説明

穴あき抵抗性複合体

穴あき抵抗性複合体100は第1織物層102及び第2織物層108を包含し、それぞれはデニール当り約8グラム以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含する。層は第2織物層の上面110は第1織物層の下面106に隣接するように重ねられる。第1織物層102の下面106及び第2織物層108の上面110の少なくとも一は織物層の全重量に基づいて約10重量%以下は約20μm以下の直径の複数の粒子を包含する被覆120を包含する。被覆120はバインダーをも包含し得る。複合体100は他の穴あき抵抗性及び/又は衝撃抵抗性材料又は要素と組合せても用いることができる。穴あき抵抗性複合体の製造方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、穴あき抵抗性を示す複合体を指向する。
【0002】
本発明は、(a)約8デニールg/デニール以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含する第1織物層、第1織物層は上面及び下面を有し、(b)約8g/デニール以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含する第2織物層、第2織物層は上面及び下面を有し、第2織物層の上面は第1織物層の下面に隣接しており、を包含する穴あき抵抗性複合体(composite)において、第1織物層の下面及び第2織物層の上面の少なくとも1が、直径約20μm以下の直径を有する複数の粒子を包含する、織物層の全重量を基準にして約10重量%以下の被覆を包含する。本発明による穴あき抵抗性複合体は更に衝撃抵抗性材料(例えば、衝撃抵抗性積層体)及び/又は穴あき抵抗性材料(例えば、鎖かたびら、金属よろい、又はセラミックよろい)を包含し得る。
【0003】
本発明は、穴あき抵抗性複合体の製造方法をも提供する。この方法は、(a)第1織物層及び第2織物層を提供し、第1及び第2織物層はそれぞれデニール当り約8g/デニール以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含しかつ第1及び第2織物層はそれぞれ上面及び下面を有し、(b)第1織物層の下面及び第2織物層の上面を約20μm以下の直径を有する複数の粒子を包含する被覆組成物と接触させ、(c)工程(b)で処理して第1織物層の下面又は第2織物層の上面に被覆を形成する処理をした織物層を乾燥し、及び(d)第1及び第2織物層を一緒にして第1織物層の下面に第2織物層の上面を隣接させて穴あき抵抗性複合体を製造する工程を包含する。
【0004】
発明の詳細な説明
本発明は穴あき抵抗性複合体に関する。ここで用いるように、「穴あき(puncture)抵抗性(resistant)」の語は、例えばナイフ、刃付きの武器及び先の尖った武器又は物体によって材料の貫通に対する保護を提供する材料について一般に用いられる。従って、「穴あき抵抗性」材料は、そのような物体による材料の貫通を防ぐか又は類似の非穴あき抵抗性材料に比べてそのような物体の貫通の程度を低下し得る。好ましくは、「穴あき抵抗性」材料は、「身体よろいの刺し(stab)抵抗性」と題する標準0115.00(2000)公安国内委員会(NIJ)によるスパイク級恐怖(threat)レベル1のテストをした場合にパスの評価を達成する。「穴あき抵抗性」の語は、より高いレベルの恐怖(例えば、本発明による複合体)に対してテストしたときにパスを達成する材料(例えば、レベル2又はレベル3)及び/又はSIJ標準0115.00による他の恐怖武器(例えば、レベル1又はより高いP1ナイフ恐怖又はレベル1又はより高いS1ナイフ恐怖)に言及することもできる。場合によって好ましい態様では、本発明は穴あき及び衝撃抵抗性複合体をも指向し得る。ここで用いるように、「衝撃(ballistic)抵抗性」の語は、衝撃発射体による貫通に対する抵抗性がある材料について一般に用いられる。従って、「衝撃抵抗性」材料は、衝撃発射体による材料の貫通を防ぐか又は類似の非衝撃抵抗性材料に比べて衝撃発射体の貫通の程度を低下できる。好ましくは、「衝撃抵抗性」材料は、タイプI身体よろいと均等の保護を提供するか、又は「身体よろいの刺し抵抗性」と題する公安国内委員会(NIJ)標準0101.04(2000)に従って材料をテストしたときに又はタイプI身体よろいと均等の保護を提供する。「衝撃抵抗性」の語は、NIJ標準0101.04に従ってレベル1又はそれ以上(例えば、レベル2A、レベル2、レベル3A、又はレベル3又はそれ以上)に対してテストした場合にパスの評価を達成する材料をもいう。
【0005】
上述したように、本発明の複合体は第1織物層及び第2織物層を包含する。第1及び第2織物層は、適当な構成を持ち得る。例えば、第1及び第2織物層は編物又は織物構造で提供された複数のヤーンを包含できる。或いは、第1及び第2織物層は適当な不織構成(例えば、ニードルパンチ不織、又は空気置き不織、など)で提供される複数の繊維を包含し得る。当業者には理解できるように、複合体の織物層は上記適当な構成のそれぞれで独立に提供され得る。例えば、第1織物層は織物構成で提供される複数のヤーンを包含でき、及び第2織物層はニードルパンチ不織構成で提供される複数の繊維を包含できる。若干の可能な好ましい態様では、第1及び第2織物層は織物構成で提供される複数のヤーンを包含し得る。第1及び第2織物層は任意の適当な重量を有し得る。若干の可能な好ましい態様では、織物層は平方ヤード当り約4〜約10オンスの重量を有し得る。
【0006】
第1及び第2織物層は任意の適当な繊維を包含し得る。織物層に用いるに適したヤーン又は繊維は、限定されるものではないが、緊張下に置かれると応力対歪の相対的に高い比を示すヤーンに関する靭性の高いヤーン又は繊維を一般的に含む。衝撃発射体に対する適当な保護を提供するために、織物層のヤーン又は繊維は典型的にデニール当り約8g以上の靭性(tenacity)を有する。若干の可能な好ましい態様では、第1及び第2織物層のヤーン又は繊維はデニール当り約14g以上の靭性を有し得る。
【0007】
