説明

移動無線基地局

遠隔通信システムのための移動無線基地局は、送信または受信される信号を表す複数の成分信号の位相及び/または振幅を独立的に制御するためのベクトル変調器手段を含む。これらの成分信号が複数のアンテナ素子を通過する時に、成分信号の位相関係に従う方向にビームが形成される。本発明は更に、同一のアンテナに他の基地局を結合できるようにするインタフェース手段を含み、各基地局はそのビーム方向を独立的に制御することができる。基地局とアンテナとの間の等しくない、そして可変の成分信号経路長によって導入される誤差を補正するために、信号の位相を補償する手段が含まれている。ベクトル変調器手段は、それがより効率的に動作することができる低電力レベルにおいて動作するように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔通信システムに使用される移動無線基地局に関する。特定的には、本発明は、1組の移動体ユニットと通信するように配列されている複数の基地局から構成され、これらの複数の基地局がセルのネットワークを構成しているような移動遠隔通信システムに使用される移動無線基地局に関する。本発明は、一般に移動電話ネットワークと称されているこれらのセルラー移動ネットワークに特定の応用を有している。
【背景技術】
【0002】
セルラー移動無線ネットワークのオペレータは、一般に個々の基地局を使用する。各基地局は、通常は1またはそれ以上のアンテナを含む。セルラー移動無線ネットワークにおいては、アンテナの指向性の主ファクタは、カバレッジエリアを設定し、このカバレッジエリアを一般的に複数の重なり合ったセルに分割して各セルをそれぞれのアンテナ及び基地局に関連付けることである。各セルは、そのセル内の移動無線局と通信する基地局を含む。基地局自体は、他の通信手段によって相互接続されている。これらの通信手段は、通常は格子または網目構造に配列されている固定された陸線(ランドライン)、またはマイクロ波リンクからなり、移動無線局がカバレッジエリアを通して互いに、並びにセルラー移動無線ネットワーク外の公衆電話回線網と通信できるようにしている。
【0003】
通常、各基地局に関連付けられているのは、アンテナが取付けられているアンテナマストである。これらのマストを設置するには、それぞれのマスト毎に計画許可を必要とし、土地の賃貸または購入により設置コストが付加されるので問題が多い。従って、オペレータの間でアンテナ及びアンテナサイトを共用するような動きがある。
【0004】
それでも、それは問題を呈する恐れがある。各オペレータが各基地局に関連付けられている幾つかのアンテナを有し、各アンテナが1つのセルのカバレッジを与えるようになっていることが多い。典型的には、単一の基地局によってサービスを受けることができるのは、3または6の異なるセルである。各々がこれらのセル内にそれ自体のカバレッジを発生するオペレータの数が増加すると、これは急速に、1つのマスト上に受入れ難い数の離散したアンテナを要求するようになる。更に、相互干渉を回避するためにアンテナを十分に離間させる必要があるか、マストの高さを増加させる必要があるか、またはマストを強風に耐えるようにするためにより強い構造を使用する必要があるので、問題が悪化し、より多くの費用が必要になる。
【0005】
これを解決する方法は、複数のオペレータにマスト及びアンテナを共用させることである。技術的な、及び事業遂行上の問題から、そのようなことは行わない傾向にあった。これは、オペレータ間に干渉をもたらす信号を生じさせる恐れがあり、従ってシステムの性能に有害な効果を有している。
【0006】
更に、オペレータには、アンテナのカバレッジエリアを変化させる目的のために、“チルト”として知られているアンテナのボアサイトの仰角を調整できるようにしたいという要望が存在している。これは、例えばそのセル内に他の基地局またはアンテナが追加されたことによってネットワーク構造が変化した場合に有用である。このチルトは、機械的に、及び/または電気的に実現することができる。“機械的チルト”はアンテナレードームを物理的に移動させることを含み、一方“電気的チルト”はアンテナの異なる素子へ送る、またはこれらの素子から受信する電気信号間に位相シフトまたは時間遅延を与えることによって達成される。
【0007】
一般的にオペレータが異なれば異なるチルトを要求するが、これもアンテナ共用をより困難にする。明らかに、もし2つのオペレータが異なる機械的チルト設定を要求すれば、それらはアンテナを共有することはできなくなる。
【0008】
これを解決する方法は、機械作動の位相シフタのバンクをアンテナレードーム内に取付け、それらを複数の分離したアンテナとして配列されたアンテナ素子のアレイに接続し、各オペレータにレードーム内の1つのアンテナを制御させることである。このようにすると、オペレータは別のオペレータの信号に影響を与えることなくその信号の位相を制御することができる。これらは機械的システムに関連する共通の問題、即ち、それらの動作が低速であり、信頼できないという問題に当面する。それらがアンテナハウジング自体内で動作するので、それらは高い電力で(送信時に)、または極めて低い電力で(受信時に)動作しなければならない。これらのシステムを高電力で使用すると、基地局受信機の感度を低下させ得る不要な相互変調積を生成させる恐れがある。
【0009】
さらなる解決策は、アンテナハウジング内に電気的位相シフタを使用することである。これらの位相シフタは遠隔的に制御可能であり、従ってビームパターンの調整が容易になる。このアプローチに伴う別の問題は、アンテナから送信される全ての信号に、及びアンテナが受信する全ての信号の位相が何等かのシフトをすることである。従って、電気的チルトの独立制御は不可能である。
【0010】
可変角度の電気チルトを生成する上述したアプローチは、セルのカバレッジを調整するためにオペレータがビームの向きを僅かに変えることを望む場合に必要であり得るように、水平面内のビームパターンを変化させるのに適用することができる。この場合も、位相シフタに関連する問題と同じ問題を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の諸問題の少なくとも若干を解消するために、アンテナパラメータを独立的に制御することができるアンテナインタフェースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、複数の放射素子を有するアンテナシステムによってオペレータと、1またはそれ以上の移動ユニットとの間で信号を通信するための基地局が提供され、
