説明

移動物体検出装置及びインターホン装置

【課題】 人物が近づいてきた場合及び離れる動作を的確に検出し、単純な出力信号により判定結果を出力する移動物体検出装置を提供する。
【解決手段】 ドップラーセンサ部14aのI相出力及びQ相出力から相互の位相差を演算し、求めた位相差を正負何れかの極性の電圧情報で出力する位相差演算処理部41と、この出力する電圧の絶対値が所定値以下である場合は電圧信号を出力しない不感帯処理部42と、この出力電圧情報が負の極性を有する場合は近づく物体があると判断して「H」信号を第1出力部43aから出力し、正の極性を有する場合は離れる物体があると判断して「H」信号を第2出力部43bから出力する一対のコンパレータ52a,52bと、不感体処理部42が出力する電圧の変化を正極の電圧変化とするためにオフセット電圧を加える加算回路51とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物の動きを検出するための移動物体検出装置、及びこの移動物体検出装置を内蔵したインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
玄関子機に人感センサを設けて、来訪者や不審者等の人物が現れたら自動録画等を行いセキュリティ性を向上させたインターホン装置がある(例えば、特許文献1参照)。このようなインターホン装置では、玄関先に来訪者等の人物が現れたらそれを人感センサが検知し、カメラを起動させて居室親機に表示させたり自動録画を行う等の動作を実施でき、セキュリティの向上に有効であった。
一方で、自動ドアや不審者の侵入を検出するためにマイクロ波を使用したドップラーセンサにより人物の動きを検出する移動物体検出装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−290577号公報
【特許文献2】特開2002−277558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターホン装置の省電力化を考えた場合、夜間の来訪者を撮像するための照明は、玄関にまだ来訪者が居る状況でも遠ざかって行く状況まで撮像する必要がないため、照明を消してもセキュリティ上特に問題は無い。また、居室親機にあっても、居住者の接近や離れる動作によりモニタのバックライトを制御できれば、カメラの起動に合わせてオン動作したり、タイマを使用して一定時間が経過するまでオンし続ける等の従来の動作に比べて遥かに省電力化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示すインターホン装置の人感センサは、赤外線や超音波を使用して人物の存在を検出するため、横方向の移動に関しては検知精度が高いが、前後方向の移動の検知精度は低く、例えば1〜2メートルの前後移動を検知することは不可能であった。そのため人物の接近や離れるのを的確に検出することができず、インターホン装置の省電力動作に生かそうとしても難しかった。
【0006】
一方、上記従来の防犯機器に用いられているドップラーセンサは1出力の連続波ドップラーセンサであり、人物の動きを検知できるが、人が近寄ってきたか或いは離れたかを判断できる信号を出力するものではなかった。また、出力信号をインターホン装置の制御に生かそうとした場合に、ドップラーセンサの出力信号は例えばH/Lのような単純な信号ではないため、容易に生かすことができなかった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、人物が近づいてきた場合及び離れる動作を的確に検出し、単純な出力信号により判定結果を出力する移動物体検出装置、及びこの移動物体検出装置を使用することでカメラの照明やモニタを省電力動作させるインターホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る移動物体検出装置は、マイクロ波信号を出力するマイクロ波発生手段と、出力されたマイクロ波信号を放射する送信アンテナと、放射されたマイクロ波信号の反射波を受信する受信アンテナと、マイクロ波発生手段が出力したマイクロ波信号に対して90度の位相差を持った直交マイクロ波信号を発生させる90度移相器と、受信アンテナが受信した反射波をマイクロ波信号に混合して出力するI相出力部と、受信アンテナが受信した反射波を直交マイクロ波信号に混合して出力するQ相出力部とを有するドップラセンサ部と、I相出力部及びQ相出力部の出力信号から相互の位相差を演算し、求めた位相差を正/負何れかの極性の電圧情報で出力する位相差演算処理部と、位相差演算処理部が出力する電圧情報が、正/負何れか所定の一方の極性を有する場合は近づく物体があると判断してH/L信号から成る所定の信号を生成してを第1出力部から出力し、他方の極性を有する場合は離れる物体があると判断してH/Lから成る所定の信号を生成して第2出力部から出力する移動体判定部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、近づく或いは離れる物体を検知でき、検知結果はH/Lで出力されるので、容易に出力信号を活用することができる。