説明

移行性薬剤を含む繊維性構造体

移行性薬剤を含む繊維性構造体、前記繊維性構造体から製造される単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品、及びそれらの製造方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移行性薬剤を含む繊維性構造体、前記繊維性構造体から製造される単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品、及びそれらの製造方法に関する。特に、本発明は、移行性薬剤を含むユーザー接触用表面を備える繊維性構造体であって、前記移行性薬剤が、ユーザーが使用中に(例えば、前記繊維性構造体に触れている間に)前記移行性薬剤の約6重量%超が前記繊維性構造体から表面へ移行されるように前記繊維性構造体に共在している(繊維性構造体の表面に直接的又は間接的に存在するか、及び/又は繊維性構造体の中に存在する)、繊維性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
涙目や鼻水を伴う感冒及びアレルギーは、人類の悩みの種である。呼吸したり、見たり、話したり、又鼻水を処理したりする面倒に加えて、これら疾患に悩まされている人は、ただれて刺激を受けた鼻及びその周辺部位にたびたび対処しなければならず、又鼻及びその周辺部位は、赤くなって炎症を起こすことでその状態に関して他人の注意をひくことが多い。刺激及び炎症(赤み)には幾つかの原因があり得る。主因は、言うまでもなく、やむを得ず頻繁にティッシュ又は布で鼻をかむことと、鼻及びその周辺から鼻水を拭き取ることである。鼻をかんだり拭き取ったりすることで生じる刺激及び炎症の度合いは、用いられる用具の表面粗さと非常に関係が深い。刺激及び炎症の度合いは、鼻及びその周辺部位が用具と接触しなければならない回数とも非常に関係が深く、比較的強度が弱いか又は比較的非吸収性の用具の使用は、顔面とのより多くの接触回数を要し、強度が弱いか又は比較的非吸収性のものは、より大量の鼻水を収容することができる、より強度が高いか又はより吸収性の高い用具を使用する場合よりも顔面とのより多くの接触回数を要する。
【0003】
鼻をかんだり拭き取ることによって生じる刺激及び炎症の問題を解決するためにこれまで多数の試みが成されている。そのようなこれまでの試みの例としては、繊維性構造体へのローション及び/又は有益な皮膚用化学物質の添加が挙げられる。しかしながら、このようなこれまでの試みは、臨床的に有益な量のような十分な量をユーザーの皮膚に移行させることができず、及び/又は臨床的有益性を与えるために、そのようなローション及び/又は化学物質をユーザーの皮膚に効率よく移行させることができないことが分かってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、移行性薬剤が十分に移行され、及び/又は効率よく移行されて、ユーザーの刺激を受けた皮膚の状態を改善するなどの所望の効果を与えることができるように繊維性構造体に共在した移行性薬剤を含む、繊維性構造体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、対向する表面に十分に及び/又は効率よく移行されて所望の効果を与えることができる移行性薬剤を含む繊維性構造体を提供することで上記の要求を満たす。
【0006】
本発明の一例では、移行性薬剤を含む繊維性構造体であって、前記移行性薬剤が、ユーザーが使用中に前記移行性薬剤の約6重量%超、及び/又は約7重量%超、及び/又は約9重量%超、及び/又は約11重量%超、及び/又は約15重量%超、及び/又は約17重量%超が前記繊維性構造体から表面に移行されるように前記繊維性構造体に共在している、繊維性構造体が提供される。
【0007】
本発明の又別の例では、本発明による繊維性構造体を含む単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品が提供される。
【0008】
本発明の更に又別の例では、ユーザーが使用中に前記移行性薬剤の約6重量%超が前記繊維性構造体から表面へ移行されるように、処理する必要がある繊維性構造体に移行性薬剤を共存する工程を含む繊維性構造体を処理する方法。
【0009】
従って、本発明は、移行性薬剤を含む繊維性構造体、前記繊維性構造体から製造された製品、及びそれらの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義
本明細書で使用する時、「繊維」は、その見かけの直径よりも非常に大きい見かけの長さを有する、即ち長さと直径との比が少なくとも約10である、細長い粒子を意味する。非円形の断面を有する繊維が一般的であり、この場合、「直径」は、繊維の断面積と等しい断面積を有する円の直径であると考えてよい。より具体的には、本明細書で使用する時、「繊維」は抄紙用繊維を指す。本発明は、多様な抄紙用繊維、例えば天然繊維若しくは合成繊維、又はあらゆるその他の好適な繊維、及びそれらのあらゆる組み合わせなどを使用することを企図する。
【0011】
本発明で有用な天然の抄紙用繊維としては、動物繊維、鉱物繊維、植物繊維及びこれらの混合物が挙げられる。動物繊維は、例えば、毛、絹及びこれらの混合物からなる群より選択されてよい。植物繊維は、例えば、木材、綿、綿リンター、亜麻、サイザル、アバカ、麻布、ヘスペルアロエ(hesperaloe)、黄麻、竹、バガス、葛、トウモロコシ、サトウモロコシ、ゴード、アガーベ、ヘチマ及びこれらの混合物からなる群より選択される植物に由来していてよい。
【0012】
木部繊維類は、多くの場合、木材パルプ類とも呼ばれ、これらとしては、クラフト(サルフェート)パルプ及びサルファイトパルプのような化学パルプ、並びに、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミ−メカニカルパルプ(CMP)、ケミ−サーモメカニカルパルプ(CTMP)、中性の準化学サルファイトパルプ(NSCS)を包含する機械パルプ及び準化学パルプが挙げられる。とはいえ、化学パルプは、それから作製されたティッシュシートに触知できる優れた柔軟性を付与することから、好ましいことがある。落葉樹(以下、「広葉樹材」とも呼ばれる)及び針葉樹(以下、「針葉樹材」とも呼ばれる)の両方に由来するパルプを使用することができる。広葉樹材の繊維及び針葉樹材の繊維は、混合することができ、あるいは、層化されたウェブ及び/又は層状のウェブを提供するために層状に積み重ねることができる。米国特許第4,300,981号及び同第3,994,771号が、広葉樹材及び針葉樹材の繊維の層化を開示する目的で、本明細書に参考として組み込まれる。また、上記分類のいずれか又はすべてを含有し、並びに元来の抄紙を容易にするために使用される充填剤や接着剤などの他の非繊維性材料を含有し得るリサイクル紙に由来する繊維も、本発明に利用できる。
【0013】
木材パルプ繊維は、短くても(広葉樹材の繊維に特有)、長くても(針葉樹材の繊維に特有)よい。短繊維の非限定的例には、アカシア、ユーカリ、カエデ、オーク、ヤマナラシ、カバノキ、ハコヤナギ、ハンノキ、トネリコ、サクラ、ニレ、ヒッコリー、ポプラ、ゴム、クルミ、ニセアカシア、スズカケノキ、ブナノキ、キササゲ、サッサフラス、グメリナ(Gmelina)、ネムノキ、アントセファラス(Anthocephalus)及びモクレンからなる群より選択される繊維源由来の繊維が挙げられる。長繊維の非限定的な例としては、マツ、トウヒ、モミ、アメリカカラマツ、アメリカツガ、糸杉及びヒマラヤスギに由来する繊維が挙げられる。クラフト法に由来する、更に北方の気候原産の針葉樹材の繊維が好ましいこともある。これらはしばしば、北方針葉樹材のクラフト(NSK)パルプとも呼ばれる。
【0014】
合成繊維は、湿式紡糸繊維、乾式紡糸繊維、溶融紡糸(メルトブローンを含む)繊維、合成パルプ繊維及びこれらの混合物からなる群より選択されてよい。合成繊維は、例えば、セルロース(しばしば「レーヨン」とも呼ばれる);エステル類、エーテル、又は含窒素誘導体類のようなセルロース誘導体類;ポリオレフィン類(ポリエチレン及びポリプロピレンを含む);ポリエステル類(ポリエチレンテレフタレートを含む);ポリアミド類(しばしば「ナイロン」とも呼ばれる);アクリル樹脂類;非セルロース性ポリマー炭水化物(例えば、デンプン、キチン、及びキトサンのようなキチン誘導体類);並びにこれらの混合物から構成されていてよい。
【0015】
本明細書で使用する時、「繊維性構造体」とは、1以上の繊維を含む構造体を表す。繊維性構造体の製造方法の非限定的例としては、既知の湿式抄紙方法及びエアレイド抄紙方法が挙げられる。このような方法には、典型的に、湿式法において、繊維スラリーとしばしば呼ばれる繊維組成物を濡れた状態か若しくは乾燥した状態で調製する工程と、それに続く、初期の繊維性構造体が形成されるように複数の繊維を形成用ワイヤ若しくはベルト上に配置する工程と、繊維性構造体が形成されるように前記繊維を合わせて乾燥及び/若しくは共存する工程と、並びに/又は完成した繊維性構造体が形成されるように前記繊維性構造体を更に加工する工程とが包含される。例えば、典型的な抄紙方法では、完成した繊維性構造体は、抄紙が終わった時点でリールに巻き取られているが、衛生ティッシュ製品に転化する前の繊維性構造体である。
【0016】