前記システムは、信号を複数の成分信号として処理するように配列され、各成分信号はアンテナシステム内の1またはそれ以上の放射素子に関連付けられ、
変調手段は成分信号に複素重みを与えるように配列され、成分信号を加算するとそれらの複素重みの値に依存してアンテナビームの方向が決定されるようになっており、そして
成分信号への複素重みの付与と、関連する1または複数の放射素子への成分信号の供給との間に分割、混合、及び成分信号増幅手段が設けられ、分割及び混合手段は他のオペレータを同一アンテナシステムに接続することができるように配列されている、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明は、特に、異なるオペレータからの独立信号を混合するのに適している。各オペレータは、そのビームパラメータを制御するのに、それ自体の信号を除く何れの信号の知識をも必要としない。オペレータは、成分信号の複素振幅(即ち、位相及び/または振幅)を制御する手段によって、そのビームパターン、即ちその受信ビームパターン、またはその送信ビームパターンの何れかを制御することができる。
【0014】
好ましくは、成分信号の複素振幅をベクトルコントローラ(VC)によって制御する。VCは、それ自体の同相及び直交バージョンの量を互いに加算することによって信号を処理するデバイスである。これらの各量は、負の値を有することができるベースバンドまたは低周波数加算器信号によって決定される。このようにすると、VC入力に対するVC出力の振幅及び位相を完全に制御することができる。しかしながら、本発明の若干の実施においては、信号の位相だけを制御または変調するVCを使用することができる。
【0015】
このように成分信号を制御することによって、もし成分信号が垂直軸内に空間ダイバシティを有するアンテナシステムへ供給されるならば、送信または受信の何れかのビームの電気的チルトをオペレータの要求に合わせることができる。
【0016】
同様に、本発明によれば、もし成分信号が水平軸内に空間ダイバシティを有するアンテナシステムへ供給されるようになっていれば、水平軸内の放射パターンも制御することができる。
【0017】
好都合なことに、位相及び振幅の制御及び調整が低電力で行われ、また分離したユニットまたはアンテナレードームにおいてではなく基地局内部において遂行されるので、上述した従来技術の諸問題は本発明によって回避される。しかしながら、これは、アンテナインタフェースからアンテナレードームまで1より多くの接続を必要とする、つまり複数のケーブルまたは導波管を必要とすることを意味している。
【0018】
本発明に使用するのに適するアンテナシステムは、典型的には素子のアレイを含むであろう。これらの素子には、基地局が個々に、またはサブグループでの何れかでアクセスすることが可能である。
【0019】
本発明は、各基地局が水平軸または垂直軸の何れか、または両方におけるその信号の放射パターンを制御できるようにした複数の基地局と単一のアンテナシステムとの接続を提供する。これは、送信される信号の場合には、特定のアンテナ放射素子または素子のサブグループに関連する各基地局からの成分信号を電力コンバイナ手段を使用して結合し、複合成分信号を発生することによって遂行される。
【0020】
各基本アンテナ素子、または素子のサブグループによって受信される信号の場合には、信号は、受信された信号をアンテナ素子から各基地局へ供給するように分割手段によって分離される。各基地局は、普通の手法で、それに関連する信号を選択する。
【0021】
分割及び混合手段は、成分信号増幅手段とアンテナシステムとの間に配置することが好ましい。
【0022】
成分信号に対するVCの動作が、ビームの特性を制御する。アンテナ素子または素子のサブグループから送信される信号のベクトル和が送信時のビームを形成し、またアンテナ素子の間隔及び素子上の信号の相対位相シフトが形成されるビームの仰角及び方位角の両者内のパターンを限定するファクタである。当業者には、送信される信号の周波数のような、ビームパターンを限定する他のファクタは明白であろう。
【0023】
送信及び受信信号の位相が、従来技術のようにアンテナにおいてではなく、基地局において制御されるので、位相制御手段がアンテナにおけるその位相制御の効果を知ることが重要である。本発明の実施の形態は、基地局からある距離に位置決めされたアンテナを有することができ、またケーブル、導波管、または類似の構造によって両者を接続することができる。これらは、成分信号の位相に予測できない効果を有し得る。例えば、1つのケーブルが別のケーブルに対して何等かの引き伸ばしを受けるとそのケーブルの経路長が増加し、そのケーブルの出力における信号の位相をシフトさせる。このような引き伸ばしは熱膨張等のような多くの理由で発生し得る。
【0024】
本発明に使用されるアンテナは、基地局からそれへ送られる信号の相対位相を測定する較正手段を組入れることが好ましい。この較正手段は基地局と通信し、成分信号の所望の位相特性、及びアンテナにおける信号の実際の位相特性の両者を知る。これによって、VC内の位相をセットする時に、アンテナと基地局との間の接続の効果を斟酌することが可能になる。好ましくは、アンテナが更に、較正手段の一部として、基地局内で測定することができる信号をシステムの受信経路内へ注入する信号生成手段を含むことができる。得られた測定は、各受信側成分信号が通る経路差を補償するために使用することができる。
【0025】
較正手段がそのアンテナに接続されている全ての基地局と通信し、ある基地局が生成した、またはその基地局が受信した信号に対して高感度になるようにその基地局によって較正手段を切り替えることができるようにすることが好ましい。
【0026】
本発明の別の面によれば、少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する送信ビームの方向を制御する方法が提供される。本方法は、
第1の基地局において、送信される第1の信号を複数の成分信号に分割するステップと、
少なくとも1つの成分信号に1つの、または複数の複素重みを与え、それによって前記成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
成分信号を増幅及び混合手段へ供給してこれらの成分信号を送信に適する電力レベルにし、且つ成分信号を第2の基地局からの成分信号と混合させるステップと、