第1及び第2織物層に用いるに適した繊維は、限定されるものではないが、ゲル紡糸ウルトラ高分子量ポリエチレン繊維(例えば、モリスタウン、ニュージャージーのハネウエルアドバンスド繊維のSPECTRA(R)繊維及びオランダのDSMハイパーフォーマンス繊維社のDYNEMA(R)繊維)、融解紡糸ポリエチレン繊維(例えば、シャーロッテ、ノースカロライナのセラニーズ繊維のCERTRAN(R)繊維)、融解紡糸ナイロン繊維(例えば、Wichita、カンサスのInvestaからの高靭性タイプのナイロン6,6繊維)、融解紡糸ポリエステル繊維(例えば、Wichita、カンサスのInvestaからの高靭性タイプのポリエチレンテレフタレート繊維)及び焼結ポリエチレン繊維(例えば、シャーロッテ、ノースカリフォルニアのITSからのTENSYLON(R)繊維)のような高配位重合体から作られた繊維が含まれる。適当な繊維には、疎液性(lyotropic)堅ロッド(rigid-rod)重合体、複素環状堅ロッド重合体及び屈熱性(thermotropic)液晶性重合体も含まれる。疎液性堅ロッド重合体から作られる適当な繊維には、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)繊維(例えば、ウイルミントン、デラウエアのデュポンからのKELVAR(R)繊維及び日本の帝人のTWARON(R)繊維)のようなアラミド繊維及び3,4'-ジアミノジフェニルエーテルとp-フェニレンジアミンとの1:1コポリテレフタルアミドから作った繊維(帝人からのTECHNORA(R)繊維)が含まれる。p-フェニレン複素環のような複素環硬ロッド重合体から作られる適当な繊維に含まれるのは、ポリ(p-フェニレン−2,6-ベンゾビスチアゾール)繊維(PBO繊維)(例えば、日本の東洋紡からのZYLON(R)繊維)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスチアゾール)繊維(PBZT繊維)及びポリ[2,6-ジイミダゾ[4,5-b:4',5'-e]ピリジニレン-1,4-(2,5-ジヒドロキシ)フェニレン]繊維(PIPD繊維)(例えば、ウイルミントン、デラウエアのデュポンからのM5(R)繊維である。疎液性液体−結晶性重合体から作られた適当な繊維に含まれるのは、ポリ(6-ヒドロキシ−2-ナフトエ酸-コ-4-ヒドロキシ安息香酸)繊維(例えば、ノースカロライナ、シャロッテのCelaneseからのVECTRAN(R))である。適当な繊維に含まれるのには、レーヨンの高温熱分解で得られるもののような炭素繊維、ポリアクリロニトリル(例えば、ミシガン、ミッドランドのダウ社からのORF(R)繊維)及びメゾモルフィック(mesomorphic)炭化水素タール(例えば、サウスカロリナ、グリンビルのCytecからのTHORNEL(R))も含まれる。一定の可能な好ましい態様では、ゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維、融解紡糸ポリエチレン繊維、融解紡糸ナイロン繊維、融解紡糸ポリエステル繊維、焼結ポリエチレン繊維、アラミド繊維、PBO繊維、PBZT繊維、ポリ(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸-コ-4-ヒドロキシ安息香酸)繊維、炭素繊維、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる織物層のヤーン又は繊維を包含する。
【0008】
織物層のヤーン又は繊維は、単位長さ当り(例えば、デニール)適当な重量を有し得る。典型的には、ヤーン又は繊維は約50〜5,000デニールの単位長さ当り重量を有する。一定の好ましい態様では、ヤーン又は繊維は約100〜約1,500デニールの単位長さ当り重量を有する。
【0009】
図1に示すように、第1及び第2織物層は積重ねて穴あき抵抗性複合体100を形成する。第1織物層102は上面104及び下面106を有し、かつ第2織物層108は上面110及び下面112を有する。当業者には理解できるように、織物材料の表面は参照目的でのみ符号をつけ、かつ一の表面を上面と指定し、他の表面を下面とするが、織物層の技術面又は技術的裏面の配置を示すことを意図するものではない。上述したように、第1及び第2織物層は積重ねられ、例えば、第1織物層の下面が第2織物層の上面に隣接する。図1に示すように、穴あき抵抗性複合体は、一定の態様では、第3織物層114を包含できる。第3織物層114は第1織物層102の上又は第2織物層103の下に位置することができる。図1では、第3織物層114は上面116及び下面118を有し、第3織物層114は第3織物層114の上面116が第2織物層108の下面112に隣接するように位置する。
【0010】
複合体は図1で3つの織物層を含むように示されているが、当業者が容易に理解できるように、複合体は任意の数の織物をも包含できる。例えば、穴あき抵抗性複合体は4織物層、6織物層、8織物層、12織物層、16織物層、20織物層、30織物層、又は40織物層を包含できる。
【0011】
複合体に穴あき抵抗性を付与するために、少なくとも1の織物層は、その表面に被覆を包含する。典型的には、被覆は他の織物層に隣接した織物層の表面に適用される。従って、図1に示すように、被覆120は第1織物層102の下面106に適用できる。被覆120は第2織物層108の上面110に適用できる。特定の理論に拘束されることは望まないが、織物層の隣接面の両方を被覆することは生成複合体の穴あき抵抗性を増大すると信じられる。図1に示すように、2の織物層以上を包含する態様では、被覆120は第2織物層108の下面112と第3層114の上面116に適用できる。
【0012】
当業者には理解できるように、被覆は他の織物層の表面に隣接しない織物層の表面に適用することもできる。例えば、図1に示すように、被覆120は第1織物層102の上面104と第3織物層114の下面118に適用できる。更に、一定の可能な好ましい態様では、被覆は織物層のヤーン又は繊維の少なくとも一部を被覆するように織物層の内部に進入することもできる。
【0013】
