説明

移動装置

【課題】坂坂道軌道部において停止した天井搬送車の移動を容易に行うことができ、作業性の向上を図れる移動装置を提供する。
【解決手段】移動装置1は、軌道Rに沿って走行する天井搬送車100を軌道Rの坂道軌道部SRで支持して移動させる装置であり、坂道軌道部SRに沿って設けられたガイドユニット10と、ガイドユニット10に摺動可能に設けられたスライド部12と、スライド部12をガイドユニット10に沿って移動させる移動機構16と、スライド部12に連結され、天井搬送車100を坂道軌道部SRにおいて支持する支持部14と、を備え、支持部14は、天井搬送車100を支持しないときには天井搬送車100と干渉しない位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井に設置された軌道の坂道軌道部において天井搬送車を支持して移動させる移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井に設置された軌道を走行する天井搬送車が給電系や駆動系のトラブル等により故障して自走困難な状態の場合には、他の天井搬送車の障害とならないように、手動で天井搬送車を移動して軌道から天井搬送車を離脱させる必要がある。そこで、例えば特許文献1に記載のものでは、棒状の押し棒本体の上端部に押圧部材が取り付けられており、押し棒本体によって天井搬送車を押すことにより天井搬送車を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4465833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井搬送車が走行する軌道には傾斜を有する坂道軌道部が存在している場合があり、坂道軌道部において天井搬送車が停止することもある。このとき、特にFOUP(Front Opening Unified Pod)を搬送している場合には、重量があるため、天井搬送車を坂道軌道部において支持して移動させることは作業者の負担となる。したがって、作業性の改善が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、坂道軌道部において停止した天井搬送車の移動を容易に行うことができ、作業性の向上を図れる移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動装置は、軌道に沿って走行する天井搬送車を軌道の坂道軌道部で支持して移動させる移動装置であって、坂道軌道部に沿って設けられたガイド部と、ガイド部に沿って摺動可能に設けられた摺動部と、摺動部をガイド部に沿って移動させる移動手段と、天井搬送車の支持位置に対して進退自在に摺動部に連結され、天井搬送車を坂道軌道部において支持するときには支持位置に進入し、天井搬送車を支持しないときには支持位置から退避する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この移動装置では、坂道軌道部に沿ってガイド部が設けられており、このガイド部に摺動可能に設けられた摺動部に、天井搬送車を支持する支持部が連結されている。これにより、天井搬送車が坂道軌道部において停止した場合には、支持部によって天井搬送車を坂下側から支持し、ガイド部に沿って摺動部を移動手段により移動させることにより、天井搬送車を移動させることができる。したがって、坂道軌道部における天井搬送車の移動を容易に行うことができ、作業性の向上が図れる。また、天井搬送車を支持しないときには支持位置から支持部が退避するため、天井搬送車との干渉を防止でき、通常走行時の天井搬送車の走行の妨げになることを回避できる。
【0008】
床又は床側に設置され、複数のブロック体から構成される載置部を備え、ガイド部は、載置部に載置されている。この構成によれば、例えば坂道軌道部の下方に半導体製造装置等が設置されている場合であっても、ブロック体の配置や積み方を変えることにより、ガイド部を載置することが可能となる。また、ガイド部の高さ位置の調整や移設を容易且つ迅速に行うことができる。
【0009】
ガイド部は、坂道軌道部の下方に設置されており、支持部は、摺動部に対して折り畳み可能に設けられており、天井搬送車を坂道軌道部において支持するときには立設されて支持位置に進入し、天井搬送車を支持しないときには折り畳まれて支持位置から退避する構成とすることもできる。このような構成によれば、簡易な構成としつつ、支持部が天井搬送車の走行の妨げになることをより確実に回避できる。
【0010】
