説明

移動体通信システム、端末装置、通信制御装置、及び機能解除方法

【課題】 移動体通信システムにおいて、接続可能な通信網を制限する機能の不正な解除を防止する。
【解決手段】 利用者は、移動端末10に対し、UIMロック解除の操作を開始し、UIMロック解除コードを入力する。移動端末10の制御部は、入力されたUIMロック解除コード及びUIMロック解除に必要な情報を基に演算を実行し、その演算結果が特定の条件を満たすと判定された場合、移動端末10は、通信制御装置40にUIMロック解除要求メッセージを送信する(T1)。通信制御装置40は、移動端末10から送信されたUIMロック解除要求メッセージに含まれる移動端末の端末識別番号(IMEI)を基に、UIMロック解除の可否を判定し(T2)、この判定の結果を基に、UIMロック解除判定応答メッセージを移動端末10に送信する(T3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者識別モジュールを用いて端末装置の接続可能な通信網を特定の通信事業者の通信網に制限する移動体通信システム、端末装置、通信制御装置及びその移動体通信システムの機能解除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル携帯電話に用いられる無線通信方式であるGSM(Global System for Mobile Communications)やWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)では、加入者識別モジュールを用いる方式に準拠した移動端末が使用される。加入者識別モジュールとしては、GSM用にはSIM(Subscriber Identity Module)、WCDMA用にはUSIM(Universal Subscriber Identity Module)が用いられる。このような移動端末を対象としてサービスを提供する通信事業者は、加入者識別モジュールによって端末利用者と回線のみ提供する事業形態に加え、自らが販売する移動端末に対し、接続網を限定するためのUIM(User Identity Module)ロックを施し、加入者端末が特定の事業者網のみ接続可能となるように制限を加え、UIMロックによる接続制限を設けない場合と比較して低廉な価格で加入者に移動端末を提供する事業形態も採用している。
【0003】
従来、加入識別モジュールの認証を行う移動体通信システムが知られている(特許文献1参照)。この移動体通信システムでは、通信システムは、定期的に、現在システムを使用することが許可されている移動機に対し、自身の正当性を証明することを要請するチャレンジインテロゲーションメッセージを送る。移動機は、通信システムと移動機のUSIMによってのみ知られている情報に基づいて認証応答を計算し、この認証応答を通信システムに送る。通信システムも独自に認証応答を計算し、移動機から受信した認証応答と比較する。これら2つの認証応答が等しい場合、移動機は本物であると確認され、等しくない場合、通信システムへのアクセスが認められない。
【0004】
また、加入者識別モジュールの無断使用を防止する移動体通信システムが知られている(特許文献2参照)。この移動体通信システムでは、加入者のパーソナル識別番号(PIN)を移動装置のユーザに要求し、ユーザが入力したパーソナル識別番号の有効性をチェックする。ユーザが有効なパーソナル識別番号を入力しなかった場合、これらの段階を繰り返し、識別番号の要求及びチェックの回数が所定のスレッシュホールド値を越えたとき、移動装置をブロックする。
【0005】
また、無線端末に挿入されるSIMカードから読み取られた第1情報、及び読取装置を介してスマートカードから読み取られた第2情報が正しい場合、スマートカード及びSIMカードを併用する動作を実行可能である無線端末も知られている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−84276号公報
【特許文献2】特開平9−182154号公報
【特許文献3】特開2002−42066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の移動体通信システムでは、通信事業者によって移動端末に施された既存のUIMロックを解除する手続きは、移動端末内の記憶装置に書き込まれた情報を用い、移動端末内部の閉じた手続きとして実行される。このため、通信事業者が移動端末内部の不正な解除手続きを直接的に検知することは不可能であった。
【0008】
特に、近年では、通信事業者の了承を得ることなく不正にUIMロックを解除する事例が増加している。UIMロックが不正に解除された移動端末は、サービス料金体系の異なる他の通信事業者の加入者識別モジュール(SIM/USIMカード)が挿入されると、他の通信事業者網にも接続可能となる。したがって、本来、UIMロックによって移動端末の接続網を限定している通信事業者が加入者から課金収入を得られなくなるという事態が発生している。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続きを、通信事業者が直接的に検知することができ、不正な利用を防止することができる移動体通信システム、端末装置、通信制御装置及び機能解除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の移動体通信システムは、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と、この端末装置と前記通信網を介して接続される通信制御装置とを有する移動体通信システムであって、前記端末装置において、前記機能の解除操作が行われた場合、前記機能の解除要求を前記通信制御装置に送信する解除要求手段と、前記通信制御装置からの判定通知に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行手段とを備え、前記通信制御装置において、前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録手段と、前記端末装置から前記機能の解除要求とともに送信された該端末装置の識別情報、及び前記許可登録手段に登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定手段と、前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知手段とを備えるものである。
