説明

積層体

【課題】発光素子において、発光材料が発する光の取出し効率を高くすることができる積層体を提供する。
【解決手段】 3層から構成される積層体であって、屈折率が1.65以上の材料からなる透明層(A層)と屈折率が1.60以下の材料からなる透明層(B層)の間に、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる透明層(中間層)を有してなり、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)である積層体。
中間層が、固定化されている液晶分子を有し、中間層の屈折率の連続的な減少が、液晶分子の配向に基づくものである前記の積層体。
前記の積層体と発光材料とを有する発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体に関する。詳しくは、発光素子に用いる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層体は、発光素子に用いられている。発光素子は、積層体と発光材料とを有し、発光材料が発した光は、積層体の厚み方向を通過して、観察者に視認される。従来の積層体としては、ITO層とガラス層とを有する積層体を挙げることができ、発光素子としては、該積層体と有機EL材料とを有する発光素子を挙げることができる(例えば特許文献1参照)。ここで、発光材料が発した光は、ITO層に入射し、ガラス層から出射して、観察者に視認される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−134964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の積層体を発光素子に用いると、発光材料が発した光について、その光量は積層体通過時に大幅に減少し、観察者が視認する光量が少なくなってしまう、すなわち発光の光取出し効率が低いという問題がある。本発明の目的は、発光素子において、発光材料が発する光の取出し効率を高くすることができる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の<1>〜<12>の発明を提供する。
<1>3層から構成される積層体であって、屈折率が1.65以上の材料からなる透明層(A層)と屈折率が1.60以下の材料からなる透明層(B層)の間に、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる透明層(中間層)を有してなり、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)である積層体。
<2>A層が、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)からなる前記<1>記載の積層体。
<3>B層が、ガラスからなる前記<1>または<2>記載の積層体。
<4>中間層が、固定化されている液晶分子を有し、中間層の屈折率の連続的な減少が、該液晶分子の配向に基づくものである前記<1>〜<3>のいずれかに記載の積層体。
<5>前記<1>〜<4>のいずれかに記載の積層体と発光材料とを有する発光素子。
<6>発光材料の発光が、積層体のA層側から入射し、積層体のB層側から出射する前記<5>記載の発光素子。
<7>発光材料が有機EL材料である前記<5>または<6>記載の発光素子。
<8>屈折率が層の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層。
<9>固定化されている液晶分子を有し、屈折率の連続的な減少が、該液晶分子の配向に基づくものである前記<8>記載の積層体用透明層。
<10>以下の(1)および(2)の工程を含むことを特徴とする屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層の製造方法。
(1)2つの相異なる配向膜を用い、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる工程。
(2)配向させた液晶分子を固定化し、液晶分子固定化層を得る工程。
<11>さらに、以下の(3)の工程を含む前記<10>記載の製造方法。
(3)液晶分子固定化層と配向膜とを分離する工程。
<12>以下の(1)、(2)、(3)および(4)の工程を含む積層体の製造方法。
(1)2つの相異なる配向膜を用い、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる工程。
(2)配向させた液晶分子を固定化し、液晶分子固定化層を得る工程。
(3)液晶分子固定化層と配向膜とを分離する工程。
(4)液晶分子固定化層を中間層として用い、A層/中間層/B層の積層体を得る工程(ここで、A層、中間層、B層は前記と同じ意味を有する。)。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光素子において、従来の積層体に比し、発光材料が発する光の取出し効率を高くすることができる積層体を得ることができることから、発光素子に有用であり、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、3層から構成される積層体であって、屈折率が1.65以上の材料からなる透明層(A層)と屈折率が1.60以下の材料からなる透明層(B層)の間に、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる透明層(中間層)を有してなり、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)である積層体を提供する。ここで、中間層において、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少し、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)であることは、積層体の厚み方向で、A層側からB層側の向きに、屈折率が連続的に減少していることを意味する。
