説明

移動局測位システム

【課題】基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供する。
【解決手段】複数の基地局12が受信する電波に含まれる拡散符号とレプリカ符号との相関値の大きさを予め定められた関係に基づいて算出する相関演算部64と、相関演算部64によって算出された相関値の大きさに基づいて予め記憶された関係から移動局10から各基地局12への無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を各基地局12について算出する相関値誤差変換部68と、誤差関連値に基づいて予め記憶された関係により測位における各基地局12の重みを表す重み行列を決定する重み行列生成部72と、複数の基地局12のそれぞれにおける移動局10から送信される電波の受信結果と重み行列とを用いて、移動局10の位置を算出する測位部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散符号を含む電波を送信する移動局の位置を、該移動局から送信される電波を複数の基地局により受信しその受信結果に基づいて算出(測位)する移動局測位システムに関するものであり、特に、移動局から送信される電波の各基地局における受信結果に基づいて移動局の測位に用いる基地局の重み付けを行なう重み行列を算出し、その重み行列を用いて移動局の測位を行なうことにより測位の精度を向上させることのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知の位置にある無線局と位置が不明な無線局との間で電波の送受信を行い、その受信結果に基づいて前記位置が不明な無線局の位置を算出する技術が近年広く用いられている。例えば、GPS(Global Positioning System)と呼ばれる測位システムがそれである。このGPSにおいては、所定の軌道上を所定の速度で周回する複数の衛星からの電波を移動端末が受信し、その受信結果に基づいてその移動端末の位置が算出される。また、移動可能な移動局送信した電波を既知の位置にある基地局によって受信し、その受信結果に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうことも、原理的には同様の技術によって行なうことができる。
【0003】
このような、電波の受信結果に基づいた測位を行なう場合には、電波の送受信が良好な環境で行なわれることが望ましい。しかしながら、電波の反射が発生し得る環境においては、マルチパスなどにより、直接波と反射波などが干渉することにより受信される信号は干渉波となり通信ひずみが発生する。かかる通信みずみは、例えば、電波の受信時刻の計測に影響し、誤差を発生させることになり、そのため、測位結果における誤差も増大する原因となる。
【0004】
特許文献1には、測距結果と各基準局の位置とから、各測距結果が基準誤差に影響を及ぼしている誤差の量として、各測距結果に関する誤差劣化量を算出し、算出された誤差劣化量に基づいて各評価結果の重み付けを行なう重み付け係数を算出し、算出された重み付け係数などを用いて検出対象局の測位を行なう技術が開示されている。かかる技術によれば、基準局と検出対象局との距離の測定に含まれる誤差を予測し、位置算出に与える影響を制御することができ、位置算出結果に含まれる誤差を低減することができる。
【0005】
また、特許文献2には、概算された測位衛星の仰角と、撮像機により生成された撮像データにより得られる地物の仰角とを比較することにより、測位衛星から到達した電波が直接波であるか反射波であるかを判断することのできる測位装置が開示されている。かかる技術によれば、精度の高い疑似距離を選択して測位をすることができ、マルチパス条件下において測位精度の劣化を防ぐことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−90913号公報
【特許文献2】特開2007−93483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば前記特許文献1および特許文献2に示すように、マルチパスが発生する環境において精度のよい測位を行なうための技術が提案されているが、依然としてその課題が十分には解決されたとはいえない。すなわち、特許文献1に開示の技術によれば、基準局の数が多くなると、誤差劣化量の算出のための演算量が増大するという問題がある。また、特許文献2に開示の技術によれば、撮像データを生成するための撮像機や、画像処理装置などを備える必要が有り、移動局側の機器が大きくなったり、あるいは高コスト化したりするという問題がある。
【0008】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、基地局に応じた重みを設定し、該重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局から送信される拡散符号を含んだ電波を複数の基地局によって受信し、該複数の基地局とデータ通信可能に接続された測位サーバにより、前記複数の基地局において受信した電波の受信結果に基づいて前記移動局の位置の算出を行なう移動局測位システムであって、(b)前記複数の基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記移動局が送信した電波に含まれる拡散符号と同一の予め記憶された拡散符号であるレプリカ符号との規格化相関値の大きさを予め定められた関係に基づいて算出する相関演算部と、(c)前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記複数の基地局のそれぞれについて算出する相関値誤差変換部と、(d)前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記複数の基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定する重み行列生成部と、(e)前記移動局から送信される電波を前記複数の基地局が受信した際の該複数の基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出する測位部とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記複数の基地局は、前記移動局の作動を制御するために該移動局との無線通信を実行可能な複数の制御基地局を含み、(b)該複数の制御基地局のうちから、前記移動局との無線通信が確立された制御基地局を該移動局の作動を制御する選択制御基地局として選択する制御基地局選択部と、(c)予め記憶された前記複数の制御基地局のそれぞれが前記選択制御基地局とされた場合に前記移動局の測位に用いられる基地局である選択基地局とされる基地局の組み合わせに関する情報に基づいて、前記制御基地局選択部により選択された選択制御基地局についての前記選択基地局の組み合わせを選択する基地局選択部と、を有し、(d)前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを予め記憶された関係に基づいて算出し、(e)前記相関値誤差変換部は、前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記選択基地局のそれぞれとの無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、(f)前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、(g)前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出することにある。
【0011】
請求項3にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記複数の基地局のうちから、測位の対象とされた前記移動局からの電波を受信した全ての前記基地局を前記移動局の測位に用いる選択基地局として選択する基地局選択部を有し、(b)前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを予め記憶された関係に基づいて算出し、(c)前記相関値誤差変換部は、前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記選択基地局のそれぞれとの無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、(d)前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、(e)前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出することを特徴とする。
【0012】
請求項4にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記基地局は、前記相関演算部によって算出される規格化相関値のピークを生じた時刻に基づいて電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部を有し、(b)前記測位部は、前記複数の選択基地局のそれぞれの該受信時刻検出部によって検出された受信時刻に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうことを特徴とする。
【0013】
請求項5にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記基地局は、移動局から送信された電波を受信した際の受信強度を検出する受信強度検出部を有し、(b)前記測位部は、前記移動局の測位に用いられる複数の前記基地局のそれぞれの該受信強度検出部によって検出された前記受信強度に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうことにある。
【0014】
好適には、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記基地局は、前記相関値誤差変換部を含んで構成されることにある。
【0015】
また、好適には、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記測位サーバは、前記相関値誤差変換部を含んで構成されることにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記相関演算部により、前記複数の基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記移動局が送信した電波に含まれる拡散符号と同一の予め記憶された拡散符号であるレプリカ符号との規格化相関値の大きさが予め定められた関係に基づいて算出され、前記相関値誤差変換部により、予め算出された規格化相関値の大きさと前記移動局から送信され前記複数の基地局のそれぞれによって受信される拡散符号の無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、前記相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値が前記複数の基地局のそれぞれについて算出され、前記重み行列生成部により、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記複数の基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列が決定され、前記測位部により、前記移動局から送信される電波を前記複数の基地局が受信した際の該複数の基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置が算出されるので、前記移動局から送信される拡散符号を含んだ電波を受信した複数の基地局のそれぞれについての重みを考慮した移動局の位置の算出が行なわれ、該重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することができる。
【0017】
