説明

移載装置

【課題】荷物が奥行き方向にずれていても、正確な位置に移載できるようにする。
【解決手段】荷物までの奥行き方向に沿った距離を測定するための距離センサSと、測定した距離に応じて支持部12の伸張量を補正するためのコントローラとを設け、荷物20の奥行き方向のずれを補正する。前記支持部を回動させて伸張方向を変化させるための回動手段24を設けると共に、荷物20までの奥行き方向の距離を、前記距離センサSにより少なくとも2カ所で測定すると共に、前記2カ所での距離の差から回動手段24の回動量を決定するように、前記コントローラを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は移載装置に関し、特に移載装置の伸張量の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫の棚に置かれた荷物が、棚の奥行き方向にずれることがある。例えば自動倉庫に手動で荷物をセットすると、奥行き方向に荷物がずれることがある。さらに自動倉庫のステーションにフォークリフトなどで荷物を載せる時にも荷物がずれることがあり、そのまま棚に移載すると、棚での荷物の位置がずれる。さらに自動倉庫が地震を経験すると、自動倉庫は短辺方向(棚の奥行き方向)に揺れやすいため、荷物がずれることがある。奥行き方向にずれた荷物をスライドフォークなどで移載すると、昇降台から荷物がはみ出す、ステーションに荷下ろしした際にガイドあるいはストッパに荷物が乗り上げる、などのことがある。これは、荷物の奥行き方向の位置を求めることができないため、スライドフォークなどを固定のストロークで伸張させるためである。
【0003】
ここで関連する先行技術を示すと、特許文献1:JP2002-96906Aは自動倉庫の棚受に左右一対のマーカを設けて、棚の間口中心を検出することを記載している。自動倉庫の棚には左右一対の棚受があるので、これらにマーカを設けると、1対のマーカの中点が間口の中心となる。ただし特許文献1は、荷物の奥行き方向のずれについては記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2002-96906A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、荷物が奥行き方向にずれていても、正確な位置に移載できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、荷物の奥行き方向に沿って物品の支持部を伸張させることにより、荷物を移載する移載装置であって、
荷物までの前記奥行き方向に沿った距離を測定するための距離センサと、
測定した距離に応じて支持部の伸張量を補正するためのコントローラ、とを設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明では、荷物までの奥行き方向の距離を補正できるので、正確な移載ができ、また手動で荷物をセットした際などの、荷物の奥行き方向位置を矯正できる。
【0008】
好ましくは、前記距離センサにより荷物までの距離を測定できなかった場合、荷物が無いと判断するように、前記コントローラを構成する。
このようにすると、荷物の位置だけでなく、荷物の有無も同じ距離センサで検出できる。
【0009】
また好ましくは、前記支持部を回動させて伸張方向を変化させるための回動手段を設けると共に、 荷物までの奥行き方向の距離を、前記距離センサにより少なくとも2カ所で測定すると共に、
前記2カ所での距離の差から回動手段の回動量を決定するように、前記コントローラを構成する。
このようにすると、荷物が鉛直軸回りに傾いて置かれていることを検出して、支持部の伸張方向を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例でのスタッカークレーンと棚の荷物とを示す平面図
【図2】変形例のスタッカークレーンと荷物の平面図
【図3】変形例での伸張量の補正及び停止目標位置と傾斜角の算出例を示す図
【図4】伸張量の補正と傾斜角の算出等の他の例を示す図
【図5】実施例の天井走行車とサイドバッファ上の荷物とを示す平面図
【図6】固定の移載装置とリニアモータ台車上の荷物とを示す平面図
