説明

積層光学フィルム、液晶パネルおよび液晶表示装置

【課題】液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型化に寄与し、かつ、製造工程を簡略化し得る積層光学フィルムおよび積層光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の積層光学フィルムは、液晶表示装置に用いられ、液晶セルの視認側に配置される積層光学フィルムであって、偏光子と、該偏光子の片側に配置され、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示し、面内の位相差値Re[590]が90〜190nmである位相差層とを備え、該偏光子の吸収軸と該位相差層の遅相軸とのなす角度が5〜85°であり、該位相差層が液晶材料で形成され、該位相差層が該偏光子よりも視認側となるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層光学フィルムに関する。より詳細には、本発明は、液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型化に寄与し得る積層光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワンセグ放送の開始等により、携帯電話等の携帯機器は、画像・動画表示体としても用いられている。このことから、携帯機器の表示方法が多様化している。例えば、表示画面が面内で回転可能な携帯機器が挙げられる。このような表示画面を、偏光サングラス等の偏光レンズを介して見た場合、画像が視認できないことがある。そこで、表示画面の視認側にレンズ状の樹脂成型品である透明カバー(λ/4板)を設けた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、上記透明カバーのような新たな部材を設けると、液晶表示装置の厚みが増えてしまう。一方で、液晶表示装置の薄型化が求められている。また、部材が増えると、液晶表示装置(積層光学フィルム)の製造工程が増え、各層間に異物が混入し、混入した異物による不具合が生じる可能性が高くなる。
【特許文献1】特開2005−148119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型化に寄与し、かつ、製造工程を簡略化し得る積層光学フィルムおよび積層光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層光学フィルムは、液晶表示装置に用いられ、液晶セルの視認側に配置される積層光学フィルムであって、偏光子と、該偏光子の片側に配置され、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示し、面内の位相差値Re[590]が90〜190nmである位相差層とを備え、該偏光子の吸収軸と該位相差層の遅相軸とのなす角度が5〜85°であり、該位相差層が液晶材料で形成され、該位相差層が該偏光子よりも視認側となるように配置される。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記位相差層の上記偏光子とは反対側に配置されたハードコート層をさらに備える。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記偏光子と上記位相差層との間に配置された第1の保護フィルムをさらに備える。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記位相差層の上記偏光子とは反対側に配置された第1の保護フィルムをさらに備える。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記偏光子の吸収軸と上記位相差層とのなす角度が40〜50°である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記位相差層が液晶材料の硬化層である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記位相差層が紫外線遮断剤を含む。
【0012】
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記積層光学フィルムを備える。
【0013】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを備える。
【0014】
本発明の別の局面によれば、積層光学フィルムの製造方法が提供される。この製造方法は、液晶表示装置に用いられ、液晶セルの視認側に配置される積層光学フィルムの製造方法であって、長尺状の基板の表面に配向処理を施す工程と、該基板の表面に液晶材料を含む塗工液を塗工して、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示し、面内の位相差値Re[590]が90〜190nmである位相差層を形成する工程と、長尺状で長手方向に吸収軸を有する偏光子と該位相差層とを、それぞれ長手方向に搬送させながら、該偏光子の長手方向と該位相差層の長手方向とを揃えるようにして積層する工程とを有し、該位相差層の遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が5〜85°となるように積層し、該位相差層が該偏光子よりも視認側となるように配置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型化に寄与し、かつ、製造工程を簡略化し得る積層光学フィルムおよび積層光学フィルムの製造方法を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0017】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内の位相差値
面内の位相差値(Re[λ])は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差値
厚み方向の位相差値(Rth[λ])は、23℃、波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Rth[λ]/Re[λ]によって求められる。
【0018】