織物層に適用される被覆は粒子状物(例えば、複数の粒子)を包含する。被覆に含まれる粒子は任意の適当な粒子であり得るが、好ましくは約20μm以下、約10μm以下、又は約1μm以下(例えば、約500nm以下又は約300nm以下)の直径を有する粒子である。被覆に用いるに適した粒子は、限定するものではないが、シリカ粒子、(例えば、ヒュームドシリカ粒子、沈殿シリカ粒子、アルミナ変性コロイダルシリカ粒子、等)、アルミナ粒子(例えば、ヒュームドアルミナ粒子)、及びそれらの組合せが含まれる。一定の可能な好ましい態様では、粒子は、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、ヒュームドアルミナ、アルミナ変性シリカ、ジルコニア、タイタニア、炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン、窒化珪素など及びそれらの組合せからなる群から選ばれる材料の少なくとも1の材料を包含する。このような粒子は、例えばグラフト化によって、表面を変性して荷電及び疎水性のような表面特性を変更することもできる。市場で入手できる適当な粒子には、限定されるものではないが、Boyertown、Pa.のCabot社から市場で入手できる40重量%固体ヒュームドアルミナの水性分散液であるCAB-O-SPERSE(R)PG003ヒュームドアルミナ、(この分散液はpHが4.2で中央平均凝集粒子サイズが約150nmである);Boyertown、PaのCabot社から市場で入手できるヒュームドアルミナであるSPECTRALTM51ヒュームドアルミナ(パワーは55m/gのBET表面積を有し及び中央平均凝集粒子サイズが約150nm);Boyertown,PaのCabot社から市場で入手できるヒュームドアルミナの40重量%固体である、CAB-O-SPERSE(R)PG008ヒュームドアルミナ(この分散液はpHが4.2で中央平均凝集粒子サイズが約130nm);Boyertown、PaのCabot社から市場で入手できるSPECTRAL(R)81ヒュームドシリカ(パワーは80m/gのBET表面積を有し、中央平均凝集粒子サイズが約130nm);ドイツのDegussaから市場で入手できるヒュームドアルミナであるAEROXIDEALUCヒュームドアルミナ(パワーは100m/gのBET表面積を有し中央平均主粒子サイズが約13nm);GraceDavidsonから入手可能な40重量%固体水性ゾルであるLUDOXL-Pコロイダルアルミナ被覆シリカ(ゾルはpHが4であり、直径22nmの平均粒子サイズ);Nalcoから市場で入手可能なアルミナ化シリカ粒子(26%シリカ及び4%アルミナ)の30重量%の固体水性コロイド懸濁液であるNALCO1056アルミナシリカ;GraceDivisionから入手可能な入手可能な34重量%固体コロイダルシリカゾルであるLUDOXTMAコロイダルシリカ(ゾルはpH4.7を有し、平均粒子サイズが直径22nm);Nalcoから市場で入手可能な二酸化チタンの10重量%固体水性分散液であるNALCO88N-126コロイド二酸化チタン;Boyertown、PaのCabot社から市場で入手可能なヒュームドシリカの15重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(R)ヒュームドシリカ(分散液はpHが9.5で平均凝集主粒子サイズは直径が100nm);Boyertown、PaのCabot社から市場で入手できるヒュームドシリカの12重量%水性分散液であるCAB-O-SPERSE(R)2012Aヒュームドシリカ(分散液はpHが5である);Boyertown、PaのCabot社から市場で入手可能なヒュームドシリカの30重量%固体水性分散液である、CAB-O-SPERSE(R)PG001ヒュームドシリカ(分散液はpHが5で中央凝集粒子サイズが約180nm);Boyertown、PaのCabot社から市場で入手可能なヒュームドシリカの20重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(R)PG002ヒュームドシリカ(分散液はpHが9.2で中央凝集粒子サイズは約150nmの直径である);Boyertown,PaのCabot社から市場で入手できるヒュームドシリカの20重量%固体の水性分散液であるCAB-O-SPERSE(R)PG022ヒュームドシリカ(分散液はpHが3.8で中央凝集粒子サイズは直径が約150nm);ドイツのDegussa社から市場で入手できる沈殿シリカ粉末であるSIPERNAT22LS沈殿シリカ(粉末はBET表面積が175m2/gを有し中央平均主粒子サイズが約3μm);ドイツのDegussaから入手可能な沈殿シリカ粉末であるSIPERNAT500LS沈殿シリカ(パワーは450m2/gのBET表面積を有し中央平均主粒子
サイズが約4.5μm);及びドイツのDegussaから入手可能なヒュームドジルコニア粉末であるVP酸化ジルコニアヒュームドジルコニア(パワーは60m2/gのBET表面積を有する)が含まれる。
【0014】
一定の可能な好ましい態様では、粒子はpHが約4〜8である水性媒体のような水性媒体に懸濁した場合に陽性表面電荷を有し得る。この態様で用いるに適した粒子は、限定されるものではないが、アルミナ変性コロイダルシリカ粒子、アルミナ粒子(例えば、ヒュームドアルミナ粒子)及びその組合せが含まれる。一定の可能な好ましい態様では、粒子は約5以上、又は約6以上、又は約7以上のモー硬度(Mohs'hardness)を有し得る。この態様に用いるに適した粒子は、限定されるものではないが、ヒュームドアルミナ粒子を含む。一定の可能な好ましい態様では、粒子は主粒子の集合体(aggregates)を包含する又はからなる3次元分岐又は鎖状構造を有し得る。この態様に用いるに適した粒子は、限定されるものではないが、ヒュームドアルミナ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びその組合せを含む。
【0015】
被覆に含まれる粒子は、粒子の疎水性を与えたり又は増大したりして変性できる。例えば、ヒュームドシリカ粒子を包含する態様では、ヒュームドシリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子を疎水性にするために例えばオルガノシランで変性できる。適当な市場で入手できる疎水性粒子は、限定するものではないが、Degussaから入手可能なAEROSIL(R)R812、AEROSIL(R)R816、AEROSIL(R)R972、及びAEROSIL(R)R7200のようなAEROSIL(R)ヒュームドシリカのR−シリーズが含まれる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、被覆内の疎水性粒子の使用は複合体が湿潤環境に曝された場合に吸収する水の量を最少にすると信じられる。疎水性粒子が織物層の被覆に用いられる場合、疎水性粒子は適用を補助するため溶媒含有被覆組成物を用いて適用できる。
【0016】
