説明

穴かがりミシン

【課題】操作者の意図する加工布の所望の位置に、精度よく確実にボタン穴を形成することができる穴かがりミシンを提供する。
【解決手段】穴かがりミシンMは、カッター51をミシンMの機枠に対し進退可能に設置し、形成した穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退可能な構成とする。これにより、穴かがり縫目60の長軸方向におけるカッター51による加工布の切断位置を、布送り機構10による布送り動作のみに依存することなく、自在に設定することができる。これにより、操作者の意図する加工布の所望の位置に精度よくカッター51を下降させることができ、精度よく確実にボタン穴65を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴かがりミシンに係わり、特に1回又は複数回のカッター落としにより、所望の長さのボタン穴を形成するようにした穴かがりミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に穴かがりミシンは、加工布を布送りする布送り手段と、加工布に穴かがり縫目を形成する縫製手段と、加工布を切断してボタン穴を形成するボタン穴形成手段とを有している。布送り手段は、加工布を布送りし、縫製手段は縫針を上下動させる。穴かがりミシンは、布送り手段及び縫製手段とで布送り方向を長軸方向とする穴かがり縫目を形成する。
【0003】
このような穴かがりミシンにおいて、従来、複数回のカッター落としにより、所望の長さのボタン穴を形成するようにした穴かがりミシンが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、カッターを取り替えることなく、異なる長さのボタン穴を形成することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−128578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の穴かがりミシンにおいては、一対の閂止め部と一対の千鳥部とからなる穴かがり縫目の縫製を行う際、千鳥部の縫製を行っている最中にカッターを下降させることになる。このようにすると、例えば千鳥部の縫目ピッチが大きい場合や、ミシンモータの回転数が高速の場合には、カッターが待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に布送りによって加工布が移動し、ボタン穴を形成する位置の精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、操作者の意図する加工布の所望の位置に、精度よく確実にボタン穴を形成することができる穴かがりミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の穴かがりミシンは、加工布を布送りする布送り手段と、上下動する縫針を備え、加工布に穴かがり縫目を形成する縫製手段と、加工布を切断してボタン穴を形成するカッターを有するボタン穴形成手段と、前記カッターの長さ及び前記ボタン穴の長さに基づき、1回又は複数回の前記カッターの下降動作によって前記ボタン穴を形成するように、前記布送り手段、前記縫製手段、及び前記ボタン穴形成手段を制御する制御手段とを備えた穴かがりミシンにおいて、前記ボタン穴形成手段は、前記カッターを、ミシンの機枠に対し、前記穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退可能に設けたことを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の穴かがりミシンは、布送り手段と、縫製手段とを有する。制御手段の制御に基づき、布送り手段が加工布を布送りし、縫製手段が縫針を上下動させ加工布に穴かがり縫目を形成することにより、布送り方向を長軸方向とする穴かがり縫目を形成する。
【0009】
本願第1発明の穴かがりミシンは、ボタン穴形成手段をさらに有する。制御手段の制御に基づき、ボタン穴形成手段がカッターを1回又は複数回下降させて加工布を切断することにより、ボタン穴を形成する。
【0010】
本願第1発明は、カッターを、ミシンの機枠に対し進退可能に設置しており、上記のように形成した穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退可能である。これにより、穴かがり縫目の長軸方向におけるカッターによる加工布の切断位置を、布送り手段による布送り動作のみに依存することなく、自在に設定することができる。
【0011】
この結果、加工布の切断位置を細かく微調整して設定したり、さらにその設定を縫製速度や縫製条件に応じて補正することが可能となる。また、一対の閂止め部と一対の千鳥部とからなる穴かがり縫目の縫製の際、千鳥部の縫製時に比べて布送りピッチが小さい閂止め部の縫製時にカッターを下降させ、加工布を切断するよう制御することも可能となる。これらにより、操作者の意図する加工布の所望の位置に、精度よく確実にボタン穴を形成することができる。
【0012】
第2発明の穴かがりミシンは、上記第1発明において、前記ボタン穴形成手段は、前記カッターを上下動させるための第1アクチュエータを備えたカッター上下動駆動機構と、前記カッターを進退させるための第2アクチュエータを備えたカッター進退駆動機構とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
