説明

積層貫通コンデンサ

【課題】高周波帯域でのノイズの除去能力を向上した積層貫通コンデンサを提供すること。
【解決手段】積層貫通コンデンサ1は、誘電体層5を積層してなるコンデンサ素体2と、主電極部10a及び引き出し電極部10b,10cを有する信号用内部電極10と、主電極部10aと対向する主電極部20a及び引き出し電極部20b,20cを有する接地用内部電極20と、信号用内部電極10に接続される信号用端子電極3,3と、接地用内部電極20に接続される接地用端子電極4,4とを備えている。積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10の主電極部10aが、積層方向に対向する接地用内部電極20の主電極部20aに向かって屈曲しており、また、接地用内部電極20の主電極部20aが、信号用内部電極10の主電極部10aと同じ方向に屈曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層貫通コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層貫通コンデンサとして、コンデンサ素体内に交互に配置された信号用内部電極と接地用内部電極とを備えたコンデンサが知られている(例えば特許文献1)。この積層貫通コンデンサでは、信号用内部電極と接地用内部電極とがコンデンサ素体内を貫通するように形成されており、コンデンサ素体の側面において互いに対向するように配置される信号用端子電極と接地用端子電極とにそれぞれ接続される構成となっている。このような積層貫通コンデンサは、例えば、電子機器のノイズ除去等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−206615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層貫通コンデンサでは、ある程度のノイズを除去することはできる。しかしながら、電子機器に使用される信号周波数が高まるにつれて、高周波帯域でのノイズの除去能力の更なる向上が望まれている。
【0005】
本発明は、高周波帯域でのノイズの除去能力を向上させることができる積層貫通コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層貫通コンデンサは、コンデンサ素体と、信号用内部電極と、接地用内部電極と、信号用端子電極と、接地用端子電極とを備えている。コンデンサ素体は、誘電体層を積層してなり、且つ、誘電体層の積層方向と交差する第1の方向に対向する第1及び第2の側面と、積層方向及び第1の方向とに交差する第2の方向に対向する第3及び第4の側面とを有する。信号用内部電極は、コンデンサ素体内に配置され、且つ、第1の方向に伸びる信号用主電極部と、信号用主電極部から第1及び第2の側面それぞれに引き出される信号用引き出し電極部とを有する。
【0007】
接地用内部電極は、コンデンサ素体内に配置され、且つ、信号用主電極部と積層方向に対向する接地用主電極部と、接地用主電極部から第3及び第4の側面それぞれに引き出される接地用引き出し電極部とを有する。信号用端子電極は、コンデンサ素体の第1及び第2の側面それぞれに配置され、信号用内部電極に電気的に接続される。接地用端子電極は、コンデンサ素体の第3及び第4の側面それぞれに配置され、接地用内部電極に電気的に接続される。この積層貫通コンデンサでは、信号用主電極部は、積層方向に対向する接地用主電極部に向かって屈曲又は湾曲している。
【0008】
本発明に係る積層貫通コンデンサでは、このように、信号用主電極部が、積層方向に対向する接地用主電極部に向かって屈曲又は湾曲している。この場合、信号用内部電極を流れる信号に重畳する高周波ノイズを、信号用主電極部の屈曲又は湾曲している部分(凹部)から接地用主電極部に向かって効率よく流れ込むようにすることができる。これにより、本発明に係る積層貫通コンデンサでは、高周波ノイズの除去能力を向上させることが可能となる。
【0009】
上記の積層貫通コンデンサにおいて、接地用主電極部は、積層方向に対向する信号用主電極部と同じ方向に屈曲又は湾曲していることが好ましい。この場合、信号用主電極部の屈曲又は湾曲している部分から接地用主電極部に向かって高周波ノイズが更に効率よく流れ込むようにすることができる。また、信号用主電極部と接地用主電極部とが同じ方向に屈曲又は湾曲していることにより、誘電体層と各内部電極との噛み合わせがよくなり、いわゆるアンカー効果等によって積層体の割れを防止できる。
【0010】
上記の積層貫通コンデンサにおいて、信号用主電極部又は接地用主電極部の少なくとも一方は、当該主電極部の中央部を中心として屈曲又は湾曲していることが好ましい。この場合、内部電極の特定箇所のみを屈曲又は湾曲させることになり、内部電極を曲げることで大きくなり兼ねない直流抵抗Rdcの増加を抑制することができる。
【0011】
上記の積層貫通コンデンサにおいて、信号用主電極部又は接地用主電極部の少なくとも一方の屈曲又は湾曲した凹部の第1の方向における中心は、積層方向から見たときに、接地用引き出し電極部同士を結んだ領域内に位置していることが好ましい。この場合、信号用主電極部の屈曲等している部分から接地用主電極部に流れ込んだ高周波ノイズが接地用端子電極に効率よく流れ込むようにすることができ、これにより、高周波ノイズの除去能力を更に向上させることができる。
