説明

移載装置及び移載方法

【課題】 大型化、薄型化された半導体ウエハ等の板状部材を移載対象としても、当該板状部材の損傷原因を回避して移載することに適した移載装置及び移載方法を提供する。
【解決手段】第1ないし第3のテーブルT1、T2、T3間で、半導体ウエハW等の板状部材を移載する移載装置10であり、当該移載装置10は、半導体ウエハWの支持面を備えた支持手段11と、当該支持手段11を移動させる多関節型ロボット12とを含む。支持面は、シート基材SBに接着剤層Aが積層された接着シートSの積層体により構成され、最外層にある接着シートSと半導体ウエハWとの接着、剥離により、前記テーブルT1〜T3間で移載することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載装置及び移載方法に係り、特に、半導体ウエハ等の板状部材を対象として移載することに適した移載装置及び移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する)は、例えば、裏面研削を行う前に、その回路面側に保護シートを貼付すること等、経時的に種々の工程を経る。これら工程間においては、適宜な移載装置若しくは搬送装置を介してウエハをテーブル等の載置手段間で移載する処理が含まれる。
特許文献1には、ウエハを吸着保持するロボットアームからなる移載装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−242249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の移載装置にあっては、ウエハを吸着保持する構成であるため、近時のように、数十μmまでの極薄化が達成され、しかも、平面サイズが大型化してきたウエハの移載に用いた場合には、当該ウエハに与えられる局所的な吸着力に伴う負荷によってウエハに割れが生じたり、或いは、外周側が相対的に垂れ下がる傾向をもたらし、テーブル上に移載する際に、外周側がテーブル面に先に接触して当該外周側領域を破損させる原因となる。
【0004】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、大型化、極薄化した半導体ウエハ等の板状部材を移載対象としても、当該板状部材の損傷原因を回避して移載することに適した移載装置及び移載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、板状部材が載置される複数の載置手段間で前記板状部材を移載する移載装置において、
前記板状部材の支持面を備えた支持手段と当該支持手段を移動させる移動手段とを備え、
前記支持面は、シート基材に接着剤層が積層された接着シートを相互に剥離可能に積層した積層体により構成され、
前記積層体の最外層となる接着シートと前記板状部材との接着、剥離により、前記載置手段間で板状部材を移載する、という構成を採っている。
【0006】
本発明において、前記板状部材に接着する最外層の接着シートの接着力が低下したときに、当該接着シートを剥離して次の接着シートを最外層の接着シートとする、という構成を採ることができる。
【0007】
また、前記支持面は、当該支持面に相対する板状部材の全面に接着する大きさを備えていることが好ましい。
【0008】
更に、前記支持手段は、前記板状部材に対して前記接着シートの面位置を部分的に変位させる変位手段を含む、という構成を採っている。
【0009】
また、前記変位手段は、前記接着シートと板状部材とを接着するときに、前記移動手段と同期して前記板状部材の側面視中央部から両端部に向かって接着するように前記接着シートを変位させる構成を採用することができる。
【0010】
更に、前記変位手段は、前記板状部材に接着された接着シートを板状部材から剥離するときに、前記移動手段と同期して前記板状部材の側面視両端部から中央部に向かって剥離するように前記接着シートを変位させることができる。
【0011】
また、本発明は、板状部材が載置される複数の載置手段間で前記板状部材を移載する移載方法において、
相互に剥離可能に積層された接着シートの積層体を支持手段に支持するとともに、最外層となる接着シートの接着剤層を載置手段に載置された板状部材に接着して当該板状部材を支持し、
前記支持手段を他の載置手段側に移動して当該載置手段に板状部材を載せ、
次いで、前記最外層の接着シートを板状部材から剥離することで前記板状部材を移載する、という方法を採っている。
【0012】