ガイド部は、坂道軌道部の両側にそれぞれ設置されており、摺動部は、ガイド部から下方に延在し、互いに対向してガイド部に設置されており、支持部は、摺動部の間に架設されていると共に、当該摺動部において上下方向に移動可能に設けられている構成とすることもできる。このように、坂道軌道部と一体的に構成することにより、床側のスペースを必要としないので、少スペース化を図ることができる。また、支持部が摺動部において上下方向に移動するため、支持部が天井搬送車の走行の妨げになることをより確実に回避できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、坂道軌道部において停止した天井搬送車の移動を容易に行うことができ、作業性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は第1実施形態に係る移動装置を示す図であり、(b)は(a)に示す移動装置を上から見た図である。
【図2】図1(a)に示す移動装置を反対側から見た斜視図である。
【図3】移動機構の構成を示す図である。
【図4】図1に示す移動装置の変形例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る移動装置を示す斜視図である。
【図6】図5に示す移動装置を横から見た図である。
【図7】第3実施形態に係る移動装置を示す斜視図である。
【図8】図7に示す移動装置を横から見た図である。
【図9】参考形態に係る移動装置を示す斜視図である。
【図10】図9に示す移動装置を横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態に係る移動装置を示す図であり、図1(b)は、図1(a)に示す移動装置を上から見た図である。図2は、図1(a)に示す移動装置を反対側から見た斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示す移動装置1は、クリーンルームに設置されている天井搬送車(OHT:OverheadHoist Transport)100が軌道Rの坂道軌道部SRにおいて給電系、駆動系のトラブル等により走行不能で停止した場合に、天井搬送車100を坂道軌道部SRから通常の軌道Rに移動させる装置である。なお、ここで言う通常の軌道Rとは、天井C又は床Fに対して略平行に延在している軌道である。
【0016】
最初に、天井搬送車100について説明する。天井搬送車100は、被搬送物(図示しない)を搬送経路である軌道Rに沿って搬送する。軌道Rは、半導体デバイスを製造するためのクリーンルームの天井C(もしくは、クリーンルームとクリーンルームとの間)に設置されたものである。また、被搬送物は、複数枚の半導体ウェハを収容したカセット(いわゆるFOUP(Front Opening Unified Pod))である。なお、軌道Rは、走行レール、この走行レールを支持する支持部材(吊りボルト)等を含んで構成されるものである。
【0017】
天井搬送車100は、被搬送物を収容して軌道Rに沿って走行する本体部102を備えている。本体部102は、走行部104を介して軌道Rに吊り下げられている。走行部104は、軌道Rの内面に接触する駆動輪及びガイド輪を有しており、これらにより、軌道Rに沿って本体部102を走行させる。また、走行部104は、軌道R内に位置する電磁コイルユニットを有しており、これにより、軌道R内に敷設された高周波電流線から無接触で電力の供給を受ける。
【0018】
続いて、移動装置1について説明する。図1及び図2に示すように、移動装置1は、軌道Rが傾斜する部分(以下、坂道軌道部SR)に設置されている。なお、移動装置1は、坂道軌道部SRに常設されていることが好ましいが、天井搬送車100が停止したときに設置されてもよい。
【0019】
移動装置1は、本体部3と、本体部3を載置する載置部5と、本体部3を固定する固定部7とから構成されている。載置部5は、略直方体形状をなしたブロック(ブロック体)Bを、クリーンルームの床Fから高さ方向に複数(ここでは3段)積み重ねて構成されており、半導体製造装置Mの突出部分等を回避して設置される。各々のブロックBは、縦横に隣接するブロックBと相互に連結可能とされており、一体的に連結されることで、載置部5が本体部3を充分に支持するための所定の強度及び重量を確保できる。なお、半導体製造装置Mの近傍に位置するブロックBは、半導体製造装置Mとの連結機能を有していてもよい。
【0020】
固定部7は、天井Cと本体部3との間に複数(ここでは2つ)設置されている。固定部7は、例えば伸縮可能に設けられており、一端が天井Cに当接すると共に他端が本体部3に当接して、本体部3を下方に押圧することにより、本体部3を載置部5との間で固定している。なお、固定部7の設置は必須ではなく、本体部3の固定が不十分なときに用いられる。
【0021】
本体部3は、直方体形状をなしており、載置部5上に載置されている。本体部3は、ガイドユニット(ガイド部)10と、スライド部(摺動部)12と、支持部14と、移動機構(移動手段)16(図3参照)とを備えている。