【0012】
上記の積層貫通コンデンサでは、信号用内部電極において、信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の第1の方向における中心の積層方向における位置をT1、信号用主電極部と信号用引き出し電極部との境の積層方向における位置をT2、及び、信号用引き出し電極部の信号用端子電極との接続部の積層方向における位置をT3とした場合に、第1の高低差T2−T1が第2の高低差T2―T3よりも小さいことが好ましい。この場合、信号用内部電極の主電極部を過度に凹ませないことになり、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0013】
上記の積層貫通コンデンサでは、信号用内部電極において、信号用引き出し電極部の信号用端子電極との接続部から信号用主電極部と信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α1は、信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の第1の方向における中心から信号用主電極部と信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α2よりも大きいことが好ましい。この場合、信号用内部電極の主電極部を過度に凹ませないことになり、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0014】
上記の積層貫通コンデンサにおいて、信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の第1の方向における曲がり角α3が160度以上180度未満であることが好ましい。この場合、信号用内部電極の主電極部を過度に凹ませないことになり、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0015】
上記の積層貫通コンデンサにおいて、コンデンサ素体は、第1の方向における長さが第2の方向における長さよりも長い略直方体形状を呈しており、信号用内部電極において、信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の第2の方向における中心から信号用主電極部の第2の方向における端部までの傾斜角α4は、信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の第1の方向における中心から信号用主電極部と信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α2よりも大きいことが好ましい。この場合、信号用主電極部の長さ寸法が小さくなる第2の方向における信号用主電極部の凹部中心から端部までの傾斜角α4を急峻にすることで、高周波ノイズの除去能力を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高周波帯域でのノイズの除去能力を向上した積層貫通コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層貫通コンデンサの斜視図である。
【図2】図1に示した積層貫通コンデンサのII-II線断面図である。
【図3】図1に示した積層貫通コンデンサのIII-III線断面図である。
【図4】(a)は、誘電体層上に配置された信号用内部電極の平面図であり、(b)は、別の誘電体層上に配置された接地用内部電極の平面図である。
【図5】信号用内部電極の断面を模式的に示した模式断面図である。
【図6】図4の平面図に更に段差吸収層を積層した状態を示した平面図であり、(a)は、信号用内部電極が配置された誘電体層上に段差吸収層を積層した平面図であり、(b)は、接地用内部電極が配置された誘電体層上に段差吸収層を積層した平面図である。
【図7】本実施形態に係る積層貫通コンデンサのインピーダンスと従来の積層貫通コンデンサのインピーダンスとを比較した図である。
【図8】本発明の変形例に係る積層貫通コンデンサの内部電極を示した斜視図であり、(a)は、誘電体層上に配置された信号用内部電極の斜視図であり、(b)は、別の誘電体層上に配置された接地用内部電極の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、図1〜図3を参照して、本実施形態に係る積層貫通コンデンサ1の構成について説明する。積層貫通コンデンサ1は、コンデンサ素体2と、信号用端子電極3,3と、接地用端子電極4,4と、信号用内部電極10と、接地用内部電極20とを備えて構成されている。
【0020】
コンデンサ素体2は、図2及び図3に示されるように、複数の誘電体層5が積層されて形成され、略直方体形状をなしている。コンデンサ素体2は、図1に示されるように、Z方向(誘電体層5の積層方向)に対向する矩形形状の第1及び第2の主面2a,2bと、Y軸方向(第1の方向)に対向する第1及び第2の側面2c、2dと、X軸方向(第2の方向)に対向する第3及び第4の側面2e,2fとを有する。
【0021】