【0008】
本発明において、透明層(A層)は、屈折率が1.65以上の材料からなる。屈折率が1.65以上の材料としては、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体等の有機材料、アルミナ、チタニア、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)及びそれらの組合せ等の無機酸化物材料を挙げることができる。本発明の効果をより高める意味で、これらの中でも、屈折率が1.70以上の材料が好ましく、より好ましくは1.80以上の材料である。また、導電性を有する材料が好ましい。屈折率が1.80以上の材料であり、導電性を有するインジウム・スズ・オキサイド(ITO)は、さらにより好ましい材料である。また、A層を構成する材料の屈折率の上限は、通常、2.50である。
【0009】
A層の膜厚としては、通常、0.01μm〜10μmであり、A層が導電性を有する場合は、0.1μm〜1μmが好ましい。
【0010】
本発明において、透明層(B層)は、屈折率が1.60以下の材料からなる。屈折率が1.60以下の材料としては、樹脂材料、無機材料を挙げることができる。樹脂材料としては、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる材料を挙げることができ、無機材料としては、ガラスを挙げることができる。本発明の効果をより高める意味で、これらの中でも、屈折率が1.55以下の材料が好ましい。屈折率が1.55以下の材料としては、ガラスを挙げることができる。また、B層を構成する材料の屈折率の下限は、通常、1.40である。
【0011】
B層の膜厚としては、通常、1μm〜500μmであり、得られる発光素子の強度と光の取出し効率向上とのバランスの観点で、好ましくは40μm〜200μmである。
【0012】
本発明において、透明層(中間層)は、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる。積層体において、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)である。
【0013】
本発明をより好ましく適応させる意味で、中間層表面(A層側)の屈折率は、A層の屈折率以下であることが好ましい。また、中間層表面(A層側)の屈折率とA層の屈折率とは、それらの値が近ければ近いほどよい。また、同様に、中間層表面(B層側)の屈折率は、B層の屈折率以上であることが好ましい。また、中間層表面(B層側)の屈折率とB層の屈折率とは、それらの値が近ければ近いほどよい。
【0014】
本発明において、中間層は、その膜厚の制御等製造の容易性の観点から、固定化されている液晶分子を有する層である場合が好ましく、この場合、上記の中間層の屈折率の連続的な減少は、液晶分子の配向に基づくものとなる。
【0015】
本発明において、中間層は、通常、0.5μm〜50μmである。光の取出し効率をより高くする意味で、好ましくは1μm〜10μmである。
【0016】
上記の中間層は、屈折率が層の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる透明層であり、積層体用として好適である。また、該透明層は、固定化されている液晶分子を有し、屈折率の連続的な減少が、該液晶分子の配向に基づくものであることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明における積層体に用いる屈折率傾斜材料からなる中間層、すなわち屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層の製造方法について述べる。本発明において、屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層は、以下の(1)および(2)の工程を含むことにより製造することができる。
(1)2つの相異なる配向膜を用い、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる工程。
(2)配向させた液晶分子を固定化し、液晶分子固定化層を得る工程。
【0018】
工程(1)において、配向膜とは、液晶分子の配向を誘起することができる膜のことを意味する。液晶分子は、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させることにより、配向する。液晶分子の配向には、大きく分けて、ホモジニアス配向とホメオトロピック配向とがある。ホモジニアス配向とは、液晶分子が棒状である場合において、配向膜に対して液晶分子が平行方向に配向する配向であり、ホメオトロピック配向とは、配向膜に対して液晶分子が垂直方向に配向する配向である。一般的には、ホメオトロピック配向の状態に比して、ホモジニアス配向の状態の方が、屈折率が高い。
【0019】