混合された成分信号をアンテナ素子または素子のグループへ供給し、これらの素子から送信させることによって前記1または複数の複素重みによって支配される方向に形成された第1の信号を表すエネルギのビームを発生させるステップと、
を含む。
【0027】
本発明のさらなる面によれば、少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する受信ビームの方向を制御する方法が提供される。本方法は、
アンテナにおいて、各々が受信素子または受信素子のグループに関係付けられている複数の成分信号を受信するステップと、
第1の基地局に向けられた成分信号を分割及びフィルタ手段を使用して分離し、成分信号を増幅手段を使用して増幅するステップと、
第1の基地局において、成分信号の少なくとも1つに1または複数の複素重みを与え、それによって成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
前記第1の基地局において、前記成分信号をビームフォーマ内で混合し、前記1または複数の複素重みによって支配される方向に受信ビームを発生させるステップと、
を含む。
【0028】
以下に、例示のための添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、移動無線基地局の放射ビームの方向を制御するための従来技術の方法を示している。この方法は、アンテナレードーム内に可変遅延システムを設けている。図には4つのチャネルが示されており、各チャネルは、各アンテナ素子1へのフィードの電気的長さを制御する手段2に接続されたアンテナ素子1を有している。電気的長さコントローラ2は、各信号経路を通る全ての信号が可変量だけ時間的にシフトされるように、個々の信号経路内において可変時間遅延を実現する。経路長は、チルト制御信号4を供給するチルト制御部分(図示してない)によってセットされる。信号は、分散形ネットワーク3内の単一のオペレータAのために分割(送信の場合)、または混合(受信の場合)される。単一の集合的な入力/出力5が、基地局(図示してない)から分散形ネットワークへ供給される。もしアンテナ素子1が垂直にスタックされていれば、遅延構造2を使用してアンテナ素子1上の信号の相対的遅延を適切に変化させることによって、ビームパターンのチルティングがもたらされる。このチルトは、全ての信号に発生するので、もしアンテナが2またはそれ以上のユーザの間で共用されていれば、チルトを個々に制御することは不可能になる。
【0030】
図2は、本発明の一実施の形態のブロック図である。本発明による移動無線基地局システム6は、アンテナシステム7に接続されている。接続は、4つのケーブル8a、8b、8c、8dを含む。4つのケーブル8の各々は、送信モード及び受信モードの両方において信号を輸送する。送信信号は、送信機9によって生成される。送信機の出力は、4つの等しい成分信号に分割され、各成分信号はそれぞれのベクトルコントローラ、または位相変調器10へ供給される。変調器10は、変調器の各出力が異なる位相であることができるように、それらの入力信号の相対位相を調整することができる。位相変調器10からの成分信号は電力増幅器段11において増幅され、デュプレクサ12及びケーブル8を通してアンテナシステム7へ送られる。基地局システム6は、他のオペレータがそれらの基地局をこのアンテナシステムへ接続することを可能にするスプリッタ/コンバイナネットワーク(図示してない)を含む。
【0031】
基地局システム6は、1組の低雑音増幅器(LNA)13を含む受信機器を有し、各増幅器13はアンテナ7からケーブル構造8及びデュプレクサ12を介して成分信号を受信する。次いで、LNAは信号をベクトルコントローラ即ち変調器回路14へ印加し、回路14の出力は加算器15へ印加され、加算器15は公知のフェーズドアレイ原理に従う単一のビームに形成された出力を発生する。これが受信機19に印加され、受信機19において普通の手法で処理される。この実施の形態においては、受信機19及び送信機9は最新式のアイテムであり、現在基地局応用に使用されているアイテムを大幅に変化させる必要がないことに注目されたい。また、この実施の形態に示されている送信及び受信のための成分信号及びそれらに関連する増幅器及び変調器の数は、明瞭化のために4つに制限されているが、実際にはこれより多いことも、または少ないこともできることにも注目されたい。
【0032】
アンテナ7は、放射素子レイアウトに関しては従来技術のシステムに使用されているアンテナに類似している。しかしながら、既存アンテナが個々の放射素子からの信号を単一の出口ポート(または、ある場合には、特定の偏波のための単一のポート)内へ混合するのに対して、本発明と共に使用されるアンテナは、個々の素子または素子のサブグループへ異なる位相の信号を印加することによってビームパターンを制御するように、個々の放射素子への、または放射素子の小グループへのアクセスを与える。
【0033】
送信時には、図2の実施の形態は以下のように動作する。送信のために要求されるデータは送信機9へ入力される入力信号として構成され、送信機9はその信号を送信周波数へアップ変換する。送信機の出力は、低電力信号である。アップ変換された信号は、スプリッタ16によって(本例においては)4つの成分信号に分割される。スプリッタ16からの各信号出力は、ベクトル変調器回路10へ供給される。変調器10は、成分信号の位相及び振幅を他の成分信号に対して調整することができる。変調器10a及び10bは、それらがスタック#1から送信される信号の電気的チルトの角度を制御するように共働し、変調器10c及び10dは、それらがスタック#2から送信される信号の電気的チルトの角度を制御するように共働する。実際には、これらの角度は一般的に同一である。同様に、送信される信号のボアサイトの角度は、10aと10dとの間に、及び10bと10cとの間に適切な位相角をセットすることによって制御することができる。この点における成分信号は比較的低電力レベルにあり、従って高性能ベクトル変調器回路10を比較的安価に、且つ容易に製造することが可能である。ベクトル変調器10は、ビーム方向コントローラ17の制御の下にある。ベクトル変調器10の出力は電力増幅器11へ供給され、増幅器回路11は成分信号を送信のための正しいレベルまで増幅する。増幅された成分信号は、デュプレクサ12及びケーブル構造8を介してアンテナ7の個々のアンテナ素子へ供給され、素子は信号エネルギを自由空間内へ放射する。成分信号の相対位相が、得られる複合ビームのビームパターンを制御する。デュプレクサは、送信される信号が基地局の受信側と干渉することを防ぐ。
