積層型フィルタ
【課題】 減衰特性をより一層向上することが可能な積層型フィルタを提供する。
【解決手段】 積層型フィルタ1においては、コイル部10は、浮遊容量発生部15との間で浮遊容量を発生するコイル部分10aと、浮遊容量発生部20との間で浮遊容量を発生するコイル部分10bとを含むこととなる。そのため、コイル部分10aと、コイル部分10a及び浮遊容量発生部15により構成されるコンデンサ部分21とが並列接続された並列共振回路23が形成され、コイル部10bと、コイル部分10b及び浮遊容量発生部20により構成されるコンデンサ部分22とが並列接続された並列共振回路24が形成される。これにより、積層型フィルタ1は並列共振回路23と並列共振回路24とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【解決手段】 積層型フィルタ1においては、コイル部10は、浮遊容量発生部15との間で浮遊容量を発生するコイル部分10aと、浮遊容量発生部20との間で浮遊容量を発生するコイル部分10bとを含むこととなる。そのため、コイル部分10aと、コイル部分10a及び浮遊容量発生部15により構成されるコンデンサ部分21とが並列接続された並列共振回路23が形成され、コイル部10bと、コイル部分10b及び浮遊容量発生部20により構成されるコンデンサ部分22とが並列接続された並列共振回路24が形成される。これにより、積層型フィルタ1は並列共振回路23と並列共振回路24とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型フィルタとして、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、積層体に形成された端子電極と、積層体内に設けられ、端子電極と電気的に接続されたコイル部及びコンデン部と、を備えるものが知られている。一例として、特許文献1に記載された積層型フィルタでは、積層体内に形成された複数のコイル導体によりコイル部が構成されると共に、積層体内に形成された複数のキャパシタ導体によりコンデンサ部が構成さており、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されている。
【特許文献1】特開2005−050973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された積層型フィルタにあっては、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されているため、共振周波数での減衰が浅く、且つ所定の挿入損失(例えば、20dB)での周波数帯域(遮断帯域)が狭い減衰特性を示す。これは、コイル部とコンデンサ部との並列共振にて減衰が生じるものの、並列共振周波数より高い周波数帯域でのコンデンサ部のインピーダンスが低いため、並列共振周波数より高い周波数帯域では、入力信号がコンデンサ部のみを通過して出力されるためである。減衰特性において減衰が浅く、且つ遮断帯域が狭い場合、除去したいノイズの周波数帯域のみを選択的に除去する回路設計技術が確立されていても、積層型フィルタ毎の減衰特性のばらつきや、実装時の部品配置による発生ノイズの帯域ばらつき等により、ノイズを十分に除去できないという問題が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、減衰特性をより一層向上することが可能な積層型フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型フィルタにおいては、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、積層体に形成された第1の端子電極及び第2の端子電極と、積層体内に形成された複数の第1の導体部が電気的に接続されることにより構成され、一端が第1の端子電極に電気的に接続されると共に、他端が第2の端子電極に電気的に接続されたコイル部と、第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように積層体内に形成された第2の導体部を有し、一端が第1の端子電極又は第2の端子電極の一方に電気的に接続された第1の浮遊容量発生部と、第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように積層体内に形成された第3の導体部を有し、一端が第1の端子電極又は第2の端子電極の他方に電気的に接続された第2の浮遊容量発生部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この積層型フィルタによれば、コイル部は、第1の浮遊容量発生部との間で浮遊容量を発生する第1のコイル部分と、第2の浮遊容量発生部との間で浮遊容量を発生する第2のコイル部分とを含むこととなる。そのため、第1のコイル部分と、第1のコイル部分及び第1の浮遊容量発生部により構成される第1のコンデンサ部分とが並列接続された第1の並列共振回路が形成され、第2のコイル部分と、第2のコイル部分及び第2の浮遊容量発生部により構成される第2のコンデンサ部分とが並列接続されて第2の並列共振回路が形成される。これにより、この積層型フィルタは、第1の並列共振回路と第2の並列共振回路とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【0007】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第1の浮遊容量発生部と第2の浮遊容量発生部との間に形成された第4の導体部を更に備えることが好ましい。この積層型フィルタによれば、2組の並列共振回路の独立性が高められた状態で減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を更に深く、且つ遮断帯域を更に広くすることができる。
【0008】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第4の導体部は、コイル部の中心軸線方向から見て、コイル部により囲まれる内側の領域を含む形状を有していることが好ましい。この積層型フィルタによれば、コイル部が発生する磁束を確実に分断することができ、2組の並列共振回路の独立性が更に高められた状態で減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を更に深く、遮断帯域をより一層広くすることができる。
【0009】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第2の導体部及び前記第3の導体部は、コイル部の中心軸線方向から見て、第1の導体部と重なる形状を有していることが好ましい。この積層型フィルタによれば、コイル部が発生する磁束を、第2の導体部及び第3の導体部が阻害することが抑制されるため、高周波帯域の特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減衰特性をより一層向上することが可能な積層型フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る積層型フィルタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係る積層型フィルタ1は、直方体状の積層体2と、積層体2の長手方向における両端部に形成された端子電極(第1の端子電極)3及び端子電極(第2の端子電極)4とを備えている。積層体2は、図2に示されるように、複数の絶縁体層61〜620が積層されて構成されている。各絶縁体層61〜620は、長方形薄板状に形成されており、端子電極3が形成される縁部から時計回りに縁部6a,6b,6c,6dを有している。
【0013】
絶縁体層64,68,616上のそれぞれには、縁部6b及び縁部6cに沿って延在する導体部(第1の導体部)71,72,73が形成されており、絶縁体層66,610,614上のそれぞれには、縁部6a及び縁部6dに沿って延在する導体部(第1の導体部)74,75,76が形成されている。また、絶縁体層62上には、端子電極3と接続された引出部81が形成されており、絶縁体層618上には、端子電極4と接続された引出部82が形成されている。