工程(1)において、2つの相異なる配向膜を用いることにより、積層体においてその厚み方向に、液晶分子の配向が連続的に変化するように、液晶分子を配向させることができる。具体的には、2つの相異なる配向膜として、液晶分子のホモジニアス配向を誘起することができる配向膜(以下、「ホモジニアス配向膜」と呼ぶことがある。)および液晶分子のホメオトロピック配向を誘起することができる配向膜(以下、「ホメオトロピック配向膜」と呼ぶことがある。)を用いた場合には、液晶分子が、積層体において、その厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化して配向し、この配向の連続的な変化によって、屈折率も、積層体においてその厚み方向に連続的に変化する。例えば、積層体においてその厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化する場合には、高い屈折率から低い屈折率に連続的に減少する。よって、この屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層の屈折率の連続的な減少は、液晶分子の配向に基づくものとなる。
【0020】
ホモジニアス配向膜の材料としては、具体的には、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ナイロンを挙げることができる。これらの配向膜は、その表面について、柔らかい布などで擦ることなどによるラビング処理を施してもよい。該処理を施した配向膜を用いることにより、液晶分子の配向がより容易となる。また、配向膜として、光配向膜を用いてもよい。ホメオトロピック配向膜の材料としては、具体的には、界面活性剤、シランカップリング剤、レシチンを挙げることができる。また、配向膜を1つしか用いなくても、配向膜を得ることができる場合はある。その場合には、配向膜と基板(ガラス等)を用い、その間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させることもある。
【0021】
液晶分子を有する液晶材料としては、以下の材料を挙げることができる。ネマチック液晶材料を挙げることもできる。また、液晶材料は、液晶分子以外に、後述の重合性材料を含むものであってもよい。
【0022】

【0023】

【0024】
上述の液晶材料および2つの相異なる配向膜を用いて、具体的には、次のようにして、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる。配向膜間に液晶材料を挟持させる手法の例としては、以下の手法(a)、(b)を挙げることができる。
(a)2つの相異なる配向膜付き基板(ここで、基板はガラス等であり、配向膜を支持する。)を用いて、配向膜が対向するようにして、粒径の制御されたビーズ等のスぺーサーを介して、貼り合わせて、セルを組み立て、このセル内に液晶材料を常圧あるいは真空下で注入する方法。このとき、スペーサーは、シール剤に含有されているものを用いてもよい。また、スペーサーは、配向膜上で枠状に配置されていてもよい。このときの模式図を図3に示す。
(b)一方の配向膜の表面に液晶材料を塗布し、塗布された液晶材料の表面に他方の配向膜を貼り合わせる方法。このとき、液晶分子固定化層の膜厚を均一に制御する観点から、貼り合わせ時や液晶材料の塗布時に、粒径の制御されたビーズ等をスペーサーとして用いてもよい。スペーサーは、一方の配向膜に液晶材料の塗布前に散布したり、液晶材料と混合したりして用いればよい。また、配向膜は、基板に支持されていてもよい。
上記手法(a)、(b)において、スペーサーとしては、ガラスファイバー、シリカ粒子、スチレン系粒子などの各種粒子を用いればよい。通常、スペーサーは、1〜10μm程度の粒子を100〜200個/mm2の割合で用いる。
【0025】
良好な液晶分子の配向を得る意味では、温度をかけて液体状態あるいは粘度の低い液晶状態にした液晶材料を配向膜間に挿入して、徐冷してもよい。その他、良好な液晶分子の配向を得るために、温度、光、その他の外部の刺激を併用してもよい。
【0026】
工程(1)において配向させた液晶分子は、工程(2)で固定化し、液晶分子固定化層を得る。該液晶分子固定化層は、屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層であり、本発明の積層体における中間層となる。固定化は、重合による方法によればよい。重合方法は、重合性を有する液晶分子を重合させることによる方法であってもよいし、液晶分子以外に重合性材料を有し、該材料を重合させることによる方法であってもよい。液晶分子固定化層の製造の容易性の観点では、液晶分子が重合性を有していることが好ましい。
【0027】
重合としては、光重合、熱重合が挙げられるが、意図した液晶分子の配向を保ちつつ固定化する観点では、光重合が好ましい。熱重合であると、加熱時に液晶相が変化し、意図した配向性が得られない場合がある。光重合の場合には、配向させた液晶分子に、光を照射し、配向させた液晶分子を固定化する。照射する光の光源としては、可視光及び/または近赤外光を発するものを用いることができる。具体的には、メタルハライドランプ、白熱灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀灯等を挙げることができる。
【0028】
上述の重合性材料としては、重合性基を有する化合物、具体的にはビニル基を有する化合物が挙げられる。液晶材料が重合性材料を含む場合においても、重合性材料を含む液晶材料中(系全体)において、液晶分子は配向する必要がある。重合性材料としては、下記の式で表される化合物が好適に使用可能である。
【0029】

【0030】
また、重合性材料として、下記で表される3つの化合物も好適に使用可能である。

【0031】
重合性材料を含む液晶材料においては、下記の各要素の量比(重量比)が好適に使用可能である。
