説明

移行方法

【課題】要員の技量によらず、システムの品質を一定にし、汎用CPUに起因する特有の制限事項による設計のリスクを回避する。
【解決手段】ハードウェアで実装されたリアルタイム処理について、ハードウェア設計情報の分析を行ってハードウェア構成品に分解し、分解したハードウェア構成品をハードウェア構成品リスト1に記載し、ハードウェア構成品に求められる諸元を記入してハードウェア構成品リスト1を作成し、ハードウェア構成品毎に対応させてソフトウェア部品リスト2を作成し、所定の制限項目を記入し、ソフトウェア部品の検証を実施し、検証したソフトウェア部品リスト2を作成し、作成したソフトウェア部品リスト2を用いてリアルタイム処理をソフトウェアで実装した場合の性能を評価し、評価した性能が要求された性能を満足する場合、ソフトウェア部品リスト2をソフトウェアに実装する処理とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードウェアで実装されていた処理をソフトウェアで実装される処理へ移行する移行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リアルタイム処理は、従来、ハードウェアにより実装されていた。
【0003】
また、近年の汎用CPU(Central Processing Unit)の高性能化により、リアルタイム処理をソフトウェアにより実装することが可能になっている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−164839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような技術には、以下の2つの課題がある。
【0006】
1つ目の課題は、汎用CPUの高性能化により、従来ハードウェアで実装されていたリアルタイム処理を、ソフトウェアで実装されたリアルタイム処理に移行することが可能となったが、移行に際して標準的な手法がなく、要員の技量によりシステムの品質が左右されてしまうということである。
【0007】
また、2つ目の課題は、汎用CPUの高性能化により、ハードウェアで実装されていたリアルタイム処理を、ソフトウェアで実装されたリアルタイム処理に移行することが可能となったが、移行に際してバンド幅、処理時間、メモリ使用量等汎用CPUに起因する特有の制限事項を検証する標準的な手法がなく、設計の上流工程においてリスクの抽出が出来ないということである。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決する移行方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移行方法は、
ハードウェアで実装されていた処理をソフトウェアで実装される処理へ移行する移行方法であって、
前記ハードウェアで実装されたリアルタイム処理について、ハードウェア設計情報の分析を行ってハードウェア構成品に分解する処理と、
前記分解したハードウェア構成品をハードウェア構成品リストに記載し、該ハードウェア構成品に求められる諸元を記入して該ハードウェア構成品リストを作成する処理と、
前記ハードウェア構成品リストに記載した前記ハードウェア構成品毎に対応させたソフトウェア部品の一覧であるソフトウェア部品リストを作成し、所定の制限項目を記入する処理と、
前記ソフトウェア部品の検証を実施する処理と、
前記検証したソフトウェア部品のソフトウェア部品リストを作成する処理と、
前記作成したソフトウェア部品リストを用いてリアルタイム処理をソフトウェアで実装した場合の性能を評価する処理と、
前記評価した性能が要求された性能を満足する場合、前記ソフトウェア部品リストをソフトウェアに実装する処理とを行う。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明においては、要員の技量によらず、システムの品質を一定にし、汎用CPUに起因する特有の制限事項による設計のリスクを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の移行方法の実施の一形態を示す図である。
【図2】本発明の移行方法の処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の具体的な実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の移行方法の実施の一形態を示す図である。
【0014】
図1を参照すると、本発明の実施の形態は、ハードウェア構成品リスト1と、ソフトウェア部品リスト2とから構成されている。
【0015】
ハードウェア構成品リスト1は、ハードウェア設計情報10にてハードウェアで実装されたリアルタイム処理をあらかじめ決めた単位で分解し、それぞれの構成品の諸元を明確にするのに利用する。
【0016】
ソフトウェア部品リスト2は、ハードウェア構成品リスト1の構成品毎に対応させて実装すべきソフトウェア部品の制限を明確にしてソフトウェア設計情報50を得るのに利用する。
【0017】
以下に、本発明の移行方法の処理について説明する。
【0018】
図2は、本発明の移行方法の処理を説明するためのフローチャートである。また、図2は、ハードウェアで実装されたリアルタイム処理の各種情報からソフトウェア部品を確定し、システムのリスク判定を行う流れを表したものである。
【0019】
まず、ハードウェアで実装されたリアルタイム処理について、設計書等の分析を行いハードウェア構成品に分解する(ステップS1)。
