説明

積層シート用接着剤組成物

【課題】プラスチックフィルムの未処理面とプラスチック、金属等の他の基材との間に強固且つ長期耐久性のある接着を施すことができ、更に詳細にはプラスチックフィルム未処理面を他の基材と接着したシートの屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して、長期間にわたって接着強度を維持できる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリオール(A)、及び、1分子中に平均2.5〜7個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)を含有してなる積層シート用接着剤組成物であって、ポリオール(A)の数平均分子量が、5,000〜50,000であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が、−85〜−35℃であることを特徴とする積層シート用接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、金属箔等の接着に用いる積層シート用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外産業用途向け、例えば、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、又はステッカー等に用いられる多層(複合)シートとして、アルミニウム、銅、若しくは鋼板等の金属箔、金属板、又は金属蒸着フィルムと、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、又はアクリル樹脂等のプラスチックフィルムと、を貼り合わせて積層(ラミネート)フィルムにしたものが使用されてきた。これらの多層フィルムにおける、金属箔、金属板、又は金属蒸着フィルムと、プラスチックフィルムと、を貼り合わせる接着剤組成物としては、ポリエポキシ系接着剤組成物、又はポリウレタン系接着剤組成物が知られている。
【0003】
特許文献1には、優れた初期凝集力と接着力等を与えることができる、バランスを考慮したポリエステル樹脂と、これを用いたポリウレタン樹脂接着剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、食品包装におけるレトルト殺菌時の耐熱水性に優れるポリウレタン系接着剤組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、太陽電池裏面封止用シートにおいて、耐加水分解性を有するポリウレタン系接着剤組成物を使用することが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、ポリエステル系樹脂、又はポリエステルポリウレタン系樹脂で構成された接着改善層を備えた太陽電池裏面封止用シートが開示されている。
【0007】
一方、近年は地球温暖化対策に向けた取り組みが急務となり、太陽電池裏面封止用シート等の部材、積層シートでは長期耐久性のある素材を開発・提供すること求められており、長期耐久性を得るため複数枚の種種のプラスチックフィルムを積層することが必要とされてきている。複数枚のプラスチックフィルムを積層する際に、プラスチックフィルムにコロナ処理等の接着力を向上させるための処理がなされていない、いわゆるプラスチックフィルム未処理面を接着させることが必要となる。
【0008】
しかし、上記従来技術のウレタン系接着剤では、プラスチックフィルム未処理面とプラスチック、金属等の他の基材との間に強固且つ長期耐久性のある接着を施すことができないという問題があった。又、プラスチックフィルム未処理面同士を接着させる際には、十分な接着力と長期耐久性とを両立させるのは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−218978号公報
【特許文献2】特開平06−116542号公報
【特許文献3】特開2008−4691号公報
【特許文献4】特開2007−136911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、プラスチックフィルムの未処理面とプラスチック、金属等の他の基材との間に強固且つ長期耐久性のある接着を施すことができ、更に詳細にはプラスチックフィルム未処理面を他の基材と接着したシートの屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して、長期間にわたって接着強度を維持できる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す積層シート用接着剤組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリオール(A)、及び、1分子中に平均2.5〜7個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)を含有してなる積層シート用接着剤組成物であって、
ポリオール(A)の数平均分子量が、5,000〜50,000であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が、−85〜−35℃であることを特徴とする積層シート用接着剤組成物に関する。
【0012】
又、第二の発明は、ポリオール(A)が、ポリカーボネート構造を有するポリオール、ポリエーテル構造を有するポリオール、及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール(A−1)を含むことを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0013】
又、第三の発明は、ポリオール(A)100重量%中の50重量%以上が、前記ポリオール(A−1)であることを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0014】
又、第四の発明は、ポリオレフィン構造を有するポリオール、及びフルオロオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれるポリオール(C)を含むことを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0015】
又、第五の発明は、ポリオール(A)100重量部に対して、ポリオール(C)を5〜30重量部、含むことを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0016】
又、第六の発明は、ポリオール(A)100重量部に対して、エポキシ樹脂(D)を20〜50重量部含むことを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0017】
又、第七の発明は、エポキシ樹脂(D)の数平均分子量が、300〜5,000であることを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0018】
又、第八の発明は、ポリオール(A)100重量部に対して、シランカップリング剤(E)を0.1〜5重量部含むことを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0019】
又、第九の発明は、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基濃度が、10〜30重量%であることを特徴とする前記積層シート用接着剤組成物に関する。
【0020】
又、第十の発明は、前記積層シート用接着剤組成物を用いた積層体に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の積層シート用接着剤組成物を積層シートの接着剤に使用することにより、プラスチックフィルム未処理面に対して、プラスチック、金属等の他の基材と強固且つ長期耐久性のある接着を施すことができ、更に詳細には、プラスチックフィルム未処理面と他の基材とを接着したシートの屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して、長期間にわたって接着強度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の積層シート用接着剤組成物は、ポリオール(A)のガラス転移温度を、一般的な接着剤に使用されているポリオールよりも低く(−85〜−35℃)することにより、ポリオール(A)を主成分とする接着剤組成物を用いプラスチックフィルム未処理面を他の基材と接着した際に、十分な接着力を得ることができる。これは、ポリオール(A)のガラス転移温度を、一般的な接着剤に使用されているポリオールよりも低くすることにより、ポリオール(A)の分子レベルでの運動が活発になり、基材への濡れや投錨効果が向上し接着力が上がるためと考えられる。更に、接着組成物中のポリイソシアネート(B)が、ポリオール(A)を架橋することにより、十分な凝集力を得ることができる。
