領域において適用されることから、パワースペクトルは、バートレット・ウィンドウの二乗によって導入されるパワーを説明するために後で正規化することができる。他の実施形態において、当業者に公知のあらゆるウィンドウを用いることができる。一実施形態において、標準FFTアルゴリズムが用いられる。時間領域データを周波数ドメインに変換するために、他のアルゴリズムが用いられてもよい。パワースペクトルは、以下の式に示されるように、その複素共役を掛けた周波数スペクトルによって表すことができる。
【数15】
各セグメントに対する翻訳されていない、再マップされていない(観測された)パワースペクトルを、後の使用のために保存することができる。これらの生計測値は、信号対ノイズ比の代表的なものとすることができ、上側カットオフ周波数を後で判定するのに有用なことがある。
【0140】
ウィンドウの選定は、スペクトル・ブリーディング及び分解能に起因する誤差の伝搬を減少させることができる。波と同じ方向の前進の動きに起因するドップラーシフトは、観測されたスペクトルをより低い周波数に動かし、これにより細い、より集群化された形状を与える傾向がある。処理又は分解能の制限に起因して観測されたスペクトルがより高い周波数にブリードされた場合、再マッピング関数がこの誤差を増幅することがある。ドップラーシフトは周波数と共に強く非線形であることから、観測された空間におけるスペクトルパワーの僅かな置き違えは、再マップされた地球−周波数空間における破局的な置き違えと化すことがある。この誤差は、水面変位への周波数に依存する非線形の翻訳によってさらに増幅されることがある。
【表3】
【0141】
例えば、プラットフォームは、深さ100mで波と共に6m/sで動いている。波のエネルギーは、ドップラーシフトによってより低い周波数で集群化される。実際の波の周波数は0.083Hzであるが、観測された空間において0.056Hzにドップラーシフトされている。スペクトル・ブリーディング及びコース分解能は、0.056Hz帯域におけるパワーの或る部分を、次の隣接する帯域(0.064Hz)において出現させる。この帯域に誤ってブリードされたパワーは、地球周波数空間における0.12Hzに再マップされるであろう。この周波数における水面変位に翻訳するためのゲインは、真の周波数に対するゲインよりも100倍大きい。
【0142】
結果として、そうでなければ多くの周波数帯にわたって分布される典型的なスペクトルは、分解能とスペクトル・ブリーディングが問題となる程にドップラーシフトによって圧縮されることがある。このリスクを緩和するために、1つには、非方向スペクトルを処理するときに適切なスペクトル分解能及びウィンドウ処理を有してもよい。
【0143】
上記で説明されたスペクトル・ブリーディングに関係する再マッピングと関連付けられた誤差源の分析は、幾つかの実施形態において、非方向アルゴリズムは分解能を支持することが望ましいことを示す。図11との関連において上記で説明された方向推定におけるノイズに起因する伝搬誤差のさらなる分析は、幾つかの実施形態において、方向アルゴリズムは方向推定の安定性を改善するために分解能の犠牲のもとにさらなる周波数帯の平均を行うことが望ましいことを示す。2つのアルゴリズムは、互いに依存することがあり、且つスペクトル情報の交換を要求することがあるため、これらの競合する設計基準は顕著なものとなることがある。
【0144】
1つの解決策は、非方向アルゴリズムよりも方向アルゴリズムに対する異なる周波数バンディングを可能にし、2つのプロセスの間で渡されるあらゆるデータを同じ分解能に補間することである。例えば、0から1Hzまでの128の周波数帯をもつ方向スペクトルを処理し、且つ0から1Hzまでの256帯域をもつ非方向スペクトルを処理することによって、我々は両方の世界の最善を得ることができる。非方向スペクトルは、狭いピークを分離するのに適切な分解能を有し、且つスペクトル・ブリーディングを回避し、一方、方向スペクトルは、さらなる平均と関連付けられた方向安定性からの恩恵を受ける。2つのアルゴリズムの間の重要な依存関係は、非方向スペクトルを再マップするための波向情報の必要性とすることができる。ピーク方向と各周波数とのマップは、それが用いられる前に非方向スペクトルのより高い分解能に補間することができる。
【0145】
ステップ1308でセグメント固有バイアスを除去することができる。有意な波の高さはパワースペクトルの下の面積を用いて判定されてもよいことから、バイアスの除去を行うことができる。計器ノイズ・フロアは、スペクトル全体をオフセットするホワイトノイズとしてモデル化することができる。ノイズ・フロアによって導入される面積は普通は小さいが、これは明らかに波ではない。除去は、スペクトル・ノイズ・フロアの計測と、水面変位に翻訳する前にスペクトル全体からこのオフセットを差し引くことに関係する。スペクトル・ノイズ・フロアを判定するために、1つには、例えば0.8から1.0Hzまでの多くの真の波のエネルギーを典型的に有さないスペクトルの領域を用いることができる。典型的に、この領域は、環境ノイズではなく計測ノイズの代表的なものである。ADCPのノイズ・フロアは、レンジ、システム周波数、及びビンサイズと共に変化することがあり、そのため値は経験的に判定されてもよい。
【0146】
ステップ1310でセグメント固有統計を計算することができる。このステップは、ステップ904(図9A)を参照して上記で説明された特徴のいずれかを実装することができる。
【0147】
ステップ1312でセグメント固有平均ピーク方向を判定することができる。セグメントに対する観測されたパワースペクトルが判定されると、これは、方向推定をさらに安定化させるために用いることができる。周波数空間を再マップするために各セグメントに対する個々の各周波数帯における波向が用いられるとき、再マップされたスペクトルの品質は疑わしい場合がある。これは、単一の2〜4分セグメントは非常に多くのサンプルを収容しないという事実に起因して、方向推定はノイズのあるものであるかもしれないためである。1つの手法は、真に類似した方向をもつ波は単一の方向(暴風又は風事象)から来るという考えに基づいて、さらなる帯域平均を行うことである。実際には、パワーのピークから導出される単一の方向を用いることは、周波数空間を再マッピングするときに、より堅牢な且つ現実的な結果を与える。これを知ることで、第1の判定は、共通の方向を共有する隣接する周波数帯をグループ化するアルゴリズムを用いることができる。第2に、信号対ノイズ比が高いときの波の方向推定の信頼性はより高いため、それらが顕著なパワーを有するときに波向推定により多く加重するアルゴリズムを用いることができる。