本願第2発明の穴かがりミシンでは、ボタン穴形成手段が、第1アクチュエータによりカッターを上下動させるカッター上下動駆動機構のみならず、カッター進退駆動機構を備えている。これにより、第2アクチュエータの駆動力を用いて、カッターを穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0014】
第3発明の穴かがりミシンは、上記第2発明において、前記カッター上下動駆動機構は、前記カッターを取り付けるための第1取付部材を回動可能に保持するための第1保持部材と、前記第1アクチュエータの駆動力により前記第1保持部材を上下動させる第1上下動リンク機構とをさらに備え、前記カッター進退駆動機構は、前記第2アクチュエータの駆動力により前記第1取付部材を回動させる回動リンク機構と、前記第1取付部材の回動動作を、前記カッターの前記穴かがり縫目の長軸方向に沿った進退動作に変換する変換機構とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本願第3発明の穴かがりミシンでは、カッターを取り付けるための第1取付部材を第1保持部材で保持し、この第1保持部材に対しカッター上下動駆動機構の第1上下動リンク機構が第1アクチュエータの駆動力を伝達して、第1保持部材を上下動させる。これにより、カッターを加工布に対して下降させることができる。
【0016】
第1保持部材は第1取付部材を回動可能に保持しており、カッター進退駆動機構の回動リンク機構が、第2アクチュエータの駆動力を第1取付部材に伝達し、回動させる。カッター進退駆動機構の変換機構が、上記第1取付部材の回動動作を進退動作に変換することにより、カッターを穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0017】
第4発明の穴かがりミシンは、上記第2発明において、前記カッター上下動駆動機構は、前記カッターを取り付けるための第2取付部材を進退可能に作動連結し、前記第1アクチュエータの駆動力により前記第2取付部材を上下動させる第2上下動リンク機構をさらに備え、前記カッター進退駆動機構は、前記第2取付部材を上下動可能に保持する第2保持部材と、前記第2アクチュエータの駆動力により前記第2保持部材を前記進退動作させる進退リンク機構とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
本願第4発明の穴かがりミシンでは、カッターを取り付けるための第2取付部材に対しカッター上下動駆動機構の第2上下動リンク機構を作動連結しており、第1アクチュエータの駆動力を伝達して、第2取付部材を上下動させる。これにより、カッターを加工布に対して下降させることができる。
【0019】
第2保持部材は第2取付部材を上下動可能に保持しており、この第2保持部材に対しカッター進退駆動機構の進退リンク機構が第2アクチュエータの駆動力を伝達し、第2保持部材を進退させる。これにより、カッターを穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0020】
第5発明の穴かがりミシンは、上記第2乃至第4発明のいずれかにおいて、前記縫製手段は、前記加工布に対し、前閂止め部の一部、往千鳥部、奥閂止め部、復千鳥部、及び前記前閂止め部の順で前記穴かがり縫目を形成し、前記制御手段は、前記縫製手段が前記復千鳥部の縫製後の前記前閂止め部の縫製を行っているときに前記カッターを下降させ前記ボタン穴を形成するように、前記布送り手段、前記縫製手段、及び前記ボタン穴形成手段を制御することを特徴とする。
【0021】
本願第5発明の穴かがりミシンでは、布送り手段による加工布の布送りに応じて、縫製手段が縫製を行う。すなわち、縫製手段は、加工布に対し前閂止め部の一部を形成した後、さらに往千鳥部、奥閂止め部、復千鳥部の順で形成し、最後に前閂止め部の残りの部分を形成して、穴かがり縫目を完成させる。千鳥部は、ボタン穴の短軸方向側部に長軸方向に沿って形成するため、布送りピッチが大きくなる。それ故、千鳥部の縫製時には布送り手段による加工布の布送り速度が大きい。これに対して、閂止め部は、ボタン穴の長軸方向端部に形成し、閂止め部の縫製時には、布送り手段による加工布の布送り速度が小さい(布送りピッチが千鳥部よりも小さいため)。
【0022】
布送り速度が大きい(布送りピッチが大きい)千鳥部の縫製時にカッターを下降させる場合、カッターが待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に布送りによって加工布が大きく移動し、ボタン穴を形成する位置の精度が低下するおそれがある。また、カッターの下降時にカッターによって加工布が引っ張られ、千鳥部の縫製に悪影響が出るおそれもある。さらに、上記引っ張りを防止するためにミシンを減速させた場合にはサイクルタイムが増加してしまう。本願第5発明では、布送り速度(布送りピッチ)が特に小さい復千鳥部の縫製後の前閂止め部の縫製時にカッターを下降させることにより、上記の弊害を確実に回避し、高精度に且つサイクルタイムを増加することなく所望の位置にボタン穴を形成することができる。
【0023】