【0014】
導体部71の縁部6d側の端部と導体部74の縁部6c側の端部とは、絶縁体層65上に形成された接続部9、及び絶縁体層64,65に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部74の縁部6b側の端部と導体部72の縁部6a側の端部とは、絶縁体層67上に形成された接続部9、及び絶縁体層66,67に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。同様に、導体部72の縁部6d側の端部と導体部75の縁部6c側の端部とは、絶縁体層69上に形成された接続部9、及び絶縁体層68,69に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部76の縁部6b側の端部と導体部73の縁部6a側の端部とは、絶縁体層615上に形成された接続部9、及び絶縁体層614,615に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0015】
また、引出部81と導体部71の縁部6a側の端部とは、絶縁体層63上に形成された接続部9、及び絶縁体層62,63に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、引出部82と導体部73の縁部6d側の端部とは、絶縁体層617上に形成された接続部9、及び絶縁体層616,617に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。更に、導体部75の縁部6b側の端部と導体部76の縁部6c側の端部とは、絶縁体層611上に形成された接続部9、絶縁体層612上に形成された導体部(第4の導体部)11、絶縁体層613上に形成された接続部9、及び絶縁体層610〜613に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0016】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、積層体2内に形成された複数の導体部71〜76が電気的に接続されることにより構成されたコイル部10を備え、コイル部10は、一端が端子電極3に電気的に接続されると共に、他端が端子電極4に電気的に接続されることになる。
【0017】
絶縁体層65,69上のそれぞれには、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部(第2の導体部)121,122が形成されており、絶縁体層67上には、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部(第2の導体部)123が形成されている。また、絶縁体層63上には、端子電極3と接続された引出部13が形成されている。
【0018】
導体部121の縁部6c側の端部と導体部123の縁部6b側の端部とは、絶縁体層66上に形成された接続部9、及び絶縁体層65,66に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部123の縁部6a側の端部と導体部122の縁部6d側の端部とは、絶縁体層68上に形成された接続部9、及び絶縁体層67,68に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。また、引出部13と導体部121の縁部6d側の端部とは、絶縁体層64上に形成された接続部9、及び絶縁体層63,64に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0019】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、導体部71,74との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部121、導体部72,75との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部122、及び導体部74,72との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部123を有した浮遊容量発生部15(第1の浮遊容量発生部)を備え、浮遊容量発生部15は、一端が端子電極3に電気的に接続され、他端が端子電極4に電気的に接続されないことになる。なお、導体部121〜123はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71,72,74,75と重なる形状を有している。
【0020】
絶縁体層615上には、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部(第3の導体部)161が形成されており、絶縁体層617上には、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部(第3の導体部)162が形成されている。また、絶縁体層619上には、端子電極4と接続された引出部17が形成されている。
【0021】
導体部161の縁部6a側の端部と導体部162の縁部6d側の端部とは、絶縁体層616上に形成された接続部9、及び絶縁体層615,616に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。また、引出部17と導体部162の縁部6c側の端部とは、絶縁体層618上に形成された接続部9、及び絶縁体層617,618に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0022】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、導体部76,73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部161、及び導体部73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部162を有した浮遊容量発生部20(第2の浮遊容量発生部)を備え、浮遊容量発生部20は、一端が端子電極4に電気的に接続され、他端が端子電極3に電気的に接続されないことになる。なお、導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部73,76と重なる形状を有している。
【0023】
以上のように構成された積層型フィルタ1においては、図3及び図4に示されるように、コイル部10は、浮遊容量発生部15との間で浮遊容量を発生するコイル部分10aと、浮遊容量発生部20との間で浮遊容量を発生するコイル部分10bとを含むこととなる。そのため、コイル部分10aと、コイル部分10a及び浮遊容量発生部15により構成されるコンデンサ部分21とが並列接続された並列共振回路23が形成され、コイル部分10bと、コイル部分10b及び浮遊容量発生部20により構成されるコンデンサ部分22とが並列接続された並列共振回路24が形成される。これにより、積層型フィルタ1は、並列共振回路23と並列共振回路24とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【0024】
また、図5に示されるように、導体部11はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10により囲まれる内側の領域Rを含む形状を有している。そのため、図4に示されるように、コイル部10が発生する磁束Fが確実に分断され、2組の並列共振回路23,24の独立性が高められた状態で減衰特性が合成されることになる。従って、減衰特性において減衰を更に深く、且つ遮断帯域を更に広くすることができる。
【0025】
また、浮遊容量発生部15を構成する導体部121〜123、及び浮遊容量発生部20を構成する導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71〜76と重なる形状を有している。これにより、コイル部10が発生する磁束Fを、導体部121〜123及び導体部161,162が阻害することが抑制されるため、高周波帯域の特性を高めることができる。