【0148】
これは、海洋上の風事象及び暴風によって波が生成されるとみなす。ほとんどの場合、特定の暴風から到来する波は共通の方向を有する。別の方向における別の異なる暴風は、新しい方向から来るように見えるであろうそれ独自のスペクトルを生み出すであろう。
【0149】
幾つかの実施形態は短い時間間隔(たとえば2分)を用いるため、方向データは、大きい分散を有することができる。この分散は、実質的な誤差に伝搬することがある。共通の波向(及び多分、共通のソース)を有する周波数帯をグループ化することによって、方向推定の分散を減少させるために、これらの隣接する帯域のピーク方向を平均することができる。
【0150】
幾つかの実施形態において、ピークパワーの周波数における波向の60度以内で来る波は、共通の波向にあると考えられる。30度又は45度のようなレンジに対する他の値が用いられてもよい。プロセスの一実施形態は以下のとおりである。
1.観測された非方向パワースペクトルを用いて、ほとんどのパワーをもつ観測された周波数(fpeak)を見つけ出す。
2.このピーク周波数において、観測された(再マップされていない)方向スペクトルにおけるピーク方向θpeakを見つけ出す。
3.60度以内のピーク方向を有する隣接する周波数帯をグループ化するために、パワーのピークから前進と後進との両方を見つけ出す。
4.周波数帯がこの閾値外の波向を有するところに達したときに停止する。
5.残りのグループ化されていない周波数帯のみを用いて、非方向パワーの新しいピークを見つけ出す。
6.グループ分けプロセスを繰り返す。
7.3度目を繰返す。
8.ステップ1〜7は、周波数帯を共通の方向によって3つの可能な方向にグループ化することができる。次に、パワー加重平均を各グループに適用することができる。これは、方向推定を静穏にするために帯域平均する恩恵と、良好な信号対ノイズ比をもつ周波数帯はより正確であり且つより加重されるべきであるという推定を提供することができる。
9.方向の平均は、ベクトル平均であり、サイン及びコサイン成分において累算することができる。
10.次式に従って、各グループにおける周波数にわたる加重サイン成分を累算する。
【数16】
11. 個々の大きさではなくサインとコサインとの比だけが重要な場合があることから、正規化は要求されない場合がある。最後に、ピーク方向のこれらの平滑化された推定は、再マッピングのために用いることができる。
【0151】
ステップ1314において、周波数空間のセグメント固有再マッピングを行うことができる。観測されたパワースペクトルを水に対する周波数空間に再マッピングする一実施形態は、方向アルゴリズムのために用いられる手順と類似している。さらに、再マッピングは、非方向スペクトルとの違いを含むことがある。例えば、方向推定は、例えば、ステップ1312でピーク検出を平均することによってさらに磨きをかけることができる。加えて、周波数空間は非線形の様式で引き伸ばす又は圧縮することができるため、1つには、パワーを新しい周波数に動かすことと、各周波数帯におけるパワーをスケール変更して、新しい帯域幅、すなわちΔfにおけるパワーを保存することとの両方が可能である。別の違いは、ドップラーシフトによってほんの幾つかの帯域に圧縮されているスペクトルを取り戻そうとするときに再マッピングにおける誤差が生じないように、周波数分解能はより高いことがあることである。加えて、再マッピング・アルゴリズムによってアサートされる演算上の停止は、最も高い使用可能な周波数の判定に寄与する場合がある。図15は、非方向スペクトルに対する周波数空間の再マッピングを例証する。
【0152】
ステップ1316でセグメントを水面変位に翻訳することができる。深さにおける軌道速度から水面変位への翻訳は、線形波理論とシステムの幾何学的形状から導出することができる。翻訳式T(f)は、該セグメントの間の深さ、高度、及びセンサの幾何学的形状に基づいて、各セグメント及び各センサに対して見つけ出すことができる。翻訳されることになる軌道速度スペクトルは、前進の動きに起因するドップラーシフトを既に補正されていると思われる。水面変位に関する式は、以下の通りである。
【数17】
この式において、ωは、ラジアンの周波数を表すことができ、kは、波数を表すことができ、Vは、ビーム半径方向速度を表すことができ、hは、水深を表すことができ、zは、センサにおける没水度(submergence)を表すことができ、Jは、ヤヌスビーム角を表すことができる。
【0153】
ステップ1312でセグメントに対して表面スペクトルSH、SV、及び再マップされたSVの「加重最小2乗」計算を行うことができる。各周波数におけるセンサ及びセグメントにわたって以下の和を累算することができる。
【数18】
これらの和において、SVは、深さにおける軌道速度スペクトルを表すことができ、SRは、ドップラーシフトを補正するために再マップされる軌道速度を表すことができ、SHは、地球基準表面スペクトルを表すことができ、Tは、翻訳式を表すことができ、mは、センサ又はビームの数×レンジ・セルを表すことができ、nは、セグメントの数を表すことができ、Nは、n×mを表すことができる。
【0154】
上記で提供された和に加えて、周波数/深さに依存する翻訳式を含むTではなくTを1に等しく設定する状態で、これらを重複する累算を行うことができる。これは、スクリーニング・アルゴリズム及び上側カットオフ周波数アルゴリズムと共に用いるために、当てはめられ、平均された軌道速度スペクトルを我々が後で判定することを可能にする。
【0155】
一実施形態において、ステップ1312は、翻訳式Tが適用されるときの深さにおける速度スペクトルSVを再現する表面スペクトルSHに対する最良の適合を推定する。手法の幾つかの実施形態は、最小2乗の当てはめとは異なる。正確に最小2乗の当てはめではない、この手法への少なくとも3つの革新が存在する。すべてのセンサにわたってデータを累算するのではなく、実装は、センサとセグメントとの両方にわたって累算するように一般化することができる。考えというのは、累算は、両方の種類の平均に対処することができるということである。すべてのセンサにわたるデータを累算するのではなく、実装は、上記で提供された式(36)〜(40)によって示されるように、センサとセグメントとの両方にわたって累算するように一般化することができる。考えというのは、累算は、両方の種類の平均に対処することができるということである。以下の式で示されるように、水面高さだけでなく、再マップされた軌道速度スペクトルと再マップされていない軌道速度スペクトルとに対する最良の適合を我々が判定するように、項を追加することができる。式(41)は、水面高さだけでなく、再マップされた軌道速度スペクトルと再マップされていない軌道速度スペクトルとに対する最良の適合を我々が判定するように項を追加する。