第6発明の穴かがりミシンは、上記第5発明において、前記制御手段は、縫製パターンを規定する多数の針落ち位置の座標値を数値化し縫い順に並べた複数の縫製データを順次読み込み、当該複数の前記縫製データに基づき、対応する前記穴かがり縫目を形成するように前記布送り手段及び前記縫製手段を制御し、前記復千鳥部の縫製後の前閂止め部の縫製における少なくとも1つの前記縫製データに対し、前記カッターを下降させるための下降識別子を設定する識別子設定手段を設けたことを特徴とする。
【0024】
本願第6発明の穴かがりミシンでは、制御手段が、縫製データを次々と読み取りながら縫製手段を制御し、縫製を実行させる。縫製手段は、各縫製データに記載された針落ち位置において縫針を下降させ、加工布に縫製を行う。
【0025】
識別子設定手段は、カッターの下降を制御するために上記縫製データを活用し、復千鳥部の縫製後の前閂止め部の縫製時の縫製データに下降識別子を設定する。これにより、制御手段は、前閂止め部の適宜の針落ち位置の縫製タイミングで、下降識別子に基づき、ボタン穴形成手段に対しカッターの下降指示を行うことが可能となる。
【0026】
第7発明の穴かがりミシンは、上記第6発明において、前記制御手段は、読み込んだ前記縫製データが前記下降識別子を設定していた場合には、前記カッターを下降させるように前記カッター上下動駆動機構へ指示信号を出力することを特徴とする。
【0027】
本願第7発明の穴かがりミシンでは、縫製データに下降識別子の設定があった場合、対応する針落ち位置の縫製タイミングでボタン穴形成手段の上下動駆動機構へ指示信号を出力し、カッターの下降指示を行う。これにより、縫製時における縫針を上下動させるタイミングに連動してカッターを下降させ、加工布の切断を行うことができる。このように縫製作業中にカッターによる切断を行うことにより、縫製が完全に終了してからカッターによる切断を行う場合に比べ、全体の処理時間を短縮することができる。
【0028】
第8発明の穴かがりミシンは、上記第6又は第7発明において、前記下降識別子を設定した前記縫製データの前記針落ち位置の前記座標値を、前記カッターの移動位置に設定する移動位置設定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記移動位置設定手段により設定された前記移動位置へ前記カッターを移動させるように、前記カッター進退駆動機構を制御することを特徴とする。
【0029】
本願第8発明の穴かがりミシンは、移動位置設定手段を有する。移動位置設定手段は、上記のように適宜の針落ち位置での縫製実行タイミングに連動してカッターを下降させるために、下降識別子の設定がある縫製データの針落ち位置座標値を、カッターの移動位置に設定する。制御手段は、カッター進退駆動機構を制御し、上記のように移動位置設定手段が設定したカッターの移動位置に、カッターを移動させる。
【0030】
これにより、実際にカッターの下降に対応した針落ち位置の縫製実行タイミングが到来するより前に、予め、当該縫製実行タイミングに対応した移動位置にカッターを移動させておくことができる。
【0031】
その結果、針落ち位置の縫製実行タイミングが到来した後にカッターを対応する位置に移動させ且つ下降させる場合に比べ、当該タイミングで下降のみ行えばよいので、縫製実行タイミングに対応した移動位置に精度良くカッターを下降させることができる。したがって、さらに確実に高精度にボタン穴65を形成することができる。
【0032】
第9発明の穴かがりミシンは、上記第8発明において、前記移動位置設定手段により設定された前記移動位置を補正する移動位置補正手段をさらに備えることを特徴とする。
【0033】
本願第9発明の穴かがりミシンは、移動位置補正手段を有する。これにより、移動位置設定手段で設定したカッターの移動位置を、縫製速度や縫製条件に応じてさらに細かく調整することが可能となる。この結果、さらに確実に高精度にボタン穴を形成することができる。
【0034】
第10発明の穴かがりミシンは、上記第9発明において、前記移動位置補正手段は、ミシンモータの回転速度、前記布送り手段の布送り速度、前記布送り手段の布送りピッチ、前記加工布の種類、及び縫製糸の種類のうち少なくとも1つに応じて、前記移動位置の補正量を決定することを特徴とする。
【0035】
ミシンモータの回転速度や布送り速度が速い場合(布送りピッチが大きい場合)には、カッターが待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に加工布が移動し、本来ボタン穴を形成したい位置とカッターの下降位置とがずれる可能性がある。また加工布や縫製糸の種類によっては、摩擦等の影響により上記と同様のずれが発生する可能性がある。本願第10発明の穴かがりミシンは、移動位置補正手段が上記ミシンモータ回転速度、布送り速度、布送りピッチ、加工布・縫製糸種類等に対応して補正量を決定して相殺することで、上記のずれの影響を回避することができる。この結果、さらに確実に高精度にボタン穴を形成することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、操作者の意図する加工布の所望の位置に、精度よく確実にボタン穴を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態の穴かがりミシンの全体構造を表す斜視図である。
【図2】ミシンの縫針及びカッター部分の構造を表す側面図である。
【図3】布送り機構の全体構造を表す斜視図である。
【図4】縫製機構の全体構造を表す斜視図である。
【図5】ボタン穴形成機構の全体構造を斜め上方向から見た斜視図である。
【図6】ボタン穴形成機構の全体構造を斜め下方向から見た斜視図である。