A.積層光学フィルム全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。積層光学フィルム10は、偏光子11と、偏光子11の片側に配置された位相差層12とを備える。積層光学フィルム10は、位相差層12の偏光子11とは反対側に配置されたハードコート層13と、偏光子11と位相差層12との間に配置された第1の保護フィルム14と、偏光子11の位相差層12とは反対側に配置された第2の保護フィルム15とをさらに備える。図2は、本発明の別の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。積層光学フィルム10’は、偏光子11と、偏光子11の片側に配置された位相差層12とを備える。積層光学フィルム10’は、位相差層12の偏光子11とは反対側に配置されたハードコート層13および第1の保護フィルム14と、偏光子11の位相差層12とは反対側に配置された第2の保護フィルム15とをさらに備える。本実施形態では、第1の保護フィルム14は、位相差層12とハードコート層13との間に配置されている。
【0019】
図示しないが、積層光学フィルム10,10’は、任意の適切な他の位相差層をさらに備え得る。実用的には、本発明の積層光学フィルムを構成する各部材間には、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が設けられる。各層(フィルム)については、A−1項〜A−4項で説明する。
【0020】
本発明の積層光学フィルムは、液晶表示装置に好適に用いられる。その際、本発明の積層光学フィルムは、液晶セルの視認側に配置される。また、位相差層12が偏光子11よりも視認側となるように配置される。具体的には、偏光子11が液晶セル側(位相差層12が視認側)となるように配置される。このように配置することで、偏光子11から出射する偏光を適切に楕円偏光に変換し得る。その結果、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、視認性に優れる液晶表示装置を提供し得る。
【0021】
偏光子11の吸収軸と位相差層12の遅相軸とのなす角度αは5〜85°であり、好ましくは30〜60°、さらに好ましくは40〜50°である。このような範囲に設定することにより、偏光子11から出射する偏光をより適切に楕円偏光に変換し得る。
【0022】
A−1.偏光子
本明細書において「偏光子」とは、自然光または偏光を任意の偏光に変換し得る素子をいう。好ましくは、自然光または偏光を直線偏光に変換するものである。このような偏光子は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を吸収、反射および/または散乱させる機能を有する。
【0023】
上記偏光子11は、任意の適切なものを採用し得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。
【0024】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。偏光子の厚みは、代表的には、1〜80μm程度である。
【0025】
A−2.位相差層
上記位相差層12の屈折率楕円体は、nx>ny=nzの関係を示す。ここで、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。具体的には、Nz係数(Rth[590]/Re[590])が、0.9を超え1.1未満であることをいう。
【0026】
上記位相差層は、いわゆるλ/4板として機能し得る。位相差層の波長590nmにおける面内の位相差値Re[590]は90〜190nmであり、好ましくは110〜170nm、さらに好ましくは120〜160nmである。このような範囲に設定することにより、偏光子11から出射する偏光をより適切に楕円偏光に変換し得る。
【0027】
上記位相差層は、液晶材料で形成される。液晶材料を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくし得る。その結果、所望の面内の位相差値を得るための位相差層の厚みを格段に小さくし得、得られる積層光学フィルム、液晶パネルおよび液晶表示装置の薄型化に寄与し得る。また、積層光学フィルムの製造においてロールツーロールが可能となり、製造工程を格段に短縮し得る。詳細については後述する。
【0028】
上記液晶材料は、好ましくは、その液晶相がネマチック相である(ネマチック液晶)。液晶材料の液晶性の発現機構は、リオトロピックであってもよいし、サーモトロピックであってもよい。液晶材料の配向状態は、好ましくは、ホモジニアス配向である。液晶材料としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記位相差層は、好ましくは、液晶材料の硬化層である。具体的には、液晶材料が液晶性モノマーである場合、重合性モノマーおよび/または架橋性モノマーであることが好ましい。液晶性モノマーを重合または架橋させることで、液晶性モノマーの配向状態を固定できるためである。液晶性モノマーを配向させた後に、例えば、液晶性モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた層となり得る。
【0030】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。
【0031】
上記液晶モノマーとしては、例えば、ネマチック性液晶モノマーが好ましく、具体的には、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。これらの液晶モノマーは、単独で、または2つ以上を組み合わせて用いられ得る。
【0032】
【化1】

【0033】
上記式(1)において、A1およびA2は、それぞれ重合性基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、A1およびA2はいずれか一方が水素であってもよい。Xは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−C=N−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、−CH2−O−または−NR−CO−NRを表し、Rは、HまたはC1〜C4アルキルを表し、Mはメソゲン基を表す。
【0034】
上記式(1)において、Xは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0035】
上記式(1)のモノマーの中でも、A2は、それぞれ、A1に対してオルト位に配置されていることが好ましい。
【0036】
さらに、上記A1およびA2は、それぞれ独立して、下記式
Z−X−(Sp)n ・・・(2)
で表されることが好ましく、A1およびA2は同じ基であることが好ましい。
【0037】