【数19】
【0156】
ドップラーシフトを補正するために再マップされた軌道速度を表す式(41)を用いて、地球基準表面スペクトルは、次式によって表すことができる。
【数20】
【0157】
これは、水面変位に対する最終式とすることができる。しかしながら、幾つかの実施形態において、翻訳されていない再マップされたスペクトルと、翻訳されていない再マップされていないスペクトルとを同様に計算することができる。すべてのセンサ及びセグメントに対して、T=1である、同じ式を用いることができる。これは、翻訳されていないスペクトルを提供し、且つ次式によって表されるように、再マップされていないスペクトルに対するSRではなくSV累算を用いることができる。
【数21】
【0158】
最小2乗法を用いる別の実施形態において、式は、以下のように表すことができる。
【数22】
しかしながら、深さに伴う非常に小さい変動が存在するとき、分母が0に行くことからプロセスは崩壊する。代わりに、水柱におけるより高い値は、分母からファクタNを除去することによってより有意なように加重することができる。これは、次式に簡略化される。
【数23】
一実施形態において、これは、水面変位に対する最終式とすることができる。しかしながら、翻訳されていない再マップされたスペクトルと、翻訳されていない再マップされていないスペクトルを、同じく計算することができる。次式によって表されるように、翻訳されていないスペクトルを得て、再マップされていないスペクトルに対するSrではなくSv累算を用いるために、すべてのセンサ及びセグメントに対して、T=1である、同じ式を用いることができる。
【数24】
【0159】
図13Aに戻って参照すると、ステップ1320は、すべてのセグメントが処理されるかどうかを判定することができる。ステップ1304〜1320は、すべてのセグメントが処理されるまで繰返すことができる。次いで、ステップ1322においてすべてのセグメントに対して最小2乗計算を計算することができる。これは、当てはめられ、観測された速度スペクトルSc、再マップされた速度スペクトルSr、及び表面スペクトルShを出力することができる。
【0160】
ステップ1324において、上側カットオフ周波数を計算することができる。ステップ1324は、ステップ914(図9A)との関連において説明された特徴のいずれかを実装することができる。ステップ1324の一実施形態は、実際のデータにおける信号対ノイズ比に基づいて最も高い使用可能な周波数と、信号/ノイズが増幅されてもよい程度とを判定する。プロセスの一実施形態を以下で概説する。
1.計測データの集合的なスペクトル・ノイズ・フロアσを計算する。
【数25】
2.我々はこれらの周波数における波のエネルギーが小さい又は計測可能でないことを期待するので、ノイズ・フロアの代表的なものとしてスペクトルの最高周波数部分を用いる
3.再マップされた軌道速度パワースペクトルの大きさを用いて信号を計算する。
【数26】
4.水面変位T(f)への平均翻訳を計算する。平均又は最大のいずれかを用いることができる。最大は、深さにおける動力学が存在する場合には、より保守的である。
【数27】
5.GN2Sを周波数の関数として計算する。
【数28】
6.再マップされたスペクトルのピーク周波数を見つけ出す。
【数29】
7.GN2S(f)>100までピークの前進を見つけ出す。これが起こる周波数は、我々の上側カットオフとなる。
【0161】
ステップ1326でスペクトルをスクリーニングすることができる。信号対ノイズ比に関してスペクトルをスクリーニングすることは、計器ノイズ・フロアよりも上の適切な波の信号を要求することに基づいて個々の周波数を我々が却下することを可能にする。スペクトルをスクリーニングするためのプロセスの一実施形態を以下で概説する。
1.計測データの集合的なスペクトル・ノイズ・フロアσを計算する。
【数30】
2.我々はこれらの周波数における波のエネルギーが小さい又は計測可能でないことを期待するので、ノイズ・フロアの代表的なものとしてスペクトルの最高周波数部分を用いる。
3.再マップされた軌道速度パワースペクトルの大きさを用いて信号を計算する。
【数31】
信号対ノイズ比は、
【数32】
これは、信号が4σよりも大きいことを要求することがある。
4.この基準に基づいて翻訳されたスペクトルをスクリーニングする。
【数33】
【0162】
次いで、ステップ1328において、上側周波数を外挿することができる。波のエネルギーが最後の良質な値から指数関数的に低下するという仮定を用いて、信号が小さすぎることがあるため判定するのが難しいことがあるスペクトルの上側部分を外挿することができる。この外挿のためのシードとして1つよりも多い最後のデータ点を使用することは時々より堅牢である。
【数34】
非方向パワースペクトルと正規化された方向スペクトルとの両方が独立して計算されると、正規化された方向分布を非方向パワーによってスケール変更することができる。
【数35】
これにより、
【数36】
次いで、標準的方法を用いて方向スペクトル及び非方向スペクトルから波のパラメータを計算することができる。例えば、図7を参照して上記で説明したものである。
【0163】
図16を参照すると、水面トラックを使用して1つ又は複数の波の特性を判定するためのプロセス1600が提供される。プロセス1600は、上記で説明された軌道速度手法のいずれかへの代替として又はそれに加えて実行することができる。水面トラック手法は、上記で説明された軌道速度手法のいずれかと類似している可能性がある。水面トラック手法は、サンプリング周期を時間においてより短い重なりセグメントに分割し、次いで、各セグメントを該時間の間に生じた固有のプラットフォームの動きに関して補正することによって、非方向スペクトルを判定することができる。
【0164】
プロセス1600は、ステップ1602において水面トラック・データを収集することができる。水面トラック・データは、上向きのADCPから得ることができる。上向きのADCP402は、ADCP202(図2)及び/又はADCP300(図3)の特徴のあらゆる組合せを含むことができる。水面トラック・データは、水面へのレンジを突き止める時系列のエコーを含むことができる。典型的に、時系列データは、2Hz以上の周波数でサンプリングされる。
【0165】