織物層は、被覆の任意の適当な量を包含し得る。当業者には理解されるように、層に適用する被覆の量は一般に複合体の重量が劇的に増大するほど高くはなく、複合体の最終用途を潜在的に損なうことになり得る。典型的には、織物層に適用される被覆の量は織物層の全重量の約10重量%以下を包含する。一定の可能な好ましい態様では、織物層に適用される被覆の量は織物層の全重量の約5重量%以下又は約3重量%以下(例えば、約2重量%以下)を包含する。
【0017】
典型的には、織物層に適用する被覆の量は織物層の全重量の約0.1重量%以上(例えば、約0.5重量%以上)を包含する。一定の可能な好ましい態様では、被覆は、織物層の全重量の約2〜約4重量%を包含する。
【0018】
複合体の一定の可能な好ましい態様では、織物層に適用される被覆は、更にバインダーを包含し得る。被覆に含まれるバインダーは任意のバインダーであり得る。適当なバインダーに含まれるのは、限定するものではないが、イソシアネートバインダー(例えば、ブロックイソシアネートバインダー)、アクリルバインダー(例えば、非イオン性アクリルバインダー)、ポリウレタンバインダー(例えば、脂肪族ポリウレタンバインダー及びポリエーテルベースポリウレタンバインダー)、エポキシバインダー、及びそれらの混合物である。一定の可能な好ましい態様では、バインダーはブロックイソシアネートバインダーのような架橋バインダーである。
【0019】
存在する場合には、バインダーは織物層に適用された被覆の適当な量を包含し得る。被覆に存在する粒子の量(例えば、重量)と被覆に存在するバインダー固体の量(例えば、重量)との割合は、典型的には約1:1(重量粒子:重量バインダー固体)より大きい。一定の可能な好ましい態様では、被覆に存在する粒子の量(例えば重量)と被覆に存在するバインダー固体の量(例えば重量)の比は、典型的には約2:1より大きく、又は3:1より大きく、又は約4:1より大きく、又は約5:1より大きい(例えば、約6:1より大きい、約7:1より大きい、又は約8:1より大きい)。
【0020】
一定の可能な好ましい態様では、織物層に適用される被覆は、複合体に大きい撥水性を付与するために撥水剤を包含し得る。被覆に含まれる撥水剤は、限定するものではないが、フルオロケミカル又はフルオロ重合体を含む任意の適当な撥水剤であり得る。
【0021】
上述したように、複合体は任意の適当な数の織物層(例えば、4織物層、6織物層、8織物層、12織物層、16織物層、20織物層)を包含し得る。更に、適当な数の織物層は、それに適用された上述した被覆を有し得る。例えば、複合体の各織物層はその表面の一方又は双方に適用した被覆を有し得る。或いは、複合体は、被覆及び未被覆織物層の交互シリーズを包含できる。この態様では、複合体は、例えば、10被覆織物層の第1シリーズ及び織物層の第1シリーズに隣接して配置された10未被覆織物層の第2シリーズを包含し得る。これらの被覆及び未被覆織物層は上記の適当な織物層のいずれかであり得る。
【0022】
本発明の複合体は、好ましくは類似の未被覆材料と比べて柔軟性に実質的変化を示さない。特に、複合体の織物層は、類似の未被覆織物材料と比較して同一又は実質的に類似の柔軟性を示す。
【0023】
穴あき抵抗性複合体は任意の方法で製造できるけれども、本発明は複合体を製造する方法をも提供する。特に、方法は、(a)第1織物層及び第2織物層を提供し、(b)第1織物層の下面及び第2織物層の上面の少なくとも1を約20μm以下の直径を有する粒子の複数を包含する被覆組成物と接触させ、(c)工程(b)で処理した織物層を乾燥して第1織物層の下面の及び第2織物層の上面に被覆を形成し、(d)第1及び第2織物層を合せて第1織物層の下面を第2織物層の上面に隣接させて穴あき抵抗性複合体を製造する工程を包含する。
【0024】
上記方法に用いるに適した第1及び第2織物層は、限定されるものではないが、複合体に用いるに適したものであるとされた上記材料を包含する。また、本方法に用いるに適した被覆組成物は、限定されるものではないが、粒子を含むこれらの組成物及び場合によって複合体の織物層への被覆に用いるに適した上記バインダーを含む。典型的に上記方法に用いるに適した被覆組成物は粒子の水性分散液及び場合によってバインダーを包含する。
【0025】
織物層の表面は適当な方法で被覆組成物と接触できる。織物層は、通常のパッディング、噴霧(湿潤又は乾燥)、発泡、印刷、被覆及び吸尽技術を用いて被覆組成物と接触させ得る。例えば、織物層は、織物層を被覆組成物に浸漬し、次いで一対のニップローラーを通して過剰の液体を除くパディング技術を用いて被覆組成物と接触させ得る。この態様では、ニップローラーは、例えば約280kPa(40psi)の適当な圧力を設定できる。或いは、被覆する織物面は先ず適当な接着剤で被覆し、及び次いで粒子を接着剤に適用できる。
【0026】
被覆した織物材料は適当な技術を用いて任意の適当な温度で乾燥できる。例えば、織物層は通常のテンターフレーム又はレンジで約160℃(320°F)の温度で約5分間乾燥できる。
【0027】
第1及び第2織物層は、適当な技術を用いて一緒にすることができる。例えば、上述したように第1及び第2織物層は積重ねて第1又は第2織物層の被覆面が他の織物層の面に隣接するようにできる。一定の可能な好ましい態様では、第1及び第2織物層は適当な又は所望の配置に層を確保するため重ねた織物層の周辺回りを所望のパターンに一緒に縫うこともできる。
【0028】
本発明の穴あき抵抗性複合体及び上記方法で製造された複合体は個人身体よろいのような個人保護装具に用いるのに特に良く適している。例えば、図2に示すように、穴あき抵抗性複合体202は刺し及び一定の態様では衝撃脅威に対する着用者の保護を提供するためにベスト200に組入れることができる。
【0029】
本発明の穴あき抵抗性複合体は、上記織物に加えて既知の衝撃抵抗性材料又は要素を包含し得る。本発明の複合体に用いるに適した既知の衝撃抵抗性材料の例は図6に示した衝撃抵抗性積層体である。積層体600は実質的に平行な繊維束612の第1層610及び実質的に平行な繊維束622の第2層620を包含する。繊維束612、614に用いるに適した繊維は、本発明の複合体の織物層に用いるに適した上述の繊維の任意のもの、及びそのような繊維の適当な組合せを含んで、であり得る。繊維束612、614は、典型的には層610、620内で1以上の層に配置され、かつ層610、620内の繊維束612、614のそれぞれが実質的に他の繊維束612、614と同一層内で実質的に平行である(例えば、同一層610、620のそれぞれ内の繊維束612、614は一定方向に配位された)。第1及び第2層610、620内の繊維束612、614は、実質的に平行配置された各層610、620内で繊維束612、614を維持するために少なくとも部分的に樹脂614、624で被覆される。