液晶分子を有する液晶材料:100部(基準)
重合性材料:1〜100部(好ましくは5〜30部)
副材料ないし添加剤:必要に応じて、種々の副材料ないし添加剤を使用してもよい。具体的には、重合開始剤、熱安定化剤などが使用される。
【0032】
重合開始剤としては、光重合開始剤を挙げることができ、該開始剤は、紫外線等の光照射によって、上記の重合反応を進行させるものであればよく、例えば、アセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち市販されているものとしては、例えば、「IRGACURE 184」、「IRGACURE 369」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 907」、「IRGACURE 819」、「IRGACURE 2959」、「DAROCURE 1173」(いずれもチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「KAYACURE BP」、「KAYACURE DETX−S」(いずれも日本化薬社製)、「ESACURE KIP 150」(Lamberti社製)、「S−121」(シンコー技研社製)、「セイクオールBEE」(精工化学社製)、「ソルバスロンBIPE」、「ソルバスロンBIBE」(いずれも黒金化成社製)等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記のように固定化を光重合により行う場合には、液晶材料は、光照射時に、系全体で液晶分子の配向性(液晶性)を示すことが必須である。液晶性を示す温度範囲としては、室温(20℃)を含む範囲で、その範囲は広ければ広いほどよい。具体的には、例えば−50〜50℃程度(さらには−20〜40℃程度)で液晶性を示すものが好ましい。後述する実施例においては、室温20℃でネマチック液晶相を発現するものを使用している。液晶および相の同定に関しては、「液晶便覧」第1〜448頁、液晶便覧編集委員会編(丸善、2000)を参照すればよい。
【0034】
上記の固定化により、液晶分子固定化層が得られる。該液晶分子固定化層は、以下の(3)の工程により、配向膜と分離されてもよい。
(3)液晶分子固定化層と配向膜とを分離する工程。
【0035】
分離の方法は、液晶分子固定化層が破壊されなければ、特に限定されない。具体的には、例えば、物理的に剥離する方法、溶媒等に浸漬して配向膜を溶解する方法などが挙げられる。また、配向膜が、本発明におけるA層またはB層となるものであれば、分離の必要がない場合もある。また、配向膜を付ける基板として、水に溶解する材料からなるもの(例えばNaCl等)を用いれば、上記の分離が容易となる場合がある。
【0036】
上記の分離により得られる液晶分子固定化層を用いて、以下の(4)の工程により、積層体を製造することができる。
(4)液晶分子固定化層を中間層として用い、A層/中間層/B層の積層体を得る工程。
【0037】
工程(4)において、中間層が有する2つの表面のうち、屈折率が小さい側の表面とB層とを接合し、屈折率が大きい側の表面とA層とを接合して、積層体を得る。中間層製造時に、2つの相異なる配向膜として、ホモジニアス配向膜およびホメオトロピック配向膜を用いた場合には、ホモジニアス配向膜に接していた表面の方が、ホメオトロピック配向膜に接していた表面に比して、屈折率が高くなっており、この場合には、ホモジニアス配向膜に接していた表面とA層とを接合し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面とB層とを接合して積層体を得る。
【0038】
中間層とA層とを接合する方法としては、具体的には、A層を構成する材料(例えばITO)を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法によって、中間層の表面に成膜する方法が挙げられる。また、中間層の表面に、A層を構成する材料をコーティングしてもよい。コーティング方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法、2本ロールビートコート法やボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法;ダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法、スピンコート法、キャップコート法、スプレーコート法およびこれらを組み合わせたコーティング法などの方法が挙げられる。また、A層を表面に備える材料と中間層とをラミネートしてもよい。
【0039】
中間層とB層とを接合する方法としては、B層を構成する材料を用いて、A層の接合と同様に行うことができる。すなわち、中間層の表面にB層を構成する材料をコーティングしたり、B層を構成する材料をラミネートしたりすればよい。例えば、ガラス層と中間層を接合する場合には、中間層とガラス層とをラミネートすればよいが、接着層を介する場合には、接着層は、屈折率が1.60以下となるものから選択する必要があり、この場合には、接着層がB層となる。
【0040】
次に、上述の積層体と発光材料とを有する発光素子について説明する。発光材料としては、有機EL材料、化合物半導体材料または無機発光材料を挙げることができる。発光素子としては、有機EL材料を用いて得られる有機EL素子、化合物半導体材料を用いて得られる白色LED、青色LED、赤色LED、緑色LED等の化合物半導体発光素子が挙げられ、また無機発光材料を用いて得られる発光素子としては、無機EL素子、プラズマディスプレイ等の真空紫外線励起発光素子、バックライト等の紫外線励起発光素子もしくは表面電界ディスプレイ等の電子線励起発光素子を挙げることができる。また、発光素子は、本発明の効果を損なわないものであれば、フレキシブル性を有したフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0041】