【0034】
図2の受信側は、同じように動作する。アンテナ7内のアンテナ素子によって受信された成分信号は、アンテナ7からケーブリング構造8を介して個々に移動基地局6へ供給され、次いでデュプレクサ12へ供給される。デュプレクサ12は、送信周波数の信号を濾波して除去して受信周波数の信号を残す。次に、成分信号は、低雑音増幅器13によって個々に増幅される。システムの雑音指数はLNA13、アンテナ7、及び関連ケーブリング8によって大きく支配されるので、LNA9を通る成分はそれらの雑音性能に関して臨界的である必要はない。各LNA13からの出力はベクトル変調器14へ印加され、変調器14は、上述したようにビーム方向コントローラ17の制御の下に成分信号の位相及び振幅を互いに制御し合う。位相及び振幅調整された信号は、コンバイナ15を使用してベクトル的に加算される。これは、受信ビームを限定する効果を有する。混合された受信信号は受信機19へ印加され、普通の手法で取扱われる。
【0035】
図2のアンテナ7には、ベクトル測定受信機(VMR)18が設けられている。VMR18は、その入力を送信される送信信号の何れへも選択的に切り替え、その信号の特性を測定することができる。アンテナ7が基地局6からある距離に取付けられていることが多く、ケーブリング構造8がアンテナ7と基地局6との間で引き渡される信号の位相を歪ませるのに十分に長いことがあり得るので、この実施の形態においてはこのようにすることが望ましい。例えば、ケーブル間の小さい温度差は、熱膨張によってそれらの相対的な長さを変化させ、従って成分信号間に位相誤差を発生させる。従って、VMR17の目的はアンテナにおける個々の位相を測定し、測定の結果を基地局へ中継することである。結果はビーム方向コントローラ(BDC)17において受信され、アンテナにおける実際の位相とBDC17によってセットされた位相とが比較される。これによって、ケーブル8を通しての送信によってもたらされる位相の何等かの誤差を打ち消すことができる。
【0036】
これは更に、受信経路を較正することができるように拡張することができる。これを行うために、ある信号をアンテナハウジング内の各受信経路内に注入し、既知の位相関係を有する1組の成分信号を発生させる。これらの信号の特性は、受信機19を使用して、または基地局内の分離した専用受信機を使用して測定することができ、その結果を、ベクトル変調器14を用いて何等かの位相誤差を補償するために使用する。この専用受信機の使用は、他の受信機の通常動作に影響を及ぼさないことを意味する。
【0037】
図2の実施の形態は、アンテナ素子の配列によって支配される単一の偏波のビームパターンを制御する実施の形態を示していることに注目されたい。しかしながら、実施の形態は単一の偏波での動作に制約されるものではなく、その代わりに、直交偏波のビームパターンの独立制御を有するようにすることができる。これは、直交アンテナへ別々にフィードすることを含み、これらのフィードは図2の実施の形態のように適当に重み付けされた成分信号によって駆動されよう。従って、成分信号の数を増加させ、これらを使用してビームの異なる面を制御することによってシステムの多様性を増すことができる。
【0038】
送信及び受信の両方に関して特定のビームパターンを得るために要求される成分信号の位相は、ビーム方向コントローラによって計算される。ビーム方向コントローラは、送信周波数の知識の他に、アンテナの物理特性の知識をも有している。図3aは、個々に駆動される基本アンテナe1、e2、e3の垂直スタックを示している。もし各基本アンテナeに供給される成分信号の全ての相対相差が0であれば、得られるビームはスキューを生ずることなくアレイから送信される。即ち、それはアンテナアレイの面に垂直な方向に送信される。もしアンテナ素子eの連続対に供給される成分信号間にθラジアンの相対位相シフトが与えられ、合計位相シフトがアレイにまたがって累積的に増加すれば、ビームの向きは次式によって与えられる角φラジアンだけ垂直からずれる。
sinφ=θλ/2πd 式1
ここに、λは送信される信号の波長であり、dはアンテナ素子間の間隔である。このようなスキューされたビームを図3bに示す。
【0039】
式1は、アンテナ素子が水平に取付けられていようと、垂直に取付けられていようと適用され、従ってボアサイト及び電気的チルトの角度の両者に適用される。
【0040】
図4は、1より多くの基地局を単一のアンテナに接続し、しかも各基地局がそのビームパターン(電気的チルト及びビームボアサイトの両者)を独立的に制御することができるようになっている本発明の実施の形態を示している。図示の基地局20、21は、アンテナコンバイナユニット(ACU)22によって単一のアンテナ23に接続されている。各基地局20、21は図2に示した型のものであり、各々は異なる周波数で動作する。オペレータAの基地局20は複数の送信ライン24を有している。これらの各ライン24は、単一のアンテナ素子または素子のグループから送信されるように設計されている成分信号に対応している。ライン24上の成分信号は、所望の電気的チルトの角度を達成するように位相及び振幅が適当に変調されている。オペレータBの基地局も類似する組のライン25を有しており、これらもその所望の電気的チルトの角度を達成するように変調されているが、必ずしもオペレータAが要求しているものと等しい必要はない。次いで両オペレータからの各組のライン24、25はACU22内において一緒に混合される。これは、先ず、その信号は通過させるが他のオペレータの信号は阻止できる特性を有するフィルタ28、29において各個々の成分ライン24、25をバンドパス濾波することによって行われる。次いで、各オペレータから同じアンテナ素子または素子のグループ26に向けられた成分信号を、互いの信号への相互干渉をもたらすことなく一緒に接続することができる。次いで、混合された成分信号はデュプレクサ27へ印加され、デュプレクサ27はフィルタを使用して送信信号が受信信号と干渉することを防ぐ(それらが異なる周波数であるものとする)。混合された成分信号は、ケーブリング30を介してアンテナ素子26へ送られ、送信される。
【0041】