【0030】
第1層610及び第2層620は積重ねられ、第1層610内の繊維束612は第2層620内で繊維束622に対して非平行関係に配位される。図6に示した積層体は第2層620内の繊維束622に対して約90度の角度で配置された第1層620内の繊維束612が示され、繊維束は互いに0及び180度の間の任意の角度で配置できる。然しながら、第1層610内の繊維612と第2層620内の繊維束622との間の角度は好ましくは約90度である。
【0031】
積層体600も第1及び第2層610、620の外表面に配置された熱可塑性フィルム630、640を包含するので第1及び第2層610、620はフィルム630、640で形成される封筒内に囲まれる。
【0032】
図6に示した積層体600は第1層610及び第2層620のみを示しているが、積層体は互いに上に積重ねられた任意の適当な数の層(即ち、実質的に平行な繊維束の層)を包含できる。このような態様では、隣接層内の繊維束は互いに0と180度との間の任意の適当な角度で配置できるが、90度が好ましい。典型的には、層は積重ねられて特定の層内の繊維束は直上の層及び/又は特定の層の直下の層の繊維束に対して約90度の角度で配置される。
【0033】
上述したような市場で入手できる衝撃抵抗性積層体は、限定するものではないが、Honeywell International社が販売するSPECTRASHIELD(R)高性能衝撃材料が含まれる。このような衝撃抵抗性積層体は米国特許第4,916,000号(Li etal)、第5,437,905号(Park)、第5,443,882号(Park)、第5,443,883号(Park)、及び第5,547,536号(Park)により詳細に記載さえていると信じられ、それぞれは引用によってここに挿入する。
【0034】
図7に示されているように、本発明による穴あき抵抗性複合体700は、上述の織物層102、108、114、と組合せた衝撃抵抗性積層体を包含し得る。積層体は、織物層の一の上又は下面に隣接して配置される。積層体は接着剤、縫い、又は他の適当な機械的ファスナーのような適当な手段を用いて隣接織物層に付着させるか、又は積層体及び織物層を互いに隣接して配置でき、かつ衝撃抵抗性挿入物を運ぶに適した身体よろいの片にポケットのような適当な囲みによって互いにその場に保持できる。
【0035】
本発明の穴あき抵抗性複合体は、更に他の穴あき抵抗性材料又は要素を包含できる。適当な既知の穴あき抵抗性材料又は要素の例には、限定するものではないが、かたびら(例えば鎖かたびら)、金属装甲、セラミック装甲、層が接着剤又は樹脂で含浸され又は積層された高靭性ヤーンで作られた織物材料の層が含まれる。このような穴あき抵抗性材料又は要素は、隣接織物層に接着剤、縫い、又は他の適当な機械的ファスナーを用いて隣接織物層に付着でき、又は材料又は要素及び織物層は互いに隣接して配置でき衝撃抵抗性挿入物を運ぶに適した身体よろいのポケットのような適当な包みによって互いにその場に保つことができる。
【0036】
本発明による穴あき抵抗性複合体は、更に織物材料(例えば、任意の適当な天然又は合成繊維から作った織物材料)、フォーム、又は1又はそれ以上のプラスティックシート(例えば、ポリカーボネートシート)のような適当な裏材料の1又はそれ以上の層を包含できる。例えば、裏材料は、上記織物層の上又は下面に隣接して位置する織物又はニットポリエステル織物材料の複数の層を包含できる。裏材料は身体よろいに典型的に用いられるようなトラウマパック(例えば、1又はそれ以上のポリカーボネートシート)でもあり得る。
【実施例】
【0037】
次の例は本発明を更に説明するが、その範囲を限定するものとどのようにも解すべきではないことは勿論である。
【0038】
下記に示す例における試料は、織物基体に浴を通過させかつその後スクイーズローラーを通すことによって液体被覆を基体に適用する「パッディング(padding)」法を用いて処理した。特に、約13インチ(33cm)×17インチ(43cm)の織物片を所望の化学剤を含む化学組成物を含む浴に浸漬した。特に断らない限り、全ての化学剤パーセント(%)は調製された浴の全重量に基づく重量パーセントであり、化学品のパーセント又は重量が与えられたときは、残りは水からなる。更に、化学品パーセントは製造業者から受け取った化学品を基準としたものであって、組成物が30%の活性成分を含む組成物である場合は従ってこの30%組成物のX%が用いられたことになる。
【0039】
織物が浴内で浸漬によって完全に湿潤した場合、織物を処理浴から出してニップロール(スクイーズロール)の間を約40psi(280kPa)の圧力で通して織物の重量を基準にして一般的に約30%及び約100%の均等ピックアップを得た。織物は次いでぴんと張り、フレームにとめ所望の寸法に保持した。ピンフレームはデスパッチ(Despatch)炉に入れ、約300°F(150℃)及び約320°F(160℃)の間の温度で約5及び約8分間乾燥し、仕上げを硬化させた。一旦炉から取出すと、織物はピンフレームから外して室温で試験の前少なくとも24時間平衡させた。
【0040】
2つのタイプのKEVKAR(R)織物を下記の例に用いた。一方は、アーリントン、テキサスのHEXCEL社から得られた織られたKELVLAR(R)KM−2織物であった。この織物はKEVLAR(R)KM−2850デニール経糸及び充填ヤーンを包含する31.5端/インチ(12.4端/cm)及び31ピック/インチ(12.2ピック/cm)の平織り構造に一緒に織ったものであった。織物重量は約6.8oz/yd(160g/m)であった。他の織物は実際の衝撃ベスト(オンタリオ、カリフォルニアのSafarilandから)からの織ったKEVLAR(R)織物であった。このベストは10層のフィルム裏付スクリム(scrim)タイプの不織織物及び17層の31端/インチ(12.2端/cm)と31ピック/インチ(12.2ピック/cm)平織り構造に織ったKEVLAR(R)織物であった。織った織物の織物重量は約6.2oz/yd2(150g/m2)であった。このベストはNIJ恐怖レベルIII-Aであった。
【0041】