「衛生ティッシュ製品」は、排尿及び排便後の清浄のための拭取り用具(トイレットペーパー)として、耳鼻咽喉科学的な分泌物のための拭取り用具(顔用ティッシュ及び/又は使い捨てハンカチ)として、並びに多機能な吸収及び洗浄用途(吸収性タオル)として有用な、これらの用具に転化された又は転化されていない、1以上の繊維性構造体を含む。一例において、本発明によれば、厚さ約0.1mm〜約0.4mmの、ローション組成物を含有する多プライの使い捨てハンカチが提供される。
【0017】
本明細書で使用する時、「プライ(単数又は複数)」は、場合により、他の複数のプライと実質上近接に向かい合わせて配置されて、多プライの完成した繊維性構造体製品及び/又は衛生ティッシュ製品を形成する、個々の完成した繊維性構造体を表す。単一の繊維性構造体も又、例えばそれ自体を折り畳むことによって、2「プライ」又は多「プライ」を効率よく形成できると考えられる。
【0018】
本明細書で使用する時、「繊維性構造体の表面」は、外部環境に露出している繊維性構造体の一部を表す。換言すれば、繊維性構造体の表面は、繊維性構造体の他の部分で完全に取り囲まれていない繊維性構造体の一部である。
【0019】
本明細書で使用する時、「ユーザー接触用表面」とは、繊維性構造体の一部、及び/又は外部環境に露出している繊維性構造体の表面上に直接的若しくは間接的に存在する移行性薬剤及び/又は表面処理組成物及び/又はローション組成物を表す。換言すれば、ユーザー接触用表面は、繊維性構造体で形成される表面であって、ユーザーが使用する時に、対向する表面と接触する繊維性構造体の表面上に直接的及び/又は間接的に存在するいずれの表面処理組成物及び/又はローション組成物をも包含する。例えば、ユーザー接触用表面は、繊維性構造体で形成される表面であって、ユーザーが自分の皮膚を本発明の繊維性構造体で拭き取る時に、ユーザーの皮膚に接触する繊維性構造体の表面上に直接的及び/又は間接的に存在するいずれの表面処理組成物及び/又はローション組成物をも包含する。
【0020】
一例において、ユーザー接触用表面は、特に、通気乾燥した繊維性構造体及び/又はエンボス加工した繊維性構造体のように、型押し及び/又は構造化された繊維性構造体の場合、繊維性構造体の一段高くなった部位と、陥凹部位とを含んでいてよい。通気乾燥されて、パターン圧縮された繊維性構造体の場合、前記の一段高くなった部位は関節部であってよく、又前記の陥凹部位はクッション部であってよく、逆も同様にあり得る。従って、前記関節部は、直接的及び/又は間接的にローション組成物を含んでいてよく、前記クッション部は、表面処理組成物を含んでいてよく、逆も又同様にあり得るので、ユーザーが自分の皮膚を繊維性構造体で触ると、ローション組成物と表面処理組成物の両方がユーザーの皮膚に接触する。同様のことが、エンボス加工部を含むエンボス加工した繊維性構造体にも当てはまり、エンボス加工部は、直接的及び/又は間接的にローション組成物を含んでいてよく、非エンボス加工部が表面処理組成物を含んでいてもよく、逆も同様にあり得る。
【0021】
一例において、ユーザー接触用表面は、使用時に(異なる組成物を含む)2以上の異なる領域が対向する表面に露出しているように、十分な寸法の領域を構成しなければならない。換言すれば、ユーザーの皮膚にローション組成物がちょうど触れるように(顕微鏡スケールでは)ローション組成物でほぼ被覆されているが、巨視的スケールではこのようなローション組成物で完全に被覆されている繊維性構造体の表面は、ユーザー接触用表面内に2つの異なる領域を含まない。一例において、ユーザー接触用表面は、多層繊維性構造体の外層を構成してもよく、前記外層は、表面処理組成物及び/又はローション組成物を含んでいてよい。
【0022】
ユーザー接触用表面は、ユーザーが使用する前に繊維性構造体上及び/若しくは衛生ティッシュ製品上に存在してよく、並びに/又はユーザー接触用表面は、例えば、ユーザーが、自分の皮膚に繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品を接触させながら繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品に圧力を加える時のように、ユーザーによる繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の使用前及び/若しくは使用中に作製/形成されてよい。
【0023】
百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、重量で計算される。百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、組成物全体を基準にして計算される。
【0024】
特に記載のない限り、構成成分又は組成物の濃度はすべて、当該構成成分又は組成物の活性レベルに関するものであり、市販の供給源に存在し得る不純物、例えば残留溶媒又は副生成物は除外される。
【0025】
繊維性構造体
本発明の移行性薬剤は、表面処理組成物及び/若しくはローション組成物内に存在していてもよく、並びに/又は繊維性構造体上及び/若しくは繊維性構造体内に直接的若しくは間接的に存在していてもよい。
【0026】
図1は本発明による繊維性構造体の概略説明図である。図1に示すように、繊維性構造体10は、第1領域14及び第2領域16を含むユーザー接触用表面12を備えている。ユーザー接触用表面12は、繊維性構造体の表面18に共在している。示すように、繊維性構造体の表面18は1以上の繊維20を含んでいてよい。
【0027】
第1領域14及び/又は第2領域16は、繊維性構造体の表面18上に存在(表面と共在)していてもよい。第1領域14及び/若しくは第2領域16が繊維性構造体の表面18上に存在する場合、それらのうち一方若しくは両方は、繊維性構造体の表面18上に連続的若しくは実質的に連続的な網状組織の形態で、並びに/又は複数の別個の部位(「島」として知られていることもある)で存在していてよい。
【0028】
繊維性構造体の表面18上に存在する場合、第1領域14及び/若しくは第2領域16は、繊維性構造体の表面18の表面積の全体若しくは実質上全体と接触していてもよく、並びに/又は前記表面積の全体若しくは実質上全体を被覆していてもよい。一例において、第1領域18は、繊維性構造体の表面18の表面積の全体若しくは実質上全体と接触しているか、及び/又は前記表面積の全体若しくは実質上全体を被覆している。
【0029】
繊維性構造体の表面18上に存在する場合、第1領域14及び/若しくは第2領域16は、繊維性構造体の表面18の表面積の全体未満若しくは実質上全体未満と接触していてよく、並びに/又は前記表面積の全体未満若しくは実質上全体未満を被覆していてよい。一例において、第2領域16は、繊維性構造体の表面18の表面積の全体未満若しくは実質上全体未満と接触しているか、及び/又は前記表面積の全体未満若しくは実質上全体未満を被覆している。どちらかの領域が繊維性構造体の表面18の表面積の実質上全体未満を被覆する場合、前記領域は複数の別個の部位の形態であってよい。
【0030】
図2に示すように、第1領域14は、繊維性構造体の表面18の表面積の実質上全体と接触しているか、及び/又は前記表面積の実質上全体を被覆しており、又第2領域16は、繊維性構造体の表面18の表面積の実質上全体未満と接触しているか、及び/又は前記表面積の実質上全体未満を被覆している。第1領域14は、連続的又は実質的に連続的な網状組織の形態であってよく、又第2領域16は、連続的又は実質的に連続的な網状組織の前記第1領域14の至る所に配置された複数の別個の部位の形態であってよい。
【0031】
どちらかの領域が、もう一方の領域と接触していてもよい。図3に示すように、第2領域16は、第1領域14が第2領域16と繊維性構造体の表面18との間に位置するように第1領域14と接触している。第2領域16は、第1領域14の表面積全体未満の上に存在していてよい。第2領域16は、1以上の別個の部位の形態で第1領域14上に存在していてもよい。図1、図4及び図5に示すように、第2領域16の一部は、第2領域16及び第1領域14の両方が繊維性構造体の表面18に直接接触するように第1領域14と接触している。図4及び図5にも示すように、第2領域16の一部は第1領域14と接触していない。
【0032】
図4及び図5には、繊維性構造体の表面18の表面積の実質上全体未満が、第1領域14及び第2領域16と接触しているか又はそれらで被覆されていることも示されている。これらの例では、ユーザー接触用表面12は、第1領域14及び第2領域16に加えて、第3領域、即ち繊維性構造体の表面18も含んでいる。
【0033】
図6は、本発明による繊維性構造体の別の例の概略説明図である。繊維性構造体10は、第1領域14、第2領域16及び第3領域を含むユーザー接触用表面12を備えており、前記第3領域は、この場合、1以上の繊維20を含む繊維性構造体の表面18である。
【0034】
第1領域14は、表面処理組成物を含む。
【0035】
第2領域16は、ローション組成物を含む。
【0036】
一例において、表面処理組成物及び/又はローション組成物は、繊維性構造体の表面18上に、繊維性構造体の内部よりも高い重量基準濃度で存在していてよい。
【0037】
別の例では、表面処理組成物及び/又はローション組成物は、繊維性構造体の内部に、繊維性構造体の表面18上よりも高い重量基準濃度で存在していてよい。
【0038】
繊維性構造体の表面上での表面処理組成物の表面積被覆率は、約10%を超え、及び/又は約30%を超え、及び/又は約50%を超えて約100%まで、及び/又は約90%まで、及び/又は約85%までであってよい。
【0039】
