説明

積層フィルム、及びその製造方法

【課題】 液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる偏光板保護フィルムなどの光学用途に使用される積層フィルムについて、物性、及び光学特性を劣化させることなく、塗布性の改良された積層フィルム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルム基材表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる偏光板の保護フィルムなどの光学用途に使用される透明樹脂フィルムでは、様々な機能を持たせるために幾つかの機能性薄膜層が、透明樹脂フィルムの表面上に塗設されている。機能性薄膜としては、例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層、あるいは防眩層、反射防止層などである。
【0003】
上記偏光板の保護フィルムの基材として、セルロースエステルフィルムが広く用いられている。このような偏光板の保護フィルムとして使用されるセルロースエステルフィルム、とりわけセルローストリアセテート(TAC)フィルムへの機能付加によって、安価で、視野角拡大や反射防止性能を付与できることから、高付加価値偏光板保護フィルムの需要が高まっており、そのなかで、TAC表面への塗布加工性(塗布液塗れ性)の制御は重要な課題となってきている。
【0004】
下記の特許文献1には、ウェブまたはシート等の基材に付着している塵埃を、該基材の搬送中に除去する除塵方法において、搬送中の基材に接触して該基材に付着している塵埃を除去する接触除塵工程と、前記接触除塵工程により塵埃が除去された後の搬送中の基材を除電する除電工程と、前記除電工程により除電された後の搬送中の基材に付着している塵埃を該基材に非接触で除去する非接触除塵工程とを有する除塵方法が開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、金属あるいは金属酸化物被覆フィルムの製造工程において、金属あるいは金属酸化物を被覆する基材フィルムの表面を、あらかじめ、1基以上の粘着ロールを用いて、基材フィルムの表面に付着している塵埃を、被覆する直前に連続的に除去しながら、金属あるいは金属酸化物を基材フィルムに被覆する、金属あるいは金属酸化物被覆フィルムの製造装置が開示されている。 下記の特許文献3には、フィルムの表面の付着物を取り除く除塵機構であって、上記フィルムが巻回された巻き出し部及び/又は上記フィルムが巻回された巻き取り部において、上記フィルムの巻回体に粘着ロールを接触させる、除塵機構が開示されている。
【0006】
下記の特許文献4には、フィルムの表面の付着物を取り除く除塵機構であって、上記フィルムを走行させるガイドロールに対して、該ガイドロールの反対側から圧接させる粘着ロールを有する、除塵機構が開示されている。
【特許文献1】特開2003−103224号公報
【特許文献2】特開平6−299321号公報
【特許文献3】特開2001−335212号公報
【特許文献4】特開2002−123933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の従来法によれば、いずれの場合も、ある程度の大きさの異物なら、フィルム基材との接着力が弱いため、粘着ロール単体での除去が可能であるが、微小な異物になると、異物とフィルム基材間のいわゆるファンデルワールス力が強まるため、粘着ロール単体では除去できないという問題があった。
【0008】
また一般に、光学フィルムに用いられる積層フィルムでは、多層薄膜塗布を行なうことが多く、最近では、最表層の膜厚が0.1ミクロンオーダーと非常に薄いため、微小な異物でも塗布欠陥になることが多く、最表層の塗布を行なう直前に粘着ロールで異物を除去することが欠陥低減に最も効果的である。
【0009】
しかしながら、従来は、塗布ムラの軽減のため、レベリング剤を塗布液に配合して用いることが多く、その場合、膜中に組み込まれなかったレベリング剤が、粘着ロールに転写し、粘着力の低下を引き起こして、安定した異物除去ができず、従って、異物の除去効率が低下し、ひいては積層フィルムの生産性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、物性、及び光学特性を劣化させることなく、塗布性の改良された積層フィルム、及びその製造方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、樹脂フィルム基材上の異物を除去する方法として、粘着性ゴムロール(以下、クリーニングロールとも言う)で異物(特に有機物)を除去する前工程に、樹脂フィルム基材を大気圧プラズマ表面処理(AGP:Atmospheric Glow Plasma)などによって表面処理を行なうことで、樹脂フィルム基材表面と、異物との結合力を弱めることができ、これによって異物を除去する効率が飛躍的に向上し、かつ持続できて、粘着性ゴムロールを単体で使用する場合よりも優れた効果を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、樹脂フィルム基材表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去することを特徴としている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、粘着性ゴムロールを、樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に対して、フリースパンの状態で使用することを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法であって、粘着性ゴムロールに対する樹脂フィルム基材および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度を、粘着性ゴムロールの接線方向に対し、5度以上、30度以下の範囲とすることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法であって、樹脂フィルム基材表面に塗布される薄膜層が、バックコート層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、接合用中間層、または光学異方性層よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの層であることを特徴としている。
【0016】
請求項5の積層フィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法により製造されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、樹脂フィルム基材表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去するにもので、請求項1の発明によれば、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面と、異物との接着力を弱めることができ、これによって異物を除去する効率が飛躍的に向上し、かつ持続できて、粘着性ゴムロールを単体で使用する以上の効果を得ることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、粘着性ゴムロールを、樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に対してフリースパンの状態で使用するもので、請求項2の発明によれば、より一層、樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面と、異物との接着力を弱めることができ、これによって異物を除去する効率が飛躍的に向上し、かつ持続できて、粘着性ゴムロールを単体で使用する以上の効果を得ることができるという効果を奏する。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法であって、粘着性ゴムロールに対する樹脂フィルム基材および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度を、粘着性ゴムロールの接線方向に対し、5度以上、30度以下の範囲とするもので、請求項3の発明によれば、樹脂フィルム基材表面および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層と、異物との接着力を弱めることができ、これによって異物を除去する効率が飛躍的に向上し、かつ持続できて、粘着性ゴムロールを単体で使用する以上の効果を得ることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法であって、樹脂フィルム基材表面に塗布される薄膜層が、バックコート層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、接合用中間層、または光学異方性層よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの層である。
【0021】
請求項5の積層フィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法により製造されたもので、請求項5の積層フィルムの発明によれば、異物欠陥のきわめて少ない高品質の光学フィルムとして使用可能な積層フィルムを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明による積層フィルムの製造方法は、樹脂フィルム基材表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去することを特徴としている。
【0024】
図1は、本発明の積層フィルムの製造方法を実施する第1実施形態を示すフローシートで、大気圧プラズマ照射装置を用いた場合の例である。
【0025】
ここで、同図に示すように、粘着性ゴムロール(2)は、樹脂フィルム基材(1)表面および/または処理後の下部薄膜層表面に対してフリースパンの状態で使用することが好ましい。
【0026】
また、粘着性ゴムロール(2)に対する樹脂フィルム基材(1)および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度(θ)は、粘着性ゴムロール(2)の接線方向に対し、5度以上、30度以下の範囲とすることが好ましい。
【0027】
ここで、樹脂フィルム基材(1)および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度(θ)が、粘着性ゴムロール(2)の接線方向に対し、5度未満であれば、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層と、粘着性ゴムロール(2)との幅手方向の接触分布が確保できず、異物除去の作用効果が幅手方向にバラつくので、好ましくない。また、樹脂フィルム基材(1)および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度(θ)が、粘着性ゴムロール(2)の接線方向に対し、30度を超えると、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層と、粘着性ゴムロール(2)との剥離帯電が大きくなり、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層への異物の再付着が発生するので、好ましくない。
【0028】
なお、上記のように、粘着性ゴムロール(2)は、樹脂フィルム基材(1)表面および/または処理後の下部薄膜層表面に対して、フリースパンの状態で使用することが好ましいが、粘着性ゴムロール(2)を、搬送ロールをバックロールとして、樹脂フィルム基材(1)に接触させる、いわゆるバックロール方式で用いる場合もある。
【0029】
さらに、粘着性ゴムロール(2)は、1.0×1013Ω以下、好ましくは1.0×10 Ω以上、1.0×1013Ω以下の表面比電気抵抗値(表面固有抵抗値)を有する導電性ゴムロールであることが好ましい。
【0030】
ここで、粘着性ゴムロール(2)の表面比電気抵抗値が、1.0×1013Ωを超えると、粘着性ゴムロール(2)と、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層との剥離帯電が粘着性ゴムロール(2)に蓄積されていき、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層への異物の再付着が発生するので、好ましくない。
【0031】
本発明による積層フィルムの製造方法において、樹脂フィルム基材(1)表面に塗布される薄膜層は、バックコート層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、接合用中間層、または光学異方性層よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの層である。
【0032】
本発明においては、樹脂フィルム基材(1)上の異物を除去する方法として、粘着性ゴムロール(2)で異物(特に有機物)を除去する前工程に、樹脂フィルム基材(1)を大気圧プラズマ(AGP)照射装置(10)によって表面処理を行なうことで、樹脂フィルム基材(1)表面と、異物との結合力を弱め、これによって異物を除去する効率が飛躍的に向上し、かつ持続できて、粘着性ゴムロール(2)を単体で使用する場合よりも優れた効果を得ることができる。
【0033】