請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記複数の基地局は、前記移動局の作動を制御するために該移動局との無線通信を実行可能な複数の制御基地局を含み、前記制御基地局選択部により、該複数の制御基地局のうちから、前記移動局との無線通信が確立された制御基地局が該移動局の作動を制御する選択制御基地局として選択され、基地局選択部により、前記制御基地局選択部により選択された選択制御基地局についての情報と、予め記憶された前記複数の制御基地局のそれぞれが前記選択制御基地局とされた場合に前記移動局の測位に用いられる基地局である選択基地局とされる基地局の組み合わせに関する情報とに基づいて、前記制御基地局選択部により選択された選択制御基地局についての前記複数の基地局のうちから前記移動局の測位に用いる基地局である前記選択基地局の組み合わせが選択され、前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを予め記憶された関係に基づいて算出し、前記相関値誤差変換部は、予め算出された規格化相関値の大きさと前記移動局から送信され前記選択基地局のそれぞれによって受信される拡散符号の無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出するので、例えば前記移動局との良好な通信を行なうことができるとして、前記基地局を制御するのに適した選択制御基地局と、該選択制御基地局との組み合わせとされた前記選択基地局とのそれぞれについて、前記移動局から送信される拡散符号を含んだ電波を受信した受信結果に基づいて基地局の重みが算出され、移動局の位置の算出が行なわれ、前記移動局との通信誤差が大きい基地局ほど重みが小さくされるので、基地局に応じた重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することができる。
【0018】
請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記基地局選択部により、前記複数の基地局のうちから、測位の対象とされた前記移動局からの電波を受信した全ての前記基地局が前記移動局の測位に用いる選択基地局として選択され、前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを予め記憶された関係に基づいて算出し、前記相関値誤差変換部は、予め算出された規格化相関値の大きさと前記移動局から送信され前記選択基地局のそれぞれによって受信される拡散符号の無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出するので、前記移動局から送信される拡散符号を含んだ電波を受信した全ての基地局のそれぞれについての重みを考慮した移動局の位置の算出が行なわれ、前記移動局との通信誤差が大きい基地局ほど重みが小さくされるので、基地局に応じた重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することができる。
【0019】
請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記基地局は、前記相関演算部によって算出される規格化相関値のピークを生じた時刻に基づいて電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部を有し、前記測位部は、前記複数の選択基地局のそれぞれの該受信時刻検出部によって検出された受信時刻に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうので、前記相関演算部によって演算される前記規格化相関値の変化に基づいて、受信時刻の検出を精度よく行なうことができるとともに、基地局のそれぞれについての重みを考慮した移動局の位置の算出が行なわれ、前記移動局との通信誤差が大きい基地局ほど重みが小さくされるので、基地局に応じた重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することができる。
【0020】
請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記基地局は、移動局から送信された電波を受信した際の受信強度を検出する受信強度検出部を有し、前記測位部は、前記移動局の測位に用いられる複数の前記基地局のそれぞれの該受信強度検出部によって検出された前記受信強度に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうので、比較的容易に検出が可能な電波の受信強度に基づいて移動局の位置の算出を行なうことができるとともに、基地局のそれぞれについての重みを考慮した移動局の位置の算出が行なわれ、前記移動局との通信誤差が大きい基地局ほど重みが小さくされるので、基地局に応じた重みを用いた移動局の位置の算出を行なう場合において、基地局数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局の測位を行なうことのできる移動局測位システムを提供することができる。また、無線LANなどのように、受信強度を検出することが予め前提として設計されている機器を基地局として用いる場合には、測位のための構成を簡略化することができる。
【0021】
請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記基地局は、前記相関値誤差変換部を含んで構成されるので、前記各基地局において、検出された規格化相関値に基づいて前記誤差関連値を算出することができる。
【0022】
請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記測位サーバは、前記相関値誤差変換部を含んで構成されるので、前記測位サーバに各基地局ごとの前記誤差関連値の算出に伴う演算を集約して実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の移動局測位システム6の一例を説明する図である。図1に示す様に、本発明の移動局測位システム6は、予め規定された領域8を移動可能であって、測位のための信号を含む電波を送信可能な移動局10と、その移動局10から送信される電波を受信し所定の受信結果をそれぞれ算出する複数の基地局12と、その複数の基地局12によってそれぞれ算出された受信結果に基づいて前記移動局10の位置を算出する測位サーバ14を含んで構成されている。また、前記複数の基地局12のそれぞれと前記測位サーバ14とは通信ケーブル20を介して情報交換可能に接続されている。なお、本実施例の移動局測位システム6が適用される領域8においては、例えば図1に示す様に座標系が定義され、この領域8における移動局10や基地局12の位置などは例えばこの図1に示す様な共通する座標を用いて表される。
【0025】
なお、図1においては第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dの4つの基地局12(本明細書において第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)が設けられているが、基地局の数は、後述する移動局の測位のために必要な最低数を上回る数であれば、4つに限定されない。前記領域8は基地局12により移動局10の位置を算出(測位)することができる領域でもある。また、図1においては、1つの移動局10が設けられているが、移動局10が送信する測位のための電波が相互に識別可能なものである場合には、移動局10を複数設けることができる。
【0026】
図2は移動局10の有する機能の概要を説明するブロック図である。移動局10は、アンテナ26、移動局無線部22、電子制御装置23などを有して構成される。電子制御装置23は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、後述する移動局制御部24における処理などを実行するようになっている。
【0027】
移動局無線部22は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ26を用いて電波の送受信を行なう。例えば移動局無線部22は、前記基地局12に対し相関値を算出するための拡散符号を含む電波を送信する。また、基地局12より送信される、移動局10の作動に関する指令を含む電波を受信する。移動局無線部22は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有する。さらに、移動局無線部22は、アンテナ26によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。このとき、移動局無線部22が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、移動局無線部22はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0028】
ここで、移動局10の移動局無線部22が送信する電波は、例えば電波に含まれる信号波のヘッダ部分に個々の移動局10を識別するための符号を含める、あるいは個々の移動局10により異なる拡散符号を送信するなど、予め定めた方法により送信される。そのため、その電波を受信した移動局は前記予め定めた方法に従ってその受信した電波を解析することにより、受信した電波が何れの移動局10から送信されたものであるかを識別することができる。
【0029】
また、アンテナ26は、前述の移動局無線部22が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10からの距離が同じ場合にアンテナ26からの距離が同じ基地局12において移動局10からの方向に関わらず電波を受信できるように、アンテナ26は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0030】
移動局制御部24は、前記電子制御装置23により実現されるものであって、移動局無線部22の制御を行なう。具体的には例えば、移動局制御部24は移動局無線部22に対して送信または受信の切り替え、搬送波周波数の設定、送信アンプにおける出力の設定を行なう。これらの制御における設定値の決定は基地局12との通信の結果により、例えば、前記基地局12から送信される指令に基づいて決定される。移動局制御部24はまた、前記基地局12からの移動局10の制御作動に関する指令を、移動局無線部22において受信され、復号された基地局12からの電波の内容を解析することにより得る。また移動局制御部24は、移動局10が電波によって送信する拡散符号を、例えば図示しない記憶手段から記憶された拡散符号を読み出すことにより、あるいは所定の生成方法、例えば予め定められた原始多項式に基づいて生成することにより決定する。
【0031】
図3は、基地局12の有する機能の一例の概要を説明するブロック図である。基地局12は、アンテナ36、基地局無線部32、電子制御装置33、時計40、通信インタフェース42などを含んで構成される。また、電子制御装置33は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、後述する基地局制御部62などにおける処理を実行するようになっている。
【0032】
基地局無線部32は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ36を用いて電波の送受信を行なう。基地局無線部32は、前記移動局10の作動を制御する指令を含む電波を送信する。例えば、移動局10に対し測位のための電波の送信を開始させるための指令を送信する。また、基地局無線部32は、移動局10によって送信される電波を受信し、その内容を必要に応じて後述する相関値演算部64などに渡し処理を実行させる。すなわち、基地局無線部32は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有し、また、アンテナ36によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される。このとき、基地局無線部32が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、基地局無線部32はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0033】
