積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法
【課題】大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができるシミュレーション方法を提供する。
【解決手段】2枚の鉄板でゴム部材を挟持した試験体を作製し(100)、これを種々の温度履歴で加硫して得られた試験体の加硫度と加硫後の剪断弾性率とを求めて(102)、ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する(106)。3次元FEMモデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測し(110、112)、各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、3次元FEMモデルのゴム部材を構成する各要素に与えると共に(114)、境界条件を与えて構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定する(116)。
【解決手段】2枚の鉄板でゴム部材を挟持した試験体を作製し(100)、これを種々の温度履歴で加硫して得られた試験体の加硫度と加硫後の剪断弾性率とを求めて(102)、ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する(106)。3次元FEMモデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測し(110、112)、各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、3次元FEMモデルのゴム部材を構成する各要素に与えると共に(114)、境界条件を与えて構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定する(116)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有限要素法を用いて、ゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性をシミュレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、制震・免震対策のため、建造物や橋桁などの上部構造物とこれを支承する基礎杭や橋脚などの下部構造物とを接合する方法として、従来の剛接合に代えて、ピン接合、転がり支承、すべり支承、あるいは、免震用積層ゴムなどを用いた接合方法が採用されてきている。上記免震用積層ゴムは、大型の工業用ゴム製品でありながら、剪断剛性や減衰定数等の性能について、防舷材や可撓継ぎなどのような他の大型ゴム製品に比べて相対的に高い精度が要求されている。
【0003】
また、上記免震用に用いられる積層ゴムのような、大型で厚肉なゴム製品を製造する際の技術的課題としては、加硫の最適化が挙げられる。すなわち、上記のような、金型を用いた加硫処理においては、熱源が外周に限られることから、大型ゴム製品では内部の加硫状態は不均一になりやすく、これが製品物性にも大きく影響してしまう。
【0004】
そこで、弾性率や減衰係数などの、積層ゴムの性能に関係する加硫後のゴム材料の物性を予測して、適切な加硫条件を特定するためのシミュレーション方法を知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−203591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、単純変形とみなせる程度の変形領域での物性しか予測することが出来ない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法は、複数のゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性値をシミュレーションする方法であって、前記鉄板を構成する鋼材で前記積層ゴムを構成するゴム部材を挟持した試験体を作製し、これを種々の温度履歴で加硫して得られた前記試験体の加硫度と加硫後の物性値とを求める第1のステップと、前記求められた試験体のデータを用いて、前記ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する第2のステップと、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、前記第1の数値解析モデルの各ゴム部材を構成する各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測する第3のステップと、前記第3のステップで各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして、前記第2のステップで作成された物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第2の数値解析モデルの前記ゴム部材を構成する各要素に与えると共に、前記第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、前記ゴム部材の各要素の物性値を推定する第4のステップと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法は、前記第4のステップで推定された前記ゴム部材の各要素の物性値に基づいて前記積層ゴムの製品性能値を算出する第5のステップと、前記第5のステップで求められた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較して、前記目標性能値と前記算出された製品性能値との差が所定の範囲内にあるかどうかを判定する第6のステップとを更に備え、前記差が所定の範囲を超えた場合には、前記第3のステップに戻って加硫条件を変更すると共に、前記第3のステップから前記第6のステップまでを繰り返して、前記目標性能値を与える加硫条件を特定するようにすることができる。