ここで、使用する大気圧プラズマ装置(10)は、対向する電極間に、高周波電圧を印加して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面と異物との結合力を弱め、とりわけ有機系異物を反応性ガスにより分解させることによって、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層と異物の接触面積を低下させ、結合力を弱め、これによって異物を除去する。
【0034】
また、多層薄膜塗布において、膜中に組み込まれなかったレベリング剤等の表面抽出物を反応性ガスにより分解することによって、粘着性ゴムロール(2)への転写を抑制し、粘着性ゴムロール(2)の粘着力の低下を引き起こさないことによって、安定した異物除去を行なうことができる。
【0035】
大気圧プラズマ照射装置(10)には、被処理基盤をはさむように対向配置された電極間に高周波電力を加えて、供給ガスをプラズマ化するダイレクト式、プラナー式と呼ばれる方式と、反応ガスを高周波電圧が加えられた電極の間を通してプラズマ化するリモート式、ダウンストリーム式と呼ばれる方式があり、いずれの方式も本発明に使えるが、本発明の積層フィルムの製造方法では、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面の高エネルギー表面処理に、後者の方式を用いるのが望ましい。
【0036】
同図において、(a)、(b)は大気圧プラズマ照射装置(10)の対向電極、(g)は反応ガス、(1)は樹脂フィルム基材である。
【0037】
そして、大気圧プラズマ照射装置(10)によれば、高周波電圧が加えられた対向電極(a)、(b)間に、反応性ガス(g)を導入、通過させてプラズマ化し、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面に噴射供給し、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面と異物との結合力を弱め、とりわけ有機系異物を反応性ガスにより分解させることによって、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層と異物の接触面積を低下させ、結合力を弱め、これによって異物を除去する。
【0038】
また、多層薄膜塗布において、膜中に組み込まれなかったレベリング剤等の表面抽出物を反応性ガスにより分解することによって、粘着性ゴムロール(2)への転写を抑制し、粘着性ゴムロール(2)の粘着力の低下を引き起こさないことによって、安定した異物除去を行なう。
【0039】
本発明の実施形態においては、このようなハイパワーの電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ照射装置(10)に採用する必要がある。
【0040】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、さらに好ましくは、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。
【0041】
また、樹脂フィルム基材(1)であるセルロースエステルフィルム基材表面または該セルロースエステルフィルム基材の下部薄膜層表面を、プラズマに晒す場合には、誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B 0601)を10μm以下にすることで、誘電体の厚み、及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、さらに熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、かつポーラスでない高精度の無機誘電体を被覆することで、大きく耐久性を向上させることができるため、好ましい。
【0042】
また、プラズマの噴射供給を行なう吹出しスリットと、樹脂フィルム基材(1)表面または該樹脂フィルム基材の下部薄膜層表面との間隙(d)は、0.5〜10mmが好ましく、また0.5〜6mmがより好ましく、1〜4mmがさらに好ましい。近づけすぎると、樹脂フィルム基材(1)表面または該樹脂フィルム基材の下部薄膜層表面に接触、損傷させる危険があり、離しすぎると、異物除去の効果が弱くなる。
【0043】
また、反応ガス(g)には、窒素や酸素、アルゴン、ヘリウムなど種々のものが利用可能であるが、環境面、排気の後処理、ランニングコストの観点から、窒素が好ましく、さらには窒素に微量の酸素を混合する好ましい。酸素の混合比率
は、原料ガスの体積に対して2体積%以下が望ましい。
【0044】
また、表面処理層の形成用の原料ガス(g)として、例えばメチレンクロライドやアルコール類などの有機溶媒蒸気やアセチレンなどのモノマーガスを、前記の大気圧プラズマの反応性ガスの窒素、酸素に混合させて導入しても良い。混合比率は、窒素と酸素の合計体積に対し、0.2〜20体積%の範囲が好ましい。
【0045】
大気圧プラズマの反応性ガスに、表面処理層形成用の原料ガスを混合させない場合は、大気圧プラズマ照射装置(10)の外部より、流延膜表面に前記の原料ガスを吹き付け、流延膜表面に同伴させて大気圧プラズマ照射装置(10)の下まで送り込み、反応、膜形成させても良い。
【0046】
その場合、大気圧プラズマ照射装置(10)の周辺のガス濃度は、500ppmから100,000ppmの範囲が好ましく、さらには、1000から50,000ppmがより好ましい。
【0047】
また、大気圧プラズマの原料ガスの風量は、プラズマ照射の有効幅1m当たり、20〜5000L/minが望ましい。さらには、40〜2500L/minがより好ましい。
【0048】
大気圧プラズマ照射装置(10)による、プラズマ照射時間は、0.0005〜1.0秒が好ましく、0.01〜0.3秒がさらに好ましい。
【0049】
図2は、本発明の積層フィルムの製造方法を実施する第2実施形態を示すフローシートで、紫外線照射装置(20)を用いた場合の例である。
【0050】
同図において、(u)は紫外線ランプ、(r)は反射板、(p)はパージガス、(q)は石英ガラス、(1)は樹脂フィルム基材である。
【0051】
本実施の形態においては、図2に示す紫外線ランプ(u)を用いて、例えば主として波長が172nmの紫外線を1〜3000mJ/cm 、好ましくは100〜1000mJ/cm の光量で、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面に照射するものである。
【0052】
このような紫外線照射下では、パージガス(p)に含まれる酸素は活性酸素やオゾンを生成し、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面と異物との結合力を弱め、とりわけ有機系異物を反応性ガスにより分解させることによって、樹脂フィルム基材(1)または該フィルム基材表面の下部薄膜層と異物の接触面積を低下させ、結合力を弱め、これによって異物を除去する。
【0053】
また、多層薄膜塗布において、膜中に組み込まれなかったレベリング剤等の表面抽出物を反応性ガスにより分解することによって、粘着性ゴムロール(2)への転写を抑制し、粘着性ゴムロール(2)の粘着力の低下を引き起こさないことによって、安定した異物除去を行なう。
【0054】
また、紫外線ランプ(u)と樹脂フィルム基材(1)との間隙(d)は、近づけすぎると、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面に接触、損傷させる危険があり、離しすぎると、雰囲気中の酸素や水に、紫外線の高エネルギーが吸収されてしまい、樹脂フィルム基材(1)表面または該フィルム基材表面の下部薄膜層表面の異物除去、表面抽出物分解効果が弱くなるため、0.5〜10mmが好ましく、また1〜8mmがより好ましく、1〜5mmがさらに好ましい。
【0055】
本発明による積層フィルムの製造方法においては、樹脂フィルム基材(1)表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法において、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、その他、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去するようにしてもよい。
【0056】
ここで、電子線照射処理は、樹脂フィルム基材表面または下部薄膜層表面に電子線を照射することにより、樹脂フィルム基材表面または下部薄膜層表面に存在する付着異物を振動させることで、基材または下部薄膜層と異物の付着力を弱めるものである。
【0057】
電子線照射処理は、例えば、加速電圧を10〜300kV、好ましくは50〜100kV、および線量を1〜1000kGy、好ましくは10〜100kGyにて実施するのが好ましい。
【0058】
微小ドライアイス吹付け処理は、樹脂フィルム基材表面または下部薄膜層表面への微小ドライアイス吹付けにより、粒子の衝突エネルギー、ドライアイスの昇華による体積の膨張により、基材または下部薄膜層と異物の付着力を弱める。
【0059】
微小ドライアイス吹付け処理は、例えば、微小ドライアイス吹付け流量を0.1〜10m /min、好ましくは0.5〜5.0m /min、および微小ドライアイス吹付け流速を10〜500m/min、好ましくは100〜300m/minにて実施するのが好ましい。
【0060】
微小ドライアイス吹付け処理としては、具体的には、リンクスタージャパンのウェブクリーナーを用いる。
【0061】
以下、本発明に用いられる材料について詳細に説明する。
【0062】
本発明で用いられる樹脂フィルム基材(1)には、特に限定はなく、例えば、透明樹脂フィルムとしてポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテートあるいはセルロース誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0063】
本発明では特に幅広の樹脂フィルム基材(1)に対して優れた硬化を有し、特に幅1.4〜4mの樹脂フィルム基材(1)に対して好ましく適用される。また、特に樹脂フィルム基材(1)がセルロースエステルを含有するフィルムに対して優れた効果が期待できる。これはセルロースエステルフィルムは可塑剤等の添加物を有しており、塗布溶媒による溶解や膨潤を受けやすい性質がある。セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート(TAC)などが挙げられる。特に膜厚が10〜60μmである薄膜フィルムではその影響が顕著であり、高度な平面性が要求されるハードコートフィルムの製造方法として、本発明の方法は優れた効果を発揮することができる。
【0064】
以下、セルロースエステルフィルムの製膜法について述べる。セルロースエステルフィルムは一般的に、セルロースエステルフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り、作られる。本発明の積層フィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムは、乾燥過程でテンター等の装置によってフィルムの端部を把持され、幅手方向に張力を付与して幅保持若しくは延伸されたものであることがより高い平面性が得られるために好ましい。
【0065】
本発明の積層フィルムの樹脂フィルム基材に用いられるセルロースエステルフィルムのセルロースエステル樹脂としては、セルロースの低級脂肪酸エステル樹脂であることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸が好ましく、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの特に好ましい例として挙げられる。
【0066】
また、上記以外にも、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。上記記載の中でも、最も好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルとしてはセルローストリアセテート(以下、TACという)、セルロースアセテートプロピオネートである。
【0067】
ここで、セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、適度なドープ粘度となり好ましく、さらに、好ましくは、80,000〜150,000である。
【0068】
本発明で用いられるセルロースエステルとしては、アセチル基及び/またはプロピオニル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をX、またプロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが特に好ましい。
【0069】
(I) 2.5≦X+Y≦3.0
(II) 0≦Y≦1.2
アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0070】
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独あるいは任意の比率で混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が若しくは問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルロースエステルを混合して用いた場合、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上がさらに、好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0071】