【図7】カッター上下動駆動機構によるカッターの上下動動作を表す図である。
【図8】カッター進退駆動機構によるカッターの進退動作を表す図である。
【図9】穴かがりミシンの制御系を表す機能ブロック図である。
【図10】穴かがりミシンによって形成される穴かがり縫目の平面図である。
【図11】穴かがり縫目を形成する際に設定するパラメータ項目を説明するための図である。
【図12】制御装置がカッターONフラグを設定する際に行う制御内容を表すフローチャートである。
【図13】制御装置がカッターONフラグを設定する際に行う制御内容を表すフローチャートである。
【図14】縫製データ及びカッター座標等の一例を表す図である。
【図15】設定した複数の縫製データ及びカッターONフラグに基づき穴かがり縫目を形成する際に、制御装置が実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図16】設定した複数の縫製データ及びカッターONフラグに基づき穴かがり縫目を形成する際に、制御装置が実行するカッターに関する制御内容を表すフローチャートである。
【図17】ボタン穴形成機構の変形例の全体構造を斜め右上方向から見た斜視図である。
【図18】ボタン穴形成機構の変形例の全体構造を斜め左上方向から見た斜視図である。
【図19】ボタン穴形成機構の変形例におけるカッター上下動駆動機構によるカッターの上下動動作を表す図である。
【図20】ボタン穴形成機構の変形例におけるカッター進退駆動機構によるカッターの進退動作を表す図である。
【図21】カッター座標位置の補正を行う変形例におけるパラメータ項目を説明するための図である。
【図22】カッター座標位置の補正を行う変形例において、制御装置がカッターONフラグを設定する際に行う制御内容を表すフローチャートである。
【図23】カッター座標位置の補正を行う変形例において設定した縫製データ及びカッター座標等の具体例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0039】
本実施形態は、加工布に、例えば図10に示す穴かがり縫目60を形成するとともに、その穴かがり縫目60の内側にボタン穴65を形成するいわゆるボタン穴用の穴かがりミシンに本発明を適用した場合の例である。なお、以下の説明において穴かがりミシンの前後及び左右の方向は、図1及び図3等の矢印に示す方向とする。
【0040】
図1に示すように、穴かがりミシンMは、ミシンテーブル1と、このミシンテーブル1に設けられたミシンモータ2と、そのミシンモータ2を含む各駆動部(後述)を起動又は停止させるための足踏ペダル3と、穴かがり縫目60の形状とサイズ等を規定する複数のパラメータ等(後述)を入力設定するための操作パネル4と、各駆動部を駆動制御する制御装置5と、ミシン本体100等を有している。
【0041】
ミシン本体100は、ベッド部6、脚柱部7、及びアーム部8を有する。このミシン本体100は、図2乃至図6に示すように、加工布を前後に布送りする布送り機構10(布送り手段に相当)と、上下動する縫針32を備え、加工布に穴かがり縫目60を形成する縫製機構30(縫製手段に相当)と、ミシン本体100の機枠に対し、穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退可能に設けた、加工布を切断してボタン穴65を形成するカッター51を有するボタン穴形成機構50(ボタン穴形成手段に相当)を有している。上記の制御装置5(制御手段に相当)は、カッター51の長さ及びボタン穴65の長さに基づき、1回又は複数回のカッター51の下降動作によってボタン穴65を形成するように、布送り機構10、縫製機構30、及びボタン穴形成機構50を制御する。
【0042】
図3に示すように、布送り機構10は、送り台11と、押え足12と、ステッピングモータ13等を有している。布送り機構10は、加工布を押え足12で送り台11に押さえた状態で、ステッピングモータ13により送り台11と押え足12を一体的に前後に駆動することで、加工布についても一体的に前後に布送りする。ベッド部6の上面部分にはめ込まれた左右一対の案内板14は、前後に長い板状に形成した送り台11を前後に移動可能にガイドする。送り台11は、その前端部に、穴かがり縫目60及びボタン穴65を形成するための針穴11aを有している。
【0043】
送り台11の後端部下面側には可動部材15が連結している。その可動部材15の後側に前後に長い連結ロッド16を介して可動部材17が連結している。この可動部材17に、押え足12を前端部に取り付けた押え腕18の後端部が左右軸心回りに支持している。布送り機構10は、付勢部材(図示略)により押え腕18を介して押え足12を下方へ付勢し、足踏ペダル3の操作で駆動する押え昇降機構(図示略)により、押え腕18と一体的に押え足12が昇降する。なお、この押え昇降機構は、足踏みペダル3の操作量に応じて押え足12の昇降とその高さ調節を可能に駆動制御する布押え用ステッピングモータ22(図9参照)を有している。
【0044】
連結ロッド16は、可動部材15,17の左端部を挿通して前後に延びている。1対の軸受19は、可動部材15の前側、可動部材17の後側において、連結ロッド16を前後移動自在に支持している。前後に長いロッド20は、連結ロッド16の右側においてミシン機枠に固定している。可動部材17の右端部は、軸受17aを介してロッド20を前後移動自在に支持している。駆動プーリ13aは、ステッピングモータ13の出力軸に固着している。従動プーリ(図示略)は、駆動プーリ13aの後方においてミシン機枠に支持しており、これら両プーリが無端状のベルト21を掛け渡している。このベルト21の一部に可動部材17が連結しており、ステッピングモータ13が駆動すると、ベルト21を介して可動部材15,17と送り台11と押え足12が前後に一体的に駆動する。