また、近づく或いは離れる物体の検出信号の出力は、夫々独立した出力部から出力されるため、制御信号として活用し易い。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、移動体判定部は、位相差演算処理部が出力する電圧の変化を正極の電圧変化とするためにオフセット電圧を加算する加算回路と、第1出力部及び第2出力部から出力するH/L信号を生成するための一対のコンパレータとを有することを特徴とする。
この構成によれば、正負の電圧信号は加算回路で正の電圧信号に変換されるため、コンパレータは片電源のみで動作するオペアンプで構成でき、移動体判定部を簡易な回路で構成できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、位相差演算処理部と移動体判定部との間に、位相差演算処理部の出力する電圧情報が所定値以下である場合は、移動体判定部へ電圧信号を出力させない不感帯処理部を有することを特徴とする。
この構成によれば、物体の僅かな前後移動は検出せず、一定値以上の変化があった場合に近づく或いは離れるを判断するため、誤検知を防止できる。
【0011】
請求項4の発明は、玄関等の住戸外に設置されて来訪者を撮像するためのカメラ及び居住者を呼び出す機能を備えた玄関子機と、住戸内に設置されてカメラの撮像映像を表示するモニタ、及び玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有するインターホン装置であって、玄関子機が、カメラの撮像方向を照らすための照明と、請求項1乃至3の何れかに記載の移動物体検出装置と、移動物体検出装置が近づく物体があると判断したら照明を点灯させ、離れる物体があると判断したら点灯状態にある照明を消灯させる制御の少なくとも一方の制御を行う照明制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、玄関子機前に居る来訪者等の人物の近づく或いは離れる動作を検知して照明がオン/オフ制御されるので、照明の点灯が必要無い状況で点灯するのを防止でき、省電力化を図ることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の構成において、居室親機は、来訪者の自動録画等を行う不在モードに設定する不在モード設定部と、不在モード設定操作がなされた後、移動物体検出装置が離れる物体があると判断したのを受けて、不在設定モードに移行制御するモード移行制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、居住者が玄関から離れるのを検知して不在モードに移行するので、例えばタイマー制御により自動移行するより的確に不在モードに移行し、居住者は安心できる。そして、居住者は時間を気にして慌てる必要がない。
【0013】
請求項6の発明は、来訪者を撮像するためのカメラを備えて玄関等の住戸外に設置され、居住者を呼び出す機能を備えた玄関子機と、カメラの撮像映像を表示する液晶モニタを備えて住戸内に設置され、玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機を有するインターホン装置であって、居室親機が、請求項1乃至3の何れかに記載の移動物体検出装置と、移動物体検出装置が近づいてくる物体があると判断したら液晶モニタのバックライトを点灯させ、離れる物体があると判断したら点灯状態にあるバックライトを消灯させる制御の少なくとも一方の制御を実施するバックライト制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、居室親機の前方に居住者等の人物がいても、その人物の近づく或いは離れる動作を検知して液晶モニタのバックライトがオン/オフ制御されるので、液晶モニタが不必要に点灯を続ける状態を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の移動物体検出装置によれば、近づく或いは離れる物体を検知できる。而も、検知結果は電圧値で出力されるので、容易に出力信号を活用することができる。
また、本発明のインターホン装置によれば、玄関子機に前後移動を検知する移動物体検出装置を設けることで、玄関子機前に来訪者等の人物がいても、近づく或いは離れる移動を検知して照明がオン/オフ制御されるので、照明が不必要に点灯するのを防止でき省電力化を図ることができるし、居室親機に設ければ、居室親機の前方に居住者等の人物がいても、近づく、或いは離れる移動を検知してモニタの照明がオン/オフ制御されるので、モニタが不必要に点灯を続ける状態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るインターホン装置の一例を示すブロック図である。
