説明

移動ロボットの外部電源接続装置

【課題】移動ロボットを固定設備の前に停止させたとき、固定設備に対する姿勢のずれを吸収し、移動ロボット側の複数の受電電極を固定設備側の複数の給電電極に対して良好に接触させることができるようにする。
【解決手段】固定設備側の給電端子部34の複数の電極40、41および移動ロボット側の受電端子部35の複数の電極59をそれぞれ縦方向一列に配置する。そして、受電端子部35を横(左右)方向に揺動可能に且つ上下方向に移動可能に構成し、受電端子部35に設けたヘッドカバー63が給電端子部34の上下一対の突出部42の傾斜面42aに当接することによって給電端子部34が横方向に揺動し、上下方向に移動することで、固定設備に対する姿勢のずれを吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットに設けられた受電電極と固定設備側の給電電極との接続のための構成を改良した移動ロボットの外部電源接続装置にする。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造工場或いは自動車用部品の生産工場などでは、無人搬送車 (AGV)にロボットアームを搭載した移動ロボットを、複数箇所に設けられた作業ステーション(固定設備)間で移動させながら、組立作業などを行うようにしたシステムが採用されてきている。
【0003】
このような移動ロボットでは、自走する必要がある関係上、少なくとも走行用負荷を二次電池からなるバッテリにより駆動する構成とした上で、作業ステーションでの停止中に外部の交流電源からバッテリに充電する構成とすることが一般に行われている。
【0004】
具体的には、図10に概略的に示すように、作業ステーションには、商用交流電源1の出力に基づいて比較的低電圧の電流を発生する充電器2および給電端子部3を備えた電源装置4が設けられる。また、移動ロボット5側には、作業ステーションで停止した状態で上記給電端子部3に接続される受電端子部6が設けられており、この受電端子部6で受けた定電圧の直流電源をバッテリ7に供給して充電すると共に、DC/DCコンバータ8により昇圧してコントローラ9を通じて負荷であるロボットアームや自走装置の駆動モータ10などに供給する構成となっている。
【0005】
ところで、図9は移動ロボット5が電源装置4から電力の供給を受けている状態を示している。同図のように、電源装置4の前面部に前記給電端子部3が設けられ、この給電端子部3には充電器2の出力端子部に接続されたプラス側とマイナス側の一対の給電電極11、12および接地されたアース電極13が設けられている。これに対し、前記受電端子部6は、移動ロボット5が電源装置4の前で停止したとき電源装置4側を向く側面部に、図示しない駆動装置によって電源装置4に対し接近および離反する方向に移動可能に設けられている。この受電端子部6には、バッテリ7およびDC/DCコンバータ8に接続された棒状の一対の受電電極14、15および移動ロボット5のフレームに接続されたアース電極16が設けられている。
【0006】
これにて、移動ロボット5が作業ステーションの前で停止した状態で、受電端子部6が電源装置4側に移動されると、受電電極14、15およびアース電極16が給電端子部6の給電電極11、12およびアース電極13に接続されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業ステーション前の床上には停止マーカが設けられ、移動ロボット5はその停止マーカを読み取って、正規の位置で、作業ステーション(電源装置4)の前面と平行の姿勢を保って停止するように構成されているが、実際には誤差があって、作業ステーションの前面と平行ではなく若干傾いた姿勢で停止したり、或いは受電端子部6と給電端子部3の高さ位置に若干の高低差があったりすることがある。
【0008】
しかしながら、上記従来の外部電源接続構成では、特に、移動ロボット5が作業ステーションの前面に対して傾いた姿勢で停止すると、給電端子部3と受電端子部6の向きが合わないため、相手側の電極との距離がばらつき、距離の遠い電極間では接触圧が低くなる。
【0009】