【0010】
本発明に係る物性値をゴム材料の剪断弾性率とすることができる。
【0011】
本発明に係る第2の数値解析モデルを、第1の数値解析モデルと共通のものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法によれば、第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、加硫後のゴム部材の各要素の温度と加硫度とを予測した後に、予測された温度と加硫度とを用いて算出される物性パラメータを第2の数値解析モデルの各要素に与えると共に第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定することにより、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るシミュレーション装置を示した概略図である。
【図2】免震用積層ゴムの概略構成を示す図である。
【図3】免震用積層ゴムの加硫処理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る免震用積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る加硫後特性測定用の試験体の模式図である。
【図6】加硫物性関数の一例を示す図である。
【図7】モデルに単純せん断を与えた様子を示す図である。
【図8】せん断ひずみとせん断応力との関係を示すグラフである。
【図9】3次元FEMモデルを示す図である。
【図10】免震用積層ゴム内の温度分布の計算例を示す図である。
【図11】(A)免震用積層ゴムの各要素の温度の時系列変化の計算例を示す図、及び(B)免震用積層ゴムの各要素の剪断弾性率の時系列変化の計算例を示す図である。
【図12】免震用積層ゴムの各要素を示す図である。
【図13】免震用積層ゴム内の剪断弾性率分布の計算例を示す図である。
【図14】剪断変形400%時の免震用積層ゴム内のせん断応力の分布を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーションを実行するシミュレーション装置50は、積層ゴムの加硫後物性シミュレーションを実行するためのシミュレーションプログラムにより後述する処理を実行するコンピュータ演算処理システムにより構成されている。なお、この様なコンピュータシステムは、例えば、CPU、ROM、RAM、ハードデイスク、入出力端末、その他所要のユニット等を備えている。上記のシミュレーションプログラムは、予めハードデイスク等に記憶されている。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法により解析する免震用積層ゴム10の概略構成を示す図である。この免震用積層ゴム10は複数のゴム部材11と鉄板12とを交互に積層したもので、図3に示すように、未加硫のゴム部材11と接着処理済の鉄板12とを積層したものを、円環状のモールド21と上、下のモールド22,23とから成る加硫金型20内に投入し、この加硫金型20の上、下面及び側面から加熱して上記ゴム部材11のゴム分子と硫黄との間に架橋反応を起こさせるとともに、上記ゴム部材11と上記鉄板12とを接着する加硫処理を行って得られる。この加硫処理により、剪断弾性率などの上記免震用積層ゴム10を構成するゴム部材11に所望の物性値を与えることができるとともに、上記ゴム部材11と鉄板12との接着強度を確保することができる。なお、実際の上記免震用積層ゴム10では、更に、全体をEPDM系ゴムから成る外皮ゴムで覆った構成であるが、説明を簡単にするため、上記外皮ゴムについては省略した。
【0017】
次に、上記免震用積層ゴム10の加硫後の物性をシミュレーションする方法について、図4のフローチャートに基づき説明する。
【0018】
まず、設計者が、図5に示すような、上記鉄板12と同一の鋼材から成る2枚の鉄板31の間に、上記ゴム部材11と同一成分から成るゴム部材32を挟持した試験体30を多数作製し(ステップ100)、設計者が、これらの試験体30を様々な加硫条件で加硫処理し、上記ゴム部材の加硫度を求めるととともに、上記試験体30の剪断試験を行って、加硫後の剪断弾性率を求める(ステップ102)。
【0019】
そして、シミュレーション装置50が、上記の加硫条件と求められた加硫度のデータと剪断弾性率の測定データとから、上記ゴム部材32の加硫後の剪断弾性率を近似した加硫関数Geq(Cd,T)を作成する(ステップ104)。この加硫関数Geq(Cd,T)は、以下の(1)式のように温度Tと加硫度Cdとをパラメータとする2変数の関数で表わされ、図6の模式図に示すように3次元座標上では曲面で表わされる。
【0020】
【数1】
【0021】
なお、本例では、加硫関数Geq(Cd,T)として、剪断弾性率Gそのものではなく、s所定の加硫条件で加硫したときの剪断弾性率G0を1として規格化したもの(G/G0)を用いた。また、同図の色分けした領域の境界が剪断弾性率の等高線を表わしている。