水面トラック・データは、ステップ1604において、例えば、プロセス435(図9A及び図9B)との関連において説明された技術のあらゆる組合せを用いてピーク波向を判定するのに用いることができる。ピーク波向は、水面トラック・データの各セグメントに対して各周波数において判定することができる。
【0166】
水面へのレンジを突き止める時系列のエコーは、典型的に、ステップ1606においてサンプリングされ、且つプラットフォームの動きの同期した測度と組み合わされる。例えば、プラットフォームの動きと平均流れの同期した又は同期していない測度は、データ収集システム410(図4A)及び/又はデータ収集プロセス410’(図5)を参照して説明された技術のいずれかを用いて水面トラック・データと同期させることができる。ステップ1606において、出力は、サンプルレートでのプラットフォームの東方向、北方向、及びZ方向速度を含むことができる。
【0167】
ステップ1608において、プラットフォームの動きの時系列データをプラットフォーム・オフセットに統合することができる。時系列データは、サンプルレートでのプラットフォームに対するX、Y、Z位置オフセットを含むことができる。加えて、ステップ1608での減算によって水面トラック・データからプラットフォームの動きを除去することができる。結果として得られる時系列は、プラットフォーム応答によるバイアスのない水面隆起(対地垂直レンジ)のみを含むことができる。
【0168】
時系列データは、ステップ1610で重なりセグメントに区切ることができる。例えば、これは、ステップ1302(図13A)を参照して説明されるように行うことができる。
【0169】
セグメント固有処理は、ステップ1612〜1620において行うことができる。これは、ステップ1612でFFTを介して時系列データをパワースペクトルに変換し、且つセグメント固有統計を計算することを含むことができる。セグメント固有統計は、データにおける平均値及び/又は変動を示す統計を含むことができる。プロセス1600は、次いで、ドップラーシフトを補正するために、ピーク波向(方向波アルゴリズムによって前もって判定される)と、セグメントのサンプリング周期の間の平均プラットフォーム速度とを使用することができる。結果として得られる水に対するスペクトルを、次いで、ピーク波向及び平均流れを用いて地球基準座標系に対して補正することができる。これは、ステップ1614で各セグメントに関する前進の動きを用いて観測されたスペクトルからの周波数空間を水基準に再マッピングすることによって達成することができる。ステップ1614によって提供された水に対する表面スペクトルを、次いで、ステップ1616で平均流れを用いて地球基準に対して再マップすることができる。ステップ1618でセグメント固有対地表面スペクトルを累算することができる。これは、個々に補正されたセグメントを互いに平均することを含むことができる。各セグメントが処理されるまでに、サンプリング周期全体に関する代表的な非方向スペクトルを作成することができる。
【0170】
ステップ1620でセグメント固有処理が行われることが決定された後で、付加的な後処理を行うことができる。次いで、ステップ1622で方向波スペクトル及び/又は非方向波スペクトルから1つ又は複数の波の特性を判定することができる。したがって、移動プラットフォームから1つ又は複数の波の特性を判定する軌道速度手法への代替として又はそれに加えて水面トラック・データを用いることができる。
【0171】
移動プラットフォームを用いて波の特性を判定するシステム及び方法の固有の実施形態が本明細書で説明される。明細書は、本発明の特定の例を説明するが、当業者は、発明概念から逸脱することなく本発明の変形を考案することができる。
【0172】
結言
当業者は、種々の異なるテクノロジー及び技術のいずれかを用いて情報及び信号が表わされてもよいことを理解するであろう。例えば、上記の説明を通して言及される場合があるデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、及びチップは、電圧、流れ、電磁波、磁場又は磁性粒子、光学場又は光学粒子、又はその任意の組合せによって表されてもよい。
【0173】
当業者は、本明細書で開示された例との関連において説明された種々の例証となる論理ブロック、モジュール、回路、方法、及びアルゴリズムは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はこの両方の組合せとして実装されてもよいことをさらに理解するであろう。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例証するために、種々の例証となる成分、ブロック、モジュール、回路、方法、及びアルゴリズムが上記で一般にそれらの機能性の点で説明されている。こうした機能性は、システム全体に課される特定の用途及び設計制約に応じてハードウェア又はソフトウェアのいずれかとして実装される。当業者は、説明された機能性を特定の各用途に対する種々の方法で実装してもよいが、こうした実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0174】
本明細書で開示された例との関連において説明された種々の例証となる論理ブロック、モジュール、及び回路は、本明細書で説明された機能を行うように設計された汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は他のプログラム可能論理デバイス、個別のゲート又はトランジスタ論理、個別のハードウェア・コンポーネント、又はその任意の組合せと共に実装され又は行われてもよい。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替法において、プロセッサは、あらゆる従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又は状態マシンであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティング・デバイスの組合せ、たとえば、DSPと、マイクロプロセッサ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併せられる1つ又は複数のマイクロプロセッサとの組合せ、又はあらゆる他のこうした構成として実装されてもよい。
【0175】