【0023】
更に、本発明のポリオール(A)の数平均分子量を、5,000以上にすることにより、初期凝集力が高くなり、50,000以下にすることにより、溶剤への溶解性が高く、接着剤の粘度も適度になる。ポリオール(A)の数平均分子量は、接着剤の塗工性(取り扱い性)及び初期接着力の観点から、8,000〜30,000が、より好ましい。8,000未満だと初期凝集力が不足する場合があり、ラミネート時にトンネリングを生じる場合がある。30,000を超えると、初期凝集力は十分であるが、塗工粘度が高くなり、塗装方法が限定される場合がある。
【0024】
ポリオール(A)のガラス転移温度が、−85〜−35℃の時、分子レベルでの運動が活発で濡れと投錨効果が良く、ポリイソシアネート(B)による架橋による凝集力が十分に得られ、高い接着力と耐久性を示す。
【0025】
本発明の積層シート用接着剤組成物は、数平均分子量が5,000〜50,000であり、且つガラス転移温度(Tg)が−85〜−35℃であるポリオール(A)、及び、1分子中に平均2.5〜7個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)、必要に応じて、ポリオレフィン構造を有するポリオール、及びフルオロオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれるポリオール(C)、エポキシ樹脂(D)、並びに、シランカップリング剤(E)を含んでなる積層シート用接着剤組成物である。
【0026】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算数平均分子量が、5,000〜50,000であり、且つ、ガラス転移温度(Tg)が、−85〜−35℃であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、又はアクリルポリオール等のポリオールが挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0027】
更に、前記ポリオールの1種又は2種以上のハイブリッドポリオールも挙げることができる。ハイブリッドポリオールとしては、数平均分子量が、5,000〜50,000であり、且つ、ガラス転移温度(Tg)が、−85〜−35℃であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、又はポリカーボネートポリエステルポリオール等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0028】
この中でも、接着力、耐久性、及び作業性の観点から、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、又はアクリルポリオールが好ましい。
【0029】
又、特に、耐久性(特に耐湿熱性)の観点から、ポリオール(A)が、ポリカーボネート構造を有するポリオール、ポリエーテル構造を有するポリオール、及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール(A−1)を含むことが好ましい。
【0030】
ポリオール(A−1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、又はポリカーボネートポリウレタンポリオール等が挙げられる。
【0031】
又、ポリオール(A)100重量%中の50重量%以上が、ポリオール(A−1)であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリオール(A)のガラス転移温度(Tg)は、ポリオール(A)の前駆体の選択により、−85〜−35℃に調整することができる。尚、本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)により得られる値である。
【0033】
ポリエステルポリオールは、前駆体として、ポリカルボン酸とポリオールとから、ポリウレタンポリオールは、前駆体として、ポリイソシアネートとポリオールとから合成される。
【0034】
ポリエステルポリオールの前駆体である、ポリカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、若しくはセバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;
イタコン酸、若しくはマレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;
1、4−シクロヘキサンジカルボン酸等の環状脂肪族ジカルボン酸;
ダイマー酸、又は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレン酸ジカルボン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、前記飽和脂肪族ジカルボン酸の使用量を調整することで、ポリエステルポリオールのガラス転移温度を、−85〜−35℃にすることができる。
【0035】
ポリウレタンポリオールの前駆体である、ポリイソシアネートとしては、後述するポリイソシアネート(B)と同じものが使用できるが、ポリウレタンポリオールのガラス転移温度を、−85〜−35℃に調節するには、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、又はビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン等の脂肪族ジイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0036】
ポリエステルポリオール又はポリウレタンポリオールの前駆体である、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、若しくは2−メチル−1,8−オクタンジオール等の飽和脂肪族ジオール;
グリセリン、トリメチロールプロパン、若しくはペンタエリスリトール等の、3官能以上の飽和脂肪族ポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール、若しくは1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状脂肪族ジオール、又は、ビスフェノールA、若しくはビスフェノールF等の芳香族ジオール等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、前記飽和脂肪族ジオールの使用量を調整することで、ポリエステルポリオールのガラス転移温度を、−85〜−35℃にすることができる。
【0037】
又、ポリエステルポリオール又はポリウレタンポリオールの前駆体である、ポリオールとして、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリオレフィンポリオールを用いることにより、ポリカーボネートポリエステルポリオール、若しくはポリカーボネートポリウレタンポリオール、又は、ポリエーテルポリエステルポリオール、若しくはポリエーテルポリウレタンポリオールを得ることができる。
【0038】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、又は2−メチル−1,8−オクタンジオール等のジオール1種又は2種以上をベースにしたポリカーボネートポリオールが挙げられ、市販品としては、例えば、宇部興産社製エタナコールUH−50、UH−100、UH−200、UH−300、UHC50−200、UHC50−100、若しくはUC−100、クラレ社製クラレポリオールC−2090、C−2090R、若しくはC−3090、ダイセル社製プラクセルCD205、CD205PL,CD205HL、CD210、CD210PL、CD220、CD220PL、又は、旭化成社製ポリカーボネートジオールT6002、T6001、T5651、T5650J、T4671、T4672、T4692、若しくはT4691等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。前記ポリカーネートポリオールの内、数平均分子量5,000〜50,000でガラス転移温度が−85〜−35℃のもの、又は、それを前駆体として得られる、上記数平均分子量およびガラス転移温度を有するポリカーボネートポリエステルポリオール、若しくはポリカーボネートポリウレタンポリオールは、ポリオール(A−1)の内、ポリカーボネート構造を有するポリオールとして、使用することができる。