すなわち、受電端子部6側の受電電極14〜16は接触圧付与用の圧縮コイルばね17によって給電電極11〜13に押し付けられるようになっているが、上記のように移動ロボット5が傾いた姿勢になると、圧縮コイルばね17の圧縮量が大小異なり、その結果、受電電極を給電電極に押し付ける力(接触圧)が大小異なるようになる。そして、接触圧の小さな電極どうしでは、その間の電気抵抗が大きくなって大きな電流が流れ、スパークが発生したり、電極が溶けたりするという問題を生じ、更に、スパークが発生したりすると、その電極の表面に酸化膜が形成され、一層電気抵抗が大きくなるという不具合を生ずる。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、移動ロボットの停止位置のずれを吸収できることはもちろん、特に移動ロボットが固定設備に対して傾いた姿勢で停止しても、移動ロボット側の複数の受電電極の全てを固定設備側の複数の給電電極に対して十分な接触圧で接触させることができる移動ロボットの外部電源接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
移動ロボットが固定設備の前で停止したとき、姿勢が傾いていたりすることがある。このような場合、請求項1の発明では、移動ロボットに設けられる受電部を、給電部に対して接近および離反する方向に移動する直線駆動装置に、縦方向に移動可能で且つ横方向に揺動可能に設けたので、移動ロボットの位置ずれや姿勢のずれを吸収でき、給電電極と受電電極とを、良好に接続することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、外部電源を交流電源とし、移動ロボットが充電可能な高圧電池からなるバッテリ、交流電源を整流してバッテリを充電する充電器を搭載しているので、外部の固定設備側に、交流電源の電圧を移動ロボットのバッテリの充電電圧にまで下げる降圧トランス、この降圧トランスの交流出力を直流に変換する整流器などからなる充電器を設けずとも済むので、固定設備をコンパクトに構成できる。しかも、固定設備側から移動ロボットへは高圧の交流電源をそのまま供給できるので、給電電極および受電電極に流れる電流を小さくすることができる。このため、両電極を断面積の小なる小形のものに構成でき、給電部および受電部を小形に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図8を参照しながら説明する。まず、図8は、移動ロボット21の外観構成を示しており、この移動ロボット21は、全体として前後(図で左右)にやや長いほぼ矩形箱状に構成された無人搬送車(AGV)22上に、例えば6軸型アームからなるロボットアーム23を搭載して構成されている。
【0014】
詳しく図示はしないが、前記無人搬送車22は、本体フレーム24(図1に一部のみ図示)の底部に走行機構を有する。この走行機構は例えば4個の車輪25(2個のみ図示)を備え、そのうち2個の駆動輪をモータにより駆動及び操舵するように構成されている。また、本体フレーム24の前後左右の外壁部には、夫々側壁カバー26が設けられており、これら側壁カバー26には、障害物センサ27などが設けられている。また、図示はしないが、本体フレーム24の底部には、走行路に沿って敷設されたガイドラインを検出するための前後一対のガイドセンサや、固定設備(作業ステーション)の前に設けられた停止マーカを検出するための停止マーカセンサなどが設けられている。
【0015】
これにて、移動ロボット21は、前記走行機構により、固定設備に沿って設けられた走行路を走行し、所定の作業位置(作業ステーション)に停止してロボットアーム23により部品の組付けや受渡しなどの作業を行なうようになっている。
【0016】
さて、移動ロボット21は、図7に示すように、走行時の電源となるバッテリ28を備えている。このバッテリ28は単位セルを多数直列に接続して出力が例えば288Vとなるように構成した充電可能な高圧電池からなるもので、このバッテリ28はリレースイッチ29を介してコントローラ30に接続されている。このコントローラ30にはバッテリ28の出力電圧がそのまま印加され、コントローラ30は負荷である前記無人搬送車22の走行機構やロボットアーム23の駆動モータ31を駆動するように構成されている。
【0017】
また、この移動ロボット21は、作業ステーションでの停止時には、コントローラ30の電源をバッテリ28から外部電源である200Vの三相交流電源に切り換えると共に、バッテリ28を同じく200Vの三相交流電源により充電するように構成されている。すなわち、固定設備側には、電源装置32が設けられており、この電源装置32は三相の交流電源33と、これに接続された給電部としての給電端子部34とを備えた構成となっている。