【0022】
ガイドユニット10は、直方体形状をなしており、本体部3に嵌め込まれている。ガイドユニット10は、坂道軌道部SRの傾斜に対応して傾斜しており、坂道軌道部SRに沿って延在している。ガイドユニット10には、互いに平行な2本のガイド溝10a,10bが形成されている。ガイド溝10a,10bは、所定の間隔をあけて並設されており、坂道軌道部SRに沿って延在している。
【0023】
スライド部12は、ガイドユニット10のガイド溝10a,10bに摺動可能に設けられている。スライド部12は、ガイド溝10a,10bに係合しており、例えば図示しないベアリングやローラー等によりガイド溝10a,10bを摺動する。スライド部12は、ガイド溝10a,10bに合わせて複数(ここでは2つ)設けられている。
【0024】
支持部14は、天井搬送車100を坂下側から支持する部分である。支持部14は、天井搬送車100の支持位置に対して進退自在にスライド部12に連結されている。支持位置は、天井搬送車100の走行軌道上で天井搬送車100と当接する位置である。支持部14は、スライド部12の移動に連動して移動する。
【0025】
支持部14は、略矩形状の板部材であり、スライド部12に対して折り畳み可能に設けられている。具体的には、支持部14は、例えばスライド部12に蝶番等の接続部材により連結されており、図1(b)に示すように、本体部3から張り出す第1の状態と、本体部3側に折り畳まれた第2の状態とに変形する。第1の状態は、天井搬送車100の支持位置に支持部14が進入した状態であり、第2の状態は、天井搬送車100の支持位置から支持部14が退避した状態である。支持部14を使用するときには、天井搬送車100の前方又は後方に配置し、本体部3から張り出して設置する。一方、支持部14を使用しないときには、本体部3側に折り畳む。これにより、支持部14は、通常走行時の天井搬送車100との干渉が回避される。
【0026】
移動機構16は、スライド部12を移動させるための手段である。図3は、移動機構の構成を示す図である。図3に示すように、移動機構16は、スライド部12に連結されるワイヤー17と、ガイドユニット10の一端側に回動可能に軸支され、ワイヤー17が掛けられる滑車18と、ワイヤー17の巻き取り、繰り出しを行うハンドル19とから構成されている。ハンドル19は、移動装置1において作業者の手が届く位置に設けられており、例えば載置部5に設置されている。なお、ワイヤー17に代えて、ベルトを用いてもよい。
【0027】
移動機構16は、ハンドル19を回転させてワイヤー17の巻き取り、又は繰り出しを行うことにより、ワイヤー17に連結されたスライド部12を移動させる。なお、移動機構16は、上述のように手動ではなく、ガイドユニット10に内蔵したモーター(図示しない)などによりワイヤー17の巻き取り、繰り出しを自動で行う構成であってもよい。この場合、モーターを操作するスイッチ等が設けられる。また、移動機構16は、手動及び自動の両方の設備を備えていてもよい。
【0028】
続いて、移動装置1の動作について説明する。なお、以下の説明においては、手動により天井搬送車100を移動させる場合について説明する。また、天井搬送車100は、図1において右側から左側に走行、すなわち坂道軌道部SRを上っている状態であったとする。
【0029】
まず、天井搬送車100が停止した場合、天井搬送車100の進行方向の後方側までスライド部12を移動させる。このとき、支持部14は、第2の状態、すなわち折り畳まれた状態となっている。そして、支持部14が第1の状態となるようにセットし、天井搬送車100の後方側に支持部14を配置する。次に、ハンドル19を回してワイヤー17を巻き取ることにより、スライド部12をガイド溝10a,10bに沿って移動させ、天井搬送車100の後部に支持部14を当接させる。
【0030】
天井搬送車100の後部に支持部14を当接させた後、天井搬送車100のブレーキを解除する。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRに沿って移動自在となる。そして、ハンドル19を操作して更にワイヤー17を巻き取り、天井搬送車100を坂道軌道部SRの終端(上端)、つまり上側の水平軌道部まで移動させる。その後、天井搬送車100を軌道Rの本線から離脱させる。そして、例えば、リフタ機能を有する軌道部分まで、押し棒等の手動ツールを用いて作業者が天井搬送車100を押圧して移動させ、リフタによって床上まで降ろして修理やメンテナンスを行う。
【0031】