【0039】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。耐久性(特に耐湿熱性)の観点からポリテトラメチレングリコールが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの内、数平均分子量5,000〜50,000でガラス転移温度が−85〜−35℃のもの、又は、それを前駆体として得られる、上記数平均分子量及びガラス転移温度を有するポリエーテルポリエステルポリオール、若しくはポリエーテルポリウレタンポリオールは、ポリオール(A−1)の内、ポリエーテル構造を有するポリオールとして、使用することができる。
【0040】
ポリオール(A)において、加水分解性が比較的高いエステル結合を少なくすることにより、即ち、ポリエステル構造を少なくすることにより、耐湿熱性を向上させることができる。又、飽和脂肪族ポリカーボネートポリオール、又は飽和脂肪族ポリエーテルポリオールを使用して、ガラス転移温度が低い飽和脂肪族ポリカーボネート構造、又は飽和脂肪族ポリエーテル構造を多くすることにより、耐湿熱性が向上するだけでなく、プラスチックフィルム未処理面を他の基材と接着した際に、十分な接着力を得ることができる。
【0041】
ポリオールの水酸基と、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートのカルボキシル基及び/又はイソシアネート基との反応は、公知の方法、反応条件、反応触媒、及び反応溶剤等により行うことができる。
【0042】
アクリルポリオールは、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、水酸基を有しないエチレン性不飽和単量体とを、アクリル系単量体を主成分にして共重合することによって得ることができる。
【0043】
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル又はメタクリロイル」、「アクリル又はメタクリル」、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシ」、又は「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を表すものとする。
【0044】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。又、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ−バレロラクトン、(ポリ)ε−カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12−ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。
【0045】
水酸基を有しないアクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、又はエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、あるいは、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、又はアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0046】
又、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ε−カプロラクトン付加アクリル酸、ε−カプロラクトン付加メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸等からなる群から1種又は2種以上を選択することができる。
【0047】
又、リン酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることもできる。リン酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、上記水酸基含有エチレン性不飽和単量体の水酸基にたとえば五酸化リンやポリリン酸等のリン酸エステル化剤を反応せしめることで得ることができる。
【0048】
又、前記アクリル系単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、又はα−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、あるいは、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類が挙げられる。アクリル系単量体以外の前記単量体を、前記アクリル系単量体と併用することもできる。
【0049】
本発明に好適なアクリルポリオールを得る方法としては、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等、公知の方法が使用できる。このうち、フリーラジカル重合又はリビングラジカル重合が好ましい。
【0050】
フリーラジカル重合法の場合は、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤としては例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。反応温度は好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜110℃、反応時間は好ましくは3〜30時間、より好ましくは5〜20時間である。
【0051】
リビングラジカル重合法は一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、更には、重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂を合成できる。
【0052】
中でも、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、広範囲の単量体に適応できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できる点で好ましい。原子移動ラジカル重合法は、下記の参考文献1〜8等に記載された方法で行うことができる。
(参考文献1)Fukudaら、Prog.Polym.Sci.2004,29,329
(参考文献2)Matyjaszewskiら、Chem.Rev.2001,101,2921
(参考文献3)Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
(参考文献4) Macromolecules 1995,28,7901,Science,1996,272,866
(参考文献5)WO96/030421
(参考文献6)WO97/018247
(参考文献7)特開平9−208616号公報
(参考文献8)特開平8−41117号公報
【0053】
ブロックポリマーは、予めある単量体だけを重合し、別途他の単量体だけを重合してそれぞれのポリマーのブロックを事前に準備し、それを反応させるブロック重合法により得られる。
【0054】
上記重合には溶剤を用いることが好ましい。溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が用いられる。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0055】
本発明に好適なアクリルポリオール中に存在する水酸基の量は、特に限定されるものではないが、接着力とその耐久性の観点から、水酸基価が、5〜20mgKOH/gが好ましい。
【0056】
ガラス転移温度(Tg)が−85〜−35℃のアクリルポリオールは、例えば、ブチルアクリレート、又は2−エチルヘキシルアクリレート等の、それ自身のホモポリマーのガラス転移温度が低いアクリル系単量体の量を調節して(増やして)共重合することによって調節することができる。
【0057】
又、アクリルポリオールの分子量は、全単量体に対する開始剤量、重合温度、重合溶剤等によって、数平均分子量5,000〜50,000に調節することができる。
【0058】
前記アクリルポリオールは、数平均分子量が、5,000〜50,000、且つ、ガラス転移温度が、−85〜−35℃なので、プラスチック未処理面を他の基材と接着した際に、十分な接着力を得ることができる。更に、他の樹脂系に比べて、耐候性にも優れるだけでなく、主鎖に加水分解性が高いエステル結合がないため、耐湿熱性に優れ、太陽電池裏面シート等、屋外で使用する積層シート用層間接着剤として好ましく、ポリオール(A−1)の内、アクリルポリオールとして、使用することができる。