【0018】
一方、移動ロボット21側には、給電端子部34に接続される受電部としての受電端子部35が設けられ、この受電端子部35は、コントローラ30に整流器36を介して接続されていると共に、バッテリ28に整流器を主体とする充電器37を介して接続されている。なお、充電器37は交流電源33の電圧をそのままバッテリ28に印加して充電するようになっている。
【0019】
本実施例では、移動ロボット21が作業ステーション(固定設備)前で停止したとき、受電端子部35が電源装置32側に移動して給電端子部34に接続されるようになっている。以下、その接続構成について詳述する。
【0020】
まず、図1に示すように、前記電源装置32は固定設備側の床部に設けられ、その給電端子部34は電源装置32の前面壁部(図で左側の壁部)に突出した形態で設けられている。この給電端子部34は、図4にも示すように、プラスチックなどの電気絶縁材から構成されたやや横長な矩形ブロック状をなす絶縁ハウジング38を主体とするもので、その絶縁ハウジング38には、前面部に開口する横長の穴部39が縦方向たる上下方向に4個形成され、この各穴部39の奥部に横長の固定電極板が配設されている。これら固定電極板のうち例えば上側の3個が、夫々前記交流電源33の三相の電源線に接続された給電電極40とされ、最下位に位置するものが、接地されたアース線(図示せず)に接続されたアース端子部41とされている。
【0021】
図1、図4に示すように、前記絶縁ハウジング38の前面部には、上記4個の穴部39群の上下両側に位置して一対の突出部42が突設されている。この上下に対向する一対の突出部42の内面は、先端に向かって対向間隔が広がるように例えば傾き角が30度程度の傾斜面42aとされている。
【0022】
これに対し、前記移動ロボット21側(無人搬送車22内)には、側壁カバー26に形成された開口部43を通じて出没する前記受電端子部35を有した可動ユニット44が設けられている。尚、この可動ユニット44は、実際には無人搬送車22の中央部の前後にずれた位置に、左右対称的に一対が設けられるようになっているのであるが、ここでは、右側のものを代表させて図示及び説明を行なう。
【0023】
図1は可動ユニット44の縦断面図、図2は可動ユニット44を下方から見た断面図である。この図1、図2において、無人搬送車22の本体フレーム24には取付枠45が固定されており、この取付枠45に駆動手段としての直線駆動装置46が取り付けられている。この直線駆動装置46は、左右方向長いラックシリンダ47および駆動源となるパルスモータ48から構成されている。上記ラックシリンダ47は、周知のように、内部に駆動部材としてのラック49を備え、このラック49に噛み合うピニオン(図示せず)を前記パルスモータ48により回転することによってラック49を直線移動させる構成のものである。
【0024】
前記受電端子部35は、プラスチックなどの電気絶縁材から構成された円形状の絶縁ハウジング50を主体とするもので、その絶縁ハウジング50には同じく電気絶縁材から構成された基部51が固定されている。基部51の上下両側には支持部51aが突設されており、その支持部51aには軸受ブッシュ52が嵌着されている。
【0025】
そして、前記ラックシリンダ47のラック49の先端部には、揺動中心軸としてのシャフト53がブラケット54を介して上下を指向するように縦軸形にして固定されている。そして、このラック49から上下に突出するシャフト53の上下両側に、絶縁ハウジング50の基部51に設けられた支持部51aが、前記軸受ブッシュ52を介して、横(左右)方向に揺動可能に且つ縦(上下)方向に移動可能に支持されている。上記シャフト53のうち、ラック49から上方に突出する部分には、ブラケット54と上側の支持部51aとの間に位置する保持用ばね部材としての圧縮コイルばね55が設けられており、受電端子部35はこの圧縮コイルばね55の弾発力によって常時は上下方向の移動範囲のほぼ中央位置に保持されている。
【0026】