以上説明したように、本実施形態では、坂道軌道部SRに沿ってガイドユニット10が設けられており、このガイドユニット10に摺動可能に設けられたスライド部12に、天井搬送車100を支持する支持部14が連結されている。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRにおいて停止した場合には、支持部14によって天井搬送車100を坂下側から支持し、ガイドユニット10に沿ってスライド部12を移動機構16により移動させることにより、天井搬送車100を移動させることができる。したがって、坂道軌道部SRにおける天井搬送車100の移動を容易に行うことができ、作業性の向上が図れる。
【0032】
また、支持部14は、使用されないときには折り畳まれ、天井搬送車100と干渉しない位置に配置されている。そのため、通常走行時において支持部14が天井搬送車100の走行の妨げとなることを回避できる。
【0033】
また、ガイドユニット10を備える本体部3は、載置部5に載置されている。載置部5は、複数のブロックBから構成されているため、坂道軌道部SRの下方に半導体製造装置M等が設置されている場合であっても、ブロックBの配置や積み方により様々な形状に成形することができる。したがって、半導体製造装置M等が設置されている場合でも、ガイドユニット10を設置することが可能となる。また、ブロックBにより載置部5を構成するため、ガイドユニット10の高さ位置の調整や移設を容易且つ迅速に行うことができる。
【0034】
図4は、移動装置の変形例を示す図である。図4に示すものでは、上り及び下りの2本の坂道軌道部SRが並設されている。移動装置1Aは、2本の坂道軌道部SRの間に設置されている。移動装置1Aのガイドユニット10Aでは、ガイド溝10a,10bが厚み方向に貫通している。また、スライド部12Aは、互いに平行をなして2本設けられており、支持部14から延伸している。スライド部12Aは、ガイドユニット10Aに取り外し可能に設けられている。スライド部12Aを取り付ける場合には、スライド部12Aをガイド溝10a,10bそれぞれ挿入し、接続部材13によりスライド部12Aをガイドユニット10Aに接続する。
【0035】
このような構成により、移動装置1Aでは、上り又は下りの坂道軌道部SRのいずれかにおいて天井搬送車100が停止した場合であっても、支持部14の取り付け方向を変えることにより、両方の坂道軌道部SRに対応することができる。
【0036】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る移動装置を示す斜視図である。図6は、図5に示す移動装置を横から見た図である。
【0037】
図5及び図6に示すように、移動装置20は、軌道Rの下方に設置されている。移動装置20は、ガイドユニット22と、スライド部24と、支持部26とを備えている。また、移動装置20は、図示しない移動機構を備えている。
【0038】
ガイドユニット22は、坂道軌道部SRの下方に設置されている。ガイドユニット22は、板状の部材であり、吊りボルト21により天井Cから吊り下げられている。ガイドユニット22には、坂道軌道部SRに沿ってガイド溝22aが設けられている。ガイド溝22aは、ガイドユニット22の中央部に形成されている。
【0039】
スライド部24は、ガイド溝22aに沿って摺動可能に設けられている。スライド部24は、略矩形状を呈する板部材であり、ガイド溝22aの幅と略同様の幅を有している。スライド部24の底部には、図示しないローラー等が設けられている。
【0040】
支持部26は、略矩形状を呈する板部材であり、スライド部24の前後方向の一端側に連結されている。支持部26は、スライド部24に折り畳み可能に設けられている。支持部26は、スライド部24に例えば蝶番等の接続部材により連結されており、図6に示すように、スライド部24から立ち上がり(立設され)、天井搬送車100と当接する第1の状態と、スライド部24側に折り畳まれた第2の状態とに変形する。第1の状態は、天井搬送車100の支持位置に支持部26が進入した状態であり、第2の状態は、天井搬送車100の支持位置から支持部26が退避した状態である。支持部26は、第2状態となることにより、天井搬送車100との干渉が回避される。
【0041】
移動機構は、第1実施形態の移動機構16と同様の構成を有している。すなわち、移動機構は、ワイヤーと、滑車と、ハンドルとから構成されており、ワイヤーがスライド部24に連結されている。また、ガイドユニット22の上りの終端には、滑車が回動可能に軸支されている。移動機構は、ハンドルを回転させてワイヤーの巻き取り、繰り出しを行うことにより、ワイヤーに連結されたスライド部24を移動させる。
【0042】
続いて、移動装置20の動作について説明する。なお、以下の説明においては、手動により天井搬送車100を移動させる場合について説明する。また、天井搬送車100は、図6において右側から左側に走行、すなわち坂道軌道部SRを上っている状態であったとする。