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば何でも良く、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0072】
このほか使用できる良溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0073】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを用いることができる。
【0075】
リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等あるいはトリメチロールプロパントリベンゾエート等を好ましく用いることができる。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることができる。
【0076】
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
【0077】
また、200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、さらに、好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
【0078】
これらの可塑剤は単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0079】
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステルに対して、1〜40質量%添加させることができ、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、さらに、好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることができず、切り屑の発生が多くなる。
【0080】
本発明において、セルロースエステルフィルムには、酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。
【0081】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに、好ましい。
【0082】
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0083】
本発明において、のセルロースエステルフィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0084】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
【0085】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。また、特開平6−148430号公報、特開2002−47357号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。あるいは特開平10−152568号公報に記載されている紫外線吸収剤を用いることもできる。
【0086】
以下に、本発明において用いられる紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0087】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
以下に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムでは、フィルムに滑り性を付与し、ロール状フィルムのブロッキングを防止するために微粒子を添加することが好ましい。
【0089】
本発明において用いられる微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0090】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに、好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0091】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)等の市販品が使用できる。
【0092】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)等の市販品が使用できる。
【0093】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0094】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン株式会社製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0095】
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、さらに、好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、それらを好ましく使用することができる。
【0096】
〔調製方法A〕
溶剤と微粒子を撹拌混合したのち、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0097】
〔調製方法B〕
溶剤と微粒子を撹拌混合したのち、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。
【0098】
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0099】
〔調製方法C〕
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0100】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子がさらに、再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0101】
〔分散方法〕
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに、好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0102】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0103】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに、好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0104】
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
【0105】
メディア分散機としては、ボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0106】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。さらに、好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0107】
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械株式会社製のUHN−01等が挙げられる。
【0108】
また、これらの微粒子はフィルムの厚味方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の少なくとも1つのドープ若しくは表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましく、中心層を形成するドープには微粒子がほとんど含まれないか、まったく含まれないことが好ましい。可塑剤あるいは紫外線吸収剤などでブリードアウトの恐れがある添加剤は主に中心層を形成するドープに添加し、表層側の2つのドープには中心層を形成するドープへの添加量に対して80質量%未満の添加量とすることが好ましく、より好ましくは50質量%未満とすることであり、ほとんど添加しないかまったく添加しないことが、工程汚染を防止する点でより好ましい。
【0109】
本発明による積層フィルムの製造方法は、前述のように、上記の樹脂フィルム基材(1)表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去するものである。
【0110】
(ハードコートフィルム)
つぎに、本発明の積層フィルムのうち、ハードコート層、すなわち紫外線線硬化樹脂層を有するハードコートフィルムについて説明する。
【0111】
樹脂フィルム基材(1)の表面に設けるハードコート層は、紫外線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0112】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば特開昭59−151110号公報)。
【0113】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号公報)。
【0114】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることができる(例えば、特開平1−105738号公報)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することができる。
【0115】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化性樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0116】
本発明においては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用できる。例えば、前記した低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm 程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm ある。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用できる。
【0117】
また、紫外線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに、好ましくは幅手方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜400N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックアップロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅手方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに、平面性が優れたフィルムを得ることができる。
【0118】
さらに、紫外線を照射する際の雰囲気温度を15〜45℃の範囲にすることが好ましい。45℃を超えると熱のために平面性が劣化しやすい。上記温度範囲にするために、紫外線照射ゾーンに温度制御可能な送風装置を組み込むことができる。
【0119】
このハードコート層に、表示装置パネルの表面に防眩性を与えるために、また他の物質との密着性を防ぐために、あるいは耐擦り傷性付与のために、無機あるいは有機の微粒子を加えることもできる。例えば、無機粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を紫外線硬化性樹脂組成物に加えることができる。これらの粒子粉末の平均粒径としては、0.01μm〜10μmであり、紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部となるように配合することが望ましい。防眩効果を付与するには、平均粒径0.1〜3μm、樹脂組成物100質量部に対して1〜15質量部が好適である。
【0120】
またさらに、ブロッキング防止機能を果たすものとして、あるいは微細な凹凸を形成するため上述したものと同じ成分で、体積平均粒径0.005〜0.1μmの粒子を樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部、併せて用いることもできる。
【0121】
塗布液に含まれる有機溶媒は紫外線照射前に蒸発させるため、乾燥工程を必要とする。
【0122】
塗布液として使用できる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0123】
紫外線線硬化樹脂を含有する塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることができる。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
【0124】
紫外線線硬化樹脂を含有する塗布液は塗布乾燥されたのち、紫外線を照射するが、照射の条件は前述した通りである。照射時間に特に制限はないが、0.1秒〜5分が好ましく、硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から0.1秒〜1分がより好ましい。
【0125】
本発明において、紫外線線硬化樹脂を含有する塗布液には好ましくは有機溶媒が用いられる。このとき、樹脂フィルム基材(1)を溶解若しくは膨潤させる性質を有する溶媒を用いることが塗設された層と樹脂フィルム基材(1)との密着性に優れるため好ましく用いられる。溶剤としては前述の溶剤が用いられる。
【0126】
