説明

移動局装置及び通信方式選択方法及び通信方式選択プログラム

【課題】従来の無線通信システムは、移動局装置に2つの異なる無線方式に対応した受信装置を搭載し、常に同時に両方の受信機を動作させねばならず、2台分の実装スペースが必要であった。さらに、消費電力が増えるといった問題があった。
【解決手段】この発明に係る移動局装置100は、ディジタル無線方式とアナログ無線方式という異なる無線システムそれぞれに対応する機能を有する1つの通信部50を搭載する。判定部16は、判定用情報を入力し、入力した判定用情報に基づいて、ディジタル無線方式とアナログ無線方式のいずれを選択するべきかを判定する。制御部15は、判定部16が選択するべきと判定した無線方式を通信部50に選択させる。これにより、無線システムの変化に応じて通信部50の無線方式を切り替え、一方の無線方式だけを動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同一無線帯域において、例えばアナログ無線方式とディジタル無線方式のように異なる無線システム間を移動する移動局が基地局と通信する列車無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動局では、それぞれの無線システムに対応した受信機を両方とも実装、動作させて、無線受信状態を常に監視し、正常に受信できている無線システムの方を選択することで、システム切替を実現させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の無線通信システムは以上のように構成されているので、移動局に2つの異なる無線方式に対応した受信装置を搭載し常に同時に両方の受信機を動作させねばならず、2台分の実装スペースが必要であった。さらに、消費電力が増えるといった問題があった。
【特許文献1】特開2001−267977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、移動局に2つの異なる無線方式に対応した受信装置を搭載し常に同時に両方の受信機を動作させることなく、2つの異なる無線システムをまたがって移動しても基地局との通信を継続する装置を、より小型、低消費電力で実現可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の移動局装置は、
第1通信方式を用いて通信を行なう第1基地局が管轄する第1管轄領域と、前記第1通信方式と異なる第2通信方式を用いて通信を行なう第2基地局が管轄する第2管轄領域とを移動する移動局に装備されるとともに、前記第1管轄領域で前記第1通信方式を用いて前記第1基地局と通信を行ない前記第2管轄領域で前記第2通信方式を用いて前記第基地局と通信を行なう移動局装置において、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのいずれの通信方式も選択可能な通信部と、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した前記判定用情報に基づいて前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する判定部と、
前記判定部が選択するべきと判定した通信方式を前記通信部に選択させる制御部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、移動局装置に異なる無線システムそれぞれに対応した機能を有する1つの通信部を搭載し、無線方式の変化に応じて通信部の無線方式を選択し、一方の無線方式だけを動作させるように構成したので、移動局装置を小型化できる。また消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1〜図4を用いて実施の形態1を説明する。実施の形態1では、移動局装置100は移動局5に装備されている。この移動局5は、第1通信方式を用いて通信を行なう第1基地局が管轄する第1管轄領域と、前記第1通信方式と異なる第2通信方式を用いて通信を行なう第2基地局が管轄する第2管轄領域とを移動する。よって、移動局5に装備された移動局装置100は移動局5とともに第1管轄区領域、第2管轄領域を移動することとなる。図1では、ディジタル基地局1及びディジタル無線方式区間が第1基地局及び第1管轄領域の一例である。また、アナログ基地局2及びアナログ無線方式区間が第2基地局及び第2管轄領域の一例である。
【0008】