繊維性構造体の表面上でのローション組成物の表面積被覆率は、約1%を超え、及び/又は約5%を超え、及び/又は約10%を超え、及び/又は約20%を超えて約99%まで、及び/又は約90%まで、及び/又は約75%まで、及び/又は約50%までであってよい。
【0040】
一例において、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面積は、約10%を超え、及び/又は約20%を超え、及び/又は約50%を超え、及び/又は約70%を超え、及び/又は約80%を超え、及び/又は約90%を超える表面処理組成物と、0〜約90%まで、及び/又は0〜約80%まで、及び/又は0〜約50%まで、及び/又は0〜約30%まで、及び/又は0〜約20%まで、及び/又は0〜約10%までのローション組成物とを含む。繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面の表面積がローション組成物を0%含む場合、前記ローションは、繊維性構造体の内部及び/又は衛生ティッシュ製品の内部、例えば2プライの衛生ティッシュ製品の間にあってもよい。
【0041】
別の例では、ユーザー接触用表面の表面積は、約20%〜約97%まで、及び/又は約50%〜約97%まで、及び/又は約80%〜約97%までの表面処理組成物と、約3%〜約80%まで、及び/又は約3%〜約50%まで、及び/又は約3%〜約20%まで、及び/又は約3%〜約15%までのローション組成物を含む。
【0042】
繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面積被覆率は、本明細書に記載の表面積被覆率試験法で決定されてよい。
【0043】
各領域はそれぞれ、その内部において、それらの各組成物の差別的な濃度、及び/又はそれらの各組成物の差別的な高さ(繊維性構造体の表面からの突出部)を示すことがある。
【0044】
ユーザー接触用表面の面積は、約10%を超え、及び/又は約30%を超え、及び/又は約50%を超えて約100%まで、及び/又は約90%まで、及び/又は約85%までの表面処理組成物、及び/又は約1%を超え、及び/又は約5%を超え、及び/又は約10%を超え、及び/又は約20%を超えて約99%まで、及び/又は約90%まで、及び/又は約75%まで、及び/又は約50%までのローション組成物を含んでいてよい。
【0045】
ユーザー接触用表面における表面処理組成物とローション組成物との組み合わせは、表面処理組成物又はローション組成物のいずれかを単独で含むユーザー接触用表面よりも優れた柔軟性を示す。
【0046】
ユーザー接触用表面は、平面的であってよく、又はユーザー接触用表面が差別的な高さを示すように表面処理組成物及び/若しくはローション組成物のいずれかの突出物を有していてもよい。
【0047】
別の例では、ユーザー接触用表面は、より高濃度のローション組成物の部位及び/又はより高さのあるローション組成物の部位と、より低濃度のローション組成物の部位及び/又はより低い高さのローション組成物の部位と、表面処理組成物の部位とを備えていてもよい。
【0048】
表面処理組成物及びローション組成物は、ユーザー接触用表面が、第2領域中に存在する組成物とは別の組成物を含む(少なくとも1つの成分が組成物中で異なる)第1領域を含んでいるのであれば、1以上の類似の及び/又は同一の成分を含んでいてよい。
【0049】
本発明による繊維性構造体の非限定的な種類には、通常型のフェルト圧縮された繊維性構造体、パターン圧縮された繊維性構造体、及び非常に嵩張った非圧縮の繊維性構造体が包含される。繊維性構造体は、均質な構造であっても、又は多層(2層又は3層以上)構造であってもよく、又それから製造される衛生ティッシュ製品は、単プライ構造体であっても、又は多プライ構造体であってもよい。
【0050】
繊維性構造体は、例えばエンボス加工によって、及び/又はカレンダー工法によって、及び/又は折り畳むことによって、及び/又はその上に画像を印刷することによって、後加工されてもよい。
【0051】
繊維性構造体は、通気乾燥された繊維性構造体であっても、又は通常に乾燥された繊維性構造体であってもよい。
【0052】
繊維性構造体は、クレープ加工されていても、又はクレープ加工されていなくてもよい。
【0053】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、約10g/m2〜約120g/m2、及び/又は約12g/m2〜約80g/m2、及び/又は約14g/m2〜約65g/m2の坪量を示してよい。
【0054】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、約59g/cm(150g/インチ)を超え、及び/又は約78g/cm(200g/インチ)〜、及び/又は約98g/cm(250g/インチ)〜約1182g/cm(3000g/インチ)まで、及び/又は約984g/cm(2500g/インチ)まで、及び/又は約787g/cm(2000g/インチ)まで、及び/又は約394g/cm(1000g/インチ)まで、及び/又は約335g/cm(850g/インチ)までの合計乾燥引張強度を示してよい。
【0055】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、約0.60g/cm3未満、及び/又は約0.30g/cm3未満、及び/又は約0.20g/cm3未満、及び/又は約0.10g/cm3未満、及び/又は約0.07g/cm3未満、及び/又は約0.05g/cm3未満、及び/又は約0.01g/cm3〜約0.20g/cm3まで、及び/又は約0.02g/cm3〜約0.10g/cm3までの密度を示してよい。
【0056】
本発明の繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、約0.1を超え、及び/又は約0.5を超え、及び/又は約1.0を超え、及び/又は約1.5を超え、及び/又は約2.0を超え、及び/又は約3.0を超えて約20まで、及び/又は約15まで、及び/又は約13まで、及び/又は約10まで、及び/又は約8までの平均リント値(average lint value)を示してよい。
【0057】
移行性薬剤
本発明の繊維性構造体は、約50重量%未満、及び/又は約40重量%未満、及び/又は約30重量%未満、及び/又は約20重量%未満、及び/又は約10重量%未満、及び/又は約5重量%未満〜約0.01重量%まで、及び/又は約0.1重量%まで、及び/又は約1重量%までの移行性薬剤を含むことができる。
【0058】
移行性薬剤は、抗炎症化合物、脂質、無機アニオン類、無機カチオン類、蛋白質分解酵素抑制剤類、金属イオン封鎖剤類及びこれらの混合物であってよい。
【0059】
一例において、移行性薬剤は、ユーザー接触用表面に約10g/m2未満、及び/又は約8g/m2未満、及び/又は約6g/m2未満〜約0.5g/m2まで、及び/又は約1.0g/m2まで、及び/又は約1.5g/m2までで共在している。
【0060】
一例において、移行性薬剤は、水上の油に対してより高い親和性を有し、及び/又は皮膚と直接触れ合うことによって皮膚の健康上の利益を与えるいずれの物質であってもよい。このような利益の好適な例としては、皮膚バリア機能の向上、保湿力の向上及び皮膚に栄養分を与えることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
好適な移行性薬剤の非限定的な例としては、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、脂肪族アルコール類、トリグリセリド類、りん脂質類、鉱油類、精油類、ステロール類、ステロールエステル類、皮膚軟化剤類、ろう類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
移行性薬剤は、単独であってもよく、ローション組成物中に含まれていてもよく、及び/又は表面処理組成物中に含まれていてもよい。移行性薬剤を含む市販のローション組成物は、ヴァセリン(Vaseline)(登録商標)集中ケアローション(Intensive Care Lotion)(チーズブロー・ポンズ社(Chesebrough-Pond's, Inc.))である。
【0063】