本明細書で開示された例との関連において説明された方法又はアルゴリズムは、直接ハードウェアにおいて、プロセッサによって実行されるソフトウェア・モジュールにおいて、又はこの2つの組合せにおいて具体化されてもよい。ソフトウェア・モジュールは、当該技術分野では公知のRAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD−ROM、又はあらゆる他の形態の記憶媒体に存在してもよい。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し且つ記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに接続されてもよい。代替法において、記憶媒体は、プロセッサと一体にされてもよい。プロセッサと記憶媒体は、ASICに存在してもよい。
【0176】
実施形態に応じて、本明細書に記載の方法のいずれかの或る作動、事象、又は機能は、すべて一緒に、異なる順序で行うことができ、追加することができ、融合することができ、又は省略することができる(たとえば、説明された作動又は事象のすべてが、方法の実施にとって必要不可欠なわけではない)。そのうえ、特定の実施形態において、作動又は事象は、順次にではなく同時に行うことができる。
【0177】
1つ又は複数の例示的な実施形態において、説明された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はその任意の組合せにおいて実装されてもよい。ソフトウェアに実装された場合、機能は、1つ又は複数の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納され又はコンピュータ可読媒体上で伝送されてもよい。コンピュータ可読媒体は、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの伝送を容易にするあらゆる媒体を含む、コンピュータ記憶媒体と通信媒体との両方を含む。記憶媒体は、汎用又は特殊用途のコンピュータによってアクセス可能なあらゆる利用可能な媒体であってもよい。単なる例として、限定ではなく、こうしたコンピュータ可読媒体は、命令又はデータ構造の形態の所望のプログラムコード手段を搬送する又は格納するために用いることができ、且つ汎用又は特殊用途のコンピュータ、若しくは汎用又は特殊用途のプロセッサによってアクセス可能な、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROM、又は他の光ディスク・ストレージ、磁気ディスク・ストレージ、又は他の磁気ストレージ・デバイス、若しくはあらゆる他の媒体を含むことができる。また、あらゆる接続が、コンピュータ可読媒体と適正に呼ばれる。例えば、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(digital subscriber line)(DSL)、又は赤外線、無線、及びマイクロ波のような無線技術を用いて、ソフトウェアが、ウェブサイト、サーバ、又は他の遠隔ソースから伝送される場合、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、又は赤外線、無線、及びマイクロ波のような無線技術が媒体の定義に含まれる。本明細書で用いられる場合のディスク(Disk)及びディスク(disc)は、コンパクト・ディスク(compact disc)(CD)、レーザ・ディスク(laser disc)、光ディスク(optical disc)、デジタル・バーサタイル・ディスク(digital versatile disc)(DVD)、フロッピー(登録商標)・ディスク(floppy disk)、及びブルーレイ・ディスク(blu−ray disc)を含み、この場合、ディスク(disk)は、普通はデータを磁気的に再生し、一方、ディスク(disc)は、データをレーザで光学的に再生する。上記の組合せはまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0178】
そのうえ、数ある中でも、「できる(can)」、「可能性がある(could)」、「場合がある(might)」、「ことがある(can)」、「たとえば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「のような(such as)」などのような本明細書で用いられる条件付き言語は、特にそれ以外の指定のない限り、又は用いられる場合の文脈内で別なように理解されない限り、一般に、他の実施形態は含まないが或る実施形態が或る特徴、要素、及び/又は状態を含むことを伝えることを意図される。したがって、こうした条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又は状態が1つ又は複数の実施形態に対して多少なりとも要求されること、若しくは、これらの特徴、要素及び/又は状態があらゆる特定の実施形態に含まれる又はあらゆる特定の実施形態において行われるかのいずれであろうとも、1つ又は複数の実施形態が、著者の入力又はプロンプティングにより又は著者の入力又はプロンプティングなしで、決定するための論理を必然的に含むことを含意することは意図されない。
【0179】
開示された例の前の説明は、当業者が本発明を行う又は用いることを可能にするために提供される。これらの例への種々の修正は、当業者には容易に明らかとなるであろうし、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく他の例に適用されてもよい。認識されるように、本明細書に記載の本発明の或る実施形態は、幾つかの特徴を他のものとは別に用いる又は実施することができるので、本明細書に記載された特徴及び利点のすべてを提供するわけではない形態内で具体化することができる。本明細書で開示された或る発明の範囲は、上記の説明によってではなく付属の請求項によって示される。請求項の均等物の意味及び範囲内に入るすべての変化は、それらの範囲内に包含されることになる。したがって、本発明は、本明細書で示された例に限定されることを意図されないが、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に従うことになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの波の特性を判定するためのシステムであって、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータを得るように構成されたソナー・システムと、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを得るように構成された地球基準センサと、