【図7】固定の移載装置とリニアモータ台車上の荷物とを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図7に、実施例とその変形とを示す。図1は基本的な実施例を示し、2はスタッカークレーンで、4は走行レールであり、走行レール4の左右に例えば一対の図示しない棚が設けられ、走行レール4の左右にはさらに、図示しない入出庫用のステーションが設けられている。そしてスタッカークレーン2は、図示しない棚及びステーションとで構成される自動倉庫の移載装置である。6は、スタッカークレーン2の台車で、例えば一対のマスト8,8に沿って昇降台10が昇降し、昇降台10には移載手段としてのスライドフォーク12が設けられている。なお移載手段はスカラアームなどでもよく、スタッカークレーン2が全体としての移載装置で、スライドフォーク12が移載手段である。
【0013】
昇降台10には、荷物20に面した側に例えば左右一対の距離センサSが設けられ、距離センサSは例えばレーザ距離センサであるが、荷物20の前面(スライドフォーク12に面した側の面)との距離を測定し得るセンサであればよい。また実施例では、走行レール4の左右双方に棚が存在するものとして、一対の距離センサSを設けるが、一方にのみ棚が存在する場合、その側にのみ距離センサSを設ける。荷物20は例えば半導体のカセットあるいは液晶基板もしくはプラズマディスプレイ基板のカセットで、形状が既知でサイズは一定である。荷物20は棚受22により支持され、自動倉庫は例えばクリーンルーム内に存在する。そして距離センサSが荷物20との奥行き方向に沿った距離yを求めると、コントローラ13がスライドフォーク12の伸張量を補正する。
【0014】
実施例の動作を示す。スタッカークレーン2は走行レール4に沿って走行し、昇降台10はマスト8に沿って昇降して、目的の荷物20が存在する間口まで移動する。例えばスタッカークレーン2が停止した際に、距離センサSは荷物20の前面との距離、即ち荷物20の奥行き方向の距離yを求める。距離yが測定不能、あるいは距離yが所定値以上の場合、棚受22に荷物20が無いものと、コントローラ13は判断する。所定の範囲内の距離yが得られた場合、荷物が存在するものとして、スライドフォーク12を伸張して、荷物20を棚受22から荷下ろしする。この時コントローラ13は、スライドフォーク12の伸張量を求めた距離yと標準の距離との差だけ補正するので、荷物20が奥行き方向にずれていても正確に移載できる。従って荷物20が昇降台10上ではみ出すことがなく、またステーションなどに荷下ろしした際にストッパやガイドなどに乗りあげることもない。
【0015】
棚受22に対し、荷物20を荷下ろしする場合、昇降台10上に荷物20が正確に置かれていれば、スライドフォーク12を所定の伸張量だけ伸張することにより、正確に荷下ろしできる。従って距離センサSを用いる必要はない。しかし昇降台10上の荷物20の位置が信頼性を欠く場合、スライドフォーク12を伸張しながら、荷物20の前面との距離yを距離センサSで測定し、距離yが所定の値となった時点で、スライドフォーク12の伸張を停止して、棚受22に荷下ろしすればよい。
【0016】
棚に手動で荷物をセットすると、荷物20は奥行き方向にずれやすい。手動でセットすると、棚のどこまで荷物を押し込んだかは目分量になる。また地震を経験すると、棚が走行レール4に平行な長辺方向には揺れにくく、走行レール4に水平面内で直角な短辺方向には揺れやすいため、奥行き方向に荷物がずれやすい。そこでスタッカークレーン2を用いて、棚の個々の間口に対し荷物20の有無を検査すると共に、荷物20が棚の奥行き方向に沿ってずれているかどうかを、距離センサSで検査する。そして荷物20が所定長以上ずれている場合、距離センサSで求めた距離yに従って、スライドフォーク12を伸張させて、棚受22から荷物20をリフトアップし、次いでずれを解消するように、スライドフォーク12の伸張量を標準値へ戻した後に、棚受22に荷下ろしする。このようにすると、荷物20の位置がずれても、スタッカークレーン2の走行を妨げない範囲であれば、位置を矯正できる。
【0017】
図2,図3に、荷物20の奥行き方向の位置と、鉛直軸回りの傾斜角θ、及びスタッカークレーンの走行方向に沿った横ずれの3種類を補正するようにした変形例を示す。3は新たなスタッカークレーンで、昇降台10にターンテーブル24を設けて、スライドフォーク12を鉛直軸回りに回動させる。25は新たなコントローラである。そして昇降台10に、走行方向の前後に沿って距離センサS1,S2の組と、距離センサS3,S4の組を設ける。なお後述のように、一対の距離センサS1,S2に代えて、図1と同様に昇降台10の例えば走行方向の中心に、1個の距離センサSを設けてもよい。荷物20の前面の幅をL、奥行きをMとし、鉛直軸回りの傾斜角をθとする。また距離センサS1,S2及び距離センサS3,S4の、走行方向に沿った間隔をaとする。そしてスタッカークレーン3は図2の右から左へ走行しているものとする。座標系として走行方向の位置をx、奥行き方向の位置をyで表し、センサS2がオンしてからの停止目標位置までの距離をΔx、伸張量の補正量をΔyとし、標準の伸張量をSTDとする。