これにより、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続き(不正なUIMロック解除等)を、通信事業者が直接的に検知することができるので、不正な機能解除を防止し、不正な利用を防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記の移動体通信システムであって、前記判定手段による判定の結果に基づき、前記機能の解除が許可されていない端末装置からの前記機能の解除要求である場合、この端末装置の識別情報を前記機能の不正な解除要求を行った端末装置の識別情報として登録する不正登録手段と、前記不正な解除要求を行った端末装置に対し、前記機能の解除要求を拒否する解除要求拒否手段とを備えるものとする。
これにより、次回、同一の端末装置が不正な機能の解除要求を行った場合、即座にその解除要求を拒否することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、上記の移動体通信システムであって、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網に通知する不正端末通知手段を備えるものとする。
これにより、不正な機能の解除要求を行った端末装置に関する情報を、他の通信事業者と共有することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、上記の移動体通信システムであって、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網から、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を受信する不正端末受信手段を備え、前記不正登録手段は、前記受信した端末装置の識別情報を登録するものとする。
これにより、不正な解除要求を行った端末装置に関する情報を、他の通信事業者と共有することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記の移動体通信システムであって、前記判定手段は、前記解除要求を行った端末装置が前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置でない場合に、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置である場合には前記正規に機能の解除を許可された端末装置であると判定するものとする。
これにより、不正な機能の解除を要求する端末装置を確実に排除することが可能となる。
【0015】
本発明の端末装置は、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する移動体通信システムの端末装置であって、前記機能の解除操作を受け付けるか否かを判定する解除操作受付判定手段と、前記機能の解除操作が受け付けられた場合、前記通信網に接続された通信制御装置に対し、前記機能の解除を要求する解除要求手段と、前記通信制御装置から通知される前記機能の解除要求に対する判定の結果を受信する判定結果受信手段と、前記判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行手段とを備えるものである。
これにより、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続き(不正なUIMロック解除等)があった場合に、端末装置内部の処理によって、不正な機能が解除されることを防止し、不正な利用を防止することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、上記の端末装置であって、前記判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が拒否された場合、前記機能の解除を実行することなく、不正な解除要求である旨を報知する不正解除報知手段を備えるものとする。
これにより、不正な解除要求であることを、利用者に認識させることができる。
【0017】
本発明の通信制御装置は、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と前記通信網を介して接続される移動体通信システムの通信制御装置であって、前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録手段と、前記端末装置から通知される前記機能の解除要求を受信する解除要求受信手段と、前記端末装置から前記機能の解除要求とともに受信した該端末装置の識別情報、及び前記許可登録手段に登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定手段と、前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知手段とを備えるものである。
