説明

移動局

【課題】 音声通信中(又はデータ通信中)において、BTクライアント(BT端末)から次のデータ通信(又は音声通信)の接続要求が到来すると、現在通信中の都合を判断して前記接続要求を受け入れるかどうかを決めることができるBTサーバ(移動局)を提供する。
【解決手段】 ハンズフリーユニット100(BTクライアント)と携帯電話300(BTサーバ)間のBT(ブルートゥース)のHFP手順により、ハンズフリーユニット100、携帯電話300、基地局400を経由した通話中処理S4を行う。その通話中に、パソコン200(BTクライアント)からデータ通信のためのDUN接続要求S5が到来すると、携帯電話300は、BTプロファイルのマルチ動作は可能でありDUN接続そのものは接続可能ではあるが、上位のアプリレイヤは現在通話中S4でありデータ通信とのマルチ動作はできないため、DUN接続NG信号S6をパソコン200に返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信機能およびブルートゥース(TM)通信機能を有する移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術1)
腕時計型端末、携帯電話機、および基地局を備えた通信システムがある(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の通信システムにあっては、腕時計型端末と携帯電話機間でブルートゥース通信、携帯電話機と基地局間で移動通信を行う。そして、データ通信やハンズフリー通話それぞれ単独のブルートゥース手順が記載されている。
【0003】
(背景技術2)
端末装置、移動局、および基地局を備えた通信システムがある(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2の通信システムにあっては、端末装置と移動局間でブルートゥース通信、移動局と基地局間で移動通信を行う。そして、BT(ブルートゥース)のDUNプロファイルによるデータ通信からHFPプロファイルによる音声通信に切り替える手順が記載されている。その手順は、DUNプロファイルによるデータ通信中に、基地局から移動局へ音声着信呼出しがあると、移動局(BTサーバ)がトリガとなって特殊な手順のデータサービス切断要求を端末装置(BTクライアント)へ送信する。そして、移動局(BTサーバ)および端末装置(BTクライアント)は、DUNプロファイルによるデータ通信を切断し、HFPプロファイルによる音声通信に切り替えるものである。これにより、データ通信中に音声通信に移行することができる。
【特許文献1】特開2002−125039号公報(第10頁、第12頁、図13、図16)
【特許文献2】特開2005−110048号公報(第16〜20頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1に開示された通信システムでは、データ通信やハンズフリー通話それぞれが終了してから次のデータ通信やハンズフリー通話に移行することはできるが、データ通信やハンズフリー通話の通信中において、次のデータ通信やハンズフリー通話に移行する記載はない。
従来の特許文献2に開示された通信システムでは、移動局(BTサーバ)からのデータサービス切断要求であり、移動局(BTサーバ)と端末装置(BTクライアント)は共に、特殊な手順のデータサービス切断要求を備える必要がある。また、移動局(BTサーバ)は、基地局から移動局へ音声着信呼出しがあると、データ通信中の都合に関わらず、データ通信を切断して無条件で音声通信に切り替えている。そのため、データ通信の内容によっては問題となることもある。また、端末装置(BTクライアント)からのデータサービス切断要求についての記載はない。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、データ通信や音声通信の通信中において、BTクライアント(BT端末)から次のデータ通信や音声通信の接続要求が到来すると、BTサーバ(移動局)は、現在通信中のデータ通信や音声通信の都合を判断して前記接続要求を受け入れるかどうかを決めることができる移動局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の移動局は、音声通信サービスを行う音声通信サービス手段と、データ通信サービスを行うデータ通信サービス手段と、ブルートゥース通信の音声通信に関するプロファイルとデータ通信に関するプロファイルのマルチ動作を行うプロファイルサービス手段と、前記音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行中に、新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスのための前記音声通信に関するプロファイル接続要求またはデータ通信に関するプロファイル接続要求を受信した時に、音声通信に関するプロファイル接続拒否またはデータ通信に関するプロファイル接続拒否を応答する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、データ通信や音声通信の通信中において、BTクライアント(BT端末)から次のデータ通信や音声通信の接続要求が到来すると、BTサーバ(移動局)は、現在通信中のデータ通信や音声通信の都合を判断して前記接続要求を受け入れるかどうかを決めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の各実施例に係る通信システムの構成図である。