【0018】
図3に、実施例での距離などの測定アルゴリズムを示す。1)でセンサS1がオンしたものとし、2)では、スタッカークレーン3がさらに走行方向に沿って距離aだけ走行し、センサS2がオンしたとする。この時点でのセンサS2で測定した距離をy2とし、センサS1で測定した距離をy1とする。すると荷物20の傾斜角θは a・tanθ=y1−y2 で求まる。荷物20が大きく傾斜している場合、スタッカークレーン3の停止位置も補正することが好ましいので、停止目標位置を求める。傾斜角θ分だけターンテーブル24を回動させると、スライドフォーク12の伸張方向が荷物20の奥行き方向と平行となる。この時一対のスライドフォーク12,12の中間の点が、荷物20の前面の中心を通過するためには、センサS1がオンした時点からさらにスタッカークレーン3が、
Δx=L/2・(cosθ)-1 + y2・tanθ − a/2 だけ走行すればよい。また伸張量の補正量Δyを、 Δy=y2・(cosθ)-1 + L/2・ tanθ−STD に従って補正すればよい。これらの根拠は図4に示す。
【0019】
停止目標位置や伸張量の補正量の算出手法を、図4に示す。センサS2がオンした時点での距離がy2で、この時センサS1は距離aだけ前方にあり、距離はy1である。すると
y1−y2=a・tanθ であることが分かる。次に図4のように、c,d,e,fを定めると、 c・cosθ=y2 と、 f=y2・tanθ とが分かる。また e・cosθ=L/2 であることも分かる。ここでe+fは、センサS2の位置から荷物20の前面の中心を向いた位置までの距離である。そして e+f=L/2・(cosθ)-1 +y2・tanθ である。昇降台10の中心はセンサS2よりもa/2だけ前方にあるので、 Δx=e+f−a/2 だけ走行するとよい。次に d=c+e・sinθ となるので、
d=y2(cosθ)-1 +L/2・tanθ となり、d−STDが伸張量の補正量Δyとなる。
【0020】
以上のようにすると、荷物20の鉛直軸回りの回動(傾斜)と奥行き方向のずれ、並びにスタッカークレーンの走行方向のずれの3種類の位置ずれを求めることができる。そしてこれらの影響を補正するように、スタッカークレーンの停止位置とターンテーブルの回動量及びスライドフォークの伸張量を決定できる。また荷物の姿勢を矯正する場合上記の誤差の影響を補正するようにスタッカークレーンを動作させて、荷物20をリフトアップした後、スタッカークレーンをその間口に対する正規の位置(位置ずれが無い時の標準的な位置)に戻し、ターンテーブルの回動角を0とし、かつスライドフォークを標準の伸張量で動作させて棚受に荷下ろしすると、荷物20の姿勢を矯正できる。
【0021】
実施例では、荷物20の傾斜、奥行き方向のずれ、スタッカークレーンの走行方向に沿ったずれの3種類の誤差を補正したが、荷物20のスタッカークレーンの走行方向に沿ったずれが小さく、かつ傾斜角θが小さい場合、 a・tanθ=y1−y2 として、ターンテーブルの回動角を求め、スライドフォークの伸張量を 1/2(y1+y2)−STD により補正してもよい。
【0022】
図4の処理は、センサ1個でも行うことができる。即ち昇降台10の走行方向中心に配置したセンサSを用い、センサSがオンした時点(正確にはセンサSで求めた距離が不連続に変化した時点)の距離をy2とし、そこから適宜の所定長aだけ走行した際の距離をy1とすれば、図4の各式が成り立つ。この時、昇降台の中心は荷物20を検出してから距離aだけ移動しているので、 e+f−a だけスタッカークレーンの停止位置を補正すればよい。
【0023】
図5に天井走行車に関する実施例を示す。40は天井走行車で、クリーンルームの天井付近に設けた走行レール41に沿って走行し、例えばその前後に一対の落下防止カバー42,42を設ける。落下防止カバー42,42の間に横出部43があり、横出部43は回動ドライブ44を走行レール41に対し水平面内で直角な方向に横出しする。そして回動ドライブ44は、昇降ドライブ45を支持すると共に水平面内で回動させ、昇降ドライブ45は昇降台46を昇降させ、昇降台46に設けた図示しないチャックを開閉して、荷物54をチャックあるいは解放する。