【0026】
次に、積層型フィルタ1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、絶縁体層61〜620となるグリーンシートを用意する。グリーンシートは、例えば、Fe2O3、ZnO及びCuOの混合粉を原料としたスラリーをフィルム上にドクターブレード法により塗布して形成され、その厚さは、例えば、20μm程度に設定される。なお、Fe2O3、ZnO及びCuOの混合粉の代わりに、誘電体材料(TiO2、CuO、NiO及びMnCOの混合粉等)や、酸化物セラミック材料(Al2O3、SiO2、ZrO2、フォルステライト、ステアタイト、コージライト等)を用いてもよく、これらの混合粉を用いてもよい。
【0028】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートの所定の位置(すなわち、導体部71〜76、引出部81、接続部9、導体部11、導体部121,123、引出部13、及び導体部161,162においてスルーホールを形成する位置)に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。
【0029】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートに、導体部71〜76、引出部81,82、接続部9、導体部11、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17に対応する各導体パターンを形成する。各導体パターンは、例えば、銀若しくはニッケルを主成分とする導体ペーストをスクリーン印刷した後、乾燥することによって形成される。各スルーホールには、各導体パターンを形成する際に、導体ペーストが充填されることとなる。
【0030】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、800〜940度)にて焼成する。これにより、積層体2が形成されることとなる。積層体2は、例えば、完成後における長手方向の長さが1.0mm、幅が0.5mm、高さが0.5mmとなるようにする。導体部71〜76、引出部81,82、接続部9、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17の焼成後における厚さは、例えば12μm程度に設定され、導体部11の焼成後における厚さは、例えば3μm程度に設定される。導体部71〜76、引出部81,82、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17の焼成後における幅は、例えば70μm程度に設定される。
【0031】
続いて、この積層体2に端子電極3,4を形成する。これにより、積層型フィルタ1が得られることとなる。端子電極3,4は、積層体2の外表面に銀、ニッケル若しくは銅を主成分とする電極ペーストを転写した後に所定温度(例えば、600〜780℃程度)にて焼き付け、更に電気めっきを施すことにより、形成される。電気めっきには、Cu/Ni/Sn、Ni/Sn、Ni/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、又は、Ni/Ag等が用いられる。
【0032】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る積層型フィルタ1は、以下の点で第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。
【0033】
すなわち、第2の実施形態に係る積層型フィルタ1においては、図6に示されるように、浮遊容量発生部15は、導体部11に近接した絶縁体層610に形成された引出部13を介して、端子電極4と電気的に接続されている。また、浮遊容量発生部20は、導体部11に近接した絶縁体層613に形成された引出部17を介して、端子電極3に電気的に接続されている。このように、コイル部10の巻回中心部に引出部13,17を配置することにより、結合が大きくなるため、浮遊容量を大きくとることができる。
【0034】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る積層型フィルタ1は、以下の点で第2の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。
【0035】
すなわち、第3の実施形態に係る積層型フィルタ1においては、図7に示されるように、絶縁体層612上に形成された導体部11は、コイル部10から電気的に絶縁され、フローティング状態となっている。これにより、導体部11と導体部76との間、及び導体部11と導体部73との間に発生する浮遊容量が小さくなり、コイル部分10a及びコイル部10bの自己共振周波数を高く設定することができる。
【0036】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る積層型フィルタ1は、積層体2内の導体パターンにおいて第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。以下、第4の実施形態に係る積層型フィルタ1の導体パターンについて説明する。
【0037】
図8に示すように、絶縁体層63,67,615,618上のそれぞれには、縁部6a、縁部6b及び縁部6cに沿って延在する導体部71,72,73,74が形成されており、絶縁体層66,610,616上のそれぞれには、縁部6c、縁部6d及び縁部6aに沿って延在する導体部75,76,77が形成されている。また、絶縁体層62上には、端子電極3と接続された引出部81が形成されており、絶縁体層619上には、端子電極4と接続された引出部82が形成されている。
【0038】
導体部71の縁部6c側の端部と導体部75の縁部6c側の端部とは、絶縁体層64,65上に形成された接続部9、及び絶縁体層63,64,65に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部75の縁部6a側の端部と導体部72の縁部6a側の端部とは、絶縁体層66に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。同様に、導体部72の縁部6c側の端部と導体部76の縁部6c側の端部とは、絶縁体層68,69上に形成された接続部9、及び絶縁体層67,68,69に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。導体部73の縁部6c側の端部と導体部77の縁部6c側の端部とは、絶縁体層615,616に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部77の縁部a側の端部と導体部74の縁部a側の端部とは、絶縁体層617上に形成された接続部9、及び絶縁体層616,617に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0039】
また、引出部81と導体部71の縁部6a側の端部とは、絶縁体層62に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、引出部82と導体部74の縁部6c側の端部とは、絶縁体層618に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。更に、導体部76の縁部6a側の端部と導体部73の縁部6a側の端部とは、絶縁体層611上に形成された接続部9、絶縁体層612上に形成された導体部11、絶縁体層613,614上に形成された接続部9、及び絶縁体層610〜614に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0040】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、積層体2内に形成された複数の導体部71〜77が電気的に接続されることにより構成されたコイル部10を備え、コイル部10は、一端が端子電極3に電気的に接続されると共に、他端が端子電極4に電気的に接続されることになる。
【0041】