通信システムは、ハンズフリーユニット100、パソコン200(パーソナルコンピュータ)、携帯電話300(移動局)、移動通信の基地局400などから構成される。ハンズフリーユニット100とパソコン200は、ブルートゥース通信機能を有するBT(ブルートゥース)端末である。ハンズフリーユニット100は、マイクロホンとスピーカを有して、ブルートゥース通信によるハンズフリー通話を行う。また、ハンズフリーユニット100は、データ通信機能を備えてもよい。パソコン200は、データ通信機能を有して、ブルートゥース通信によるデータ通信を行う。また、パソコン200は、通話機能を備えてもよい。
【0009】
携帯電話300は、移動通信機能およびブルートゥース通信機能を有し、移動通信基地局400との間で移動通信を行うと共に、BT端末との間でBT通信を行う。携帯電話300のブルートゥース通信機能は、複数のBTプロファイルをマルチ動作させることができるものとする。また、携帯電話300は、ブルートゥース通信レイヤの上位のアプリケーションレイヤとして、音声通信機能およびデータ通信機能を有するが、この両機能についてはマルチ動作はできず、シングル動作しかできないものとする。
なお、BT端末は、ハンズフリーユニット100やパソコン200に限らず、他のBT機能を有する端末であってもよい。また、移動局は、携帯電話300に限らず、他の移動局であってもよい。
【0010】
図2は、本発明の各実施例に係る携帯電話の関連部分のブロック図である。携帯電話300は、マイクロホン1、スピーカ2、キー入力部3、表示部4、主制御部5、移動通信部6、アンテナ7、BT通信部8、アンテナ9、音声通信サービス部10、データ通信サービス部11、HFPサービス部12、DUNサービス部13、BTサービス制御部14などから構成される。マイクロホン1とスピーカ2は、ユーザとの間の音声入出力インターフェースである。キー入力部3と表示部4は、ユーザとの間の操作および表示インターフェースである。主制御部5は、携帯電話300の全体制御を行う。移動通信部6とアンテナ7は、基地局400との間で移動通信の無線処理を行う。BT通信部8とアンテナ9は、BT端末との間でBT通信の無線処理を行う。
【0011】
音声通信サービス部10は、音声通信サービスを行う。データ通信サービス部11は、データ通信サービスを行う。この音声通信サービスとデータ通信サービスは、携帯電話300の上位アプリケーションレイヤの処理であり、この両機能についてはマルチ動作はできず、シングル動作しかできないものとする。これは、この両機能はリソース負担が大きいために、マルチ動作を行うためには、ハードウェア、ソフトウェアの増大を招くからである。
【0012】
HFPサービス部12は、音声通信サービス用に定義されたBTプロファイルであるHFP((Hands Free Profile)のサービス制御を行う。DUNサービス部13は、データ通信サービス用に定義されたBTプロファイルであるDUN(Dial Up Network)のサービス制御を行う。このプロファイルのマルチ動作については、BT Multi-Profile Technical Reference(MCPC)において、接続確立手順が規格化されており、携帯電話300は、プロファイルのマルチ動作ができるものとする。BTサービス制御部14は、音声通信、データ通信の使用状態を管理し、新たなDUN接続要求もしくはHFP接続要求に対するBTサービスの統括制御を行う。
【実施例1】
【0013】
図3は、本発明の実施例1に係る通信システムのシーケンス図である。実施例1は、通話中に新たに到来したデータ通信の要求を拒否する例である。まず、BT端末の1つであるハンズフリーユニット100は、BTクライアントとして、音声通信のためのHFP接続要求S1を携帯電話300に送信する。携帯電話300は、BTサーバとして、下位のBTレイヤがBT通信の処理を行う。BTレイヤは、HFP接続要求S1を受信すると、HFP接続OK信号S2をハンズフリーユニット100へ返信する。そして、HFP手順S3が繋がる。そして、携帯電話300の上位のアプリレイヤは、音声通信サービス処理を行い、ハンズフリーユニット100、携帯電話300、基地局400を経由した通話中処理S4に入り、ユーザは、ハンズフリーユニット100を使って、通話相手の図示しない電話機との間で通話を行う。
【0014】