また、基地局無線部32および移動局無線部22は、相互に無線通信を行なうのに先立って、両者の通信の確立を行なう。具体的には例えば、基地局無線部32から移動局無線部22に対し無線による呼びかけ信号の送信を行い、応答可能な移動局10の移動局無線部22はその呼びかけ信号に応答する応答信号を返信する。そして基地局無線部32と移動局無線部22との通信で用いる無線のチャンネル(周波数)や変調方式などを決定するなどの処理を行なう。
【0034】
また、アンテナ36は、前述の基地局無線部32が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、移動局10の位置、すなわち基地局12から見た移動局10の方向に関わらず基地局12からの距離が同じ位置に移動局10が存在する場合には電波を受信できるように、アンテナ36は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0035】
時計40は、時刻を計測するものであって、例えばピーク時刻検出部70が相関値がピークを生じた際の時刻を検出する際などに参照される。各基地局12は各々の時計を有しており、それらの時刻は予め同期されている。
【0036】
通信インタフェース42は、通信ケーブル20により接続された他の基地局12と測位サーバ14などとの情報通信を行なう。具体的には、基地局12のピーク時刻検出部70によって検出される電波の受信時刻や、相関値誤差変換部68によって算出された誤差の標準偏差の値、あるいは移動局10から送信される電波に含まれる情報が基地局12から測位サーバ14に送信されるほか、測位サーバ14から送信される基地局12の作動に関する指令などが受信される。
【0037】
図4は、図3の基地局12の電子制御部33の有する制御機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【0038】
このうち、基地局制御部62は前記基地局無線部32の制御を行なう。具体的には例えば、基地局制御部62は基地局無線部32に対して送信または受信の切り替え、搬送波周波数の設定、送信アンプの出力の設定などを行なう。これらの制御における設定値の決定は後述の測位サーバ14あるいは移動局10との通信の結果により決定される。また基地局制御部62は後述する相関値演算部64、相関値誤差変換部68、ピーク時刻検出部70などの作動を制御する。また基地局制御部62は、基地局無線部32において受信され復号される、移動局10により送信される電波の内容を解析する。同様に基地局制御部62は、前記通信インタフェース42において受信された測位サーバ14からの送信内容を解析し、基地局12の制御作動に関する指令を取り出す。さらに、基地局制御部62は、通信インタフェース42や基地局無線部32を介して、他の機器に対し必要な情報を送信する。
【0039】
相関値演算部64は、移動局10から送信される測位のための電波に含まれる符号と、その拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する。具体的には、予め移動局10が送信する符号と同一のレプリカ符号を相関値演算部64が有しておき、そのレプリカ符号と、受信された移動局10からの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とを公知のマッチドフィルタに入力することにより、両者の相関値を得ることができる。このマッチドフィルタは、例えばビットごとの論理和の合計を算出するものであって、相関値を演算するための予め定められた関係に対応する。ここで、移動局10と基地局12との間で送受信される前記拡散符号がデジタル変調による通信、すなわち、符号が1と−1、あるいは1と0からなるデータからなる場合には、基地局無線部62により受信された符号がそのまま用いられる。一方、移動局10と基地局12との間で送受信される前記拡散符号がアナログ変調による通信である場合には、基地局無線部62により受信された前記拡散符号は予め定められた振幅、例えば前記レプリカ符号と同一の振幅となるように増幅あるいは減衰させられた後に、前記レプリカ符号との相関値の算出が行なわれる。この場合、基地局無線部62により受信された前記拡散符号は予め定められた振幅、例えば前記レプリカ符号と同一の振幅となるように振幅が調整されているので、相関値演算部64によって算出される相関値は規格化された規格化相関値である。なお、以下の記載において、相関値とはこの規格化相関値を含む。
【0040】
ここで相関値演算部64は、基地局無線部32が受信する移動局10からの電波から取り出された信号について、前記レプリカ符号との相関値の算出を所定の間隔(クロック速度)で行なう。前述の様に、移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号は、自己相関が同位相の場合にのみ高くなる性質を有するので、相関値演算部64によって算出される相関値は、基地局無線部32が前記受信符号を受信した場合、すなわち受信符号とレプリカ符号とが同位相となった(同期した)場合にピークを生じる一方、その前後においては低い値となる。この相関値演算部64が相関演算部に対応する。
【0041】
また、ピーク時刻検出部70は、前記相関値演算部64によって算出される前記受信符号とレプリカ符号との相関値がピークを生じた際の時刻が、例えば前記時計40を参照して検出される。前述の様に、前記受信符号とレプリカ符号との相関値がピークを生じた時刻を、前記受信符号を受信した受信時刻であるとして検出する。この受信時刻は、前記受信符号とレプリカ符号とが同期した時刻でもあるので、同期時刻ともいう。このピーク時刻検出部70が受信時刻検出部に対応する。
【0042】
関係記憶部66は、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピーク値の大きさと、そのピーク値の大きさに対応する前記ピーク時刻検出部70において検出される同期時刻の検出における誤差の標準偏差の値が関連付けられて記憶されている。この誤差の標準偏差の値が誤差関連値に対応する。一般に無線通信においては、ジッタ(jitter)、すなわち通信伝送の中で現れる時間ゆらぎが発生する。このジッタは、信号波形の立ち上がり時刻やパケットの到着間隔に現れる。移動局10から送信され、基地局12において受信される前記拡散符号の送受信においてもこのジッタが発生することがありうる。かかる場合においては、基地局12において受信した受信符号がジッタを含むものとなり、移動局10が送信した拡散符号、また前記レプリカ符号と完全に同一の符号とはならないこととなる。この場合、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピークが鋭いものとならない。このため、前記ピーク時刻検出部70によって検出される前記相関値がピークとなった時刻についても、誤差を生ずることとなる。
【0043】
図5は、前述の移動局10から基地局12への拡散符号の送受信にジッタが発生した場合に、ジッタが及ぼす影響を図示したものである。図5において、楕円で囲まれた量(指標)は観測可能な量である一方、四角で囲まれた量(指標)は観測することが不可能な量であることを表わしている。図5に示す様に、ジッタが発生すると、ジッタの大きさと相関値のピーク値とは負の相関、すなわち、ジッタの大きさが大きくなると相関値のピーク値が小さくなる関係がある。一方、ジッタの大きさと同期時刻の検出における誤差(同期時刻検出誤差)とは、正の相関、すなわちジッタの大きさが大きくなると同期時刻検出誤差の大きさも大きくなる関係がある。また、同期時刻検出誤差と後述するTDOA測位部74によって算出される移動局10の位置と真の移動局10の位置との誤差(測位誤差)の大きさとは、正の相関、すなわち、同期時刻検出誤差が大きくなると測位誤差の大きさも大きくなる関係がある。なお、移動局10から基地局12へ送信される拡散符号の長さ(符号長の大きさ)と同期時刻検出誤差とは、負の相関、すなわち符号長の大きさを大きくすると同期時刻検出誤差は小さくなる関係がある。
【0044】
また、図5に示す様に、ジッタの大きさは直接検出することができない一方、相関値のピーク値とは一定の関係を有するので、相関値のピーク値からジッタの大きさを推定することができる。
【0045】
図6は、関係記憶部66に記憶される情報の一例を説明する図である。図6には、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピーク値の大きさと、そのピーク値の大きさに対応するジッタの大きさの値が関連付けられて記憶されている。具体的には、これらの値は発明者が行なったシミュレーションにより、例えば相関値のピーク値の平均が図6の左側の欄に記された値となるように予め規定された回数だけ乱数的にジッタの量が決定され、その決定された前記予め規定された回数のジッタの量のその標準偏差を算出し、図6の右側の欄に記載されることにより得られたものである。
【0046】
相関値誤差変換部68は、関係記憶部66に記憶された情報と、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピーク値についての情報とに基づいて、前記相関値のピーク値に対応する誤差の値を算出する。具体的には、前記関係記憶部66に記憶される相関値のピーク値の大きさのそれぞれに対応するジッタの大きさの値についての情報から、前記相関値演算部64によって算出された相関値のピーク値に対応するジッタの量の標準偏差の大きさの値が読み出される。この相関値誤差変換部68が相関値誤差変換部に対応する。
【0047】
図7は、測位サーバ14の構成の概要を説明する図である。図7に示す様に、測位サーバ14はCPUに対応し、必要な演算処理を行なう電子制御装置48、RAM、ROM、あるいはハードディスクなどに対応し、前記電子制御装置48などの指示に応じて情報を読み出し可能に記憶する記憶装置50、入出力インタフェース52、およびその入出力インタフェース52に接続され、測位サーバ14に対するユーザからの入力操作を受け付けるキーボードやマウスなどの入力装置53、測位サーバ14による作動結果などを表示するためのディスプレイ表示装置などの表示を行なう出力装置54、通信インタフェース46等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことができる。
【0048】
通信インタフェース46は、例えば通信ケーブル20により他の基地局12や他の測位サーバ14、あるいは共有機器16との情報通信を行なう。通信インタフェース48は、例えば測位サーバ14から基地局12に対し、基地局12の制御作動に関する指令や、後述するTDOA測位部74によって算出される移動局10の位置に関する情報を送信し、また、基地局12から送信される情報、例えば基地局12における電波の受信時刻に関する情報を受信する。この基地局12における電波の受信時刻は、移動局10から送信される拡散符号の受信時刻として受信時刻検出部38によって検出される。
【0049】
図8は、測位サーバ14の電子制御装置48が有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。これらの機能は例えば、前記図7の測位サーバ14において所定のプログラムが実行されることにより実現される。このうち、基地局選択部80は、後述するTDOA測位部74において移動局10の測位に用いられる基地局12が選択される。本実施例においては、基地局選択部80は、前記移動局10から送信された拡散符号を含む電波を受信した基地局12、具体的には前記移動局10から送信された拡散符号を含む電波の受信時刻を検出しサーバに送信し、その受信時刻が測位サーバ14において送信された全ての基地局12を測位に用いられる基地局として選択する。この基地局選択部80が基地局選択部に対応する。
【0050】