本実施の形態1では、第1通信方式の一例をディジタル無線方式とし、第2無線方式の一例をアナログ無線方式として説明する。実施の形態1では、移動局装置100がディジタル無線方式区間とアナログ無線方式区間を行き来する場合に、その区間の無線方式に対応した通信方式を自動的に選択する実施形態である。以下の実施の形態で説明する列車無線通信システムでは、移動局装置は異なる無線システム(ディジタル無線方式及びアナログ無線方式)それぞれに対応可能な1つの装置(後述の受信部、送信部)を搭載し、無線システムの変化に応じてその装置内に実装したソフトウエアの変更により無線方式を切り替え、一方の無線方式だけを動作させるものである。
【0009】
図1は、実施の形態1における列車無線システムの構成を示す。列車無線システムは、ディジタル無線方式により通信を行なうディジタル基地局1と、アナログ無線方式により通信を行なうアナログ基地局2と、ディジタル基地局1あるいはアナログ基地局2と通信を行なう移動局装置100が装備された移動局5(列車)とを備える。ディジタル基地局1には漏洩同軸ケーブル3が接続されており、アナログ基地局2には漏洩同軸ケーブル4が接続されている。漏洩同軸ケーブル(以下、LCXという)3は、移動局5が走行する線路の両側に布設され、ディジタル基地局1の送信電波又は移動局5(移動局装置100)の送信電波を搬送する。同様にLCX4は列車が走行する線路の両側に布設され、アナログ基地局2の送信電波又は移動局5(移動局装置100)の送信電波を搬送する。
【0010】
移動局装置100は、移動局5に装備され、ディジタル基地局1が管轄するディジタル無線方式区間とアナログ基地局2が管轄するアナログ無線方式区間との間を移動する。
【0011】
図1のゾーン境界6は、移動局装置100が無線方式をディジタル無線方式あるいはアナログ無線方式に切り換えるエリアである。移動局装置100は、アナログ無線方式区間からディジタル無線方式区間に移動する場合は、ゾーン境界6において無線方式をディジタル無線方式に切り換える。一方、ディジタル無線方式区間からアナログ無線方式区間に移動する場合は、ゾーン境界6において無線方式をアナログ無線方式に切り換える。このゾーン境界6は、LCX3の終端部分とLCX4の終端部分との中間にある数十メートルのエリアである。なお、アナログ/ディジタルの切替は、ゾーン境界6以外のエリアで行なっても構わない。
【0012】
図2を参照して移動局装置100の構成を説明する。図2は、移動局装置100の構成を説明する図である。移動局装置100は、列車である移動局5に装備される。図のように、移動局装置100は、アンテナ11と、通信部50と、制御部15と、判定部16とを備える。通信部50は、分波器12と、アナログ/ディジタル共用受信部13と、アナログ/ディジタル共用送信部14とを備える。
(1)分波器12は、送信信号と受信信号を分離する。
(2)アナログ/ディジタル共用受信部13は、LCX3またはLCX4から漏れ出た電波を受信する。
(3)アナログ/ディジタル共用送信部14は、LCX3またはLCX4に電波を発する。
(4)制御部15は、アナログ/ディジタル共用受信部13、アナログ/ディジタル共用送信部14の制御や信号の受け渡しを行う。
(5)判定部16は、「外部からの位置情報」や後述する「アナログ/ディジタル共用受信部13からの情報」によって、アナログ無線方式とディジタル無線方式とのどちらを選択するべきかを判定し、制御部15へ判定結果を通知する。
【0013】
ここで、アナログ/ディジタル共用受信部13、アナログ/ディジタル共用送信部14は、実装するソフトウエアの切り替えによりアナログ方式とディジタル方式の無線方式の切り替え(選択)が可能な構成である。なお、アナログ/ディジタル共用送信部14については、アナログ方式とディジタル方式の送信部を別々に実装し、RFスイッチ等でいずれを送信するか選択する構成としてもよい。
【0014】
次に、図3を参照して、移動局装置100の動作を説明する。図3は、移動局装置100の動作を示すフローチャートである。
【0015】
S10において、移動局装置100では、受信した電波はアンテナ11から分波器12を介してアナログ/ディジタル共用受信部13に送られる。
【0016】