移行性薬剤として有用な油脂類の非限定的な類としては、杏仁油、アボカド油、ババス油、ルリチシャ種子油、バター、C12(下付き数字)(C.sub.12)〜C18(下付き数字)(C.sub.18)酸トリグリセリド、ツバキ油、キャノーラ油、カプリル酸/カプリン酸/ラウリル酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ニンジン油、カシューナッツ油、ヒマシ油、さくらんぼの種油(Cherry Pit Oil)、チーア油、カカオバター、ココヤシ油、タラ肝油、トウモロコシ胚芽油、コーンオイル、綿実油、C10(下付き数字)(C.sub.10)〜C18(下付き数字)(C.sub.18)トリグリセリド類、卵油、エポキシ化大豆油、マツヨイグサ油、トリアセチルヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリアセチルリシノール酸グリセリル、スフィンゴ糖脂質、ブドウの種油、ハシバミの実油、ヒト胎盤脂質、ハイブリッドサフラワーオイル、ハイブリッドヒマワリ種子油、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油ラウレート、硬化ココヤシ油、硬化綿実油、水素添加C12(下付き数字)(C.sub.12)〜C18(下付き数字)(C.sub.18)トリグリセリド、硬化魚油、硬化ラード、硬化メンハーデン油、硬化ミンクオイル、硬化オレンジラッフィー油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化ピーナッツオイル、硬化サメ肝油、硬化大豆油、硬化獣脂、硬化植物油、ラノリン及びラノリン誘導体類、ラード、ラウリル酸/パルミチン酸/オレイン酸トリグリセリド、北米産アブラナ科油(Lesquerella Oil)、亜麻仁油、マカデミアナッツオイル、マレイン化大豆油(Maleated Soybean Oil)、メドウフォーム種子油、メンハーデン油、ミンクオイル、モリンガオイル、モルティエラ属オイル(Mortierella Oil)、牛脚油、オレイン酸/リノール酸トリグリセリド、オレイン酸/パルミチン酸/ラウリル酸/ミリスチン酸/リノール酸トリグリセリド、オレオステアリン、オリーブの殻油(Olive Husk Oil)、オリーブオイル、大網脂質(Omental Lipids)、オレンジラフィー油、パーム核油、パーム油、杏仁油、ピーナッツオイル、ペンガワー・ジャンビオイル(Pengawar Djambi Oil)、ペンタデスマ・バター(Pentadesma Butter)、リン脂質類、ピスタチオナッツオイル、プラセンタ脂質類、菜種油、コメヌカ油、サフラワーオイル、ゴマ油、サメ肝油、シアバター、大豆油、スフィンゴ脂質類、ヒマワリ種子油、甘扁桃油、トール油、獣脂、トリベヘニン、トリカプリン、トリカプリリン、トリヘプタノイン、トリヒドロキシメトキシステアリン、トリヒドロキシステアリン、トリイソノナノイン、トリイソステアリン、トリラウリン、トリリノレイン、トリリノレニン、トリミリスチン、トリオクタノイン、トリオレイン、トリパルミチン、トリセバシン、トリステアリン、トリウンデカノイン、植物油、クルミ油、ふすま脂質、小麦の胚種油及びザドアリーオイル(Zadoary Oil)が挙げられる。
【0064】
移行性薬剤として好適な脂肪酸類の非限定的な例としては、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ヤシ油脂肪酸、コーンオイル脂肪酸(Corn Acid)、綿実油脂肪酸(Cottonseed Acid)、硬化やし油脂肪酸、硬化メンハーデン油脂肪酸(Hydrogenated Menhaden Acid)、硬化獣脂脂肪酸(Hydrogenated Tallow Acid)、ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、亜麻仁油脂肪酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パーム核油脂肪酸(Palm Kernel Acid)、ペラルゴン酸、リシノール酸、大豆油脂肪酸(Soy Acid)、ステアリン酸、トール油脂肪酸(Tall Oil Acid)、獣脂脂肪酸(Tallow Acid)、ウンデカン酸、ウンデシレン酸及び小麦の胚種油脂肪酸(Wheat Germ Acid)が挙げられる。
【0065】
移行性薬剤として好適な脂肪族アルコール類の非限定的な例としては、ベヘニルアルコール、C9(下付き数字)(C.sub.9)〜C11(下付き数字)(C.sub.11)アルコール類、C12(下付き数字)(C.sub.12)〜C13(下付き数字)(C.sub.13)アルコール類、C12(下付き数字)(C.sub.12)〜C15(下付き数字)(C.sub.15)アルコール類、C12(下付き数字)(C.sub.12)〜C16(下付き数字)(C.sub.16)アルコール類、C14(下付き数字)(C.sub.14)〜C15(下付き数字)(C.sub.15)アルコール類、カプリルアルコール、セテアリルアルコール、セチルアルコール、ヤシ油アルコール、デシルアルコール、硬化獣脂アルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、パーム油アルコール、パーム核油アルコール、ステアリルアルコール、獣脂アルコール及びトリデシルアルコールが挙げられる。
【0066】
移行性薬剤として好適な精油の非限定的な例としては、アニス油、バームミント油、バジル油、ビーバーム油、ベルガモット油、バーチ油、ビターアーモンド油、ビターオレンジ油、キンセンカ油、カリフォルニアナツメグ油、ヒメウイキョウ油、カルダモン油、カモミール油、桂皮油、サルビア油、クローブリーフ油、丁子油、コリアンダー油、サイプレス油、ユーカリ油、ウイキョウ油、クチナシ油、ゼラニウム油、ショウガ油、グレープフルーツ油、ホップ油、イガニガクサ属油(Hyptis Oil)、クロバナエンジュ油(Indigo Bush Oil)、ジャスミン油、杜松油、キウイ油、月桂樹油、ラベンダー油、レモングラス油、レモン油、リンデン油、ラビジ油、マンダリンオレンジ油、マトリカリア油、マスクローズ油、ナツメグ油、乳香、橙花油、オレンジ油、パチョリ油、ペニロイアルハッカ油、ペパーミント油、松根油、松根タール油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ばら油、ヘンルーダ油、セージオイル、ニワトコの花油(Sambucus Oil)、白檀油、サッサフラス油、ヨーロッパモミ油、スペアミント油、マヨラナオイル、ニオイスミレ油、タール油、茶木油、タイム油、ワイルドミント油(Wild Mint Oil)、セイヨウノコギリソウ油及びイランイラン油が挙げられる。
【0067】
移行性薬剤として好適なステロール類及び/又はステロール誘導体類の非限定的な例としては、第17位に尾部を有し、及び極性基を有さないステロール類、例えば、コレステロール、シトステロール、スチグマステロール及びエルゴステロール、並びにC10〜C30コレステロール/ラノステロールエステル類、コレカルシフェロール、コレステリルヒドロキシステアレート、コレステリルイソステアレート、コレステリルステアレート、7−デヒドロコレステロール、ジヒドロコレステロール、ジヒドロコレステリルオクチルデカノエート、ジヒドロラノステロール、ジヒドロラノステリルオクチルデカノエート、エルゴカルシフェロール、トール油ステロール、大豆ステロールアセテート、ラナステロール(lanasterol)、大豆ステロール、アボカドステロール類、アボカジン(avocadin)及びステロールエステル類が挙げられる。
【0068】
移行性薬剤として好適な皮膚軟化剤の非限定的な例としては、鉱油、ミネラルゼリー、ペトロラタム、化粧用エステル類、脂肪酸エステル類、グリセリルエステル類、アルコキシル化カルボン酸類、アルコキシル化アルコール類、脂肪族アルコール類、ラノリン及びラノリン誘導体、ペトロラタム基油類(petrolatum base oils)、シリコーン類、脂肪類、硬化植物油並びにポリヒドロキシエステル類が挙げられる。
【0069】
移行性薬剤として好適なろう類の非限定的な例としては、天然及び合成ろう類、例えば、ヤマモモろう、蜜蝋、C30アルキルジメチコン、キャンデリラろう、カルナアバ(carnuaba)、セレシン類、セチルエステル類、硬化綿実油、硬化ホホバ油、硬化ホホバろう、硬化マイクロクリスタリンろう、硬化コメヌカろう、木ろう、ホホババター、ホホバエステル類、ホホバろう、ラノリンろう、マイクロクリスタリンろう、ミンクろう、モタン酸ろう(motan acid wax)、モタンろう(motan wax)、オウリカリろう、オゾケライト、パラフィン、PEG−6蜜蝋、PEG−8蜜蝋、コメヌカろう、セラックろう、オオムギ麦芽外殻ワックス(spent grain wax)、ステリルジメチコン合成蜜蝋、合成キャンデリラろう、合成カルナバろう、合成木ろう、合成ホホバろう及び合成ろうが挙げられる。一例において、前記ろうは、カルナバ、ケラシン、セチルエステル類、マイクロクリスタリンろう、モンタンろう、オゾケライト及び/又は合成ろうを含む。
【0070】
移行性薬剤として好適な保湿剤の非限定的な例としては、アセトアミドMEA、アロエベラジェル、アルギニンPCA、キトサンPCA、銅PCA、トウモロコシグリセリド類、ジメチルイミダゾリジノン、フルクトース、グルカミン、グルコース、グルコースグルタメート、グルクロン酸、グルタミン酸、グリセレス−7、グリセレス−12、グリセレス−20、グリセレス−26、グリセリン、蜂蜜、水素添加蜂蜜、水素添加デンプン加水分解産物、加水分解トウモロコシデンプン、ラクトアミドMEA、乳酸、ラクトースリシンPCA、マンニトール、メチルグルセス−10、メチルグルセス−20、PCA、PEG−2ラクトアミド、PEG−10プロピレングリコール、ポリアミノ糖縮合物、カリウムPCA、プロピレングリコール、プロピレングリコールシトレート、糖加水分解産物、異性化糖(Saccharide Isomerate)、アスパラギン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムPCA、ソルビトール、及びTEA−ラクテートが挙げられる。
【0071】
表面処理組成物
本発明の目的のための表面処理組成物は、ユーザーが繊維性構造体及び/又は繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品を手に持って前記繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品でユーザーの皮膚を擦ることによって知覚される繊維性構造体の表面の感触を与える組成物である。このような触覚で感じられる柔軟性は、摩擦、しなやかさ、及び滑らかさ、並びに主観的な記述、例えば、つるつるした、ベルベット、シルク、又はフランネルのような感じなどを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0072】