上記の発光材料および積層体を用いた発光素子を設計する際には、発光材料の発光が、積層体のA層側から入射し、積層体のB層側から出射するように、発光素子を設計することが好ましく、このように設計することにより、本発明の積層体を発光素子に好ましく適用することができる。
【0042】
また、発光材料が有機EL材料である場合において、発光素子(有機EL素子)の製造面で、本発明の積層体を好ましく適用可能である。有機EL材料としては、低分子化合物、高分子化合物等公知のものを使用すればよく、成膜の容易性の観点で、高分子化合物が好ましく用いられる。低分子化合物としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを挙げることができ(特開昭57−51781号公報、同59−194393号公報等参照)、高分子化合物としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第30巻、L1941頁(1991年)参照)、ポリパラフェニレン誘導体(アドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)第4巻、36頁(1992年)参照)などを挙げることができる。
【0043】
発光素子の例として、有機EL素子の場合を例に挙げて、以下に説明する。本発明における積層体を用いて、有機EL素子は、例えば次のようにして構成される。有機EL素子は、少なくとも一方が透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に発光材料(有機EL材料)を有する発光層が配置されてなる。この場合は、有機EL素子の構成は、(陽極/発光層/陰極)と表すことができる(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。)。本発明の積層体のA層が導電性を有する場合においては、A層が、有機EL素子における一方の透明電極(陽極または陰極)となるように配置されればよい。有機EL素子の別の構成としては、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設けた有機EL素子(陽極/発光層/電子輸送層/陰極)、陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた有機EL素子(陽極/正孔輸送層/発光層/陰極)、陰極と発光層との間に、電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に、正孔輸送層を設けた有機EL素子等が挙げられる(陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)を挙げることができる。よって、本発明の積層体におけるA層を、有機EL素子における陽極または陰極として用い、上記有機EL素子の構成となるよう、上記各層(例えば、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、もう一方の電極層等)を成膜すればよい。成膜後、封止材を用いて封止することにより有機EL素子となる。封止の際には、陽極、陰極それぞれの一部は、外部電源と電気的に接続できるようにしておく必要があり、外部電源と、陽極、陰極それぞれとを電気的に接続することにより、有機EL素子は発光する。また、上記各層を構成する材料は、公知のものを使用すればよい。
【0044】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1
ホメオトロピック配向膜(レシチン)付きガラス基板とホモジニアス配向膜(ポリイミド)付きガラス基板を用いて、粒径5μmのシリカスペーサーを介して、ホメオトロピック配向膜とホモジニアス配向膜が対向するように貼り合わせてセルを作製した。また液晶分子を有する液晶材料としてA0PC3とA0T5とを用い、A0PC3:A0T5の重量比が50:50となるように秤量し混合し、さらに光重合開始剤(Irgacure184)を、液晶分子(A0PC3+A0T5)100モルに対して1モルの割合で添加して、混合して混合物(混合物1)を得て、混合物1をセル内(ホメオトロピック配向膜とホモジニアス配向膜の間)に、真空下で、封入した。ついで、高圧水銀灯からの366nmの紫外光(強度2mW/cm2)を、セルに5分間照射して、前記混合物1を重合することにより、液晶分子を固定化させた層を得た(液晶分子固定化層1)。尚、光重合開始剤であるIrgacure184は、次の式で表される。
【0046】

【0047】
液晶分子固定化層1について、液晶分子の配向の変化を調べるために、偏光顕微鏡(位相差測定用)に接続したコンペンセーター(位相差補償板)を用いて、液晶分子固定化層1に対して垂直な方向を0°とし、−50°〜50°まで角度を変えて、光を入射して、リタデーション値(位相差)の変化を計測した(図6に模式図を示す。)。計測の結果、−50°から50°になるにつれて、リタデーション値(位相差)は連続的に増大した(図7)。図7から、液晶分子固定化層1において、液晶分子の配向は、該層1の厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化し、それに伴い、高い屈折率から低い屈折率に連続的に減少することがわかった。
【0048】