ディジタル無線方式区間においては、アナログ/ディジタル共用受信部13は、ディジタル受信モードであれば正常に復調ができるが、アナログ受信モードでは正常に復調できない。逆にアナログ無線方式区間においては、アナログ/ディジタル共用受信部13は、アナログ受信モードであれば正常に復調ができるが、ディジタル受信モードでは正常に復調できない。つまり、アナログ/ディジタル共用受信部13は、ディジタル無線方式区間ではディジタル受信モードに、アナログ無線方式区間ではアナログ受信モードにする必要がある。更に、アナログ/ディジタル共用送信部14は、ディジタル無線方式区間ではディジタル送信モードに、アナログ無線方式区間ではアナログ送信モードにする必要がある。
【0017】
S20において、判定部16は、「判定用情報」を入力する。「判定用情報」とは、ディジタル通信方式とアナログ通信方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する情報である。「判定用情報」は、一つでも良いし複数入力されてもよい。例えば「判定用情報」として、外部から入力される「移動局5の進行方向」や「位置情報」や「アナログ/ディジタル共用受信部13からの情報」である。「位置情報」とは、例えば、移動局5(移動局装置100)の位置をGPS測位装置により測定した情報、あるいは、基準位置(例えば東京の所定の位置)からのキロ程の情報などである。また、「アナログ/ディジタル共用受信部13からの情報」とは、実施の形態2で説明する受信電界強度に関する情報である。判定部16は、これらの「判定用情報」をもとに、ディジタル無線方式、あるいはアナログ無線方式のどちらの無線方式を選択するべきかを判定し、判定結果を制御部15に通知する。
【0018】
S30において、制御部15は、通知された判定結果を元に適切なタイミングでアナログ/ディジタル共用受信部13およびアナログ/ディジタル共用送信部14に対して切替制御を行う。これによりディジタル無線方式、あるいはアナログ無線方式のいずれかが選択される。
【0019】
S40において、これにより、アナログ/ディジタル共用受信部13およびアナログ/ディジタル共用送信部14は、ディジタル無線方式区間ではディジタルモードとして動作し、アナログ無線方式区間ではアナログモードとして動作する。これにより、移動局装置100は、ディジタル区間ではディジタル基地局1と、アナログ区間ではアナログ基地局2と双方向の通信が可能になる。
【0020】
なお、上記S20、S30における判定部16による判定及び制御部15による切替は、ディジタル無線方式区間、アナログ無線方式区間、あるいはゾーン境界6のいずれの領域で行なわれても構わない。例えば、移動局5がディジタル無線方式区間からアナログ無線方式区間に向かって移動している場合に、移動局5がアナログ無線方式区間に入った後に判定、切替してもよいし、ゾーン境界6にいるときに判定、切替してもよい。あるいは、アナログ無線方式区間にいるうちに前もって判定、切替するようにしても構わない。「判定用情報」の入力するタイミングや、「判定用情報」と判定部16による判定の対応付けを設定することで対応可能となる。
【0021】
図4を参照して、上記S10〜S40で説明した内容をさらに具体的に説明する。図4は、無線方式の切替を説明する図である。
【0022】
まず、図4において、移動局5(移動局装置100)がディジタル無線方式区間からアナログ無線方式区間に移動する場合を考える。移動局5が、ディジタル無線方式区間に存在する時点では、判定部16は「外部からの位置情報」や、「アナログ/ディジタル共用受信部13からの情報」等の「判定用情報」をもとに、現時点においてディジタル無線方式区間にいると判断する。この判断に基づき、判定部16は、ディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちディジタル無線方式を選択するべきと判定し、判定結果を制御部15に通知する。この判定通知を受けた制御部15は、図4に示すように「0」の切替信号をアナログ/ディジタル共用受信部13、アナログ/ディジタル共用送信部14に送信する。これにより適切なタイミングで、アナログ/ディジタル共用受信部13およびアナログ/ディジタル共用送信部14に対してディジタル無線方式での動作が指示される。これらにより、移動局装置100はディジタル区間ではディジタル基地局1と双方向の通信が可能になる。
【0023】
次に、図4において、移動局5がゾーン境界6に移動する場合を説明する。移動局5(移動局装置100)がゾーン境界6のエリアに移動すると、ディジタル無線方式で動作しているアナログ/ディジタル共用受信部13は、ディジタル無線方式を採用するディジタル基地局1の送信電波を受信することができなくなる。よって、移動局装置100の制御部15は、ディジタル基地局1の送信電波のフレームに含まれる既知の信号パターン(例えば、基地局識別信号)を検出することができなくなる。このため、制御部15はディジタル基地局1とのフレーム同期を解除し、アナログ/ディジタル共用送信部14に対して送信停止を指示する。これを受けたアナログ/ディジタル共用送信部14は送信を停止する。