【0022】
次に、シミュレーション装置50が、上記の加硫条件と求められた加硫度のデータと剪断弾性率の測定データとから、単純剪断γを与えたときの上記ゴム部材32の加硫後の剪断弾性率G(γ)を表わす曲線の式における物性パラメータを近似した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成する(ステップ106)。
【0023】
ここで、ゴムの超弾性を、以下の(2)式で表わされるモデルとする。
【0024】
【数2】
【0025】
上記(2)式で与えられるモデルに図7に示すような単純せん断γを与えた時、ひずみエネルギー関数は、以下の(3)式で表され、上記の曲線としての図8に示すようなτ−γ曲線は以下の(4)式で表わされる。
【0026】
【数3】
【0027】
上記(1)式を基に、G(γ=100%)=Geqとなるように、物性パラメータa、bを到達温度Tと加硫度Cdの関数として定義して、a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成する。
【0028】
次に、設計者が、熱伝導解析及び大変形構造解析のための3次元FEMモデルを作成する(ステップ108)。3次元FEMモデルとしては、図9に示すような、上記免震用積層ゴム10を、それぞれ、多数の8節点四角柱要素に分割した3次元モデル40を用いるとともに、上記3次元モデル40のゴム要素41と鉄板要素42と外皮ゴムの要素43とに熱伝導率あるいは熱拡散係数を与え、上記ゴム要素41には、更に、加硫反応による発熱を考慮するための加硫反応活性化エネルギーを与える。
【0029】
そして、設計者が、加硫条件(温度履歴)を設定して(ステップ110)、シミュレーション装置50が、熱伝導解析を行い、上記各ゴム要素41の温度と加硫度とを時間ステップ毎に算出して、上記各ゴム要素41の温度上昇と加硫度の変化を予測すると共に、上記ステップ104で作成した加硫関数G(Cd,T)のCd及びTに、予測された各要素の加硫度と到達温度をそれぞれ代入して、当該ゴム要素41の物性である剪断弾性率を推定する(ステップ112)。
【0030】
次に、シミュレーション装置50が、上記ステップ106で作成した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)のCd及びTに、予測された各ゴム要素41の加硫度と到達温度をそれぞれ代入して、各ゴム要素41の物性パラメータa,bを算出し、算出した物性パラメータa,bを適用した上記(4)式を、ひずみエネルギー関数として、対応する各ゴム要素41に与える(ステップ114)。
【0031】
そして、境界条件(荷重条件)を設定して、シミュレーション装置50が、大変形構造解析を行い、上記各ゴム要素41の剪断弾性率を時間ステップ毎に算出して、各ゴム要素41の物性である剪断弾性率を推定する(ステップ116)。
【0032】
そして、シミュレーション装置50が、上記推定された上記各ゴム要素41の剪断弾性率に基づいて、積層ゴムの製品性能を表わす数値を算出する(ステップ118)。上記製品性能を表わす数値は、上記ステップ110で設定した加硫条件が適切であるかどうかを判定するために利用され、例えば、剪断弾性率の体積平均を示す数値又は剪断弾性率の分布の均一性を示す数値である。
【0033】
製品性能を表わす数値の算出後には、設計者が、加硫条件を変更するかどうかを検討し(ステップ120)、変更する場合には、ステップ110に戻って新たな加硫条件を設定して再度熱伝導解析及び大変形構造解析を行い、上記製品性能を表わす数値を求める。また、加硫条件を変更しない場合には、本シミュレーション処理を終了する。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、3次元FEMモデルに加硫条件を与えて熱伝導解析して、加硫後のゴム部材の各要素の温度と加硫度とを予測した後に、予測された温度と加硫度とを用いて算出される物性パラメータを当該3次元FEMモデルの各要素に与えると共に当該3次元FEMモデルに境界条件を与えて大変形構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定することにより、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる。
【0035】
また、加硫条件を与えて行った熱伝導解析から物性パラメータを予測し、大変形構造解析を連続して行うことで、様々な加力条件下での積層ゴムの特性値を予測することが可能となる。
【0036】
なお、上記の実施の形態では、加硫後の物性値を剪断弾性率とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、加硫後の物性値として、等価減衰係数など他の物性値を用いてもよい。この場合には、上記剪断弾性率と同様に、別個試験体を作成して推定する加硫後の物性値を測定するとともに、単純剪断γを与えたときのゴム部材の加硫後のその物性値を表わす曲線の式における物性パラメータを近似した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成すればよい。
【0037】
また、上記ステップ120において、加硫条件を変更する基準を特に設けず、設計者が加硫条件の変更を判断したが、製品性能値を予め設定するとともに、複数の加硫条件を設定しておき、上記ステップ120で求めた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較する。そして、その差が所定の範囲内にあるかどうかを判定し、上記差が所定の範囲を超えた場合には、上記ステップ110に戻って加硫条件を変更するようにしてもよい。あるいは、単に、複数の加硫条件を設定しておき、それぞれの加硫条件での製品性能値を全て求めるようにしてもよい。
