説明

積層フィルム

【課題】引張強度、破断伸び、高周波シール強度及び層間接着性に優れるフィルムを提供する。
【解決手段】下記成分(A)を1〜55質量%と、成分(B)を41〜98質量%と、成分(C)を0.1〜20質量%と、を含有する樹脂組成物1からなる層(I)と(但し、各成分の合計を100質量%とする)、下記成分(D)を含有する樹脂組成物2からなる層(II)と、を積層して積層フィルムとした。
(A):ポリ乳酸系樹脂
(B):密度が860〜930kg/m3、メルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
(C):エポキシ基を有する重合体
(D):エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇の問題、炭酸ガス排出による温暖化問題等から、カーボンニュートラルな材料としてポリ乳酸系樹脂が注目されている。そしてポリ乳酸系樹脂を有効に活用するために、ポリエチレン系樹脂を配合した樹脂組成物として用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂とポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、ポリオレフィン、脂肪族ポリエステル系生分解性ポリマー及び酸又はエポキシ基含有ポレオレフィンからなる樹脂組成物が記載されている。
【特許文献1】特開2005−232228号公報
【特許文献2】特開2006−77063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2に記載されている樹脂組成物を用いて積層フィルムを製造した場合、得られる積層フィルムの引張強度、破断伸び、高周波シール強度及び層間接着性については十分とはいえなかった。
以上の課題に鑑み、本発明は引張強度、破断伸び、高周波シール強度及び層間接着性に優れるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、下記に記載の樹脂組成物を用いることにより、上記の課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下のようなものを提供する。
【0005】
即ち、本発明は
下記成分(A)を1〜55質量%と、成分(B)を41〜98質量%と、成分(C)を0.1〜20質量%と、を含有する樹脂組成物1からなる層(I)と(但し、各成分の合計を100質量%とする)、
下記成分(D)を含有する樹脂組成物2からなる層(II)と、が積層されてなる積層フィルムを提供するものである。
(A):ポリ乳酸系樹脂
(B):密度が860〜930kg/m3、メルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
(C):エポキシ基を有する重合体
(D):エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、引張強度、破断伸び、高周波シール強度及び層間接着性に優れるフィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る積層フィルムは、樹脂組成物1からなる層(I)と、樹脂組成物2からなる層(II)と、が積層されてなるものである。以下、詳細に説明する。
[樹脂組成物1]
樹脂組成物1は、(A)ポリ乳酸系樹脂(以下、成分(A)ともいう)1〜55質量%と、(B)密度が860〜930kg/m3、メルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、成分(B)ともいう)41〜98質量%と、(C)エポキシ基を有する重合体(以下、成分(C)ともいう)0.1〜20質量%と、を含有する。
【0008】
<成分(A)>
樹脂組成物1に含有されるポリ乳酸系樹脂とは、L乳酸に由来する繰り返し単位及び/又はD乳酸に由来する繰り返し単位を有するポリ乳酸(以下、単にポリ乳酸という)、又はこのポリ乳酸と他の植物由来ポリエステル樹脂との共重合体である。成分(A)は、必要に応じて、他の植物由来ポリエステル樹脂を含有していてもよい。
乳酸と共重合可能な他の植物由来のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコール及びコハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂は乳酸及び/又は他の植物由来モノマーを直接脱水重縮合する方法、又は乳酸及び/又はヒドロキシカルボン酸の環状二量体(例えば、ラクチド、グリコリド、ε−カプロラクトン)を開環重合させる方法により製造することができる。
【0009】
上記「ポリ乳酸」及び「ポリ乳酸とその他の植物由来ポリエステル樹脂との共重合体中のポリ乳酸セグメント」に含有されるL乳酸又はD乳酸に由来する繰り返し単位の含有量は、耐熱性を高める観点から、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上100万以下であり、さらに好ましくは5万以上50万以下である。分子量分布(Q値、Mw/Mn)として、好ましくは1以上4以下である。なお、分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンを分子量標準物質として測定された値を用いる。
【0010】
<成分(B)>
樹脂組成物1に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと1種類以上の炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である。
炭素原子数3〜12のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。このうち、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1を用いることが好ましく、ブテン−1、ヘキセン−1を用いることがより好ましい。
【0011】
そしてエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体等が挙げられる。このうち、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体を用いることが好ましく、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体を用いることがより好ましい。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、860〜930kg/m3であり、好ましくは880〜927kg/m3である。密度が860kg/m3未満であると、積層フィルムの製造が困難となる傾向にある。そして密度が930kg/m3を越えると、得られる積層フィルムの柔軟性が乏しくなってしまう可能性がある。なお、密度は、JIS K7112(1999)に従い測定された値を用いる。
【0013】
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜20g/10分であり、好ましくは0.3〜15g/10分であり、より好ましくは0.5〜10g/10分である。
メルトフローレートが、0.1g/10分未満であると、押出加工する際に、押出機への負荷が高くなる傾向にある。そして、メルトフローレートが20g/10分を越えると積層フィルムの高周波シール強度が低下する傾向にある。
なお、メルトフローレートは、JIS K7210(1995)に従い、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定された値を用いる。
【0014】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて製造する方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられる。チーグラー・ナッタ系触媒としては、例えば、次の(1)又は(2)の触媒系が挙げられる。
(1)三塩化チタン、三塩化バナジウム、四塩化チタン及びチタンのハロアルコラートからなる群から選ばれる少なくとも1種をマグネシウム化合物系担体に担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒系
(2)マグネシウム化合物とチタン化合物の共沈物又は共晶体と共触媒である有機金属化合物からなる触媒系
【0015】
クロム系触媒としては、例えば、シリカ又はシリカ−アルミナにクロム化合物を担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒系が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、次の(1)〜(4)の触媒系が挙げられる。
(1)シクロペンタジエン形骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物を含む成分からなる触媒系
(2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物を含む成分からなる触媒系
(3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物を含む成分からなる触媒系
(4)前記の各成分をSiO2、Al23等の無機粒子状担体や、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマー担体に担持又は含浸させて得られる触媒系
【0016】
重合方法としては、例えば、液相重合法、スラリー重合法、気相重合法、高圧イオン重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、回分重合法、連続重合法のいずれでもよく、2段階以上の多段重合法であってもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、例えば水素のような分子量調整剤を添加して重合することにより調整することが可能である。水素の添加量は、使用する触媒、製造条件によって異なる。一般的には水素の添加量を増加させるとメルトフローレートが増加する傾向にあるため、所望のメルトフローレートに応じて水素の添加量を決定することが好ましい。
そしてエチレン−α−オレフィン共重合体の密度も上記と同様、使用する触媒、製造条件によって異なるが、エチレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン濃度により調整することが可能である。なお、上記α−オレフィンの添加量は、4〜35質量%であることが好ましい。
【0017】
<成分(C)>
樹脂組成物1に含有される成分(C)は、エポキシ基を有する重合体である。エポキシ基を含有する化合物の重合体としては、エチレンに由来する単量体単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位と、を有する共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
このような共重合体としては、具体的には、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(例えば、住友化学製 商品名ボンドファースト)等が挙げられる。
【0018】
また、エポキシ基を有する化合物としては、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体やグリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体を用いることが可能である。
上記の重合による共重合体のほかに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させたものを用いることも可能であるが、このグラフト共重合体と、上記共重合体では、エポキシ基を有する単量体の付加量を多くすることができるという点で共重合体を用いることがより好ましい。
【0019】
また、エポキシ基を含有する化合物の重合体は、他の単量体に由来する単量体単位を有していてもよい。単量体単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0020】