【0024】
次に、図4において、移動局5がアナログ無線方式区間に移動する場合を説明する。図4のゾーン境界6では、アナログ/ディジタル共用受信部13はディジタル基地局1,アナログ基地局2の送信電波を受信することができないが、その後、移動局5がアナログ無線方式区間に移動すると、ディジタル無線方式区間における場合と同様に、判定部16から判定が制御部15に出力され、この判定結果により制御部15が適切なタイミングでアナログ/ディジタル共用受信部13およびアナログ/ディジタル共用送信部14に対して、アナログモードへの切替制御を行う。この場合、制御部15は図4に示すようにアナログ/ディジタル共用受信部13、アナログ/ディジタル共用送信部14に「1」の切替信号を出力する。アナログ無線方式に切り替わったアナログ/ディジタル共用受信部13は、アナログ無線方式を採用するアナログ基地局2の送信電波を受信して復調することができる。よって、移動局装置100の制御部15は、その送信電波に含まれるパイロット信号(基地局を識別する信号)を検出することによりアナログ基地局2との同期を確立する。そして、制御部15は、アナログ/ディジタル共用送信部14に対してアナログモードでの送信開始を指示する。この指示を受けたアナログ/ディジタル共用送信部14は、アナログモードでの送信を開始する。これにより、移動局5はアナログ基地局2と双方向の通信が可能になる。
【0025】
同様に、移動局5(移動局装置100)がアナログ無線方式区間からディジタル無線方式区間に移動する場合については、アナログ/ディジタル共用受信部13およびアナログ/ディジタル共用送信部14が、アナログ無線方式からディジタル無線方式に切り替わることにより、アナログ基地局2からディジタル基地局1へと継続して双方向通信が可能になる。
【0026】
以上のように、この実施の形態1によれば、LCX3,LCX4から漏れ出る電波を受信するアナログ/ディジタル共用受信部13を移動局装置100が搭載するように構成したので、移動局装置100がアナログ無線方式のエリアとディジタル無線方式のエリアをまたがって走行しても、ディジタル基地局1,アナログ基地局2との通信を継続することができる。しかも、アナログ無線機とディジタル無線機との両方を実装し、同時に動作させる必要がないため、装置の小型化、低消費電力化を図ることができる。
【0027】
なお、以上では通信方式のディジタル/アナログは一例であり、第1通信方式と第2通信方式とが異なればよい。通信方式が異なる他の例として、
(1)第1通信方式と第2通信方式の変調方式が異なる場合でも構わない。例えば第1通信方式と第2通信方式とがともにディジタル通信方式であり、第1通信方式がBPSK(Binary Phase Shift Keying)であり、第2通信方式がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)であるような場合でもよい。
(2)また、他の例として、第1通信方式がTDMA(Time Division Multiple Access)であり第2通信方式がCDMA(Code Division Multiple Access)のような場合でもよい。
(3)また、他の例として、1通信方式と第2通信方式の伝送速度が異なる場合でも構わない。1通信方式の伝送速度が64kbpsであり、第2通信方式の伝送速度が384kbpsのような場合である。
(4)また、他の例として、第1通信方式と第2通信方式の周波数配置が異なる場合でも構わない。
【0028】
実施の形態1の移動局装置100は、ディジタル無線方式とアナログ無線方式とのいずれの通信方式も選択可能な通信部50と、判定用情報に基づいてディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちどちらを選択すればよいかを判定する判定部16を備えたので、どちらの無線方式を採用する区間においても通信することができる。また、無線方式ごとに通信装置を設ける必要がないので、省電力と装置の小型化を図ることができる。
【0029】
実施の形態1の移動局装置100は、判定部16が位置情報を入力して選択するべき通信方式を判定するので、選択するべき通信方式を簡単に判定することができる。
【0030】
実施の形態2.