【0038】
また、ひずみエネルギー関数として種々のものを用いることができる。例えば、ゴムの材料モデルとして提案されている、Neo−Hookeanモデル、Mooney−Rivlinモデル、Yeohモデル、Ogdenモデル等のひずみエネルギー関数を用いることができる。
【0039】
また、熱伝導解析のための第1の数値解析モデル、及び大変形構造解析のための第2の数値解析モデルとして、単一の3次元FEMモデルを用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、熱伝導解析のための第1の数値解析モデル、及び大変形構造解析のための第2の数値解析モデルとして、別々のモデルを用いてもよい。
【0040】
また、上記ステップ104での加硫関数の作成、及び上記ステップ112の熱伝導解析における物性値の算出を省略してもよい。
【実施例】
【0041】
外径がφ1600mm、内径が0、単層厚さが6.0mmの円柱状のゴム部材層と、同じ平面形状で厚さが4.4mmの鋼板(材質;SPHC)層とを積層した免震用積層ゴムの内部温度、加硫度、剪断弾性率の温度変化、及び様々な境界条件下での積層ゴムの物性値を、有限要素法を用いてシミュレーションした。
【0042】
モデルの寸法を以下の表1に表わす。
【0043】
【表1】
また、計算に必要なパラメータは以下の通りである。
【0044】
(1)ゴム及び鋼板の特性
・ゴム部材のゴム質
内部ゴム:高減衰ゴム材料
外皮ゴム:EPDM系ゴム
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)、鋼板の熱拡散係数 κ
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の加硫反応活性化エネルギー
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の標準加硫条件(ベストキュアタイム)
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の体積弾性率
・鋼板のヤング率
・鋼板のポアソン比
(2)加硫条件
初期温度と、積層ゴムの上下端ゴムおよび外皮ゴム端部に所定時間の加硫条件を設定した。
(3)境界条件
大変形構造解析で用いた境界条件を下記の表2に示す。
【0045】
【表2】
加硫開始から1.5時間後の温度分布を図10に示す。また、10時間までの免震用積層ゴムの内部の温度及び剪断弾性率の時系列変化を図11(A)、(B)に示す。なお、同図において、実線は熱源に近い箇所に位置するゴム要素Aの時系列変化、細かな破線は、熱源から最も遠い箇所に位置するゴム要素Cの時系列変化、破線は、A,Cのほぼ中間に位置するゴム要素Bの時系列変化である(図12参照)。
【0046】
また、加硫終了直後の剪断弾性率の分布を図13に示す。また、剪断変形400%時のせん断応力の分布を示すコンター図を図14に示す。
【0047】
上記図14のように、大変形時の免震用積層ゴムの物性の分布を予測できるので、本発明によるシミュレーションを行うことにより、免震用積層ゴムの加硫後の物性を容易に予測できることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 免震用積層ゴム
11 ゴム部材
12 鉄板
20 加硫金型
30 試験体
31 鉄板
32 ゴム部材
40 3次元モデル
41 ゴム要素
42 鉄板要素
43 外皮ゴム要素
50 シミュレーション装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、有限要素法を用いて、ゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性をシミュレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、制震・免震対策のため、建造物や橋桁などの上部構造物とこれを支承する基礎杭や橋脚などの下部構造物とを接合する方法として、従来の剛接合に代えて、ピン接合、転がり支承、すべり支承、あるいは、免震用積層ゴムなどを用いた接合方法が採用されてきている。上記免震用積層ゴムは、大型の工業用ゴム製品でありながら、剪断剛性や減衰定数等の性能について、防舷材や可撓継ぎなどのような他の大型ゴム製品に比べて相対的に高い精度が要求されている。
【0003】
また、上記免震用に用いられる積層ゴムのような、大型で厚肉なゴム製品を製造する際の技術的課題としては、加硫の最適化が挙げられる。すなわち、上記のような、金型を用いた加硫処理においては、熱源が外周に限られることから、大型ゴム製品では内部の加硫状態は不均一になりやすく、これが製品物性にも大きく影響してしまう。
【0004】