さて、受電端子部35の絶縁ハウジング50内は、図3に示すように、電気絶縁材からなる3枚の仕切板56によって上下4室に仕切られている。そして、絶縁ハウジング50の上記4室内には、それぞれ例えば銅など良導電性材からなる導電部材57が設けられ、更に各導電部材57には良導電性材からなるブッシュ58が嵌着されている。そして、各ブッシュ58に丸棒状の可動電極棒が前後方向に移動可能に支持されている。これら可動電極棒のうち上側の3個が受電電極59とされ、最下位のものがアース電極60とされている。
【0027】
受電電極59およびアース電極60の後半部には、それぞれ接触圧付与用ばね部材としての引張コイルばね61が設けられており、各引張コイルばね61は前後両端部を電極59、60の後端部とブッシュ58の後端部とに固定されていて、各電極59、60に対して、その先端部分が絶縁ハウジング50から前方に突出する方向の付勢力を付与する。なお、図3の状態では、引張コイルばね61は縮小した状態にあって、電極59、60を絶縁ハウジング50から最も前方に突出した状態に保持している。
【0028】
上記の受電電極59およびアース電極60と電気的に接続された状態にある前記導電部材57の後端部は、絶縁ハウジング50の基部51から突出されている。そして、それら導電部材57の後端部には、それぞれケーブル62が接続されており、各受電電極59に対応する導電部材57のケーブル62は前記整流器36および充電器37に接続され、アース電極60に対応する導電部材57のケーブル62は無人搬送車22の本体フレーム24に接続されている。
【0029】
受電端子部35の絶縁ハウジング50には、電気絶縁材からなる可動ハウジングとしてのヘッドカバー63が前後方向にスライド可能に嵌合されている。この場合、絶縁ハウジング50には、図2に示すように、前後方向に延びる凹部64が形成されており、この凹部64内にヘッドカバー63に固定したピン65の先端部が挿入されている。これにより、ヘッドカバー63は絶縁ハウジング50に対して、凹部64の範囲内で前後方向にスライドできるようになっている。
【0030】
このヘッドカバー63は、受電端子部35の一部を構成するもので、矩形状の外形をなし、その前面部には、各受電電極59、アース電極60の先端部が挿通する孔66が形成されている。また、ヘッドカバー63の上下両外側面の先方部分は傾斜面63aに形成されている。この上下両側の傾斜面61aは受電側ガイド部を構成するもので、前記給電端子部34の絶縁ハウジング38に突設された突出部42の傾斜面42aに対応し、後述のようしにて受電端子部35が給電端子部34側に移動すると、突出部42の上下両側の傾斜面42aに接するようになっている。
【0031】
上記ヘッドカバー63と絶縁ハウジング50との間には、間隔保持用ばね部材としての引張コイルばね67が設けられている。これにより、ヘッドカバー63は前方に付勢されて、常には、受電電極59およびアース電極60を孔66内に隠した被覆位置に保持されている。そして、ヘッドカバー63は、前方から後方への力を受けると、引張コイルばね67の弾発力に抗して後方に移動し、受電電極59およびアース電極60を孔66から突出させる露出位置に移動するようになっている。
【0032】
前記絶縁ハウジング50の基部51内には、マイクロスイッチからなる検出スイッチ68が設けられている。この検出スイッチ68は、受電電極59およびアース電極60が相手側である給電電極40およびアース電極41に当接したとき、それらの電極が基部51に対して相対的に後方へ移動することを検出して動作するもので、その信号はパルスモータ48を制御する図示しない制御部に入力され、以後、制御部はパルスモータ48を低速度で回転させてラック49の移動スピードを低速度に制御する。
【0033】
ヘッドカバー63の外周部には、電気絶縁材から構成された電極カバー68が設けられている。この電極カバー68は、先端に向かって拡開する形状に形成され、受電端子部35と給電端子部34との接続時に、それらの周囲を覆うようになっている。そして、可動ユニット44が無人搬送車22内に没した状態では、電極カバー68の周囲部が本体フレーム24に当接して開口部43を塞いだ状態になっている。
【0034】
次に、上記構成の作用について述べる。上述のように、移動ロボット21は、無人搬送車22の走行機構により、走行路上を走行(移動)し、作業を行なうべく固定設備前の所定の作業位置に停止する。この移動時の走行機構の電源は、バッテリ28から得るようになっている。また、この走行時においては、図1に示すように、受電端子部35は無人搬送車22内に後退した位置にあり、このとき、ヘッドカバー63が受電電極59およびアース端子部60を覆う被覆位置にあって、それら端子部59、60を外部に露出しないようにしている。