これにより、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続き(不正なUIMロック解除等)を、通信事業者が直接的に検知することができるので、不正な機能解除を防止し、不正な利用を防止することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、上記の通信制御装置であって、前記判定手段による判定の結果に基づき、前記機能の解除が許可されていない端末装置からの前記機能の解除要求である場合、この端末装置の識別情報を前記機能の不正な解除要求を行った端末装置の識別情報として登録する不正登録手段と、前記不正な解除要求を行った端末装置に対し、前記機能の解除要求を拒否する解除要求拒否手段とを備えるものとする。
これにより、次回、同一の端末装置が不正な機能の解除要求を行った場合、即座にその解除要求を拒否することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、上記の通信制御装置であって、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網に通知する不正端末通知手段を備えるものとする。
これにより、不正な機能の解除要求を行った端末装置に関する情報を、他の通信事業者と共有することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記の通信制御装置であって、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網から、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を受信する不正端末受信手段を備え、前記不正登録手段は、前記受信した端末装置の識別情報を登録するものとする。
これにより、不正な解除要求を行った端末装置に関する情報を、他の通信事業者と共有することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、上記の通信制御装置であって、前記判定手段は、前記解除要求を行った端末装置が前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置でない場合に、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置である場合には前記正規に機能の解除が許可された端末装置であると判定するものとする。
これにより、不正な機能の解除を要求する端末装置を確実に排除することが可能となる。
【0022】
本発明の移動体通信システムの機能解除方法は、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と、この端末装置と前記通信網を介して接続される通信制御装置とを有する移動体通信システムの機能解除方法であって、前記端末装置において、前記機能の解除操作が行われた場合、前記機能の解除要求を前記通信制御装置に送信する解除要求ステップと、前記通信制御装置において、前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録ステップと、前記端末装置から前記機能の解除要求とともに送信された該端末装置の識別情報、及び前記許可登録ステップで登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定ステップと、前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知ステップと、前記端末装置において、前記通知された判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行ステップとを有するものである。
【0023】
また、本発明は、コンピュータに、上記いずれかに記載の移動体通信システムの各手段の機能を実現させるためのプログラムを提供する。
【0024】
また、本発明は、コンピュータに、上記いずれかに記載の端末装置の各手段の機能を実現させるためのプログラムを提供する。
【0025】
また、本発明は、コンピュータに、上記いずれかに記載の通信制御装置の各手段の機能を実現させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続きを、通信事業者が直接的に検知することができ、不正な利用を防止することが可能な移動体通信システム、端末装置、通信制御装置及び機能解除方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本実施形態の移動体通信システムでは、通信事業者によって付加され、接続可能な通信網が当該通信事業者の通信網に制限される機能を有する加入者識別モジュールであるUSIMカードを搭載する携帯端末(移動端末)である端末装置が用いられる。USIMカードには、加入者情報を記録するメモリICが内蔵されている。
【0028】
図1は本発明の実施形態における移動体通信システムの概略的構成を示す図である。この移動体通信システムは、前述したUSIMカードを搭載する複数の移動端末10、この移動端末10との間で無線通信を行う無線アクセスポイント20、種々のサービスを提供する通信事業者の通信事業者網30、この通信事業者網30に接続された通信制御装置40、通信事業者網30に接続された他の通信事業者網50、この他の通信事業者網50に接続された他の通信制御装置60等を有して構成される。
【0029】
