説明

積層体

【課題】支持体が貼着された被支持基材から当該支持体を短時間で、且つ容易に剥離することができる積層体を提供する。
【解決手段】本発明に係る積層体は、厚さ方向に複数の貫通孔が設けられた支持体と、上記支持体によって支持される被支持基材と、上記支持体と上記被支持基材との間に設けられている、2層からなる接着層とを備えており、上記接着層のうち、上記被支持基材側に設けられている第1の接着層は、ガラス転移点が120℃以上である樹脂(A)を含んでおり、上記支持体側に設けられている第2の接着層は、ガラス転移点が80℃以下である樹脂(B)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層を介して支持体と被支持基材とが接着された積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化および薄型化することによって、パッケージ内にチップを高集積化する要求が高まっている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを25〜150μmの範囲まで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースとなる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄となるため、その強度は弱くなり、ウエハにクラックまたは反りが生じやすくなる。また、薄板化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0004】
そのため、研削するウエハにサポートプレートと呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合せることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハサポートシステムが開発されている。ウエハサポートシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄板化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハとサポートプレートとは、粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合せられている。サポートプレートが貼り付けられたウエハを薄板化した後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートを基板から剥離する。例えば、接着剤を用いてウエハとサポートプレートとを貼り合せた場合、接着剤を溶解させてウエハをサポートプレートから剥離する。
【0006】
従来、接着剤を溶解させてウエハからサポートプレートを剥離するときに、接着剤への溶剤の浸透、接着剤の溶解等に時間を要し、結果としてウエハからサポートプレートを剥離するために長時間要していた。また、サポートプレートを薄板化したウエハから剥離するとき、薄板化したウエハが破損しないように注意する必要がある。このような問題を考慮した技術が特許文献1に記載されている。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、ウエハからサポートプレートを容易に剥がすために、ウエハとサポートプレートとの貼り合せに溶解速度が異なる2層の接着層を設けている。
【0008】
また、近年では接着剤の溶解を容易且つ迅速に行なうために、厚さ方向に複数の貫通孔が形成された穴あきサポートプレートを用いて、当該貫通孔から溶剤を供給して接着剤を溶解する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−109324号公報(2010年5月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような穴あきサポートプレートを用いた場合、熱処理工程後に接着層を形成する樹脂がサポートプレートの孔に沈み込んでしまう。このような場合、ウエハからサポートプレートを剥離することが困難であり、バンプを損傷させてしまう虞もある。特許文献1に記載の技術では、接着層を高温環境に晒したときの耐性について十分に考慮されていない。よって、短時間で、且つ容易にウエハからサポートプレートを剥離することができる積層体の開発が求められている。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持体が貼着された被支持基材から当該支持体を短時間で、且つ容易に剥離することができる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る積層体は、上記の課題を解決するために、厚さ方向に複数の貫通孔が設けられた支持体と、上記支持体によって支持される被支持基材と、上記支持体と上記被支持基材との間に設けられている、2層からなる接着層とを備えており、上記接着層のうち、上記被支持基材側に設けられている第1の接着層は、ガラス転移点が120℃以上である樹脂(A)を含んでおり、上記支持体側に設けられている第2の接着層は、ガラス転移点が80℃以下である樹脂(B)を含んでいることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る積層体では、上記樹脂(A)のガラス転移点が200℃以下であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明に係る積層体では、上記樹脂(B)のガラス転移点が50℃以上であることがより好ましい。
【0015】
本発明に係る積層体では、上記樹脂(A)および上記樹脂(B)が、シクロオレフィンモノマーを含む単量体組成物を重合してなることがより好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る積層体では、上記シクロオレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、支持体が貼着された被支持基材から当該支持体を短時間で、且つ容易に剥離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔本発明に係る積層体〕