絶縁体層64,65,68,69上のそれぞれには、縁部6d、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部121〜124、及び各導体部121〜124と端子電極3とを電気的に接続する引出部13が形成されている。
【0042】
以上により、積層型フィルタ1は、導体部71との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部121を有した浮遊容量発生部151、導体部75との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部122を有した浮遊容量発生部152、導体部72との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部123を有した浮遊容量発生部153、及び導体部76との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部124を有した浮遊容量発生部154を備え、各浮遊容量発生部151〜154は、一端が端子電極3に電気的に接続されることになる。なお、導体部121〜124はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71,72,75,76と重なる形状を有している。
【0043】
絶縁体層614,617上のそれぞれには、縁部6b、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部161,162、及び各導体部161,162と、端子電極4とを電気的に接続する引出部17が形成されている。
【0044】
以上により、積層型フィルタ1は、導体部73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部161を有した浮遊容量発生部201、導体部74,77との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部162を有した浮遊容量発生部202を備え、各浮遊容量発生部201,202は、一端が端子電極4に電気的に接続されることになる。なお、導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部73,74,77と重なる形状を有している。
【0045】
以上のように構成された積層型フィルタ1によっても、第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と同様の効果が奏される。
【0046】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る積層型フィルタ1は、図9に示されるように、導体部11が存在しない点で第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。第5の実施形態に係る積層型フィルタ1においても、減衰が深く、且つ遮断帯域が広い減衰特性を得ることができる。
【0047】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る積層型フィルタ1を図10及び図11により説明する。本実施形態に係る積層型フィルタ1は、積層体2の側面に端子電極3,4を4組並設し、積層体2内に第1の実施形態に係る積層型フィルタ1を構成するコイル部10、浮遊容量発生部15及び浮遊容量発生部20を4組並設することにより形成されている。
【0048】
このように積層型フィルタ1をアレイ状に形成してもよい。
【0049】
最後に、本発明に係る積層型フィルタの減衰特性がより一層向上されていることを、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されてなる特許文献1記載の積層型フィルタと比較することにより具体的に示す。
【0050】
積層型フィルタの電気的特性を図12に示す。図中、実線Aは第1の実施形態に係る積層型フィルタ、鎖線Bは第5の実施形態に係る積層型フィルタ、点線Cは特許文献1記載の積層型フィルタを示している。例えば20dBの挿入損失での周波数帯域は第1の実施形態に係る積層型フィルタでは約460MHz、第5の実施形態に係る積層型フィルタでは約250MHz、特許文献1記載の積層型フィルタでは100MHzである。以上のことから、本発明により減衰特性がより一層向上されることが確認された。
【0051】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、第1〜第4の実施形態及び第6の実施形態に係る積層型フィルタ1では、浮遊容量発生部15と浮遊容量発生部20との間に形成された導体部11を備えていれば、コイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10により囲まれる内側の領域Rを含む形状を有していなくともよい。
【0053】
また、第4の実施形態に係る積層型フィルタでは、導体部71と導体部75との間に設けられた浮遊容量発生部151,152はどちらか一方が存在していればよく、他方は存在していなくともよい。導体部72と導体部76との間に設けられた浮遊容量発生部153,154に関しても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る積層型フィルタの等価回路を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に係る積層型フィルタの磁束分断の様子を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る積層型フィルタのコイル部をその中心軸線方向から見た図である。
【図6】第2の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図7】第3の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図8】第4の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図9】第5の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図10】第6の実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図11】第6の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図12】積層型フィルタの電気的特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・積層型フィルタ、2・・・積層体、3・・・端子電極(第1の端子電極)、4・・・端子電極(第2の端子電極)、61〜620・・・絶縁体層、71〜77・・・導体部(第1の導体部)、10・・・コイル部、11・・・導体部(第4の導体部)、121〜124・・・導体部(第2の導体部)、15,151〜154・・・浮遊容量発生部(第1の浮遊容量発生部)、161,162,・・・導体部(第3の導体部)、20,201,202・・・浮遊容量発生部(第2の浮遊容量発生部)、F・・・磁束、L・・・中心軸線、R・・・領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層型フィルタとして、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、積層体に形成された端子電極と、積層体内に設けられ、端子電極と電気的に接続されたコイル部及びコンデン部と、を備えるものが知られている。一例として、特許文献1に記載された積層型フィルタでは、積層体内に形成された複数のコイル導体によりコイル部が構成されると共に、積層体内に形成された複数のキャパシタ導体によりコンデンサ部が構成さており、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されている。