図2は本実施形態の移動端末10の構成を示す図である。移動端末10は、本体部71及びこの本体部71のスロット(図示せず)に着脱自在に装着されるUSIMカード85を有して構成される。本体部71には、制御部72、及びこの制御部72に接続される無線通信部73、内部メモリ74、音声処理部75、画像処理部76及びキー操作部78が設けられている。無線通信部73には、アンテナ79が接続されている。音声処理部75には、スピーカ80及びマイク81が接続されている。画像処理部76には、表示部77が接続されている。
【0030】
制御部72は、バスを介して接続されるプロセッサ(CPU)、ROM、RAM等を有して構成され、ROMに格納された各種制御プログラムの実行にしたがって、内部メモリ74や無線通信部73との間でデータの送受信を行ったり、各部を制御し、また、USIMカード85との間で情報の書き込みや読み出しを行う。この制御部72は、解除要求手段、解除実行手段、解除操作受付判定手段、判定結果受信手段、不正解除報知手段の機能を有する。内部メモリ74には、制御部72で実行される制御プログラムやデータが格納される。また、この内部メモリ74には、情報提供サイトなどからダウンロードした画像、音楽、プログラム等のコンテンツデータが記憶される。無線通信部73は、制御部72によって制御され、アンテナ79を介して無線アクセスポイント20と無線通信を行う。音声処理部75はマイク81から入力された音声信号を符号化して制御部72に送出し、また、無線通信部73で受信した音声信号を復号化してスピーカ80から出力する。画像処理部76は、無線通信部73で受信した画像データや、内部メモリ74に記憶された画像データを処理して表示部77に出力する。キー操作部78は、各種キーを有し、電話の発信や着信の他、表示部77に表示される情報のスクロールや選択等を行う。
【0031】
一方、USIMカード85は、内蔵ICとして実現された、制御部86及びメモリ(不揮発性メモリ)87を有して構成されている。メモリ87には、通信事業者から発行され、移動端末10を利用する利用者に関する情報(加入者識別情報)や、UIMロック解除に必要な情報等が記憶されている。このUSIMカード85を本体部71のスロットに装着することにより、制御部86によってメモリ87へのデータの読み出し及び書き込みが行われ、制御部72及び制御部86間の情報(データ)の送受信によって、移動端末10は所定の契約内容で使用可能となる。
【0032】
図3は本実施形態の通信制御装置40の構成を示す図である。通信制御装置40は、汎用の情報処理装置を有して構成されており、各種処理を行うプロセッサ(CPU)101、ROM102、RAM103、ネットワークI/Fコントローラ(NIC)109、ストレージメモリ110、ディスプレイI/F104、I/Oインタフェース106等がバス108を介して接続された構成となっている。ディスプレイI/F104には、ディスプレイ105が接続され、I/Oインタフェース106には、操作部107が接続される。ネットワークI/Fコントローラ(NIC)109は、通信制御装置40及び通信事業者網30間の接続を制御する。ストレージメモリ110は、ハードディスク等の大容量の記憶媒体を有する。CPU101は、ストレージメモリ110に格納された各種の制御プログラムを一旦RAM103にロードした後、これら各種の制御ブログラムを実行する。このCPU101は、判定手段、判定結果通知手段、解除要求拒否手段、不正端末通知手段、不正端末受信手段の機能を有する。
【0033】
また、バス108には、許可リストメモリ111及びブラックリストメモリ112が接続されている。許可リストメモリ111は、許可登録手段の機能を有するもので、後述するように、通信事業者が予めUIMロック解除を許容する移動端末の端末識別番号がリストとして記憶されている。一方、ブラックリストメモリ112は、不正登録手段の機能を有するもので、後述するように、不正にUIMロックが解除された実績のある移動端末の端末識別番号がリストして記憶されている。
【0034】
上記のように構成された移動体通信システムにおけるUIMロックの解除処理を示す。 図4は本実施形態の移動体通信システムにおけるUIMロック解除処理の流れを示すシーケンス図である。始めに、利用者は移動端末に対し、キー入力等によってUIMロック解除の操作を開始し、キー操作部78を介してUIMロック解除コードを入力する。移動端末10内の制御部72は、入力されたUIMロック解除コード、及び端末内部のメモリ87に格納された、UIMロック解除に必要な情報を基に、特定の暗号解除アルゴリズムに従って演算を実行する。従来では、通常のUIMロック解除の手続きでは、この演算結果が特定の条件を満たすと判定された場合、それだけでUIMロックが解除されていた。
【0035】
本実施形態のUIMロック解除の手続きでは、上記演算結果が特定の条件を満たすと判定された場合、その次の手順として、移動端末10は、通信事業者網30を経由して通信制御装置40に、移動端末10のロック解除の可否を問い合わせるためのUIMロック解除要求メッセージを送信する(T1)。このUIMロック解除要求メッセージには、利用者によって入力されたUIMロック解除コード、及び移動端末10の端末識別番号(IMEI:International Mobile Equipment Identity)が含まれている。
【0036】
一方、通信制御装置40は、通信事業者が予めUIMロック解除を許容する移動端末の端末識別番号(IMEI)のリスト(以下、許可リストという)、及び他の通信事業者網50から受信した、不正にUIMロックが解除された実績のある移動端末の端末識別番号(IMEI)のリスト(以下、ブラックリストという)を管理している。この許可リストには、UIMロック解除が容認された移動端末の端末識別番号(IMEI)が登録されている。通信制御装置40は、後述するように、移動端末10から送信されたUIMロック解除要求メッセージに含まれる移動端末の端末識別番号(IMEI)を基に、UIMロック解除の可否を判定し(T2)、この判定の結果を基に、UIMロック解除判定応答メッセージを移動端末10に送信する(T3)。