【図2】ドップラセンサ部のブロック図である。
【図3】信号処理部のブロック図である。
【図4】不感帯処理部の入出力特性図である。
【図5】移動体判定部の動作特性を示し、(a)は加算回路の出力特性図、(b)は第1コンパレータの出力特性図、(c)第2コンパレータの出力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るインターホン装置10の一例を示すブロック図であり、1は玄関等の住戸外に設置されて来訪者を撮像するためのカメラ11及び居住者を呼び出す機能を備えた玄関子機、2は住戸内に設置されてカメラ11の撮像映像を表示する液晶モニタ21及び玄関子機1からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機である。玄関子機1と居室親機2は伝送線L1を介して接続されている。
【0017】
玄関子機1は、カメラ11に加え、夜間でも撮像を可能とするためのLEDから成る照明12、通話部、呼出操作部、更にカメラ11の撮像映像を変調する変調部等を備えたインターホン部13、来訪者の近づく/離れる動作を検出するための子機移動体検出部14、玄関子機1全体を制御する子機制御部15、居室親機2から供給される電源を信号から分離する電源分離回路16、電源部17、居室親機2と通信する子機IF18等を備えている。子機移動体検出部14は、ドップラセンサ部14a、ドップラセンサ部14aの出力信号を処理する信号処理部14bとで構成されている。
【0018】
居室親機2は、液晶モニタ21に加え、通話部等を備えたインターホン部22、居住者の近づく/離れる動作を検出するための親機移動体検出部23、通話操作や各種設定操作を行うための操作部24、居室親機2全体を制御する親機制御部25、電源部26、玄関子機1に電力を供給するための電源重畳回路27、玄関子機1と通信する親機IF28等を備えている。親機移動体検出部23は、ドップラセンサ部23a、ドップラセンサ部23aの信号を処理する信号処理部23bとで構成されている。尚、21aは液晶モニタ21のバックライト部を示している。
【0019】
子機移動体検出部14は具体的に次のように構成されている。尚、親機移動体検出部23は子機移動体検出部14と同一の構成であるため説明を省略する。
図2は、子機移動体検出部14のドップラセンサ部14aの回路ブロックを示している。図2に示すように、ドップラセンサ部14aは、例えば周波数24GHz帯のマイクロ波を発振するマイクロ波発振部31、この発振電波を放射する送信アンテナ32、放射された電波が来訪者等の物体Mにより反射された反射波を受信する受信アンテナ33、発振波の位相を90度ずらして直交する位相信号を発生させる90度移相器34、発振信号に受信した反射波の信号を混合(加算)するI相ミキサ部(以下、この出力信号をI相信号とする)35、90度ずらした信号に受信した反射波の信号を混合(加算)するQ相ミキサ部(以下、この出力信号をQ相信号とする)36、I相信号を増幅するIF増幅部37a、I相信号において所定の周波数帯の信号を通過させるためのLPF部38a、Q相信号を増幅するIF増幅部37b、Q相信号において所定の周波数帯の信号を通過させるためのLPF部38b等を備えており、LPF部38aを通過したI相信号はI相信号出力部39aから出力され、LPF部38bを通過したQ相信号はQ相信号出力部39bから出力される。
尚、24GHz帯を使用した場合、波長は1cm以下であるため人物の移動を検知するには分解能は十分なものとなる。
【0020】
図3は、信号処理部14bのブロック図を示している。図3に示すように、信号処理部14bは、ドップラセンサ部14aが出力するI相信号及びQ相信号から双方の間の位相差、更にその変化の大きさを演算する位相差演算処理部41、位相差演算処理部41が出力する電圧信号の絶対値が所定値以下の場合は無視して出力信号を出さない所謂不感帯処理を実施する不感帯処理部42、近づく人物(物体)を検知した場合に電圧信号を出力する第1出力部43aと、離れる物体を検知した場合に電圧信号を出力する第2出力部43bとを備えた移動体判定部43等を備えている。
【0021】
位相差演算処理部41はDSPで構成され、近づく人物を検知した場合はその移動速度に比例した負の電圧値を出力し、停止している場合は出力電圧は無く、離れる人物を検知した場合はその移動速度に比例した正の電圧値を出力する。
この位相差演算処理部41は、具体的に以下のような演算を実施する。まず、ドップラセンサ部14aの送信アンテナ32から出力される出力信号(送信波)、及び受信アンテナ33で受信される受信信号(受信波)は次式のように表すことができる。