前記移載方法において、前記板状部材に接着する最外層の接着シートの接着力が低下したときに、当該接着シートを剥離して次の接着シートを最外層の接着シートとする方法を採ることができる。
【0013】
また、前記移載方法において、前記接着シートと板状部材とを接着するときに、板状部材の側面視中央部から両端部に向かって接着する方法が採用される。
【0014】
更に、前記移載方法において、前記板状部材を移載する際に、当該板状部材に接着された接着シートを板状部材の側面視両端部から中央部に向かって剥離する方法も採用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持手段の支持面が積層体の最外層をなす接着シートにより構成されているため、この接着シートを板状部材に接着することで当該板状部材を支持することができる。従って、吸着による支持に見られる局所的な負荷を板状部材に与えることがなく、板状部材の割れや、外周側の相対的な垂れ下がりを効果的に防止することができる。
更に、前記支持面を板状部材の相対する全面に接着する構成とした場合には、板状部材が数十μmの極薄タイプのウエハであっても、その外周側の垂れ下がりを確実に防止でき、テーブルに載せるときの外周側の破損が回避可能となる。
また、接着シートの面位置を部分的に変位させる変位手段を含む構成では、例えば、板状部材の側面視において、その中央部から両端部に向かうように接着シートを板状部材に接着させることができ、これにより、接着シートと板状部材との間に空気が混入することを回避することができ、確実な支持が可能となる。
この一方、板状部材の両端部から中央部に向かうように接着シートを板状部材から剥離することで、板状部材から支持手段の接着シートが離間するときの剥離抵抗を軽減することができ、容易に切り離しが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係る移載装置10の概略斜視図が示され、図2には、移載装置10の要部概略斜視図が示されている。これらの図において、移載装置10は、載置手段を構成する第1のテーブルT1、第2のテーブルT2、第3のテーブルT3の間で板状部材としてのウエハWを移載するものとして構成されている。同移載装置10は、図2に示されるように、ウエハWの支持面を形成する接着シートSの積層体SLを備えた支持手段11と、当該支持手段11を各テーブルT1〜T3間で移動させる移動手段としての多関節型ロボット12とを含む。ここで、接着シートSは、図3のP部拡大図に示されるように、枚葉状のシート基材SBの一方の面に接着剤層Aが積層された層構造を備えたものが採用されている。また、接着シートSの縦横寸法は、ウエハWの最大寸法よりも大きく設定されており、これにより、ウエハWの上面側全面に接着シートSを接着することができる。
【0018】
前記支持手段11は、図2及び図3に示されるように、常時は下向きに開放する本体ケース15と、この本体ケース15内に位置する変位手段16と、前記本体ケース15の開口部を略閉塞するように取り付けられたシート状の積層体支持シート17とからなる。変位手段16は、ケース本体15の頂壁中央部に取り付けられた直動モータMと、当該直動モータMのロッドM1の先端に取り付けられるとともに、接着シートSの幅方向(図3中紙面直交方向)寸法と略同一幅を有する変位部材18とにより構成されている。変位手段16は、前記変位部材18が伸長したときに、前記積層体支持シート17を介して積層体支持シート17を内側から押圧し、これにより、積層体17が初期の平面形状から変位し、最外層(図3中最下層)にある接着シートSの側面視中央部が両側部よりもウエハWに相対的に接近するようになっている。
【0019】
前記多関節型ロボット12は、図1に示されるように、ベース部25と、当該ベース25部の上面側に配置された第1アーム26A〜第6アーム26Fと、第6アーム26Fの先端側に取り付けられた保持チャック27とを含む。第2、第3及び第5アーム26B、26C、26Eは、図1中Y×Z面内で回転可能に設けられているとともに、第1、第4及び第6アーム26A、26D、26Fは、その軸周りに回転可能に設けられている。この多関節型ロボット12はNC(Numerical Control)制御されるものである。すなわち、対象物に対する各関節の移動量がそれぞれに対応する数値情報で制御され、全てその移動量がプログラムにより制御されるものとなっている。
なお、本実施形態における多関節型ロボット12は、本出願人によって既に出願された特願2006−115106号に記載されたものと実質的に同一のものであり、従って、ここでは更に詳細な説明を省略する。
【0020】