上記式(2)において、Zは架橋性基を表し、Xは上記式(1)で定義した通りであり、Spは、1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の置換または非置換のアルキル基からなるスペーサーを表し、nは、0または1を表す。上記Spにおける炭素鎖は、例えば、エーテル官能基中の酸素、チオエーテル官能基中の硫黄、非隣接イミノ基またはC1〜C4のアルキルイミノ基等により割り込まれていてもよい。
【0038】
上記式(2)において、Zは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましい。下記式において、Rとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等の基が挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
また、上記式(2)において、Spは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましく、下記式において、mは1〜3、pは1〜12であることが好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
上記式(1)において、Mは、下記式(3)で表されることが好ましい。下記式(3)において、Xは、上記式(1)において定義したのと同様である。Qは、例えば、置換または非置換の直鎖もしくは分枝鎖アルキレンもしくは芳香族炭化水素原子団を表す。Qは、例えば、置換または非置換の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C12アルキレン等であり得る。
【0043】
【化4】

【0044】
上記Qが芳香族炭化水素原子団である場合、例えば、下記式に表されるような原子団や、それらの置換類似体が好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
上記式で表される芳香族炭化水素原子団の置換類似体としては、例えば、芳香族環1個につき1〜4個の置換基を有してもよく、また、芳香族環または基1個につき、1または2個の置換基を有してもよい。上記置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。上記置換基としては、例えば、C1〜C4アルキル、ニトロ、F、Cl、Br、I等のハロゲン、フェニル、C1〜C4アルコキシ等が挙げられる。
【0047】
上記液晶モノマーの具体例としては、例えば、下記式(4)〜(19)で表されるモノマーが挙げられる。
【0048】
【化6】

【0049】
上記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃であり、最も好ましくは60〜90℃である。
【0050】
上記位相差層は、好ましくは、紫外線遮断剤を含む。本発明において、位相差層は偏光子よりも視認側となるように配置される。したがって、位相差層は紫外線による影響を受けやすい。位相差層が紫外線遮断剤を含有することにより、紫外線による影響が抑制され得る。具体的には、位相差層の劣化が抑制され得、位相差層の上記光学特性が良好に保たれ得る。さらには、位相差層よりも内側(液晶セル側)に配置される各部材(例えば、偏光子)に対する紫外線による影響を抑制し得る。
【0051】
上記紫外線遮断剤としては、有機系の紫外線吸収剤、無機系の紫外線散乱剤等が挙げられる。有機系の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等が挙げられる。無機系の紫外線散乱剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等が挙げられる。これらは、単独でまたは二種以上組み合わせて用い得る。好ましくは、有機系の紫外線吸収剤である。有機系の紫外線吸収剤を用いることにより、上記位相差層の厚みを達成し得、位相差層の透明性に優れ得る。
【0052】
上記位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の光学特性が得られるように設定され得る。位相差層の厚みは、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.5〜8μm、特に好ましくは0.5〜5μmである。
【0053】
A−3.ハードコート層
上記ハードコート層13は、好ましくは、任意の適切な紫外線硬化樹脂の硬化層である。紫外線硬化樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。当該添加剤の代表例としては、無機系微粒子および/または有機系微粒子が挙げられる。微粒子を含むことにより、例えば、適切な屈折率を備え得る。
【0054】
上記ハードコート層の厚みは、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは50μm以下、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜40μm、特に好ましくは1〜30μmである。ハードコート層の鉛筆硬度は、好ましくは4H以上、さらに好ましくは5H〜8Hである。
【0055】
上記ハードコート層は、代表的には、予め、基材上にハードコート処理を施して積層体とした状態で積層光学フィルムに供される。基材は、任意の適切な樹脂フィルムを採用し得る。樹脂フィルムとしては、代表的には、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。基材は、上記第1の保護フィルムとして機能してもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル系」とは、アクリル系および/またはメタクリル系をいう。
【0056】
A−4.保護フィルム
上記第1の保護フィルム14および第2の保護フィルム15としては、偏光子の保護層として機能し得る、任意の適切なフィルムを採用し得る。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0057】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0058】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0059】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0060】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、高い耐熱性、高い透明性、高い機械的強度を有する点で、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