そこで、弾性率や減衰係数などの、積層ゴムの性能に関係する加硫後のゴム材料の物性を予測して、適切な加硫条件を特定するためのシミュレーション方法を知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−203591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、単純変形とみなせる程度の変形領域での物性しか予測することが出来ない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法は、複数のゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性値をシミュレーションする方法であって、前記鉄板を構成する鋼材で前記積層ゴムを構成するゴム部材を挟持した試験体を作製し、これを種々の温度履歴で加硫して得られた前記試験体の加硫度と加硫後の物性値とを求める第1のステップと、前記求められた試験体のデータを用いて、前記ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する第2のステップと、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、前記第1の数値解析モデルの各ゴム部材を構成する各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測する第3のステップと、前記第3のステップで各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして、前記第2のステップで作成された物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第2の数値解析モデルの前記ゴム部材を構成する各要素に与えると共に、前記第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、前記ゴム部材の各要素の物性値を推定する第4のステップと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法は、前記第4のステップで推定された前記ゴム部材の各要素の物性値に基づいて前記積層ゴムの製品性能値を算出する第5のステップと、前記第5のステップで求められた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較して、前記目標性能値と前記算出された製品性能値との差が所定の範囲内にあるかどうかを判定する第6のステップとを更に備え、前記差が所定の範囲を超えた場合には、前記第3のステップに戻って加硫条件を変更すると共に、前記第3のステップから前記第6のステップまでを繰り返して、前記目標性能値を与える加硫条件を特定するようにすることができる。
【0010】
本発明に係る物性値をゴム材料の剪断弾性率とすることができる。
【0011】
本発明に係る第2の数値解析モデルを、第1の数値解析モデルと共通のものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法によれば、第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、加硫後のゴム部材の各要素の温度と加硫度とを予測した後に、予測された温度と加硫度とを用いて算出される物性パラメータを第2の数値解析モデルの各要素に与えると共に第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定することにより、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るシミュレーション装置を示した概略図である。
【図2】免震用積層ゴムの概略構成を示す図である。
【図3】免震用積層ゴムの加硫処理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る免震用積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る加硫後特性測定用の試験体の模式図である。
【図6】加硫物性関数の一例を示す図である。
【図7】モデルに単純せん断を与えた様子を示す図である。
【図8】せん断ひずみとせん断応力との関係を示すグラフである。
【図9】3次元FEMモデルを示す図である。
【図10】免震用積層ゴム内の温度分布の計算例を示す図である。
【図11】(A)免震用積層ゴムの各要素の温度の時系列変化の計算例を示す図、及び(B)免震用積層ゴムの各要素の剪断弾性率の時系列変化の計算例を示す図である。
【図12】免震用積層ゴムの各要素を示す図である。
【図13】免震用積層ゴム内の剪断弾性率分布の計算例を示す図である。
【図14】剪断変形400%時の免震用積層ゴム内のせん断応力の分布を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーションを実行するシミュレーション装置50は、積層ゴムの加硫後物性シミュレーションを実行するためのシミュレーションプログラムにより後述する処理を実行するコンピュータ演算処理システムにより構成されている。なお、この様なコンピュータシステムは、例えば、CPU、ROM、RAM、ハードデイスク、入出力端末、その他所要のユニット等を備えている。上記のシミュレーションプログラムは、予めハードデイスク等に記憶されている。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法により解析する免震用積層ゴム10の概略構成を示す図である。この免震用積層ゴム10は複数のゴム部材11と鉄板12とを交互に積層したもので、図3に示すように、未加硫のゴム部材11と接着処理済の鉄板12とを積層したものを、円環状のモールド21と上、下のモールド22,23とから成る加硫金型20内に投入し、この加硫金型20の上、下面及び側面から加熱して上記ゴム部材11のゴム分子と硫黄との間に架橋反応を起こさせるとともに、上記ゴム部材11と上記鉄板12とを接着する加硫処理を行って得られる。この加硫処理により、剪断弾性率などの上記免震用積層ゴム10を構成するゴム部材11に所望の物性値を与えることができるとともに、上記ゴム部材11と鉄板12との接着強度を確保することができる。なお、実際の上記免震用積層ゴム10では、更に、全体をEPDM系ゴムから成る外皮ゴムで覆った構成であるが、説明を簡単にするため、上記外皮ゴムについては省略した。
