説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】 接着層の形成状態を容易に識別でき、その形成状態により接着層の良否を判定することで、スタック性が高く、積層ズレやデラミネーションなどを効果的に低減することができる積層型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 電極層を有するグリーンシートを得る工程と、電極層を有するグリーンシートを積層する前に、電極層を有するグリーンシートの電極層側表面またはグリーンシート側表面に接着層を形成する工程と、接着層を形成した後に、接着層を観察評価して、接着層の良否を判定する工程と、接着層の良否を判定する工程において、不良であると判定された接着層が形成された電極層を有するグリーンシートを用いることなく、接着層を介して、電極層を有するグリーンシートを積層する工程と、を有し、接着層はバインダ樹脂と染料とを含み、染料により着色されている積層型電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、所定の組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、各種金属を主成分とする内部電極層とが交互に複数積層したコンデンサ素子本体を有する。
【0003】
誘電体層を構成する誘電体グリーンシートを製造するには、通常、まず誘電体粉末、バインダ、可塑剤および有機溶剤(トルエン、アルコール、MEKなど)からなるグリーンシート用塗料を準備する。次に、このグリーンシート用塗料を、ドクターブレード法などによりPETなどのキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させて製造する。
【0004】
前述の誘電体グリーンシートを用いて、積層セラミックコンデンサを製造する方法を具体的に説明すると、誘電体グリーンシート上に、金属粉末とバインダを含む内部電極用ペーストを所定パターンで印刷し、乾燥させて内部電極パターンを形成する。次に、誘電体グリーンシートからキャリアフィルムを剥離し、これらを複数、積層したものをチップ状に切断してグリーンチップとする。次に、このグリーンチップを焼成した後、外部電極を形成して製造する。
【0005】
ところで、近年、各種電子機器の小型化により、電子機器の内部に装着される電子部品の小型化および高性能化が進んでいる。積層型電子部品の一例である積層セラミックコンデンサについても小型化および高容量化を進めるために、誘電体層の薄層化・多層化が強く求められている。そのため、誘電体グリーンシートの厚みも数μm以下に薄層化されている。
【0006】
さらに、誘電体層の薄層化を進めると同時に、誘電体層の多層化を進めると、積層時の接着性(スタック性)が悪化し、その結果、積層ズレやデラミネーションなどが発生することがあった。このような不具合を解消するために、たとえば特許文献1には、内部電極が形成された誘電体グリーンシートを、接着層を介して、積層することが開示されている。また、特許文献2には、接着層の被覆率を規定することで、積層性を向上させることが開示されている。
【0007】
しかしながら、接着層を形成しても、実際には接着層が形成されていない部分が存在することがあり、接着層の形成状態によっては所望の積層性を実現できないことがあった。また、接着層は通常無色透明な樹脂を用いることが多いため、接着層の形成状態を確認することが困難であった。
【特許文献1】特開2006−13246号公報
【特許文献1】特開2007−73777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、接着層の形成状態を容易に識別することができ、その形成状態により接着層の良否を判定することで、スタック性(積層時の接着性)が高く、積層ズレやデラミネーションなどを効果的に低減することができ、かつ、コストが安価な積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
グリーンシートの表面に電極層を形成し、または、電極層の表面にグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートを得る工程と、
前記電極層を有するグリーンシートを積層する前に、前記電極層を有するグリーンシートの電極層側表面またはグリーンシート側表面に、接着層を形成する工程と、
前記接着層を形成した後に、前記接着層を観察評価して、前記接着層の良否を判定する工程と、
前記接着層の良否を判定する工程において、不良であると判定された接着層が形成された電極層を有するグリーンシートを用いることなく、前記接着層を介して、前記電極層を有するグリーンシートを積層する工程と、を有し、
前記接着層は、バインダ樹脂と、染料と、を含み、前記染料により着色されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る積層型電子部品の製造方法においては、着色された接着層を形成することで、接着層の識別を容易にしている。そのため、形成された接着層を観察することで、実際に形成された接着層が、積層工程において、スタック性(積層時の接着性)を向上できる状態にあるか否か(接着層の良否)を容易かつ迅速に判定することができる。その判定の結果不良であると判定された接着層が形成されたグリーンシート等を用いることなく、積層を行うため、積層ズレなどの不具合は生じない。その結果、誘電体層を薄層化し、かつ多層化しても、積層不良に起因するデラミネーション等を効果的に防止することができる。
【0011】
また、本発明では、接着層の着色成分として、染料を用いている。染料は、溶媒(たとえば接着層を形成するための接着層用ペーストに含まれる溶剤)に可溶である。そのため、染料が、接着層用ペーストに含有されていても、接着層用ペーストを均一かつ薄く塗布することができ、接着層を均一かつ薄く形成することができる。
【0012】
好ましくは、前記接着層の良否を判定する工程において、撮像装置により撮影した前記接着層の画像の信号を処理して、前記接着層が実際に形成されている部分と前記接着層が実質的に形成されていない部分とを判別する。
【0013】
接着層の良否は、目視によっても十分判断できるが、カメラなどの撮像装置により撮影した接着層の画像を処理して、接着層が実際に形成されている部分と、接着層が実質的に形成されていない部分とを判別することで、より詳細かつ正確な良否判定を行うことができる。
【0014】
好ましくは、前記電極層側表面において前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が前記電極層側表面を実際に被覆する面積の割合を電極層側被覆率としたときに、前記電極層側被覆率が60〜90%である。
【0015】
好ましくは、前記グリーンシート側表面において前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が、前記グリーンシート側表面を実際に被覆する面積の割合をグリーンシート側被覆率としたときに、前記グリーンシート側被覆率が60〜90%である。
【0016】
接着層の良否を判定する工程において、各被覆率が上記の範囲外にあるものを不良と判定することで、本発明の効果をさらに高めることができる。また、各被覆率が上記の範囲となるように接着層を形成することで、不良率を低減しつつ、接着層の効果が十分に発揮され、積層ズレが防止された積層体を得ることができる。
【0017】
好ましくは、前記接着層が、前記グリーンシートおよび/または前記電極層に対してコントラストの高い色で着色されている。あるいは、好ましくは、前記染料が、蛍光染料である。
【0018】
接着層が、グリーンシート(通常は白色)あるいは電極層(通常は黒色)に対して、コントラストの高い色で着色されていることで、接着層の良否をより容易に判定することができる。また、接着層に含まれる染料が蛍光染料である場合には、可視光下では着色していない場合であっても、たとえば紫外線照射時には、蛍光により接着層が着色するため、接着層の良否を判定することができる。
【0019】
好ましくは、前記接着層が、前記バインダ樹脂、前記染料および溶剤を含有する接着層用ペーストを用いて形成される接着層用ペースト膜を、40℃以上、80℃以下の温度で乾燥することにより形成される。
【0020】
好ましくは、乾燥後の前記接着層100質量%に対して、前記染料が2〜50質量%含有されている。
【0021】
好ましくは、前記接着層の厚みが、0.005〜0.1μmである。