【0043】
まず、天井搬送車100が停止した場合、天井搬送車100の進行方向の後方側までスライド部24を移動させる。このとき、支持部26は、第2の状態、すなわち折り畳まれた状態となっている。そして、支持部26が第1の状態となるようにセットし、天井搬送車100の後方側に支持部26を配置する。次に、ハンドルを回してワイヤーを巻くことにより、スライド部24をガイド溝22aに沿って移動させ、天井搬送車100の後部に支持部26を当接させる。
【0044】
天井搬送車100の後部に支持部26を当接させた後、天井搬送車100のブレーキを解除する。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRに沿って移動自在となる。そして、ハンドルを操作して更にワイヤーを巻き取り、天井搬送車100を坂道軌道部SRの終端まで移動させる。その後、天井搬送車100を軌道Rの本線から離脱させる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、坂道軌道部SRの下方にガイドユニット22が設置されており、このガイドユニット22に摺動可能に設けられたスライド部24に、天井搬送車100を支持する支持部26が連結されている。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRにおいて停止した場合には、支持部26によって天井搬送車100を坂下側から支持し、ガイドユニット22に沿ってスライド部24を移動機構により移動させることにより、天井搬送車100を移動させることができる。したがって、坂道軌道部SRにおける天井搬送車100の移動を容易に行うことができ、作業性の向上が図れる。
【0046】
また、移動装置20では、ガイドユニット22が天井Cから吊り下げられているため、床F側に設置スペースを必要としない。したがって、少スペース化を図ることができる。
【0047】
また、支持部26がスライド部24に対して折り畳み可能に設けられているため、使用しないときには天井搬送車100と干渉しない位置に配置される。そのため、通常走行時において天井搬送車100の走行の妨げとなることを回避できる。
【0048】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態に係る移動装置を示す斜視図である。図8は、図7に示す移動装置を横から見た図である。
【0049】
図7及び図8に示すように、移動装置30は、ガイドユニット32a,32bと、スライド部34a,34bと、支持部36とを備えている。また、移動装置30は、図示しない移動機構を備えている。
【0050】
ガイドユニット32a,32bは、柱状の部材であり、坂道軌道部SRの両側(両側面)にそれぞれ設置されている。ガイドユニット32a,32bには、坂道軌道部SRに沿ってガイド溝33が形成されている。
【0051】
スライド部34a,34bは、ガイド溝33に沿って摺動可能に設けられている。スライド部34a,34bは、ガイドユニット32a,32bからそれぞれ下方に延在し、互いに対向してガイドユニット32a,32bに設置されている。スライド部34a,34bは、柱状の部材であり、その上端部に設けられた係合部37がガイドユニット32a,32bのガイド溝33に係合している。スライド部34a,34bは、係合部37を中心に揺動可能に設けられている。スライド部34a,34bの対向する内面には、延在方向(上下方向)に沿ってガイド溝35が設けられている。
【0052】
支持部36は、天井搬送車100の支持位置に対して進退自在にスライド部34a,34bに架設されている。支持部36は、スライド部材38がスライド部34a,34bのガイド溝35に沿って摺動可能に設けられており、ガイド溝35に沿って上下方向に移動する。支持部36は、図7に示すように、スライド部34a,34bの上部側に位置し、天井搬送車100と当接する第1の状態と、スライド部34a,34bの下部側に位置し、天井搬送車100と当接しない第2の状態とに移動する。第1の状態は、天井搬送車100の支持位置に支持部36が進入した状態であり、第2の状態は、天井搬送車100の支持位置から支持部36が退避した状態である。支持部36は、図8に示すように、天井搬送車100と当接する部分が傾斜面36aとなっている。
【0053】
移動機構は、第1実施形態の移動機構16と同様の構成を有している。すなわち、移動機構は、ワイヤーと、滑車と、ハンドルとから構成されており、ワイヤーがスライド部34a,34bのそれぞれに連結されている。また、ガイドユニット32a,32bの上りの終端には、滑車がそれぞれ回動可能に軸支されている。移動機構は、ハンドルを回転させてワイヤーの巻き取り、繰り出しを行うことにより、ワイヤーに連結されたスライド部34a,34bを移動させる。