オペレータA及びBの両方のための受信信号に対しては、類似プロセスが逆に遂行される。即ち、アンテナ素子26からの複数の成分信号は、ケーブリング30を介してデュプレクサ27へ送られ、個々に濾波されて1つのオペレータの信号が他のオペレータの信号から分離される。次いで、濾波された成分信号は適切な基地局へ送られ、そこで図2に関連して説明したようにベクトルコントローラを使用して混合される。
【0042】
混合された成分信号30は、各オペレータ毎の成分信号の位相及び振幅を測定することができるベクトル測定受信機(VMR)31へも送られる。任意の時点には、VMR31はVMRデータハブ34の制御の下にある。VMRデータハブ34自体は基地局20、21の一方の制御下にあり、どの成分信号を測定するのかを受信機31に告げる。この測定からのデータは基地局へ送られ、基地局において成分信号の複素重み補正を行うために使用することができる。同様に、ケーブリング30、デュプレクサ27、フィルタ32、及び関連ケーブリングからなる受信経路は、スイッチ可能な信号発生器33を使用してある信号を各成分信号経路内へ導入し、基地局20または21において信号を測定することによって較正することができる。この場合も、これらの測定を使用して、受信した成分信号の複素重み補正を行うことができる。信号発生器33も、VMRデータハブ34の制御下にある。
【0043】
成分信号の変調がACU22の基地局側の各オペレータによって独立的に行われるので、各オペレータは、他のオペレータによって形成されるビームに何等かの有害な効果を与えることなく自身のビームパターンを制御することができる。勿論、当業者ならば、受動スプリッタ/コンバイナ及びフィルタのネットワークを適切に使用することによって、他の分割/混合手段の使用を可能にすることができよう。接続された基地局から送信される信号間の周波数の差のようなファクタに依存して、若干の方法が他の方法よりも適していることがあり得る。
【0044】
図5は、ビームを制御できるように成分信号を制御するために使用される一方法の詳細を示している。この特定の実施の形態においては、送信ベクトルコントローラを使用して低周波数における成分信号の位相を制御している。図には、2つの成分信号変調器100、101の詳細が示されている。第2のチャネル101は、ベクトルコントローラを組み入れた変調器を一般化したものであり、後続するチャネルに使用するために繰り返すことができる。
【0045】
変調器100は、1対のローパスフィルタ107に接続されている直並列変換器を含み、各フィルタ107はディジタル・アナログ変換器(DAC)200へ接続されている。各DAC200のアナログ出力は、ミキサ回路201へ印加される。各ミキサ201への他の入力は、局部発振器202から印加される。局部発振器202からミキサ201への信号の一方に−90°の位相シフトが与えられる。ミキサ201の出力は加算されて、変調されたRF出力203が作られる。このRF出力は送信周波数であることができ、その場合信号はRF増幅器へ印加される。またRF出力は中間周波数(IF)であることができ、その場合それはさらなるミキシング段へ送られて送信周波数まで高められる。
【0046】
変調器100が、その成分出力を位相シフトさせる機能を有していないことに注目されたい。従って、この変調器100の出力は参照出力である。変調器101は変調器100と類似しているが、出力の位相を制御するためにベクトルコントローラ106が組み入れられていることが異なる。
【0047】
以下に、変調器100の動作を説明する。送信されるデータは、直列2進ストリーム102として変調器へ入力される。これは直並列変換器103への入力であり、直並列変換器103は2進ストリームの部分をそれぞれ表している2つの信号V1、V2を生成する。V1及びV2は共に、2進ストリーム102の半分のビットレートである。各信号は、アナログ信号V1’、V2’に変換される前に、空間効率を改善するためにルートレイズドコサインローパスフィルタ107を使用して濾波される。このフィルタの存在、及び正確な型は、使用される特定の応用に依存することに注目されたい。
【0048】
濾波された信号は、それらをRF周波数まで混合できるようにアナログ信号に変換される。混合はI−Q変調器内で行われ、第1の信号V1’は正弦波と混合され、信号V2’は第1の信号から90°だけ位相がずらされた正弦波と混合される。得られた両信号が加算されて、単一の変調された成分信号が作られる。
【0049】
変調器101は、それがベクトルコントローラ106を組み入れていることを除いて同じように動作する。このベクトルコントローラ106はディジタルドメインにおいて動作し、その入力として変調器100が使用するものと同じ情報、即ち信号V1及びV2を使用する。変調器101へは更に、位相制御信号108及び振幅制御信号109の2つの制御信号が印加される。ベクトルコントローラ106の出力は、次式によってそれぞれ与えられる2つの信号V3及びV4である。
3=K [V1cosφ−V2sinφ] 式2
4=K [V1sinφ+V2cosφ] 式3
【0050】
V3及びV4の位相は、2つの信号がI−Q変調器内において混合された時に、混合された信号が所望のビームを形成するために安定的に調整された位相を有するように、ベクトルコントローラによって調整される。
【0051】
変調器101は、必要に応じて残余の各成分信号毎に設けられる。送信される総合信号を構成する成分信号の最小数は2であるが、これより多くの成分信号を用いてビームパターンをより精密に制御することが可能である。しかしながら、これは費用及びシステムの複雑さを付加することになる。実際には、2乃至5を使用することが適当である。全ての変調器100、101等には、同じ参照源から導出された局部発振器(LO)信号202が印加され、LOから各I−Q変調器までの経路は位相整合していることが好ましい。しかしながら、もしこれらの経路の位相が整合していなければ、各ベクトルコントローラ106において適当な位相補正重みを与えることによって、位相誤差を補正することができる。
【0052】
ベクトルコントローラ106へ入力される位相制御信号108及び振幅制御信号109はそれぞれ、2つの主入力信号から導出される。位相制御信号108は、ビーム方向コントローラによって決定された所要位相から計算されるが、これはアンテナシステム自体内に取付けられているベクトル測定受信機(VMR)から印加されるフィーダ位相補正信号だけオフセットされている。このようにして、ラインの変化する長さによって導入された誤差が補正される。このメカニズムは、各I−Q変調器へのLOフィード信号内の何等かの位相誤差を補正するためにも使用することができる。同様に、振幅制御信号109は、ビーム方向コントローラからの大きさ信号、及びVMRからの補正信号の両方から導出される。