【0045】
図2、図4に示すように、縫製機構30は、針棒31、縫針32、糸調子機構34、天秤35等を有する。縫針32は、針棒31の下端に装着している。糸調子機構34は、上糸供給源(図示略)から縫針32に至る上糸供給経路において上糸33に張力を付与する。天秤35は、糸調子機構34と縫針32との間に設け、上糸33を引き締める。ミシンモータ2は、針棒上下動機構(図示略)を駆動する。前記針棒上下動機構は、針棒31及び縫針32を上下に往復駆動する。糸捕捉器(図示略)は、ベッド部6内に設けている。前記糸捕捉器(図示略)は、送り台11の下側にて上下動する縫針32付近における上糸33を捕捉しボビン(図示略)から伸びる下糸と交絡させて縫目を形成する。
【0046】
針棒左右揺動用ステッピングモータ36(第2アクチュエータに相当。図9参照)は、針棒31を左右揺動させる駆動力を発生する。穴かがりミシンMは、針棒31が左右に揺動駆動し、且つ布送り機構10が前後に加工布を布送りすることで、加工布に左右幅のある穴かがり縫目60を縫製する。天秤35はミシンモータ2により駆動する針棒上下動機構と大部分が共通の天秤駆動機構(図示略)により上下に往復駆動し、上昇する天秤35が上糸33を引っ張り、糸調子機構34により上糸33に摩擦抵抗を作用させて張力を付与し、加工布に形成する縫目を引締める。
【0047】
図4に示すように、糸調子機構34は、第1糸調子皿40、第2糸調子皿41と補助糸調子皿42とを有する。糸案内部材33a,33bは、上糸供給源の上糸33を第1糸調子皿40に案内する。第1糸調子皿40を経由した上糸33は、補助糸調子皿42、第2糸調子皿41、糸案内部材33c、天秤35、案内部材33d,33eの順に経由して縫針32に至る。第1糸調子皿40と補助糸調子42は、常時上糸33に張力を付与する張力付与状態にある。第1糸調子皿40は、張力付与状態と張力開放状態に切換え可能である。該切換えは、糸ゆるめ用ソレノイド45(図9参照)を有する張力切換え機構(図示略)で行う。
【0048】
図5はボタン穴形成機構50の全体構造を斜め上方向から見た斜視図であり、図6は斜め下方向から見た斜視図である。なお、図6には変換機構95の部分拡大図を併せて示している。図5及び図6に示すように、ボタン穴形成機構50は、カッター51を上下動させるためのカッター駆動用ソレノイド81(第1アクチュエータに相当)を備えたカッター上下動駆動機構80と、カッター51を進退させるためのカッター進退用ステッピングモータ91(第2アクチュエータに相当)を備えたカッター進退駆動機構90とを有している。
【0049】
カッター上下動駆動機構80は、カッター駆動用ソレノイド81の他に、筒部材82と、カッターガイド部材98と、第1カッター取付軸53(第1取付部材に相当)と、第1軸保持部材83(第1保持部材に相当)と、第1上下動リンク機構84とを有している。第1カッター取付軸53は、筒部材82内に挿通し、且つ筒部材82内で周方向に回動可能である。第1軸保持部材83は、筒部材82の略中間部において該筒部材82を支持する。筒部材82は、下端にカッターガイド部材98を固定している。カッターガイド部材98は、板状の部材で形成し下面に後述するレール部98aを有している。第1上下動リンク機構84は、カッター駆動用ソレノイド81の駆動により第1軸保持部材83を上下動させる。
【0050】
第1上下動リンク機構84は、略L字形状のカッター作動腕85と、このカッター作動腕85の前端部分を上方へ付勢するバネ部材86とを有している。支持軸85aは、カッター作動腕85をミシン機枠に対し軸心回りに揺動可能に支持する。カッター作動腕85は、その前端部が第1軸保持部材83に回動可能に連結している。カッター作動腕85の後上端部は、カッター駆動用ソレノイド81から前方へ突出したプランジャ81aに連結している。
【0051】
カッター上下動駆動機構80は、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが突出/退避することで、カッター作動腕85、第1軸保持部材83、筒部材82、第1カッター取付軸53、及びカッターガイド部材98を介して後述するカッター51を上下動させることができる。
【0052】
カッター進退駆動機構90は、カッター進退用ステッピングモータ91の他に、回転リンク機構92と、変換機構95とを有している。回転リンク機構92は、第1回動軸93と、第2回動軸94とを有している。第1回動軸93は、その左端側をカッター進退用ステッピングモータ91から上方へ突出した出力軸91aに連結している。第2回動軸94は、その左端側を第1回動軸93の右端側に対しスライダ93aを介して軸方向にスライド可能且つ回動可能に連結し、その右端側を第1カッター取付軸53に連結している。回転リンク機構92は、カッター進退用ステッピングモータ91の駆動力により第1カッター取付軸53を回転させる。
【0053】