前記載置手段を構成する第1のテーブルT1は、本実施形態では、図示しない搬送アーム等を介して移載されたウエハWを支持するものであり、当該ウエハWは前記移載装置10を介して第2のテーブルT2に移載される。第2のテーブルT2に移載されたウエハWの上面(回路面)には、図示しないシート貼付装置を介して帯状の保護シートPSを供給しつつ当該保護シートPSが貼付される。そして、図示しない切断手段を介して保護シートPSがウエハWの大きさに合うように、図示例では略円形に切り抜くように切断され、保護シートPSが貼付されたウエハWは、前記移載装置10を介して第3のテーブルT3に移載される。なお、各テーブルT1〜T3は、それらの上面側がウエハWの吸着機能を有するものによって構成されている。
【0021】
次に、本実施形態における移載方法について、テーブルT1からテーブルT2にウエハWを移載する場合について説明する。
【0022】
テーブルT1の上面に支持されたウエハWを移載装置10を介して第2のテーブルT2支持するときには、図3に示されるように、多関節型ロボット12によって、支持手段11に支持された接着シートSをウエハWと平行となるように位置させた状態で、テーブルT1に向かってZ軸方向に下降する。この際、前記直動モータMのロッドM1を介して変位部材18を伸長させ、積層体SLの側面視中央部が両側よりも下方に突き出るように当該積層体SLを変位させる(図4参照)。
【0023】
最外層の接着シートSが第1のテーブルT1に支持されたウエハWに接着するときは、図5に示されるように、ウエハWの側面視において、中央部からウエハWに接着シートSが接着し、その後に多関節型ロボット12を介して、支持手段11を下降させつつ、その動きに同期させてロッドM1を後退させることで、接着領域が左右両側に拡がって全面的に接着する(図6参照)。そして、支持手段11側に転着して支持されたウエハWを第2のテーブルT2に移載するときは、接着シートSを水平姿勢に保ったまま(直動モータMのロッドM1を後退位置のまま)第2のテーブルT2にウエハWを載せる。このとき、第2のテーブルT2は、ウエハWの吸着保持を開始する。その後、図7に示されるように、変位部材18で積層体SLをウエハW側に押しつけつつ、多関節型ロボット12の動きに同期させて支持手段11を第2のテーブルT2から上方に離れるように移動させることで、ウエハWの側面視で左右両側から中央部に向かって接着シートSを剥離して接着シートSとウエハWとを分離し、移載を完了することができる。
【0024】
第2のテーブルT2に移載されたウエハWの上面すなわち回路面には、図示しないシート貼付装置を介して保護シートPSが貼付された後、ウエハWの大きさに合わせて保護シートPSが切断され、当該保護シートPSが貼付されたウエハWが前記支持手段11を介して第3のテーブルT3に移載される。この際の移載動作は、接着シートSとウエハWとの間に保護シートPSが存在するだけで、実質的に第1のテーブルT1から第2のテーブルT2に移載する際の前述の移載動作と同じである。
【0025】
前記最外層にある接着シートSは、接着剤層Aによる接着力が低下していない状態では、継続的に繰り返し利用され、接着力が低下したときに、積層体SLから剥離され、次の接着シートSを表出させて当該接着シートSが以後の移載動作に利用される。
【0026】
従って、このような実施形態によれば、接着シートSに相対するウエハWの全面に接着シートSが接着されるため、ウエハWが、例えば、数十μmの厚みまで研削された極薄タイプであっても、従来のような部分的な吸着に伴う負荷をウエハWに与えることがないとともに、移載する過程において外周側が垂れ下がったりすることもなく、ウエハWの損傷原因を排除して当該ウエハWを移載できる、という従来にない優れた効果を奏することができる。
また、最外層にある接着シートSは、一定限度において継続利用可能とされているため、ランニングコストを低減することができる。
【0027】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0028】
例えば、前記実施形態では、接着シートSが方形である場合を図示説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、平面形状においてウエハWと相似形状の接着シートを用いてもよい。また、接着シートSの外縁部分に、接着剤層を有さない舌片を突出させたものを用いてもよい。これにより、舌片を摘んで積層体SLから最外層の接着シートSを一枚ずつ剥離する際の作業を容易に行うことができる。
【0029】