液晶分子固定化層1を分離し、ホモジニアス配向膜に接していた表面にITO層をスパッタリングにより積層し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面にガラス層(板)を積層することで、積層体1を得る。積層体1のITO層を陽極として、さらに、正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を順に積層して、封止材を用いて、陽極、陰極それぞれの一部が外部に出るようにして封止して、有機EL素子1を得る。有機EL素子1における陽極、陰極それぞれと外部電源とを電気的に接続することにより、発光層が発する光は、積層体1のITO層側から入射し、ガラス層側から出射して、有機EL素子1の発光が確認でき、発光層が発する光の取出し効率は高くなる。
【0049】
実施例2
実施例1における混合物1の代わりに、A0PC3、A0T5、Irgacure184および重合性材料1の混合物(混合物2)を用いた。なお、重合性材料1は次式で表される。
【0050】

【0051】
A0PC3とA0T5と重合性材料1を、A0PC3:A0T5:重合性材料1の重量比が45:45:10となるように秤量し混合し、さらに光重合開始剤(Irgacure184)を、液晶分子(A0PC3+A0T5)100モルに対して1モルの割合で添加して、混合して、混合物2を得、混合物2を用いて、実施例1と同様にして、液晶分子を固定化させた層を得た(液晶分子固定化層2)。
【0052】
液晶分子固定化層2について、実施例1と同様にして、液晶分子の配向の変化を調べた。リタデーション値の変化を計測した結果を図7に示す。図7から、液晶分子固定化層2において、液晶分子の配向は、該層2の厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化し、それに伴い、高い屈折率から低い屈折率に連続的に減少することがわかった。
【0053】
液晶分子固定化層2を分離し、ホモジニアス配向膜に接していた表面にITO層をスパッタリングにより積層し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面にガラス層(板)を積層することで、積層体2を得る。積層体2のITO層を陽極として、さらに、正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を順に積層して、封止材を用いて、陽極、陰極それぞれの一部が外部に出るようにして封止して、有機EL素子2を得る。有機EL素子2における陽極、陰極それぞれと外部電源とを電気的に接続することにより、発光層が発する光は、積層体2のITO層側から入射し、ガラス層側から出射して、有機EL素子2の発光が確認でき、発光層が発する光の取出し効率は高くなる。
【0054】
実施例3
実施例2における重合性材料1の代わりに、次式で表される重合性材料2を用いた以外は、実施例2と同様にして、液晶分子固定化層3を得た。なお、重合性材料2は次式で表される。
【0055】

【0056】
液晶分子固定化層3について、実施例1と同様にして、液晶分子の配向の変化を調べた。リタデーション値の変化を計測した結果を図7に示す。図7から、液晶分子固定化層3において、液晶分子の配向は、該層3の厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化し、それに伴い、高い屈折率から低い屈折率に連続的に減少することがわかった。
【0057】
液晶分子固定化層3を分離し、ホモジニアス配向膜に接していた表面にITO層をスパッタリングにより積層し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面にガラス層(板)を積層することで、積層体3を得る。積層体3のITO層を陽極として、さらに、正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を順に積層して、封止材を用いて、陽極、陰極それぞれの一部が外部に出るようにして封止して、有機EL素子3を得る。有機EL素子3における陽極、陰極それぞれと外部電源とを電気的に接続することにより、発光層が発する光は、積層体3のITO層側から入射し、ガラス層側から出射して、有機EL素子3の発光が確認でき、発光層が発する光の取出し効率は高くなる。
【0058】
実施例4
実施例2における重合性材料1の代わりに、次式で表される重合性材料3を用いた以外は、実施例2と同様にして、液晶分子固定化層4を得た。なお、重合性材料3は次式で表される。
【0059】

【0060】
液晶分子固定化層4について、実施例1と同様にして、液晶分子の配向の変化を調べた。リタデーション値の変化を計測した結果を図7に示す。図7から、液晶分子固定化層4において、液晶分子の配向は、該層4の厚み方向に、ホモジニアス配向からホメオトロピック配向に連続的に変化し、それに伴い、高い屈折率から低い屈折率に連続的に減少することがわかった。
【0061】
液晶分子固定化層4を分離し、ホモジニアス配向膜に接していた表面にITO層をスパッタリングにより積層し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面にガラス層(板)を積層することで、積層体4を得る。積層体4のITO層を陽極として、さらに、正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を順に積層して、封止材を用いて、陽極、陰極それぞれの一部が外部に出るようにして封止して、有機EL素子4を得る。有機EL素子4における陽極、陰極それぞれと外部電源とを電気的に接続することにより、発光層が発する光は、積層体4のITO層側から入射し、ガラス層側から出射して、有機EL素子4の発光が確認でき、発光層が発する光の取出し効率は高くなる。