TDOA測位部74は、4つの基地局12において検出された移動局10からの電波の受信時刻の時間差に基づいて移動局10の位置の算出を行なう(TDOA(Time Difference of Arrival)方式)。移動局の座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表す座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの座標が(xB4,yB4)であるとき、移動局の位置は以下の(1)式により表される。ここで、これらの基地局12や移動局10の座標は、例えば図1に示す様に定義された座標系により表わされる。
(xB1−x)2+(yB1−y)2={c×(Tr1−Ts)}2
(xB2−x)2+(yB2−y)2={c×(Tr2−Ts)}2
(xB3−x)2+(yB3−y)2={c×(Tr3−Ts)}2
(xB4−x)2+(yB4−y)2={c×(Tr4−Ts)}2…(1)
ここで、Tr乃至Tr(sec)はそれぞれ、第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける電波の受信時刻、Tsは移動局10での電波の送信時刻であり、例えば移動局10から基地局12に対し電波により送信され、これを基地局12が受信することにより得られる。すなわち、前記(1)式の各式の右辺における(Tr−Ts)(i=1,2,…)は、移動局10から基地局12iへの電波の伝搬時間を表しており、c×(Tr−Ts)は、移動局10と基地局12iとの距離を表している。(1)式はx、y、Tsを未知数とした連立方程式となる。
【0051】
TDOA測位部74は、具体的には、以下のようにして、移動局10の位置を算出する。まず、前記(1)式よりTsを消去し以下の(2)式を得る。具体的には、前記(1)式を構成するいずれか1つの式(本実施例においては第1式)を選択し、その両辺の平方根をとったものを、前記(1)式の残りの式(本実施例においては第2式乃至第4式)のそれぞれの両辺の平方根をとったものから減ずる。ここで、前記(1)式を構成する各式は、基地局選択部80により選択された基地局12のそれぞれに対応するものであるところ、好適には、前記選択される(1)式を構成するいずれか1つの式は、相関値誤差変換部68によって得られる誤差、すなわちジッタの量の標準偏差の大きさの値がもっとも小さい基地局(以下「基準基地局」という。)に対応する式とされる。すなわち、本実施例においては、第1基地局12Aは、前記ジッタの量の標準偏差の大きさが前記第1基地局12A乃至第4基地局12Dのうちで最も小さい基地局である。
【数1】

ここで、(2)式において、R21は、第2基地局12Bと移動局10との距離と、第1基地局12Aと移動局10との距離との差を表わす。また、同様にR31は、第3基地局12Cと移動局10との距離と、第1基地局12Aと移動局10との距離との差を、R41は、第4基地局12Dと移動局10との距離と、第1基地局12Aと移動局10との距離との差をそれぞれ表わす。
【0052】
図9は、前記(1)式の関係を図示したものである。なお、図9において、基地局12の配置は説明のため図1における基地局12の配置とは異なるものとされている。図9のr乃至rは第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれと移動局10との距離を表しており、前記(1)式の各式の右辺の平方根に対応するものである。すなわち、(1)式の解の算出は、図9における第1基地局12Aを中心とする半径rの円、第2基地局12Bを中心とする半径rの円、第3基地局12Cを中心とする半径rの円、第4基地局12Dを中心とする半径rの円の交点を算出するものである。一方、前記(1)式が前記(2)式のように変形されることにより、(2)式はTsを含まないものとなるので、移動局10での電波の送信時刻を必要とすることなく移動局10の位置の算出を行なうことができ、そのため、移動局10の時計の時刻と各基地局12の時計の時刻との誤差を考慮する必要がなくなる。
【0053】
TDOA測位部74は、この(2)式を解くことにより未知数x、yを得る。この(2)式は例えばニュートン法などの求解法を使用することにより解くことができる。なお、前記(1)式および(2)式に示す様に、移動局10が2次元平面を移動する場合には、(2)式の解が得られるために少なくとも3局の基地局12によって移動局10からの電波を受信する必要がある。
【0054】
このニュートン法においては、次の様な手順により(2)式の解が算出される。
(1)適当な初期値xおよびyを決定する。
(2)移動局10の位置x,yをその初期値x,yとした時の前記R21、R31、およびR41に対応する値として、R21、R31、およびR41を、前記(2)式にx,yを代入して算出する。
(3)実際に各基地局12iにおいて検出された移動局からの電波の受信時刻Trに基づいて算出される実際の前記R21、R31、およびR41の値と、前記(2)で算出されたR21、R31、およびR41の値のそれぞれに基づいて、残差ΔR21、ΔR31、およびΔR41を、
ΔR21=R21−R21
ΔR31=R31−R31
ΔR41=R41−R41
のように算出する。
(4)前記(1)で決定した初期値xおよびyを、(3)で算出した残差ΔR21、ΔR31、およびΔR41に対応する量だけ修正する。ここで、xについての修正量をΔx、yについての修正量をΔyとすると、
【数2】

のように連立方程式が得られる。ここで、ΔR21、ΔR31、およびΔR41は前記(3)で算出されており、また、(∂R21/∂x)、(∂R31/∂x)、(∂R41/∂x)、および(∂R21/∂y)、(∂R31/∂y)、(∂R41/∂y)はR21、R31、R41をそれぞれxおよびyで偏微分することによって得られる。これをΔxおよびΔyについて解く。
(5)得られたΔxおよびΔyに基づいて初期値xおよびy
=x+Δx,y=y+Δy
のようにxおよびyに更新する。
(6)前記(2)乃至(5)を新たな初期値により実行する。これを(4)において算出されるΔxおよびΔyの値が十分小さい値となるまで反復する。
【0055】
ここで、
【数3】

のようにベクトル表記を定義すると、前記式(3)は、
【数4】

のように書き表される。ここで、行列Gは、
【数5】

である。移動局10の測位に用いられる基地局12の数が、その測位に用いられる最小の基地局12の数よりも多い場合には、一般的に前記式(4)の解を最小二乗法に得ることが行なわれる。すなわち、
【数6】

として、ΔxおよびΔyを求めることができる。
【0056】
重み行列生成部72は、前記基地局選択部80によって選択された測位に用いられる基地局の数が移動局10の測位に必要な最小の数を上回る場合に、前記測位に用いられる基地局12のそれぞれの重み付けを行なう重み行列Wを算出する。この重み行列Wは、前記TDOA測位部74による移動局10の位置の算出において用いられる。この重み行列Wは、前述の各基地局12の相関値誤差変換部68において算出される誤差であるジッタの量の標準偏差の値に基づいて算出される。重み行列Wは、移動局10から基地局12への無線通信に誤差が含まれる場合に、その誤差が大きい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを低くする一方、その誤差が小さい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを高くすることで、算出される移動局10の位置の精度を向上させるものである。具体的には、重み行列Wは例えば次の様に定義される。
【数7】

ここで、σ(i=1〜N)(Nは前記基地局選択部80により選択された移動局10の測位に用いられる基地局の数から1を引いた数。)は、各基地局12のうち前記基準基地局以外における前記ジッタ量の標準偏差の値である。この重み行列生成部72が重み行列生成部に対応する。具体的には、本実施例における重み行列Wは、
【数8】

のようになる。
【0057】
このように、前記重み行列生成部72において重み行列Wが算出される場合、TDOA測位部74はこの重み行列Wを考慮した移動局10の位置の算出を行なう。前記重み行列Wを考慮して移動局10の位置の算出を行なうことにより、前述の各基地局の相関値誤差変換部68において算出される誤差であるジッタの量の標準偏差の値に基づいて、移動局10から基地局12への無線通信に含まれる誤差が大きい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを低くする一方、その誤差が小さい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを高くして移動局10の位置の算出を行なうことができる。前記(5)式にこの重み行列Wを考慮すると、次式(6)のようになる。
【数9】

これにより、前記複数の基地局12のそれぞれの重みを考慮して、ΔxおよびΔyを求めることができる。
【0058】
TDOA測位部74は、以上のようにして移動局10の位置の算出を行なう。なお、このTDOA測位部74が測位部に対応する。図10は、移動局12の相関値演算部64における相関値のピーク値の大きさの算出と、移動局12の相関値誤差変換部68における誤差としてのジッタ量の標準偏差の算出と、前記重み行列生成部72における重み行列Wの算出と、上述のTDOA測位部74における移動局10の位置の算出との関係を説明したものである。図10に示す様に、本実施例の移動局測位システムにおいては、検出可能な量である相関値のピーク値の大きさに基づいて、その相関値のピーク値の大きさと負の相関関係にあるジッタの量の標準偏差を予め得られた関係などに基づいて各基地局12ごとに推定する。そして推定されたジッタの量の標準偏差を用いて各基地局12の移動局10の位置の算出における重みを定義する重み行列Wを算出し、算出された重み行列Wを用いて、移動局10の位置の算出を行なう。
【0059】
図11は、本発明の移動局測位システム6の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず基地局無線部32および移動局無線部22などに対応するステップSA1(以下「ステップ」を省略する。)においては、前記移動局10と各基地局12との間で行なわれる通信の確立が行なわれる。具体的には例えば、前記移動局10および各基地局12において通信に用いられるチャンネル(周波数)などが決定され、各基地局12においては移動局10から送信される電波の受信が開始される。
【0060】
移動局10の移動局無線部22などに対応するSA2においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波には、受信時刻を検出するための拡散符号が含まれる。この移動局10からの測位のための電波の送信は、例えば予め定められた時間間隔により定期的に行なわれても良いし、測位サーバ14、あるいはいずれかの基地局12から電波を送信するよう指令が行なわれた場合に行なわれてもよい。
【0061】
各基地局12の基地局無線部32などに対応するSA3においては、移動局10から送信される測位のための電波の受信が開始され、受信された電波が復号されるなどして、受信された電波に含まれていた拡散符号が取り出される。この電波の受信は、例えば後述するSA5における誤差の算出が行なわれるまで、各基地局12において実行される。
【0062】
基地局12の相関値演算部64およびピーク時刻検出部70に対応するSA4においては、SA3で受信が開始される移動局10からの電波から取り出された符号と予め記憶されたレプリカ符号との相関値が算出される。このレプリカ符号は、SA2において移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号と同一の符号である。また、拡散符号は同位相となったときにのみその相関値が鋭いピークを生ずることから、前記レプリカ符号と前記SA3で受信が開始された電波から取り出された符号とが同位相となった、すなわち同期された場合に、相関値はピークを生ずる。本ステップSA4においてはこのピークの値が検出されるとともに、移動局12の時計40を参照するなどして、そのピークの値が検出された時刻が同期時刻(受信時刻)として検出される。本ステップで算出された前記受信時刻についての情報は、例えば通信ケーブル20を介して測位サーバ14に送信される。
【0063】