前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するように、前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと前記固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを組み合わせることによって、少なくとも1つの波の特性を判定するように構成されたプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記ソナー・システムが、超音波ドップラー式多層流向流速計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの波の特性を出力するように構成されたディスプレイをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの波の特性が、波の高さ、周期、又は方向を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータが、以下のデータ、すなわち、慣性データ、ボトムトラック・データ、又は水面トラック・データのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの波の特性を判定する方法であって、
超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信すること、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを基準センサから受信すること、
前記ADCP及び前記基準センサと通信するプロセッサを用いて、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するために受信した前記データを組み合わせることによって、少なくとも1つの波の特性を判定すること、
を含む方法。
【請求項7】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを同期させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータから、プラットフォーム、水、及び地球基準座標系を時間領域において分離することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとの少なくとも一部を同じ座標系にもっていくために、時間領域において1つ又は複数の座標変換を行うことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、overlap−addスペクトル処理を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記overlap−addスペクトル処理が、セグメント固有統計を計算することを含み、
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、2つ又はそれ以上のセグメントに対するセグメント固有統計を平均することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、水基準座標系における波の周波数に対する波のスペクトルの係数を判定するために、セグメントに対する周波数空間を再マッピングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、トリプレット処理を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、方向波スペクトルを判定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、非方向波スペクトルを判定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
電子装置上の少なくとも1つの波の特性を判定する方法であって、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを受信すること、
受信した前記データの少なくとも一部を前記固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換すること、
変換された前記データに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定すること、
前記方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定すること、
前記方向波スペクトルと前記非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出すること、
を含む方法。
【請求項17】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを同期させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方向波スペクトルを判定することが、受信した前記データの少なくとも一部を重なりセグメントに区切ることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記方向波スペクトルを判定することが、セグメント固有カットオフ周波数を計算することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非方向波スペクトルを判定することが、センサとセグメントにわたって合計されたデータに基づく加重累算を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記非方向スペクトルを判定することが、水基準座標系における波の周波数に対するパワーへの、観測された周波数に対するパワーのセグメント固有再マッピングを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記非方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて前記方向波スペクトルを再びスケール変更することをさらに含み、少なくとも1つの波の特性を導出することが、再びスケール変更された方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づくものである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