第1及び第2の側面2c,2dは、第1及び第2の主面2a,2b間を連結するように第1及び第2の主面2a,2bの短辺方向に伸びている。第3及び第4の側面2e,2fは、第1及び第2の主面2a,2b間を連結するように第1及び第2の主面2a,2bの長辺方向に伸びている。誘電体層5は、例えばBaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系といった電歪特性を有する誘電体材料によって形成される。
【0022】
信号用端子電極3,3は、コンデンサ素体2の第1及び第2の側面2c,2dを覆うようにそれぞれ形成され、Y軸方向に互いに対向して配置されている。信号用端子電極3は、多層化されており、コンデンサ素体2に接する内側の層には、例えばCu,Ni,Ag−Pdなどが用いられ、外側の層には、例えばNi−Snなどのめっきが施されている。信号用端子電極3,3は、後述する信号用内部電極10の両端に電気的に接続される。
【0023】
接地用端子電極4,4は、コンデンサ素体2の第3及び第4の側面2e,2fの略中央に第1の主面2aから第2の主面2bに跨るようにそれぞれ形成され、X軸方向に互いに対向して配置されている。接地用端子電極4は、信号用端子電極3と同様の材料によって多層化されている。接地用端子電極4,4は、後述する接地用内部電極20の両端に電気的に接続される。なお、接地用端子電極4は、コンデンサ素体2の表面において、信号用端子電極3とは互いに電気的に絶縁されている。
【0024】
信号用内部電極10と接地用内部電極20とは、図2及び図3に示されるように、コンデンサ素体2内において、少なくとも1層の誘電体層5を挟むようにして交互に複数積層されている。信号用内部電極10は、その断面方向(X軸方向及びY軸方向)の中央部を中心として、積層方向に対向する一方の接地用内部電極20に向かって図示下方に屈曲している。接地用内部電極20は、その断面方向の中央部を中心として、この信号用内部電極10と同じ方向に屈曲しており、信号用内部電極10と略平行な状態となるように形成されている。なお、信号用内部電極10と接地用内部電極20との間に介在する誘電体層5の厚さは、例えば0.5〜2μm程度である。
【0025】
信号用内部電極10は、図4(a)に示されるように、矩形形状を呈し、誘電体層5上のX軸方向の略中央に配置される。信号用内部電極10は、接地用内部電極20と積層方向に対向して静電容量部を形成する主電極部10a(信号用主電極部)と、主電極部10aの両端から同じ幅で両側面2c,2dに引き出される引き出し電極部10b,10c(信号用引き出し電極部)とを含んでいる。信号用内部電極10は、Y軸方向に伸びるように形成されており、側面2c,2dにその両端が露出し、これにより、信号用端子電極3,3を互いに電気的に接続させる。
【0026】
接地用内部電極20は、図4(b)に示されるように、略十字形状を呈し、信号用内部電極10が配置される誘電体層5とは別の誘電体層5上の中心部に配置される。接地用内部電極20は、信号用内部電極10と積層方向に対向する矩形形状の主電極部20a(接地用主電極部)と、主電極部20aのY軸方向に伸びる両外縁の中央から主電極部20aよりも狭い幅で両側面2e,2fに引き出される引き出し電極部20b,20c(接地用引き出し電極部)とを含んでいる。接地用内部電極20は、引き出し電極部20b,20cがX軸方向に伸びるように形成されており、側面2e,2fにその両端が露出し、これにより、接地用端子電極4,4を互いに電気的に接続させる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る積層貫通コンデンサ1の信号用内部電極10の断面形状について、図5を参照して、より詳細に説明する。上述したように、信号用内部電極10は、その断面方向(X軸方向及びY軸方向)の中央部を中心として、積層方向に対向する一方の接地用内部電極20に向かって図示下方に屈曲している。言い換えると、信号用内部電極10は、主電極部10aの端部からその中央部に向かって主面2bの方向に傾く勾配を有している。但し、積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10を過度に曲がらせることによる直流抵抗Rdcの増加を抑制するため、以下のような断面形状となっている。
【0028】
すなわち、信号用内部電極10は、図5に示されるように、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における中心の積層方向における位置をT1、主電極部10aと引き出し電極部10b,10cとの境の積層方向における位置をT2、及び、引き出し電極部10b,10cの信号用端子電極3,3との接続部の積層方向における位置をT3とした場合に、主電極部10aにおける高低差T2−T1が引き出し電極部10b,10cにおける高低差T2―T3よりも小さくなるように屈曲している。つまり、信号用内部電極10の主電極部10aを過度に曲がらせない構成となっており、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における曲がり角α3は、例えば160度以上180度未満の間の値となっている。
【0029】