【0024】
走行レール41に平行にサイドバッファ50があり、例えば一対のパイプ51,51上に複数の支持台52を設けて、FOUPなどの荷物54を支持する。そして荷物54の上部のフランジ56を昇降台46でチャックする。ここで、支持台52に対する荷物54の荷下ろし位置が不適切であったり、あるいは地震などを経験すると、荷物54が支持台52の奥行き方向にずれていることがある。そこで例えば横出部43の走行方向中心に設けた距離センサSにより、荷物54への距離を測定し、昇降台46を横移動させる距離を補正する。
【0025】
また図4と同様にして、距離センサSが荷物54を検出した際の距離と、その後所定長だけ走行した際の距離とを用いて、荷物54の傾斜角及び奥行き方向と横方向(走行レール41に平行な方向)に沿ってのずれ量を求めることができる。すると上記の3種類のずれを補正するように、天井走行車40の停止位置と、横出部43での横出し量、及び回動ドライブ44の回動量を決定できる。また地震後などには、上記の3種類の誤差を補正して、荷物54をリフトアップした後、正規の位置と姿勢で荷物54を支持台52上に下ろすことができる。他の点では、図5の実施例は図1〜図4の実施例と同様で、距離センサSからの信号は、天井走行車40内の図示しないコントローラで処理する。
【0026】
図6,図7に、位置が固定の移載装置60に関する実施例を示し、図において62はリニアモータ台車で、64はその走行レールであり、走行レール64にリニアモータの1次側が設けられ、台車62にリニアモータの2次側が設けられている。そして支持台63上に荷物54を支持し、処理装置68側のロードポート66とリニアモータ台車62との間で、移載装置60が荷物54を移載する。70は移載手段としてのスカラアームで、71は荷物54を支持するハンド、72は基部側のアーム、73はハンド71側のアームである。そして例えば支持台75上に距離センサSを配置する。
【0027】
この場合、例えば図7のようにして、距離センサSにより荷物54までの距離を測定する。なお図7の鎖線で示すように、荷物が55の位置までずれると、測定した距離がずれ量に比例して変化する。そして求めた距離に応じて、ハンド71の伸張量を補正すると、ロードポート66に対し、正確な位置に荷物54を荷下ろしできる。なお図7で、スカラアーム70を回動させるターンテーブルを設け、リニアモータ台車62の前後進と組合わせると、図4の処理を実行できる。

【符号の説明】
【0028】
2,3 スタッカークレーン
4 走行レール
6 台車
8 マスト
10 昇降台
12 スライドフォーク
13 コントローラ
20 荷物
22 棚受
24 ターンテーブル
25 コントローラ
40 天井走行車
41 走行レール
42 落下防止カバー
43 横出部
44 回動ドライブ
45 昇降ドライブ
46 昇降台
50 サイドバッファ
51 パイプ
52 支持台
54 荷物
56 フランジ
60 移載装置
62 リニアモータ台車
63,75 支持台
64 走行レール
66 ロードポート
68 処理装置
70 スカラアーム
71 ハンド
72,73 アーム

S 距離センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の奥行き方向に沿って物品の支持部を伸張させることにより、荷物を移載する移載装置であって、
荷物までの前記奥行き方向に沿った距離を測定するための距離センサと、
測定した距離に応じて支持部の伸張量を補正するためのコントローラ、とを設けたことを特徴とする、移載装置。
【請求項2】
前記距離センサにより荷物までの距離を測定できなかった場合、荷物が無いと判断するように、前記コントローラを構成したことを特徴とする、請求項1の移載装置。
【請求項3】
前記支持部を回動させて伸張方向を変化させるための回動手段を設けると共に、
荷物までの奥行き方向の距離を、前記距離センサにより少なくとも2カ所で測定すると共に、
前記2カ所での距離の差から回動手段の回動量を決定するように、前記コントローラを構成したことを特徴とする、請求項1または2の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−208816(P2010−208816A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57622(P2009−57622)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】