【0022】
接着層を上記の条件で形成することにより、本発明の効果をさらに高めることができる。
【0023】
本発明においては、前記接着層が、転写法、あるいは塗布法により形成されることが好ましい。
【0024】
前記接着層を、転写法で形成する際には、好ましくは、
前記接着層が、最初に支持シートの表面に剥離可能に形成される工程と、
前記接着層を形成した後に、前記支持シートに形成された前記接着層を観察評価して、前記接着層の良否を判定する工程と、
前記接着層の良否を判定する工程において、不良であると判定された接着層を用いることなく、前記接着層が、前記グリーンシートまたは前記電極層の表面に押しつけられて転写される工程と、を有する。
【0025】
より好ましくは、前記支持シートにおいて前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が、前記支持シートを実際に被覆する面積の割合を支持シート側被覆率としたときに、前記支持シート側被覆率が30〜70%である。
【0026】
接着層を支持シートに形成してから、転写法により、グリーンシートまたは電極層に転写する場合には、支持シート側被覆率を上記の範囲とすることで、本発明の効果をさらに高めることができる。また、接着層の良否を、支持シートに形成した段階で判定することができるので、製造工程の効率化を図ることができる。
【0027】
あるいは、前記接着層を、塗布法により形成する際には、前記接着層は、ダイコーティング法やマイクログラビア法により、前記電極層を有するグリーンシートの電極層側表面またはグリーンシート側表面に、直接、塗布して形成されることが好ましい。
【0028】
前記接着層を、ダイコーターを使用したダイコーティング法やマイクログラビア法により、形成することにより、転写法により接着層を形成する場合と比較して、支持シートの使用量を削減することができるとともに、接着層形成に要する時間を短縮することができ、工程のリードタイムおよびタクトの改善が可能となる。
【0029】
本発明により製造される積層型電子部品としては、特に限定されないが、たとえば積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ素子などが例示される。
【0030】
また、本発明において、電極層とは、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を含む概念で用いる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、電極層を有するグリーンシートに形成された接着層は染料により着色されているため、接着層の形成状態の確認および接着層の良否の判定を容易かつ正確にすることができる。そして、不良であると判断された接着層が形成された電極層を有するグリーンシートを用いずに、積層することで、積層ズレを防止でき、デラミネーション等が低減された積層型電子部品を製造することができる。
【0032】
さらには、形成された接着層を、カメラ等の撮像装置により撮影し、接着層が実際に形成されている部分と接着層が実質的に形成されていない部分とを判別できるように画像処理を行うことで、接着層の良否を数値化することができ、より正確に判定することができる。
【0033】
しかも、本発明では、溶媒に可溶な染料により接着層が着色されているので、接着層を均一かつ薄く形成することができる。さらには、誘電体層の組成ズレや異常粒成長を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図、
図3(A)〜図3(C)は本発明の一実施形態に係る接着層の形成方法を示す要部断面図、
図4(A)〜図4(C)、図5(A)、図5(B)および図6(A)、図6(B)は本発明の一実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図、
図7(A)〜図7(C)および図8(A)〜図8(C)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図、
図9(A)〜図9(C)および図10(A)〜図10(C)は本発明の他の実施形態に係る接着層、電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図、図11(A)および図11(B)は、本発明の実施例および比較例に係る接着層を画像処理した後の画像である。
【0035】
積層セラミックコンデンサ
まず、本発明に係る方法により製造される電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0036】
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは1μm以下に薄層化されている。
【0037】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0038】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
【0039】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
本実施形態では、まず、図2(A)〜図2(C)に示す方法により、キャリアシート20上に、剥離層22、電極層12a、余白パターン層24およびグリーンシート10aをそれぞれ形成する。
【0040】
まず、図2(A)に示すように、キャリアシート20上に剥離層22を形成する。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーン樹脂などがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、5〜100μmである。
【0041】
剥離層22は、バインダとして、少なくとも粘着力の低い樹脂を含有する。また、この剥離層22は、バインダ以外に、可塑剤と、離型剤と、剥離剤とを含んでも良い。また、グリーンシート10aを構成する誘電体と同じ誘電体粒子を含んでいてもよい。このような剥離層22を形成することにより、後述する、電極層12aを有するグリーンシート10aの積層を容易かつ良好に行うことができる。
【0042】
本実施形態では、剥離層22の厚みは、好ましくは0.02〜0.2μm、より好ましくは0.02〜0.1μm、さらに好ましくは0.05〜0.1μmとする。剥離層22の厚みが薄すぎると、剥離層22を形成した効果が得られなくなる傾向にある。また、剥離層22が厚すぎると、剥離時における剥離層22の電極層12a側への残存量が、多くなってしまい、脱バインダ時のクラックの発生率が悪化してしまう傾向にある。
【0043】
剥離層22の形成方法としては、特に限定されないが、きわめて薄く形成する必要があるために、たとえばワイヤーバーコーターまたはダイコーターを用いる塗布方法が好ましい。剥離層22は、塗布後に、好ましくは、乾燥温度50〜100°C、乾燥時間1〜10分の条件で乾燥される。
【0044】
剥離層22のためのバインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレンなどが例示される。また、剥離層22のための可塑剤としては、特に限定されないが、たとえばフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。剥離層22のための離型剤としては、特に限定されないが、たとえばパラフィン、ワックス、シリコーン油などが例示される。
【0045】
バインダは、剥離層22中に、誘電体粒子100質量部に対して、好ましくは2.5〜200質量部、さらに好ましくは5〜30質量部程度で含まれる。
【0046】
可塑剤は、剥離層22中に、バインダ100質量部に対して、0〜200質量部、好ましくは20〜200質量部で含まれることが好ましい。
【0047】
離型剤は、剥離層22中に、バインダ100質量部に対して、0〜100質量部、好ましくは2〜50質量部で含まれることが好ましい。
【0048】
これらの含有量を適宜変更することにより、剥離層22の粘着力を調整することができる。
【0049】
剥離層22をキャリアシート20の表面に形成した後、図2(B)に示すように、剥離層22の表面に、焼成後に内部電極層12を構成することになる電極層12aを所定パターンで形成する。電極層12aの厚みは、1.5μm以下とすることが好ましい。電極層12aは、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
【0050】