本発明に係る積層体は、厚さ方向に複数の貫通孔が設けられた支持体と、上記支持体によって支持される被支持基材と、上記支持体と上記被支持基材との間に設けられている、2層からなる接着層とを備えており、上記接着層のうち、上記被支持基材側に設けられている第1の接着層は、ガラス転移点が120℃以上である樹脂(A)を含んでおり、上記支持体側に設けられている第2の接着層は、ガラス転移点が80℃以下である樹脂(B)を含んでいればよい。これにより、熱処理工程を経た後であっても、支持体が貼着された被支持基材から当該支持体を短時間で、且つ容易に剥離することができる。
【0019】
本発明に係る積層体は、被支持基材を支持体に仮止めした積層体として用いるのであれば、具体的な用途は特に限定されない。本実施形態では、ウエハサポートシステムにおいて利用される、半導体ウエハ(被支持基材)をサポートプレート(支持体)に対して仮止めした積層体を例に挙げて説明する。
【0020】
なお、上記サポートプレートは、半導体ウエハ(以下、ウエハ)を研削するときに当該ウエハに貼り合せて、研削によって薄化したウエハにクラックおよび反りが生じないように保護するための基板である。また、本実施形態において用いられるサポートプレートには厚さ方向に複数の貫通孔が設けられており、この貫通孔はウエハからサポートプレートを剥離するときに剥離液を供給するための孔である。
【0021】
(接着層)
本発明に係る積層体では、樹脂(A)を含む第1の接着層と、樹脂(B)を含む第2の接着層とが積層された構成になっている。第1の接着層はウエハ側に設けられており、第2の接着層はサポートプレート側に設けられている。これら接着層が含む樹脂(A),(B)のガラス転移点が互いに大幅に異なることにより、耐熱性および薬品耐性を兼ね備えた接着層にすることができる。
【0022】
第1の接着層および第2の接着層の厚さは、積層体の膜厚に応じて適宜選択すればよいが、例えば、第1の接着層の膜厚は3〜30μmであることがより好ましく、第2の接着層の膜厚は10〜80μmであることがより好ましい。接着層の膜厚がこれらの範囲内であることにより、ウエハとサポートプレートとを好適に貼り付けることができる。
【0023】
(樹脂(A))
第1の接着層に含まれる樹脂(A)は、ガラス転移点が120℃以上の樹脂であればよく、好ましくはガラス転移点が120℃以上、200℃以下の樹脂である。樹脂(A)のガラス転移点がこのような範囲内であれば、積層体が高温環境に晒されても接着層の軟化を防ぎ、サポートプレートに形成された孔への沈み込みを防止することができる。
【0024】
樹脂(A)としては上記範囲内のガラス転移点を有する樹脂であればよく、例えばシクロオレフィンモノマーを含む単量体組成物を重合してなる樹脂を用いることができる。具体的には、シクロオレフィンモノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィンモノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
【0025】
シクロオレフィンモノマーとしては特に限定されないが、下記式(1)で示されるようなノルボルネン系モノマーであることがより好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
(式(1)において、RおよびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0または1である)
ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するものであればよく、例えば、ノルボルネンおよびノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエンおよびジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、ならびにこれらの多環体のアルキル(メチル、ブチル、プロピルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、およびアリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体などが挙げられる。これらの中でも、樹脂(A)としては、特に、ノルボルネンおよびノルボルナジエンなどの二環体が好ましい。
【0028】
なお、シクロオレフィンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
樹脂(A)を構成する単量体組成物は、上記シクロオレフィンモノマーの他に、シクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば下記式(2)で示されるアルケンモノマーが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
(式(2)において、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である)
アルケンモノマーは直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。当該アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンおよび1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。アルケンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