そして、信号用内部電極10では、主電極部10aの長さ(一方のT2から他方のT2までの距離)が引き出し電極部10bの長さ(T2からT3までの距離)よりも十分に長くなっており、引き出し電極部10b(10c)の信号用端子電極3との接続部T3から主電極部10aと引き出し電極部10b(10c)との境T2までの傾斜角α1が、主電極部10aの屈曲した凹部の中心T1から主電極部10aと引き出し電極部10b(10c)との境T2までの傾斜角α2よりも大きくなるように形成されている。
【0030】
また、信号用内部電極10では、主電極部10aの屈曲した凹部のX軸方向における中心から主電極部10aのX軸方向における端部までの傾斜角α4が、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における中心T1から主電極部10aと引き出し電極部10b(10c)との境T2までの傾斜角α2よりも大きくなるようにもなっている。
【0031】
また、積層方向から見た場合、このような主電極部10aの屈曲した凹部の中心は、接地用内部電極20の引き出し電極部20b,20c同士を結んだ領域内に位置することになる。なお、接地用内部電極20は、積層方向において信号用内部電極10と略平行な形状となっているため、上述した信号用内部電極10と略同様な断面形状を呈する。
【0032】
続いて、積層貫通コンデンサ1の製造方法について簡単に説明する。最初に誘電体層5となる複数のグリーンシート5(説明の便宜上、誘電体層5と同じ符号を用いる。以下同じ)を準備する。まず、BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系の誘電体材料に、有機ビヒクルなどを混合・混練することによってセラミックペーストを得る。このセラミックペーストをドクターブレード法等によりPETフィルム上に塗布し、グリーンシート5を形成する。
【0033】
このグリーンシート5上に信号用内部電極10や接地用内部電極20となる電極パターンをそれぞれ形成する。電極パターンは、電極ペーストをグリーンシート上にスクリーン印刷等することによって例えば形成する。また、本実施形態では、図6(a)に示されるように、信号用内部電極10が形成されるグリーンシート5の内部電極の非形成領域5e,5f上及び信号用内部電極10のY軸方向に沿った外縁10e,10f上とに、グリーンシート5と同様の材料からなるセラミックペースト12を印刷する。このセラミックペースト12は、内部電極10の厚みによる積層方向の段差を吸収する段差吸収層として機能する。
【0034】
次に、図6(b)に示されるように、接地用内部電極20が形成されるグリーンシート5の内部電極の非形成領域5c,5d上、接地用内部電極20の引き出し電極部20b,20c上、及び、接地用内部電極20の主電極部20aの周縁上に、グリーンシート5と同様の材料からなるセラミックペーストを印刷する。このセラミックペーストも、内部電極20の厚みによる積層方向の段差を吸収する段差吸収層として機能する。その後、電極パターンが形成された複数のグリーンシート5と、形成されていない複数のグリーンシート5とを所定の順序で積層し、積層方向から加圧して積層体を形成する。この加圧を行う際、上述した段差吸収層や電極パターン上の空隙等により、信号用内部電極10や接地用内部電極20となる電極パターンは、積層方向に屈曲等された形状へと折り曲げられる。
【0035】
次に、この積層体を切断して略直方体形状のグリーンチップを複数形成し、脱バインダ処理及び焼成を行う。焼成により、グリーンシート5が誘電体層5となり、電極パターンが信号用内部電極10や接地用内部電極20となり、コンデンサ素体2が得られる。このコンデンサ素体2の第1及び第2の側面2c,2dには、面全体を覆うようにCu等の導電性ペーストを塗布し、第3及び第4の側面2e,2fには、長手方向中央部に帯状に同様の導電性ペーストを塗布する。その後、塗布した導電性ペーストを焼付け、更に、めっきを施すことにより、信号用端子電極3,3と接地用端子電極4,4とが形成される。以上により、積層貫通コンデンサ1が完成する。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10の主電極部10aが、積層方向に対向する接地用内部電極20の主電極部20aに向かって屈曲している。このため、信号用内部電極10を流れる信号(図4(a)中の矢印)に重畳する高周波ノイズを、主電極部10aの屈曲している部分(凹部)から接地用内部電極20の主電極部20aに向かって効率よく流れ込むようにすることができる。その結果、積層貫通コンデンサ1では、図7の線Aで示されるように、従来の積層コンデンサの除去能力を示す線Bに比べ、高周波ノイズの除去能力(インピーダンス)を所定の高周波帯域で向上させることが可能となる。
【0037】
また、積層貫通コンデンサ1では、接地用内部電極20の主電極部20aは、積層方向に対向する信号用内部電極10の主電極部10aと同じ方向に屈曲している。このため、主電極部10aの屈曲している部分から接地用内部電極20の主電極部20aに向かって高周波ノイズが更に効率よく流れ込むようにすることができる。しかも、主電極部10aと主電極部20aとが同じ方向に屈曲していることにより、誘電体層5と各内部電極10,20との噛み合わせがよくなり、いわゆるアンカー効果によって積層体の割れを防止できる。
【0038】