【0061】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0062】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することもある)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0063】
上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃、最も好ましくは140℃以上である。耐久性に優れ得るからである。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0064】
上記第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムは、透明で、色付きが無いことが好ましい。第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの厚み方向の位相差値Rth[590]は、好ましくは−90nm〜+90nm、より好ましくは−80nm〜+80nm、さらに好ましくは−70nm〜+70nmである。
【0065】
上記第1の保護フィルム14の偏光子11と反対側には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。
【0066】
上記第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの厚みは、任意の適切な厚みが採用され得る。好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは3〜150μm、特に好ましくは5〜100μmである。
【0067】
A−5.積層光学フィルムの製造方法
本発明の積層光学フィルムの製造方法は、上記偏光子の片側に上記位相差層を積層する工程を有する。偏光子11と位相差層12とは、代表的には、接着剤を介して積層される。当該接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコール系接着剤が挙げられる。図1に示すように、偏光子11と位相差層12との間に第1の保護フィルム14を設ける場合、好ましくは、予め、偏光子11と第1の保護フィルム14とを積層して偏光板を作製し、第1の保護フィルム14に位相差層12を積層する。第1の保護フィルム14と位相差層12とは、代表的には、粘着剤を介して積層される。当該粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。なお、偏光子と第1の保護フィルムとは、代表的には、接着剤を介して積層する。当該接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤が挙げられる。
【0068】
1つの実施形態においては、予め、位相差層12を基板上に形成して積層体とした状態で、位相差層12を偏光子11、第1の保護フィルム14またはその他の層(例えば、ハードコート層13)に積層する。この場合、基板上に形成された位相差層12は、偏光子11、第1の保護フィルム14またはその他の層に基板から転写される。
【0069】
上記位相差層の形成方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上記基板の表面に配向処理を施し、当該表面に上記液晶材料を含む塗工液を塗工して位相差層を形成する方法が挙げられる。配向処理としては、任意の適切な配向処理を採用し得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。好ましくはラビング処理である。配向処理は、基板表面に直接施してもよく、基板上に任意の適切な配向膜(代表的には、シランカップリング剤層、ポリビニルアルコール層またはポリイミド層)を形成して当該配向膜に施してもよい。ラビング処理を施す場合、基板表面に直接施すのが好ましい。
【0070】
上記配向処理の配向方向は、上記所望の角度αに応じて設定し得る。配向処理を行うことにより、基板の配向方向に応じて液晶材料が配向し得るので、形成された位相差層の遅相軸は、基板の配向方向と実質的に同一となる。したがって、例えば、偏光子11(長尺状)が、その長手方向に吸収軸を有する場合、基板(長尺状)の長手方向に対して角度αの方向に配向処理を施す。詳細については、後述するが、このようにして位相差層を形成することにより、偏光子11(偏光板)と位相差層12とをロールツーロールで連続的に積層し得る。その結果、製造工程を格段に短縮し得る。
【0071】
上記液晶材料を含む塗工液は、代表的には、上記液晶材料を溶媒に溶解または分散させて得られ得る。溶媒としては、液晶材料の種類等に応じて、任意の適切な溶媒を採用し得る。具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ等が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶媒は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用い得る。
【0072】
上記塗工液における液晶材料の含有量は、液晶材料の種類や目的とする層の厚み等に応じて、適宜設定し得る。液晶材料の含有量は、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは15〜30重量%である。
【0073】
上記塗工液は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、重合開始剤や架橋剤が挙げられる。これらは、液晶材料として液晶モノマーを用いる場合に特に好適に用いられる。重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。架橋剤の具体例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられ得る。さらに、添加剤の具体例としては、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線遮断剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられ得る。老化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類やアルコール類が挙げられる。界面活性剤は、例えば、光学フィルムの表面を平滑にするために用いられ、具体例としては、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。紫外線遮断剤については、A−2項で説明したとおりである。