【0059】
ポリオール(A)は、2種類以上の異なるポリオールを反応させて用いることもできる。この場合、多種類のポリオールの異なるそれぞれの良好な特性を得られる可能性があり、より良好な特性を持つ接着剤組成物を得ることができる。
【0060】
ポリオール(A)100重量%中の50重量%以上が、前記ポリオール(A−1)であることによって、ポリオール(A)の主鎖中の加水分解性が高いエステル結合を少なくすることができ、優れた耐湿熱性を得ることができる。
【0061】
尚、下記で説明するポリオレフィン構造を有するポリオール、及びフルオロオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれる1種類以上のポリオール(C)は、数平均分子量が5,000〜50,000であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が−85〜−35℃であっても、ポリオール(A)には含まれないものとする。
【0062】
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)は、以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートから誘導された化合物を好ましく用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートから誘導された化合物、即ち、前記ジイソシアネートヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上で使用できる。中でも、屋外用途にも使用されるために、経時的な黄変を低減させる目的で、脂肪族若しくは脂環族イソシアネート、又はその誘導体を用いることが好ましい。又、その中でもイソホロンジイソシアネートの誘導体もしくは、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体を用いることが特に好ましく、更に初期凝集力を出すという観点から鑑みると、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体を用いることが好ましい。
【0063】
ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の数は、1分子中、平均して2.5〜7個であり、好ましくは2.7〜3.7個である。2.5個より少ないと、接着剤としての凝集力を得るために十分な架橋量を得ることができず、結果十分な接着力や長期耐久性を得ることができない。7個より多いと、接着剤の架橋密度が高くなりすぎ、ラミネート時の密着性が低下する。又、ポットライフが非常に短くなり使用が困難となる。
【0064】
又、ポリイソシアネート(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する。)、又は、HDI及びイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する。)から誘導されたポリイソシアネートであることが望ましい。HDI又はIPDI以外では、キシリレンジイソシアネート(以下XDIと略記する。)、又はビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(以下、H12MDIと略記する。)等があるがXDIは反応性が高すぎ、ポットライフが短くなり、H12MDIは皮膚刺激性に問題が発生する場合がある。芳香族系のイソシアネートは、屋外での黄変に問題が発生する場合がある。
【0065】
又、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基濃度が、10〜30重量%であることが好ましく、11〜25重量%であることがさらに好ましい。尚、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基濃度は、滴定法により求めることができる。
【0066】
又、ポリイソシアネート(B)の使用量は、ポリオール(A)100重量部に対して、7〜35重量部であることが好ましく、更に10〜25重量部であることが好ましい。7重量部未満だと、屋内外暴露後の接着力が低下する場合がある。又、35重量部を超えると初期の接着力が低下する場合がある。
【0067】
<ブロック化剤>
ブロック化剤は、塗工時の経時安定性を向上させるために、あるいは、プラスチックフィルム未処理面を他の基材と接着した際に、初期すなわち屋内外暴露前の接着力、凝集力と、ブロック剤を外すための熱処理を施した後の屋内暴露耐性を両立させるために、ポリイソシアネート(B)の中のイソシアネート基の一部を変性するために使用する化合物である。変性する割合としては、ポリイシシアネート(B)100重量%中の20〜80重量%がブロック化剤で変性されていることが好ましく、30〜70重量%ブロック化剤で変性されているとより好ましく、35〜65重量%がブロック化剤で変性されていると更に好ましい。20重量%未満だと、熱処理を施した後の屋内暴露耐性が十分得られない場合がある。一方、80重量%より多いと、初期すなわち熱処理前の十分な接着力、凝集力が得られない場合がある。
【0068】
ブロック化剤としては、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、ピラゾール系化合物、マロン酸ジエステル、及びアセチル化されたケトン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましいが、これらに限定されるものではなくポリイソシアネート(B)と反応し、且つその後熱処理することで乖離する物であれば良い。前記化合物は、プラスチック基材に用いる場合、熱処理によるプラスチック基材の劣化を抑制するために好ましく使用される。ピラゾール系化合物としては、例えば、1,2−ピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール等が挙げられる。マロン酸ジエステルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル等が挙げられる。アセチル化されたケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0069】
又、本発明の接着剤組成物を、太陽電池裏面保護シート等の太陽電池パネル材用保護シートに使用する場合、太陽電池製造工程において、140℃程度の熱で15分から30分程度熱処理されるので、本熱処理条件でブロック剤が外れやすいメチルエチルケトンオキシム、1,2−ピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系化合物、マロン酸ジエチル、アセチルアセトンが特に好ましい。
【0070】
<ポリオール(C)>
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィンフィルム、又はフッ素樹脂フィルムの様な、表面の極性が低い難接着性プラスチックフィルム面への接着性の観点から、更に、ポリオレフィン構造を有するポリオール、及びフルオロオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれる1種類以上のポリオール(C)を含むことが好ましい。ポリオレフィンフィルムに対しては、ポリオレフィン構造を有するポリオールを、又は、フッ素樹脂フィルムに対してはフルオロオレフィン構造を有するポリオールを含むことがより好ましい。
【0071】
ポリオレフィン構造を有するポリオールとしては、ポリエチレン両末端ジオール、ポリプロピレン両末端ジオール、水素添加ポリブタジエン両末端ジオール、水素添加ポリイソプレン両末端ジオール、又はその他のポリオレフィンポリオールが挙げられる。
【0072】
前記その他のポリオレフィンポリオールとしては、特に制限はないが、エチレン、プロピレン、炭素数4〜8個のα−オレフィン、又は炭素数2〜8個のアルキルビニルエーテル等のオレフィンと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、又は6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
【0073】
ポリオレフィン構造を有するポリオールのポリオレフィンフィルム面に対する接着性、ポリオール(A)との相溶性、及び溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が20〜100KOHmg/gである、水素添加ポリブタジエン両末端ジオール、水素添加ポリイソプレン両末端ジオール、又は前記その他のポリオレフィンポリオールが好ましい。
【0074】
