説明

移動体の速度に応じてゲーム内経過時間を調整するゲーム機

【課題】車の速度が上がっていない場合、ゲーム内での時間経過を速めることにより、通常のゲーム速度より速く進行させ、画面内での自車の体感速度を向上させることができるレースゲーム機を提供する。
【解決手段】レースゲーム中、車速検出部12bはプレイヤが運転する車の速度を検出している。間引き率決定部12cは検出された速度により車速−画像のフレームの間引き率テーブルにより、背景となる画像の間引き率を決定し、ゲーム制御部12aはこの間引き率にしたがって画像のフレームを間引き、画像処理部16を介して画像表示部7にゲームの背景画面を表示させる。このような処理を繰り返すことにより、車速が遅いときでもプレイヤはスピード感を感じることができ、爽快感のあるプレイをすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビゲームにおいて自車の速度に応じてゲーム内の経過速度を変化させるようにしたゲーム機に関する。
【背景技術】
【0002】
レースゲーム機がゲームセンタなどに設置され、多くのプレイヤがレースゲームを楽しんでいる。
レースゲームをする場合、プレイヤはゲーム機前のシートに座り、アクセル,ブレーキ,シフトレバーなどを操作しハンドルを操ることにより選択したコース,車で、コンピュータ車や他のゲーム機の車との間でレースを行うものである。また、選択したコースについてラップタイムの記録更新するためタイムアタックレースなども行うことができる。
【0003】
レースゲームでは高速に車が走るため、背景画は車の速度に応じた流れとなる。
画面上にリアリティを増す特殊効果を提供するものとしてゲーム装置(参考文献1)が提案されている。これは、画像処理において複数のテクスチャを用意し、その内の少なくとも1つの第1テクスチャに移動体が停止あるいは低速状態にある背景画像を与え、残りの少なくとも一つの第2テクスチャに移動体が低速以上の走行状態にあるときの背景画像を与えることにより、車両の走行の速度に応じた背景の動きが表現しておらず、実際に車が走行しているときの動きが自然に表現できないという従来の問題を解決している。
【特許文献1】特開2005−108257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レース中にカーブなどに差しかかり、ハンドル操作やブレーキングなどを誤ってしまったため、道路脇の壁などに衝突して停止してしまう場合がある。プレイヤは0kmから車を再度発進することとなり、元の速度以上に速度を上げるには時間がかかる。
このような状況において、ゲーム機は車の速度が増加しても、図7に示すようにゲームの時間の経過速度を変えないように構成されている。即ち、車の速度がどのような速度に変化してもゲームが流れる経過速度は一定である。そのため、図8に示すように車の速度に一定の比例関係で画面が流れ、ゲーム内でのプレイヤが感じる体感速度は常に車の速度に比例した感じとなる。
【0005】
そのため、車の速度が十分上がらないとき、プレイヤは車の速度にあった十分な爽快感を得ることができない。
本発明の目的は、移動体の速度が上がっていない場合、ゲーム内での時間経過を速めることにより、通常のゲーム速度より速く進行させ、画面内での移動体の体感速度を向上させることができるゲーム機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、プレイヤが操作部を操作することにより移動体の速度を増減させながら所定のコース上において移動体を進行させる移動体運転ゲーム機において、移動体の速度に対し、ゲーム画面の背景となる画像フレームを間引く割合を示す移動体速度対間引き率テーブルを記憶する記憶部と、プレイヤが前記操作部を操作をすることにより加速または減速させられる移動体の速度を検知する移動体速度検出手段と、前記移動体速度対間引き率テーブルを参照し、前記移動体速度検出手段で検出された移動体の速度に対する画像フレームの間引き率を読み出す間引き率決定手段とを備え、制御手段は、移動体の速度が所定の速度より小さい場合、画像のフレームの間引きを行い、移動体の速度が所定の速度以上の場合、画像のフレームの間引きを停止して画像表示を行うことを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記制御手段は、移動体の速度が大きくなるに従って間引き率を小さくなるように前記画像のフレームの間引き制御を行うことを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1または2記載の発明において前記制御手段は、移動体の速度が停止状態から発進する場合、第1の車速に至るまでは画像のフレームの間引き率を増加させることを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1,2または3記載の発明において前記移動体は車であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、0kmから車を元の速度以上までに立ち上げる過程において、プレイヤは従来に比較し、より速い体感スピードを得ることができ、爽快感のあるプレイを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるゲーム機の外観を示す概略図であり、自動車レースゲーム機の例を示すものである。
レースゲーム機1の正面に画像表示部7が、座席の前にはハンドル4,シフトレバー5がそれぞれ設置されている。さらに下部にはアクセルペダル6,ブレーキペダル8が設けられている。レースゲーム機1にはコイン投入部2が配置されている。座席前部の左右および後部の左右には合計で4個のスピーカ3が設置されている。
ゲーム中、図6に示すようにレース画面の左下にプレイヤの車が走るコースの一部のマップが、右下にタコメータ,速度計などが表示れ、コース上を自車が画面奥に進行する画像が表示される。
【0009】
アクセルを踏むと、自車の速度が加速され、背景画面となるコースの絵は後ろに流れる画像となるが、例えば、レース中に壁などに激突し、再度、停止状態から発進する場合、車の速度が所定の速度(例えば、100km)に上がるまで、発進直後は背景画面となる画像は大きく間引きされて表示され、加速するにしたがって徐々に間引き率は小さくなって画面表示がなされ、車が所定の速度以上になったときには画面を間引きすることなく表示される。車が所定の速度以上では車の速度と画面の流れる速度は1対1の比例関係で推移することとなる。
【0010】
図2は、本発明によるゲーム機の回路の実施の形態を示すブロック図である。
コイン投入部2はコイン関連装置13に接続され、コイン関連装置13に投入したコインが収容され、そのデータが入出力制御装置14に送られる。操作部11はアクセルペダル,シフトレバー,ブレーキペダル,ハンドルなどを含んでおり、これら情報は入出力制御装置14に送られる。さらに決定ボタンなどがあり、その操作情報は同様に入出力制御装置14に送られる。入出力制御装置14は受信したデータをバス15を介してCPU12に送出する。ROM18にはゲーム機の制御プログラム,レースゲームプログラムおよび必要なデータが格納されている。さらに車速対画像フレーム間引き率テーブルが格納されている。RAM19はCPU12が演算,処理を行うときに作業エリアとして用いられる。RAM19は、またレースの履歴データ(走行中のフレーム毎のハンドル,アクセル,ブレーキ状態,位置,速度等)やHDDから読み込んだデータ(各コースのラインデータテーブル,コースデータなど)を一時的に保持する。
【0011】
サウンド処理部17ではCPU12からの指示により、BGMなどの音楽信号の出力処理がなされ、デモ時やゲーム中にスピーカから音楽などが流れる。
CPU12はROM18から読み込まれた制御プログラムにしたがってゲーム機全体を制御するとともにレースゲームを実行処理するゲーム制御部12a,自車の速度を検出する車速検出部12bおよび自車の速度に応じて画像のフレームの間引き率を得、間引きすべきフレームの数を決定する間引き率決定部12cの各機能を備えている。
【0012】
HDD20にはゲームデータとして、各種コース、例えばコースA〜Nを生成するためのコース素材データなどが格納されている。また、ラインテーブルが格納されており、該ラインテーブルは各コースに対し、一定の距離(例えば1mごと)ごとにステップに区分けし、コース全体の各ステップ(位置)に対し走行すべき速度を記録したものである。
【0013】
つぎに、図3,図4および図5を用いて自車が低速の状態でも十分な車の体感速度を感じるようにするためのゲーム機の処理を説明する。