【0053】
図6に、低周波数において実現された受信側ビームフォーマの実施の形態を示す。3つのチャネル110、111、112が示されている。これらの受信I及びQデータはそれぞれ、別の受信機(図示してない)から印加される。各受信機は、単一のアンテナ素子または素子のグループからの信号を扱い、単一の成分信号を処理する。受信機のI及びQチャネルは、エイリアス除去フィルタ113、113’を使用して濾波した後にアナログ・ディジタル変換器(ADC)114、114’を使用してディジタル化される。チャネル110は参照チャネルであり、従って、そのI及びQ信号には位相または振幅変調を与える必要はない。従って、I及びQ信号はディジタル化した後、加算器116、116’へ入力される前にルートレイズドコサインフィルタ115、115’によって濾波される。
【0054】
チャネル111はチャネル110と類似しているが、それへのI及びQチャネル入力の位相及び/または振幅を変調することができるベクトルコントローラ117が追加されていることが異なる。位相及び振幅は、上述した理論から導出された所要位相値、及び不等経路長等に対する何等かの所要補正からなる入力204によって支配される。ベクトルコントローラ117の出力、即ち成分信号の1つの適切に位相シフトされたI及びQチャネルは、加算器116、116’への別の入力として供給される前に、ルートレイズドコサインフィルタ118、118’を使用して濾波される。
【0055】
さらなるチャネル112は、残余の成分信号を処理するために設けられている。実際には、受信時のチャネルの数は送信時の変調器の数に等しい。
【0056】
加算器116、116’の出力はそれぞれ、受信した信号のI及びQ経路の受信ビームである。これらは、普通の手法でデコーダ119においてデコードされる。
【0057】
図7は、上述した実施の形態の代替であって、位相シフティング及びビームフォーミングが低周波数においてではなく、RF周波数において行われる。詳述すれば、図7は、基地局の送信または受信経路内に使用することができる成分信号ベクトルコントローラを示している。送信側においては、送信される情報で適当に変調されているRF信号120が直交ハイブリッド121へ入力される。直交ハイブリッド121は入力120を2つの有用成分、即ち“同相”信号122及び“直交”信号123に分割する。これらの各信号122、123は乗算器124、125に印加される。各乗算器124、125への他の入力は、成分信号の所要位相及び大きさから導出された信号S1、S2である。これらの信号S1、S2はバイポーラ信号であり、S1、S2を適切に選択することによってコンバイナ127の出力の成分信号S(t)を任意の位相及び振幅にセットすることができる。図7の変調器は、次式を実現する。
S(t)=S1cos(2πft)+S2sin(2πft) 式4
ここに、S(t)は出力信号であり、入力信号はfHzの周波数を有している。従ってS(t)はS1及びS2の値に依存して、任意の位相を有することができる。S1及びS2は、図5に示したベクトルコントローラに使用されている入力と同じ入力に基づいてマイクロコントローラ128によって計算される。マイクロコントローラ128のディジタル出力を乗算器124、125が使用するのに適当なアナログ形状に変換するために、2つのDACが使用される。
【0058】
図8は、図7のベクトルコントローラが、本発明の基地局の送信部分内にどのように実現されているかを示している。送信機変調器129、発振器130、及び電力制御減衰器131は、通常の基地局と同じ手法でRF信号を生成する。このRF信号はスプリッタ132において分割され、成分信号が作られる。2ウェイスプリッタ132が図示されているが、実際には、ビームパターンをより精密に制御するためにより多くすることができる。各成分信号は、電力増幅器134を使用して送信に適するレベルまで増幅される前に、図7に関して説明したように、ベクトルコントローラ133を使用して変調される。
【0059】
これで、各成分信号は互いに適切な位相シフトされるので、それらが適切なアンテナ素子へ供給されて送信されると所望の特性を有するビームが形成される。
【0060】
図9は、図7のベクトルコントローラが、本発明の基地局の受信部分内にどのように実現されているかを示している。この特定の実施の形態は、CDMA、“第3世代”システムに使用するようになっている。2つの入力135、136が図示されており、各入力は他のオペレータをアンテナに結合するために使用される何等かの分割配列、及び受信信号から送信信号を分離するために使用されるデュプレクサを介して、アンテナ素子または素子のグループから印加される。各入力135、136は、入力帯域幅を減少させるように動作する相関解除(デコリレーション)コードを乗ずる前に、先ず低雑音増幅器137において増幅される。ビームフォーミングの前に相関解除を遂行するとシステムの雑音指数が改善されるので、より良好な信号が位相変調器へ供給される。各相関解除された信号は、図7に関して説明したように成分信号の位相を調整するベクトルコントローラ138へ印加される。ベクトルコントローラ138の出力は、コンバイナ139においてベクトル的に加算され、この加算プロセスによって受信ビームが形成される。得られた信号は、普通の手法でIF及び復調器回路140によって処理される。
【0061】
当業者には、本発明の範囲内において他の実施の形態を考案することができ、従って本発明は上述した実施の形態に限定されるものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】電気的チルトの角度を制御するための従来技術の方法を示すブロック図である。
【図2】基地局内のベクトルコントローラを使用してビーム方向を制御するための本発明の一実施の形態を示すブロック図である。
【図3】ビーム特性を制御するために、アレイにフィードされる信号に位相シフトを与える概念を示す図である。
【図4】2つのオペレータを単一のアンテナに結合するために使用される本発明を示すブロック図である。
【図5】本発明のベースバンド送信側回路内に使用されているベクトルコントローラを組み入れた基地局変調器の詳細を示すブロック図である。
【図6】本発明のベースバンド受信側回路内に使用されているベクトルコントローラを組み入れた基地局復調器の詳細を示すブロック図である。