【0035】
移動ロボット21が固定設備前の所定の作業位置に停止すると、受電端子部35の先端面であるヘッドカバー63の先端面と前記電源装置22の給電端子部34とが向い合うようになり、この状態で、直線駆動装置46(パルスモータ48)を駆動させることにより、後退した位置にあった受電端子部35を突出(前進)方向(接続方向である図1の右方向)に移動させる。
【0036】
受電端子部35の突出方向への移動により、まず、ヘッドカバー63の先端部が給電端子部34の上下一対の突出部42内に侵入し、図5に示すように、ヘッドカバー63の上下両傾斜面63aが給電端子部34の上下両突出部42の傾斜面42aに接するようになる。このとき、電源装置32側の給電端子部34と移動ロボット21側の受電端子部35とが上下に位置ずれを生じていた場合、まず、ヘッドカバー62の上下両傾斜面63aのうち、一方の傾斜面が給電端子部34側の上下両傾斜面42aの一方の傾斜面に接触する。
【0037】
例えば、受電端子部35が給電端子部34に対して下方にずれていた場合、ヘッドカバー63の下側の傾斜面63aが給電端子部34の下側の突出部42の傾斜面42aに当たる。すると、その後の受電端子部35の接続方向の移動により受電端子部35が突出部42の傾斜面42aに乗り上げるようにしてシャフト53に沿って上方に移動し、最終的にはヘッドカバー63の上側の傾斜面63aも給電端子部34の上側の突出部42の傾斜面42aに当たるようになる。これにより、受電端子部35の上下方向の位置が給電端子部34と一致するようになる。
【0038】
また、移動ロボット21の姿勢がずれを生じていた場合、つまり移動ロボット21が電源装置32の前面と平行でなく、傾いて停止していた場合、前述のようにヘッドカバー63の一方の傾斜面63aが給電端子部34の一方の突出部42の傾斜面42aに接したとき、或いは上下両傾斜面63aが両突出部42の傾斜面42aに接したとき、受電端子部35がラック49により押されて、図6に示すように、シャフト53を中心に横方向に揺動し、ヘッドカバー63の上下両傾斜面63aが給電端子部34の上下両突出部42の傾斜面42aに面で接するようになる。
【0039】
これにより、ヘッドカバー63の先端面と給電端子部34の先端面とが平行状態で対向する正規の向きとなる。以上のように、給電端子部34の突出部42の傾斜面42aおよびヘッドカバー63の傾斜面63aはガイド部として機能し、互いに接触することにより、受電端子部35の上下方向の位置を給電端子部34に合うように修正する縦位置ガイド部と、受電端子部35の横方向の向きを給電端子部34に合うように修正する横位置ガイド部との両方の機能を果たすようになっている。
【0040】
さて、ヘッドカバー63は上下両突出部42に接触することによって停止するが、直線駆動装置46のラック49はその後も更に突出方向に移動するため、絶縁ハウジング50が同方向に更に移動し、その絶縁ハウジング50に支持された受電電極59およびアース電極60がヘッドカバー63の孔66から前方に突出する。
【0041】
孔66から突出した受電電極59およびアース電極60は、その後の絶縁ハウジング50の移動により、給電端子部34の給電電極40およびアース電極41に接触する位置に至り、そこで停止する。すると、検出スイッチ68が受電電極59およびアース電極60の停止を検出するため、パルスモータ48の回転が低速度に落とされ、ラック49ひいては絶縁ハウジング50をゆっくり突出方向に移動させる。そして、絶縁ハウジング50は、その先端面がヘッドカバー63の先端部裏面に当接する位置までゆっくり移動する。
【0042】
この受電電極59およびアース電極60が停止した状態で絶縁ハウジング50が突出方向へ移動することにより、接触圧付与用の引張コイルばね61が次第に伸張され、受電電極59およびアース電極60に与える弾発力が次第に増大する。
【0043】