ダイナミックスパイク刺し試験を、「個人身体よろいの刺し抵抗性」と称するNIJ標準-0115.00によって試料について行った。この試験では、試験織物の複層をNIJ標準で特定する裏材料のスラブ上に置く。裏材料はHamilton、オハイオのBCFフォーム社から得た。裏材料は、5.8mm厚みのネオプレンスポンジの4層、続いて31mm厚みのポリエチレンフォームの1層及び2層の6.4mm厚みのゴム層からなる。Culpeper、バージニアのPrecision Machine Works社から得た、NIJ特定スパイクを凶器に用いた。スパイクをNIJ特定落下塊に付け、及び投射0°角度で内部ガイドレール落下管の予め定めた高さから落下した。衝撃げエネルギーは落下速度を変えることによって変化し得る。次いで貫通深さを測定する。
【0042】
半静的穴あき試験をMTSシンテック(Sintech)10/G引張テスターを用いて圧縮モードで用いた562Lbs(255kg)荷重セルで実施した。圧縮速度は1インチ/分(2.5cm/分)にセットする。半静的穴あき試験では同一の裏材料及びダイナミックSパイク刺し試験に特定されたスパイクを用いた。スパイクは曲がるのを防ぐために金属袖で強化する。この試験では、予め定めた数の層(典型的には1、2、4、及び6層)の試験織物を裏材料のスラブ上に置き、及びスパイクを1インチ/分(2.5cm/分)で織物内に下げた。荷重及び圧縮距離を記録した。少なくとも3の独立した測定を各試験形状について行う。そしてピーク荷重(試験試料を完全に貫通するに必要な力(ポンド))が得られる。
【0043】
例1
上記織ったKEVLAR(R)KM−2織物を被覆して4試料(試料1A〜1D)を製造した。試料1Aは、約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、Cabot社から入手できる150nm粒子サイズを伴うヒュームドアルミナ分散液(40%固体)、及び約900グラムの水を包含する浴内での織物の被覆によって調製した。試料1Bは約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、10グラム(又は10%)のMILLITEXTMレジンMRX、Millikenケミカル社から入手できるブロックイソシアナートベース架橋剤(35〜45%固体で)、及び900グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料1Cは約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、20グラム(又は2%)のMILLITEXTMレジンMRX、及び880グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料1Dは約100グラムの(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、100グラムの(又は10%)MILLITEXTMレジンMRX及び800グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。
【0044】
処理したKEVLAR(R)織物及び未処理の対照KELVAR(R)織物を上記手順で半静的スパイク穴あき抵抗性の試験をした。半静的試験結果は図3に示す。例1Bの処理したKELVAR(R)織物及び対照織物もNIJ標準-0115.00に従ってダイナミックスパイク刺し抵抗をも試験した。対照織物の10層は完全貫通(>70mm)を示したが10層の処理したKELVAR(R)織物(例1B)は挿入の目に見える徴候を示さないし、32ジュールの衝撃エネルギーでスパイクは曲がった。
【0045】
例2
2つの試料(試料2A及び2B)を上述したように織ったKEVLAR(R)KM−2織物を被覆して製造した。試料2Aは、約100グラム(又は10%)のLUDOX CL-P、GraceDivisonから入手可能な22nm粒子サイズのコロイダルアルミナ-被覆シリカゾル、及び900グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料2Bは約120グラム(又は12%)のLUDOX TMA、GraceDavisonから入手可能な22nm粒子サイズのコロイダルシリカゾル(34%固体)及び約880グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。
【0046】
処理したKEVLAR(R)織物及び未処理の対照KEVLAR(R)織物を半静的スパイク穴あき抵抗性について上記手順に従って試験した。試験結果は図4に示す。
【0047】
例3
3つの試料(試料3A〜3C)を上述した織ったKEVLAR(R)KM−2織物を被覆して製造した。試料3Aは、約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、約10グラム(又は1%)WITCOBOND W293、Crompton社から入手可能なポリウレタンベースバインダー(66−69%固体)及び890グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料3Bは、約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、約10グラム(又は1%)のPRINTRITE595、Noveonから入手できる非イオン性アクリルエマルジョン(45%固体)、及び約890グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料3Cは、約100グラム(又は1%)のCAB-O-SPERSE(R)PG003、約10グラム(又は1%)のSANCURE898、Noveonから入手可能なポリエーテルベースのポリウレタン分散液(32%固体)及び約890グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。
【0048】
処理したKEVLAR(R)織物を半静的スパイク穴あき抵抗性について上記の手順に従って試験した。試験結果は表1に示す。
【0049】
表1 試料1B、3A〜C、及び対照についての半静的スパイク穴あき試験の結果
【表1】

【0050】
例4