エポキシ基を含有する化合物の重合体において、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、0.01〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%である(ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体中の全単量体単位の含有量を100質量%とする)。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、赤外法により測定された値を用いる。
【0021】
エポキシ基を含有する化合物の重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.1〜300g/10分であり、好ましくは0.5〜80g/10分である。ここでいうメルトフローレートとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定された値を用いる。
【0022】
エポキシ基を含有する化合物の重合体の製造方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等を挙げることができる。
【0023】
樹脂組成物1中の各成分の含有量は、成分(A)〜成分(C)の合計を100質量%として、成分(A)が1〜55質量%であり、成分(B)が41〜98質量%であり、成分(C)が0.1〜20質量%であることが好ましく、成分(A)が5〜50質量%であり、成分(B)が45〜90質量%であり、成分(C)が0.3〜8質量%であることがより好ましく、成分(A)が10〜45質量%であり、成分(B)が50〜85質量%であり、成分(C)が1〜6質量%であることがさらに好ましい
各成分の含有量を上記の範囲とすることにより、引張強度、破断伸び、高周波シール強度及び層間接着性に優れる積層フィルムを得ることが可能となる。
【0024】
なお、樹脂組成物1は、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、架橋剤、架橋助剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらは単独又は組み合わせて添加することが可能である。
【0025】
樹脂組成物1の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。公知のブレンド方法としては、例えば、成分(A)〜(C)と、必要に応じて添加剤等の他の成分と、をドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーが挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーが挙げられる。
混練温度は、180〜240℃であることが好ましく、190〜230℃であることがより好ましい。
【0026】
[樹脂組成物2]
樹脂組成物2は、(D)エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体を含有する。
<成分(D)>
樹脂組成物2に含有される成分(D)は、エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体である。ここで、本発明におけるエチレン系不飽和エステルとは、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル又はカルボン酸ビニルエステルをいう。
α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でもアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル及び酢酸ビニルが好ましく、さらにアクリル酸メチル及びメタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
【0027】
また、エチレンと上記エチレン系不飽和エステルとの共重合体としては、エチレンとアクリル酸メチルとの共重合体、エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体、及びエチレンと酢酸ビニルとの共重合体が好ましく、さらにエチレンとアクリル酸メチルとの共重合体、及びエチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体がより好ましい。
【0028】
エチレンと上記エチレン系不飽和エステルとの共重合体中のエチレン系不飽和エステルに由来する繰り返し構造単位の含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、10〜32質量%であることがより好ましく、15〜28質量%であることがさらに好ましい(但し、エチレンと上記エチレン系不飽和エステルとの共重合体を構成する全単量体単位の含有量を100質量%とする。)。含有量が5質量%以上とすることにより、得られる積層フィルムの高周波シール性を良好なものとすることが可能となる。また、含有量を35質量%以下とすることにより、フィルムに加工する際に溶融フィルムが粘着し、冷却ロールに巻き付く等の事態を防止し、加工性を良好なものとすることが可能となる。
なお、エチレンと上記エチレン系不飽和エステルとの共重合体中の不飽和エステルに由来する繰り返し構造単位の含有量は、赤外分光光度計により測定された値を用いる。
【0029】
エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体のメルトフローレート(MFR)は0.1〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15g/10分であり、さらに好ましくは1〜10g/10分である。MFRを0.1g/10分以上とすることにより、得られた積層フィルムを押出加工したときに押出機の負荷を低くすることが可能となる。また、MFRを20g/10分以下とすることにより、フィルムを製造する際、樹脂組成物2の押出し量が変動し、フィルムの厚みが不均一となってしまう所謂サージングの発生を防止することが可能となる。