(反射防止フィルム)
本発明の積層フィルムのハードコート層上に、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮した反射防止層を積層しても良い。反射防止層は、透明フィルム基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明フィルム基材よりも屈折率の低い低屈折率層等から構成される。また、ハードコート層が高屈折率層を兼ねても良い。
【0127】
本発明の積層フィルムの製造方法により製造されたハードコート層上に高屈折率層あるいは低屈折率層などの反射防止層を塗設して、反射防止フィルムを形成することにより、反射光の色むらが著しく改善された反射防止フィルムが得られる。
【0128】
低屈折率層は、下記に記載する特に内部が多孔質または空洞である少なくとも1種の中空シリカ微粒子を含有することで、耐久試験後の密着に優れた反射防止フィルムを形成することができる。また、反射防止フィルムはハードコート層と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられていてもよい。
【0129】
(低屈折率層)
つぎに、低屈折率層について説明する。低屈折率層は、透明フィルム基材の屈折率より低い層を低屈折率層という。具体的な屈折率としては、23℃、波長550nmで1.30〜1.45の範囲のものが好ましい。また、低屈折率層の膜厚は、光学干渉層としての特性から、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。低屈折率層には中空シリカ粒子を含有させることが、耐久試験後の密着、低屈折率化といった光学干渉層としての特性からも好ましい。中空シリカ粒子(以下、中空粒子とも言う)は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
【0130】
低屈折率層を形成する塗布組成物には、有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びブタノールが特に好ましい。
【0131】
低屈折率層を形成する塗布組成物中の固形分濃度は、1〜4質量%であることが好ましく、固形分濃度を4質量%以下とすることによって、塗布むらが生じにくくなり、1質量%以上とすることによって、乾燥負荷が軽減される。
【0132】
低屈折率層を形成する塗布組成物には、他のシリカ粒子を含有することもできる。ここで、他のシリカ粒子としては、特に限定されるものではないが、コロイダルシリカ等が挙げられる。コロイダルシリカの具体例としては、二酸化ケイ素をコロイド状に水または有機溶媒に分散させたものであり、特に限定はされないが球状、針状または数珠状である。
【0133】
コロイダルシリカの平均粒径は50〜300nmの範囲が好ましく、変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
【0134】
コロイダルシリカは、市販されており、例えば日産化学工業社のスノーテックスシリーズ、触媒化成工業社のカタロイド−Sシリーズ、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。また、アルミナゾルや水酸化アルミニウムでカチオン変性したコロイダルシリカやシリカの一次粒子を2価以上の金属イオンで粒子間を結合し、数珠状に連結した数珠状コロイダルシリカも好ましく用いられる。数珠状コロイダルシリカは日産化学工業社のスノーテックス−AKシリーズ、スノーテックス−PSシリーズ、スノーテックス−UPシリーズ等があり、具体的にはIPS−ST−L(イソプロパノール分散、粒子径40〜50nm、シリカ濃度30%)、MEK−ST−MS(メチルエチルケトン分散、粒子径17〜23nm、シリカ濃度35%)等が挙げられる。低屈折率層形成塗布組成物にコロイダルシリカを含有させる場合、低屈折率層中の固形分に対し10〜60質量%、さらには30〜60質量%であることが膜強度の点から、好ましい。
【0135】
また、その他の無機微粒子を含有してもよく、例えば、MgF2が挙げられ、具体的には日産化学工業社製のMFS−10P(イソプロピルアルコール分散フッ化マグネシウムゾル、粒子系100nm)、NF−10P等が挙げられる。
【0136】
また、低屈折率層形成塗布組成物には、低屈折率層中の固形分に対し、5〜80質量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、中空シリカ粒子等の粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく、低屈折率層の強度を維持できるように調整する。
【0137】
バインダーとしては、アルコキシ金属化合物、及びその加水分解物あるいはその重縮合物、また、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂、フルオロアクリレート、含フッ素ポリマー等を挙げられる。フッ素ポリマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類〔例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等〕、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中で好ましくは、パーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0138】
本発明の積層フィルムは、フィルム基材と、低屈折率層との間に、高屈折率層が介在させられている場合がある。以下に、高屈折率層について説明する。
【0139】
(高屈折率層)
(高屈折率層の金属酸化物微粒子)
高屈折率層には金属酸化物微粒子を含有することが好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Ta等の微量の原子をドープしてあってもよい。また、これらの混合物でもよい。中でも、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが好ましく、特に好ましくはアンチモン酸亜鉛である。
【0140】
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球状、立方体状、紡錘形状、針状あるいは不定形状であることが好ましい。
【0141】
高屈折率層の屈折率は、具体的には、支持体である透明フィルム基材の屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.50〜1.90の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的であるため、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましい。
【0142】
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
【0143】
金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層の厚さは5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
【0144】
使用する金属酸化物微粒子と、後述の活性エネルギー線硬化型樹脂等のバインダーとの比は、金属酸化物微粒子の種類、粒子サイズ等により異なるが体積比で前者1に対して後者2から前者2に対して後者1程度が好ましい。
【0145】
本発明において用いられる金属酸化物微粒子の使用量は高屈折率層中に5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、20〜75質量%がさらに好ましい。使用量が少ないと所望の屈折率や効果が得られず、多すぎると膜強度の劣化等が発生する。
【0146】
上記金属酸化物微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0147】
また金属酸化物微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0148】
さらにコア/シェル構造を有する金属酸化物微粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性をさらに向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
【0149】
コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることができる。
【0150】
シェルは酸化チタン以外の無機化合物を主成分とし、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。例えば二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、硫化亜鉛等を主成分とした無機化合物が用いられる。この内アルミナ、シリカ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)であることが好ましい。また、これらの混合物でもよい。
【0151】
コアに対するシェルの被覆量は、平均の被覆量で2〜50質量%である。好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは4〜25質量%である。シェルの被覆量が多いと微粒子の屈折率が低下し、被覆量が少な過ぎると耐光性が劣化する。二種以上の無機微粒子を併用してもよい。
【0152】
コアとなる酸化チタンは、液相法または気相法で作製されたものを使用できる。また、シェルをコアの周りに形成させる手法としては、例えば米国特許第3,410,708号公報、特公昭58−47061号公報、米国特許第2,885,366号公報、同第3,437,502号公報、英国特許第1,134,249号公報、米国特許第3,383,231号公報、英国特許第2,629,953号公報、同第1,365,999号公報に記載されている方法等を用いることができる。
【0153】
(溶媒)
高屈折率層をコーティングする際に用いられる有機溶媒としては、例えばアルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えばジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えばスルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
【0154】
本発明による積層フィルムは、セルロースエステルフィルムなどの透明フィルム基材と、低屈折率層との間に、高屈折率層および/または中屈折率層の他に、防眩層、帯電防止層等の種々の機能層を設けることができる。
【0155】
以下に、防眩層について説明する。
【0156】
ここでいう防眩層とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにする塗布層を設けものである。表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。
【0157】
このような凹凸を形成する方法としては、透明フィルム基材への防眩層の塗設が挙げられる。
【0158】
凹凸形状としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型、凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。なお、半球状は、必ずしもその表面形状は真球形状である必要はなく、楕円体形状や、より変形した凸曲面形状であってもよい。また、凹凸形状の稜線が線状に伸びた、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状も挙げられる。その稜線から谷線にかけての斜面は平面状、曲面状、もしくは両者の複合的形状であってもよい。
【0159】
防眩層の凹凸形状の粗さは、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)が60〜700nm、好ましくは80〜400nmが好ましい。ここで、凹凸形状の粗さ(Ra)が、60nm未満では、防眩性の効果が弱く、凹凸形状の粗さ(Ra)が、700nmを超えると、目視で粗すぎる印象を受ける。算術平均粗さ(Ra)は、光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
【0160】
つぎに、防眩層用塗布組成物について説明する。
【0161】
(微粒子)
防眩層用塗布組成物には、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子を含有することを特徴とする。
【0162】
なお、高速塗布時のレベリング性や取り扱い性から、塗工液の液粘度を下げるため、固形濃度を低くした方が良いが、このような状態での塗工液の安定性、また良好な分散性が得られることから、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子の平均粒子径としては、5nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、10nm〜15μmである。平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0163】
また、前記の理由により、防眩層用塗布組成物に含まれるポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、メラミンポリマー系微粒子、及び親水性シリカ微粒子よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の微粒子の含有量としては、塗布組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100質量部であり、特に好ましくは1〜30質量部である。