また、積層貫通コンデンサ1では、主電極部10a,20aは、当該主電極部10a,20aの中央部を中心として屈曲している。このため、内部電極10,20の特定箇所のみを屈曲させることになり、内部電極10,20を曲げることで大きくなり兼ねない直流抵抗Rdcの増加を抑制することができる。
【0039】
また、積層貫通コンデンサ1では、主電極部10a,20aの屈曲した凹部のY軸方向における中心は、積層方向から見たときに、引き出し電極部20b,20c同士を結んだ領域内に位置している。このため、主電極部10aの屈曲している部分から主電極部20aに流れ込んだ高周波ノイズが、図4(b)の矢印で示されるように、接地用端子電極4,4に効率よく流れ込むようにすることができる。これにより、積層貫通コンデンサ1では、高周波ノイズの除去能力を更に向上させることができる。
【0040】
また、積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10において、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における中心の積層方向における位置をT1、主電極部10aと引き出し電極部10b,10cとの境の積層方向における位置をT2、及び、引き出し電極部10b,10cの信号用端子電極3,3との接続部の積層方向における位置をT3とした場合に、主電極部10aの高低差T2−T1が引き出し電極部10b,10cの高低差T2―T3よりも小さくなっている。このように、信号用内部電極10の主電極部10aを過度に凹ませないことにより、積層貫通コンデンサ1では、直流抵抗Rdcの増加を抑制することができると共に、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0041】
また、積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10において、引き出し電極部10b,10cの信号用端子電極3,3との接続部から主電極部10aと引き出し電極部10b,10cとの境までの傾斜角α1は、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における中心から主電極部10aと引き出し電極部10b,10cとの境までの傾斜角α2よりも大きくなっている。このように、信号用内部電極10の主電極部10aを過度に凹ませないことにより、積層貫通コンデンサ1では、直流抵抗Rdcの増加を抑制することができると共に、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0042】
また、積層貫通コンデンサ1では、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における曲がり角α3が160度以上180度未満である。このように、信号用内部電極10の主電極部10aを過度に凹ませないことにより、積層貫通コンデンサ1では、直流抵抗Rdcの増加を抑制することができると共に、静電容量部の電極途切れを防止することができる。
【0043】
また、積層貫通コンデンサ1では、信号用内部電極10において、主電極部10aの屈曲した凹部のX軸方向における中心から主電極部10aのX軸方向における端部までの傾斜角α4が、主電極部10aの屈曲した凹部のY軸方向における中心から主電極部10aと引き出し電極部10b,10cとの境までの傾斜角α2よりも大きくなっている。このように、主電極部10aの長さ寸法が小さくなるX軸方向における主電極部10aの凹部中心から端部までの傾斜角α4を急にすることで、直流抵抗Rdcの増加を抑制しつつ、高周波ノイズの除去能力を更に向上させることができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、信号用内部電極10や接地用内部電極20が主電極部10a,20aにおいてその中央部を中心として一箇所が屈曲した構成としたが、内部電極10,20を曲げることで大きくなり兼ねない直流抵抗Rdcの増加を抑制できる範囲で、屈曲する箇所を増やしてももちろんよい。
【0045】
また、上述実施形態では、信号用内部電極10等を屈曲した場合で説明したが、図8に示されるように、信号用内部電極30の主電極部30aが、積層方向に対向する接地用内部電極40の主電極部40aに向かって湾曲する構成とし、更に、接地用内部電極40の主電極部40aも、この信号用内部電極30の主電極部30aと同じ方向に湾曲する構成としてもよい。なお、この変形例における信号用内部電極30と接地用内部電極40は、上述した内部電極10,20と略同様であり、主電極部30a,40aや引き出し電極部30b,30c,40b,40cを有し、互いに略平行な状態で積層されて、積層貫通コンデンサを形成する。
【0046】