水素添加ポリブタジエン両末端ジオールとしては、例えば、出光興産社製エポール、又は、日本曹達社製GI−1000、GI−2000、若しくはGI−3000等が挙げられ、あるいは、前記その他のポリオレフィンポリオールとしては、例えば、三井化学社製ユニストールP−801、若しくはP−901が挙げられる。
【0075】
又、末端水酸基タイプのポリオレフィンジオールは、数平均分子量が小さいものが多いため、ポリール(A)の前駆体と同様に、ポリカルボン酸又はポリイソシアネート等を反応させ、高分子量化して使用することもできる。
【0076】
フルオロオレフィン構造を有するポリオールとしては、例えば、フロロオレフィンと、ヒドロキシアルキルビニルエーテルと、アルキルビニルエーテルとの共重合体が挙げられる。
【0077】
前記フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、又は、トリフルオロメチル・トリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチル・トリフルオロビニルエーテルもしくは、ヘプタフルオロプロピル・トリフルオロビニルエーテル等のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテル等があげられるが、共重合体のフッ素系樹脂フィルム面に対する接着性、ポリオール(A)との相溶性、及び溶剤溶解性の観点から、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび(パー)フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル(但し炭素数1〜18)が好ましい。
【0078】
前記ヒドロキシアルキルビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0079】
前記アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等の置換基を有さないアルキルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、若しくはフェニルエチルビニルエーテル等のヒドロキシ基以外の置換基を有するアルキルビニルエーテル類、又は、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、若しくはメチルシクロヘキシルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類等が挙げられる。
【0080】
共重合体のフッ素系樹脂フィルム面に対する接着性、ポリオール(A)との相溶性、及び溶剤への溶解性の観点から、水酸基価 30〜120KOHmg/gである、フルオロオレフィンと、ヒドロキシアルキルビニルエーテル及びアルキルビニルエーテル等のビニルエーテルとの交互重合体が好ましい。
【0081】
市販品としては、例えば、旭硝子社製ルミフロンLF200、LF302、LF400、LF600、LF600X、LF800、LF906N、LF910LM、LF916N、LF936、又はLE9010等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0082】
ポリオール(C)を含む本発明の接着剤は、ポリオレフィンフィルム、又はフッ素樹脂フィルム等の難接着プラスチックフィルム面に対して有効である。ポリオール(A)100重量部に対する、ポリオール(C)の添加量は、難接着性のプラスチックフィルム面に対する接着性及び耐久性の観点から、5〜30重量部が好ましい。5重量部未満では、接着力が不十分である場合があり、30重量部を超えると、ポリオール(A)との相溶性が悪く、耐久性も悪くなる場合がある。
【0083】
<エポキシ樹脂(D)>
本発明の積層シート用接着剤組成物は、接着性及び耐加水分解性の観点から、ポリオール(A)中のエステル結合が加水分解して生成するカルボキシル基と反応する樹脂として、エポキシ樹脂(D)を含有させることが好ましい。エポキシ樹脂(D)は、耐湿熱性を向上させる効果がある。
【0084】
エポキシ樹脂(D)としては、以下に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、1,6−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレンオキサド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン変性フタル酸、エピクロルヒドリン変性ヘキサヒドロフタル酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの1種類、又は2種類以上を使用することができる。2液型接着剤組成物の成分として用いる場合は、ポリオール(A)と一緒に、主剤として用いるのが好ましい。
【0085】
エポキシ樹脂(D)の中でも、接着力及び耐湿熱性の観点から、数平均分子量300〜5,000のエポキシ樹脂が、好ましい。数平均分子量300〜5000のエポキシ樹脂としては、例えば、市販品としては、以下に限定するものではないが、ジャパンエポキシレジン社製、エピコート825、827、828、834、1001、1002、1003、1055、1004、1007、806、807、若しくは4004シリーズ、東都化成(株)製、YD−127、YD−128、YD−115、YD−134、YD−011、YD−012、YD−013、YD−014、YD−017、YD−019、アデカ社製、アデカレジンEP−4100、4300、4340、4200、4400、4500、4510、4520、4530、4901、4930、4950、5100、4000、4005、1307、4004、4080、若しくは4092シリーズ、又は、DIC社製、エピクロン152、153、1121N、1123N、N−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−660、N−672、N−662、N−655、N−673、850、830、4032、7120、7015、若しくは7200シリーズ等が挙げられる。
【0086】
エポキシ樹脂(D)の配合量は、接着力及び耐湿熱性の観点から、ポリオール(A)100重量部に対して、20〜50重量部が好ましい。更に好ましくは、20〜40重量部である。20重量部未満では耐湿熱性の向上効果が十分でなく、50重量部を超えると、接着剤が硬くなり、接着性が低下する場合がある。
【0087】
<シランカップリング剤(E)>
本発明の積層シート用接着剤組成物は、金属箔、金属板、又は金属蒸着フィルム等を基材として使用する場合、接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤(E)を含有させることが好ましい。
【0088】
シランカップリング剤(E)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及びγ−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロキシシラン類;
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類;
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;
並びに、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。尚、「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」又は「メタクリロキシ」を意味する。
【0089】
シランカップリング剤(E)の添加量は、ポリオール(A)100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、1〜3重量部であることがより好ましい。0.1重量部未満では、シランカップリング剤を添加することによる金属箔に対する接着強度向上効果に乏しく、5重量部以上添加しても、それ以上の性能の向上は認められない場合がある。
【0090】
本発明の積層シート用接着剤組成物は、主剤と硬化剤とを使用時に混合する、いわゆる2液混合タイプの接着剤であってもよいし、主剤と硬化剤とが予め混合された1液タイプの接着剤であってもよい。更に、複数の主剤及び/又は複数の硬化剤を使用時に混合するタイプであってもよい。通常、主剤は、ポリオール(A)、必要に応じて、その他のポリオール、シランカップリング剤(E)、エポキシ樹脂(D)、有機溶剤、その他の添加剤を含み、硬化剤は、ポリイソシアネート(B)、必要に応じて、ブロック化剤によりブロック化されたポリイソシアネート、有機溶剤、その他の添加剤を含む。
【0091】