【特許文献1】特開2005−050973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された積層型フィルタにあっては、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されているため、共振周波数での減衰が浅く、且つ所定の挿入損失(例えば、20dB)での周波数帯域(遮断帯域)が狭い減衰特性を示す。これは、コイル部とコンデンサ部との並列共振にて減衰が生じるものの、並列共振周波数より高い周波数帯域でのコンデンサ部のインピーダンスが低いため、並列共振周波数より高い周波数帯域では、入力信号がコンデンサ部のみを通過して出力されるためである。減衰特性において減衰が浅く、且つ遮断帯域が狭い場合、除去したいノイズの周波数帯域のみを選択的に除去する回路設計技術が確立されていても、積層型フィルタ毎の減衰特性のばらつきや、実装時の部品配置による発生ノイズの帯域ばらつき等により、ノイズを十分に除去できないという問題が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、減衰特性をより一層向上することが可能な積層型フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型フィルタにおいては、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、積層体に形成された第1の端子電極及び第2の端子電極と、積層体内に形成された複数の第1の導体部が電気的に接続されることにより構成され、一端が第1の端子電極に電気的に接続されると共に、他端が第2の端子電極に電気的に接続されたコイル部と、第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように積層体内に形成された第2の導体部を有し、一端が第1の端子電極又は第2の端子電極の一方に電気的に接続された第1の浮遊容量発生部と、第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように積層体内に形成された第3の導体部を有し、一端が第1の端子電極又は第2の端子電極の他方に電気的に接続された第2の浮遊容量発生部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この積層型フィルタによれば、コイル部は、第1の浮遊容量発生部との間で浮遊容量を発生する第1のコイル部分と、第2の浮遊容量発生部との間で浮遊容量を発生する第2のコイル部分とを含むこととなる。そのため、第1のコイル部分と、第1のコイル部分及び第1の浮遊容量発生部により構成される第1のコンデンサ部分とが並列接続された第1の並列共振回路が形成され、第2のコイル部分と、第2のコイル部分及び第2の浮遊容量発生部により構成される第2のコンデンサ部分とが並列接続されて第2の並列共振回路が形成される。これにより、この積層型フィルタは、第1の並列共振回路と第2の並列共振回路とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【0007】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第1の浮遊容量発生部と第2の浮遊容量発生部との間に形成された第4の導体部を更に備えることが好ましい。この積層型フィルタによれば、2組の並列共振回路の独立性が高められた状態で減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を更に深く、且つ遮断帯域を更に広くすることができる。
【0008】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第4の導体部は、コイル部の中心軸線方向から見て、コイル部により囲まれる内側の領域を含む形状を有していることが好ましい。この積層型フィルタによれば、コイル部が発生する磁束を確実に分断することができ、2組の並列共振回路の独立性が更に高められた状態で減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を更に深く、遮断帯域をより一層広くすることができる。
【0009】
また、本発明に係る積層型フィルタにおいては、第2の導体部及び前記第3の導体部は、コイル部の中心軸線方向から見て、第1の導体部と重なる形状を有していることが好ましい。この積層型フィルタによれば、コイル部が発生する磁束を、第2の導体部及び第3の導体部が阻害することが抑制されるため、高周波帯域の特性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減衰特性をより一層向上することが可能な積層型フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る積層型フィルタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係る積層型フィルタ1は、直方体状の積層体2と、積層体2の長手方向における両端部に形成された端子電極(第1の端子電極)3及び端子電極(第2の端子電極)4とを備えている。積層体2は、図2に示されるように、複数の絶縁体層61〜620が積層されて構成されている。各絶縁体層61〜620は、長方形薄板状に形成されており、端子電極3が形成される縁部から時計回りに縁部6a,6b,6c,6dを有している。
【0013】
絶縁体層64,68,616上のそれぞれには、縁部6b及び縁部6cに沿って延在する導体部(第1の導体部)71,72,73が形成されており、絶縁体層66,610,614上のそれぞれには、縁部6a及び縁部6dに沿って延在する導体部(第1の導体部)74,75,76が形成されている。また、絶縁体層62上には、端子電極3と接続された引出部81が形成されており、絶縁体層618上には、端子電極4と接続された引出部82が形成されている。
【0014】
導体部71の縁部6d側の端部と導体部74の縁部6c側の端部とは、絶縁体層65上に形成された接続部9、及び絶縁体層64,65に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部74の縁部6b側の端部と導体部72の縁部6a側の端部とは、絶縁体層67上に形成された接続部9、及び絶縁体層66,67に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。同様に、導体部72の縁部6d側の端部と導体部75の縁部6c側の端部とは、絶縁体層69上に形成された接続部9、及び絶縁体層68,69に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部76の縁部6b側の端部と導体部73の縁部6a側の端部とは、絶縁体層615上に形成された接続部9、及び絶縁体層614,615に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0015】
また、引出部81と導体部71の縁部6a側の端部とは、絶縁体層63上に形成された接続部9、及び絶縁体層62,63に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、引出部82と導体部73の縁部6d側の端部とは、絶縁体層617上に形成された接続部9、及び絶縁体層616,617に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。更に、導体部75の縁部6b側の端部と導体部76の縁部6c側の端部とは、絶縁体層611上に形成された接続部9、絶縁体層612上に形成された導体部(第4の導体部)11、絶縁体層613上に形成された接続部9、及び絶縁体層610〜613に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0016】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、積層体2内に形成された複数の導体部71〜76が電気的に接続されることにより構成されたコイル部10を備え、コイル部10は、一端が端子電極3に電気的に接続されると共に、他端が端子電極4に電気的に接続されることになる。
【0017】