このような構成の積層貫通コンデンサにおいても、両湾曲部35,45は、上述した両内部電極10,20の凹部と同様の効果を奏し、信号用内部電極30を流れる信号に重畳する高周波ノイズを、主電極部30aの湾曲部35から接地用内部電極40の主電極部40aの湾曲部45に向かって効率よく流れ込むようにすることができ、高周波ノイズの除去能力を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…積層貫通コンデンサ、2…コンデンサ素体、3…信号用端子電極、4…接地用端子電極、5…誘電体層、10,30…信号用内部電極、10a,30a…主電極部、10b,10c,30b,30c…引き出し電極部、20,40…接地用内部電極、20a,40a…主電極部、20b,20c,40b,40c…引き出し電極部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を積層してなり、且つ、前記誘電体層の積層方向と交差する第1の方向に対向する第1及び第2の側面と、前記積層方向及び前記第1の方向とに交差する第2の方向に対向する第3及び第4の側面とを有するコンデンサ素体と、
前記コンデンサ素体内に配置され、且つ、前記第1の方向に伸びる信号用主電極部と、前記信号用主電極部から前記第1及び第2の側面それぞれに引き出される信号用引き出し電極部とを有する信号用内部電極と、
前記コンデンサ素体内に配置され、且つ、前記信号用主電極部と前記積層方向に対向する接地用主電極部と、前記接地用主電極部から前記第3及び第4の側面それぞれに引き出される接地用引き出し電極部とを有する接地用内部電極と、
前記コンデンサ素体の前記第1及び第2の側面それぞれに配置され、前記信号用内部電極に電気的に接続される信号用端子電極と、
前記コンデンサ素体の前記第3及び第4の側面それぞれに配置され、前記接地用内部電極に電気的に接続される接地用端子電極と、を備え、
前記信号用主電極部は、前記積層方向に対向する前記接地用主電極部に向かって屈曲又は湾曲していることを特徴とする積層貫通コンデンサ。
【請求項2】
前記接地用主電極部は、前記積層方向に対向する前記信号用主電極部と同じ方向に屈曲又は湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項3】
前記信号用主電極部又は前記接地用主電極部の少なくとも一方は、当該主電極部の中央部を中心として屈曲又は湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項4】
前記信号用主電極部又は前記接地用主電極部の少なくとも一方の屈曲又は湾曲した凹部の前記第1の方向における中心は、前記積層方向から見たときに、前記接地用引き出し電極部同士を結んだ領域内に位置していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項5】
前記信号用内部電極において、前記信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の前記第1の方向における中心の積層方向における位置をT1、前記信号用主電極部と前記信号用引き出し電極部との境の積層方向における位置をT2、及び、前記信号用引き出し電極部の前記信号用端子電極との接続部の積層方向における位置をT3とした場合に、第1の高低差T2−T1が第2の高低差T2―T3よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項6】
前記信号用内部電極において、前記信号用引き出し電極部の前記信号用端子電極との接続部から前記信号用主電極部と前記信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α1は、前記信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の前記第1の方向における中心から前記信号用主電極部と前記信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α2よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項7】
前記信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の前記第1の方向における曲がり角α3が160度以上180度未満であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の積層貫通コンデンサ。
【請求項8】
前記コンデンサ素体は、前記第1の方向における長さが前記第2の方向における長さよりも長い略直方体形状を呈しており、
前記信号用内部電極において、前記信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の前記第2の方向における中心から前記信号用主電極部の前記第2の方向における端部までの傾斜角α4は、前記信号用主電極部の屈曲又は湾曲した凹部の前記第1の方向における中心から前記信号用主電極部と前記信号用引き出し電極部との境までの傾斜角α2よりも大きいことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の積層貫通コンデンサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45808(P2013−45808A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180740(P2011−180740)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】