樹脂(A)を構成する単量体組成物がシクロオレフィンモノマー以外のモノマーを含有している場合、シクロオレフィンモノマーの含有量が単量体組成物全体の30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。シクロオレフィンモノマーの含有量が単量体組成物全体の30重量%以上であれば、接着層の高温環境下における軟化を好適に防止することができる。
【0033】
上記単量体成分を重合する際の重合方法および重合条件などは特に限定されるものではなく、従来公知の方法に従って適宜選択すればよい。なお、樹脂(A)は市販されている樹脂を用いてもよく、例えば、ポリプラスチックス社製の「TOPAS」(商品名)、三井化学社製の「APEL」、日本ゼオン社製の「ZEONOR」または「ZEONEX」、JSR社製の「ARTON」などが挙げられる。
【0034】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値)は、50,000〜100,000であり、より好ましくは50,000〜70,000である。樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、脱ガス量を低減させることができる。
【0035】
(樹脂(B))
第2の接着層に含まれる樹脂(B)は、ガラス転移点が80℃以下の樹脂であればよく、好ましくはガラス転移点が50℃以上、80℃以下の樹脂である。樹脂(B)のガラス転移点がこのような範囲内であれば、接着層を厚膜化することが可能であり、薬品に対する耐性を向上させることができる。また、剥離時間を短くすることができる。
【0036】
樹脂(B)としては上記範囲内のガラス転移点を有する樹脂であればよく、例えばシクロオレフィンモノマーを含む単量体組成物を重合してなる樹脂を用いることができる。具体的には、シクロオレフィンモノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィンモノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
【0037】
シクロオレフィンモノマーとしては特に限定されないが、ノルボルネン系モノマーであることがより好ましい。ノルボルネン系モノマーとしては、上記樹脂(A)の説明において列挙したものを用いることができる。これらの中でも、樹脂(B)としては、特にノルボルネンおよびノルボルナジエンなどの二環体が好ましい。なお、シクロオレフィンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
樹脂(B)を構成する単量体組成物は、上記シクロオレフィンモノマーの他に、シクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、上記樹脂(A)の説明において列挙したアルケンモノマーを用いることができる。
【0039】
アルケンモノマーは直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。当該アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンおよび1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。アルケンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
樹脂(B)を構成する単量体組成物がシクロオレフィンモノマー以外のモノマーを含有している場合、シクロオレフィンモノマーの含有量が単量体組成物全体の15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。シクロオレフィンモノマーの含有量が単量体組成物全体の15重量%以上であれば、接着層の高温環境下における軟化を好適に防止することができる。
【0041】
上記単量体成分を重合する際の重合方法および重合条件などは特に限定されるものではなく、従来公知の方法に従って適宜選択すればよい。なお、樹脂(B)は市販されている樹脂を用いてもよく、例えば、ポリプラスチックス社製の「TOPAS」(商品名)、三井化学社製の「APEL」、日本ゼオン社製の「ZEONOR」または「ZEONEX」、JSR社製の「ARTON」などが挙げられる。
【0042】
樹脂(B)の重量平均分子量(Mw:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値)は、80,000〜120,000であり、より好ましくは90,000〜110,000である。樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、脱ガス量を低減させることができる。
【0043】
(その他の成分)
第1の接着層および第2の接着層は、それぞれ本発明における本質的な特性を損なわない範囲において混和性のある他の物質をさらに含有していてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いてもよい。
【0044】
〔積層体の製造方法〕
本発明に係る積層体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0045】
まず、ウエハの上に樹脂(A)を含む第1の接着層を形成し、次いで当該第1の接着層の上に樹脂(B)を含む第2の接着層を形成した後、第2の接着層の上にサポートプレートを接着することによって本発明の積層体が得られる。また、予めサポートプレートの上に樹脂(B)を含む第2の接着層を形成し、次いで第2の接着層の上に樹脂(A)を含む第1の接着層を形成した後、第1の接着層をウエハに接着させてもよいし、予めウエハの上に第1の接着層を形成し、サポートプレートの上に第2の接着層を形成しておき、第1の接着層と第2の接着層とを貼り合せてもよい。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