次に、通話中S4中に、BT端末の1つであるパソコン200が、BTクライアントとして、データ通信のためのDUN接続要求S5を携帯電話300に送信したとする。携帯電話300は、現在通話中S4であり、図示しないが、BTレイヤは、上位のアプリレイヤから、現在通話中であることを入手しておく。携帯電話300のBTレイヤは、DUN接続要求S5を受信すると、BTプロファイルのマルチ動作は可能でありDUN接続そのものは接続可能ではあるが、上位のアプリレイヤは現在通話中S4でありデータ通信とのマルチ動作はできないため、DUN接続NG信号S6をパソコン200に返信する。パソコン200は、DUN接続NG信号S6を受信することで、データ通信が不可能であることを理解することができる。
【0015】
実施例1によれば、BTクライアント(BT端末)からの新たなBTの接続要求に対して、BTサーバ(移動局)は、BTのマルチプロファイル動作が可能であっても、BTの接続NGを応答することにより、新たなデータ通信または音声通信を受け入れられないことをBTクライアント(BT端末)に通知することができる。
【実施例2】
【0016】
図4は、本発明の実施例2に係る通信システムのシーケンス図である。実施例2は、通話中に新たに到来したデータ通信の要求を拒否する例である。実施例1の図3と同じシーケンスについては同じシーケンス番号を付して、異なる箇所を主に説明する。通話中S4中に、パソコン200が、DUN接続要求S5を携帯電話300に送信したとする。携帯電話300は、BTプロファイルのマルチ動作は可能でありDUN接続そのものは接続可能なため、BTレイヤは、一旦、DUN接続OK信号S16をパソコン200へ返信する。同時に、BTレイヤは、上位のアプリレイヤに対して、データ通信要求S17を送信する。
【0017】
アプリレイヤは、現在通話中S4中であり、データ通信とのマルチ動作はできないため、NG信号S18をBTレイヤに返信する。BTレイヤは、これを受信すると、データ通信拒否S19をパソコン200へ送信する。パソコン200は、データ通信拒否S19を受信することで、データ通信が不可能であることを理解することができる。
【0018】
実施例2によれば、BTクライアント(BT端末)からの新たなBTの接続要求に対して、BTサーバ(移動局)は、一旦、BTの接続OKを応答し、上位アプリレイヤの状態を確認してから通信拒否を送信することにより、新たなデータ通信または音声通信を受け入れられないことをBTクライアント(BT端末)に通知することができる。
【実施例3】
【0019】
図5は、本発明の実施例3に係る通信システムのシーケンス図である。実施例3は、通話を途中で切断してデータ通信に移行する例である。実施例1の図3と同じシーケンスについては同じシーケンス番号を付して、異なる箇所を主に説明する。通話中S4中に、パソコン200が、DUN接続要求S5を携帯電話300に送信したとする。携帯電話300のBTレイヤは、終話要求S26をアプリレイヤに送信する。アプリレイヤは、終話要求S26があったことを表示部4に表示したり、図示しないバイブレータやスピーカなどで報知する(S27)。また、図示しないが、通話中のシーケンスS4の中で、図示しないミックス回路等により終話要求音声信号をミックスしてハンズフリーユニット100へ送信してもよい。ユーザはそれらを見聞きして、終話に同意する決定キーを押下すると、それが検出される(S28でYES)。決定キーが押下されないでタイムアウトした場合もシーケンスS28でYESの処理へ進む。その後、基地局400との間で終話手順を行う(S29)。そして、OK信号S30をBTレイヤに返信する。
【0020】
BTレイヤは、終話要求が受け入れられたので、通話用のHFPの切断要求S31をハンズフリーユニット100に送信する。ハンズフリーユニット100は、HFP切断OK信号S32をBTレイヤへ返信する。BTレイヤはこれを受けて、先のDUN接続要求S5に対するDUN接続OK信号S33をパソコン200へ返信する。そして、DUN手順S34が繋がる。そして、パソコン200は、ATコマンドS35をBTレイヤへ送信する。BTレイヤは、OK信号S36をパソコン200へ返信すると共に、発信要求S37をアプリレイヤへ送信する。そして、アプリレイヤは、OK信号S38をBTレイヤへ返信し、データ通信サービス処理を行う。これにより、パソコン200、携帯電話300、基地局400を経由したデータ通信中処理S39に入り、パソコン200と図示しないデータ通信相手との間でデータ通信を行う。
【0021】
実施例3によれば、データ通信や音声通信の通信中において、BTクライアント(BT端末)が次のデータ通信や音声通信の接続要求を出すと共に、BTサーバ(移動局)は、BTのマルチプロファイル機能および、現在通信中のデータ通信や音声通信の都合を判断して前記接続要求を受け入れるかどうかを決めることが可能となる。
【0022】
なお、各実施例において、BT端末の1つであるハンズフリーユニット100がHFP接続要求S1を送信し、BT端末の別の1つであるパソコン200がDUN接続要求S5を送信したが、どちらが行っても良いし、または同じBT端末がHFP接続要求S1とDUN接続要求S5を送信してもよい。この同じBT端末がHFP接続要求S1とDUN接続要求S5を送信する場合には、携帯電話300は、同じBT端末に対応することになるため、BTの物理リンクは共通で、論理リンクは多重化して処理を行う。