相関値誤差変換部68に対応するSA5においては、SA4において算出された相関値のピークの値の大きさが、対応する誤差としてのジッタの量の標準偏差の値に変換される。この変換は、例えば前記相関値のピークの値に対応するジッタの量の標準偏差の大きさについての情報を予め記憶する関係記憶部66から、SA4において算出された相関値のピーク値の大きさに対応するジッタの量の標準偏差の値が読み出されることによって行なわれる。本ステップで算出されたジッタの量の標準偏差の大きさについての情報は、例えば通信ケーブル20を介して測位サーバ14に送信される。
【0064】
SA6においては、SA2において移動局10から送信された測位のための電波を受信した全ての基地局12において、SA4における相関値のピークの値の算出と、SA5におけるジッタの量の標準偏差の算出とが行なわれたか否かが判断される。これらの値の算出が全ての基地局において行なわれていない場合には、本ステップの判断が否定され、いまだ値の算出が行なわれていない基地局について、SA4およびSA5が実行される。一方、全ての基地局において値の算出が行なわれた場合には、本ステップの判断は肯定されて、SA7が実行される。
【0065】
測位サーバ14の基地局選択部80および重み行列生成部72に対応するSA7においては、SA3において移動局10から送信された測位のための電波の受信が開始された全ての基地局12のうち、前記基準基地局以外の基地局についての前記ジッタの量の標準偏差に基づいて、それら基地局12の測位における重みを決定する重み行列Wが算出される。
【0066】
測位サーバ14のTDOA測位部74に対応するSA8においては、SA4で算出された各基地局12における受信時刻、予め既知とされている各基地局12の位置、SA7において生成された重み行列Wについての情報に基づいて、移動局10の位置の算出が行なわれる。具体的には、前述の(2)式をニュートン法により解くことにより、その解として移動局10の位置が得られる。
【0067】
前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記相関値演算部64(SA4)により、前記複数の基地局12が受信する電波に含まれる拡散符号と、前記レプリカ符号との相関値の大きさが予め定められた関係に基づいて算出され、前記相関値誤差変換部68(SA5)により、予め算出された相関値の大きさと前記移動局10から送信され前記複数の基地局12のそれぞれによって受信される拡散符号の無線通信における通信誤差に関する誤差関連値との予め関係記憶部66に記憶された関係から、前記相関値演算部64によって算出された前記相関値の大きさに基づいて、前記移動局10から前記複数の基地局12のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値が前記複数の基地局12のそれぞれについて算出され、前記重み行列生成部72(SA7)により、前記相関値誤差変換部68によって算出される、前記移動局10から前記複数の基地局12のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値であるジッタの量の標準偏差に基づいて、予め記憶された関係により前記複数の基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列Wが決定され、前記TDOA測位部74により、前記移動局10から送信される電波を前記複数の基地局12が受信した際の該複数の基地局12のそれぞれにおける受信結果と、これら基地局12の位置と、該重み行列生成部72により生成された重み行列Wとを用いて、予め記憶された関係である前記(2)式により前記移動局10の位置が算出されるので、前記移動局10から送信される拡散符号を含んだ電波を受信した複数の基地局12のそれぞれについての重みを考慮した移動局10の位置の算出が行なわれる。また、該重みを用いた移動局10の位置の算出を行なう場合において、基地局12の数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局10の測位を行なうことのできる移動局測位システム6を提供することができる。
【0068】
また、前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記基地局選択部80により、前記複数の基地局のうちから、測位の対象とされた前記移動局10からの電波を受信した全ての前記基地局12が前記移動局10の測位に用いられる選択基地局として選択され、選択された選択基地局における電波の受信結果、すなわち前記受信時刻および相関値のピークの値に対応するジッタの量の標準偏差などに基づいて移動局10の位置の算出が行なわれるので、より多くの基地局12における受信結果に基づいて移動局10の位置の算出を算出することにより、算出される移動局10の位置の精度を向上することができる。
【0069】
また、前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記基地局12は、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピークを生じた時刻に基づいて電波の受信時刻を検出するピーク時刻検出部70を有し、前記TDOA測位部74は、前記複数の選択基地局12のそれぞれの該ピーク時刻検出部70によって検出された受信時刻に基づいて前記移動局10の位置の算出を行なうので、前記相関演算部64によって演算される前記相関値の変化、すなわちピークの発生に基づいて、受信時刻の検出を精度よく行なうことができる。
【0070】
また、前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記基地局12は、前記相関値誤差変換部68および前記関係記憶部66を含んで構成されるので、前記各基地局において、相関値演算部64によって算出された相関値に基づいて前記誤差関連値としてのジッタの量の標準偏差を算出することができる。
【実施例2】
【0071】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。なお実施例相互に共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施例は、基地局12および測位サーバ14の構成およびそれらの有する機能の変形例に関するものである。図12は、基地局12の電子制御装置33の有する機能の概要を説明する図であって、前述の実施例1における図4に対応する図である。本図12と図4とを比較すると、本実施例の基地局12の電子制御装置33には、相関値誤差変換部68および関係記憶部66を有さない点において異なる。
【0073】
一方、図13は、測位サーバ14の電子制御装置48の有する機能の概要を説明する図であって、前述の実施例1における図8に対応する図である。本図13と図8とを比較すると、本実施例の測位サーバ14の電子制御装置48は、相関値誤差変換部168および関係記憶部166を有する点において異なる。
【0074】
図13において関係記憶部166は、前述の実施例1における関係記憶部66が記憶していたのと同様の情報、すなわち、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピーク値の大きさと、そのピーク値の大きさに対応する前記ピーク時刻検出部70において検出される同期時刻の検出における誤差の標準偏差の値として、ジッタの量の標準偏差の値が関連付けられて図6のように記憶する。
【0075】
また、相関値誤差変換部168は、前述の実施例1における相関値誤差変換部68と同様に、関係記憶部166に記憶された情報と、前記相関値演算部64によって算出される相関値のピーク値についての情報とに基づいて、前記相関値のピーク値に対応する誤差の値であるジッタの量の標準偏差を算出する。この相関値誤差変換部68が相関値誤差変換部に対応する。
【0076】
このように、本実施例においては、前述の実施例において基地局12の電子制御装置33が有していた相関値誤差変換部68および関係記憶部66が、測位サーバ14の電子制御装置48によって同様の機能である相関値誤差変換部168および関係記憶部166として有されているものである。
【0077】
以上のように基地局12の電子制御装置33および測位サーバ14の電子制御装置48が構成されるので、各基地局12から測位サーバ14へは、相関値演算部64によって算出される相関値のピークの値についての情報、ピーク時刻検出部70によって検出される受信時刻についての情報が送信される。
【0078】
また、本実施例における移動局測位システム6においては、前述の実施例1と同様に例えば図11のフローチャートに示す手順により作動が行なわれるが、相関値誤差変換部168に対応するSA5の作動は測位サーバ14によって行なわれる点が、前述の実施例における図11のフローチャートと異なる。従って、SA6の全ての基地局について誤差、すなわちジッタの量の標準偏差が算出されたかの判断も測位サーバ14において行なわれることとなる。
【0079】
前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記測位サーバ14は、前記相関値誤差変換部116および関係記憶部166を含んで構成されるので、前述の実施例1の効果に加えて、前記測位サーバ14に各基地局12ごとの前記誤関連値、すなわちジッタの量の標準偏差の算出に伴う演算を集約して実行させることができる。
【実施例3】
【0080】
本実施例は、移動局10の測位に用いる基地局の組み合わせを選択し、その選択された組み合わせを構成する基地局12を用いて移動局10の測位を行なうものである。図14は、本実施例における移動局測位システム160を説明する図であって、移動局10およびその移動局10が移動可能とされた予め規定された領域8と、複数の基地局101乃至135の配置の一例を説明する図である。なお、図14においては、測位サーバ14および各基地局101乃至135と測位サーバ14とを情報通信可能に接続する通信ケーブル20の記載は省略されている。
【0081】
移動局10が移動可能な領域8が、移動局10と基地局とが通信可能な距離、すなわち移動局10から送信される電波の到達する領域を超える場合には、移動局10から送信された測位のための電波が、少なくとも測位のために必要な最小の数の基地局によって受信されるように基地局を配置することが要求される。また、基地局からは移動局10の作動を制御する指令を含む電波が移動局10に向けて送信されるので、すなわち移動局10から送信される電波の到達する領域を超える場合には、いずれかの基地局から移動局10に送信される電波が、前記移動局10が移動可能な領域8のどの位置に移動局10が存在する場合であっても移動局10によって受信されることができる様に基地局を配置することがが要求される。
【0082】
図14は、かかる要求を満たすための基地局の配置の一例を説明する図である。図14においては、複数の基地局101乃至135のうち、これらの基地局101乃至135は、前述の実施例1において説明したのと同様に、例えば図3および図4に示す構成および機能を有する。すなわち、移動局10から送信される測位のための電波を受信し、その受信結果としてピーク時刻検出部70によって受信時刻を算出し、また相関値誤差変換部68によってジッタの量の標準偏差を算出し、これらの算出された値についての情報を測位サーバ14に送信する。また、前記複数の基地局101乃至135のうち制御基地局107、109、117、119、127、129は、これらの機能に加え、基地局制御部62により移動局10に対し移動局10の作動を制御するための指令を含む電波を送信する作動を行なうようにされている。また、図14において、円R1乃至R6は、制御基地局107、109、117、119、127、129のそれぞれから送信される電波の到達距離を表わしている。図14に示すように、移動局10が移動可能な領域8は、6つの制御基地局107、109、117、119、127、129のいずれかから送信される電波の到達する範囲の中に含まれており、移動局10が移動可能な領域8の何れの位置にある場合であっても、少なくともいずれか1つの制御基地局107、109、117、119、127、129から送信される電波を受信することができる。
【0083】