必要に応じて、ポリオール(A)以外のその他のポリオールとして、ポリオール(A)の前駆体として挙げた上記ポリオールを使用することができる。
【0092】
その他の添加剤としては、金属密着を向上させるために、リン酸系化合物、例えば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸や、それらのエステル等を添加することができる。
【0093】
又、本発明の接着剤組成物は、太陽電池積層シート用アンカーコート剤としても用いることができる。その場合、アンチブロッキング剤を入れることが好ましい。
【0094】
その他、接着剤用として公知の添加剤を、主剤に配合することができ、例えば、反応促進剤を使用することができる。具体的には、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;
1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;
トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0095】
ラミネート外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤又は消泡剤を、主剤に配合することもできる。
【0096】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン、又はそれらの混合物等公知のものが挙げられる。
【0097】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物、又はそれらの混合物等の公知のものが挙げられる。
【0098】
硬化剤としては、上記ポリイソシアネート(B)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意に、周知のオキサゾリン化合物、例えば、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、若しくは2,2−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、又は、ヒドラジド化合物、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、若しくはアジピン酸ジヒドラジド等を含むことができる。
【0099】
又、本発明の積層シート用接着剤組成物は、公知の有機溶剤を含有させ、有機溶剤溶液として使用することができる。有機溶剤としては、以下に限定されるものではなく、酢酸エチル、若しくは酢酸ブチル等のエステル系溶剤、又は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、若しくはシクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0100】
本発明に係る接着剤組成物を用いて多層フィルムを製造するには、通常用いられている方法を採用できる。例えば、一方のプラスチックフィルムの片面に、コンマコーターやドライラミネーターによって接着剤組成物を塗布し、必要に応じて溶剤を揮散させた後、他方のラミネート基材と貼り合わせ、常温もしくは加温下で硬化させれば良い。ラミネート基材表面に塗布される接着剤量はドライ換算で、1〜50g/m2程度であることが好ましい。ラミネート基材としては、用途に応じて、任意の基材を、任意の数で選択することができ、3層以上の多層構成とする際には、各層の貼り合わせの全て、又は一部に本発明に係る接着剤組成物を使用できる。
【0101】
多層フィルムを製造する際に、本発明に係る接着剤組成物の優れた特徴を出すには、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、フッ素系フィルム等様々なフィルムの未処理面や、ポリプロピレン等のオレフィン基材等、一般の接着剤組成物では接着させることが極めて困難である基材やフィルム面に塗工、使用することが好ましい。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ表し、水酸基価の単位は、mgKOH/g、酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0103】
又、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。バインダー樹脂組成物を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取った。このときのピーク温度をガラス転移温度とし、表1に示した。
【0104】
製造例1<ポリオールa>
テレフタル酸15.0部、イソフタル酸15.0部、アジピン酸10部、セバシン酸60.0部、エチレングリコール45.0部、ネオペンチルグリコール30.0部、及び1,6−ヘキサンジオール40.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で反応し、酸価が15以下になったら反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止しとりだした。得られたポリエステルポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果、10,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−37℃であった。又、水酸基価は11.2、酸価は0.2であった。
【0105】
製造例2<ポリオールb>
分子量2,000のポリカーボネートジオール(株式会社クラレ製、C−2050)100部、ヘキサメチレンジイソシアネート6.7部を窒素雰囲気下、酢酸エチル100部中温度100℃で48時間攪拌しながら反応した。得られたポリカーボネートポリウレタンポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果、10,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−41℃であった。又、水酸基価は11.0、酸価は0.0であった。
【0106】
製造例3<ポリオールc>
分子量2,000のポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UH−200)100部、イソホロンジイソシアネート9.99部、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる化合物(三井化学株式会社製、タケネート D−160N)1部を窒素雰囲気下、150℃で8時間攪拌しながら反応した。得られたポリカーボネートポリウレタンポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果25,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−47℃であった。又、水酸基価は10.5、酸価は0.0であった。
【0107】
製造例4<ポリオールd>
分子量1,000〜3,000のポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学製、PTG−L)100部、ヘキサメチレンジイソシアネート7.98部、酢酸エチル20部を窒素雰囲気下、100℃で8時間攪拌しながら反応した。得られたポリエーテルポリウレタンポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果25,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−55℃であった。又、水酸基価は5.1、酸価は0.0であった。
【0108】
製造例5<ポリオールe>
イソフタル酸31.5部、アジピン酸27.7部、エチレングリコール7.1部、ネオペンチルグリコール15.8部、及び1,6−ヘキサンジオール17.9部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で1時間反応し、酸価を測定し、15以下になったら反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止しとりだした。得られたポリエステルポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果、10,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−18℃であった。又、水酸基価は11.2、酸価は0.2であった。
【0109】
製造例6<ポリオールf>