図3は車の速度とゲーム機の経過速度の関係を示す図である。車が所定速度以上、例えば100km以上ではゲーム機の経過速度は実際の時間経過と同じとし、100km以下では自車の速度が遅いほど、ゲームの経過速度を速くするような処理をしている。これは具体的には自車の速度が100km以上であれば、ゲームが経過する1秒は実際の1秒と同じになるようにするが、自車の速度が遅いほど、ゲームが経過する時間は実際の1秒より短くなるように画面表示を制御するため、1秒当たりの背景画面のフレームを間引く処理を行う。
【0014】
図4はこのように処理したときの自車の速度に対するプレイヤがゲーム内で感じる車の体感速度の程度をグラフで示したものである。自車の速度が低速程、通常プレイヤがその車速で感じる体感速度より大きくなるような体感速度となっている。
なお、自車の速度が第1の速度のときになるまで、通常プレイヤがその車速で感じる体感速度に対し、加えられる体感速度の比は増加するようにしてある。第1の速度になったとき、その速度で通常感じる体感速度に対し、加えられる体感速度の比b/aが最大となり、第1の速度から所定の速度になるまで加えられる体感速度の比は小さくなって、所定の速度以上では通常その速度で感ずる体感速度となる。
【0015】
図5は車の速度に対する、ゲーム内の車の体感速度,間引くフレームの割合およびゲーム時間の経過速度の具体例を説明するための図である。
表1の上段と中段は自車の速度が0,20,40・・・140kmに達したときの、ゲーム内の車の体感速度であり、自車の速度20kmに対し、ゲーム画面内でのプレイヤが感じる体感速度は35kmであり、通常プレイヤが感じる体感速度に15km増(75%増加)の体感速度が加えられている。また自車の速度40kmに対し、体感速度は60kmであり、通常プレイヤが感じる体感速度に20km増(50%増加)の体感速度が加えられている。自車の速度60kmに対し、体感速度は72kmであり、通常プレイヤが感じる体感速度に12km増(20%増加)の体感速度が加えられている。自車の速度80kmに対し、体感速度は88kmであり、通常プレイヤが感じる体感速度に8km増(10%増加)の体感速度が加えられている。自車の速度100kmに対し、体感速度は100kmであり、自車の速度と通常プレイヤが感じる体感速度とは一致し、これより速い自車の体感速度はその速度相応の体感速度を感じるようになっている。
【0016】
また表1の上段と下段は中段のように体感速度を感じさせるために自車の速度が0,20,40・・・140kmに達したときの、表示すべき画像のフレームの間引く割合を示したもので、自車の各速度に対し43%,33.3%,16.7%,9.1%,0%,0%,0%のフレームを間引く割合を示している。第1の速度までは43%と急速に立ち上げているが、以後の所定の速度までは少しずつ間引く割合を減少させている。所定の速度以上では画像のフレームは間引いておらず、実時間とゲームの経過時間とは同じとなる。
グラフ1の第1の速度から所定の速度までを注目すると、画像の間引く率に対し、ほぼ比例してゲームの経過速度は小さくなっており、体感速度については体感速度増加分は少しずつ減少させた状態となっている。
【0017】
図2および図6を用いて上記のようにゲーム機が処理する流れを説明する。
以後の説明は実際にゲームが進行して車が何らかの理由で停止し、そこから再度走り始め、所定の速度以上に達するまでの処理である。
ゲーム制御部12aはアクセルペダルが踏まれて、加速する信号を入出力制御装置14を介して受けると、アクセルペダルの踏み込む速度に対応して図6に表示されている自車29を発進させる。このとき、ゲーム制御部12a,車速検出部12bおよび間引き率決定部12cはつぎのように動作する。車速検出部12bは画面上で走る車の速度を検出する。車速の検出方法は、現在の車の速度において、アクセルペダルが踏まれる量から、加速度を算出し、加速度分を現在の車速度に加えて算出する。
【0018】
間引き率決定部12cは、得られた自車の速度に対し、既にRAM19に読み出してある表から、間引く画像のフレームの割合を得る。ゲーム制御部12aは得た間引き率より実際にフレームを間引き、画像表示部7に表示すべき画像フレームを算出する。例えば、間引く割合が43%であれば、1秒で60フレームを表示するゲーム機では、間引くフレームの数は24フレームであり、1つおきと、2つおきに等分に24フレームを間引き、、表示すべき残りのフレーム36個分を決定する。
ゲーム制御部12aは画像処理部16に対し、上記フレーム36個分を表示すべき指示を出し、これに従って画像処理部16は処理を行って画像表示部7に表示する。
このようにして車速を検出しつつ間引くフレームの割合をテーブルを参照することにより、画像表示部に画像のフレーム間引き分を反映させて表示する。