【0054】
続いて、移動装置30の動作について説明する。なお、以下の説明においては、手動により天井搬送車100を移動させる場合について説明する。また、天井搬送車100は、図8において右側から左側に走行、すなわち坂道軌道部SRを上っている状態であったとする。
【0055】
まず、天井搬送車100が停止した場合、天井搬送車100の進行方向の後方側までスライド部34a,34bを移動させる。このとき、支持部36は、第2の状態、すなわちスライド部34a,34bの下部側に位置している。そして、支持部36を第1の状態となるようにセットし、天井搬送車100の後方側に支持部36を配置する。次に、ハンドルを回してワイヤーを巻くことにより、スライド部34a,34bをガイド溝33に沿って移動させ、天井搬送車100の後部に支持部36を当接させる。
【0056】
天井搬送車100の後部に支持部36を当接させた後、天井搬送車100のブレーキを解除する。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRに沿って移動自在となる。そして、ハンドルを操作して更にワイヤーを巻き取り、天井搬送車100を坂道軌道部SRの終端まで移動させる。その後、天井搬送車100を軌道Rの本線から離脱させる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、坂道軌道部SRにガイドユニット32a,32bが設置されており、このガイドユニット32a,32bに摺動可能に設けられたスライド部34a,34bに、天井搬送車100を支持する支持部36が連結されている。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRにおいて停止した場合には、支持部36によって天井搬送車100を坂下側から支持し、ガイドユニット32a,32bに沿ってスライド部34a,34bを移動機構により移動させることにより、天井搬送車100を移動させることができる。したがって、坂道軌道部SRにおける天井搬送車100の移動を容易に行うことができ、作業性の向上が図れる。
【0058】
また、支持部36は、スライド部34a,34bにおいて上下方向に移動可能に設けられている。そのため、使用しないときには天井搬送車100と干渉しない位置に配置される。これにより、通常走行時において支持部36が天井搬送車100の走行の妨げとなることを回避できる。
【0059】
[参考形態]
続いて、参考形態について説明する。図9は、参考形態に係る移動装置を示す斜視図である。図10は、図9に示す移動装置を横から見た図である。
【0060】
図9及び図10に示すように、移動装置40は、ガイドユニット42a,42bと、スライド部44と、ロープ46と、滑車48とを備えている。
【0061】
ガイドユニット42a,42bは、坂道軌道部SRの下方に設置されている。ガイドユニット42a,42bは、柱状の部材であり、吊りボルト41により天井Cから吊り下げられている。ガイドユニット42a,42bは、天井搬送車100の中央部付近の高さ位置に設置されている。ガイドユニット42a,42bは、坂道軌道部SRを挟む位置において対向して一対配置されており、坂道軌道部SRに沿って延在している。ガイドユニット42a,42bには、坂道軌道部SRに沿ってガイド溝43が形成されている。
【0062】
ガイドユニット42a,42bの一端部(坂道軌道部SRの上りの終端)には、滑車48が設けられている。滑車48は、ガイドユニット42a,42bにそれぞれ回動可能に軸支されている。
【0063】
スライド部44は、ガイドユニット42a,42bに摺動可能に設けられている。スライド部44は、ガイド溝43に係合されている。また、スライド部44は、環状のリング部44aを有しており、リング部44aには、ロープ46が挿通されている。
【0064】
ロープ46は、スライド部44のリング部44aに挿通されていると共に、滑車48に掛けられている。ロープ46は、滑車48、ガイドユニット42a側のスライド部44のリング部44a、ガイドユニット42b側のスライド部44及び滑車48に渡されている。つまり、ロープ46は、2つのスライド部44のリング部44aに掛け渡されており、その両端部は、滑車48から下方に垂れ下がっている。ロープ46は、スライド部44のリング部44a間において撓まずに掛け渡される第1の状態と、スライド部44のリング部44a間において撓んで掛け渡される第2の状態とに変形する。
【0065】
続いて、移動装置40の動作について説明する。なお、天井搬送車100は、図10において右側から左側に走行、すなわち坂道軌道部SRを上っている状態であったとする。