電極層12aは、たとえば電極ペーストを用いる印刷法などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法により、剥離層22の表面に形成することができる。厚膜法の1種であるスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法により、剥離層22の表面に電極層12aを形成する場合には、以下のようにして行う。
【0051】
まず、電極ペーストを準備する。電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、あるいは焼成後に上記した導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、またはレジネート等と、有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0052】
電極ペーストを製造する際に用いる導体材料としては、NiやNi合金さらにはこれらの混合物を用いる。このような導体材料は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものを混合したものであってもよい。導体材料の平均粒子径は、通常、0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いればよい。
【0053】
有機ビヒクルは、バインダおよび溶剤を含有するものである。バインダとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂、ポリビニルアセタールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、なかでも、エチルセルロースや、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂が好ましい。
【0054】
バインダは、電極ペースト中に、導体材料(金属粉末)100質量部に対して、好ましくは4〜10質量部含まれる。溶剤としては、例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン、イソボニルアセテート等公知のものはいずれも使用可能である。溶剤含有量は、ペースト全体に対して、好ましくは20〜55質量%程度とする。
【0055】
グリーンシートとの接着性を改善するために、電極ペーストには、可塑剤または粘着剤が含まれることが好ましい。可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤の添加量は、電極ペースト中に、バインダ100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、さらに好ましくは10〜200質量部である。なお、可塑剤または粘着剤の添加量が多すぎると、焼成前の電極層の強度が著しく低下する傾向にある。また、電極ペースト中には、可塑剤や粘着剤を添加して、電極ペーストの接着性や粘着性を向上させることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、剥離層22の表面に、所定パターンの電極ペースト層を印刷法で形成した後、またはその前に、電極層12aが形成されていない剥離層22の表面に、電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層24を形成する。余白パターン層24を形成することで、所定パターンの電極層12a間に生ずる段差隙間部分を解消し、電極層を含む面を平坦化することができる。
【0057】
余白パターン層24は、後に詳述するグリーンシート10aと同様な材質で構成される。また、余白パターン層24は、電極層12aあるいは、後に詳述するグリーンシート10aと同様な方法で形成することができる。電極層12aおよび余白パターン層24は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜120°Cであり、乾燥時間は、好ましくは5〜15分である。なお、電極層12aのパターンによる段差が悪影響を及ぼさない場合には、余白パターン層24は、必ずしも形成しなくても良い。
【0058】
次いで、図2(C)に示すように、剥離層22上に形成した電極層12aおよび余白パターン層24の表面に、グリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することとなる。なお、本実施形態では、接着層を用いることなく、電極層12aおよび余白パターン層24の表面に、グリーンシート10aを形成することができる。このようにすることにより、積層時の接着力を高く保ちつつ、かつ、製造工程の簡略化および製造コストの低減を図ることができる。
【0059】
グリーンシート10aは、誘電体原料を含有する誘電体ペーストを用いて、ダイコーティング法などにより、電極層12aおよび余白パターン層24の表面に形成される。グリーンシート10aは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで形成され、電極層12aおよび余白パターン層24上に形成された後に乾燥される。グリーンシート10aの乾燥温度は、好ましくは50〜100°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。乾燥後のグリーンシート10aの厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%収縮する。
【0060】
グリーンシート10aを製造するための誘電体ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
【0061】
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の粉末として用いられる。なお、極めて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉末を使用することが望ましい。
【0062】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いられるが、好ましくは、アクリル樹脂、あるいはポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂が用いられる。
【0063】
また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、テルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ステアリン酸ブチル、イソボニルアセテートなどの有機溶剤が用いられる。また、水系ペーストにおけるビヒクルは、水に水溶性バインダを溶解させたものである。水溶性バインダとしては特に限定されず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5質量%程度、溶剤(または水)は10〜50質量%程度とすればよい。
【0064】
誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体、帯電除剤などから選択される添加物が含有されても良い。ただし、これらの総含有量は、10質量%以下とすることが望ましい。可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。バインダ樹脂として、ブチラール樹脂を用いる場合には、可塑剤は、バインダ樹脂100質量部に対して、25〜100質量部の含有量であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートが脆くなる傾向にあり、多すぎると、可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
【0065】
次いで、上記のキャリアシート20とは別に、図3(A)に示すように、第2支持シートとしてのキャリアシート26の表面に接着層28が形成してある接着層転写用シートを準備する。キャリアシート26は、キャリアシート20と同様なシートで構成される。キャリアシート26の厚みは、キャリアシート20と同じ厚みとしても良いし、また異なる厚みとしても良い。
【0066】