送信波: Atxcos2πft
受信波: Arxcos(2πft+φ(t))
Atxは送信電波の波高値、Arxは反射した受信電波の波高値である。
この式を用いて、I相ミキサ部35の出力I(t)、Q相ミキサ部36の出力Q(t)は、次の式(1),(2)のように表すことができる。
【0022】
【数1】

【0023】
この信号を夫々LPF部38a,38bを通過させることで、I相信号出力部39a、Q相信号出力部39bの出力は、夫々次式(3),(4)で表すことができる。
【0024】
【数2】

【0025】
上記式(3),(4)から、I相信号とQ相信号の位相差φ(t)は、次式(5)のよになる。この位相差φ(t)の時間変化を式(6)から求めることで、物体の近づく或いは離れる速さ、及び方向(近づくのか離れるのか)を判定することが可能となる。
位相差演算処理部41は、この式(6)に示す情報を正/負の電圧値で出力する。
【0026】
【数3】

【0027】
図4は、不感帯処理部42の入出力特性を示している。位相差演算処理部41が出力する電圧値情報を受けて、不感帯処理部42は図4に示すように、僅かな電圧値に対しては切り捨て処理し、信号を出力しない。一方で、所定値以上の信号が入力されたら、信号値に比例した大きさの電圧値を出力する。
【0028】
移動体判定部43は、オフセット電圧を加えて不感帯処理部42の出力を正の電圧の変化として出力する加算回路51、加算回路51の出力を受けて近づいてくる物体(人物)を検知した場合に第1出力部43aから信号を出力するための1つのオペアンプで構成される第1コンパレータ52a、離れる物体(人物)を検知した場合に第2出力部43aから信号を出力するための1つのオペアンプで構成される第2コンパレータ52b等を備えている。
【0029】
このように、位相差演算処理部41が出力する正負の電圧信号は、加算回路51で正の電圧信号の変化に変換されるので、コンパレータ52a,52bは片電源のみで動作するオペアンプで構成でき、移動体判定部43を簡易な回路で構成できる。
【0030】
図5は移動体判定部43の動作特性を示し、(a)は加算回路51の出力特性図、(b)は第1コンパレータ52aの出力特性図、(c)第2コンパレータ52bの出力特性図を示している。図5(a)に示すように、加算回路51ではオフセット電圧Voffsetを不感帯処理部42の出力電圧Voutに加算した電圧Vaddを出力し、常時正極性の電圧が出力される。
尚、この図5(a)において、VLsetは第1コンパレータ52aが人物が近づくと判断する第1閾値を示し、VHsetは第2コンパレータ52bが人物が離れると判断する第2閾値を示している。
【0031】
そして、図5(b)に示すように、第1コンパレータ52aは加算回路51の出力電圧Vaddが第1閾値VLsetを下回ると「H」の信号を出力し、上回ると「L」の信号を出力する。また図5(c)に示すように、第2コンパレータ52bは加算回路51の出力電圧Vaddが第2閾値VHsetを上回ると「H」の信号を出力し、下回ると「L」の信号を出力する。
【0032】
これらをまとめると、近づく/離れるは次の条件となる。
Voffset> VLset ・・ 近づく
VLset< Voffset<VHset・・静止
Voffset<VHset ・・離れる
尚、近づく/離れるの極性は反対の極性となるが、どちらを正極性とするかは演算式により決定されるもので、固定されてはいない。
【0033】
移動体検出部14,23をこのように構成することで、近づく或いは離れる物体を検知できる。而も、検知結果はH/Lの信号で出力されるので、容易に出力信号を活用することができる。そして、近づく或いは離れる物体の検出信号の出力は、夫々独立した出力部から出力されるため、何れも単純なH/Lの信号にでき、制御信号として活用し易い。
また、不感帯処理部を備えるため、物体の僅かな前後移動は検出せず、一定の大きさ以上の変化があった場合に近づく或いは離れるを判断するため、誤検知を防止できる。
【0034】
次に、上記構成のインターホン装置10の動作を説明する。玄関子機1からの呼び出し、及び居室親機2からの応答動作は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは来訪者が玄関子機1に近づく或いは離れる場合、また居住者が居室親機2に近づく或いは離れる場合の動作を説明する。
来訪者が玄関子機1に近づいてくると、子機移動体検出部14のドップラセンサ部14aが人物の動きを検知して電圧信号を出力する。この電圧信号が所定値を下回ると不感体処理部42から電圧信号が出力され、その電圧が第1閾値を下回ると第1コンパレータ52aが第1出力部43aから「H」の電圧信号を出力する。一方、第2出力部43bは「L」の信号を出力し続ける。
【0035】