変換機構95は、回動部材96と進退部材97とを有している。回動部材96は、第1カッター取付軸53の下端部に連結し、第1カッター取付軸53の回動動作と共に回動する。回動部材96は、その進退部材97側の端部に、後述する進退部材97の溝97aに嵌合するスライダ部材96aを有している。進退部材97は、その左端側において回動部材96のスライダ部材96aが嵌合可能な溝97aを有している(図6の部分拡大図参照)。スライダ部材96aは、溝97aによって前後方向に規制され且つ左右方向に移動可能となっている。それ故、進退部材97は、回動部材96の回動に伴って、前後に移動する。進退部材97は、下方にカッターホルダ52を介してカッター51を固着している。進退部材97は、カッターガイド部材98と対向する側に溝部97bを有している。溝部97bは、カッターガイド部材98のレール部98aに摺動可能に嵌合している。それ故、進退部材97及びカッター51は、カッターガイド部材98に対して前後方向(言い換えれば穴かがり縫目60の長軸方向)に沿って進退駆動可能となっている。
【0054】
カッター進退駆動機構90は、カッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aが回動することで、第1回動軸93、第2回動軸94、第1カッター取付軸53、回動部材96、進退部材97、及びカッターホルダ52を介してカッター51を進退駆動させる。
【0055】
図7(a)及び図7(b)は、カッター上下動駆動機構80によるカッター51の上下動動作を表す図である。図7(a)は前述した図5と同じ状態を表している。図7(a)に示すように、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが後方に退避すると(矢印X1参照)、カッター作動腕85が支持軸85a回りに回動する(矢印X2参照)。この回動に基づいて、第1軸保持部材83及び筒部材82が上昇する(矢印X3参照)。それ故、カッター51がカッターガイド部材98等と共に上昇する(矢印X4参照)。図7(b)に示すようにカッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが前方に突出すると(矢印X5参照)、カッター作動腕85が支持軸85a回りに回動する(矢印X6参照)。この回動に基づいて、第1軸保持部材83及び筒部材82が下降する(矢印X7参照)。それ故、カッター51がカッターガイド部材98等と共に下降し(矢印X8参照)、送り台11上の加工布を切断する。
【0056】
図8(a)及び図8(b)は、カッター進退駆動機構90によるカッター51の進退動作を表す図である。図8(a)は前述した図5と同じ状態を表している。図8(a)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aに連結した第1回動軸93が後方側に回動すると(矢印Y1参照)、スライダ93aを介して第2回動軸94も後方側に回動する(矢印Y2参照)。この回動に伴い、第2回動軸94の回動中心となる右端側に連結した第1カッター取付軸53が、上面視時計回り方向に回動する(矢印Y3参照)。第1カッター取付軸53の回動に基づいて、第1カッター取付軸53の下端部に連結した回動部材96が上面視時計回り方向に回動する(図示せず)。回動部材96のスライダ部材96aと進退部材97の溝97aは、前記回転動作を進退部材97の前後方向の進退動作に変換する。その結果、カッター51は前方に進む(矢印Y4参照)。
【0057】
図8(b)に示すようにカッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aに連結した第1回動軸93が前方側に回動すると(矢印Y5参照)、スライダ93aを介して第2回動軸94も前方側に回動する(矢印Y6参照)。第2回動軸94の回動は、第1カッター取付軸53が、上面視反時計回り方向に回動させる(矢印Y7参照)。第1カッター取付軸53の回動に基づいて、第1カッター取付軸53の下端部に連結した回動部材96が上面視反時計回り方向に回動する(矢印Y8参照)。回動部材96のスライダ部材96aと進退部材97の溝97aは、前記回転動作を進退部材97の前後方向の進退動作に変換する。その結果、カッター51は後方に退く(矢印Y9参照)。
【0058】
なお図示はしないが、この状態でカッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが前方に突出すると、図8(b)に示す後方に退いた位置においてカッター51が下降する。
【0059】
次に、穴かがりミシンMの制御系について説明する。図9に示すように、制御装置5は、CPU5a、ROM5b、RAM5c、不揮発性メモリ5gを主要部とするマイクロコンピュータと、入力インターフェイス5dと、出力インターフェイス5eとを備え、バス5fにて夫々接続している。入力インターフェイス5dは、ペダル位置検出センサ3aと、操作パネル4と各種原点センサ101〜104と接続している。ペダル位置検出センサ3aは、足踏みペダル3の操作状態に応じた信号を出力する。出力インターフェイス5eは、ミシンモータ2、ステッピングモータ13,22,36,91、ソレノイドアクチュエータ45,81を駆動する為の駆動回路70〜76及び操作パネル4と接続している。
【0060】