接着層28は、バインダ樹脂と、染料と、溶剤とを含む。接着層28には、グリーンシート10aを構成する誘電体と同じ誘電体粒子を含ませても良いが、誘電体粒子の粒径よりも厚みが薄い接着層を形成する場合には、誘電体粒子を含ませない方がよい。また、接着層28に誘電体粒子を含ませる場合には、その誘電体粒子の粒径は、グリーンシートに含まれる誘電体粒子の粒径より小さいことが好ましい。
【0067】
接着層28に含まれるバインダとしては、たとえば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂、ポリビニルアセタールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体からなる有機質、またはエマルジョンで構成される。本実施形態では、上記バインダとして、アクリル樹脂、あるいはポリビニルブチラール等のブチラール樹脂を用いることが、特に好ましい。また、接着層28に含まれるバインダは、グリーンシート10aに含まれるバインダと同じでも異なっていても良いが同じであることが好ましい。
【0068】
本発明においては、接着層28は、上記のバインダ樹脂に加えて、染料を含んでいる。通常、接着層28に含まれるバインダ樹脂等は、無色透明であるため、接着層28も無色透明である。しかしながら、染料が接着層28に含まれていることにより、接着層28が着色されることになる。
【0069】
このようにすることで、後述する工程において、接着層28の観察評価を容易にすることができる。
【0070】
なお、接着層28に、染料ではなく、着色された顔料を含ませても、着色された接着層が得られる。しかしながら、顔料は溶媒に不溶であるため、形成する接着層28の厚みは、顔料の平均粒径に依存してしまう。また、細かい顔料を用いた場合には、誘電体層の組成ズレや絶縁抵抗の低下を招いてしまうなどの問題がある。
【0071】
本発明では、接着層28の着色成分としての染料は溶媒に可溶であるため、顔料を用いた場合の不具合は発生しない。
【0072】
接着層28に含まれる染料としては、特に限定されないが、グリーンシートや電極層の表面に接着層28を形成する場合には、グリーンシートや電極層の色に対してコントラストが高い色を有する染料であることが好ましい。グリーンシートは通常白色であるため、グリーンシートに対しては、赤系や青系の染料が好ましい。また、電極層は通常黒色であるため、電極層に対しては、赤系の染料が好ましい。支持シートは通常無色であるため、支持シートに対しては、どのような色の染料を用いても良い。
【0073】
具体的な染料としては、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス系色素、などの天然色素が挙げられ、これらの1つ以上が染料に含まれていればよい。
【0074】
アントシアニン系色素としては、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスウィート色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素などが挙げられる。
【0075】
カロチノイド系色素としては、アナトー色素、クチナシ黄色素などが挙げられる。キノン系色素としては、コチニール色素、シコン色素、ラック色素などが挙げられる。フラボノイド系色素としては、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素などが挙げられる。ベタイン系色素としては、ビートレッド色素などが挙げられる。モナスカス系色素としては、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素などが挙げられる。
【0076】
その他に、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、クチナシ青色素、スピルリナ青色素なども挙げられる。
【0077】
上記の色素の中でも、赤色系のコチニール色素、ラック色素や青色系のクチナシ青色素などがより好ましい。
【0078】
あるいは、染料が、色素が蛍光物質である蛍光染料であってもよい。具体的には、赤外線蛍光染料や紫外線蛍光染料などが例示される。たとえば、赤外線蛍光染料を含む接着層28を、上記の工程において形成したあとに、赤外線をあてることで、接着層28が実際に形成されている部分が蛍光する。これは、電極層の下に接着層28が形成されている場合であっても、接着層28を良好に認識することができる。
【0079】
染料は、乾燥後の接着層100質量部に対して、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜50質量部含まれている。染料の含有量が少なすぎると、接着層28が着色しにくくなり、本発明の効果が得がたくなる傾向にある。逆に、多すぎると、積層時のスタック性が悪化する傾向にある。
【0080】
接着層28に含まれる溶剤としては、特に限定されず、上記の染料を溶解するものであればよい。具体的な溶剤としては、テルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ステアリン酸ブチル、イソボニルアセテートなどが例示される。接着層28に含まれる溶剤は、グリーンシート10aに含まれる溶剤と同じでも異なっていても良い。
【0081】
また、接着層28には、可塑剤が含まれていてもよい。接着層28のための可塑剤としては、特に限定されないが、たとえばフタル酸ジオクチルやフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。接着層28に含まれる可塑剤は、グリーンシート10aに含まれる可塑剤と同じでも異なっていても良い。
【0082】
可塑剤は、接着層28中に、バインダ100質量部に対して、0〜200質量部、好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは30〜70質量部で含まれることが好ましい。
【0083】
接着層28は、さらに帯電除剤を含まれていてもよい。帯電除剤としては、イミダゾリン系界面活性剤の中の1つを含み、帯電除剤の重量基準添加量は、バインダ(有機高分子材料)の重量基準添加量以下であることが好ましい。帯電除剤の含有量は、接着層28中に、バインダ100質量部に対して、0〜200質量部、好ましくは20〜200質量部で含まれることが好ましい。
【0084】
接着層28の厚みは、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.01〜0.05μmである。接着層28の厚みが薄すぎると、接着力が低下し、所望のスタック性が得られない傾向にある。一方、厚すぎると、その接着層の厚みに依存して焼結後の素子本体の内部に隙間ができやすく、デラミネーションが発生する。
【0085】
本発明では、接着層28を着色する成分として、染料を用いている。そのため、着色成分として顔料を用いた場合に比較してより薄い接着層28を形成することができ、デラミネーションに対して効果的である。また、グリーンシートや電極層の組成をずらすなどの悪影響を及ぼすこともない。
【0086】
接着層28は、第2支持シートとしてのキャリアシート26の表面に、たとえばバーコータ法、ダイコータ法、リバースコータ法、ディップコーター法、キスコーター法などの方法により形成され、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、好ましくは40℃〜80°Cであり、乾燥時間は、好ましくは1〜5分である。乾燥温度が低すぎると十分に溶剤を乾燥できなくなり、乾燥温度が高すぎると、接着層の被覆率が低下する傾向にあり、積層不良が発生する場合がある。
【0087】
本実施形態では、乾燥後の接着層28を観察評価し、接着層の良否を判定する。観察方法としては、着色された接着層28の形成状態を目視により観察してもよいが、好ましくは、接着層28をカメラなどの撮像装置により撮影した画像の信号を処理してから、接着層28の着色状態を観察する。画像を処理する方法としては、特に制限されず、接着層28の色とそれ以外の色、すなわち、接着層28が形成されている部分と接着層28が形成されていない部分とを明確に判別できればよい。具体的には、接着層28が形成されている部分と接着層28が形成されていない部分とを二値化することが好ましい。このような画像処理を行うことにより、接着層28の観察評価を容易かつ正確に行うことができる。
【0088】
また、接着層の良否を判定する基準としては、特に制限されないが、たとえば、接着層の厚みムラや、以下に示す接着層の被覆率を基準にすることができる。
【0089】