【0019】
以上によりプレイヤは、車速が遅い場合でも、ゲーム内での車の体感速度を大きく感じることができ、従来に比較し一層の爽快感を得ることができる。なお、ゲーム内での時間の経過速度を変更するものであるので、タイムアタック等を行う場合でもシステムが破綻することはない。
この実施の形態は、車速−画像のフレームの間引き率のテーブルの車速を20km間隔で画像のフレームの間引き率を示しているが、連続的に車速を変化させて間引き率を得ることもできる。予め車速−画像のフレームの間引き率のテーブルを用意するものであるが、このような表をCPUが演算して得ることも可能である。
また、移動体として車のレースゲーム機の例を説明したが、移動体は、モータボート,飛行機などその他の乗り物についても適用でき、同じ効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
ゲームセンタやイベント会場などに設置されるレースゲーム機である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるゲーム機の外観を示す概略図である。
【図2】本発明によるゲーム機の回路の実施の形態を示す回路図である。
【図3】本発明における、車の速度対ゲーム時間の経過速度の関係を示すグラフである。
【図4】本発明における、車の速度対ゲーム内の車の体感速度の関係を示すグラフである。
【図5】車の速度に対する、ゲーム内の車の体感速度,間引くフレームの割合およびゲーム時間の経過速度の具体例を説明するための図である。
【図6】車を運転してタイムアタックレースを行っているゲーム画面の一例を示す図である。
【図7】従来の車の速度対ゲーム時間の経過速度の関係を示すグラフである。
【図8】従来の車の速度対ゲーム内の車の体感速度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 レースゲーム機
2 コイン投入部
3 スピーカ
4 ハンドル
5 シフトレバー
6 アクセルペダル
7 画像表示部
8 ブレーキペダル
9 シート
10 決定ボタン
11 操作部
12 CPU
13 コイン関連装置
14 入出力制御装置
15 バス
16 画像処理部
17 サウンド処理部
18 ROM
19 RAM
20 HDD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイヤが操作部を操作することにより移動体の速度を増減させながら所定のコース上において移動体を進行させる移動体運転ゲーム機において、
移動体の速度に対し、ゲーム画面の背景となる画像フレームを間引く割合を示す移動体速度対間引き率テーブルを記憶する記憶部と、
プレイヤが前記操作部を操作をすることにより加速または減速させられる移動体の速度を検知する移動体速度検出手段と、
前記移動体速度対間引き率テーブルを参照し、前記移動体速度検出手段で検出された移動体の速度に対する画像フレームの間引き率を読み出す間引き率決定手段とを備え、
制御手段は、移動体の速度が所定の速度より小さい場合、画像のフレームの間引きを行い、
移動体の速度が所定の速度以上の場合、画像のフレームの間引きを停止して画像表示を行うことを特徴とする移動体の速度に応じてゲーム内経過時間を調整するゲーム機。
【請求項2】
前記制御手段は、移動体の速度が大きくなるに従って間引き率を小さくなるように前記画像のフレームの間引き制御を行うことを特徴とする請求項1記載の移動体の速度に応じてゲーム内経過時間を調整するゲーム機。
【請求項3】
前記制御手段は、移動体の速度が停止状態から発進する場合、第1の車速に至るまでは画像のフレームの間引き率を増加させることを特徴とする請求項1または2記載の移動体の速度に応じてゲーム内経過時間を調整するゲーム機。
【請求項4】
前記移動体は車であることを特徴とする請求項1,2または3記載の移動体の速度に応じてゲーム内経過時間を調整するゲーム機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−237326(P2008−237326A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79212(P2007−79212)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(306019111)株式会社タイトー (475)
【Fターム(参考)】