表面処理組成物は移行可能であっても、移行可能でなくてもよい。典型的に、表面処理組成物は実質的に移行できない。
【0073】
表面処理組成物は、繊維性構造体の表面、特に繊維性構造体のユーザー接触用表面の表面摩擦を増減することができる。典型的に、表面処理組成物は、このような表面処理組成物を含まない繊維性構造体の表面に比べて繊維性構造体の表面の表面摩擦を低減する。
【0074】
表面処理組成物は、表面処理組成物と接触するローション組成物の拡散を最小限にするように、ローション組成物の表面張力より小さいか又はそれと同等の湿潤張力を有していてよい。
【0075】
表面処理組成物は表面処理剤を含む。繊維性構造体へ適用時の表面処理組成物は、少なくとも約0.1重量%、及び/又は少なくとも約0.5重量%、及び/又は少なくとも約1重量%、及び/又は少なくとも約3重量%、及び/又は少なくとも約5重量%〜約90重量%まで、及び/又は約80重量%まで、及び/又は約70重量%まで、及び/又は約50重量%まで、及び/又は約40重量%までの表面処理剤を含んでいてよい。一例では、表面処理組成物は、約5重量%〜約40重量%までの表面処理剤を含む。
【0076】
本発明の繊維性構造体及び/又は前記繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品の上に存在する表面処理組成物は、合計坪量の少なくとも約0.01%、及び/又は少なくとも約0.05%、及び/又は少なくとも約0.1%の表面処理剤を含んでいてよい。一例において、前記繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、合計坪量の約0.01%〜約20%、及び/又は約0.05〜約15%、及び/又は約0.1%〜約10%、及び/又は約0.01%〜約5%、及び/又は約0.1%〜約2%の表面処理剤を含むことができる。
【0077】
一例において、本発明の表面処理組成物は、表面処理剤(例えば、アミノ官能性ポリジメチルシロキサン)の水中マイクロエマルションである。このような例では、表面処理組成物中での表面処理剤の濃度は、約3%〜約60%、及び/又は約4%〜約50%、及び/又は約5%〜約40%であってよい。このようなマイクロエマルションの非限定的な例は、ワッカー・ケミー社(Wacker Chemie)、ダウ・コーニング社(Dow Corning)及び/又はゼネラル・エレクトリック・シリコーンズ社(General Electric Silicones)から市販されている。
【0078】
好適な表面処理剤の非限定的な例は、ポリエチレン及びその誘導体類などのポリマー類、炭化水素類、ろう類、油類、シリコーン類(ポリシロキサン類)、4級アンモニウム化合物類、フルオロカーボン類、置換C10〜C22アルカン類、置換C10〜C22アルケン類、特に脂肪族アルコール及び脂肪酸類の誘導体類(例えば、脂肪酸アミド類、脂肪酸縮合物類及び脂肪族アルコール縮合物類)、ポリオール類、ポリオールの誘導体類(例えば、エステル類及びエーテル類)、糖誘導体類(例えば、エーテル類及びエステル類)、ポリグリコール類(例えば、ポリエチレングリコール)並びにこれらの混合物よりなる群から選択することができる。
【0079】
表面処理組成物は、本明細書において以降に記載するようなビヒクルなどの追加成分を含んでいてよいが、前記追加成分は、繊維性構造体及び/又は当該繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品の上に存在しない場合もある。一例において、表面処理組成物は、表面処理剤と水などのビヒクルとを含んで、表面処理剤を繊維性構造体の表面上に適用しやすくすることがある。
【0080】
ローション組成物
ローション組成物は、油類及び/又は皮膚軟化剤類及び/又はろう類(これらのうちいずれか又は全てが移行性薬剤であってよい)及び/又は固定化剤を含んでいてよい。一例において、ローション組成物は、約10%〜約90%の油類及び/若しくは液体皮膚軟化剤、並びに約10%〜約50%の固定化剤、並びに/又は約0%〜約60%のペトロラタム、並びに任意に残りの量のビヒクルを含む。
【0081】
ローション組成物は不均質であってよい。ローション組成物は、固体、ゲル構造体、高分子材料、多数の相(例えば油相及び水相)及び/又は乳化構成成分を含有していてよい。ローション組成物の融解温度を正確に求めるのは困難である場合があり、言い換えれば、液状と、擬似液状と、擬似固体と、固体との間での移行温度を求めるのが困難な場合がある。融解温度、融点、移行点及び移行温度という用語は、本明細書では同義的に用いられ、同じ意味を有する。
【0082】
ローション組成物は、高粘度の半固体であり得ることから、製品又はゲル構造体の耐用期間中に活性化せずには、実質的に流動しない。
【0083】
ローション組成物はずり減粘であってよく、及び/又はローション組成物は、ユーザーの皮膚に移行してそこで容易に拡散できるように皮膚温度付近で粘度が大きく変化してもよい。
【0084】
ローション組成物は、乳濁液及び/又は分散液の形態であってもよい。
【0085】
ローション組成物の一例において、ローション組成物の水分含有量は、約20%未満、及び/又は10%未満、及び/又は約5%未満、又は約0.5%未満である。
【0086】
別の例では、ローション組成物の固体含有量は、少なくとも約15%、及び/又は少なくとも約25%、及び/又は少なくとも約30%、及び/又は少なくとも約40%〜約100%まで、及び/又は約95%まで、及び/又は約90%まで、及び/又は約80%までであってよい。
【0087】
好適な油類及び/又は皮膚軟化剤類の非限定的な例としては、グリコール類(例えば、プロピレングリコール及び/又はグリセリン)、ポリグリコール類(例えば、トリエチレングリコール)、ペトロラタム、脂肪酸類、脂肪族アルコール類、脂肪族アルコールエトキシレート類、脂肪族アルコールエステル類及び脂肪族アルコールエーテル類、脂肪酸エトキシレート類、脂肪酸アミド類及び脂肪酸エステル類、炭化水素油類(例えば、鉱油)、スクアラン、フッ素化皮膚軟化剤、シリコーンオイル(例えば、ジメチコン)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
固定化剤には、皮膚軟化剤が繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面上、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面の表面処理組成物の上に主として留まって、ユーザーの皮膚へローション組成物を移行し易くするように、繊維性構造体の中への皮膚軟化剤の移行を阻止し得る(are may)薬剤が包含される。固定化剤は、粘度増大剤及び/又はゲル化剤として機能することもある。
【0089】
好適な固定化剤の非限定的な例としては、ろう類(例えば、セレシンろう、オゾケライト、マイクロクリスタリンろう、石油ろう類、フィッシャー・トロプシュろう類、シリコーンワックス類、パラフィンワックス類)、脂肪族アルコール類(例えば、セチル及び/又はステアリルアルコール)、脂肪酸類及びそれらの塩類(例えば、ステアリン酸金属塩類)、モノ及びポリヒドロキシ脂肪酸エステル類、モノ及びポリヒドロキシ脂肪酸アミド類、シリカ及びシリカ誘導体類、ゲル化剤類、増粘剤類、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0090】
一例において、ローション組成物は、少なくとも1つの固定化剤と少なくとも1つの皮膚軟化剤を含む。
【0091】
一例において、ローション組成物は、脂肪酸のショ糖エステルを含む。
【0092】
ローション組成物は、抄紙及び/又は転化プロセス中のどの時点で繊維性構造体に添加されてもよい。一例において、ローション組成物は、転化プロセス中に繊維性構造体に添加される。
【0093】
ローション組成物は、移行性薬剤を含むことがあるので、移行可能なローション組成物であると考えられ得る。移行可能なローション組成物は、使用時に対向する表面、例えばユーザーの皮膚、に移行され得る少なくとも1つの移行性薬剤を含む。一例において、ユーザー接触用表面の上に存在する移行可能なローションのうち少なくとも0.1%が、使用中にユーザーの皮膚に移行する。使用中にユーザーの皮膚に移行する移行可能な組成物の量は、ユーザーが繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品を使用した後でスリーエム社(3M)から入手可能なテガダーム・テープ(Tegaderm Tapes)を用いて皮膚から3回テープ剥離を行い、そして移行可能な組成物の構成成分全てが均一に移行すると仮定して、移行可能な組成物又は移行可能な組成物中の一構成成分についてテープを分析する、などの既知の方法で求めることができる。
【0094】
ローション組成物に包含され得る他の任意成分としては、ビヒクル、香料、特に長く残る香料及び/又は持続性の香料、抗菌活性物質、抗ウィルス活性物質、消毒剤、薬学上の活性物質、皮膜形成剤、防臭剤、乳白剤、収斂剤、溶媒、冷感剤(cooling sensate agents)などが挙げられる。ローション組成物の構成成分の特別な例としては、カンファー、チモール、メントール、カモミール抽出物、アロエベラ、キンセンカ、α−ビスアルボロール(bisalbolol)、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステルが挙げられる。