次に図5、図6参照して実施の形態2を説明する。実施の形態2は、図2のアナログ/ディジタル共用受信部13が電界強度測定部60を備える実施形態である。実施の形態2は、アナログ/ディジタル共用受信部13が電界強度測定部60を備えることが特徴である。移動局装置100の全体構成は図2と同様である。なお、電界強度測定部60はアナログ/ディジタル共用受信部13が備える構成であるが、これは一例であり、アナログ/ディジタル共用受信部13が備えなくても構わない。移動局装置100が備える構成であれば構わない。
【0031】
図5は、実施の形態2に係るアナログ/ディジタル共用受信部13の構成を示す。アナログ/ディジタル共用受信部13は、アナログ/ディジタル共用復調部21と、電界強度測定部60と備える。
【0032】
電界強度測定部60は、アナログ波受信電界検出部22と、ディジタル波受信電界検出部23と、アナログ波受信レベル判定部24と、ディジタル波受信レベル判定部25とを備える。
【0033】
図5においてアナログ/ディジタル共用復調部21は、受信信号を入力し、復調処理した信号を出力する。このアナログ/ディジタル共用復調部21は、外部からの切り替え指示(切替信号)に従い、ソフトウエアを切り替えることで復調する無線方式を切り替える機能を有する。このアナログ/ディジタル共用復調部21は、無線方式をアナログ無線方式、ディジタル無線方式のいずれかに切り替えることができる。
【0034】
次に図6を参照して電界強度測定部60の構成要素の動作を説明する。図6は、ディジタル基地局1が送信する電波(第1方式電波の一例)とアナログ基地局2が送信する電波(第2方式電波の一例)との無線キャリア周波数配置(搬送波の周波数分布)を示す図である。図において横軸は周波数を示し、縦軸は電界レベルを示す。図6は、アナログ方式のキャリア配置と、ディジタル方式のキャリア配置とを示している。図に示すように、アナログ方式とディジタル方式とでは、キャリア周波数分布が異なっている。
【0035】
アナログ波受信電界検出部22は、アナログ無線方式特有の電界レベルを測定する。アナログ無線方式特有の電界レベルとは、たとえば図6におけるアーイ間、ウーエ間、カーキ間のように、ディジタル無線方式の場合に信号が存在しない周波数帯域の受信電界レベルのことを言う。アナログ波受信電界検出部22は、このアーイ間、ウーエ間、カーキ間の周波数帯域の電界レベル(受信電界強度)を測定する。
【0036】
同様にディジタル波受信電界検出部23は、ディジタル無線方式特有の電界レベルを測定する。ディジタル無線方式特有の電界レベルとは、たとえば図6におけるクーケ間のように、アナログ無線方式の場合に信号が存在しない周波数帯域の受信電界レベルのことを言う。ディジタル波受信電界検出部23は、クーケ間の周波数帯域の電界レベル(受信電界強度)を測定する。
【0037】
アナログ波受信レベル判定部24及びディジタル波受信レベル判定部25は、自身の内部に事前に設定された閾値を保持する図示していないメモリ(記憶部)を有する。アナログ波受信レベル判定部24及びディジタル波受信レベル判定部25は、アナログ波受信電界検出部22、ディジタル波受信電界検出部23のが測定した電界レベルと、前記メモリに保持している閾値との大小比較を行う。そして比較結果(測定結果の一例)を判定部16に出力する。判定部16は、これらの比較結果をもとに、現時点で選択するべき無線方式を判定し制御部15へ出力する。
【0038】
以上のように実施の形態2のアナログ/ディジタル共用受信部13は、アナログ無線方式およびディジタル無線方式のそれぞれに特有の電界レベルを測定する電界強度測定部60を備えたので、電界レベルに基づき、現時点で選択すべき無線方式を判定することができる。よって、判定部16において位置情報のみならず電界レベル情報をもとにシステム切り替えを行うよう動作させることにより、より確実なシステム切り替えを実現することが可能となる。
【0039】
実施の形態2の移動局装置100は、電界強度測定部60が電界レベルを測定し、判定部16がその測定結果に基づいて判定するので、判定の確実性を高めることができる。
【0040】
実施の形態2の移動局装置100は、電界強度測定部60が、ディジタル無線方式による搬送波とアナログ無線方式による搬送波との周波数分布の相違に基づき電界レベルを測定し、この測定結果に基づき判定部16が判定するので、判定の確実性をいっそう高めることができる。
【0041】
実施の形態3.
図7、図8を用いて実施の形態3を説明する。実施の形態3は、実施の形態1に係る移動局装置100の動作を、方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体により実施する実施形態である。
【0042】