上記各種原点センサ101〜104は、送り用原点センサ101、布押え用原点センサ102、針棒左右揺動用原点センサ103、カッター進退用原点センサ104である。送り用原点センサ101は、送り用ステッピングモータ13の原点を検出する。布押え用原点センサ102は、布押え用ステッピングモータ22の原点を検出する。針棒左右揺動用原点センサ103は、針棒左右揺動用ステッピングモータ36の原点を検出する。カッター進退用原点センサ104は、カッター進退用ステッピングモータ91の原点を検出する。これらの原点センサとしては、例えば各ステッピングモータに設けたロータリーエンコーダ又は光学センサ等の公知のセンサを用いる。不揮発性メモリ5gは、これらの原点センサ101〜104が検出した原点位置を不揮発的に記憶する。
【0061】
制御装置5のROM5bには、操作パネル4を用いて穴かがり縫目60の形状、サイズ、ボタン穴65を形成する為のカッター落としパターン等を規定する複数のパラメータの設定を行う為の設定処理プログラムと、複数のパラメータに基づいて縫製データ(針落ちデータ)とボタン穴データ(カッター落とし位置(タイミング)データ)等を演算処理する演算処理プログラムと、演算されたボタン穴データに基づき、穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退可能に設けたカッター51の作動位置を演算処理する演算処理プログラムと、演算されたデータに基づいて布送り機構10、縫製機構30、ボタン穴形成機構50等を駆動制御する制御プログラムが格納されている。
【0062】
図10は、穴かがりミシンMによって形成される穴かがり縫目60の平面図である。なお、図10において丸部分は縫針32の1ピッチごとの落下位置を表し、直線部分は上糸33による縫目を表している。この図10に示すように、穴かがり縫目60は、往千鳥部61、復千鳥部62、前閂止め部63、及び奥閂止め部64を有している。図中符号66は縫製開始位置、符号67は縫製終了位置を表しており、縫製開始位置66から開始して、前閂止め部63の一部、往千鳥部61、奥閂止め部64、復千鳥部62、前閂止め部63の残りの部分の順で縫製し、縫製終了位置67で縫製が終了する。その後カッター51がこの穴かがり縫目60の内側にボタン穴65を形成する。制御装置5は、縫製機構30が復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製を行っているときにカッター51を下降させボタン穴65を形成するように、布送り機構10、縫製機構30、及びボタン穴形成機構50を制御する。なお、図中に示す縫製終了位置67の後の破線は、縫製終了後、加工布を布送りした際の縫針32の経路を示すものである。
【0063】
図11は、穴かがり縫目60を形成する際に設定するパラメータ項目を説明するための図である。なお、この図11に示す簡略化した穴かがり縫目60は上述の図10に対応したものである。また、図中黒線68はカッター51による切断位置を表しており、この例では3回の切断を行うことによりボタン穴65を形成した場合を一例として図示している。なお、図11では、黒線68は、X方向にずれた位置に描かれているが、これは、説明するためにずらしたものであり、実際の切断位置は、X方向にずれることはない。
【0064】
図11に示すように、本実施形態では、上記複数のパラメータは、往千鳥部61及び復千鳥部62の長軸方向(図11中上下方向)長さである千鳥縫い長さA(mm)、カッター51の長手方向寸法であるカッター寸法S(mm)、前閂止め部63の長軸方向長さである前閂止め長さD1(mm)、奥閂止め部64の長軸方向長さである奥閂止め長さD2(mm)、カッター51の切断手前側位置(複数回切断の場合には最も前側の切断位置68の手前側位置)と前閂止め部63との隙間である前カッタースペースYE(mm)と、カッター51の切断奥側位置(1回及び複数回切断の両方を含む)と奥閂止め部64との隙間である奥カッタースペースYS(mm)等を含んでおり、上記設定処理プログラムに基づいて、操作パネル4を用いて設定することが可能である。
【0065】
なお、上述したように図11ではカッター51による3回の切断を行った場合を一例として図示しているが、この切断回数は上記カッター寸法S及びボタン穴の長さHOL(HOL=A−YS−YE)に基づき、制御装置5が決定するものである(詳細後述)。
【0066】
制御装置5は、上記パラメータの設定に基づいて、縫製パターンを規定する多数の針落ち位置の座標値を数値化し縫い順に並べた複数の縫製データ(X,Y)を生成して順次読み込み、当該複数の縫製データ(X,Y)に基づき、対応する穴かがり縫目60を形成するように、布送り機構10及び縫製機構30を制御する。なお、上記縫製データ(X,Y)の各座標系は、図11に示すようにX座標を穴かがり縫目60の短軸方向にとり、Y座標を穴かがり縫目60の長軸方向にとったものであり、Y座標の原点は前閂止め部63の手前側位置に対応している。そして、復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製における少なくとも1つの縫製データに対し、カッター51を下降させるための下降識別子としてのカッターONフラグを設定している。制御装置5は、前閂止め部63の適宜の針落ち位置の縫製タイミングで、カッターONフラグに基づき、ボタン穴形成機構50に対しカッター51の下降指示を行う。
【0067】
次に、制御装置5が上記カッターONフラグを設定する際に行う制御内容を図12及び図13を用いて説明する。なお、以下では、カッター51による切断回数の上限を3回、複数回の切断を行う際の隣り合う切断位置同士の必要なオーバーラップ量を1.0mm以上、且つ、縫針32とカッター51との間隔L(前述の図2参照)が2.2mmであるとして説明する。なお、これらは一例であり装置仕様等に応じ適宜変更してもよい。