【0095】
本発明のローション組成物の一例において、ローション組成物の融点は約35℃よりも高い。例として、ローション組成物は、当該ローション組成物の実質的な量(例えば、30%を超える、及び/又は40%を超える、及び/又は50%を超える、及び/又は60%を超える量)が溶解する前に約35℃よりも高い温度に晒されなければならない。このことは、次のように表すことができる:
(1)ΔH2/ΔH1は、約1以上、及び/若しくは約4以上、及び/若しくは約9以上であり、並びに/又は
(2)ΔH2は約30J/g以上、40J/g、並びに/又は
約60J/g以上であり(とりわけ、ΔH1が0である場合)、
ここで、ΔH1は、ローション組成物の温度を15℃から35℃まで上昇させるのに必要なエネルギーであり、ΔH2は、ローション組成物の温度を35℃から、ローション組成物が完全に液化する温度まで、又はローション組成物が100℃を超えてしか溶融しない構成成分を含む場合には、それ以上溶融が生じない100℃未満の温度まで上昇させるのに必要なエネルギーである。
【0096】
ΔHは、DSC技術によって、当業者に既知の標準的なパラメータを用いて測定される。DSCデータは、文献に報告されているように、溶融開始温度156.6℃及び溶融熱6.80カロリー/グラムの金属インジウム標準物質で較正したスイング・アルバート(Thwing Albert)DSC2920機器を用いて得られる。試料は、最初に10℃/分の速度で100℃まで加熱し、100℃で5分間平衡化させ、−2.5℃/分の速度で−30℃まで冷却して、−30℃で5分間平衡化させた後、最後に2.5℃/分の速度で−30℃から+100℃まで加熱して、溶融特性を評価する。ΔH1及びΔH2を求める場合は、前記の最後の加熱勾配を用いる。ΔH1は、15℃〜35℃までのDSC曲線とベースラインとで囲まれた面積であり、ΔH2は、35℃から、ローション組成物が完全に液化する温度又は、ローション組成物が100℃を超えてしか溶融しない構成成分を含む場合には、それ以上溶融が生じない100℃未満の温度までの間の、DSC曲線とベースラインとで囲まれた面積である。例として、本発明のローション組成物は、約40%のステアリルアルコールと、約30%の鉱油と、約30%のペトロラタムを含み、ΔH2/ΔH1値は9を超え、又ΔH2値は60J/gを超える。
【0097】
一例において、ローション組成物は、繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面上、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面に存在する表面処理組成物の上に、ユーザー接触用表面につき少なくとも約0.5g/m2、及び/又は少なくとも約1.0g/m2、及び/又は少なくとも約1.5g/m2の濃度で存在する。別の例において、ローション組成物は、繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面上、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面に存在する表面処理組成物の上に、ユーザー接触用表面につき約0.5g/m2〜、及び/又は約1.0g/m2〜、及び/又は約1.5g/m2〜約10g/m2まで、及び/又は約8g/m2まで、及び/又は約6g/m2までの濃度で存在する。
【0098】
ビヒクル
本明細書で使用する時、「ビヒクル」は、表面処理組成物及び/又はローション組成物を形成する薬剤を希釈及び/又は乳化するのに使用されて分散液/乳濁液を形成することができる物質である。ビヒクルは、特に表面処理組成物の適用時及び/又は繊維性構造体への適用時に、表面処理組成物中及び/又はローション組成物中に含まれていてよい。ビヒクルで成分を溶解してもよく(真溶液又はミセル溶液)、又は成分をビヒクル全体に分散させてもよい(分散又は乳化)。懸濁液又は乳濁液のビヒクルは、典型的にはそれらの連続相である。即ち、分散液又は乳濁液の他の構成成分は、ビヒクル全体に分子レベルで、又は個々に分離した粒子として分散される。
【0099】
本発明のビヒクルとして使用するのに好適な物質としては、水を包含するが、これに限定されない、ヒドロキシル官能性液体が挙げられる。一例において、ローション組成物は、約20%w/w未満、及び/又は約10%w/w未満、及び/又は約5%w/w未満、及び/又は約0.5%w/w未満の、例えば水などのビヒクルを含む。一例において、表面処理組成物は、約50%w/wを超え、及び/又は約70%w/wを超え、及び/又は約85%w/wを超え、及び/又は約95%w/wを超え、及び/又は約98%w/wを超える、例えば水などのビヒクルを含む。
【0100】
加工助剤
加工助剤も、本発明のローション組成物に使用してよい。好適な加工助剤の非限定例としては、ノースカロライナ州グリーンズボロ(Greensboro, N.C.)のチバ・ガイギー(CIBA-GEIGY)より入手可能なチノパール(TINOPAL)CBS−X(登録商標)などの増白剤が挙げられる。
【0101】
ローション組成物の非限定例
【0102】
【表1】

* 米国、シンシナティのプロクター・アンド・ギャンブル・ケミカルズ社(Procter & Gamble Chemicals)より入手可能
** クロンプトン社(Crompton Corporation)より入手可能
ローション組成物の融点は約51℃であり、56℃でのその溶融粘度は、ずり速度0.1 1/sで測定すると約17m・Pas(m*Pas)である。この配合に使用した鉱油の粘度は、20℃で約21mPa・sである。ローション組成物は、繊維性構造体の片面又は両面に、3.6g/m2、4.2g/m2、6g/m2、7.2g/m2、8.4g/m2及び11.4g/m2の合計付加濃度で適用することができる。
【0103】
繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の処理方法
a. 移行性薬剤及び/又は表面処理組成物:
移行性薬剤及び/又は表面処理組成物を適用するのに適した任意の接触適用又は非接触適用、例えば、噴霧、浸漬、パディング、印刷、スロット押出、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、マスク又はステンシル塗布法、及びこれらの混合を使用して、移行性薬剤及び/若しくは表面処理組成物を繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品に、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面に存在するローション組成物に適用することができる。移行性薬剤及び/又は表面処理組成物は、ローション組成物を繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品へ適用する前に、それと同時に、又はその後で、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品へ適用することができる。移行性薬剤及び/又は表面処理組成物は、特に、層状の繊維性構造体及び/又は当該層状の繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品の外側層に適用するのであれば、抄紙時及び/又は転化時に適用することができる。
【0104】
一例において、表面処理組成物は、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面上に比較的大きな表面積被覆率を与える適用方法で適用される。このような好適な適用方法の例としては、限定されないが、微粒子を用いた印刷、スロット押出及び/又は噴霧が挙げられる(とはいえ、噴霧は、広い面積の被覆率を達成しようとする場合、エアゾールを製造するという不利益を有する)。
【0105】
b. 移行性薬剤及び/又はローション組成物:
移行性薬剤及び/又はローション組成物を適用するのに適した任意の接触適用又は非接触適用、例えば、噴霧、浸漬、パディング、印刷、スロット押出、輪転グラビア、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、マスク又はステンシル塗布法、及びこれらの混合を使用して、移行性薬剤及び/若しくはローション組成物を繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品に、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面に存在する表面処理組成物に適用することができる。移行性薬剤及び/又はローション組成物は、表面処理組成物を繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品へ適用する前に、それと同時に、及び/又はその後で、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品へ適用することができる。一例において、移行性薬剤及び/又はローション組成物は、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面に存在する表面処理組成物に適用される。
【0106】