【0037】
また、通信制御装置40は、他の通信事業者網50に接続された他の通信制御装置60からブラックリストを受信する(T4)ことによって、他の通信制御装置60との間でブラックリストを定期的に交換し、ブラックリストの情報を更新する。そして、自身の通信事業者網でUIMロックの不正解除が検出された場合、直ちにこの移動端末の端末識別番号(IMEI)をブラックリストに登録すると同時に、他の通信事業者網50に接続された他の通信制御装置60にも通知する(T5)。
【0038】
図5は本実施形態の通信制御装置40におけるUIMロック解除処理手順を示すフローチャートである。この処理ブログラムは、ストレージメモリ110に格納されており、CPU101によって一旦RAM103にロードされた後、所定周期毎に実行される。まず、NIC109を介して移動端末10からUIMロック解除要求メッセージを受信したか否かを判別する(ステップS1)。UIMロック解除要求メッセージを受信していない場合、そのまま本処理を終了する。一方、UIMロック解除要求メッセージを受信した場合、受信したUIMロック解除要求メッセージに含まれる移動端末の端末識別番号(IMEI)を解析し(ステップS2)、解析された端末識別番号(IMEI)と、ブラックリスト中の端末識別番号(IMEI)とを照合し、ブラックリストに登録されているか否かを判別する(ステップS3)。
【0039】
照合の結果、移動端末10の端末識別番号(IMEI)がブラックリストに登録されている場合、通信制御装置40は、この要求を不正なUIMロック解除要求である判定し、移動端末10にUIMロック解除要求を拒否する旨のメッセージを応答する(ステップS6)。この後、本処理を終了する。一方、移動端末10の端末識別番号(IMEI)がブラックリストに含まれるいずれの端末識別番号(IMEI)とも一致しない場合、通信制御装置40は、許可リスト中の各端末識別番号(IMEI)と移動端末10の端末識別番号(IMEI)とを照合し、移動端末10の端末識別番号が許可リストに登録されているか否かを判別する(ステップS4)。照合の結果、移動端末10の端末識別番号(IMEI)が許可リスト中の端末識別番号(IMEI)と一致する場合、通信制御装置40は、移動端末10が正規の手続きを経てUIMロック解除を要求しているものと判定し、移動端末10にUIMロック解除を許可する旨のメッセージを返信する(ステップS5)。この後、本処理を終了する。
【0040】
一方、ステップS4で移動端末10の端末識別番号(IMEI)が許可リスト中の端末識別番号(IMEI)のいずれとも一致しなかった場合、通信制御装置40は、移動端末10の利用者が不正な手続きを経てUIMロックを解除しようとしているものと判定し、この移動端末10の端末識別番号(IMEI)をブラックリストに登録し(ステップS7)、その後、ステップS6で、このUIMロック解除の要求を拒否する旨のメッセージを移動端末10に返信する。この後、本処理を終了する。なお、前述したように、通信制御装置40は、不正解除手続きを検知すると、処理T5において、この移動端末の端末識別番号(IMEI)を、定期的にあるいは不正解除手続きを検出したステップS7の処理中に、他の通信事業者の他の通信制御装置60に通知することが可能である。
【0041】
図6は本実施形態の移動端末10におけるUIMロック解除処理手順を示すフローチャートである。この処理プログラムは制御部72内のROM(図示せず)に格納されており、制御部72内のCPU(図示せず)によって所定周期毎に実行される。まず、利用者によってキー操作部78を介してUIMロック解除の操作開始が指示されたか否かを判別する(ステップS21)。操作開始が指示されていない場合、そのまま本処理を終了する。
【0042】
一方、UIMロック解除の操作開始が指示された場合、キー操作部78を介して利用者からのUIMロック解除コードの入力を受け付ける(ステップS22)。制御部72は、USIMカード85内の制御部86とデータの送受信を行い、入力されたUIMロック解除コード、及びUSIMカード85内のメモリ87に格納された特定の情報を基に、特定の暗号解除アルゴリズムにしたがって、演算を実行する(ステップS23)。そして、この演算結果が予め決められた特定の条件を満足するか否かを判別する(ステップS24)。特定の条件を満足しない場合、そのまま本処理を終了する。一方、演算結果が特定の条件を満足する場合、UIMロック解除要求メッセージを、無線通信部73及びアンテナ79を介して通信制御装置40に送信する(ステップS25)。
【0043】
この後、通信制御装置40からUIMロック解除判定応答メッセージを受信するまで待機する(ステップS26)。UIMロック解除判定応答メッセージを受信すると、その判定の結果、UIMロック解除要求が許容されたか否かを判別する(ステップS27)。UIMロック解除要求が許容された場合、UIMロック解除を実行し(ステップS28)、本処理を終了する。一方、UIMロック解除が不許可である場合、表示部72に不正なUIMロック解除である旨を表示し(ステップS29)、本処理を終了する。
【0044】
このように、本実施形態の移動体通信システムによれば、UIMロック解除の手続きに、必ず通信事業者網30の通信制御装置40が介在するので、通信事業者側では、通信制御装置40においてUIMロックを不正に解除しようとする移動端末10を検知することができる。これにより、UIMロックの不正な解除、及び移動端末の不正使用等を防止することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0046】