【0074】
上記紫外線遮断剤の含有量は、適宜設定し得る。好ましくは、上記液晶材料100重量部に対して0.01〜0.1重量部、さらに好ましくは0.03〜0.07重量部である。
【0075】
上記塗工液の塗工方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法等が挙げられる。塗工液の塗工量は、塗工液の濃度や目的とする層の厚み等に応じて、適宜設定し得る。例えば、塗工液の液晶材料濃度が20重量%である場合、塗工量は、透明保護フィルムの面積(100cm2)当たり、好ましくは0.03〜0.17ml、さらに好ましくは0.05〜0.15ml、最も好ましくは0.08〜0.12mlである。
【0076】
次いで、上記基板表面の配向方向に応じて、上記液晶材料を配向させる。液晶材料の配向は、使用する液晶材料が液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶材料が液晶状態をとり、基板表面の配向方向に応じて当該液晶材料が配向する。これによって、塗工により形成された層(塗工層)に複屈折性が生じ、位相差層が形成される。
【0077】
上記温度処理の温度は、液晶材料の種類に応じて適宜決定し得る。好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃、最も好ましくは60〜90℃である。また、温度処理の処理時間は、好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上、特に好ましくは2分以上、最も好ましくは4分以上である。処理時間が30秒未満である場合、液晶材料が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、処理時間は、好ましくは10分以下、さらに好ましくは8分以下、最も好ましくは7分以下である。処理時間が10分を超えると、添加剤が昇華するおそれがある。
【0078】
液晶材料として液晶モノマーを用いる場合、上記塗工層に、さらに重合処理または架橋処理を施すことが好ましい。重合処理を行うことにより、液晶モノマーが重合し、液晶モノマーがポリマー分子の繰り返し単位として固定される。架橋処理を行うことにより、液晶モノマーが3次元の網目構造を形成し、液晶モノマーが架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶材料の配向状態が固定される。なお、液晶モノマーが重合または架橋して形成されるポリマーまたは3次元網目構造は、「非液晶性」である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶分子に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。重合処理または架橋処理の具体的手順は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類によって適宜選択し得る。例えば、光重合開始剤または光架橋剤を使用する場合には光照射を行えばよく、紫外線重合開始剤または紫外線架橋剤を使用する場合には紫外線照射を行えばよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、合計の照射量等は、液晶材料の種類、基板の種類および配向処理の種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定し得る。
【0079】
本発明の積層光学フィルムの製造方法の一例における一つの工程を図3に示す。図3(a)に示すように、偏光板110(第1の保護フィルム14と偏光子11と第2の保護フィルム15との積層体)と、基板12aに位相差層12を塗工形成した積層体120とを、矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で上記接着剤(図示せず)によって貼り合わせる。このように、位相差層と偏光子(偏光板)とを搬送させながら連続的に積層することにより(ロールツーロール)、製造工程を格段に短縮し得る。また、位相差層と偏光子(偏光板)との間に異物が混入するのを防止し得、視認性に優れ得る積層光学フィルムを提供し得る。最後に、貼り合わせた積層体130から、図3(b)のようにして基板12aを剥離する。なお、図3(a)において、符号111および112は、各層を形成するフィルムを巻回するロールを示し、符号113はフィルム同士を貼り合わせるためのガイドロールを示す。
【0080】
B.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、上記積層光学フィルムを備える。図4は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。液晶パネル100は、液晶セル20と、液晶セル20の視認側に配置された積層光学フィルム10と、液晶セル20のバックライト側に配置された偏光子11’とを備える。積層光学フィルム10は、その位相差層12が偏光子11よりも視認側となるように配置されている。図示しないが、液晶パネル100は、液晶セル20と積層光学フィルム10との間および/または液晶セルと偏光子11’との間に配置される、任意の適切な他の位相差層を備え得る。また、液晶パネル100は、偏光子11’のバックライト側に配置される第3の保護フィルム14’および/または液晶セル20と偏光子11’との間に配置される第4の保護フィルム15’を備え得る。第3の保護フィルム14’としては、上記第1の保護フィルム14と同様のフィルムを採用し得る。第4の保護フィルム15’としては、上記第2の保護フィルムと同様のフィルムを採用し得る。
【0081】
実用的には、本発明の液晶パネルを構成する各部材間には、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が設けられる。
【0082】
B−1.液晶セル
上記液晶セル20は、一対の基板21、21’と、基板21、21’間に挟持された表示媒体としての液晶層22とを有する。一方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターおよびブラックマトリクス(いずれも図示せず)が設けられている。他方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)(図示せず)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線(図示せず)およびソース信号を与える信号線(図示せず)と、画素電極(図示せず)とが設けられている。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板側に設けてもよい。上記基板21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。上記基板21、21’の液晶層22と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0083】