一例において、移行性薬剤及び/若しくはローション組成物は、繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面上、並びに/又は繊維性構造体及び/若しくは衛生ティッシュ製品の表面に存在する表面処理組成物上に、表面処理組成物の領域とローション組成物の領域とがユーザー接触用表面をもたらすように、比較的小さな表面積の被覆率を与える適用方法で適用される。このような好適な適用方法の例としては、限定されないが、噴霧、特に、回転ディスクを用いた噴霧、印刷、縞模様及び/又は他の模様でのスロット押出が挙げられる。
【0107】
一例において、表面処理組成物は、多層繊維性構造体の外層を形成する繊維完成紙料に添加してもよい。移行性薬剤及び/又はローション組成物は、多層繊維性構造体の外層で形成される表面に適用されてもよい。
【0108】
一例において、表面処理組成物は、繊維性構造体の製造方法中、例えば、繊維性構造体の乾燥前及び/又は乾燥後に、繊維性構造体の表面に適用される。移行性薬剤及び/又はローション組成物は、その後、転化プロセス中に、繊維性構造体の表面上の表面処理組成物へ適用されてもよい。
【0109】
一例において、表面処理組成物は、ローション組成物が適用される時点で、約5%未満、及び/又は約3%未満、及び/又は約1%未満、及び/又は約0.5%未満の水分を含有する。
【0110】
移行性薬剤及び/又はローション組成物の繊維性構造体への適用:
一例において、表面処理組成物を繊維性構造体の表面へ適用した直後に、移行性薬剤及び/又はローション組成物を繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に適用する。2回の作業で及ぶ繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の範囲は、約5メートルであった。ティッシュ及び織物工業向けのアプリケーター・ヘッド(複数)を有する市販の回転スプレー塗布システムRFT−コンパクト−III(RFT-Compact-III)(ドイツ、ラインフェルデン・エヒテルディンゲン(Leinfelden Echterdingen)のヴァイトマン・アンド・コンラッド社(Weitmann & Konrad GmbH & Co KG)から入手可能)を改造して、本発明を実施するために用いた。塗布ヘッド(application head)は、5組の回転ディスク(1/1型)を備えており、有効塗布幅は448mmである。塗布ヘッドのハウジングは、塗布ヘッドの上端部、底部及び後部で水加熱壁(water heated walls)と入れ替えられた。その結果、ユニット全体が外側と隔離された。繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の両面を同時に処理することができるように、これら2つの改造塗布ヘッドを用い、互いに向き合うように設置した。内蔵ポンプを有する加熱ユニット(ドイツのケルフィプラスト社(Kelviplast GmbH)から入手可能なW60/10−12/40型)を用いて、塗布ユニットに所望の温度の水を供給する。特に、加熱部材の設計は、塗布ヘッド内部での温度が目標温度の±2℃以内となるように選択した。塗布ヘッドによる移行性薬剤及び/又はローション組成物の給送(infeed)は、熱追跡型(heat traced)配管システムを介してヒートポンプ(heated pump)に接続されており、前記ポンプは熱追跡型(heat traced)配管を通じて、加熱された100リットルタンクと繋がっており、前記タンクには溶融した移行性薬剤及び/又はローション組成物が収容されている。前記アプリケーターの戻り配管は、加熱されたタンクへ帰還する。加熱式流量計を、ポンプと塗布ヘッドの間のローション組成物供給ライン内に設置した。前記流量計(プロマス63M(Promass 63M)、スイスのエンドレス・アンド・ハウザー社(Endress & Hauser)から入手可能)は、RFT−コンパクト−III(RFT-Compact-III)システムの制御装置に接続されており、その結果、前記システムを用いて移行性薬剤及び/又はローション組成物ポンプ(レイブ・ブロックス(Labu Brox)型ギアポンプ)を制御して、所望の移行性薬剤及び/又はローション組成物流量を塗布ヘッドへ供給した。
【0111】
市販の塗布ヘッド内の回転表面の設定、形状及び寸法は全く変えていない。回転表面の各組は、相互に積み重ねた2枚の回転ディスクから構成した。各積層体の2つの回転表面への移行性薬剤及び/又はローション組成物の供給は、均等に分配される。前記ディスクの直径は約98mmである。回転表面の5つの別個の積層体は約112mmの間隔をあける。水平に重なり合う飛沫流間の衝突を避けるように、1番目、3番目及び5番目の組の回転表面を、回転表面の2番目及び4番目の積層体と互い違いに垂直に配置する。回転表面の組は、ドイツのヴァイトマン・アンド・コンラッド社(Weitmann & Konrad GmbH & Co)から市販されている(1/1型、商品番号618996[上側一式]及び商品番号618997[下側一式])。前記アプリケーターは、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品とディスク中央との間に約154mmの間隔をあけて水平に作動させる。繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は、2つの塗布ヘッドの間を垂直にくまなく動かされる。回転表面と繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品との間をハウジングの窓で制御すれば、回転表面の各積層体は、112mmずつしか対象としていないアプリケーターの回転表面の外側の2つの積層体を除いて、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品上の約224mmの横断方向幅を対象とする。それぞれの位置では、回転表面の2つの積層体の流れが重なっている。個々のディスク積層体への均等な分布は、回転ディスクへ給送とアプリケーターの中央の供給配管との間に設置された直径1mmのスロットルを用いて達成された。移行性薬剤及び/又はローション組成物の温度は、タンク、配管及び塗布ヘッド内の温度を目標値まで加熱することによって、決められた値に制御される。流量は、所望の付加量の繊維性構造体が得られるように調節する。適用中、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品は通常、室温に保つ。移行性薬剤及び/又はローション組成物は、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品に衝突した後、ほぼ即座に凝固する。
【0112】
試験方法
A.移行性薬剤の移行試験方法
移行性薬剤の対向する表面への移行量及び/又は移行効率は、以下の方法によって測定することができる。
【0113】
先ず、繊維性構造体の中及び/又は表面上に存在するローションの量を求める。このような量を求める方法は、PNMR及び近赤外分光法のように、当該技術分野では既知である。方法の一例は米国特許第6,261,580号に記載されており、この記載を、関連部分において本明細書に参照として組み込む。
【0114】
次に、対向表面に移行したローションの量を求める。これを求める方法も当該技術分野では既知である。米国特許第6,261,580号にはこのような方法の例が記載されている。
【0115】
処理済みのティッシュ製品から移行した移行性薬剤の量を、サザランド磨耗試験機(Sutherland Rub Tester)(ニューヨーク州アミティービル(Amityville)のテスティング・マシーンズ社(Testing Machines, Inc.)から入手可能)で求める。この試験機では、モーターを用いて、処理済みのティッシュ試料を不浸透の移行表面上で5回こする。処理済みのティッシュから移行した移行性薬剤をいくらか移行表面から抽出して、移行した量をガスクロマトグラフ法を用いて求める。
【0116】
移行性薬剤の移行試験を行う前に、試験しようとする繊維性構造体試料は、TAPPI法#T402OM−88に従って調湿する必要がある。ここでは、試料を10〜35%の相対湿度及び22〜40℃の温度範囲で24時間予備調湿する。この予備調湿工程の後で、試料は、48〜52%の相対湿度及び22〜24℃の温度範囲で24時間調湿する必要がある。移行試験も、一定温度及び湿度の部屋の中で行う必要がある。
【0117】
次いで、オハイオ州シンシナティのコーデージ社(Cordage Inc.)製の76cm(30インチ)×101cm(40インチ)のクレセント(Crescent)#300厚紙を一枚用意する。ペーパーカッターを使用して、5.7cm×18.4cm(2.25インチ×7.25インチ)の寸法の厚紙6枚を切り取る。厚紙の白い側の上下の縁から2.9cm(1.125インチ)のところに、短寸法に平行に2本の線を引く。直定規をガイドとして使用して、線の全長にかみそりの刃で慎重に切り込み線を入れる。切り込み線は、用紙の厚さ全体の約半分の深さまで入れる。この切り込み線により、厚紙/フェルトの組み合わせをサザランド摩擦試験機(Sutherland Rub tester)のおもり周辺でしっかりと組み合わせることができる。厚紙のこの切り込み線を入れた側に、厚紙の長寸法に平行に走る矢印を描く。
【0118】