【0017】
次に、上記免震用積層ゴム10の加硫後の物性をシミュレーションする方法について、図4のフローチャートに基づき説明する。
【0018】
まず、設計者が、図5に示すような、上記鉄板12と同一の鋼材から成る2枚の鉄板31の間に、上記ゴム部材11と同一成分から成るゴム部材32を挟持した試験体30を多数作製し(ステップ100)、設計者が、これらの試験体30を様々な加硫条件で加硫処理し、上記ゴム部材の加硫度を求めるととともに、上記試験体30の剪断試験を行って、加硫後の剪断弾性率を求める(ステップ102)。
【0019】
そして、シミュレーション装置50が、上記の加硫条件と求められた加硫度のデータと剪断弾性率の測定データとから、上記ゴム部材32の加硫後の剪断弾性率を近似した加硫関数Geq(Cd,T)を作成する(ステップ104)。この加硫関数Geq(Cd,T)は、以下の(1)式のように温度Tと加硫度Cdとをパラメータとする2変数の関数で表わされ、図6の模式図に示すように3次元座標上では曲面で表わされる。
【0020】
【数1】
【0021】
なお、本例では、加硫関数Geq(Cd,T)として、剪断弾性率Gそのものではなく、s所定の加硫条件で加硫したときの剪断弾性率G0を1として規格化したもの(G/G0)を用いた。また、同図の色分けした領域の境界が剪断弾性率の等高線を表わしている。
【0022】
次に、シミュレーション装置50が、上記の加硫条件と求められた加硫度のデータと剪断弾性率の測定データとから、単純剪断γを与えたときの上記ゴム部材32の加硫後の剪断弾性率G(γ)を表わす曲線の式における物性パラメータを近似した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成する(ステップ106)。
【0023】
ここで、ゴムの超弾性を、以下の(2)式で表わされるモデルとする。
【0024】
【数2】
【0025】
上記(2)式で与えられるモデルに図7に示すような単純せん断γを与えた時、ひずみエネルギー関数は、以下の(3)式で表され、上記の曲線としての図8に示すようなτ−γ曲線は以下の(4)式で表わされる。
【0026】
【数3】
【0027】
上記(1)式を基に、G(γ=100%)=Geqとなるように、物性パラメータa、bを到達温度Tと加硫度Cdの関数として定義して、a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成する。
【0028】
次に、設計者が、熱伝導解析及び大変形構造解析のための3次元FEMモデルを作成する(ステップ108)。3次元FEMモデルとしては、図9に示すような、上記免震用積層ゴム10を、それぞれ、多数の8節点四角柱要素に分割した3次元モデル40を用いるとともに、上記3次元モデル40のゴム要素41と鉄板要素42と外皮ゴムの要素43とに熱伝導率あるいは熱拡散係数を与え、上記ゴム要素41には、更に、加硫反応による発熱を考慮するための加硫反応活性化エネルギーを与える。
【0029】
そして、設計者が、加硫条件(温度履歴)を設定して(ステップ110)、シミュレーション装置50が、熱伝導解析を行い、上記各ゴム要素41の温度と加硫度とを時間ステップ毎に算出して、上記各ゴム要素41の温度上昇と加硫度の変化を予測すると共に、上記ステップ104で作成した加硫関数G(Cd,T)のCd及びTに、予測された各要素の加硫度と到達温度をそれぞれ代入して、当該ゴム要素41の物性である剪断弾性率を推定する(ステップ112)。
【0030】
次に、シミュレーション装置50が、上記ステップ106で作成した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)のCd及びTに、予測された各ゴム要素41の加硫度と到達温度をそれぞれ代入して、各ゴム要素41の物性パラメータa,bを算出し、算出した物性パラメータa,bを適用した上記(4)式を、ひずみエネルギー関数として、対応する各ゴム要素41に与える(ステップ114)。
【0031】
そして、境界条件(荷重条件)を設定して、シミュレーション装置50が、大変形構造解析を行い、上記各ゴム要素41の剪断弾性率を時間ステップ毎に算出して、各ゴム要素41の物性である剪断弾性率を推定する(ステップ116)。
【0032】
そして、シミュレーション装置50が、上記推定された上記各ゴム要素41の剪断弾性率に基づいて、積層ゴムの製品性能を表わす数値を算出する(ステップ118)。上記製品性能を表わす数値は、上記ステップ110で設定した加硫条件が適切であるかどうかを判定するために利用され、例えば、剪断弾性率の体積平均を示す数値又は剪断弾性率の分布の均一性を示す数値である。
【0033】
製品性能を表わす数値の算出後には、設計者が、加硫条件を変更するかどうかを検討し(ステップ120)、変更する場合には、ステップ110に戻って新たな加硫条件を設定して再度熱伝導解析及び大変形構造解析を行い、上記製品性能を表わす数値を求める。また、加硫条件を変更しない場合には、本シミュレーション処理を終了する。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、3次元FEMモデルに加硫条件を与えて熱伝導解析して、加硫後のゴム部材の各要素の温度と加硫度とを予測した後に、予測された温度と加硫度とを用いて算出される物性パラメータを当該3次元FEMモデルの各要素に与えると共に当該3次元FEMモデルに境界条件を与えて大変形構造解析を行って、ゴム部材の各要素の物性値を推定することにより、大変形時の加硫後の積層ゴムの物性を予測することができる。