【0164】
ここで、ポリメチルメタクリレート系微粒子、ポリスチレン系微粒子、及びメラミンポリマー系微粒子の具体例として、ポリメチルメタクリレート系微粒子としては、例えば綜研化学製;MX150、MX300、日本触媒製;エポスターMA、グレード;MA1002、MA1004、MA1006、MA1010、エポスターMX(エマルジョン)、グレード;MX020W、MX030W、MX050W、MX100W)、積水化成品工業製:MBXシリーズ(MBX−8、MBX12)があげられる。
【0165】
ポリメチルメタクリレート系微粒子の中でも、ハードコート性をより良く発揮する点から、フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子が好ましい。フッ素含有ポリメチルメタクリレート微粒子とは、フッ化アクリレートまたはフッ化メタクリレートをモノマーまたはポリマーから形成された微粒子、フッ素含有アクリル酸、フッ素含有メタクリル酸、フルオロアクリル酸もしくはフルオロメタクリル酸から形成された微粒子、及びフッ素含有メタアクリル酸を架橋剤の存在下にビニル単量体と共重合させて得られる微粒子等が挙げられる。
【0166】
フッ素含有メタアクリル酸としては、例えばトリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート等のフッ素含有メタクリル酸アルキル、パーフルオロオクチルエチルアクリレートのようなフッ素含有アクリル酸アルキル等が挙げられる。
【0167】
フッ素含有(メタ)アクリル酸と共重合可能なビニル単量体としては、ビニル基を有するものであればよく、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類等が挙げられる。
【0168】
重合反応の際に用いられる架橋剤としては、特に限定されないが、2個以上の不飽和基を有するものを用いることが好ましく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の2官能性ジメタクリレートや、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。なお、共重合反応は、ランダム共重合およびブロック共重合のいずれでもよい。
【0169】
具体的化合物としては、例えば特開2000−169658号公報に記載の化合物等も挙げることができ、市販品としては、日本ペイント製:FS−701、根上工業製:MF−0043等を挙げることができる。
【0170】
ポリスチレン系微粒子としては、例えば綜研化学製;SX−130H、SX−200H、SX−350H)、積水化成品工業製、SBXシリーズ(SBX−6、SBX−8)等の市販品が挙げられる。また、ポリスチレン系微粒子の中には、アクリルとスチレンが架橋した微粒子も含まれ、具体的には、日本ペイント製:FS−102、FS−401、FS−201、MG−351等の市販品を挙げることができる。
【0171】
メラミンポリマー系微粒子としては、日本触媒製:ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;M30、商品名:エポスターGP、グレード;H40〜H110)、日本触媒製:メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;S12、S6、S、SC4)、日産化学工業製:メラミン樹脂・シリカ複合粒子(商品名:オプトビーズ)等の市販品を挙げることができる。
【0172】
一方、親水性シリカ微粒子としては、日本アエロジル製、アエロジル200、200V、300、デグサ製、アエロジルOX50、TT600、富士シリシア化学製、サイリシア350等の商品名を挙げることができる。
【0173】
なお、上記の微粒子は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら微粒子の状態は、粉体あるいはエマルジョン等のどのような状態で加えられてもよい。
【0174】
その他の微粒子としては、ベンゾグアナミン系微粒子が挙げられ、日本触媒製:ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(商品名:エポスター、グレード;L15、M05、MS、SC25)等、ポリウレタン系技粒子としては、大日精化製ダイミックビーズ、またエチレン・メチルメタクリラート共重合物等が挙げられる。
【0175】
シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等の紫外線硬化性樹脂組成物をも加えることができる。また必要に応じて、さらに特開2000−241807号公報に記載の微粒子を含んでいてもよい。
【0176】
つぎに、防眩層に含まれる樹脂について説明する。
【0177】
防眩層に含まれる樹脂は、透明フィルム基材上に塗布することにより得られる塗膜を乾燥させることによって、表面に凹凸形状を有する樹脂層を形成する組成物である。例えば特開2006−3647号公報に記載の塗布組成物が好ましく用いられる。これらの樹脂は、塗布組成物を塗布した後に、それぞれの表面張力の差に基づいて、樹脂が局在化すると考えられる。
【0178】
樹脂は、互いに反応する官能基を有する2種類の樹脂を使用するのが、好ましい。2つの樹脂が所有する官能基同士が反応することによって、樹脂層が硬化する。
【0179】
このような2種類の樹脂の官能基の組合せとしては、例えば水酸基とメラミン樹脂のイミノ基、メチロール基、アルコキシド基との組合せ、水酸基と(ブロック)イソシアネート基との組合せ、水酸基と酸(無水物)基との組合せ、水酸基とシラノール基との組合せ、エポキシ基とカルボキシル基との組合せ、エポキシ基とアミノ基との組合せ、エポキシ基と水酸基との組合せ、エポキシ基とシラノール基との組合せ、オキサゾリン基とカルボキシル基との組合せ、活性メチレン基とアクリロイル基との組合せ等の、異なる官能基の組み合わせが挙げられる。なお、ここにいう「互いに反応する官能基」とは、2種類の樹脂のみを混合しただけでは反応は進行しないか、または反応速度が遅いが、触媒等を併せて混合することにより互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる触媒としては、例えば光開始剤、ラジカル開始剤、酸・塩基触媒、金属触媒などが挙げられる。これら2種類の樹脂ついては、例えば特開2008−176116号公報に記載されたものを用いるのが、好ましい。
【0180】
防眩層形成のために用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、塗布の下地となる部分の材質や、バインダー樹脂及び塗布方法などを考慮して適宜選択される。
【0181】
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;n−ブタン、n−へキサン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;i−プロパノール、i−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうちエステル系、エーテル系、アルコール系溶媒が好ましく、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、水系の溶媒が用いられてもよい。
【0182】
また、必要に応じて、その他、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類のようなレオロジーコントロール剤、アセチレンジオール類のような表面調整剤(レベリング剤)、カップリング剤、可塑剤、分散剤等が挙げられる。レベリング剤としては、前述の低屈折率層に記載のフッ素系またはシリコーン界面活性剤やポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物等が挙げられる。
【0183】
また、防眩層の厚さは、ハードコート性(耐擦性、鉛筆硬度)や、良好な光拡散性が付与され、視野角の拡大に貢献することから、制限されないが、通常、0.5〜50μm、とくに1〜30μmが好ましい。また、防眩層は単層または複数の層から構成してもよい。
【0184】
防眩層は、例えば透明フィルム基材に、上記防眩層用塗布組成物を塗布する塗布工程、得られた塗膜を乾燥させる乾燥工程、及び乾燥させた塗膜を硬化させる硬化工程、を包含する方法によって形成される。
【0185】
防眩層用の塗布組成物を基材に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、使用する塗布組成物や塗布工程の状況に応じて適宜選択される。例えばワイヤバーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、グラビアコーティング、後述のインクジェット法等の種々の塗布方法を採用することができる。
【0186】
また、塗布は後述の透明フィルム基材幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。
【0187】
乾燥工程は、減圧乾燥によって行われるのが好ましい。減圧乾燥することにより、塗布組成物中に含まれる溶媒を除去し、2種類の樹脂を良好に局在化させることができる。
【0188】
乾燥工程において2種類の樹脂が局在化した塗膜を硬化させることによって、凹凸樹脂層が形成される。硬化方法としては、加熱することによって熱硬化させる方法、電子線、または紫外線等の光照射によって硬化させる方法などが挙げられる。紫外線光照射としては、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。熱硬化させる場合は、加熱温度は50〜300℃が好ましく、好ましくは60〜250℃、さらに好ましくは80〜150℃である。
【0189】
加熱時間は、加熱温度により変化するが、3〜300分の範囲が適当である。あるいは一度巻き取った後、50〜100℃程度の温度で1〜20日間程度エージング処理する方法でもよい。
【0190】
また光照射によって硬化させる場合は、照射光の露光量は10mJ/cm 〜10J/cm であることが好ましく、50mJ/cm 〜1J/cm であるのがより好ましい。ここで照射される光の波長域としては特に限定されないが、紫外線領域の波長を有する光が好ましく用いられる。
【0191】
さらに、防眩層には、活性エネルギー線硬化樹脂を含有させてもよい。もしくは別の層として積層することもできる。
【0192】
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
【0193】
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは1〜15質量部である。
【0194】
このような防眩層の上に、前述した低屈折率層を設けることができる。
【0195】
本発明において、透明樹脂フィルム基材上に、帯電防止層を設ける場合を説明する。
【0196】
帯電防止層は、透明樹脂フィルムの取扱の際に、この樹脂フィルムが帯電するのを防ぐ機能を付与するものであり、具体的には、イオン導電性物質や導電性微粒子を含有する層を設けることによって行う。
【0197】
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例としてはイオン性高分子化合物を挙げることができる。
【0198】
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号公報、同49−23827号公報、同47−28937号公報にみられるようなアニオン性高分子化合物、特公昭55−734号公報、特開昭50−54672号公報、特公昭59−14735号公報、同57−18175号公報、同57−18176号公報、同57−56059号公報などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号公報、同57−15376号公報、特公昭53−45231号公報、同55−145783号公報、同55−65950号公報、同55−67746号公報、同57−11342号公報、同57−19735号公報、特公昭58−56858号公報、特開昭61−27853号公報、同62−9346号公報にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。
【0199】
また、導電性微粒子の例としては導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO、SnO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、V等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO、及びSnOが好ましい。
【0200】
異種原子を含む例としては、例えばZnOに対しては、Al、In等の添加、TiOに対しては、Nb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0201】
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は10Ωcm以下、特に10Ωcm以下であって、1次粒子径が100nm以上、0.2μm以下で、高次構造の長径が300nm以上、6μm以下である特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で、0.01%以上、20%以下含んでいることが好ましい。