(接着剤の調製)
樹脂(A)としてノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)5013」、ノルボルネン:エチレン=40:60(重量比)、ガラス転移点:130℃、Mw/Mn:1.69)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度15重量%の接着剤(A1)を得た。
【0047】
樹脂(B)としてノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)8007」、ノルボルネン:エチレン=35:65(重量比)、ガラス転移点:70℃、Mw:98,200、熱分解温度:459℃)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度25重量%の接着剤(B1)を得た。
【0048】
(積層体の作製)
まず、シリコン基板に接着剤(A1)を塗布し、100℃,170℃で各3分間ベークして、厚さ15μmの第1の接着層を形成した。次に、形成した第1の接着層の上に接着剤(B1)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ35μmの第2の接着層を形成した。その後、第2の接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、実施例1の積層体を得た。
【0049】
〔実施例2〕
樹脂(A)としてノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)6013」、ノルボルネン:エチレン=45:55(重量比)、ガラス転移点:130℃、Mw:83,300、Mw/Mn:1.72)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度15重量%の接着剤(A2)を得た。
【0050】
上記接着剤(A2)および上記接着剤(B1)を用いて、実施例1と同様の方法により実施例2の積層体を得た。
【0051】
〔実施例3〕
樹脂(A)としてノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)6015」、ノルボルネン:エチレン=50:50(重量比)、ガラス転移点:150℃)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度15重量%の接着剤(A3)を得た。
【0052】
上記接着剤(A3)および上記接着剤(B1)を用いて、実施例1と同様の方法により実施例3の積層体を得た。
【0053】
〔実施例4〕
樹脂(A)としてノルボルネンとエチレンとをメタロセン触媒にて共重合したシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製「TOPAS(商品名)6017」、ノルボルネン:エチレン=55:45(重量比)、ガラス転移点:170℃)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度15重量%の接着剤(A4)を得た。
【0054】
上記接着剤(A4)および上記接着剤(B1)を用いて、実施例1と同様の方法により実施例4の積層体を得た。
【0055】
〔比較例1〕
比較例1では、上記接着剤(B1)のみを用いて、接着層が1層からなる単層体を作製した。
【0056】
(単層体の作製)
シリコン基板に接着剤(B1)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ35μmの接着層を形成した。その後、接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、比較例1の単層体を得た。
【0057】
〔比較例2〕
比較例2では、上記接着剤(A1)のみを用いて、接着層が1層からなる単層体を作製した。
【0058】
(単層体の作製)
シリコン基板に接着剤(A1)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ15μmの接着層を形成した。その後、接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、比較例2の単層体を得た。
【0059】
〔接着層の評価〕
各実施例および各比較例の接着層を以下の試験項目により評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
耐熱性は、220℃で1時間加熱した後の接着層の沈み込み量によって評価した。沈み込みの評価手法は、接着層を切断してその断面を観察する方法、または加熱前後の接着層の厚さを測定する方法を用いて、沈み込み量が25%以下の場合は「○」とし、25%を超える場合は「×」として判定した。
【0062】
その結果、表1に示されるように、すべての実施例において耐熱性は良好であった。一方、ガラス転移点が低い樹脂のみからなる比較例1の接着層の沈み込みは25%を超え、十分な耐熱性が得られなかった。
【0063】
薬品耐性は、1%HF、2.38%TMAH、PGMEA、HO、MeOH、IPAにそれぞれ浸漬して、各薬品に対する積層体の重量変化および外観変化に基づいて評価した。評価は、重量および外観に変化が見られない場合は「○」とし、重量変化または外観変化(クラックの有無)が見られた場合は「×」と判定した。その結果、実施例1〜4の積層体はいずれも良好であったのに対し、ガラス転移点が高い樹脂のみからなる比較例2の接着層の薬品耐性は低かった。
【0064】
その他の試験項目として、接着強度(23℃〜220℃での接着強度)、アウトガス(250℃でのガス強度)、溶解性(1時間以内での溶解性)を評価した。その結果、接着強度およびアウトガスについては各実施例および各比較例はともに良好であったが、溶解性については比較例2の積層体の評価が悪かった。
【0065】
(薬品耐性の評価)