絶縁体層65,69上のそれぞれには、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部(第2の導体部)121,122が形成されており、絶縁体層67上には、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部(第2の導体部)123が形成されている。また、絶縁体層63上には、端子電極3と接続された引出部13が形成されている。
【0018】
導体部121の縁部6c側の端部と導体部123の縁部6b側の端部とは、絶縁体層66上に形成された接続部9、及び絶縁体層65,66に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部123の縁部6a側の端部と導体部122の縁部6d側の端部とは、絶縁体層68上に形成された接続部9、及び絶縁体層67,68に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。また、引出部13と導体部121の縁部6d側の端部とは、絶縁体層64上に形成された接続部9、及び絶縁体層63,64に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0019】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、導体部71,74との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部121、導体部72,75との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部122、及び導体部74,72との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部123を有した浮遊容量発生部15(第1の浮遊容量発生部)を備え、浮遊容量発生部15は、一端が端子電極3に電気的に接続され、他端が端子電極4に電気的に接続されないことになる。なお、導体部121〜123はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71,72,74,75と重なる形状を有している。
【0020】
絶縁体層615上には、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部(第3の導体部)161が形成されており、絶縁体層617上には、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部(第3の導体部)162が形成されている。また、絶縁体層619上には、端子電極4と接続された引出部17が形成されている。
【0021】
導体部161の縁部6a側の端部と導体部162の縁部6d側の端部とは、絶縁体層616上に形成された接続部9、及び絶縁体層615,616に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。また、引出部17と導体部162の縁部6c側の端部とは、絶縁体層618上に形成された接続部9、及び絶縁体層617,618に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0022】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、導体部76,73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部161、及び導体部73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部162を有した浮遊容量発生部20(第2の浮遊容量発生部)を備え、浮遊容量発生部20は、一端が端子電極4に電気的に接続され、他端が端子電極3に電気的に接続されないことになる。なお、導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部73,76と重なる形状を有している。
【0023】
以上のように構成された積層型フィルタ1においては、図3及び図4に示されるように、コイル部10は、浮遊容量発生部15との間で浮遊容量を発生するコイル部分10aと、浮遊容量発生部20との間で浮遊容量を発生するコイル部分10bとを含むこととなる。そのため、コイル部分10aと、コイル部分10a及び浮遊容量発生部15により構成されるコンデンサ部分21とが並列接続された並列共振回路23が形成され、コイル部分10bと、コイル部分10b及び浮遊容量発生部20により構成されるコンデンサ部分22とが並列接続された並列共振回路24が形成される。これにより、積層型フィルタ1は、並列共振回路23と並列共振回路24とが直列に接続された回路構成となり、2組の減衰特性が合成されるため、減衰特性において減衰を深く、且つ遮断帯域を広くすることができる。
【0024】
また、図5に示されるように、導体部11はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10により囲まれる内側の領域Rを含む形状を有している。そのため、図4に示されるように、コイル部10が発生する磁束Fが確実に分断され、2組の並列共振回路23,24の独立性が高められた状態で減衰特性が合成されることになる。従って、減衰特性において減衰を更に深く、且つ遮断帯域を更に広くすることができる。
【0025】
また、浮遊容量発生部15を構成する導体部121〜123、及び浮遊容量発生部20を構成する導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71〜76と重なる形状を有している。これにより、コイル部10が発生する磁束Fを、導体部121〜123及び導体部161,162が阻害することが抑制されるため、高周波帯域の特性を高めることができる。
【0026】
次に、積層型フィルタ1の製造方法について説明する。
【0027】
まず、絶縁体層61〜620となるグリーンシートを用意する。グリーンシートは、例えば、Fe2O3、ZnO及びCuOの混合粉を原料としたスラリーをフィルム上にドクターブレード法により塗布して形成され、その厚さは、例えば、20μm程度に設定される。なお、Fe2O3、ZnO及びCuOの混合粉の代わりに、誘電体材料(TiO2、CuO、NiO及びMnCOの混合粉等)や、酸化物セラミック材料(Al2O3、SiO2、ZrO2、フォルステライト、ステアタイト、コージライト等)を用いてもよく、これらの混合粉を用いてもよい。
【0028】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートの所定の位置(すなわち、導体部71〜76、引出部81、接続部9、導体部11、導体部121,123、引出部13、及び導体部161,162においてスルーホールを形成する位置)に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。
【0029】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートに、導体部71〜76、引出部81,82、接続部9、導体部11、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17に対応する各導体パターンを形成する。各導体パターンは、例えば、銀若しくはニッケルを主成分とする導体ペーストをスクリーン印刷した後、乾燥することによって形成される。各スルーホールには、各導体パターンを形成する際に、導体ペーストが充填されることとなる。
【0030】
続いて、絶縁体層61〜620となる各グリーンシートを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、800〜940度)にて焼成する。これにより、積層体2が形成されることとなる。積層体2は、例えば、完成後における長手方向の長さが1.0mm、幅が0.5mm、高さが0.5mmとなるようにする。導体部71〜76、引出部81,82、接続部9、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17の焼成後における厚さは、例えば12μm程度に設定され、導体部11の焼成後における厚さは、例えば3μm程度に設定される。導体部71〜76、引出部81,82、導体部121〜123、引出部13、導体部161,162、引出部17の焼成後における幅は、例えば70μm程度に設定される。