【0202】
特に好ましくは、特開平9−203810号公報に記載されているアイオネン導電性ポリマーあるいは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
【0203】
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることができるため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、また他の物質例えば支持体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
【0204】
帯電防止層に用いられる架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは、一般に約0.01〜0.5μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05〜0.08μmの範囲の粒子サイズが用いられる。
【0205】
ここでいう分散性粒状性ポリマーとは、視覚的観察によって透明またはわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーを意味する。下層塗布組成物に上層の膜厚に相当する粒子径よりも大きなゴミ(異物)が実質的に含まれない塗布組成物を用いることによって、上層の異物故障を防止することができる。
【0206】
該微粒子とバインダーの比率は微粒子1質量部に対して、バインダーが0.5〜4質量部が密着性の点で好ましく、特に紫外線照射後の密着性では微粒子1質量部に対して、バインダーが1〜2質量部であることが好ましい。
【0207】
帯電防止層に用いられる透明樹脂バインダーとしては、重量平均分子量が2万〜40万である樹脂が好ましく用いることができる。
【0208】
特に、ここで使用する樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、ガラス転移点が110℃以下、さらに好ましくは90℃以下の樹脂が用いられる。
【0209】
ここで使用される樹脂は、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、又はセルロースナイトレート等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、又はコポリブチレン−テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、又はポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル樹脂もしくはアクリル樹脂とその他樹脂との共重合体を用いることが出来るが特にこれらに限定されるものではない。
【0210】
この中でセルロース誘導体あるいはアクリル樹脂が好ましく、さらにアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
【0211】
さらにガラス転移点が110℃以下、さらに好ましくは30〜90℃の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0212】
ポリメチルメタクリレートの場合、例えば、分子量数万以下〜数十万以上、ガラス転移点20〜105℃の各種のタイプが市販されており、好ましいものを選択することができる。
【0213】
例えば、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましい樹脂を適宜選択することもできる。
【0214】
ガラス転移点はJIS−K7121に記載の方法にて求めることができる。
【0215】
ここで使用する樹脂は下層で使用しているバインダー全体の60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であることが好ましく、必要に応じて活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を添加することもできる。これらの樹脂はバインダーとして適当な溶剤に溶解した状態で塗設される。
【0216】
帯電防止層の塗布組成物として使用できる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、その他の溶媒などが挙げられる。
【0217】
特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
【0218】
上記の塗布組成物を塗布する方法は、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコートあるいは米国特許2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等により通常0.1〜1μmの乾燥膜厚となるように塗布することができる。
【0219】
さらに好ましくは0.1〜0.5μmの乾燥膜厚であり、特に好ましくは0.1〜0.3の乾燥膜厚である。
【0220】
このような帯電防止層の上に、前述したクリアハードコート層などの各層を設けることができる。
【0221】
(バックコート層)
本発明において、セルロースエステルフィルムなどの透明フィルム基材に、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、接合用中間層、または光学異方性層を設けた側と反対側の面には、バックコート層を設けることが好ましい。
【0222】
バックコート層は、活性エネルギー線硬化樹脂層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。すなわち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層用塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
【0223】
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0224】
これらの微粒子は、例えばアエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えばアエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0225】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。
【0226】
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
【0227】
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0228】
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えばジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノールまたは炭化水素類(トルエン、キシレン)等がある。
【0229】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.2〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えばアクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン株式会社製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン株式会社製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
【0230】
特に好ましくはジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートのようなセルロース系樹脂層である。
【0231】
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。または2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。
【0232】
本発明の製造方法により得られる積層フィルムの層構成としては、下記の例が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0233】
バックコート層/樹脂フィルム基材/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム基材/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム基材/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム基材/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム基材/防眩層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム基材/防眩層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
本発明による積層フィルムの製造方法において、樹脂フィルム基材表面に塗布される薄膜層は、上記の防眩層、帯電防止層、バックコート層、ハードコート層、及び反射防止層としての中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の他に、下記の光学異方性層(液晶層)、接合用中間層などが挙げられる。
【0234】
樹脂フィルム基材/光学異方性層
樹脂フィルム基材/接合用中間層/光学異方性層
(光学異方性層)
光学異方性層は、液晶材料もしくは液晶の溶液を前記セルロースエステルフィルム上に直接または接合用中間層上に塗布し、乾燥と熱処理(配向処理ともいう)を行い紫外線硬化もしくは熱重合などで液晶配向の固定化を行った、垂直方向に配向した棒状液晶による位相差層である。
【0235】
(接合用中間層)
接合用中間層は、透明フィルムと棒状の液晶を垂直に配向させて配向を固定した光学異方性層(液晶層)の間に設ける層であり、その機能は、フィルム基材と光学異方性層との接合、フィルム基材からの不純物ブロック作用である。この接合用中間層は、透明樹脂で構成されることが好ましい。透明樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。
【0236】
特に好ましくは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂、あるいは架橋剤と反応部位を有する樹脂との混合組成物である。
【0237】
本発明によって得られた積層フィルムは、光学特性に優れるため、特に液晶表示装置、あるいは有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイの前面に用いられる反射防止フィルムあるいは防眩フィルム、クリアハードコートフィルムとして有用であり、優れた視認性を提供することができ、これらを偏光板保護フィルムとして用いた偏光板あるいは表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0238】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0239】
実施例1
〔透明樹脂フィルム基材の作製〕
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 1質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 1質量部
酸化珪素微粒子(アエロジル200V) 0.1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し、撹伴しながら完全に溶解した。
【0240】
このドープ組成物を濾過し、冷却して、温度33℃に保ち、流延ダイからステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上に均一に流延し、流延膜(ウェブ)を剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、支持体上からウェブを剥離したのち、ウェブをテンターによって幅把持しながら乾燥させ、ついで、ウェブを幅手方向で1.1倍となるように延伸し、さらに、多数のロールで搬送させながら、ウェブ(フィルム)乾燥を終了させ、膜厚40μm、幅1.5mのセルローストリアセテートフィルム基材を得た。このとき、フィルム基材の支持体に接している面をb面とし、もう一方の面をa面とする。
【0241】
図1に示すように、上記のようにして得られたセルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、ハードコート層の薄膜塗布を行なう前に、セルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面を、大気圧プラズマ照射装置(10)によって処理し、ついで、処理後のセルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した。
【0242】
ここで、大気圧プラズマ照射装置(10)による処理条件として、吹き出しスリットからフィルム基材(1)表面までの間隔を3mm、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)による照射時間を、0.01秒とし、反応性ガスに窒素ガス3m /minを使用した。
【0243】