本実施形態では、支持シートにおいて接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の接着層が、支持シートを実際に被覆する面積の割合を支持シート側被覆率と定義する。具体的には、接着層を構成する成分が実質的に存在していない非被覆部分(ハジキ部分)が全く無いと仮定した場合に、接着層が支持シートを被覆する理想面積を100%とし、接着層が支持シートを実際に被覆する面積の割合である。この支持シート側被覆率を、上記の画像処理後の画像から算出する。
【0090】
支持シート側被覆率は、好ましくは30〜70%である。被覆率が小さすぎると、本発明の効果が得がたくなり、積層時のスタック性が悪化する傾向にある。逆に、大きすぎると、デラミネーションが発生する傾向にある。本実施形態では、支持シート側被覆率を、接着層の良否を判定する基準として用い、支持シート側被覆率が上記の範囲外となった接着層を、不良と判定する。
【0091】
次いで、支持シート側被覆率が上記の範囲外となった接着層を用いることなく、図2(C)に示す電極層12aおよび余白パターン層24上に形成されたグリーンシート10aの表面に、接着層28を形成し、図3(C)に示す積層体ユニットU1aを得る。本実施形態においては、接着層28の形成方法として、転写法を採用している。すなわち、図3(A)、図3(B)に示すように、キャリアシート26の接着層28を、グリーンシート10aの表面に押し付け、加熱加圧して、その後キャリアシート26を剥がすことにより、図3(C)に示すように、接着層28を、グリーンシート10aの表面に転写し、積層体ユニットU1aを得る。
【0092】
接着層28を、転写法により形成することにより、接着層の成分のグリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24への染み込みを有効に防止することができる。そのため、グリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24の組成に悪影響を与えるおそれがない。さらに、接着層28を薄く形成した場合でも、接着層の成分が、グリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24へ染み込むことがないため、接着性を高く保つことができる。
【0093】
転写時の加熱温度は、40〜100°Cが好ましく、また、加圧力は、0.2〜15MPaが好ましい。加圧は、プレスによる加圧でも、カレンダロールによる加圧でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。
【0094】
本実施形態では、接着層28をグリーンシート10aに転写した後に、接着層を支持シートに形成した場合と同様にして、接着層28の観察評価を行い、接着層28の良否を判定する。
【0095】
本実施形態では、グリーンシート側表面において接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の接着層が、グリーンシート側表面を実際に被覆する面積の割合をグリーンシート側被覆率と定義し、接着層の良否を判定する基準として用いる。このグリーンシート側被覆率は、支持シート側被覆率と同様に、接着層を構成する成分が実質的に存在していない非被覆部分(ハジキ部分)が全く無いと仮定した場合に、接着層がグリーンシートを被覆する理想面積を100%とし、接着層がグリーンシートを実際に被覆する面積の割合である。このグリーンシート側被覆率も、支持シート側被覆率と同様に、上記の画像処理後の画像から算出される。
【0096】
グリーンシート側被覆率は、好ましくは60〜90%である。被覆率が小さすぎると、本発明の効果が得がたくなり、積層時のスタック性が悪化する傾向にある。逆に、大きすぎると、デラミネーションが発生する傾向にある。本実施形態では、グリーンシート側被覆率が上記の範囲外となった接着層を、不良と判定する。
【0097】
なお、支持シートに形成された接着層を、グリーンシートに転写すると、グリーンシート側被覆率は、支持シート側被覆率よりも大きくなる傾向にある。
【0098】
図3(A)〜(C)においては、接着層28が、グリーンシート10aの表面に形成される場合を示しているが、接着層28が、電極層12aの表面に形成される場合も同様である。すなわち、電極層12aの表面に形成された接着層28の観察評価を行い、接着層28の良否を判定することができる。また、接着層28の良否の判定基準として、電極層側被覆率を用いることができる。電極層被覆率は、電極層側表面において接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の接着層が電極層側表面を実際に被覆する面積の割合として定義される。
【0099】
電極層側被覆率は、好ましくは60〜90%である。被覆率が小さすぎると、本発明の効果が得がたくなり、積層時のスタック性が悪化する傾向にある。逆に、大きすぎると、デラミネーションが発生する傾向にある。この電極層側被覆率も、支持シート側被覆率と同様に、上記の画像処理後の画像から算出され、支持シート側被覆率よりも大きくなる傾向にある。
【0100】
次いで、上記の接着層28の観察評価により、不良であると判定された接着層を有する積層体ユニットを用いることなく、電極層12aおよび余白パターン層24、グリーンシート10a、接着層28の順に積層された積層体ユニットを、複数積層することにより、グリーンチップを形成する。積層体ユニットの積層は、図4〜図6に示すように、接着層28を介して、各積層体ユニット同士を接着することにより行う。以下、積層方法について説明する。
【0101】
まず、図4(A)、図4(B)に示すように、上記にて作製した積層体ユニットU1aから第1支持シート20を剥がす。次に、図4(C)に示すように、積層体ユニットU1aを、外層用のグリーンシート30(電極層が形成されていない10〜30μmの厚みのグリーンシートを、複層積層した厚み100〜200μmの積層体)上に積層する。
【0102】
なお、本実施形態においては、積層体ユニットU1aは、剥離層22を介してキャリアシート20上に形成されているため、キャリアシート20の剥離を、良好に行うことができる。また、剥離時に、積層体ユニットU1aの電極層12aや余白パターン層24を破損させることもない。なお、剥離層22は、キャリアシート20とともに、積層体ユニットU1aから剥離されることが好ましいが、少量程度なら、積層体ユニットU1a側に残存しても構わない。この場合においても、その残存している剥離層22は、積層体ユニットU1aを構成するグリーンシート10aや電極層12aに比較して十分薄いため、問題となることはない。
【0103】
次に、図5(A)に示すように、積層体ユニットU1aと同様の方法により作製した別の積層体ユニットU1bを準備する。準備した積層体ユニットU1bから、第1支持シート20を剥がし、図5(B)に示すように、キャリアシート20が剥離された積層体ユニットU1bと、積層体ユニットU1aとを、積層体ユニットU1aの接着層28を介して、接着し、積層する。
【0104】
次に、図6(A)、図6(B)に示すように、同様にして、積層体ユニットU1b上に、別の積層体ユニットU1cを、積層体ユニットU1bの接着層28を介して、接着し、積層する。そして、この図6(A)、図6(B)に示す工程を繰り返すことにより、複数の積層体ユニットを積層する。次いで、この積層体の上面に、外層用のグリーンシート30を積層し、最終加圧を行い、その後、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。なお、最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaとし、また、加熱温度は、好ましくは、40〜100°Cとする。
【0105】
本発明においては、接着層28が着色されているため、形成された接着層28が、その機能が十分に発揮される状態にあるか否か、すなわち接着層28の良否、を容易かつ迅速に判断できる。そして、上記の積層工程において、不良であると判定された接着層が形成された積層体ユニットを用いないので、各積層体ユニットに形成された接着層の機能が十分発揮され、積層ズレを生じることなく、良好なスタック性を示すことができる。その結果、焼成後の積層セラミックコンデンサにおいても、デラミネーション等の不具合を生じることはない。
【0106】
このグリーンチップは、脱バインダ処理、焼成処理が行われ、そして、誘電体層を再酸化させるため、熱処理が行われる。
【0107】
脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電体材料としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、下記の条件で行うことが好ましい。
【0108】
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜50℃/時間、
保持温度:200〜400℃、特に250〜350℃、
保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、
雰囲気 :加湿したNとHとの混合ガス。
【0109】
焼成条件は、下記の条件が好ましい。
昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜1250℃、
保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等。
【0110】
ただし、焼成時の空気雰囲気中の酸素分圧は、10−2Pa以下、特に10−2〜10−8 Paにて行うことが好ましい。前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にあり、また、酸素分圧があまり低すぎると、内部電極層の電極材料が異常焼結を起こし、途切れてしまう傾向にある。
【0111】
このような焼成を行った後の熱処理は、保持温度または最高温度を、好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1000〜1100℃として行うことが好ましい。熱処理時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であり、好ましくは10−3Pa〜1Pa、より好ましくは10−2Pa〜1Paである。前記範囲未満では、誘電体層2の再酸化が困難であり、前記範囲をこえると内部電極層12が酸化する傾向にある。
【0112】
そして、そのほかの熱処理条件は下記の条件が好ましい。
保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300℃/時間、
雰囲気用ガス:加湿したNガス等。
【0113】
なお、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えば加温した水にガスを通し、バブリングする装置等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行っても、独立に行ってもよい。
【0114】
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドブラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0115】
本実施形態では、非接着欠陥(ノンラミネーション)が比較的問題とならない工程では、接着層を用いることなく積層を行う。しかも、非接着欠陥(ノンラミネーション)が起こりやすい工程では、接着層を介して積層を行う。すなわち、電極層12a上へグリーンシート10aを形成する際には、接着層を用いないため、製造工程の簡略化や製造コストの低減を図ることができる。さらに、電極層12aを有するグリーンシート10aを積層する際には、接着層28を介して積層を行うため、接着性の向上、および非接着欠陥(ノンラミネーション)の低減を図ることができる。そのため、本実施形態の製造方法によると、グリーンシートを極めて薄くした場合においても、接着性を高く保ちつつ、非接着欠陥(ノンラミネーション)を低減することができ、かつ、製造工程の簡略化や製造コストの低減が可能となる。
【0116】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明の方法は、積層セラミックコンデンサの製造方法に限らず、その他の積層型電子部品の製造方法としても適用することが可能である。
【0117】
また、上述した実施形態では、接着層28を転写法により形成したが、たとえば、塗布法により接着層28を形成してもよい。具体的には、ダイコーター法やマイクログラビア法より、グリーンシート10a上に、直接、塗布することにより接着層28を形成しても良い。
【0118】
また、上述した実施形態では、各積層体ユニットを積層する前に、積層体ユニットからキャリアシート20を剥離して、積層体ユニットを積層したが、たとえば、図7、図8に示すように、積層体ユニットを積層した後に、キャリアシート20を剥離する工程を採用することもできる。
【0119】
すなわち、図7(A)、図7(B)に示すように、まず、外層用のグリーンシート30上に、キャリアシート20を剥離していない積層体ユニットU1aを、接着層28を介して、接着し、積層する。次に、図7(C)に示すように、積層体ユニットU1aからキャリアシート20を剥離する。
【0120】
次いで、図8(A)〜図8(C)に示すように、同様にして、積層体ユニットU1a上に、別の積層体ユニットU1bを、積層体ユニットU1bの接着層28を介して、接着し、積層する。次いで、この図8(A)〜図8(C)に示す工程を繰り返すことにより、複数の積層体ユニットを積層する。そして、この積層体の上面に、外層用のグリーンシートを積層し、最終加圧を行い、その後、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成することができる。
【0121】
なお、図7、図8に示す工程を採用した場合においては、接着層28の接着力を剥離層22の粘着力よりも強くすることにより、キャリアシート20を、選択的かつ容易に剥離することができるため、特に有効である。
【0122】
また、上述した実施形態では、接着層を用いることなく、電極層を有するグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートに対して接着層28を形成しているが、電極層またはグリーンシートの表面に接着層28を形成してもよい。
【0123】
すなわち、図9、図10に示すように、電極層12aとグリーンシート10aとを接着層28を介して積層し、電極層を有するグリーンシートを形成してもよい。その後、図3〜図6に示す工程により、グリーンチップを形成することができる。このようにすることで、積層精度が極めて高精度に制御されたグリーンチップを形成することができる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0125】
実施例1
まず、下記の各ペーストを準備した。
【0126】
誘電体ペースト(グリーンシート用および余白パターン用ペースト)
BaTiO粉末(BT−02/堺化学工業(株))と、MgCO、MnCO、(Ba0.6Ca0.4)SiOおよび希土類(Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y)から選択された粉末とを、ボールミルにより16時間、湿式混合し、乾燥させることにより誘電体材料とした。これら原料粉末の平均粒径は0.1〜1μmであった。
【0127】
(Ba0.6Ca0.4)SiOは、BaCO、CaCOおよびSiOをボールミルにより、16時間、湿式混合し、乾燥後に1150℃にて空気中で焼成したものをボールミルにより、100時間湿式粉砕して作製した。
【0128】
次いで、誘電体材料をペースト化するために、有機ビヒクルを誘電体材料に加え、ボールミルで混合し、誘電体グリーンシート用ペーストを得た。有機ビヒクルは、誘電体材料100質量部に対して、バインダとしてポリビニルブチラール:6質量部、可塑剤としてフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOP):3質量部、エタノール:78質量部、プロパノール:78質量部、キシレン:14質量部、剥離剤としてパラフィン:0.5質量部の配合比である。
【0129】
剥離層用ペースト
前記の誘電体グリーンシート用ペーストをエタノール/トルエン(55/10)によって重量比で2倍に希釈したものを剥離層用ペーストとした。
【0130】
接着層用ペースト
バインダとしてのブチラール樹脂:100質量部、染料としてのラック色素を表1に示す量、溶剤としてのエタノール:10000質量部、可塑剤としてのフタル酸ビス(2−エチルヘキシル):50質量部を、撹拌溶解することにより接着層用ペーストを作製した。なお、ラック色素は赤色を呈する。
【0131】
内部電極用ペースト(転写される電極層用ペースト)