上記液晶セル20の駆動モードとしては、任意の適切な駆動モードを採用し得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Aligned Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等が挙げられる。
【0084】
C.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルを備える。液晶パネルは、上記積層光学フィルムが視認側となるように配置されている。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各層(フィルム)の位相差値の測定方法は、以下の通りである。
(位相差値の測定)
王子計測製KOBRA−WPRを用いて自動計測した。測定波長は590nm、測定温度は23℃であった。
【0086】
[実施例1]
(位相差層の作製)
基板(TACフィルム、厚み40μm)の表面にポリビニルアルコール膜(厚み0.1μm)を形成した後、ラビング布を用いて、基板の長手方向に対して45°の方向にポリビニルアルコール膜表面をラビング処理して配向基板を作製した。
【0087】
次に、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製、商品名PaliocolorLC242)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名イルガキュア907、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤1%含有)0.5gとを、トルエン40gに溶解して、塗工液を調製した。そして、上記で得られた配向基板の表面に、当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて20mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、基板上に位相差層を形成した。得られた位相差層の厚みは1.4μmであり、面内の位相差値Re[590]は142.1nmであった。
【0088】
(ハードコート層の形成)
アクリル系樹脂原料(大日本インキ社製、商品名:GRANDIC PC1071)に、レベリング剤0.5重量%を加え、さらに、固形分濃度が50重量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、ハードコート層形成用の塗工溶液を調製した。なお、レベリング剤は、ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比で共重合させた共重合物である。
次に、得られた塗工溶液を、TACフィルム(コニカミノルタ社製、商品名:KC4UY−TAC、厚み40μm)表面に、バーコーターで塗工した後、100℃で1分間加熱し塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させて、ハードコート層(厚み3μm)を形成した。
【0089】
(積層光学フィルムの作製)
上記ハードコート層が形成されたTACフィルムのTACフィルム側に、ポリエステル系接着剤(武田薬品株式会社製、商品名:タケネートA310/タケラックA−3、溶剤:酢酸エチル、厚み4μm)を介して、上記で得られた位相差層を積層し、基板を剥がした。
その後、位相差層表面に、アクリル系粘着剤(厚み12μm)を介して偏光板(日東電工株式会社製、商品名:TEG1465DU、厚み128μm)を積層した。このとき、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とのなす角度が45°となるように積層した。
このようにして得られた積層光学フィルムの厚みは189μmであった。
【0090】
[実施例2]
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度2400、ケン化度99.9%)を、30℃の純水に浸漬膨潤させた。次いで、ヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴中に30℃で60秒間浸漬しながら染色とともに2.5倍に延伸した。次いで40℃のホウ酸水溶液中に60秒間浸漬しながら2.3倍に延伸した。さらに、ヨウ化カリウム濃度5%の水溶液に30℃で5秒間浸漬した。その後、50℃で4分間乾燥して偏光子(厚み26μm)を得た。
【0091】
(積層光学フィルムの作製)
実施例1で得られたハードコート層が形成されたTACフィルムのTACフィルム側に、ポリエステル系接着剤(武田薬品株式会社製、商品名:タケネートA310/タケラックA−3、溶剤:酢酸エチル、厚み4μm)を介して、実施例1で得られた位相差層を積層し、基板を剥がした。
その後、位相差層表面に、ポリビニルアルコール系接着剤(日本合成化学社製、商品名:Z200、厚み200nm)を介して、上記で得られた偏光子を積層した。このとき、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とのなす角度が45°となるように積層した。
その後、偏光子表面に、ポリビニルアルコール系接着剤(日本合成化学社製、商品名:Z200、厚み200nm)を介してTACフィルム(コニカミノルタ製、商品名:KC4UY−TAC、厚み40μm)を積層し、さらに、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を積層した。
このようにして得られた積層光学フィルムの厚みは137μmであった。
【0092】
(比較例1)
(積層光学フィルムの作製)
位相差層のかわりに下記の位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層光学フィルムを得た。
このようにして得られた積層光学フィルムの厚みは221μmであった。
[位相差フィルム]
長尺のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名Zeonor、厚み40μm、光弾性係数3.10×10−12/N)を140℃で1.52倍に一軸延伸することによって、長尺のフィルムを作製した。得られたフィルムを所定の大きさに切り取った。このフィルムの厚みは33μm、面内の位相差値Re[590]は140nm、厚み方向の位相差Rth[590]は140nmであった。