【図7】処理をRF周波数において遂行するようになっている本発明の別の実施の形態に使用されているベクトルコントローラの詳細を示すブロック図である。
【図8】送信ビームを生成するために、処理をRF周波数において遂行するようになっている本発明の実施の形態の詳細を示すブロック図である。
【図9】受信ビームを生成するために、処理をRF周波数において遂行するようになっている本発明の実施の形態の詳細を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射素子を有するアンテナシステムによってオペレータと、1またはそれ以上の移動ユニットとの間で信号を通信するための基地局であって、
前記システムは、前記信号を複数の成分信号として処理するように配列され、前記各成分信号は前記アンテナシステム内の1またはそれ以上の放射素子に関連付けられ、
変調手段は、前記成分信号に複素重みを与えるように配列され、前記成分信号を加算することによって前記複素重みの値に依存するアンテナビーム方向が発生するようになっており、そして
前記成分信号への複素重みの付与と、関連する1または複数の放射素子を通過する前記成分信号との間に分割、混合、及び成分信号増幅手段が設けられ、前記分割及び混合手段は他のオペレータを同一アンテナシステムに接続できるように配列されている、
ことを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記基地局から離れた点において前記成分信号の特性を測定する目的のために較正手段が組み入れられていることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記較正手段は、前記アンテナの近傍に取付けられ、且つ前記アンテナに接続されている何れかのオペレータによって生成された成分信号の特性を測定するようにスイッチさせることができることを特徴とする請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
前記アンテナへ供給される前記成分信号周波数より低い成分信号周波数において、前記成分信号に複素重みを与えるように配列されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の基地局。
【請求項5】
前記基地局は、前記アンテナへ供給される前記成分信号周波数と実質的に同一の成分信号周波数において、前記成分信号に複素重みを与えるように配列されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の基地局。
【請求項6】
前記変調手段は、ベクトルコントローラを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の基地局。
【請求項7】
前記ベクトルコントローラは、前記各成分信号の相対位相を制御するように配列されていることを特徴とする請求項6に記載の基地局。
【請求項8】
前記ベクトルコントローラは、前記成分信号の振幅を制御するように配列されていることを特徴とする請求項6または7の何れかに記載の基地局。
【請求項9】
前記基地局と前記アンテナシステムとの間の信号経路差を補償することができるように較正手段が設けられていることを特徴とする先行請求項の何れかに記載の基地局。
【請求項10】
複数の個々の基地局を含む基地局システムであって、前記各個々の基地局は請求項1に記載の基地局であり、前記複数の基地局はインタフェース手段を介して共通アンテナシステムに接続され、前記インタフェース手段自体は増幅、分割、及び混合手段を含むことを特徴とする基地局システム。
【請求項11】
複数の放射素子を有するアンテナシステムによってオペレータと、1またはそれ以上の移動ユニットとの間で信号を通信するための基地局であって、
前記システムは、前記信号を複数の成分信号として処理するように配列され、前記各成分信号は前記アンテナシステム内の1またはそれ以上の放射素子に関連付けられ、
変調手段は、前記成分信号に複素重みを与えるように配列され、前記成分信号を加算することによって前記複素重みの値に依存するビームが発生するようになっており、そして
前記成分信号は、請求項1に記載の基地局の分割及び混合手段へ接続するのに適している、
ことを特徴とする基地局。
【請求項12】
少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する送信ビームの方向を制御する方法であって、
第1の基地局において、送信される第1の信号を複数の成分信号に分割するステップと、
少なくとも1つの前記成分信号に1または複数の複素重みを与え、それによって前記成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
前記成分信号を増幅及び混合手段へ供給して前記信号を送信に適する電力レベルにさせ、且つ前記成分信号を第2の基地局からの成分信号と混合させるステップと、
前記混合された成分信号をアンテナ素子または素子のグループへ供給し、前記素子から送信させることによって前記1または複数の複素重みによって支配される方向に形成された第1の信号を表すエネルギのビームを発生させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第2の基地局からの成分信号は、混合及び濾波手段を使用して前記第1の基地局からの成分信号と混合されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の基地局が生成する信号は、前記第1の基地局が生成する信号とは無関係であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する受信ビームの方向を制御する方法であって、
アンテナにおいて、各々が受信素子または受信素子のグループに関係付けられている複数の成分信号を受信するステップと、
第1の基地局に向けられた前記成分信号を分割及びフィルタ手段を使用して分離し、前記成分信号を増幅手段を使用して増幅するステップと、
前記第1の基地局において、前記成分信号の少なくとも1つに1または複数の複素重みを与え、それによって前記成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