分子量3,000のポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UH−300)50部、分子量2,000のポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UH−200)50部、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる化合物(三井化学株式会社製、タケネート D−160N)7.34部を窒素雰囲気下、150℃で8時間攪拌しながら反応した。得られたポリカーボネートポリウレタンポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果7,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果−87℃であった。又、水酸基価は22.5、酸価は0.0であった。
【0110】
製造例7<ポリオールg>
コンデンサー、窒素導入管、滴下ロート、及び温度計を備えた4口フラスコに、酢酸エチル100重量部を仕込み、80℃に昇温し、ブチルアクリレート80重量部、エチルメタアクリレート10重量部、スチレン7.6重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.4重量部、及びアゾビスイソブチルニトリル0.5重量部をあらかじめ混合したモノマー液を、滴下ロートより2時間かけて滴下する。その後、1時間反応しアゾビスイソブチルニトリル0.1重量部を加えさらに1時間反応させる工程を、モノマーの転化率が98%以上になるまで行って、冷却し、固形分50%に調整した後、取り出す。得られたアクリルポリオールの数平均分子量は、GPC測定の結果49,000、ガラス転移温度は、DSC測定の結果、−35℃、水酸基価は9.0、酸価は0.0であった。
【0111】
製造例8<主剤1>
製造例1で得られたポリオールa 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート 0.005部、及び酢酸エチル 130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤1とする。
【0112】
製造例9<主剤2>
製造例2で得られたポリオールb 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート 0.005部、及び酢酸エチル 130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤2とする。
【0113】
製造例10<主剤3>
製造例3で得られたポリオールc 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及び酢酸エチル130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤3とする。
【0114】
製造例11<主剤4>
製造例4で得られたポリオールd 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及び酢酸エチル130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤4とする。
【0115】
製造例12<主剤5>
製造例5で得られたポリオールe 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及び酢酸エチル130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤5とする。
【0116】
製造例13<主剤6>
製造例5で得られたポリオールf 100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及び酢酸エチル130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤6とする。
【0117】
製造例14<主剤7>
製造例6で得られたポリオールg(50重量%溶液)200部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−012、数平均分子量1,300]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005、及び酢酸エチル30部を、70℃で加熱・溶解・混合した。酢酸エチルで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤7とする。
【0118】
製造例15<主剤8>
製造例3で得られたポリオールc 90部、ポリオレフィンポリオール[三井化学(株)製、ユニストールP−901 固形分22%トルエン溶液 水酸基価50(樹脂)]45.5部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−014、数平均分子量1,900]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及びトルエン74.5部を、70℃で加熱・溶解・混合した。トルエンで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤8とする。
【0119】
製造例16<主剤9>
製造例3で得られたポリオールc 90部、水素添加ポリブタジエン両末端ジオール[日本曹達(株)製、GI−3000、水酸基価25〜35]10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−014、数平均分子量1,900]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及びトルエン130部を、70℃で加熱・溶解・混合した。トルエンで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤9とする。
【0120】
製造例17<主剤10>
製造例3で得られたポリオールc 90部、フルオロオレフィン−(アルキルビニルエーテル−ヒドロキシアルキルビニルエーテル)共重合体[旭硝子(株)製、ルミフロンLF200固形分60%キシレン溶液、水酸基価52(樹脂)、]16.7部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成(株)製、YD−014、数平均分子量1,900]30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、及びキシレン123.3部を、70℃で加熱・溶解・混合した。キシレンで固形分を微調整して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤10とする。
【0121】
製造例18<硬化剤1>
平均6個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度18.9%のイソシアネート硬化剤[ジュラネートMHG80(旭化成社製)]15部、及び、平均3個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度12.0%のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)[EVONIK社(株)製 VESTANAT 1890E 固形分70%酢酸ブチル溶液]121.4部(固形分85部)を、混合し、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤1(イソシアネート基濃度13.0%(固形分))とする。
【0122】
製造例19<硬化剤2>
平均6個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度18.9重量%のイソシアネート硬化剤[ジュラネートMHG80(旭化成社製)]30部、及び、平均3個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度12.0%のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)[EVONIK社(株)製 VESTANAT 1890E 固形分70%酢酸ブチル溶液]100部(固形分70部)を、混合し、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤2(イソシアネート基濃度14.7%(固形分))とする。
【0123】
製造例20<硬化剤3>