【0035】
また、加硫条件を与えて行った熱伝導解析から物性パラメータを予測し、大変形構造解析を連続して行うことで、様々な加力条件下での積層ゴムの特性値を予測することが可能となる。
【0036】
なお、上記の実施の形態では、加硫後の物性値を剪断弾性率とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、加硫後の物性値として、等価減衰係数など他の物性値を用いてもよい。この場合には、上記剪断弾性率と同様に、別個試験体を作成して推定する加硫後の物性値を測定するとともに、単純剪断γを与えたときのゴム部材の加硫後のその物性値を表わす曲線の式における物性パラメータを近似した物性パラメータ関数a(Cd,T)、b(Cd,T)を作成すればよい。
【0037】
また、上記ステップ120において、加硫条件を変更する基準を特に設けず、設計者が加硫条件の変更を判断したが、製品性能値を予め設定するとともに、複数の加硫条件を設定しておき、上記ステップ120で求めた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較する。そして、その差が所定の範囲内にあるかどうかを判定し、上記差が所定の範囲を超えた場合には、上記ステップ110に戻って加硫条件を変更するようにしてもよい。あるいは、単に、複数の加硫条件を設定しておき、それぞれの加硫条件での製品性能値を全て求めるようにしてもよい。
【0038】
また、ひずみエネルギー関数として種々のものを用いることができる。例えば、ゴムの材料モデルとして提案されている、Neo−Hookeanモデル、Mooney−Rivlinモデル、Yeohモデル、Ogdenモデル等のひずみエネルギー関数を用いることができる。
【0039】
また、熱伝導解析のための第1の数値解析モデル、及び大変形構造解析のための第2の数値解析モデルとして、単一の3次元FEMモデルを用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、熱伝導解析のための第1の数値解析モデル、及び大変形構造解析のための第2の数値解析モデルとして、別々のモデルを用いてもよい。
【0040】
また、上記ステップ104での加硫関数の作成、及び上記ステップ112の熱伝導解析における物性値の算出を省略してもよい。
【実施例】
【0041】
外径がφ1600mm、内径が0、単層厚さが6.0mmの円柱状のゴム部材層と、同じ平面形状で厚さが4.4mmの鋼板(材質;SPHC)層とを積層した免震用積層ゴムの内部温度、加硫度、剪断弾性率の温度変化、及び様々な境界条件下での積層ゴムの物性値を、有限要素法を用いてシミュレーションした。
【0042】
モデルの寸法を以下の表1に表わす。
【0043】
【表1】
また、計算に必要なパラメータは以下の通りである。
【0044】
(1)ゴム及び鋼板の特性
・ゴム部材のゴム質
内部ゴム:高減衰ゴム材料
外皮ゴム:EPDM系ゴム
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)、鋼板の熱拡散係数 κ
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の加硫反応活性化エネルギー
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の標準加硫条件(ベストキュアタイム)
・ゴム(内部ゴム、外皮ゴム共通)の体積弾性率
・鋼板のヤング率
・鋼板のポアソン比
(2)加硫条件
初期温度と、積層ゴムの上下端ゴムおよび外皮ゴム端部に所定時間の加硫条件を設定した。
(3)境界条件
大変形構造解析で用いた境界条件を下記の表2に示す。
【0045】
【表2】
加硫開始から1.5時間後の温度分布を図10に示す。また、10時間までの免震用積層ゴムの内部の温度及び剪断弾性率の時系列変化を図11(A)、(B)に示す。なお、同図において、実線は熱源に近い箇所に位置するゴム要素Aの時系列変化、細かな破線は、熱源から最も遠い箇所に位置するゴム要素Cの時系列変化、破線は、A,Cのほぼ中間に位置するゴム要素Bの時系列変化である(図12参照)。
【0046】
また、加硫終了直後の剪断弾性率の分布を図13に示す。また、剪断変形400%時のせん断応力の分布を示すコンター図を図14に示す。
【0047】
上記図14のように、大変形時の免震用積層ゴムの物性の分布を予測できるので、本発明によるシミュレーションを行うことにより、免震用積層ゴムの加硫後の物性を容易に予測できることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 免震用積層ゴム
11 ゴム部材
12 鉄板
20 加硫金型
30 試験体
31 鉄板
32 ゴム部材
40 3次元モデル
41 ゴム要素
42 鉄板要素
43 外皮ゴム要素
50 シミュレーション装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性値をシミュレーションする方法であって、
前記鉄板を構成する鋼材で前記積層ゴムを構成するゴム部材を挟持した試験体を作製し、これを種々の温度履歴で加硫して得られた前記試験体の加硫度と加硫後の物性値とを求める第1のステップと、