【0031】
続いて、この積層体2に端子電極3,4を形成する。これにより、積層型フィルタ1が得られることとなる。端子電極3,4は、積層体2の外表面に銀、ニッケル若しくは銅を主成分とする電極ペーストを転写した後に所定温度(例えば、600〜780℃程度)にて焼き付け、更に電気めっきを施すことにより、形成される。電気めっきには、Cu/Ni/Sn、Ni/Sn、Ni/Au、Ni/Pd/Au、Ni/Pd/Ag、又は、Ni/Ag等が用いられる。
【0032】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る積層型フィルタ1は、以下の点で第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。
【0033】
すなわち、第2の実施形態に係る積層型フィルタ1においては、図6に示されるように、浮遊容量発生部15は、導体部11に近接した絶縁体層610に形成された引出部13を介して、端子電極4と電気的に接続されている。また、浮遊容量発生部20は、導体部11に近接した絶縁体層613に形成された引出部17を介して、端子電極3に電気的に接続されている。このように、コイル部10の巻回中心部に引出部13,17を配置することにより、結合が大きくなるため、浮遊容量を大きくとることができる。
【0034】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る積層型フィルタ1は、以下の点で第2の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。
【0035】
すなわち、第3の実施形態に係る積層型フィルタ1においては、図7に示されるように、絶縁体層612上に形成された導体部11は、コイル部10から電気的に絶縁され、フローティング状態となっている。これにより、導体部11と導体部76との間、及び導体部11と導体部73との間に発生する浮遊容量が小さくなり、コイル部分10a及びコイル部10bの自己共振周波数を高く設定することができる。
【0036】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る積層型フィルタ1は、積層体2内の導体パターンにおいて第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。以下、第4の実施形態に係る積層型フィルタ1の導体パターンについて説明する。
【0037】
図8に示すように、絶縁体層63,67,615,618上のそれぞれには、縁部6a、縁部6b及び縁部6cに沿って延在する導体部71,72,73,74が形成されており、絶縁体層66,610,616上のそれぞれには、縁部6c、縁部6d及び縁部6aに沿って延在する導体部75,76,77が形成されている。また、絶縁体層62上には、端子電極3と接続された引出部81が形成されており、絶縁体層619上には、端子電極4と接続された引出部82が形成されている。
【0038】
導体部71の縁部6c側の端部と導体部75の縁部6c側の端部とは、絶縁体層64,65上に形成された接続部9、及び絶縁体層63,64,65に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部75の縁部6a側の端部と導体部72の縁部6a側の端部とは、絶縁体層66に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。同様に、導体部72の縁部6c側の端部と導体部76の縁部6c側の端部とは、絶縁体層68,69上に形成された接続部9、及び絶縁体層67,68,69に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。導体部73の縁部6c側の端部と導体部77の縁部6c側の端部とは、絶縁体層615,616に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、導体部77の縁部a側の端部と導体部74の縁部a側の端部とは、絶縁体層617上に形成された接続部9、及び絶縁体層616,617に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0039】
また、引出部81と導体部71の縁部6a側の端部とは、絶縁体層62に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されており、引出部82と導体部74の縁部6c側の端部とは、絶縁体層618に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。更に、導体部76の縁部6a側の端部と導体部73の縁部6a側の端部とは、絶縁体層611上に形成された接続部9、絶縁体層612上に形成された導体部11、絶縁体層613,614上に形成された接続部9、及び絶縁体層610〜614に形成されたスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0040】
以上の電気的接続により、積層型フィルタ1は、積層体2内に形成された複数の導体部71〜77が電気的に接続されることにより構成されたコイル部10を備え、コイル部10は、一端が端子電極3に電気的に接続されると共に、他端が端子電極4に電気的に接続されることになる。
【0041】
絶縁体層64,65,68,69上のそれぞれには、縁部6d、縁部6a及び縁部6bに沿って延在する導体部121〜124、及び各導体部121〜124と端子電極3とを電気的に接続する引出部13が形成されている。
【0042】
以上により、積層型フィルタ1は、導体部71との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部121を有した浮遊容量発生部151、導体部75との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部122を有した浮遊容量発生部152、導体部72との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部123を有した浮遊容量発生部153、及び導体部76との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部124を有した浮遊容量発生部154を備え、各浮遊容量発生部151〜154は、一端が端子電極3に電気的に接続されることになる。なお、導体部121〜124はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部71,72,75,76と重なる形状を有している。
【0043】
絶縁体層614,617上のそれぞれには、縁部6b、縁部6c及び縁部6dに沿って延在する導体部161,162、及び各導体部161,162と、端子電極4とを電気的に接続する引出部17が形成されている。
【0044】
以上により、積層型フィルタ1は、導体部73との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部161を有した浮遊容量発生部201、導体部74,77との間で浮遊容量を発生させるように積層体2内に形成された導体部162を有した浮遊容量発生部202を備え、各浮遊容量発生部201,202は、一端が端子電極4に電気的に接続されることになる。なお、導体部161,162はコイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10を構成する導体部73,74,77と重なる形状を有している。
【0045】
以上のように構成された積層型フィルタ1によっても、第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と同様の効果が奏される。
【0046】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る積層型フィルタ1は、図9に示されるように、導体部11が存在しない点で第1の実施形態に係る積層型フィルタ1と主に相違している。第5の実施形態に係る積層型フィルタ1においても、減衰が深く、且つ遮断帯域が広い減衰特性を得ることができる。