このとき、前述のように、ヘッドカバー63の先端面と給電端子部34の先端面とが平行状態で向き合う正規の対向状態となっているため、受電電極59およびアース電極60は給電電極40およびアース電極41に垂直に接触した状態にある。従って、引張コイルばね61の弾発力は受電電極59およびアース電極60を給電電極40およびアース電極41に接触させる圧力として効果的に作用し、且つその接触圧は3個の受電電極59および1個のアース電極60においてほとんど同じとなり、適度な接触圧となる。このため、受電電極59およびアース電極60と給電電極40およびアース電極41との接触抵抗を小さい範囲に抑制することができ、スパークの発生や電極の溶融などの不具合を生ずるおそれがない。
【0044】
もちろん、移動ロボット21の停止位置が電源装置32の前面に沿う横方向、すなわち移動ロボットの移動方向にずれていた場合、そのずれは、給電端子部34の給電電極40およびアース電極41が横長であることによって吸収される。この場合、給電電極40、アース電極41および受電電極59、アース電極60がそれぞれ縦方向一列に配設されることにより、給電電極40、アース電極41の横方向長さを長くすることができるので、移動ロボット21の停止位置が横方向に大きくずれても、これを吸収することができる。
【0045】
また、移動ロボット21に停止位置が電源装置32の前面に直交する方向、すなわち移動ロボット21が電源装置32に接近し過ぎたり、遠過ぎたりした位置で停止した場合、その位置ずれは、絶縁ハウジング50をその先端面がヘッドカバー63の先端部裏面に当接する位置まで移動させるためのラック49の移動量によって吸収される。
【0046】
以上のようにして受電電極59およびアース電極60が給電電極40およびアース電極41に大きな接触圧で接触すると、交流電源33側から移動ロボット21側へ電力供給が行われ、その電力供給を受けてロボットアーム23が所定の組立動作などを行うと共に、バッテリ28が充電される。
【0047】
このとき、特にロボットアーム23の起動時には、大きな電力を必要とするが、交流電源の電圧がそのまま移動ロボット21側に印加されるので、電源装置側で交流電源を24V程度の直流に変換して移動ロボット側に供給する構成のものとは異なり、給電電極40および受電電極59を流れる電流が小さくなる。このため、給電電極40および受電電極59を断面積の小なる小形のものに構成でき、給電端子部34および受電端子部35の小形化を図ることができる。そして、特に受電端子部35の小形化はこれを移動させる直線駆動装置46の小形化をも招来し、移動ロボット21への搭載部品は小形が好ましいという要求に対処できるものである。
【0048】
ロボットアーム23による作業が終了すると、今度は、直線駆動装置46により受電端子部35が没入切離し方向である没入(後退)方向(切離し方向である図1の左方向)に移動され、給電端子部34との接続が切離される。
【0049】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
給電端子部34の給電電極40、アース電極41を棒状のものとし、受電端子部35の受電電極59、アース電極60を横長のものとしても良い。また、給電電極40、アース電極41、受電電極59、アース電極60を全て横長のものとしても良い。
【0050】
電源装置32側で200Vの交流電源を例えば24Vの直流に変換し、移動ロボット21側では、電源装置32から供給される24Vの直流によってバッテリ28を充電すると共に、DC/DCコンバータにより280Vに昇圧してコントローラ30に供給する構成としても良い。
【0051】
受電端子部35の電極59,60を接触圧付与用の引張コイルばね61によって給電端子部34の電極40,41側に付勢するようにしたが、給電端子部34の電極40,41も接触圧付与用の引張コイルばねによって受電端子部35の電極59,60側に付勢するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、要部の縦断側面図
【図2】要部を一部破断して示す底面図
【図3】受電端子部の拡大縦断側面図
【図4】給電端子部の斜視図
【図5】受電端子部の縦位置の修正動作を説明するための側面図
【図6】受電端子部の向き修正動作を説明するための横断平面図
【図7】電気的構成を示すブロック図
【図8】移動ロボットの側面図
【図9】従来の外部電源との接続構成を示す概略図
【図10】従来の電気的構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0053】