なお、本実施例においても移動局10としては前述の実施例1などと同様、具体的には図2に示す様な構成および機能を有するものが用いられる。
【0084】
図15は、本実施例の移動局測位システム160を構成する測位サーバ14の電子制御装置48が有する機能を説明する機能ブロック図である。なお、測位サーバ14の構成としては前述の実施例1と同様に、具体的には図7に示す構成が用いられる。
【0085】
図15において、基地局設定部176は、制御基地局選択部178および基地局選択部180を含み、TDOA測位部74において移動局10の位置の算出に用いられる基地局を設定する。
【0086】
このうち、制御基地局選択部178は、前記制御基地局のうちから、移動局10に対しその作動を制御する指令を行なうなどの移動局10との通信を実際に行なう選択制御基地局を選択する。本実施例においては、前述の様に6つの制御基地局107、109、117、119、127、129が設けられており、これらのうちの1つの制御基地局が選択制御基地局として選択される。具体的には例えば、制御基地局選択部178は、前記6つの制御基地局から予め規定された順序により選択された1つの制御基地局に、移動局10との通信の確立作動を実行させ、最初に移動局10と通信の確立を成功した制御基地局を移動局10との通信を行なう選択制御基地局とする。ここで、前記予め規定された順序とは、例えば前記制御基地局に付された符号が小さい順、すなわち、107、109、117、119、127、129の順などであればよい。
【0087】
基地局情報記憶部177は、各制御基地局について予め設定された基地局の組み合わせについての情報を記憶する。この組み合わせは前記各制御基地局が選択制御基地局として選択された場合に、この選択制御基地局とともにTDOA測位部74によって移動局10の位置の算出に用いられる基地局の組み合わせである。図16は、この基地局情報記憶部177に記憶される情報の一例を説明する図であって、各制御基地局の符号に対し、この選択制御基地局とともにTDOA測位部74によって移動局10の位置の算出に用いられる基地局の組み合わせである基地局群を構成する基地局の符号が記載されている。例えば、制御基地局107が選択制御基地局とされる場合には、基地局101、102、103、106、107、108、111、112、113からなる基地局の組み合わせ(基地局群)を用いて移動局10の位置の算出を行なうように記憶されている。
【0088】
本実施例の基地局選択部180は、前述の実施例1などにおける基地局80とは異なる作動により、すなわち、前記制御基地局選択部178によって選択された選択制御基地局についての情報と、前記基地局情報記憶部177に記憶された情報とに基づいて、TDOA測位部74において移動局10の位置の算出に用いる基地局である選択基地局を選択する。具体的には、前記基地局情報記憶部177に記憶された、各制御基地局のそれぞれに対応する前記基地局群を構成する基地局についての情報から、前記制御基地局選択部178によって選択された選択制御基地局に対応する前記基地局群を構成する基地局についての情報を読み出すことによって、前記選択基地局を選択する。
【0089】
また、重み行列生成部72、およびTDOA測位部74については前述の実施例と同様の作動を行なうものであるので、説明を省略する。
【0090】
図17は、本実施例における基地局設定部176の制御作動の一例を説明するフローチャートである。このフローチャートは、例えば、前述の実施例1において説明した、移動局測位システム6の制御作動の一例を表わす図11のフローチャートのSA1に代えて実行される。
【0091】
SB1乃至SB3は制御基地局選択部178に対応する。まず、SB1においては、予め規定された順序に従って、前記複数の制御基地局のうちの、1つの制御基地局iについて、その制御基地局と移動局10との間で通信の確立のための作動が行なわれる。ここで、前述のとおり、前記予め規定された順序とは、例えば制御基地局に付された符号の小さい順であり、この場合、まず、制御基地局107について、移動局10との通信の確立のための作動が行なわれる。
【0092】
続くSB2においては、SB1において行なわれた制御基地局iと移動局10との間で通信が確立されたか否かが判断される。通信が確立された場合には、本ステップの判断が肯定され、SB3が実行される。一方、通信が確立されなかった場合には、移動局10は前記制御基地局iの送信する電波の到達範囲にないとして、本ステップの判断が否定され、SB5が実行される。このSB5においては、iの値に1が加えられSB1以降が再度実行される。すなわち、別の制御基地局i+1について前記通信の確立が試行される。例えば、移動局10が図14に示す位置にある場合には、移動局10は制御基地局107から送信される電波の到達範囲である円R1の内部にあるので、制御基地局107と移動局10との通信は確立され、本ステップの判断が肯定される。
【0093】
SB2の判断が肯定された場合に実行されるSB3においては、SB2において前記SB2において移動局10との通信の確立が行なわれたと判断された制御基地局が移動局10との通信を実際に行なう選択制御基地局として選択される。例えば、SB2において制御基地局107と移動局10との通信は確立されると、制御基地局107が選択制御基地局として選択される。
【0094】
基地局選択部180に対応するSB4においては、前記基地局情報記憶部177に記憶された各制御基地局のそれぞれに対応する前記基地局群を構成する基地局についての情報から、前記SB3において選択された選択制御基地局に対応する前記基地局群を構成する基地局についての情報が読み出され、この基地局群を構成する基地局が選択基地局として選択される。例えば、SB3において、制御基地局107が選択制御基地局として選択されると、例えば基地局情報記憶部177に記憶された情報(図16参照)から、制御基地局107に対応して記憶された基地局群についての情報が読み出され、その基地局群を構成する基地局101、102、103、106、107、108、111、112、113が移動局10の位置の算出に用いられる選択基地局として選択される。
【0095】
図17のフローチャートが実行された後、図11のフローチャートのSA2以降が行なわれ、移動局10の測位のための制御作動が実行される。このうち、移動局10の移動局無線部22などに対応するSA2においては、例えば前記SB3において選択制御基地局として選択された制御基地局から送信される指令に基づいて、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波には、受信時刻を検出するための拡散符号が含まれる。
【0096】
SA3以降のステップについては、前述の実施例と同様であるので、説明を省略する。なお、本実施例においては、SA3乃至SA6の作動は、前記SB4において測位に用いる基地局である選択基地局として選択された基地局についてのみ実行される点が、前述の実施例とは異なる。すなわち、SB4において選択された選択基地局以外の基地局においては、移動局10からの電波の受信やその受信時刻の検出などの作動が行なわれる必要はない。したがって、SB7において算出される重み行列は、前記SB4において測位に用いる基地局である選択基地局として選択された基地局の重みであり、SA8における移動局10の位置の算出は、前記SB4において選択された選択基地局のみを用いて行なわれる。
【0097】
前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記複数の基地局101乃至135は、前記移動局10の作動を制御するために該移動局との無線通信を実行可能な複数の制御基地局107、109、117、119、127、129を含み、前記制御基地局選択部178(SB1乃至SB3)により、該複数の制御基地局107、109、117、119、127、129のうちから、前記移動局10との無線通信が確立された制御基地局が該移動局の作動を制御する選択制御基地局として選択され、基地局選択部180(SB4)により、前記制御基地局選択部178により選択された選択制御基地局についての情報と、予め前記基地局情報記憶部177に記憶された前記複数の制御基地局107、109、117、119、127、129のそれぞれが前記選択制御基地局とされた場合に前記移動局の測位に用いられる基地局である選択基地局とされる基地局の組み合わせ(基地局群)に関する情報とに基づいて、前記制御基地局選択部178により選択された選択制御基地局についての前記複数の基地局101乃至135のうちから前記移動局10の測位に用いる基地局である前記選択基地局として選択される。このようにして選択された選択基地局を用いて移動局10の位置の算出が行なわれるので、前述の実施例の効果に加え、移動局10との距離が遠いなどにより移動局10から送信される測位のための電波が良好に受信されない基地局の受信結果を用いて移動局10の位置の算出を行なうことにより、算出される移動局10の位置の精度が悪化することが防止できる。
【0098】
また、移動局10が複数存在する場合に、ある制御基地局とその制御基地局に対応する基地局群を用いて一の移動局10の測位を行なうのと同時期に、その一の移動局の測位に用いられない他の制御基地局とその制御基地局に対応する基地局群を用いて別の移動局10の測位を行なうことができる。
【実施例4】
【0099】
本実施例は、移動局10が送信した電波を複数の基地局12が受信し、その受信強度を測定し、測定された受信強度に基づいて前記移動局10と前記複数の基地局12のそれぞれとの距離を算出し、算出された距離を用いて移動局10の位置の算出を行なう測位の手法に関するものである。
【0100】
前述の実施例においては、TDOA測位部74は、複数の基地局12のピーク時刻検出部70によって検出される移動局10から送信される電波の受信時刻と、これら複数の基地局12の位置についての情報とに基づいて、前述の(1)式を解くことにより移動局10の位置を算出した。かかる手法においては、各基地局12はピーク時刻検出部70を有し、移動局10からの電波の受信時刻を検出する必要があるが、このピーク時刻検出部70における演算を精度よく行なうためには、高クロックで作動する電子制御装置など、高性能なハードウェアを必要とする場合がある。
【0101】
ところで、所定の送信電力により送信された電波を受信した際の受信電力は、電波の伝搬距離と一定の関係を有することが知られている。すなわち、予め定められた送信電力により移動局10から前記測位のための電波が送信されれば、この電波を受信した各基地局12において受信電力を測定することにより、前記一定の関係に基づいて、移動局10と各基地局12との距離を推定することができる。このように、移動局10と各基地局12との距離が推定されれば、各基地局12における移動局10からの電波の受信時刻を検出することなく、前記(1)式に対応する式が導出され、これを解くことにより移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0102】
本実施例において、移動局10は前述の実施例と同様に、例えば図2に示す構成を有するものが用いられる。また、基地局12は、前述の実施例と同様、例えば図3に示す構成を有する。
【0103】
図18は、本実施例の基地局12の電子制御装置33が有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。図18に示す様に、電子制御装置33は、基地局制御部34、相関値演算部64、受信強度検出部171、受信強度距離変換部172、受信強度距離関係記憶部173を有する。このうち、基地局制御部34、および相関値演算部64については前述の実施例と同様の作動をするものであるので、説明を省略する。
【0104】
受信強度検出部171は、基地局12の基地局無線部32において受信された移動局10から送信された測位のための電波について、その受信強度を数値化した指標であるRSSI(Receive Signal Strength Indicator)が検出される。このRSSIは、例えば電波の受信強度を例えば256段階で評価する指標であって、受信電力PRと一対一の関係にある値である。この受信強度検出部171が受信強度検出部に対応する。
【0105】