なお、MFRは、JIS K7210に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定された値を用いる。
【0030】
エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体のメルトフローレートは、公知の製造方法、例えば、有機過酸化物や酸素等の遊離基発生剤を使用するラジカル共重合反応等が挙げられる。ラジカル共重合反応の反応条件としては、重合温度が130〜300℃であり、重合圧力が40〜300MPaであることが好ましい。
【0031】
<成分(E)>
樹脂組成物2は、上記の成分(D)以外に、ポリエチレン系樹脂(成分(E)ともいう)を含有していてもよい。
ポリエチレン系樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。このうち、フィルムの滑り性をより高める観点から、高圧法低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0032】
上記ポリエチレン系樹脂の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が挙げられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等が挙げられる。
【0033】
樹脂組成物2に、成分(E)が含有される場合には、成分(E)の含有量は5〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい(但し、成分(D)と成分(E)の合計を100質量%とする)。
【0034】
樹脂組成物2は、樹脂組成物1と同様に、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、可塑剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、防曇剤、抗菌剤、架橋剤、架橋助剤、有機多孔質パウダー、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらは単独又は組み合わせて添加することが可能である。
【0035】
樹脂組成物2の製造方法も特に限定されるものではなく、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等を用いた公知のブレンド方法を用いることが可能である。
【0036】
[積層フィルム]
本発明に係る積層フィルムは、上記樹脂組成物1からなる層(I)と、上記樹脂組成物2からなる層(II)と、の少なくとも2層が積層されてなるものである。
各層の積層形態としては、層(I)及び層(II)の順で積層されている場合や、層(II)、層(I)及び層(II)の順で順次積層されている場合等が挙げられる。
また、本発明に係る積層フィルムは、上記層(I)及び層(II)中の樹脂組成物とは異なる熱可塑性を含有する層(III)を有していてもよい。層(III)を含有する場合の各層の積層形態としては、層(II)、層(I)及び層(III)の順で順次積層されている場合や、層(II)、層(III)及び層(I)の順で順次積層されている場合等が挙げられる。いずれの場合においても層(II)は、積層フィルムの最も内側の層を形成していることが高周波シール強度を高めるという観点で好ましい。
層(III)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。これらは単独又は組み合わせて用いることが可能である。
【0037】
積層フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、5〜3000μmであることが好ましく、10〜2000μmであることがより好ましい。各層の厚さは2〜1000μmであることが好ましく、2〜500μmであることがより好ましい。
また、積層フィルム全体の厚みに対する各層の厚みの比率は、特に限定されるものではないが、層(I)及び層(II)の順で積層されている場合には、層(I)が50〜90%、層(II)が50〜10%であることが好ましい。また、層(II)、層(I)及び層(II)の順で順次積層されている場合には、層(I)が90〜50%、層(II)がそれぞれ5〜25%ずつであることが好ましい。
また、層(III)を含有する場合には、積層フィルム全体の厚みに対する各層の厚みの比率は、層(I)が90〜50%、層(II)が5〜25%、層(III)が5〜25%であることが好ましい。
【0038】
積層フィルムの製造方法としては、インフレーションフィルム製造装置やTダイフィルム製造装置等を用いた共押出し法や、押出コーティング法等の製造方法が挙げられる。
本発明に係る積層フィルムは、ティッシュペーパー、紙おむつ、生理用品等を包装するフィルムや、使い捨ての雨具等の雑貨に用いることが可能である。
【実施例】
【0039】
物性の評価は、以下の方法によって行った。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210(1995)に従い、試験荷重21.18Nで測定した。
ただし、試験温度190℃の条件で測定を行った。
(2)密度(d、単位:kg/m3
150℃でプレス成形して得られた厚さ1mmのシートを用い、JIS K7112(1999)に従い測定を行った。ただし、アニールせずに測定した。
(3)グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量(単位:質量%)
プレスシートを作成し、赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を厚さで補正して、検量線法により求めた。なお、グリシジルメタアクリレート特性吸収としては、910cm-1のピークを用いた。
【0040】
(4)引張強度及び破断伸び
JIS K6781に規定された方法に従い、測定資料の幅方向(TD方向)について測定した。
(5)層間接着性
積層フィルムから幅15mmの試験片を切り出し、両面に粘着テープを張り、手で剥離させ、層間の接着性を評価した。