【0047】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る積層型フィルタ1を図10及び図11により説明する。本実施形態に係る積層型フィルタ1は、積層体2の側面に端子電極3,4を4組並設し、積層体2内に第1の実施形態に係る積層型フィルタ1を構成するコイル部10、浮遊容量発生部15及び浮遊容量発生部20を4組並設することにより形成されている。
【0048】
このように積層型フィルタ1をアレイ状に形成してもよい。
【0049】
最後に、本発明に係る積層型フィルタの減衰特性がより一層向上されていることを、コイル部とコンデンサ部とが並列接続されてなる特許文献1記載の積層型フィルタと比較することにより具体的に示す。
【0050】
積層型フィルタの電気的特性を図12に示す。図中、実線Aは第1の実施形態に係る積層型フィルタ、鎖線Bは第5の実施形態に係る積層型フィルタ、点線Cは特許文献1記載の積層型フィルタを示している。例えば20dBの挿入損失での周波数帯域は第1の実施形態に係る積層型フィルタでは約460MHz、第5の実施形態に係る積層型フィルタでは約250MHz、特許文献1記載の積層型フィルタでは100MHzである。以上のことから、本発明により減衰特性がより一層向上されることが確認された。
【0051】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、第1〜第4の実施形態及び第6の実施形態に係る積層型フィルタ1では、浮遊容量発生部15と浮遊容量発生部20との間に形成された導体部11を備えていれば、コイル部10の中心軸線L方向から見て、コイル部10により囲まれる内側の領域Rを含む形状を有していなくともよい。
【0053】
また、第4の実施形態に係る積層型フィルタでは、導体部71と導体部75との間に設けられた浮遊容量発生部151,152はどちらか一方が存在していればよく、他方は存在していなくともよい。導体部72と導体部76との間に設けられた浮遊容量発生部153,154に関しても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る積層型フィルタの等価回路を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に係る積層型フィルタの磁束分断の様子を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る積層型フィルタのコイル部をその中心軸線方向から見た図である。
【図6】第2の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図7】第3の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図8】第4の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図9】第5の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図10】第6の実施形態に係る積層型フィルタを示す斜視図である。
【図11】第6の実施形態に係る積層型フィルタの積層体を示す分解斜視図である。
【図12】積層型フィルタの電気的特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・積層型フィルタ、2・・・積層体、3・・・端子電極(第1の端子電極)、4・・・端子電極(第2の端子電極)、61〜620・・・絶縁体層、71〜77・・・導体部(第1の導体部)、10・・・コイル部、11・・・導体部(第4の導体部)、121〜124・・・導体部(第2の導体部)、15,151〜154・・・浮遊容量発生部(第1の浮遊容量発生部)、161,162,・・・導体部(第3の導体部)、20,201,202・・・浮遊容量発生部(第2の浮遊容量発生部)、F・・・磁束、L・・・中心軸線、R・・・領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体に形成された第1の端子電極及び第2の端子電極と、
前記積層体内に形成された複数の第1の導体部が電気的に接続されることにより構成され、一端が前記第1の端子電極に電気的に接続されると共に、他端が前記第2の端子電極に電気的に接続されたコイル部と、
前記第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように前記積層体内に形成された第2の導体部を有し、一端が前記第1の端子電極又は前記第2の端子電極の一方に電気的に接続された第1の浮遊容量発生部と、
前記第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように前記積層体内に形成された第3の導体部を有し、一端が前記第1の端子電極又は前記第2の端子電極の他方に電気的に接続された第2の浮遊容量発生部と、
を備えることを特徴とする積層型フィルタ。
【請求項2】
前記コイル部が発生する磁束を分断するように、前記積層体内において前記第1の浮遊容量発生部と前記第2の浮遊容量発生部との間に形成された第4の導体部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ。
【請求項3】
前記第4の導体部は、前記コイル部の中心軸線方向から見て、前記コイル部により囲まれる内側の領域を含む形状を有していることを特徴とする請求項2記載の積層型フィルタ。
【請求項4】
前記第2の導体部及び前記第3の導体部は、前記コイル部の中心軸線方向から見て、前記第1の導体部と重なる形状を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の積層型フィルタ。
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体に形成された第1の端子電極及び第2の端子電極と、
前記積層体内に形成された複数の第1の導体部が電気的に接続されることにより構成され、一端が前記第1の端子電極に電気的に接続されると共に、他端が前記第2の端子電極に電気的に接続されたコイル部と、
前記第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように前記積層体内に形成された第2の導体部を有し、一端が前記第1の端子電極又は前記第2の端子電極の一方に電気的に接続された第1の浮遊容量発生部と、
前記第1の導体部との間で浮遊容量を発生させるように前記積層体内に形成された第3の導体部を有し、一端が前記第1の端子電極又は前記第2の端子電極の他方に電気的に接続された第2の浮遊容量発生部と、
を備えることを特徴とする積層型フィルタ。
【請求項2】
前記コイル部が発生する磁束を分断するように、前記積層体内において前記第1の浮遊容量発生部と前記第2の浮遊容量発生部との間に形成された第4の導体部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の積層型フィルタ。
【請求項3】
前記第4の導体部は、前記コイル部の中心軸線方向から見て、前記コイル部により囲まれる内側の領域を含む形状を有していることを特徴とする請求項2記載の積層型フィルタ。
【請求項4】
前記第2の導体部及び前記第3の導体部は、前記コイル部の中心軸線方向から見て、前記第1の導体部と重なる形状を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の積層型フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−96922(P2007−96922A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285224(P2005−285224)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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