受信強度距離関係記憶部173は、移動局10が所定の出力で電波の送信を行なった場合における、基地局12におけるRSSIと移動局10および基地局12の間の距離との関係を記憶する。一般に、送信電力PT(dBm)と受信電力PR(dBm)および電波の伝搬距離D(m)には、
PR=−20log(4πDf/c)+GTA+GRA+PT …(7)
の関係がある。ここで、fは電波の周波数(Hz)、cは電波の速度、GTAは送信アンテナゲイン(dBi)、GRAは受信アンテナゲイン(dBi)である。受信強度距離関係部173は、この(7)式を、前記送信電力PT、電波の周波数f、電波の速度c、送信アンテナゲインGTA、受信アンテナゲインGRAのパラメータとともに記憶する。図19は、この(7)式の関係の一例を図示したものであって、受信強度距離関係部173は、このような図示された関係をマップとして記憶していてもよい。
【0106】
受信強度距離変換部172は、前記受信強度検出部171において測定された受信強度としてのRSSIと、前記受信強度距離関係記憶部173に記憶された関係とに基づいて、前記受信強度検出部171において測定された受信強度としてのRSSIに対応する移動局10と基地局12との距離を算出する。具体的には、例えば、前記受信強度距離関係記憶部173に(7)式が前記パラメータととも記憶される場合には、前記受信強度検出部171において測定されたRSSIを受信電力PRに変換し、その受信電力PRを(7)式に代入し、電波の伝搬距離、すなわち移動局10から基地局12までの距離を算出する。あるいは、前記受信強度距離関係記憶部173に前記図19に示すような関係がマップとして記憶される場合には、前記受信強度検出部171において測定されたRSSIに対応する電波の伝搬距離、すなわち移動局10から基地局12までの距離をその図19の関係から抽出される。
【0107】
このようにして基地局12において検出および算出された、相関値のピークの値および、移動局10とその基地局12との距離の値についての情報は、基地局制御部34から通信インタフェース46を介して測位サーバ14に送信される。
【0108】
本実施例において、測位サーバ14は、前述の実施例と同様に、例えば前述の図7に示す構成を有するものが用いられる。図20は、測位サーバ14の電子制御装置48の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。図20に示す様に、測位サーバ14の電子制御装置48は、相関値誤差変換部168、関係記憶部166、第2重み行列生成部73、およびRSSI測位部174を有する。
【0109】
このうち、相関値誤差変換部168および関係記憶部166は前述の実施例2において説明したものと同様の作動、すなわち各基地局12の相関値演算部64において算出された相関値のピーク値に基づいて、そのピーク値に対応するジッタの量の標準偏差を算出する作動を行なうものである。
【0110】
また、第2重み行列生成部73は、相関値誤差変換部168において各基地局12について算出されたジッタの量の標準偏差の値に基づいて、前述の実施例1において説明したものと同様の作動により各基地局12のそれぞれの重み付けを行なう重み行列Wを算出するが、第2重み行列生成部73は、測位に使用するすべての基地局を用いて重み行列を生成することが重み行列生成部72とは異なる。この第2重み行列生成部73によって生成される重み行列Wは、後述するRSSI測位部174による移動局10の位置の算出において用いられるものであって、前述の実施例1乃至3における重み行列Wと同様に算出される。すなわち、この重み行列Wは、移動局10から基地局12への無線通信に誤差が含まれる場合に、その誤差が大きい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを低くする一方、その誤差が小さい基地局12における受信結果は移動局10の位置の算出における重みを高くすることで、算出される移動局10の位置の精度を向上させるものである。
【0111】
RSSI測位部174は、各基地局12の前記受信強度距離変換部172において算出される各基地局12のそれぞれと移動局10との距離、また、予め既知とされている各基地局12の位置についての情報、および前記重み行列生成部72により生成される重み行列Wについての情報に基づいて、移動局10の位置を算出する(RSSI方式)。移動局の座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表す座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの座標が(xB4,yB4)であるとき、移動局の位置は以下の(8)式により表される。ここで、これらの基地局12や移動局10の座標は、例えば図1に示す様に定義された座標系により表わされる。
(xB1−x)2+(yB1−y)2=D1
(xB2−x)2+(yB2−y)2=D2
(xB3−x)2+(yB3−y)2=D3
(xB4−x)2+(yB4−y)2=D4 …(8)
ここで、D乃至D(m)はそれぞれ、第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれと移動局10との距離であって、第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれの受信強度距離変換部172によって算出される値である。
【0112】
RSSI測位部174は、前記TDOA測位部74が前記(1)式を解いたのと同様に、前記(8)式をニュートン法などの求解法により解き、移動局10の位置x,yを得る。具体的な解法は前述の実施例1において前記TDOA測位部74が前記(1)式を解いたのと同様であるので、説明を省略する。このRSSI測位部174が測位部に対応する。
【0113】
図21は、本実施例の移動局測位システム6の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、前述の実施例の図11のフローチャートに対応するものである。このうち、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1乃至SC4は、前記図11のステップSA1乃至SA4に対応するものである。
【0114】
まず基地局無線部32および移動局無線部22などに対応するステップSC1においては、前記移動局10と各基地局12との間で行なわれる通信の確立が行なわれる。具体的には例えば、前記移動局10および各基地局12において通信に用いられるチャンネル(周波数)などが決定され、各基地局12においては移動局10から送信される電波の受信が開始される。
【0115】
移動局10の移動局無線部22などに対応するSC2においては、移動局10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波には、受信時刻を検出するための拡散符号が含まれる。この移動局10からの測位のための電波の送信は、例えば予め定められた時間間隔により定期的に行なわれても良いし、測位サーバ14、あるいはいずれかの基地局12から電波を送信するよう指令が行なわれた場合に行なわれてもよい。
【0116】
各基地局12の基地局無線部32などに対応するSC3においては、移動局10から送信される測位のための電波の受信が開始され、受信された電波が復号されるなどして、受信された電波に含まれていた拡散符号が取り出される。この電波の受信は、例えば後述するSC5における誤差の算出が行なわれるまで、各基地局12において実行される。
【0117】
基地局12の相関値演算部64に対応するSC4においては、SC3で受信が開始される移動局10からの電波から取り出された符号と予め記憶されたレプリカ符号との相関値が算出される。このレプリカ符号は、SC2において移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号と同一の符号である。また、拡散符号は同位相となったときにのみその相関値が鋭いピークを生ずることから、前記レプリカ符号と前記SC3で受信された電波から取り出された符号とが同位相となった、すなわち同期された場合に、相関値はピークを生ずる。本ステップSC4においてはこのピークの値が検出され、例えば通信ケーブル20を介して測位サーバ14に送信される。
【0118】
受信強度検出部171および受信強度距離変換部172に対応するSC5においては、SC3で受信が開始される電波の受信強度が測定され、その受信強度に対応する移動局10と基地局12との距離が算出される。この算出は、例えば受信強度距離関係記憶部173に記憶された前記受信強度と前記距離の関係を利用して行なわれる。
【0119】
測位サーバ14の相関値誤差変換部168に対応するSC6においては、SC4において算出された相関値のピークの値の大きさが、対応する誤差としてのジッタの量の標準偏差の値に変換される。この変換は、例えば前記相関値のピークの値に対応するジッタの量の標準偏差の大きさについての情報を予め記憶する関係記憶部166から、SC4において算出された相関値のピーク値の大きさに対応するジッタの量の標準偏差の値が読み出されることによって行なわれる。
【0120】
SC7においては、SC2において移動局10から送信された測位のための電波を受信した全ての基地局12において、SC4における相関値のピークの値の算出、SC5における受信強度の測定および距離の算出、および、SC6におけるジッタの量の標準偏差の算出とが行なわれたか否かが判断される。これらの値の算出が全ての基地局において行なわれていない場合には、本ステップの判断が否定され、いまだ値の算出が行なわれていない基地局について、SC4乃至SC6が実行される。一方、全ての基地局において値の算出が行なわれた場合には、本ステップの判断は肯定されて、SC8が実行される。
【0121】
測位サーバ14の第2重み行列生成部73に対応するSC8においては、SC3において移動局10から送信された測位のための電波の受信を開始した全ての基地局12についての前記ジッタの量の標準偏差に基づいて、それら基地局12の測位における重みを決定する重み行列Wが算出される。
【0122】
測位サーバ14のTDOA測位部74に対応するSC9においては、SC5で測定される各基地局12における受信強度に基づいて算出される移動局10と各基地局12との距離、予め既知とされている各基地局12の位置、SC8において生成された重み行列Wについての情報に基づいて、移動局10の位置の算出が行なわれる。具体的には、前述の(1)式をニュートン法により解くことにより、その解として移動局10の位置が得られる。
【0123】
前述の実施例の移動局測位システム6によれば、前記基地局12は、移動局10から送信された電波を受信した際の受信強度を検出する受信強度検出部171(SC5)を有し、前記RSSI測位部174(SC9)は、前記移動局10の測位に用いられる複数の前記基地局12のそれぞれの該受信強度検出部171によって検出された前記受信強度に基づいて前記移動局10の位置の算出を行なうので、比較的容易に検出が可能な電波の受信強度(RSSI)に基づいて移動局10の位置の算出を行なうことができるとともに、基地局12のそれぞれについての重みを考慮した移動局10の位置の算出が行なわれ、前記移動局10との通信誤差が大きい基地局ほど重みが小さくされるので、基地局12に応じた重みを用いた移動局10の位置の算出を行なう場合において、基地局12の数が増加しても演算量が増加したり、あるいは移動局10の大型化や高コスト化を伴うことなく精度の高い移動局10の測位を行なうことができる。また、無線LANなどのように、通信に拡散符号を用いると共に、受信強度を検出することが予め前提として設計されている機器を基地局12として用いる場合には、測位のための構成を簡略化することができる。すなわち、前記無線LANのための構成をそのまま利用して移動局測位システム6を構成することができる。
【0124】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0125】
前述の実施例においては、通信における誤差としてジッタの量の標準偏差が用いられたが、これに限られず、例えば前記ジッタの量の標準偏差と相関がある、すなわち一対一の関係にあるその他の量を用いてもよい。具体的には、受信時刻検出誤差の標準偏差や、移動局10と基地局12との距離の誤差の標準偏差が前記ジッタの量の標準偏差に代えて用いられてもよい。