【0093】
(参考例1)
(積層光学フィルムの作製)
位相差層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層光学フィルムを得た。
【0094】
本発明の実施例1および実施例2の積層光学フィルムは、比較例1の積層光学フィルムに比べて、格段に薄かった。その結果、本発明の積層光学フィルムは、液晶パネル・液晶表示装置の薄型化に寄与し得る。
【0095】
本発明の実施例1で用いた位相差層および比較例1で用いた位相差フィルムについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V−570)を用いて透過率測定を行った。結果を図5に示す。図5から明らかなように、実施例1の位相差層は比較例1の位相差フィルムに比べて、波長400nm付近を境に透過率が著しく低下している。したがって、実施例1の位相差層は、優れた紫外線遮断(吸収)能を有しているといえる。
【0096】
携帯電話(シャープ製、ソフトバンクの911SH)から液晶セルを取り外し、当該液晶セルの視認側に、実施例1または参考例1で得られた積層光学フィルムを粘着剤で貼り付けた。さらに、積層光学フィルム表面に偏光板(日東電工株式会社製、商品名:TEG1465DU)を粘着剤で貼り付けた。このとき、偏光板の偏光子の吸収軸と積層光学フィルムの偏光子の吸収軸とのなす角度が90°となるように貼り付けた。このようにして得られた携帯電話の表示画面を時計回りに90°回転させたとき(横表示)と、回転させないとき(通常時、縦表示)における白輝度を測定した。測定結果を図5に示す。
【0097】
図6に示すように、実施例1の積層光学フィルムを実装した場合、縦表示時と横表示時とでは、白輝度はほとんど変化しなかった。一方、参考例1の積層光学フィルムを実装した場合、縦表示時と横表示時とでは、白輝度が著しく変化した。このことから、実施例1は、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、視認性に優れるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の積層光学フィルム、液晶パネルおよび液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用され得る。代表的には、携帯電話、携帯ゲーム機、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)等の携帯機器;バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器;商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器等に好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態による積層光学フィルムの概略断面図である。
【図3】本発明の積層光学フィルムの製造方法の一例における一つの工程を示す概略図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図5】本発明の実施例1で用いた位相差層および比較例1で用いた位相差フィルムの透過率測定の結果である。
【図6】本発明の実施例1および参考例1の白輝度測定の結果である。
【符号の説明】
【0100】
10 積層光学フィルム
11 偏光子
12 位相差層
13 ハードコート層
14 第1の保護フィルム
15 第2の保護フィルム
100 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置に用いられ、液晶セルの視認側に配置される積層光学フィルムであって、
偏光子と、該偏光子の片側に配置され、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示し、面内の位相差値Re[590]が90〜190nmである位相差層とを備え、
該偏光子の吸収軸と該位相差層の遅相軸とのなす角度が5〜85°であり、
該位相差層が液晶材料で形成され、
該位相差層が該偏光子よりも視認側となるように配置される、積層光学フィルム。
【請求項2】
前記位相差層の前記偏光子とは反対側に配置されたハードコート層をさらに備える、請求項1に記載の積層光学フィルム。
【請求項3】
前記偏光子と前記位相差層との間に配置された第1の保護フィルムをさらに備える、請求項1または2に記載の積層光学フィルム。
【請求項4】
前記位相差層の前記偏光子とは反対側に配置された第1の保護フィルムをさらに備える、請求項1または2に記載の積層光学フィルム。
【請求項5】
前記偏光子の吸収軸と前記位相差層とのなす角度が40〜50°である、請求項1から4のいずれかに記載の積層光学フィルム。
【請求項6】
前記位相差層が液晶材料の硬化層である、請求項1から5のいずれかに記載の積層光学フィルム。
【請求項7】
前記位相差層が紫外線遮断剤を含む、請求項1から6のいずれかに記載の積層光学フィルム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の積層光学フィルムを備える、液晶パネル。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶パネルを備える、液晶表示装置。
【請求項10】
液晶表示装置に用いられ、液晶セルの視認側に配置される積層光学フィルムの製造方法であって、
長尺状の基板の表面に配向処理を施す工程と、
該基板の表面に液晶材料を含む塗工液を塗工して、屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示し、面内の位相差値Re[590]が90〜190nmである位相差層を形成する工程と、
長尺状で長手方向に吸収軸を有する偏光子と該位相差層とを、それぞれ長手方向に搬送させながら、該偏光子の長手方向と該位相差層の長手方向とを揃えるようにして積層する工程とを有し、
該位相差層の遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が5〜85°となるように積層し、
該位相差層が該偏光子よりも視認側となるように配置される、積層光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−103900(P2009−103900A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275246(P2007−275246)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】