前記求められた試験体のデータを用いて、前記ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する第2のステップと、
前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、前記第1の数値解析モデルの各ゴム部材を構成する各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測する第3のステップと、
前記第3のステップで各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして、前記第2のステップで作成された物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第2の数値解析モデルの前記ゴム部材を構成する各要素に与えると共に、前記第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、前記ゴム部材の各要素の物性値を推定する第4のステップと、
を備えたことを特徴とする積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法。
【請求項2】
前記第4のステップで推定された前記ゴム部材の各要素の物性値に基づいて前記積層ゴムの製品性能値を算出する第5のステップと、
前記第5のステップで求められた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較して、前記目標性能値と前記算出された製品性能値との差が所定の範囲内にあるかどうかを判定する第6のステップとを更に備え、
前記差が所定の範囲を超えた場合には、前記第3のステップに戻って加硫条件を変更すると共に、前記第3のステップから前記第6のステップまでを繰り返して、前記目標性能値を与える加硫条件を特定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法。
【請求項3】
前記物性値をゴム材料の剪断弾性率としたことを特徴とする請求項1又は2記載の積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法。
【請求項4】
前記第2の数値解析モデルを、前記第1の数値解析モデルと共通のものとした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の加硫物性シミュレーション方法。
【請求項1】
複数のゴム部材と鉄板とを積層して成る積層ゴムの加硫後の物性値をシミュレーションする方法であって、
前記鉄板を構成する鋼材で前記積層ゴムを構成するゴム部材を挟持した試験体を作製し、これを種々の温度履歴で加硫して得られた前記試験体の加硫度と加硫後の物性値とを求める第1のステップと、
前記求められた試験体のデータを用いて、前記ゴム部材の加硫後の物性パラメータを近似した、温度と加硫度とをパラメータとする物性パラメータ関数を作成する第2のステップと、
前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第1の数値解析モデルに加硫条件を与えて伝熱解析して、前記第1の数値解析モデルの各ゴム部材を構成する各要素の温度と加硫度との時間変化をそれぞれ予測する第3のステップと、
前記第3のステップで各要素について求められたゴム部材の要素の温度と加硫度の予測値をパラメータとして、前記第2のステップで作成された物性パラメータ関数に与えて算出される物性パラメータを、前記積層ゴムを有限個の要素に分割した第2の数値解析モデルの前記ゴム部材を構成する各要素に与えると共に、前記第2の数値解析モデルに境界条件を与えて構造解析を行って、前記ゴム部材の各要素の物性値を推定する第4のステップと、
を備えたことを特徴とする積層ゴムの加硫後物性シミュレーション方法。
【請求項2】
前記第4のステップで推定された前記ゴム部材の各要素の物性値に基づいて前記積層ゴムの製品性能値を算出する第5のステップと、
前記第5のステップで求められた製品性能値と予め設定された目標性能値とを比較して、前記目標性能値と前記算出された製品性能値との差が所定の範囲内にあるかどうかを判定する第6のステップとを更に備え、
前記差が所定の範囲を超えた場合には、前記第3のステップに戻って加硫条件を変更すると共に、前記第3のステップから前記第6のステップまでを繰り返して、前記目標性能値を与える加硫条件を特定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法。
【請求項3】
前記物性値をゴム材料の剪断弾性率としたことを特徴とする請求項1又は2記載の積層ゴムの加硫物性シミュレーション方法。
【請求項4】
前記第2の数値解析モデルを、前記第1の数値解析モデルと共通のものとした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の加硫物性シミュレーション方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−176529(P2012−176529A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40347(P2011−40347)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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