コンピュータ可読の記憶媒体であって、実行されるときに、以下の方法、すなわち、
超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信し、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを基準センサから受信し、
前記ADCP及び前記基準センサと通信するプロセッサを用いて、前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを同期し且つ連結すること(collocating)を介して、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するために受信した前記データを組み合わせることによって少なくとも1つの波の特性を判定する、
方法を行う命令を含む、コンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項24】
コンピュータ可読の記憶媒体であって、実行されるときに、以下の方法、すなわち、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信し、
受信した前記データの少なくとも一部を前記固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換し、
変換された前記データに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定し、
前記方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定し、
前記方向波スペクトルと前記非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出する、
方法を行う命令を含む、コンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項25】
前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータが、速度及び配向データを含む、請求項1に記載のシステム、請求項6に記載の方法、又は請求項23に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項1】
少なくとも1つの波の特性を判定するためのシステムであって、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータを得るように構成されたソナー・システムと、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを得るように構成された地球基準センサと、
前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するように、前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと前記固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを組み合わせることによって、少なくとも1つの波の特性を判定するように構成されたプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記ソナー・システムが、超音波ドップラー式多層流向流速計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの波の特性を出力するように構成されたディスプレイをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの波の特性が、波の高さ、周期、又は方向を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータが、以下のデータ、すなわち、慣性データ、ボトムトラック・データ、又は水面トラック・データのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの波の特性を判定する方法であって、
超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信すること、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを基準センサから受信すること、
前記ADCP及び前記基準センサと通信するプロセッサを用いて、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するために受信した前記データを組み合わせることによって、少なくとも1つの波の特性を判定すること、
を含む方法。
【請求項7】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを同期させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータから、プラットフォーム、水、及び地球基準座標系を時間領域において分離することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとの少なくとも一部を同じ座標系にもっていくために、時間領域において1つ又は複数の座標変換を行うことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、overlap−addスペクトル処理を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記overlap−addスペクトル処理が、セグメント固有統計を計算することを含み、
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、2つ又はそれ以上のセグメントに対するセグメント固有統計を平均することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、水基準座標系における波の周波数に対する波のスペクトルの係数を判定するために、セグメントに対する周波数空間を再マッピングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、トリプレット処理を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、方向波スペクトルを判定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの波の特性を判定することが、非方向波スペクトルを判定することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