この「H」信号を受けて、子機制御部15は、照明12を点灯して後述する不在モードに設定されていたら、カメラ11を起動して撮像を開始し、居室親機2において図示しない録画部に録画等を行う。不在モードに設定されていなければ、照明12の点灯に留まり、その後の操作を待つ。この照明12の点灯だけでも、来訪者は玄関子機1の場所を把握し易くなり、呼出操作がし易くなる。
【0036】
その後、来訪者が玄関間子機1から離れる場合は、同様に子機移動体検出部14が人物が離れて行くのを検出し、電圧信号を出力する。この電圧信号が、所定値を超えると不感体処理部42から電圧信号が出力され、その電圧が第2閾値を超えると第2コンパレータ52bが第2出力部43bから「H」の電圧信号を出力する。一方、第1出力部43aは「L」の信号を出力し続ける。この信号を受けて子機制御部15は、照明12を消灯し、カメラ11が起動している場合は停止させる。
尚、玄関子機1に接近した来訪者が居住者との通話等で停止している状態では、第1出力部43a、第2出力部43bの双方とも「L」の信号を出力する。
【0037】
このように、来訪者が玄関から離れる動きを受けて照明12を消灯制御し、またカメラ11の撮像を終了させることで、不必要に照明を点灯し続けたり、撮像が継続されることがなくなる。
尚、玄関子機1の子機移動体検出部14は常時オン状態であっても良いが、夜間や不在モード状態の時のみオンさせても良く電力の節約に有効である。
【0038】
呼び出しの応答操作や不在モード設定等で居住者が居室親機2に近づく場合、或いはその後離れる場合は、居室親機2に設けられた親機移動体検出部23がそれを検知し、近づく動作を検知すると第1出力部43aが「H」信号を出力し、離れる動作を検知したら第2出力部43bが「H」信号を出力する。この動作は上記子機移動体検出部14と同様であるため、具体的な説明は省略する。
こうして、親機移動体検出部23が居住者の接近を検知したら、親機制御部25は液晶モニタ21のバックライト21bを点灯させて、待受画面或いはカメラ11の撮像映像を表示させる。この場合、従来はカメラ11の撮像開始に合わせて液晶モニタ21を起動して撮像映像を表示させたが、居住者の接近に合わせて液晶モニタ21のバックライト21aをオンさせるため、消費電力を節約できる。
【0039】
また、応答操作等が終了して居住者が居室親機2から離れる場合は、親機移動体検出部23がそれを検知する。この検知信号を受けて、親機制御部25は液晶モニタ21のバックライト21aを消灯させる。この結果、従来はタイマ動作に頼っていた液晶モニタ21のバックライト21aをオフする制御を、居住者が離れるのを受けて速やかにオフさせることができ、液晶モニタ21の点灯を不必要に継続させることがなく消費電力を節約できる。
【0040】
尚、親機移動体検出部23は常時オンさせてもよいが、呼び出しを受けた場合や、玄関子機1の子機移動体検出部14が人物を検知した場合に起動させても良い。また、液晶モニタ21のバックライト21aを居住者の近づき或いは離れるのを検知して制御しているが、表示映像のオン/オフも含めて液晶モニタ21全体をオン/オフ制御しても良い。
【0041】
次に、インターホン装置10が不在モード設定された場合を説明する。居住者が外出する際、防犯のために居室親機2の操作部24を所定の操作することで、インターホン装置10が不在モードに設定される。この設定により不在モード状態に移行すると、親機制御部25の制御により来訪者が現れて玄関子機1で呼び出し操作されたらカメラ11を起動して自動録画したり、不審者が玄関に現れたら子機移動体検出部14にそれを検知させ、カメラを起動して自動録画を行う。
【0042】
この不在モード設定が操作部24において成されると、機械的に不在設定状態に移行するのではなく、次の検知動作を経てインターホン装置10は不在モード状態に移行する。
不在モード設定が成されたら、親機制御部25は玄関子機1に対して不在モード準備信号を送信し、子機移動体検出部14に人物が離れて行く状態を検出させる。こうして、居住者が玄関から離れて行くのを子機移動体検出部14が監視し、移動体判定部43の第2出力部43bから「H」信号が出力されたら、居住者が外出したと判断して居室親機2に対して不在モード切換信号を送信し、親機制御部25が不在モードに移行制御し、インターホン装置10は不在モード状態となる。
【0043】
このように、居住者が玄関から離れるのを検知して不在モードに移行するので、従来のようにタイマー制御により自動移行するより的確に不在モードに移行し、居住者は安心できる。そして、居住者は時間を気にして慌てる必要がない。
【符号の説明】
【0044】