また、板状部材はウエハWに限らず、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の板状部材も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコンウエハや化合物ウエハであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る移載装置の全体構成を示す概略斜視図。
【図2】移載装置の要部概略斜視図。
【図3】ウエハをテーブルに移載する初期の動作を示す側面図。
【図4】図3の動作に続く動作を示す側面図。
【図5】接着シートがウエハに接着を開始する状態を示す側面図。
【図6】ウエハをテーブルに移載若しくはテーブルから移載する際の動作を示す側面図。
【図7】図6の動作に続く動作を示す側面図。
【符号の説明】
【0031】
10 シート貼付装置
11 支持手段
12 多関節型ロボット(移動手段)
16 変位手段
T1 第1のテーブル(載置手段)
T2 第2のテーブル(載置手段)
T3 第3のテーブル(載置手段)
A 接着剤層
S 接着シート
SB シート基材
SL 積層体(支持面)
W 半導体ウエハ(板状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材が載置される複数の載置手段間で前記板状部材を移載する移載装置において、
前記板状部材の支持面を備えた支持手段と当該支持手段を移動させる移動手段とを備え、
前記支持面は、シート基材に接着剤層が積層された接着シートを相互に剥離可能に積層した積層体により構成され、
前記積層体の最外層となる接着シートと前記板状部材との接着、剥離により、前記載置手段間で板状部材を移載することを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記板状部材に接着する最外層の接着シートの接着力が低下したときに、当該接着シートを剥離して次の接着シートを最外層の接着シートとすることを特徴とする請求項1記載の移載装置。
【請求項3】
前記支持面は、当該支持面に相対する板状部材の全面に接着する大きさを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の移載装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記板状部材に対して前記接着シートの面位置を部分的に変位させる変位手段を含むことを特徴とする請求項1、2又は3記載の移載装置。
【請求項5】
前記変位手段は、前記接着シートと板状部材とを接着するときに、前記移動手段と同期して前記板状部材の側面視中央部から両端部に向かって接着するように前記接着シートを変位させることを特徴とする請求項4記載の移載装置。
【請求項6】
前記変位手段は、前記板状部材に接着された接着シートを板状部材から剥離するときに、前記移動手段と同期して前記板状部材の側面視両端部から中央部に向かって剥離するように前記接着シートを変位させることを特徴とする請求項4記載の移載装置。
【請求項7】
板状部材が載置される複数の載置手段間で前記板状部材を移載する移載方法において、
相互に剥離可能に積層された接着シートの積層体を支持手段に支持するとともに、最外層となる接着シートの接着剤層を載置手段に載置された板状部材に接着して当該板状部材を支持し、
前記支持手段を他の載置手段側に移動して当該載置手段に板状部材を載せ、
次いで、前記最外層の接着シートを板状部材から剥離することで前記板状部材を移載することを特徴とする移載方法。
【請求項8】
前記板状部材に接着する最外層の接着シートの接着力が低下したときに、当該接着シートを剥離して次の接着シートを最外層の接着シートとすることを特徴とする請求項7記載の移載方法。
【請求項9】
前記接着シートと板状部材とを接着するときに、板状部材の側面視中央部から両端部に向かって接着することを特徴とする請求項7又は8記載の移載方法。
【請求項10】
前記板状部材を移載する際に、当該板状部材に接着された接着シートを板状部材の側面視両端部から中央部に向かって剥離することを特徴とする請求項7又は8記載の移載方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−277688(P2008−277688A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122303(P2007−122303)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】