例えば、通信制御装置は、移動端末毎に、不正なUIMロックの解除要求を行った回数を計数しておき、所定回数に達した場合、UIMロックの解除が行えなくなったり、ペナルティを課すようにしてもよい。また、上記実施形態では、通信制御装置が許可リスト及びブラックリストを蓄積していたが、通信制御装置とは別体のデータベース装置を通信事業者網に接続しておき、通信制御装置がいつでも参照できるようにしてもよい。
【0047】
また、端末装置(移動端末)の方式としては、VGS(登録商標)(Vodafone Global Standard)等の移動体通信サービスにおけるGSM(Global System for Mobile Communication)方式、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式等の移動体通信システムに用いられる端末装置であれば、加入者識別モジュール(例えば、USIMカード)が搭載可能な方式に対応可能なものである限り、特に限定されない。また、端末装置としては、携帯電話機や情報通信端末等が挙げられ、通信機能を有していれば特に限定されない。
【0048】
また、移動端末や通信制御装置内のCPUによって実行される上記制御プログラムは、プログラムコードを記録した記憶媒体を、移動端末や通信制御装置に供給することによって読み出されるようにしてもよい。この場合、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、不揮発性のメモリカード、ROM等が用いられる。また、プログラムコードはネットワークや機器を介してダウンロードされるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能の不正な解除手続きを、通信事業者が直接的に検知することができ、不正な利用を防止することが可能となる効果を有し、加入者識別モジュールを用いて端末装置の接続可能な通信網を特定の通信事業者の通信網に制限する移動体通信システム、端末装置、通信制御装置及びその移動体通信システムの機能解除方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態における移動体通信システムの概略的構成を示す図
【図2】本実施形態の移動端末の構成を示す図
【図3】本実施形態の通信制御装置の構成を示す図
【図4】本実施形態の移動体通信システムにおけるUIMロック解除処理の流れを示すシーケンス図
【図5】本実施形態の通信制御装置におけるUIMロック解除処理手順を示すフローチャート
【図6】本実施形態の移動端末におけるUIMロック解除処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0051】
10 移動端末
30 通信事業者網
40 通信制御装置
72 制御部
73 無線通信部
85 USIMカード
86 制御部
87 メモリ
101 CPU
102 ROM
103 RAM
111 許可リストメモリ
112 ブラックリストメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と、この端末装置と前記通信網を介して接続される通信制御装置とを有する移動体通信システムであって、
前記端末装置において、前記機能の解除操作が行われた場合、前記機能の解除要求を前記通信制御装置に送信する解除要求手段と、
前記通信制御装置からの判定通知に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行手段とを備え、
前記通信制御装置において、前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録手段と、
前記端末装置から前記機能の解除要求とともに送信された該端末装置の識別情報、及び前記許可登録手段に登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知手段とを備える移動体通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の移動体通信システムであって、
前記判定手段による判定の結果に基づき、前記機能の解除が許可されていない端末装置からの前記機能の解除要求である場合、この端末装置の識別情報を前記機能の不正な解除要求を行った端末装置の識別情報として登録する不正登録手段と、
前記不正な解除要求を行った端末装置に対し、前記機能の解除要求を拒否する解除要求拒否手段とを備える移動体通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の移動体通信システムであって、
前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網に通知する不正端末通知手段を備える移動体通信システム。
【請求項4】
請求項2記載の移動体通信システムであって、
前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網から、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を受信する不正端末受信手段を備え、
前記不正登録手段は、前記受信した端末装置の識別情報を登録する移動体通信システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の移動体通信システムであって、
前記判定手段は、前記解除要求を行った端末装置が前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置でない場合に、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置である場合には前記正規に機能の解除を許可された端末装置であると判定する移動体通信システム。