また、HFPプロファイルに限らず、音声通信に関するプロファイルでもよい。DUNプロファイルに限らず、データ通信に関するプロファイルでもよい。
また、各実施例において、先に通話中であって、その後、データ通信の要求が到来したが、その逆であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の各実施例に係る通信システムの構成図。
【図2】本発明の各実施例に係る携帯電話の関連部分のブロック図。
【図3】本発明の実施例1に係る通信システムのシーケンス図。
【図4】本発明の実施例2に係る通信システムのシーケンス図。
【図5】本発明の実施例3に係る通信システムのシーケンス図。
【符号の説明】
【0024】
1 マイクロホン
2 スピーカ
3 キー入力部
4 表示部
5 主制御部
6 移動通信部
7 アンテナ
8 BT通信部
9 アンテナ
10 音声通信サービス部
11 データ通信サービス部
12 HFPサービス部
13 DUNサービス部
14 BTサービス制御部
100 ハンズフリーユニット
200 パソコン
300 携帯電話
400 移動通信基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声通信サービスを行う音声通信サービス手段と、
データ通信サービスを行うデータ通信サービス手段と、
ブルートゥース通信の音声通信に関するプロファイルとデータ通信に関するプロファイルのマルチ動作を行うプロファイルサービス手段と、
前記音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行中に、新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスのための前記音声通信に関するプロファイル接続要求またはデータ通信に関するプロファイル接続要求を受信した時に、音声通信に関するプロファイル接続拒否またはデータ通信に関するプロファイル接続拒否を応答する制御手段とを
具備することを特徴とする移動局。
【請求項2】
音声通信サービスを行う音声通信サービス手段と、
データ通信サービスを行うデータ通信サービス手段と、
ブルートゥース通信の音声通信に関するプロファイルとデータ通信に関するプロファイルのマルチ動作を行うプロファイルサービス手段と、
前記音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行中に、新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスのための前記音声通信に関するプロファイル接続要求またはデータ通信に関するプロファイル接続要求を受信した時に、音声通信に関するプロファイル接続可またはデータ通信に関するプロファイル接続可を応答すると共に、新たな音声通信サービス又はデータ通信サービス拒否を応答する制御手段とを
具備することを特徴とする移動局。
【請求項3】
音声通信サービスを行う音声通信サービス手段と、
データ通信サービスを行うデータ通信サービス手段と、
ブルートゥース通信の音声通信に関するプロファイルとデータ通信に関するプロファイルのマルチ動作を行うプロファイルサービス手段と、
前記音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行中に新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスのための前記音声通信に関するプロファイル接続要求またはデータ通信に関するプロファイル接続要求を受信した後に、前記実行中の音声通信サービス又はデータ通信サービスを切断し、その後、前記新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行する制御手段とを
具備することを特徴とする移動局。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行中に新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスのための前記音声通信に関するプロファイル接続要求またはデータ通信に関するプロファイル接続要求を受信した後に、前記実行中の音声通信サービス又はデータ通信サービスの切断可否をユーザに報知し、当該ユーザの許可入力があれば、前記実行中の音声通信サービス又はデータ通信サービスを切断し、その後、前記新たな音声通信サービス又はデータ通信サービスを実行することを特徴とする請求項3に記載の移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−142971(P2007−142971A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336178(P2005−336178)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】