一方、粘着性ゴムロール(2)は、セルローストリアセテートフィルム基材(1)表面に対してフリースパンの状態で使用し、また粘着性ゴムロール(2)に対するセルローストリアセテートフィルム基材(1)の押込み角度(θ)を、粘着性ゴムロール(2)の接線方向に対し、17.5度とした。
【0244】
粘着性ゴムロール(2)としては、表面硬度(ゴム硬さJIS−A):20°を有するとともに、表面粘着力:50ヘクトパスカル(hPa)を有し、また表面比電気抵抗値:1.0×10 Ωを有する導電性ゴムロール(商品名ECクリーナーO、株式会社加貫ローラ製作所製)を使用した。
【0245】
つぎに、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理をしたb面に、下記のクリアハードコート層形成用塗布組成物を塗布し、クリアハードコート層を形成した。
【0246】
(クリアハードコート層形成用塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
イルガキュア184 2質量部
(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)
イソプロピルアルコール 50質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記クリアハードコート層形成用塗布組成物を、セルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に押し出しコートし、ついで温度80℃に設定された乾燥部で乾燥したのち、紫外線照射装置(図示略)を使用して130mJ/cm の紫外線を照射し、ドライ膜厚7μmのクリアハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0247】
(中屈折率層の塗設)
上記ハードコート層上に、下記中屈折率層形成用塗布組成物をダイコータで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて130mJ/cm の紫外線を照射して硬化させ、中屈折率層を形成した。
【0248】
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
テトラエトキシシラン29質量部とエタノール55質量部を混合し、これに酢酸の1.6質量%水溶液16質量部を添加した後に、温度25℃で25時間撹拌することで、テトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0249】
(中屈折率層形成用塗布組成物)
テトラエトキシシラン加水分解物A 500質量部
固形分15%酸化チタン微粒子分散物 300質量部
(RTSPNB15WT%−G0 シーアイ化成工業社製)
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー 1質量部
(FZ−2207、日本ユニカー社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1470質量部
イソプロピルアルコール 2720質量部
メチルエチルケトン 490質量部
得られた中屈折率層の膜厚は、86nm、および中屈折率層の屈折率は、1.64であった。
【0250】
(低屈折率層の塗設)
つぎに、得られた中屈折率層上に、下記低屈折率層形成用塗布組成物をダイコータで塗布し、温度80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて130mJ/cm の紫外線を照射して硬化させ、さらに温度120℃で、5分間熱硬化させて、低屈折率層を形成した。ついで、温度65℃で120時間エージング処理を行ない、反射防止フィルムを作製した。
【0251】
(低屈折率層形成用塗布組成物)
テトラエトキシシラン加水分解物A 100質量部
中空シリカ微粒子分散物 180質量部
(触媒化成工業社製、商品名P−4)
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(上掲)の
10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 380質量部
イソプロピルアルコール 380質量部
得られた低屈折率層の膜厚は、100nm、および低屈折率層の屈折率は、1.38であった。
【0252】
実施例2
上記実施例1の場合と同様に実施するが、まず上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、ハードコート層の薄膜塗布を行なう前に、セルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面を、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)によって処理し、ついで、処理後のセルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した。
【0253】
ここで、大気圧プラズマ照射装置、および粘着性ゴムロール(2)による処理条件は、上記実施例1の場合と同様とした。
【0254】
ついで、得られたハードコート層の表面に、中屈折率層の薄膜塗布を行なう前に、ハードコート層の表面を、大気圧プラズマ照射装置(10)によって処理し、ついで、処理後のハードコート層の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した。
【0255】
ここで、大気圧プラズマ照射装置(10)、および粘着性ゴムロール(2)による処理条件は、上記実施例1の場合と同様とした。
【0256】
こうして、AGP処理+粘着性ゴムロール処理により異物を除去したハードコート層の表面に、中屈折率層を上記実施例1の場合と同様に塗設し、さらに、中屈折率層の表面に、低屈折率層を上記実施例1の場合と同様に塗設して、反射防止フィルムを作製した。
【0257】
実施例3
上記実施例2の場合と同様に実施するが、上記実施例2の場合と異なる点は、中屈折率層の表面にも、AGP処理+粘着性ゴムロール処理を施して異物を除去した後、低屈折率層を、上記実施例1の場合と同様に塗設して、反射防止フィルムを作製した点にある。
【0258】
ここで、大気圧プラズマ照射装置(10)、および粘着性ゴムロール(2)による処理条件は、それぞれ上記実施例1の場合と同様とした。
【0259】
実施例4
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、表面固有抵抗値が1.0×1012である粘着性ゴムロール(2)を使用した点にある。
【0260】
実施例5
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、表面固有抵抗値が1.0×1015である粘着性ゴムロール(2)を使用した点にある。
【0261】
実施例6
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)の照射時間を、0.0005秒とした点にある。
【0262】
実施例7
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)の照射時間を、0.3秒とした点にある。
【0263】
実施例8
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)のフィルム基材(1)とのスリット間隔を、10.0mmとした点にある。
【0264】
実施例9
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、大気圧プラズマ照射装置(AGP)(10)のフィルム基材(1)とのスリット間隔を、1.0mmとした点にある。
【0265】
実施例10
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、使用する粘着性ゴムロール(2)の押し込み角度を、5.0度とした点にある。
【0266】
実施例11
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、使用する粘着性ゴムロール(2)の押し込み角度を、30.0度とした点にある。
【0267】
実施例12
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、使用する粘着性ゴムロール(2)のフィルム基材(1)に対する押し当て方法を、バックロール方式とした点にある。
【0268】
実施例13
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のa面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施し、処理後のフィルム基材(1)のa面に、バックコート層を、下記のように、形成した点にある。
【0269】
(バックコート層形成用塗布組成物)
アセトン 89.0質量部
イソプロパノール 10.0質量部
セルロースアセテートプロピオネート 0.6質量部
(アセチル置換基度1.9、プロピオニル基置換度0.8)
超微粒子シリカ2%アセトン分散液 0.2質量部
(日本アエロジル株式会社製アエロジル200V)
上記バックコート層形成用塗布組成物を、ウエット膜厚8μmとなるように、押し出しコーターで塗布し、温度50℃、30秒の条件で乾燥した。
【0270】
実施例14
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施したb面に、下記のようにして、防眩層を形成した。
【0271】
(防眩層形成用塗布組成物)
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂 100質量部
(ユニデック17−806、大日本インキ株式会社製)
平均粒子径3.5μmの球状架橋ポリスチレン微粒子 5質量部
平均粒子径16nmの合成シリカ微粒子 7質量部
ポリイソシアネート化合物 1質量部
(コロネートL、日本ポリウレタン株式会社製)
光重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製) 3質量部
上記の材料に溶媒(酢酸エチル)を添加して、ホモジナイザーにより混合し、揮発分濃度50質量%の均質な分散液を調製し、防眩層形成用塗布組成物を得た。
【0272】
上記の防眩層形成用塗布組成物を、セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施したb面上にダイコートし、温度90℃で、2分間乾燥させた後、110mJ/cm の紫外線を照射して硬化させ、膜厚3μmの防眩層を形成した。これを、温度50℃の2mol/LのNaOH水溶液に90秒間浸漬して、アルカリ処理(鹸化)した後、水洗・乾燥させた。
【0273】
ついで、この防眩層の上に、下記の手順で反射防止層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0274】
(反射防止層の形成)
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子質量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30質量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬株式会社製)4.5質量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人株式会社製)0.3質量部、及びメチルエチルケトン65.2質量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0275】
(中屈折率層形成用塗布組成物の調製)
シクロヘキサノン151.9g、及びメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14g、及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬株式会社製)0.04gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物6.1g、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)2.4gを加え、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、中屈折率層形成用塗布組成物を調製した。
【0276】
(高屈折率層形成用塗布組成物の調製)
シクロヘキサノン1152.8g、及びメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g、及び光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬株式会社製)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)を、高屈折率層の屈折率が1.95になるよう調節して加え、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、高屈折率層形成用塗布組成物を調製した。
【0277】
(低屈折率層形成用塗布組成物の調製)
屈折率1.40の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7223、固形分濃度6質量%、JSR株式会社製)210gに、シリカゾル(MIBK−ST、平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%、日産化学製)15.2g、及びメチルイソブチルケトン174gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用塗布組成物を調製した。