1・・玄関子機、2・・居室親機、10・・インターホン装置、11・・カメラ、12・・照明、14・・子機移動体検出部(移動物体検出装置)、14a・・ドップラセンサ部(ドップラセンサ部)、14b・・信号処理部、15・・子機制御部(照明制御部)、21・・液晶モニタ(モニタ)、21a・・バックライト部、23・・親機移動体検出部(移動物体検出装置)、23a・・ドップラセンサ部、23b・・信号処理部、24・・操作部(不在モード設定部)、25・・親機制御部(モード移行制御部、バックライト制御部)、31・・マイクロ波発振部(マイクロ波発生手段)、32・・送信アンテナ、33・・受信アンテナ、34・・90度移相器、39a・・I相信号出力部、39b・・Q相信号出力部、41・・位相差演算処理部、42・・不感体処理部、43・・移動体判定部、51・・加算回路、52a・・第1コンパレータ、52b・・第2コンパレータ、43a・・第1出力部、43b・・第2出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波信号を出力するマイクロ波発生手段と、出力された前記マイクロ波信号を放射する送信アンテナと、放射された前記マイクロ波信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記マイクロ波発生手段が出力したマイクロ波信号に対して90度の位相差を持った直交マイクロ波信号を発生させる90度移相器と、前記受信アンテナが受信した反射波を前記マイクロ波信号に混合して出力するI相出力部と、前記受信アンテナが受信した反射波を前記直交マイクロ波信号に混合して出力するQ相出力部とを有するドップラセンサ部と、
前記I相出力部及び前記Q相出力部の出力信号から相互の位相差を演算し、求めた位相差を正/負何れかの極性の電圧情報で出力する位相差演算処理部と、
前記位相差演算処理部が出力する電圧情報が、正/負何れか所定の一方の極性を有する場合は近づく物体があると判断してH/L信号から成る所定の信号を生成して第1出力部から出力し、他方の極性を有する場合は離れる物体があると判断してH/Lから成る所定の信号を生成して第2出力部から出力する移動体判定部とを有することを特徴とする移動物体検出装置。
【請求項2】
前記移動体判定部は、前記位相差演算処理部が出力する電圧の変化を正極の電圧変化とするためにオフセット電圧を加算する加算回路と、前記第1出力部及び前記第2出力部から出力するH/L信号を生成するための一対のコンパレータとを有することを特徴とする請求項1記載の移動物体検出装置。
【請求項3】
前記位相差演算処理部と前記移動体判定部との間に、前記位相差演算処理部の出力する電圧情報が所定値以下である場合は、前記移動体判定部へ電圧信号を出力させない不感帯処理部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の移動物体検出装置。
【請求項4】
玄関等の住戸外に設置されて来訪者を撮像するためのカメラ及び居住者を呼び出す機能を備えた玄関子機と、住戸内に設置されて前記カメラの撮像映像を表示するモニタ及び前記玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有するインターホン装置であって、
前記玄関子機が、前記カメラの撮像方向を照らすための照明と、
請求項1乃至3の何れかに記載の移動物体検出装置と、
前記移動物体検出装置が近づく物体があると判断したら前記照明を点灯させ、離れる物体があると判断したら点灯状態にある前記照明を消灯させる制御の少なくとも一方の制御を行う照明制御部とを有することを特徴とするインターホン装置。
【請求項5】
前記居室親機は、来訪者の自動録画等を行う不在モードに設定する不在モード設定部と、不在モード設定操作がなされた後、前記移動物体検出装置が離れる物体があると判断したのを受けて、前記不在設定モードに移行制御するモード移行制御部とを有することを特徴とする請求項4記載のインターホン装置。
【請求項6】
来訪者を撮像するためのカメラを備えて玄関等の住戸外に設置され、居住者を呼び出す機能を備えた玄関子機と、前記カメラの撮像映像を表示する液晶モニタを備えて住戸内に設置され、前記玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機を有するインターホン装置であって、
前記居室親機が、請求項1乃至3の何れかに記載の移動物体検出装置と、
前記移動物体検出装置が近づいてくる物体があると判断したら前記液晶モニタのバックライトを点灯させ、離れる物体があると判断したら点灯状態にある前記バックライトを消灯させる制御の少なくとも一方の制御を実施するバックライト制御部とを有することを特徴とするインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159345(P2012−159345A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17915(P2011−17915)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】