前記第1の基地局において、前記成分信号をビームフォーマ内で混合し、前記1または複数の複素重みによって支配される方向に受信ビームを発生させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射素子を有するアンテナシステムによってオペレータと、1またはそれ以上の移動ユニットとの間で信号を通信するための基地局であって、
前記システムは、信号を複数の成分信号として処理するように配列され、各成分信号は前記アンテナシステム内の1またはそれ以上の放射素子に関連付けられ、
変調手段は前記成分信号に複素重みを与え、前記成分信号を加算することによって複素重みの値に依存するアンテナビームの方向を発生させるように配列されており、そして
前記成分信号への複素重みの付与と、関連する1または複数の放射素子への成分信号の供給との間に分割、混合、及び成分信号増幅手段が設けられており、
前記分割及び混合手段が各々異なる周波数で動作している他のオペレータを同時に同一アンテナシステムに接続することを可能にするインタフェースを組み入れており、前記システムが更に測定受信機、及びデータハブを含み、前記測定受信機が前記アンテナシステムの近傍において前記アンテナシステムに接続されている何れかの基地局によって生成された何れかの成分信号から複素測定を行い、前記測定を前記データハブを介して前記生成基地局へ供給し、前記基地局と前記アンテナとの間のフィーダ長の変化に起因する位相成分信号の位相を補正できるようにした、
ことを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記測定受信機が、前記アンテナシステムの近傍における異なる成分信号の間をスイッチ可能なように配列されていることを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記アンテナへ供給される前記成分信号周波数より低い成分信号周波数において、前記成分信号に複素重みを与えるように配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
前記基地局は、前記アンテナへ供給される前記成分信号周波数と実質的に同一の成分信号周波数において、前記成分信号に複素重みを与えるように配列されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の基地局。
【請求項5】
前記変調手段は、ベクトルコントローラを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の基地局。
【請求項6】
前記ベクトルコントローラは、前記各成分信号の相対位相を制御するように配列されていることを特徴とする請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
前記ベクトルコントローラは、前記成分信号の振幅を制御するように配列されていることを特徴とする請求項5または6の何れかに記載の基地局。
【請求項8】
単一のアンテナシステムに接続されている複数の基地局であって、各基地局が請求項1に記載の基地局であることを特徴とする基地局。
【請求項9】
少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する送信ビームの方向を制御する方法であって、
第1の基地局において、送信される第1の信号を複数の成分信号に分割するステップと、
少なくとも1つの前記成分信号に1または複数の複素重みを与え、それによって前記成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
前記成分信号を増幅及び混合手段へ供給して前記信号を送信に適する電力レベルにさせ、且つ混合及び濾波手段を使用して前記成分信号を第2の基地局からの成分信号と混合させるステップと、
前記混合された成分信号をアンテナ素子または素子のグループへ供給し、これらの素子から送信させることによって前記1または複数の複素重みによって支配される方向に形成された第1の信号を表すエネルギのビームを発生させるステップと、
測定受信機を使用して前記アンテナの近傍において前記成分信号の少なくとも1つを測定し、前記測定に関係する情報をデータハブを通して前記基地局へ供給するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第2の基地局が生成する信号は、前記第1の基地局が生成する信号から独立していることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの基地局に接続された1つのアンテナが発生する受信ビームの方向を制御する方法であって、
i)前記アンテナにおいて、各々が受信素子または受信素子のグループに関係付けられている複数の成分信号を受信し、前記信号を複数のフィーダケーブルを介して分割及びフィルタ手段へ供給するステップと、
ii)第1の基地局に向けられた前記成分信号を分割及びフィルタ手段を使用して分離し、前記成分信号を増幅手段を使用して増幅するステップと、
iii)第1の基地局において、前記成分信号の少なくとも1つに1または複数の複素重みを与え、それによって前記成分信号の位相及び/または振幅を、少なくとも1つの他の成分信号に対して変化させるステップと、
iv)前記第1の基地局において、前記成分信号をビームフォーマ内で混合し、前記1または複数の複素重みによって支配される方向に形成された受信ビームを発生させるステップと、
v)信号発生器からの信号を前記アンテナの近傍の1またはそれ以上のフィーダケーブルへフィードし、前記基地局において受信された信号の特性を測定するステップと、
vi)第2の基地局において、前記第1の基地局とは無関係に前記ステップii)乃至v)を繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−503465(P2006−503465A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544457(P2004−544457)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004447
【国際公開番号】WO2004/036785
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505137834)クインテル テクノロジー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】