次に、下記に示される配合比にて、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極用ペーストとした。すなわち、平均粒径が0.4μmのNi粒子100質量部に対して、有機ビヒクル(バインダとしてのエチルセルロース樹脂8質量部をターピネオール92質量部に溶解したもの)40質量部およびターピネオール10質量部を加え、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極用ペーストとした。
【0132】
接着層の形成
PETフィルム(第2支持シート)の上に、以下の方法により、接着層28を形成した。すなわち、まず、上記の接着層用ペーストを用い、ワイヤーバーコーターにより、接着層用ペースト膜を形成し、その後、接着層用ペースト膜を乾燥温度:80℃、乾燥時間:1分の条件で乾燥した。なお、本実施例においては、乾燥後の接着層の厚みは0.05μmであった。試料1〜6については、得られた接着層28について、PETフィルム表面の被覆率(支持シート側被覆率)を、後に説明する方法により測定した。試料7〜12については、支持シート側被覆率を測定しなかった。
【0133】
積層体ユニットの作製
図2に示す方法で、PETフィルム(第1支持シート)上に、剥離層を形成するために、上記の剥離層用ペーストを、ワイヤーバーコーターにより塗布乾燥させて0.2μmの剥離層を形成した。
【0134】
次に、剥離層の表面に、電極層12aおよび余白パターン層24を形成した。電極層12aは、上記の内部電極用ペーストを用いた印刷法により、1.2μmの厚みで形成した。余白パターン層24は、上記のグリーンシート用ペーストを用いた印刷法により、1.2μmの厚みで形成した。
【0135】
次に、電極層12aおよび余白パターン層24の表面に、上記のグリーンシート用ペーストを用いて、ダイコーターにより、厚み1.0μmのグリーンシート10aを形成した。
【0136】
次に、図3に示す方法で、PETフィルム(第2支持シート)上に形成した接着層28を、グリーンシート10aの表面に接着(転写)し、積層体ユニットU1aを形成した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は、1MPa、温度は、80℃とした。試料1〜6については、得られた積層体ユニットU1aに形成された接着層28について、グリーンシート表面の被覆率(グリーンシート側被覆率)を、後に説明する方法により測定した。試料7〜12については、グリーンシート側被覆率を測定しなかった。また、得られた積層体(試料番号1〜12)について、積層不良の発生率を後に説明する方法により測定した。
【0137】
グリーンチップの作製
まず、厚み10μmに成形された複数枚の外層用グリーンシートを、積層時の厚みが約50μmとなるように、積層し、焼成後に積層コンデンサの蓋部分(カバー層)となる外層を形成した。次いで、上記にて作製した積層体ユニットを複数準備し、図4〜図6に示す方法により、所望の特性が得られるように、複数積層した。そして、得られた積層体について100MPaおよび70℃の条件でプレス成形を行い、その後、ダイシング加工機によって、切断することにより、焼成前のグリーンチップを得た。
【0138】
焼結体の作製
次に、最終積層体を所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。
【0139】
脱バインダは、昇温速度:50℃/時間、保持温度:240℃、保持時間:8時間、雰囲気ガス:空気中、で行った。焼成は、昇温速度:300℃/時間、保持温度:1200℃、保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:露点20℃に制御されたNガスとH(5%)との混合ガス、で行った。アニール(再酸化)は、保持時間:3時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気用ガス:露点20℃に制御されたNガス、で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75℃にて行った。
【0140】
次に、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、In−Ga合金ペーストを端部に塗布し、その後、焼成を行うことにより外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。
【0141】
接着層の被覆率(支持シート側被覆率およびグリーンシート側被覆率)
支持シート側被覆率は、まず、PETフィルム上に形成した接着層28の表面を、画像処理装置に接続されたカメラを用いて撮影した。得られた画像を、画像処理装置により、接着層28が形成されている部分と接着層28が形成されていない部分とを二値化し、その面積比率を求め、支持シート側被覆率を算出した。支持シート側被覆率の算出には、視野400μm×500μmについて撮影した画像を5視野分使用した。グリーンシート側被覆率は、電極層を有するグリーンシートのグリーンシート側表面に形成した接着層28の表面を、上記の方法により観察して算出した。
【0142】
試料3および6について、電極層を有するグリーンシートのグリーンシート側表面に形成した接着層の画像処理後の画像を図11(A)および図11(B)に示す。
【0143】
積層不良の発生率
まず、得られた積層体について、積層体の表面を目視で観察し、接着不良が発生しているか否かを確認した。本実施例では、200個分のコンデンサとなる積層体の面積について検査を行い、積層不良の発生率を算出した。結果を表1に示す。
【表1】

【0144】
表1より、接着層に染料が含有され、赤色に着色されており、かつ、接着層の良否判定を行った場合(試料1〜5)には、積層不良の試料が発生しないかあるいは非常に少ないことが確認できる。
【0145】
これに対し、接着層の染料が含有されない状態で、接着層の良否判定を行った場合(試料6)には、接着層の良否判定を行っても、接着層が無色であるため、良否判定ができず、接着層の形成状態が悪いシートも積層するため、接着不良の試料が多く見られる。
【0146】
また、図11(A)より、接着層が着色された状態で、接着層の良否判定を行うための画像処理を行うと、接着層が形成されている部分(図11(A)の黒色部)と形成されていない部分(図11(A)の白色部)とが、鮮明に区別できることが確認できる。しかも、実際に接着層が形成されている部分と形成されている部分とが、非常に精度良く一致する。
【0147】
一方、図11(B)より、接着層が着色されていない状態で、接着層の良否判定を行うための画像処理を行っても、非常に不鮮明となっていることが確認できる。また、この画像と、実際に接着層が形成されている部分および形成されていない部分と、を比較しても、必ずしも一致しなかった。そのため、接着層の良否判定の精度が劣る。
【0148】
また、接着層の良否判定を行わない場合(試料7〜12)には、接着層の着色の有無に関係なく、接着層の形成状態が悪いシートも積層するため、接着不良の試料が多く見られる。
【0149】
なお、本発明の実施例である試料1〜5において、染料の含有量が1wt%の場合(試料1)には、着色された色が薄いため、接着層の良否判定の精度が悪化し、接着不良の試料が若干発生する傾向にあった。
【0150】
また、染料の含有量が70wt%の場合(試料5)には、接着層の接着力が比較的に悪くなり、その結果、積層不良の試料が若干発生する傾向にあった。したがって、染料の含有量は本発明の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0151】
実施例2
接着層の良否判定において、「良」と判定する基準を表2に示すグリーンシート側被覆率の範囲とした以外は、試料3と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。実施例2では、さらに、下記に説明するデラミネーションの発生率についても評価を行った。結果を表2に示す。
【0152】
デラミネーションの発生率
まず、得られたコンデンサ試料を、内部電極層と垂直な方向で切断した。次いで、この切断面を観察し、層間剥離現象(デラミネーション)が発生しているか否かを確認した。本実施例では、200個のサンプルについて検査を行い、デラミネーションの発生率を算出した。
【表2】

【0153】
表2より、グリーンシート側被覆率の範囲が、本発明の好ましい範囲内である場合(試料14、15)には、積層不良およびデラミネーションは発生しないことが確認できる。
【0154】