次に、6枚の黒のフェルト(コネチカット州ブリストルのニューイングランド・ガスケット社(New England Gasket)製のF−55又は同等品)を5.7cm×21.6cm×1.6cm(2.25インチ×8.5インチ×0.0625インチ)の寸法に切り取る。フェルトを、厚紙の切り込み線が入っていない緑色の側の上に、フェルト及び厚紙のいずれの長端も平行であり、揃うように置く。フェルトの毛羽側が上向きにであることを確認する。更に、厚紙の上下の縁から約1.3cm(0.5インチ)張り出すようにする。繊維性構造体試料をフェルトと同じ寸法に切り取って、フェルトの上に中心を合わせて置く。張り出した縁をぴったりと合うように折り返して、テープ(ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム(3M)製スコッチ(Scotch)(登録商標)テープが好適である)で試料とフェルトを厚紙の裏側に貼付して、フェルト/厚紙/試料の調製を完了する。
【0119】
4cm2(26cm2)の有効接触面積に、接触圧6.8kPa(1psi)の条件で1.8キログラム(4ポンド)のおもりを置く。接触圧は、おもりの使用面(the face)に取り付けられたラバーパッドの交換によって変えることができることから、製造業者(ブラウン社機械サービス部(Brown Inc., Mechanical Services Department)、ミシガン州カラマズー)が供給したラバーパッドのみを使用することが重要である。これらのパッドは、硬くなったり、磨耗したり、又は剥離した場合には、交換しなければならない。
【0120】
使用中でない時、おもりは、パッドがおもりの全重量を支持しないように位置づけなければならない。おもりを横に倒して保管するのが最善である。
【0121】
実際のティッシュペーパー/厚紙の組み合わせを測定する場合、試験機の床板の上に移行表面(ガラス反射鏡)を押さえピンにもたせかけて配置する。押さえピンは、前記鏡が試験中に移行するのを防止する。
【0122】
較正フェルト/厚紙/試料を、厚紙側がおもりのパッドに接触するように4ポンドのおもり上に留める。厚紙/フェルト/ティッシュの組み合わせが、おもりを背にして平坦に載っていることを確認する。このおもりを試験機のアームに吊るす。フェルト/厚紙/ティッシュ試料は、前記鏡の上に平坦に載っていなければならず、又、鏡の表面と100%接触していなければならない。
【0123】
次に、「push」ボタンを押すことによって試験機を作動させる。5ストロークの終了時に、試験機は自動的に停止する。
【0124】
おもりをフェルトで覆われた厚紙と共に取り外す。ティッシュ試料を調べる。破れていれば、フェルトとティッシュを廃棄して、最初からやり直す。ティッシュ試料が無傷であれば、フェルトで覆われた厚紙をおもりから取り外す。正確な測定のために、更に3枚のフェルト/厚紙/ティッシュ試料で繰り返し行って、十分なローションが移行したことを調べる。
【0125】
上記工程を繰り返し行って、各試験条件につき6つの複製を発生させる。
【0126】
全条件を測定した後、フェルトを全て取り外して廃棄する。フェルトのストリップは再使用しない。厚紙は、曲がる、破れる、弱くなる、又はもはや平滑な表面を持たなくなるまで使用する。
【0127】
鏡はそれぞれ、トルエンのアリコート4ミリリットルでビーカーへ一度洗浄する。抽出物を試料バイアル瓶に移して、乾燥窒素を用いて乾燥させる。2回目は鏡をトルエンのアリコート2ミリリットルで洗浄し、上述と同様にして液体を移して乾燥させる。
【0128】
次に、トルエン1ミリリットルを各試料バイアル瓶に加えてから、バイアル瓶を密閉する。その後、バイアル瓶を穏やかに攪拌して、移した鏡抽出物を溶解させる。その後、溶解した抽出物中の移行性薬剤の濃度を、既知のガスクロマトグラフ技術を用いて求める。
【0129】
当該技術分野でよく行うように、既知の標準試料を用いて(洗浄工程と移行工程についての)移行性薬剤の回復定数を求めて、ガスクロマトグラフ装置定数を求める。
【0130】
クロマトグラフ分析で求めた移行性薬剤の量を、回復定数で除して、鏡上の移行性薬剤の量を推定する。結果をミリグラム単位で報告する。
【0131】
B.表面試験法における組成物の相対濃度(Releative Concentration)
繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面上の組成物の相対濃度は、特に、試料が炭化水素含有組成物を含む場合、近赤外分光法を用いて求めることができる。近赤外分光法は、フィルター・フォトマー(filter photomer)又は他の近赤外線装置を用いることができるが、後方散乱検出用に設定されていなければならない。適した波長を用いる。
【0132】
繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品を、近赤外線装置の下に設置して、読みを得る。次に、試料を裏返して、試料のもう一方の面からの読みを得る。
【0133】
近赤外分光法に加えて、好適な装置及び波長を用いる中赤外分光法を使用して、繊維性構造体及び/又は衛生ティッシュ製品の表面上の組成物の相対濃度を求めてもよい。
【0134】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文書は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文書の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0135】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明による繊維性構造体の概略説明図。
【図2】図1の線2−2に沿って取った断面図。
【図3】本発明による繊維性構造体の別の例の断面図。
【図4】本発明による繊維性構造体の別の例の断面図。
【図5】本発明による繊維性構造体の別の例の断面図。
【図6】本発明による繊維性構造体の別の例の概略説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移行性薬剤を含む繊維性構造体であって、前記移行性薬剤が、ユーザーが使用中に前記移行性薬剤の6重量%超が前記繊維性構造体から表面へ移行されるように前記繊維性構造体に共存している、繊維性構造体。
【請求項2】
前記繊維性構造体が、前記繊維性構造体の50重量%未満の前記移行性薬剤を含む、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項3】
前記移行性薬剤が、前記繊維性構造体の表面に存在するユーザー接触用表面に共存しており、好ましくは前記移行性薬剤が、前記ユーザー接触用表面に10g/m2未満で共存している、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項4】
前記移行性薬剤が、炭化水素類、脂肪酸エステル類、アルコールエトキシレート類及びこれらの混合物からなる群より選択される化合物を含むローション組成物内に存在し、好ましくは前記ローション組成物が、柔軟化剤を含む、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項5】
前記移行性薬剤が、スキンケア剤を含む、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項6】
前記移行性薬剤が、前記繊維性構造体の内部に比べて前記繊維性構造体の表面上により高濃度で存在し、好ましくは前記移行性薬剤が、前記繊維性構造体の前記表面の表面積全体未満を被覆している、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項7】
前記繊維性構造体の前記表面が、表面処理組成物を含み、好ましくは、前記表面処理組成物が、ポリマー類、炭化水素類、ろう類、油類、シリコーン類、4級アンモニウム化合物類、フルオロカーボン類、置換C10〜C22アルカン類、置換C10〜C22アルケン類、ポリオール類、糖誘導体類、及びこれらの混合物からなる群より選択される表面処理剤を含む、請求項6に記載の繊維性構造体。
【請求項8】
前記繊維性構造体が、前記移行性薬剤を含まない繊維性構造体の柔軟度よりも大きな柔軟度を示す、請求項7に記載の繊維性構造体。
【請求項9】
前記移行性薬剤が、医療用薬剤を含み、前記医療用薬剤の臨床上有益な量が、前記繊維性構造体からユーザーの皮膚へ移行可能である、請求項1に記載の繊維性構造体。
【請求項10】
請求項1に記載の繊維性構造体を含む単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品。
【請求項11】
ユーザーが使用中に前記移行性薬剤の6重量%超が前記繊維性構造体から表面へ移行されるように、処理する必要がある前記繊維性構造体に前記移行性薬剤を共存させる工程を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の繊維性構造体を製造するために移行性薬剤で繊維性構造体を処理する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−533763(P2007−533763A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509648(P2007−509648)
【出願日】平成17年4月9日(2005.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/013690
【国際公開番号】WO2005/106120
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】