【0278】
(反射防止フィルムの作製)
上記のセルロースアセテートフィルム基材(1)上に塗設されかつアルカリ処理された防眩層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該防眩層の表面上に、上記中屈折率層形成用塗布組成物をバーコーターを用いて塗布し、温度60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.72)を形成した。
【0279】
つぎに、この中屈折率層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該中屈折率層の表面上に、上記高屈折率層形成用塗布組成物をバーコーターを用いて塗布し、温度60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率1.95)を形成した。
【0280】
さらに、この高屈折率層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該高屈折率層の表面上に、上記低屈折率層形成用塗布組成物をバーコーターを用いて塗布し、温度120℃で10分乾燥・硬化することにより、低屈折率層(屈折率1.38)を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0281】
実施例15
上記実施例3の場合とほゞ同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理をしたb面に、下記のようにして、帯電防止層を形成した後、ハードコート層、高屈折率層、および低屈折率層を形成した点にある。
【0282】
(帯電防止層形成用塗布組成物)
ダイヤナールBR−88(三菱レーヨン株式会社製) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 15質量部
乳酸エチル 6質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂 0.5質量部
上記の帯電防止層形成用塗布組成物を、セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施したb面上に、ウエット膜厚で12μmとなるようにダイコートし、温度80℃で、5分間乾燥して、帯電防止層を設けた。帯電防止層の表面比抵抗値は、1.0×10 Ω/cm(温度23℃、湿度55%RHで測定)であった。
【0283】
ついで、この帯電防止層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該帯電防止層の表面上に、ハードコート層形成用塗布組成物を、上記実施例3の場合と同様に塗布して、ハードコート層を形成した。
【0284】
さらに、このハードコート層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該ハードコート層の表面上に、上記実施例14に記載の高屈折率層形成用塗布組成物を、上記実施例14の場合と同様に塗布して、高屈折率層(屈折率1.95)を形成した。
【0285】
そして、この高屈折率層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該高屈折率層の表面上に、上記実施例14に記載の低屈折率層形成用塗布組成物を、上記実施例14の場合と同様に塗布して、低屈折率層(屈折率1.38)を形成した。
【0286】
実施例16
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理をしたb面に、接合用中間層および異方性層を、下記のようにして形成した点にある。
【0287】
(接合用中間層形成用塗布組成物)
ポリエステルアクリレート 25質量部
(ラロマーLR8800 BASFジャパン株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 290質量部
イソプロピルアルコール 685質量部
光重合開始剤 0.05質量部
(イルガキュア184 チバ・ジャパン株式会社製)
上記の接合用中間層形成用塗布組成物を、セルローストリアセテートフィルム基材(1)のプラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施したb面上に、ダイコートで塗布し、温度80℃で、30秒乾燥後、紫外線を120mJ/cm 、照度200mW/cm で照射して硬化した。硬化後の接合用中間層の膜厚は、1.5μmであった。
【0288】
(光学異方性層形成用塗布組成物)
紫外線重合性液晶材料 20質量部
(UCL−018、大日本インキ化学工業株式会社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80質量部
ヒンダードアミン 0.02質量部
(LS−765、三共ライフテック株式会社製)
増感剤 0.10質量部
(カヤキュアーDETX、日本化薬株式会社製)
ついで、上記の接合用中間層の表面に、プラズマ照射処理+粘着性ゴムロール処理を施して、異物を除去した後、該接合用中間層の表面上に、上記の異方性層形成用塗布組成物をダイコートで、ウェット8μmの厚みで塗布した。
【0289】
塗布後、温度100℃で、2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。つぎに、棒状液晶化合物を配向させたフィルムを、酸素濃度0.2%、温度28℃にて250mJ/cm 、照度300mW/cm で照射して硬化させ、位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの異方性層の厚みは、1.2μmであった。この位相差フィルムの全体としてのリターデーションは、面内リタデーション(Ro)が71nm、厚み方向リタデーション(Rt)が、−11nmであった。
【0290】
実施例17
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、図2に示す紫外線照射装置(20)による紫外線照射処理を、ランプ間距離2.0mm、照射時間1.0秒で照射して処理し、ついで、処理後のセルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した点にある。
【0291】
その後、ハードコート層、中屈折率層にも、上記と同じ条件で、紫外線照射処理+粘着性ゴムロール処理により異物を除去し実施後、低屈折率層形成用組成物を、上記実施例3の場合と同様に押し出しコートにて塗布して、低屈折率層を形成した。
【0292】
実施例18
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、電子線照射処理を加速電圧70kV、線量30kGyにて実施し、ついで、処理後のセルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した点にある。なお、電子線照射装置としては、岩崎電気株式会社製のEB装置を用いた。
【0293】
その後、ハードコート層、中屈折率層にも上記と同じ条件で、電子線照射処理+粘着性ゴムロール処理により異物を除去した後、低屈折率層形成用組成物を、上記実施例3の場合と同様に押し出しコートにて塗布して、低屈折率層を形成した。
【0294】
実施例19
上記実施例3の場合と同様に実施するが、上記実施例3の場合と異なる点は、上記セルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、微小ドライアイス吹付け処理を流量1.0m /min、流速200m/minにて実施し、ついで、処理後のセルローストリアセテートフィルム基材(1)の表面に粘着性ゴムロール(2)を接触させることにより、異物を除去した点にある。なお、微小ドライアイス吹付け処理装置としては、リンクスタージャパンのウェブクリーナーを用いた。
【0295】
その後、ハードコート層、中屈折率層にも上記と同じ条件で、微小ドライアイス吹付け処理+粘着性ゴムロール処理により異物を除去した後、低屈折率層形成用組成物を、上記実施例3の場合と同様に押し出しコートにて塗布して、低屈折率層を形成した。
【0296】
比較例1
比較のために、上記実施例3の場合においてセルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、ハードコート層、および中屈折率層のいずれにも、AGP処理は行なわずに、粘着性ゴムロール処理のみを行なって、異物を除去した。その他の点は、上記実施例3の場合と同様とした。
【0297】
比較例2
比較のために、上記実施例3の場合においてセルローストリアセテートフィルム基材(1)のb面に、ハードコート層、および中屈折率層のいずれにも、AGP処理のみを行なって、異物を除去し、粘着性ゴムロール処理を行なわなかった。その他の点は、上記実施例3の場合と同様とした。
【0298】
(異物による欠陥の除去評価)
上記実施例1〜19、および比較例1と2で得られた各フィルムの試料を、幅100cm、長さ100cmの大きさに切り出し、非塗布面を黒スプレー処理した後、輝点欠陥を異物欠陥としてカウントし、下記の基準で異物による欠陥の除去評価を行なった。得られた結果を下記の表1と表2に示した。
【0299】
◎:輝点欠陥が、0.01個未満
○:輝点欠陥が、0.01個以上、0.1個未満
△:輝点欠陥が、0.1個以上、1.0個未満
×:輝点欠陥が、1.0個以上
(粘着性ゴムロールの耐用性の評価)
つぎに、上記実施例1〜19、および比較例1と2において、粘着性ゴムロール(2)の粘着力を維持できる使用期間を測定し、粘着性ゴムロール(2)の耐用性を、粘着性ゴムロール(2)の使用開始前の粘着力を基準として、下記の段階で評価した。得られた結果を下記の表1と表2にあわせて示した。
【0300】
◎:使用開始前の粘着力×0.9以上
○:使用開始前の粘着力×0.7以上、同0.9未満
△:使用開始前の粘着力×0.5以上、同0.7未満
×:使用開始前の粘着力×0.5未満
【表1】

【表2】

【0301】
上記の表1と表2の結果より明らかなように、本発明による実施例1〜19で作製したフィルムによれば、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれかの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去するものであるから、異物欠陥の少ない良好な積層フィルムを得ることができた。また、粘着性ゴムロール(2)の粘着力を維持できる使用期間が長く、耐用性に優れていた。
【0302】
これに対し、比較例1および2で作製したフィルムによれば、異物欠陥が多く、光学性能が劣るものであった。また、粘着性ゴムロール(2)の粘着力を維持できる使用期間が短く、耐用性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】本発明の積層フィルムの製造方法を実施する第1実施形態を示すフローシートで、大気圧プラズマ照射装置を用いた場合の例である。
【図2】本発明の積層フィルムの製造方法を実施する第2実施形態を示すフローシートで、紫外線照射装置を用いた場合の例である。
【符号の説明】
【0304】
1:樹脂フィルム基材
2:粘着性ゴムロール
θ:押込み角度
10:大気圧プラズマ照射装置
a,b:対向電極
g:反応ガス
20:紫外線照射装置
u:紫外線ランプ
r:反射板
p:パージガス
q:石英ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム基材表面に1層以上の薄膜塗布を行なう工程を含む積層フィルムの製造方法であって、薄膜塗布を行なう前に、樹脂フィルム基材表面および/または下部薄膜層表面を、大気圧プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、または微小ドライアイス吹付け処理のうちのいずれか1つの方法によって処理し、ついで、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に、粘着性ゴムロールを接触させることにより、異物を除去することを特徴とする、積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
粘着性ゴムロールを、処理後の樹脂フィルム基材表面および/または処理後の下部薄膜層表面に対して、フリースパンの状態で接触させることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
粘着性ゴムロールに対する樹脂フィルム基材および/または該フィルム基材表面の下部薄膜層の押込み角度を、粘着性ゴムロールの接線方向に対し、5度以上、30度以下の範囲とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
樹脂フィルム基材表面に塗布される薄膜層が、バックコート層、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層、接合用中間層、または光学異方性層よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの層であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする、積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−125409(P2010−125409A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304059(P2008−304059)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】