【0126】
また、前述の実施例においては、基地局選択部80、180は、移動局10が送信した電波を受信した全ての基地局12を移動局10の位置の算出に用いる選択基地局として選択し、あるいは、制御基地局選択部178により選択された選択制御基地局に対応する基地局の組み合わせ(基地局群)を構成する基地局12を選択基地局として選択した。しかしながら、このような態様に限られず、例えば、前記相関値のピークの値が予め定められた所定値より大きい基地局12を選択基地局として選択したり、あるいは、前記受信強度(RSSI)が予め定められた所定値より大きい基地局12を選択基地局として選択することも可能である。
【0127】
また、前述の実施例においては、制御基地局選択部178は、制御基地局から予め規定された順序により選択された1つの制御基地局に、移動局10との通信の確立作動を実行させ、最初に移動局10と通信の確立を成功した制御基地局を移動局10との通信を行なう選択制御基地局とした。ここで、前記予め規定された順序とは、前述の実施例においては前記制御基地局に付された符号が小さい順とされたが、このような態様に限られない。例えば、前述の実施例における移動局測位システム6により例えば所定の間隔などにより反復的に移動局10の位置の算出が行なわれる場合には、直前に算出された移動局10の位置との距離が最も近い制御基地局から、前記距離が短い順序としてもよい。
【0128】
また、前述の実施例3の移動局測位システム6は実施例1に対して基地局設定部176がサーバに設けられるものであったが、実施例2の移動局測位システム6に対し基地局設定部176を適用することも当然可能である。
【0129】
また、前述の実施例においては、サーバ14と基地局12とは通信ケーブル20によって情報通信可能に接続されたが、この通信は有線通信に限らず、無線通信であってもよい。
【0130】
また、前述の実施例1から3において、TDOA測位部74により移動局10の位置の算出を行なった際において、前記(1)式を構成する前記基準基地局、すなわちジッタの量の標準偏差の値が最も小さい基地局に対応する式(前述の実施例においては第1式の両辺の平方根をとったものを、前記(1)式の残りの式(前述の実施例においては第2式乃至第4式)のそれぞれの両辺の平方根をとったものから減ずることにより(1)式から(2)式を得た。また、重み行列生成部72は、前記基地局選択部80により選択された基地局12のうち前記基準基地局以外の基地局についての重みを算出したが、このような態様に限られない。すなわち、前記基地局選択部80により選択された基地局12のうち、ジッタの量の標準偏差の値が最も小さい基地局以外の基地局を基準基地局とすることも可能である。
【0131】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の移動局測位システムの構成の一例を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムにおける移動局の構成と機能をの一例を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムにおける基地局の構成の一例を説明する図である。
【図4】図3の基地局の電子制御装置の有する機能の概要を説明する図である。
【図5】移動局の位置の算出における各指標の関係を説明する図である。
【図6】図4の基地局の関係記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図7】図1の移動局測位システムにおける測位サーバの構成の一例を説明する図である。
【図8】図7の測位サーバの電子制御装置の有する機能の概要を説明する図である。
【図9】図8の測位サーバのTDOA測位部による測位の原理を説明する図である。
【図10】図1の移動局測位システムにおける重み行列の位置づけを説明する図である。
【図11】図1の移動局測位システムの移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の電子制御装置の有する機能を説明する図であって、図4に対応する図である。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する測位サーバの電子制御装置の有する機能を説明する図であって、図8に対応する図である。
【図14】本発明の更に別の実施例における移動局測位システムの構成を説明する図である。
【図15】本発明の更に別の実施例における移動局測位システムを構成する測位サーバの電子制御装置の有する機能を説明する図であって、図8に対応する図である。
【図16】図15の基地局情報記憶部177に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図17】図15の基地局設定部による選択制御基地局および選択基地局の選択における作動の一例を説明するフローチャートである。
【図18】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する基地局の電子制御装置の有する機能を説明する図であって、図4に対応する図である。
【図19】図18の受信強度距離関係記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図20】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する測位サーバの電子制御装置の有する機能を説明する図であって、図8に対応する図である。
【図21】本発明の別の実施例における移動局測位システムの移動局の位置の算出における制御作動の一例を説明するフローチャートであって、図11に対応する図である。
【符号の説明】
【0133】
6:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
14:測位サーバ
64:相関値演算部(相関演算部)
68:相関値誤差変換部
70:ピーク時刻検出部(受信時刻検出部)
72:重み行列生成部
74:TDOA測位部(測位部)
80、180:基地局選択部
171:受信強度検出部
174:RSSI測位部(測位部)
187:制御基地局選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局から送信される拡散符号を含んだ電波を複数の基地局によって受信し、該複数の基地局とデータ通信可能に接続された測位サーバにより、前記複数の基地局において受信した電波の受信結果に基づいて前記移動局の位置の算出を行なう移動局測位システムであって、
前記複数の基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記移動局が送信した電波に含まれる拡散符号と同一の予め記憶された拡散符号であるレプリカ符号との規格化相関値の大きさを、予め定められた関係に基づいて算出する相関演算部と、
前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記複数の基地局のそれぞれとの無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記複数の基地局のそれぞれについて算出する相関値誤差変換部と、
前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記複数の基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定する重み行列生成部と、
前記移動局から送信される電波を前記複数の基地局が受信した際の該複数の基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出する測位部と
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記複数の基地局は、前記移動局の作動を制御するために該移動局との無線通信を実行可能な複数の制御基地局を含み、
該複数の制御基地局のうちから、前記移動局との無線通信が確立された制御基地局を該移動局の作動を制御する選択制御基地局として選択する制御基地局選択部と、
予め記憶された前記複数の制御基地局のそれぞれが前記選択制御基地局とされた場合に前記移動局の測位に用いられる基地局である選択基地局とされる基地局の組み合わせに関する情報に基づいて、前記制御基地局選択部により選択された選択制御基地局についての前記選択基地局の組み合わせを選択する基地局選択部と、を有し、
前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを、予め記憶された関係に基づいて算出し、
前記相関値誤差変換部は、前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記選択基地局のそれぞれとの無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、
前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、
前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記複数の基地局のうちから、測位の対象とされた前記移動局からの電波を受信した全ての前記基地局を前記移動局の測位に用いる選択基地局として選択する基地局選択部を有し、
前記相関演算部は、前記基地局選択部によって選択された前記選択基地局が受信する電波に含まれ、受信後に所定の振幅にされる拡散符号と、前記レプリカ符号との規格化相関値の大きさを、予め記憶された関係に基づいて算出し、
前記相関値誤差変換部は、前記規格化相関値の大きさと前記移動局と前記選択基地局のそれぞれとの拡散符号の無線通信における通信誤差との予め記憶された関係から、該相関演算部によって算出された前記規格化相関値の大きさに基づいて、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における通信誤差に関する誤差関連値を前記選択基地局のそれぞれについて算出し、
前記重み行列生成部は、前記相関値誤差変換部によって算出される、前記移動局から前記選択基地局のそれぞれへの無線通信における前記誤差関連値に基づいて、予め記憶された関係により前記選択基地局のそれぞれの測位における重みを表す重み行列を決定し、
前記測位部は、前記移動局から送信される電波を前記選択基地局のそれぞれが受信した際の該選択基地局のそれぞれにおける受信結果と、該重み行列生成部により生成された重み行列とを用いて、予め記憶された関係により前記移動局の位置を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記基地局は、前記相関演算部によって算出される規格化相関値のピークを生じた時刻に基づいて電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部を有し、
前記測位部は、前記複数の選択基地局のそれぞれの該受信時刻検出部によって検出された受信時刻に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記基地局は、移動局から送信された電波を受信した際の受信強度を検出する受信強度検出部を有し、
前記測位部は、前記移動局の測位に用いられる複数の前記基地局のそれぞれの該受信強度検出部によって検出された前記受信強度に基づいて前記移動局の位置の算出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記基地局は、前記相関値誤差変換部を含んで構成されること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記測位サーバは、前記相関値誤差変換部を含んで構成されること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−236781(P2009−236781A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85020(P2008−85020)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】