評価は、層間の接着性が良好で、剥離に力を要する試験片を○、層間の接着性が弱く、容易に剥離する試験片を×として評価した。
(6)高周波シール強度
積層フィルムを2枚重ね合わせて高周波シールし、シールと直角方向に幅15mmの試験片を切り出し、ショッパー型引張試験機を用いて、200mm/分の条件で剥離させ、そのときの強度を測定した。
高周波シールの条件:装置=高周波シーラー(山本ビニター株式会社製、YPO−5)、発信周波数=40.46MHz、定盤温度=40℃、シール時間=3秒、冷却時間=2秒
【0041】
各成分として使用した樹脂は、以下の通りである。
成分(A):ポリ乳酸樹脂
ユニチカ株式会社製、商品名「テラマック TP−4000」
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体
住友化学株式会社製、商品名「エクセレンFX CX2001」(エチレン−ヘキセン−1共重合体、1−ヘキセン由来単量体単位含有量=18質量%、MFR(190℃)=2.0g/10分、密度=898kg/m3
成分(C):エポキシ基を有するエチレン系重合体
住友化学株式会社製、商品名「ボンドファーストE」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに基づく構造単位含有量=12質量%)
成分(D):エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体
成分(D−1):住友化学株式会社製 商品名「アクリフト WK307」(MFR=7g/10分、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量=25質量%)
成分(D−2):住友化学株式会社製 商品名「アクリフト WH206」(MFR=2g/10分、メタクリル酸メチル単量体単位含有量=20質量%)
成分(E):高圧法低密度ポリエチレン
住友化学株式会社製 商品名「スミカセン F101−1」(MFR=0.3g/10分)
【0042】
[実施例1]
<樹脂組成物1の製造>
成分(A)を20質量%と、成分(B)を78質量%と、成分(C)2質量%と、を一括混合した後、スクリュー径30mmの押出機を用いて220℃で溶融混練して、樹脂組成物1を得た。
【0043】
<樹脂組成物2の製造>
成分(D−1)を70質量%と、成分(E)を30質量%と、をスクリュー径30mmの押出機を用いて200℃で溶融混練して、樹脂組成物2を得た。
【0044】
<積層フィルムの製造>
田辺プラスチックス機械株式会社製の3層Tダイ加工機を使用し、押出温度220℃、冷却温度30℃、引取速度10m/分で、厚さ105μmの積層フィルムを製造した。この積層フィルムの構成は、層(II)、層(I)及び層(II)が順次積層されているものである。各層の厚みの比(層(II):層(I):層(II))は、14:72:14であった。
この積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
樹脂組成物1中の成分(A)の含有量を40質量%、成分(B)の含有量を56質量%、及び成分(C)の含有量を4質量%にした以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
樹脂組成物2として、成分(D−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例1]
樹脂組成物1中の成分(A)の含有量を60質量%、成分(B)の含有量を34質量%、及び成分(C)の含有量を6質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例2]
樹脂組成物1中の成分(A)の含有量を40質量%、及び成分(B)の含有量を60質量%とし、成分(C)を含有しなかった以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
【0049】
〔比較例3〕
樹脂組成物1として、成分(A)を成分(D−1)に変更し、その含有量を成分(D−1)40質量%、成分(B)56質量%及び成分(C)4質量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を1〜55質量%と、成分(B)を41〜98質量%と、成分(C)を0.1〜20質量%と、を含有する樹脂組成物1からなる層(I)と(但し、各成分の合計を100質量%とする)、
下記成分(D)を含有する樹脂組成物2からなる層(II)と、が積層されてなる積層フィルム。
(A):ポリ乳酸系樹脂
(B):密度が860〜930kg/m3、メルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分のエチレン−α−オレフィン共重合体
(C):エポキシ基を有する重合体
(D):エチレンとエチレン系不飽和エステルとの共重合体
【請求項2】
前記層(I)と前記層(II)の厚さの比は、90:10〜50:50である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記成分(C)は、エチレンに由来する単量体単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位と、を有する共重合体である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記成分(D)のメルトフローレートは、0.1〜20g/10分である請求項1から3いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記成分(D)中の前記不飽和エステルに由来する繰り返し構造単位の含有量は、5〜35質量%である請求項1から4いずれかに記載の積層フィルム(但し、前記成分(D)を構成する全単量体単位の含有量を100質量%とする。)。

【公開番号】特開2010−46852(P2010−46852A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211570(P2008−211570)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】