前記の実施の形態1においては、図2に示す移動局装置100の各構成要素の動作は互いに関連しており、動作の関連を考慮しながら、一連の工程に置き換えることができる。構成要素の動作を一連の工程に置き換えることにより、通信方式選択方法の実施形態とすることができる。
【0043】
図7は、図2に示した移動局装置100の判定部16の動作及び制御部15の動作を一連の工程に置き換えて通信方式選択方法の実施形態としたフローチャートを示す。実施の形態1で説明したように移動局装置100は、ディジタル無線方式(第1通信方式)を用いて通信を行なうディジタル基地局1(第1基地局)が管轄するディジタル無線方式区間(第1管轄領域)と、アナログ無線方式(第2通信方式)を用いて通信を行なうアナログ基地局(第2基地局)が管轄するアナログ無線方式区間(第2管轄領域)とを移動する移動局5に装備される。移動局装置100は、ディジタル無線方式とアナログ無線方式とのいずれの通信方式も選択可能な通信部50を備える。この通信部50は、ディジタル無線方式区間では、選択したディジタル無線方式によりディジタル基地局1と通信を行なう。また、アナログ無線方式区間では、選択したアナログ無線方式によりアナログ基地局2と通信を行なう。
【0044】
S110は、ディジタル無線方式(第1通信方式)とアナログ無線方式(第2通信方式)とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した判定用情報に基づいてディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する工程である。S120は、選択するべきと判定した通信方式を通信部50に選択させる工程である。
【0045】
また、上記S110、S120の工程を、各構成要素の処理と置き換えることにより、無線方式選択プログラムの実施形態とすることができる。また、この無線方式選択プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録させることで、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態とすることができる。
【0046】
プログラムの実施の形態及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態は、すべてコンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。
【0047】
図8は、図2の移動局装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図8において、移動局装置100はCPU(Central Processing Unit)を備えるコンピュータである。図のように、移動局装置100は、プログラムを実行するCPU710を備えている。CPU710は、バス711を介してROM712、RAM713、液晶ディスプレイ714、K/B715、マウス716、FDD(Flexible Disk Drive)717、CDD(Compact Disk Drive)718、磁気ディスク装置720、及び通信部730と接続されている。
【0048】
磁気ディスク装置720には、オペレーティングシステム(OS)721、ウィンドウシステム722、プログラム群723、ファイル群724が記憶されている。プログラム群723は、CPU710、OS721、ウィンドウシステム722により実行される。
【0049】
上記プログラム群723には、実施の形態1の図2の説明において「〜部」として説明した機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU710により読み出され実行される。
【0050】
図2の移動局装置100と図8のハードウェア構成との対応関係を説明する。図2の移動局装置100における判定部16の動作及び制御部15の動作は、プログラムにより実施される。プログラムは、磁気ディスク装置720のプログラム群723に記憶されている。あるいは、ROM712にあらかじめ記憶されている。
【0051】
また、通信部50の動作は、通信部730及びプログラムにより実施される。
【0052】
また、図2における通信部50、判定部16、制御部15等の動作は、ROM731に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、ハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
【0053】
プログラムの実施の形態及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態における各処理は、プログラムで実行されるが、このプログラムは、前述のようにプログラム群723に記録されている。そして、プログラム群723からCPU710に読み込まれ、CPU710によって、プログラムの各処理が実行される。