【0062】
実施例5
ホメオトロピック配向膜(レシチン)付きガラス基板とホモジニアス配向膜(ポリイミド)付きNaCl基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶固定化層5を得た。NaCl基板を水で溶解することにより、NaCl基板を分離することができた。
【0063】
液晶分子固定化層5を分離し、ホモジニアス配向膜に接していた表面にITO層をスパッタリングにより積層し、ホメオトロピック配向膜に接していた表面にガラス層(板)を積層することで、積層体5を得る。積層体5のITO層を陽極として、さらに、正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極を順に積層して、封止材を用いて、陽極、陰極それぞれの一部が外部に出るようにして封止して、有機EL素子5を得る。有機EL素子5における陽極、陰極それぞれと外部電源とを電気的に接続することにより、発光層が発する光は、積層体5のITO層側から入射し、ガラス層側から出射して、有機EL素子5の発光が確認でき、発光層が発する光の取出し効率は高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の積層体の一例を示す模式図。
【図2】本発明の積層体と有機EL材料とを有する有機EL素子の一例を示す模式図。
【図3】2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させる方法を示す図。
【図4】本発明の積層体の製造の一例を示す図。
【図5】本発明における中間層の一例を示す模式図。
【図6】リタデーション値(位相差)の変化を示す模式図。
【図7】実施例における液晶分子固定化層1、2、3および4のリタデーション値の光入射角依存性を示す図。
【符号の説明】
【0065】
10・・・B層(ガラス等)
20・・・A層(ITO等)
30・・・中間層(液晶分子固定化層)
40・・・有機EL材料からなる層
50・・・電極層
60・・・配向膜付き基板1
61・・・基板1
62・・・配向膜1
70・・・配向膜付き基板2
71・・・基板2
72・・・配向膜2
80・・・液晶分子
90・・・枠状に配置されているスペーサー(シール剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層から構成される積層体であって、屈折率が1.65以上の材料からなる透明層(A層)と屈折率が1.60以下の材料からなる透明層(B層)の間に、屈折率が積層体の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる透明層(中間層)を有してなり、中間層のA層側の屈折率をn(A)、中間層のB層側の屈折率をn(B)としたとき、n(A)>n(B)である積層体。
【請求項2】
A層が、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)からなる請求項1記載の積層体。
【請求項3】
B層が、ガラスからなる請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
中間層が、固定化されている液晶分子を有し、中間層の屈折率の連続的な減少が、該液晶分子の配向に基づくものである請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層体と発光材料とを有する発光素子。
【請求項6】
発光材料の発光が、積層体のA層側から入射し、積層体のB層側から出射する請求項5記載の発光素子。
【請求項7】
発光材料が有機EL材料である請求項5または6記載の発光素子。
【請求項8】
屈折率が層の厚み方向に連続的に減少している屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層。
【請求項9】
固定化されている液晶分子を有し、屈折率の連続的な減少が、該液晶分子の配向に基づくものである請求項8記載の積層体用透明層。
【請求項10】
以下の(1)および(2)の工程を含むことを特徴とする屈折率傾斜材料からなる積層体用透明層の製造方法。
(1)2つの相異なる配向膜を用い、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる工程。
(2)配向させた液晶分子を固定化し、液晶分子固定化層を得る工程。
【請求項11】
さらに、以下の(3)の工程を含む請求項10記載の製造方法。
(3)液晶分子固定化層と配向膜とを分離する工程。
【請求項12】
以下の(1)、(2)、(3)および(4)の工程を含む積層体の製造方法。
(1)2つの相異なる配向膜を用い、2つの配向膜間に液晶分子を有する液晶材料を挟持させ、液晶分子を配向させる工程。
(2)配向させた液晶分子を固定化し、液晶分子固定化層を得る工程。
(3)液晶分子固定化層と配向膜とを分離する工程。
(4)液晶分子固定化層を中間層として用い、A層/中間層/B層の積層体を得る工程(ここで、A層、中間層、B層は前記と同じ意味を有する。)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−55760(P2008−55760A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235405(P2006−235405)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】