2つの試料(試料4A及び4B)を上述したように織ったKEVLAR(R)KM−2織物で被覆して製造した。試料4Aは約100グラム(又は10%)のCAB-O-SPERSE(R)PG008、Cabot社から入手可能な130nm粒子サイズのヒュームドアルミナ分散液(40%固体)、約10グラム(又は1%)のMULLITEXTMレジンMRX、及び約890グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料4Bは約40グラム(又は4%)のAEROXIDE ALUC、DEGUSSAから入手可能な13nmの主粒子サイズのヒュームドアルミナ粉末約10グラム(又は1%)のMILLITEXTMレジンMRX及び950グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。
【0051】
処理したKEVLAR(R)織物を上記手順に従って半静的スパイク穴あき抵抗性について試験した。試験結果は表2に示す。
【0052】
表2 試料1B、4A、4B及び対照についての半静的スパイク穴あき試験の結果
【表2】

【0053】
例5
試料5を、上述した実際の衝撃ベストからKEVLAR(R)KM−2織物を織ったKEVLAR(R)織物で置換した以外は上記試料1Bと同一の方法で調製した。織った織物からベストを除き及び織物の個々の片を例1Bにおけるように処理した。
【0054】
処理した織ったベストKEVLAR(R)織物を上記手順に従って半静的スパイク穴あき抵抗性について試験した。半静的試験の結果は表3に示す。
【0055】
表3 試料5及び対照についての半静的スパイク穴あき試験の結果
【表3】

【0056】
処理したベストKEVLAR(R)及び対照もNIJ標準-0115.00に従ってダイナミックスパイク刺し抵抗性についても試験した。10層の対照織物は完全貫通を示したが、8層の処理ベストKEVLAR(R)織物は貫通の目に見える徴候を示さずかつ衝撃エネルギーの33ジュールでスパイクを曲げ、かつ10層の処理ベストKEVLAR(R)織物は貫通の目に見える徴候を示さずかつ60ジュールの衝撃エネルギーでスパイクを曲げる。
【0057】
処理したベストKEVLAR(R)織物を元のベスト配置に再集合し(縫い無し)かつ衝撃抵抗性をNIJ標準0101.04(200)に従ってレベルIII−Aで試験した。実験誤差内で実施に重要な差は処理ベストと対照ベスト(縫い無し)との間に認められなかった。両ベストはレベルIII−A試験を通過した。
【0058】
例6
4つの試料(試料6A〜6D)を上記の織ったKELVAR(R)KM−2織物を被覆して製造した。試料6Aを約333グラム(又は33.3%)のCAB-O-SPERSE(R)2021A、CABOT社から入手可能なヒュームドシリカ分散液(12%固体)及び約667グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。試料6Bは約333グラム(又は33.3%)のCAB-O-SPERSE(R)2012A、約10グラム(又は1%)MILLITEXTMレジンMRX、及び約657グラムの水を包含する浴内で織物を被覆することによって調製した。試料6Cは約200グラム(又は20%)のCAB-O-SPERSE(R)PG022、Cabot社から入手可能なヒュームドシリカ分散液(20%固体)、及び約800グラムの水を包含する浴で織物を被覆して調製した。試料6Dを約200グラム(又は20%)のCAB-O-SPERSE(R)PG0022、約10グラム(又は1%)のMILLITEXTMレジンMRX、及び790グラムの水を包含する浴内で織物を被覆して調製した。
【0059】
処理したKEVLAR(R)織物を上記の手順に従って半静的スパイク穴あき抵抗性について試験した。試験結果は表4に示す。
【0060】
表4 試料6A〜及び対照についての半静的スパイク穴あき試験の結果
【表4】

【0061】
刊行物、特許出願及び特許を含む全ての引用文献は、各文献が引用によって個別に及び特別に含まれることが導入され、かつその全体がここに示されたのと同程度に引用によって導入されている。本発明の文脈における「a」及び「an」及び「the」及び類似の指示語は、(特に請求の範囲の文脈において)文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両者をカバーすると考えるべきである。語「包含する」、「有する」、「含む」、「含有する」は、特に断らない限り、解放用語(換言すれば「含むを意味するが、限定されるものではない」)。ここにおける数値の範囲の記載は、特に断りのない限り範囲内のそれぞれ別個の価を個別に引用することを単に意図しただけであって、それぞれ別個の値は個別にここに示されているようにそれぞれ別個の値が明細書に導入されている。個々に記載した全ての方法は特に示すか文脈から明らかに矛盾しない限り、適当な順序で実施できる。全ての任意の及び例又は例示的用語(例えば、「のような」の使用は、単に本発明をより良く示すためであって、他に請求されていない限り本発明に限定を課するものではない。明細書における用語は全て本発明の実施に必須であるとして請求されていない要素を示すと解すべきではない。
【0062】
本発明の好ましい態様は、本発明を実施するために発明者が知っているベストモードを含んで、ここに記載されている。これらの好ましい態様は上記の記載を読んだ当業者には明らかであろう。発明者は当業者がそのような変更を適当なものとして用いることを期待し、かつ発明者は、ここに特に記載されたより以外に本発明を実施することを意図する。従って、本発明は請求の範囲に記載された主題の全ての変更及び均等を、適用法が許容する限り、含んでいる。更に、上記の要素の任意の組合せはその全ての可能な変更において、別に記載され又は文脈から明らかに矛盾しない限り、包含される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による穴あき抵抗性複合体の断面図。
【図2】本発明の穴あき抵抗性複合体を導入した、人体保護具、特にベストの透視図。
【図3】試料1A〜1D及び未処理対照試料の層のピーク荷重対数を示すグラフ図。
【図4】試料2A、試料2B及び未処理対照試料の層の数対ピーク荷重を示すグラフ図。
【図5】試料1Bの表面の走査電子顕微鏡図。
【図6】本発明の複合体に用いるに適した衝撃抵抗性積層体の分解組立て図。
【図7】図6に示すような衝撃抵抗性積層体を含む本発明による穴あき抵抗性複合体の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)デニール当り約8グラム以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含する第1織物層、第1織物層は上面及び下面を有するものであり、