平均3個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度12.0%のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)[EVONIK社(株)製 VESTANAT 1890E 固形分70%酢酸ブチル溶液]を、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤3(イソシアネート基濃度12.0%(固形分))とする。
【0124】
製造例21<硬化剤4>
平均2個のイソシアネート基を有し、イソシアネート基濃度8.6%のジフェニルメタン−4,4’−ジイシシアネートのプレポリマー[住化バイエルウレタン(株)製デスモジュールE22]を、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤3(イソシアネート基濃度8.6%(固形分))とする。
【0125】
<接着剤組成物>
実施例1〜16、及び比較例1〜7
製造例8〜17で得られた主剤1〜10と、製造例18〜21で得られた硬化剤1〜4とを下記表1の組合せに従って配合して接着剤組成物を得た。配合量は、主剤:硬化剤=100:15(重量比)で行った。
【0126】
表1に、実施例1〜16、比較例1〜7における主剤と硬化剤との組合せ、及びエージング後と85℃温水浸漬前後の接着力を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
<評価>
実施例、及び比較例の各接着剤組成物を用い、基材としてポリエチレンテレフタレート(表中ではPETと記載)フィルムの未処理面同士を張り合わせて、積層フィルム(ラミネート材)を作製し、エージング後の接着力の測定と耐湿熱性試験前後の接着力の測定をおこなった。表1中、接着強度の横にcfと記しているものは、接着力測定時に接着剤が凝集破壊を起こした物である。接着力が、実用域であっても凝集破壊するものは、耐熱性がないため熱処理時に張り合わせた基材がはがれたり、基材同士にずれが生じたりするため問題である。以下に具体的な評価方法を説明する。
【0129】
未処理ポリエステルフィルム[東レ(株)製、ルミラーX−10S、厚み250μm]に接着剤組成物を、乾燥塗布量:4〜5g/m2となる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、同じ未処理ポリエステルフィルムにラミネートした。その後、40℃、3日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させたのち、以下の試験を行った。
【0130】
得られた多層フィルムをガラス瓶に入れ、蒸留水で多層フィルム全体を浸漬し、容器を密閉した。これを85℃で10日間、20日間、及び30日間経時させ、屋外暴露時等における耐湿熱性試験とした。
【0131】
3日間の硬化(エージング)後、並びに、上記耐湿熱性試験、10日、20日、及び30日後に、上記各多層フィルムを200mm×15mmの大きさに切断し、6時間室温乾燥後、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。ポリエステルフィルム間の剥離強度(N/15mm巾)を、5個の試験片の平均値で示した。
【0132】
ポリオレフィンフィルム、及びフッ素樹脂フィルム[PVFフィルム]についても、上記と同様の多層フィルムを作成し、3日間の硬化(エージング)後、同様にT型剥離試験を行なった。
【0133】
評価は次の通りである。3日間の硬化(エージング)後、又は85℃の蒸留水で30日間経時させた後に、
・実用域 :2N/15mm以上かつ接着剤が凝集破壊を起こさない。
・実用不可:2N/15mm未満又は、接着剤の凝集破壊。
接着力が、2N/15mm以上あっても凝集破壊するものは、耐熱性がないため熱処理時に張り合わせた基材がはがれたり、基材同士にずれが生じたりするため問題である。
【0134】
表1に示されるように、実施例の接着剤組成物は、エージング後及び温水試験後の接着強度に優れ、長期にわたり接着強度を維持することができた。特この試験法は加水分解を促進させることから、屋外に放置する屋外暴露試験よりも、耐湿熱性に関しては厳しい試験法と考えられる。従って、これらの実施例の接着剤組成物は、屋外用途向けの長期耐湿熱性に優れていると考えられる。
【0135】
例えば、JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久試験方法)には、85℃85%RH下で1000時間に耐久すること、という耐湿性試験B−2が定められており、特に過酷な試験方法として知られている。本願においては85℃温水中での試験を行ったが、この試験はJIS C 8917に比べ過酷であり、長期の耐湿熱性を有するこれらの実施例の接着剤組成物は、多層構造を有する太陽電池裏面保護シートのシート層間に用いられる接着剤組成物として適していることを意味する。
【0136】
太陽電池裏面保護シートがこのような長期耐湿熱試験において、十分な層間接着強度(ラミネート強度)を保持し、シート層間にデラミネーションを発生させないことにより、太陽電池素子の保護、発電効率の維持、更に太陽電池の寿命延長に寄与することができる。太陽電池の寿命延長は、太陽電池システムの普及につながり、化石燃料以外でのエネルギー確保の観点から、環境保全に寄与することにもなる。
【0137】
本発明に係る接着剤組成物は、建造物など屋外産業用途向け多層積層材(防壁剤、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、証明保護材、自動車部材等)用の接着剤として強い接着強度を提供することができ、屋外暴露時に加水分解等による経時的な接着強度の低下を抑え、長期間にわたって強い接着強度を維持できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、及び、1分子中に平均2.5〜7個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)を含有してなる積層シート用接着剤組成物であって、
ポリオール(A)の数平均分子量が、5,000〜50,000であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が、−85〜−35℃であることを特徴とする積層シート用接着剤組成物。
【請求項2】
ポリオール(A)が、ポリカーボネート構造を有するポリオール、ポリエーテル構造を有するポリオール、及びアクリルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール(A−1)を含むことを特徴とする請求項1記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項3】
ポリオール(A)100重量%中の50重量%以上が、ポリオール(A−1)であることを特徴とする請求項2記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン構造を有するポリオール、及びフルオロオレフィン構造を有するポリオールからなる群から選ばれるポリオール(C)を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項5】
ポリオール(A)100重量部に対して、ポリオール(C)を5〜30重量部含むことを特徴とする請求項4記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項6】
ポリオール(A)100重量部に対して、エポキシ樹脂(D)を20〜50重量部含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂(D)の数平均分子量が、300〜5,000であることを特徴とする請求項6記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項8】
ポリオール(A)100重量部に対して、シランカップリング剤(E)を0.1〜5重量部含有することを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項9】
ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基濃度が、10〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜8いずれか記載の積層シート用接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の積層シート用接着剤組成物を用いた積層体。

【公開番号】特開2011−111519(P2011−111519A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268515(P2009−268515)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】