続いて、実施例1〜4および比較例1、2の積層体における薬品耐性についてさらに詳細に評価した。その結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に示されるように、実施例1〜4の積層体の各薬品に対する耐性は評価が高かった。一方、ガラス転移点が高い接着層のみを用いている比較例2の積層体はPGMEA、MeOHおよびIPAに対する耐性が低かった。
【0068】
〔実施例5〕
樹脂(B)として、下記式(3)に示すシクロオレフィンコポリマー(三井化学社製の「APEL(商品名)8008T」Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、m:n=80:20(モル比)、ガラス転移点:65℃)を用いて、p−メンタンに溶解させて、固形分濃度25重量%の接着剤(B2)を得た。
【0069】
【化3】

【0070】
上記接着剤(A3)および上記接着剤(B2)を用いて、実施例1と同様の方法により実施例5の積層体を得た。
【0071】
〔実施例6〕
実施例6では、上記接着剤(A4)および上記接着剤(B2)を用いて、実施例1と同様の方法により積層体を得た。
【0072】
〔比較例3〕
比較例3では、上記接着剤(B2)のみを用いて、接着層が1層からなる単層体を作製した。
【0073】
(単層体の作製)
シリコン基板に接着剤(B2)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ35μmの接着層を形成した。その後、接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、比較例3の単層体を得た。
【0074】
〔比較例4〕
比較例4では、上記接着剤(A3)のみを用いて、接着層が1層からなる単層体を作製した。
【0075】
(単層体の作製)
シリコン基板に接着剤(A3)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ15μmの接着層を形成した。その後、接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、比較例4の単層体を得た。
【0076】
〔比較例5〕
比較例5では、上記接着剤(A4)のみを用いて、接着層が1層からなる単層体を作製した。
【0077】
(単層体の作製)
シリコン基板に接着剤(A4)を塗布し、100℃,170℃,220℃で各5分間ベークして、厚さ15μmの接着層を形成した。その後、接着層の上に孔あきサポートプレートを220℃、圧力0.21kg/cmで貼り付け、比較例5の単層体を得た。
【0078】
〔接着層の評価〕
各実施例および各比較例の接着層を以下の試験項目により評価した。その結果を表3に示す。なお、評価手法は上記実施例1〜4および比較例1,2と同様の方法を用いて行なった。
【0079】
【表3】

【0080】
表3に示されるように、実施例5,6の積層体の耐熱性は良好であった。一方、ガラス転移点が低い樹脂のみからなる比較例3の接着層の沈み込みは25%を超え、十分な耐熱性が得られなかった。
【0081】
また、薬品耐性の評価に関しては、実施例5,6の積層体はいずれも良好であったのに対し、ガラス転移点が高い樹脂のみからなる比較例4,5の接着層の薬品耐性は低かった。なお、その他の試験項目(接着強度(23℃〜220℃での接着強度)、アウトガス(250℃でのガス強度)については実施例および比較例ともに良好であった。溶解性(1時間以内での溶解性)については比較例4および5の結果が悪かった。
【0082】
(薬品耐性の評価)
続いて、実施例5,6および比較例3〜6の積層体における薬品耐性についてさらに詳細に評価した。その結果を表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
その結果、表4に示されるように、実施例5,6の積層体の各薬品に対する耐性の評価は良好であった。一方、ガラス転移点が高い接着層のみを用いている比較例4,5の積層体はPGMEA、MeOHおよびIPAに対する耐性が低かった。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る積層体は、短時間で且つ容易に剥離することができるため、半導体ウエハ等の加工に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に複数の貫通孔が設けられた支持体と、
上記支持体によって支持される被支持基材と、
上記支持体と上記被支持基材との間に設けられている、2層からなる接着層とを備えており、
上記接着層のうち、上記被支持基材側に設けられている第1の接着層は、ガラス転移点が120℃以上である樹脂(A)を含んでおり、上記支持体側に設けられている第2の接着層は、ガラス転移点が80℃以下である樹脂(B)を含んでいることを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記樹脂(A)のガラス転移点が200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
上記樹脂(B)のガラス転移点が50℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
上記樹脂(A)および上記樹脂(B)が、シクロオレフィンモノマーを含む単量体組成物を重合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
上記シクロオレフィンモノマーがノルボルネン系モノマーであることを特徴とする請求項4に記載の積層体。

【公開番号】特開2012−152938(P2012−152938A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11857(P2011−11857)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】