【請求項6】
加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する移動体通信システムの端末装置であって、
前記機能の解除操作を受け付けるか否かを判定する解除操作受付判定手段と、
前記機能の解除操作が受け付けられた場合、前記通信網に接続された通信制御装置に対し、前記機能の解除を要求する解除要求手段と、
前記通信制御装置から通知される前記機能の解除要求に対する判定の結果を受信する判定結果受信手段と、
前記判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行手段とを備える端末装置。
【請求項7】
請求項6記載の端末装置であって、
前記判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が拒否された場合、前記機能の解除を実行することなく、不正な解除要求である旨を報知する不正解除報知手段を備える端末装置。
【請求項8】
加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と前記通信網を介して接続される移動体通信システムの通信制御装置であって、
前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録手段と、
前記端末装置から通知される前記機能の解除要求を受信する解除要求受信手段と、
前記端末装置から前記機能の解除要求とともに受信した該端末装置の識別情報、及び前記許可登録手段に登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知手段とを備える通信制御装置。
【請求項9】
請求項8記載の通信制御装置であって、
前記判定手段による判定の結果に基づき、前記機能の解除が許可されていない端末装置からの前記機能の解除要求である場合、この端末装置の識別情報を前記機能の不正な解除要求を行った端末装置の識別情報として登録する不正登録手段と、
前記不正な解除要求を行った端末装置に対し、前記機能の解除要求を拒否する解除要求拒否手段とを備える通信制御装置。
【請求項10】
請求項9記載の通信制御装置であって、
前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を、前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網に通知する不正端末通知手段を備える通信制御装置。
【請求項11】
請求項9記載の通信制御装置であって、
前記通信網に接続された他の通信事業者の通信網から、前記不正な機能の解除要求を行った端末装置の識別情報を受信する不正端末受信手段を備え、
前記不正登録手段は、前記受信した端末装置の識別情報を登録する通信制御装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の通信制御装置であって、
前記判定手段は、前記解除要求を行った端末装置が前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記不正登録手段に登録された識別情報を有する端末装置でない場合に、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置であるか否かを判別し、前記許可登録手段に登録された識別情報を有する端末装置である場合には前記正規に機能の解除が許可された端末装置であると判定する通信制御装置。
【請求項13】
加入者識別モジュールを用いて接続可能な通信網が特定の通信事業者の通信網に制限される機能を有する端末装置と、この端末装置と前記通信網を介して接続される通信制御装置とを有する移動体通信システムの機能解除方法であって、
前記端末装置において、前記機能の解除操作が行われた場合、前記機能の解除要求を前記通信制御装置に送信する解除要求ステップと、
前記通信制御装置において、前記機能の解除が許可された端末装置の識別情報を登録する許可登録ステップと、
前記端末装置から前記機能の解除要求とともに送信された該端末装置の識別情報、及び前記許可登録ステップで登録された端末装置の識別情報を用いて、前記解除要求を行った端末装置が正規に前記機能の解除が許可された端末装置であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定の結果を前記端末装置に通知する判定結果通知ステップと、
前記端末装置において、前記通知された判定の結果に基づき、前記機能の解除要求が許可された場合、前記機能の解除を実行する解除実行ステップとを有する機能解除方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項1から5のいずれかに記載の移動体通信システムの各手段の機能を実現させるためのプログラム。
【請求項15】
コンピュータに、請求項6または7記載の端末装置の各手段の機能を実現させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、請求項8から12のいずれかに記載の通信制御装置の各手段の機能を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−261918(P2006−261918A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74961(P2005−74961)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】