【0066】
まず、天井搬送車100が停止した場合、天井搬送車100の進行方向の後方側までスライド部44を移動させる。このとき、ロープ46は、第2の状態、すなわち撓んでいる状態となっている。そして、ロープ46を下方に引っ張り、ロープ46が第1の状態となるようにセットし、天井搬送車100の後方側にロープ46を配置する。次に、ロープ46を更に下方に引っ張ることにより、スライド部44をガイド溝43に沿って移動させ、天井搬送車100の後部にロープ46を当接させる。
【0067】
天井搬送車100の後部にロープ46を当接させた後、天井搬送車100のブレーキを解除する。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRに沿って移動自在となる。そして、ロープ46を更に可能に引っ張ることにより、天井搬送車100を坂道軌道部SRの終端まで移動させる。その後、天井搬送車100を軌道Rの本線から離脱させる。
【0068】
以上説明したように、参考形態では、坂道軌道部SRに沿ってガイドユニット42a,42bが設置されており、このガイドユニット42a,42bに摺動可能に設けられたスライド部44に、天井搬送車100を支持するロープ46が掛け渡されている。これにより、天井搬送車100が坂道軌道部SRにおいて停止した場合には、ロープ46によって天井搬送車100を坂下側から支持し、ガイドユニット42a,42bに沿ってスライド部44を移動させることにより、天井搬送車100を移動させることができる。したがって、坂道軌道部SRにおける天井搬送車100の移動を容易に行うことができ、作業性の向上が図れる。
【0069】
本発明は、上記形態に限定されるものではない。例えば、上記形態では、坂道軌道部SRの坂下側に支持部が位置して天井搬送車100を支持しているが、支持部の位置はこれに限定されない。要は、天井搬送車100を坂道軌道部SRにおいて支持する構成であればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…移動装置、5…載置部、10,22,32a,32b…ガイドユニット(ガイド部)、12,12A,24,34a,34b…スライド部(摺動部)、14,26,36…支持部、16…移動機構(移動手段)、100…天井搬送車、B…ブロック(ブロック体)、C…天井、F…床、M…半導体製造装置、R…軌道、SR…坂道軌道部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行する天井搬送車を前記軌道の坂道軌道部で支持して移動させる移動装置であって、
前記坂道軌道部に沿って設けられたガイド部と、
前記ガイド部に沿って摺動可能に設けられた摺動部と、
前記摺動部を前記ガイド部に沿って移動させる移動手段と、
前記天井搬送車の支持位置に対して進退自在に摺動部に連結され、前記天井搬送車を前記坂道軌道部において支持するときには前記支持位置に進入し、前記天井搬送車を支持しないときには前記支持位置から退避する支持部と、
を備えることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
床又は床側に設置され、複数のブロック体から構成される載置部を備え、
前記ガイド部は、前記載置部に載置されていることを特徴とする請求項1記載の移動装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記坂道軌道部の下方に設置されており、
前記支持部は、前記摺動部に対して折り畳み可能に設けられており、前記天井搬送車を前記坂道軌道部において支持するときには立設されて前記支持位置に進入し、前記天井搬送車を支持しないときには折り畳まれて前記支持位置から退避することを特徴とする請求項1又は2記載の移動装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記坂道軌道部の両側にそれぞれ設置されており、
前記摺動部は、前記ガイド部から下方に延在し、互いに対向して前記ガイド部に設置されており、
前記支持部は、前記摺動部の間に架設されていると共に、当該摺動部において上下方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の移動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−35657(P2013−35657A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173071(P2011−173071)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】