(b)デニール当り約8グラム以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含する第2織物層、第2織物層は上面及び下面を有するものであり、第2織物層の上面は第1織物層の下面と隣接しており、
第1織物層の下面と第2織物層の上面との少なくとも1は、約20μm以下の直径を有する複数の粒子を包含し、織物層の全重量を基準にして約10重量%以下の被覆を包含する穴あき抵抗性複合体。
【請求項2】
粒子はシリカ、アルミナ、炭化珪素、炭化チタン、窒化チタン、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる請求項1に記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項3】
粒子はヒュームドアルミナ及びヒュームドシリカからなる群から選ばれる請求項1又は2に記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項4】
粒子はヒュームドアルミナを包含する請求項1から3のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項5】
粒子は約300nm以下の直径を有する請求項1から4のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項6】
被覆が更にバインダーを包含する請求項1から5のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項7】
バインダーが被覆の約5〜約15重量%を包含する請求項1〜6のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項8】
第1及び第2織物層のヤーン又は繊維はゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維、融解紡糸ポリエチレン繊維、融解紡糸ナイロン繊維、融解紡糸ポリエステル繊維、焼結ポリエチレン繊維、アラミド繊維、PBO繊維、PBZT繊維、PIPD繊維、ポリ(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸-コ-安息香酸)繊維、炭素繊維及びそれらの組合せからなる群から選ばれる繊維を包含する穴あき抵抗性複合体。
【請求項9】
ヤーン又は繊維はアラミド繊維を包含する請求項1〜8のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項10】
ヤーン又は繊維はポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維を包含する請求項1〜9のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項11】
ヤーン又は繊維はデニール当り約14グラム以上の靭性を有する請求項1〜10のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項12】
第1及び第2織物層は複数のヤーンを包含する織った織物である請求項1〜11のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項13】
ヤーン又は繊維は約100〜約1500デニールの直径を有する請求項1〜12のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項14】
第1及び第2織物層が平方ヤード当り約4〜約10オンスの重量を有する請求項1〜13のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項15】
被覆は第1又は第2織物層の全重量の約5重量%以下を包含する請求項1〜14のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項16】
複合体は、デニール当り約8グラム以上の靭性を有する複数のヤーン又は繊維を包含し、第3織物層は上面及び下面を有し、第3織物層の上面は第2織物層の下面に隣接し、かつ第2織物層の下面及び第3織物層の上面の少なくとも1は織物層の全重量を基準として被覆の約5重量%以下を包含する請求項1〜15のいずれかに記載の穴あき抵抗性複合体。
【請求項17】
(a)第1及び第2織物層を提供し、第1及び第2織物層のそれぞれはデニール当り約8グラム以上の靭性を有しかつ第1及び第2織物層はそれぞれ上面及び下面を有し、
(b)第1織物層の下面及び第2織物層の上面の少なくとも1を被覆組成物と接触させ、
(c)工程(b)で処理した織物層を乾燥して第1織物層の上面又は第2織物層の下面に被覆を製造し、かつ
(d)第1織物層の下面が第2織物層の上面に隣接するように第1及び第2織物層を併せて穴あき抵抗性複合体を製造する工程を包含する穴あき抵抗性複合体を製造する方法。
【請求項18】
被覆は第1又は第2織物層の全重量の約10重量%以下を包含する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
粒子はヒュームドアルミナを包含する請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
第1及び第2織物層のヤーン又は織物はゲル紡糸超高分子量ポリエチレン繊維、融解紡糸ポリエチレン繊維、融解紡糸ナイロン繊維、融解紡糸ポリエステル繊維、焼結ポリエチレン繊維、アラミド繊維、PBO繊維、PBZT繊維、PIBD繊維、ポリ(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸-コ-4-ヒドロキシ安息香酸)繊維、炭素繊維、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる繊維を包含する請求項17〜19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−511306(P2009−511306A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535741(P2008−535741)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040211
【国際公開番号】WO2007/047508
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】