【0054】
実施の形態3の通信方式選択方法は、ディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した判定用情報に基づいてディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する工程と、選択するべきと判定した通信方式を通信部に選択させる工程とを備えたので、どちらの無線方式を採用する区間においても通信することができる。また、無線方式ごとに通信装置を設ける必要がないので、省電力と装置の小型化を図ることができる。
【0055】
実施の形態3の通信方式選択プログラムは、ディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した判定用情報に基づいてディジタル無線方式とアナログ無線方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する処理と、選択するべきと判定した通信方式を通信部に選択させる処理とをコンピュータである移動局装置に実行させるので、どちらの無線方式を採用する区間においても通信することができる。また、無線方式ごとに通信装置を設ける必要がないので、省電力と装置の小型化を図ることができる。
【0056】
以上の実施の形態で説明した列車無線システムは、異なる無線システム間を移動する移動局が基地局と通信する列車無線システムにおいて、移動局に下記の(1)〜(6)を備えることにより、より小型、低消費電力で無線方式のシステム切り替えを実現することを特徴とする。
(1)無線信号を送受するアンテナ
(2)送信信号と受信信号を分離する分波器
(3)実装するソフトウエアの切替により、異なる無線方式での受信方式の切替ができる受信機
(4)実装するソフトウエアの切替により、異なる無線方式での送信方式の切替ができる送信機
(5)送受信機に対してシステム切り替え指示などの制御を行う制御部
(6)位置情報や、受信部からの受信電界情報などの判定用情報に基づき、移動局装置が現時点でどちらのシステム(管轄領域)にいるかを判定する判定部
【0057】
以上の実施の形態で説明した列車無線システムは、異なる無線システムの無線キャリア配置の差異を利用して、その差異部分の受信電界レベルを検出する機能を移動局受信機に有することで、より確実に装置内の無線方式を切り替えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施の形態1における無線システムの構成を示す。
【図2】実施の形態1における移動局装置100の構成を示す。
【図3】実施の形態1における移動局装置100の動作を示す。
【図4】実施の形態1における無線方式の切換の説明を示す。
【図5】実施の形態2における移動局装置の構成を示す。
【図6】実施の形態2における無線キャリアの周波数配置の一例を示す。
【図7】実施の形態3における方法発明の工程を示す。
【図8】実施の形態3における移動局装置100のハードウェア構成を示す。
【符号の説明】
【0059】
1 ディジタル基地局、2 アナログ基地局、3,4 LCX、5 移動局、6 ゾーン境界、11 アンテナ、12 分波器、13 アナログ/ディジタル共用受信部、14 アナログ/ディジタル共用送信部、15 制御部、16 判定部、21 アナログ/ディジタル共用復調部、22 アナログ波受信電界検出部、23 ディジタル波受信電界検出部、24 アナログ波受信レベル判定部、25 ディジタル波受信レベル判定部、50 通信部、60 電界強度測定部、100 移動局装置、710 CPU、711 バス、712 ROM、713 RAM、714 液晶ディスプレイ、715 キーボード、716 マウス、717 FDD、718 CDD、720 磁気ディスク装置、721 OS、722 ウィンドウシステム、723 プログラム群、724 ファイル群、730 通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信方式を用いて通信を行なう第1基地局が管轄する第1管轄領域と、前記第1通信方式と異なる第2通信方式を用いて通信を行なう第2基地局が管轄する第2管轄領域とを移動する移動局に装備されるとともに、前記第1管轄領域で前記第1通信方式を用いて前記第1基地局と通信を行ない前記第2管轄領域で前記第2通信方式を用いて前記第2基地局と通信を行なう移動局装置において、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのいずれの通信方式も選択可能な通信部と、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した前記判定用情報に基づいて前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する判定部と、