図中、21は移動ロボット、24は本体フレーム、26は側壁カバー、28はバッテリ、32は電源装置、33は交流電源、34は給電端子部(給電部)、35は受電端子部(受電部)、38は絶縁ハウジング、40は給電電極、41はアース電極、42は突出部、42aは傾斜面(ガイド部、縦位置ガイド部、回動位置ガイド部)、44は可動ユニット、46は直線駆動装置、47はラックシリンダ、48はパルスモータ、49はラック、50は絶縁ハウジング、51は基部、53はシャフト、57は導電部材、59は受電電極、60はアース電極、63はヘッドカバーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定設備側に、外部電源に接続された複数の給電電極を有する給電部を設けると共に、移動ロボット側に、複数の受電電極を有した受電部を設け、前記移動ロボットを前記固定設備の前に停止させた状態で、前記受電電極を前記給電電極に接続して前記外部電源から前記移動ロボット側に給電する移動ロボットの外部電源接続装置において、
前記受電部は、前記受電電極の外、前記受電電極を前記給電部に対して接近する前進方向および離反する後退方向に移動させるための直線駆動装置と、揺動支持用シャフトと、絶縁ハウジングと、位置保持用圧縮コイルばねと、接触圧付与用ばね部材と、ヘッドカバーと、間隔保持用ばね部材と、電極カバーを備え、
前記揺動支持用シャフトは、前記直線駆動装置に、上下に指向するように固定され、
前記絶縁ハウジングは、前記揺動支持用シャフトの上下両側によって左右方向に揺動可能に且つ上下方向に移動可能に支持され、
前記位置保持用圧縮コイルばねは、前記揺動支持用シャフトに、前記直線駆動装置への固定部分と前記絶縁ハウジングの上側の支持部分との間に位置するように巻装されて前記絶縁ハウジングを上下方向の移動可能範囲のほぼ中央位置に保持し、
前記受電電極は、前記絶縁ハウジングに上下方向に並べて移動可能に配置され、前記給電部と接触する側とは反対側に設けられた前記接触圧付与用ばね部材によって常には前記給電部と接触する側が前記絶縁ハウジングから露出した状態に保持され、
前記ヘッドカバーは、前記絶縁ハウジングに、当該絶縁ハウジングの前記揺動支持用シャフトに支持された側とは反対側の面を覆うように移動可能に接続され、前記絶縁ハウジングとの間に設けられた前記間隔保持用ばね部材によって常には前記絶縁ハウジングの前記揺動支持用シャフトに支持された側とは反対側の面から露出する前記受電電極を覆う位置に保持され、前記直線駆動装置の前進方向の移動時に前記給電部に当接して停止することにより前記受電電極の前記絶縁ハウジングから露出する部分を当該ヘッドカバーに形成された孔から外部に露出させるように構成され、
前記電極カバーは、前記ヘッドカバーに当該ヘッドカバーの周囲を覆うように取り付けられ、前記直線駆動装置の前進方向に向って開放し、且つ当該開放先端に向かって拡開する形状に形成され、
前記受電部に対する前記給電部は、前記給電電極の外、穴部と、突出部を備え、
前記給電電極は、上下方向に並んで前記穴部の中に配置され、
前記突出部は、前記給電電極を内部に配置した前記穴の上下に一対となるように配置され、当該突出部の互いに対向する面は、先端に向かって対向間隔が拡がる形状に形成され、
前記受電電極が前記給電電極に接続されたとき、前記一対の突出部の内側に、当該一対の突出部の対向面に前記受電部の前記ヘッドカバーが当接した状態に位置され、且つ、前記一対の突出部が前記受電部の前記電極カバー内に収容される
ことを特徴とする移動ロボットの外部電源接続装置。
【請求項2】
前記外部電源は交流電源からなり、
前記移動ロボットは、充電可能な高圧電池で構成されたバッテリ、前記交流電源を整流して前記バッテリを充電する充電器を搭載していることを特徴とする請求項1記載の移動ロボットの外部電源接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−26775(P2009−26775A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284014(P2008−284014)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願2000−349599(P2000−349599)の分割
【原出願日】平成12年11月16日(2000.11.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】