電子装置上の少なくとも1つの波の特性を判定する方法であって、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを受信すること、
受信した前記データの少なくとも一部を前記固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換すること、
変換された前記データに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定すること、
前記方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定すること、
前記方向波スペクトルと前記非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出すること、
を含む方法。
【請求項17】
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと、固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを同期させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方向波スペクトルを判定することが、受信した前記データの少なくとも一部を重なりセグメントに区切ることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記方向波スペクトルを判定することが、セグメント固有カットオフ周波数を計算することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記非方向波スペクトルを判定することが、センサとセグメントにわたって合計されたデータに基づく加重累算を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記非方向スペクトルを判定することが、水基準座標系における波の周波数に対するパワーへの、観測された周波数に対するパワーのセグメント固有再マッピングを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記非方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて前記方向波スペクトルを再びスケール変更することをさらに含み、少なくとも1つの波の特性を導出することが、再びスケール変更された方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づくものである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
コンピュータ可読の記憶媒体であって、実行されるときに、以下の方法、すなわち、
超音波ドップラー式多層流向流速計(ADCP)からプラットフォームに対する水の動きを示すデータを受信し、
固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータを基準センサから受信し、
前記ADCP及び前記基準センサと通信するプロセッサを用いて、前記プラットフォームに対する水の動きを示すデータと前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータとを同期し且つ連結すること(collocating)を介して、前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを補償するために受信した前記データを組み合わせることによって少なくとも1つの波の特性を判定する、
方法を行う命令を含む、コンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項24】
コンピュータ可読の記憶媒体であって、実行されるときに、以下の方法、すなわち、
プラットフォームに対する水の動きを示すデータと固定された基準座標系に対するプラットフォームの動きを示すデータとを受信し、
受信した前記データの少なくとも一部を前記固定された基準座標系に対する水の動きを示すデータに変換し、
変換された前記データに少なくとも部分的に基づいて方向波スペクトルを判定し、
前記方向波スペクトルに少なくとも部分的に基づいて非方向波スペクトルを判定し、
前記方向波スペクトルと前記非方向波スペクトルとのうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいて少なくとも1つの波の特性を導出する、
方法を行う命令を含む、コンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項25】
前記固定された基準座標系に対する前記プラットフォームの動きを示すデータが、速度及び配向データを含む、請求項1に記載のシステム、請求項6に記載の方法、又は請求項23に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−528333(P2012−528333A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513227(P2012−513227)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036243
【国際公開番号】WO2010/138624
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLU−RAY DISC
【出願人】(511285129)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036243
【国際公開番号】WO2010/138624
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLU−RAY DISC
【出願人】(511285129)
【Fターム(参考)】
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