前記判定部が選択するべきと判定した通信方式を前記通信部に選択させる制御部と
を備えたことを特徴とする移動局装置。
【請求項2】
前記移動局装置は、さらに、
前記第1基地局が前記第1通信方式により送信した第1方式電波と前記第2基地局が前記第2通信方式により送信した第2方式電波とを受信し、受信した前記第1方式電波と前記第2方式電波との受信電界強度を測定し、測定結果を出力する電界強度測定部を備え、
前記判定部は、
前記判定用情報として前記電界強度測定部が出力した前記測定結果を入力し、入力した前記測定結果に基づいて前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定することを特徴とする請求項1記載の移動局装置。
【請求項3】
前記電界強度測定部は、
搬送波の周波数分布が互いに相違する前記第1方式電波と前記第2方式電波とを受信し、受信した前記第1方式電波と前記第2方式電波との搬送波の周波数分布の相違に基づいて前記第1方式電波と前記第2方式電波との受信電界強度を測定し、測定結果を出力することを特徴とする請求項2記載の移動局装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記判定用情報として自装置の位置を示す位置情報を入力し、入力した前記位置情報に基づいて、前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定することを特徴とする請求項1記載の移動局装置。
【請求項5】
前記第1通信方式は、ディジタル無線方式であり、
前記第2通信方式は、アナログ無線方式であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の移動局装置。
【請求項6】
第1通信方式を用いて通信を行なう第1基地局が管轄する第1管轄領域と、前記第1通信方式と異なる第2通信方式を用いて通信を行なう第2基地局が管轄する第2管轄領域とを移動する移動局に装備されるとともに、前記第1通信方式と前記第2通信方式とのいずれの通信方式も選択可能であり前記第1管轄領域では選択した前記第1通信方式により前記第1基地局と通信を行ない、前記第2管轄領域では選択した前記第2通信方式により前記第2基地局と通信を行なう通信部を備えた移動局装置に対して、前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれかを選択させる通信方式選択方法において、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した前記判定用情報に基づいて前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する工程と、
選択するべきと判定した通信方式を前記通信部に選択させる工程と
を備えたことを特徴とする通信方式選択方法。
【請求項7】
第1通信方式を用いて通信を行なう第1基地局が管轄する第1管轄領域と、前記第1通信方式と異なる第2通信方式を用いて通信を行なう第2基地局が管轄する第2管轄領域とを移動する移動局に装備されるとともに、前記第1通信方式と前記第2通信方式とのいずれの通信方式も選択可能であり前記第1管轄領域では選択した前記第1通信方式により前記第1基地局と通信を行ない、前記第2管轄領域では選択した前記第2通信方式により前記第2基地局と通信を行なう通信部を備えたコンピュータである移動局装置に対して、前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれかを選択させる通信方式選択プログラムにおいて、
前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかの判定に使用する判定用情報を入力し、入力した前記判定用情報に基づいて前記第1通信方式と前記第2通信方式とのうちいずれを選択するべきかを判定する処理と、
選択するべきと判定した通信方式を前記通信部に選択させる処理と
を前記移動局装置に実行させることを特徴とする通信方式選択プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−324958(P2006−324958A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146391(P2005−146391)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】