これに対して、グリーンシート側被覆率の範囲が、本発明の好ましい範囲から外れる範囲がある場合(試料13、16)には、デラミネーション、あるいは積層不良およびデラミネーションが若干発生する傾向にあることが確認できる。
【0155】
実施例3
接着層の良否判定において、「良」と判定する基準を表3に示す支持シート側被覆率の範囲とした以外は実施例2と同様にして、評価を行った。結果を表3に示す。
【表3】

【0156】
表3より、支持シート側被覆率についても、実施例2と同様の傾向にあることが確認できる。
【0157】
実施例4
接着層の乾燥温度を表1に示す温度とした以外は、試料3と同様にして、接着層が形成された電極層を有するグリーンシートを作製し、グリーンシート側被覆率を算出した。結果を表3に示す。
【表4】

【0158】
表4より、接着層の乾燥温度が、本発明の好ましい範囲内である場合(試料22〜24)には、グリーンシート側被覆率が本発明の好ましい範囲内となることが確認できる。
【0159】
これに対して、接着層の乾燥温度が本発明の好ましい範囲よりも低い場合(試料21)には、溶剤が乾燥しないため、その後の工程を行うことができなかった。また、接着層の乾燥温度が本発明の好ましい範囲よりも高い場合(試料25)には、グリーンシート側被覆率が本発明の好ましい範囲内とならない傾向にあった。
【0160】
実施例5
染料を、ベニコウジ黄色素(試料27)、クチナシ青色素(試料28)とした以外は、試料3と同様にして、コンデンサ試料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【表5】

【0161】
表5より、接着層が黄色に着色されている場合(試料27)には、コントラストが比較的に低いため、接着層の良否判定の精度が悪化し、その結果、積層不良の若干発生する傾向にあった。
【0162】
また、接着層が青色に着色されている場合(試料28)には、コントラストが比較的に高いため、接着層の良否判定の精度が良好となり、積層不良が見られない傾向にあった。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は本発明の一実施形態に係る接着層の形成方法を示す要部断面図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は本発明の一実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図である。
【図5】図5(A)、図5(B)は図4の続きの工程を示す要部断面図である。
【図6】図6(A)、図6(B)は図5の続きの工程を示す要部断面図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は図7の続きの工程を示す要部断面図である。
【図9】図9(A)〜図9(C)は本発明の他の実施形態に係る接着層、電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図である。
【図10】図10(A)〜図10(C)は図9の続きの工程を示す要部断面図である。
【図11】図11(A)および図11(B)は、本発明の実施例および比較例に係る接着層を画像処理した後の画像である。
【符号の説明】
【0164】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 電極層
20… キャリアシート(第1支持シート)
22… 剥離層
24… 余白パターン層
26… キャリアシート(第2支持シート)
28… 接着層
30… 外層用グリーンシート
U1a〜U1c… 積層体ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンシートの表面に電極層を形成し、または、電極層の表面にグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートを得る工程と、
前記電極層を有するグリーンシートを積層する前に、前記電極層を有するグリーンシートの電極層側表面またはグリーンシート側表面に、接着層を形成する工程と、
前記接着層を形成した後に、前記接着層を観察評価して、前記接着層の良否を判定する工程と、
前記接着層の良否を判定する工程において、不良であると判定された接着層が形成された電極層を有するグリーンシートを用いることなく、前記接着層を介して、前記電極層を有するグリーンシートを積層する工程と、を有し、
前記接着層は、バインダ樹脂と、染料と、を含み、前記染料により着色されていることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記接着層の良否を判定する工程において、撮像装置により撮影した前記接着層の画像の信号を処理して、前記接着層が実際に形成されている部分と前記接着層が実質的に形成されていない部分とを判別する請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記電極層側表面において前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が前記電極層側表面を実際に被覆する面積の割合を電極層側被覆率としたときに、前記電極層側被覆率が60〜90%である請求項1または2に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記グリーンシート側表面において前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が、前記グリーンシート側表面を実際に被覆する面積の割合をグリーンシート側被覆率としたときに、前記グリーンシート側被覆率が60〜90%である請求項1または2に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記接着層が、前記グリーンシートおよび/または前記電極層に対してコントラストの高い色で着色されている請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記染料が、蛍光染料である請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記接着層が、前記バインダ樹脂、前記染料および溶剤を含有する接着層用ペーストを用いて形成される接着層用ペースト膜を、40℃以上、80℃以下の温度で乾燥することにより形成される請求項1〜6のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
乾燥後の前記接着層100質量%に対して、前記染料が2〜50質量%含有されている請求項1〜7のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記接着層の厚みが、0.005〜0.1μmである請求項1〜8のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記接着層が、転写法により形成される請求項1〜9のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記接着層が、最初に支持シートの表面に剥離可能に形成される工程と、
前記接着層を形成した後に、前記支持シートに形成された前記接着層を観察評価して、前記接着層の良否を判定する工程と、
前記接着層の良否を判定する工程において、不良であると判定された接着層を用いることなく、前記接着層が、前記グリーンシートまたは前記電極層の表面に押しつけられて転写される工程と、を有する請求項10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記支持シートにおいて前記接着層が形成されることとなる部分の面積に対して、乾燥後の前記接着層が、前記支持シートを実際に被覆する面積の割合を支持シート側被覆率としたときに、前記支持シート側被覆率が30〜70%である請求項11に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記接着層が、塗布法により形成される請求項1〜9のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−246270(P2009−246270A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93845(P2008−93845)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】