【0020】
次に、分解したハードウェア構成品をハードウェア構成品リストに記載し、この構成品に求められる諸元を記入してハードウェア構成品リストを作成する(ステップS2)。なお、諸元項目についてはシステム毎に異なるものである。
【0021】
次に、ハードウェア構成品毎に対応させたソフトウェア部品の一覧であるソフトウェア部品リストを作成し、制限を記入する(ステップS3)。ここで、ソフトウェア部品リストにより抽出されたソフトウェア部品の制限については、過去の類似部品ならびに使用する汎用CPUの制限を元に決定する。例えば、バンド幅と、処理時間と、メモリ使用量との少なくとも1つを制限項目とするものであっても良い。なお、制限項目についてはシステム毎に異なるものである。
【0022】
次に、ソフトウェア部品リストが完成したかどうかを判定する(ステップS4)。
【0023】
ステップS4にて、ソフトウェア部品リストが完成していないと判定した場合、必要に応じてソフトウェア部品の作成を行い(ステップS5)、さらにソフトウェア部品の検証を実施し(ステップS6)、ソフトウェア部品リストを作成する。
【0024】
次に、作成したソフトウェア部品リストを用いてリアルタイム処理をソフトウェアで実装した場合の性能を評価する(ステップS7)。
【0025】
ステップS7における評価の結果から、ソフトウェア部品リストにより実装したリアルタイム処理が要求された性能を満足するかどうかを判定する(ステップS8)。この判定は、評価の結果の数値と、あらかじめ設定された閾値とを比較する一般的な方法で良い。
【0026】
ステップS8にて、要求された性能を満足しないと判定した場合、必要に応じてソフトウェア部品の変更又は作成を行い(ステップS9)、ソフトウェア部品の検証を行い(ステップS10)、さらにソフトウェア部品リストの変更(ステップS11)を実施し、要求された性能を満足させる。
【0027】
以下に、本発明の具体的な実施例を説明する。
【0028】
図3は、本発明の具体的な実施例を示す図である。
【0029】
図3に示すように、ハードウェアで実装されたリアルタイム処理について、設計書等の各種情報であるハードウェア設計情報10からハードウェア構成品に分解する。この分解されたハードウェア構成品を示す情報をハードウェア分解情報20とする。
【0030】
そして、分解した単位毎にハードウェア構成品リストに記載したハードウェア部品情報30を作成し、諸元を明確にする。
【0031】
次に、ハードウェア部品情報30から構成部品毎に対応するソフトウェア部品リストとなるソフトウェア部品情報40を作成する。
【0032】
その後、ソフトウェア部品リストとなるソフトウェア部品情報40により、要求された性能を満足するかどうかを判定する。要求された性能を満足しない場合、必要に応じてソフトウェア部品リストの修正を行う。要求された性能を満足する場合にはソフトウェア設計情報50として実装を行い、ソフトウェアで実装されたリアルタイム処理を実現する。
【0033】
以上説明したように、本発明においては、ハードウェアで実装されたリアルタイム処理をハードウェア構成品リストならびにソフトウェア部品リストを用いてソフトウェアで実装されたリアルタイム処理に移行する事で、要員の技量によらずシステムの品質を一定にし、汎用CPUに起因する特有の制限事項による設計のリスク回避が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 ハードウェア構成品リスト
2 ソフトウェア部品リスト
10 ハードウェア設計情報
20 ハードウェア分解情報
30 ハードウェア部品情報
40 ソフトウェア部品情報
50 ソフトウェア設計情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアで実装されていた処理をソフトウェアで実装される処理へ移行する移行方法であって、
前記ハードウェアで実装されたリアルタイム処理について、ハードウェア設計情報の分析を行ってハードウェア構成品に分解する処理と、
前記分解したハードウェア構成品をハードウェア構成品リストに記載し、該ハードウェア構成品に求められる諸元を記入して該ハードウェア構成品リストを作成する処理と、
前記ハードウェア構成品リストに記載した前記ハードウェア構成品毎に対応させたソフトウェア部品の一覧であるソフトウェア部品リストを作成し、所定の制限項目を記入する処理と、
前記ソフトウェア部品の検証を実施する処理と、
前記検証したソフトウェア部品のソフトウェア部品リストを作成する処理と、
前記作成したソフトウェア部品リストを用いてリアルタイム処理をソフトウェアで実装した場合の性能を評価する処理と、
前記評価した性能が要求された性能を満足する場合、前記ソフトウェア部品リストをソフトウェアに実装する処理とを行う移行方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移行方法において、
バンド幅と、処理時間と、メモリ使用量との少なくとも1つを制限項目とする処理を行うことを特徴とする移行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−175339(P2011−175339A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37104(P2010−37104)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232221)日本電気航空宇宙システム株式会社 (14)
【Fターム(参考)】