【0068】
図12において、まずステップS1では、「後カッター」を実行するか否かを判定する。ここで「後カッター」とは、縫製終了位置67での縫製終了後、加工布を布送りしてカッター51による切断を行うことである。例えばこの「後カッター」を行わない場合には、前カッタースペースYEと前閂止め長さD1とを足した長さが上記2.2mmより小さくなるような切断位置68でカッター51による切断を行いたくとも、装置構成上不可能となるが、「後カッター」では加工布を布送りして切断を行うため自在な位置でカッター51による切断を実行することが可能であり、上記のような場合でも所望の切断位置68で切断を行うことが可能となる。但し、「後カッター」を実行する場合、穴かがり縫目60の縫製終了後に加工布を布送りして切断を行うことから、縫製中に切断を完了する場合に比べてサイクルタイムが長くなるというデメリットを有する。この「後カッター」を実行するか否かは、操作パネル4を用いて設定することが可能となっている。「後カッター」を実行する場合(ステップS1でYES)、次のステップS5に移る。一方、「後カッター」を実行しない場合(ステップS1でNO)、後述のステップS15に移る。
【0069】
ステップS5では、前カッタースペースYEと前閂止め長さD1とを足した長さが2.2mmより小さいか否かを判定する。YE+D1<2.2である場合(ステップS5でYES)、ステップS10に移り、前カッタースペースYEを2.2mmから前閂止め長さD1を減じた長さに変更する。これにより、前カッタースペースYEと前閂止め長さD1とを足した長さが2.2mmとなるように変更される。一方、YE+D1≧2.2である場合(ステップS5でNO)、次のステップS15に移る。
【0070】
ステップS15では、ボタン穴の長さHOLを、千鳥縫い長さAから奥カッタースペースYSと前カッタースペースYEとを減じることにより、算出する。
【0071】
ステップS20では、上記算出したボタン穴の長さHOLがカッター寸法S以下であるか否かを判定する。HOL≦Sである場合(ステップS20でYES)、ステップS25に移り、カッター51による切断回数を1回に設定する。また、1回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[3](図11参照)を前閂止め長さD1と前カッタースペースYEとを足した長さに設定する。その後、後述のステップS50に移る。一方、HOL>Sである場合(ステップS20でNO)、次のステップS30に移る。
【0072】
ステップS30では、上記算出したボタン穴の長さHOLがカッター寸法Sの2倍から上記オーバーラップ量である1(mm)を減じた長さ以下であるか否かを判定する。HOL≦2S−1である場合(ステップS30でYES)、ステップS35に移り、カッター51による切断回数を2回に設定する。また、1回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[1](図11参照)を、前閂止め長さD1と千鳥縫い長さAとを足した長さから奥カッタースペースYSとカッター寸法Sとを減じた長さに設定すると共に、2回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[3](図11参照)を、上記ステップS25と同様に、前閂止め長さD1と前カッタースペースYEとを足した長さに設定する。その後、後述のステップS50に移る。一方、HOL>2S−1である場合(ステップS30でNO)、次のステップS40に移る。
【0073】
ステップS40では、上記算出したボタン穴の長さHOLがカッター寸法Sの3倍から上記オーバーラップ量の2倍である2(mm)を減じた長さ以下であるか否かを判定する。HOL≦3S−2である場合(ステップS40でYES)、ステップS45に移り、カッター51による切断回数を3回に設定する。また、1回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[1](図11参照)を、上記ステップS35と同様に、前閂止め長さD1と千鳥縫い長さAとを足した長さから奥カッタースペースYSとカッター寸法Sとを減じた長さに設定すると共に、3回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[3](図11参照)を、上記ステップS25,S35と同様に、前閂止め長さD1と前カッタースペースYEとを足した長さに設定する。さらに、2回目の切断に対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[2](図11参照)を、上記ymm[1]とymm[3]の中点位置に設定する。その後、次のステップS50に移る。一方、HOL>3S−2である場合(ステップS40でNO)、切断回数が4回以上となるたカッターテップS47に移り切断回数エラー処理(例えば操作パネル4へのエラー表示又はブザー等)を実行する。その後、本フローを終了する(図13参照)。この場合、例えばボタン穴の長さHOLを小さくして再設定を行うか、あるいはカッター51を交換してカッター寸法Sを大きくする必要がある。
【0074】
ステップS50では、前閂止め部63以降の縫製データ(X,Y)を読み取り、Y座標の値が上記ymm[1]から縫針32とカッター51との間隔L(前述の図2参照)である2.2(mm)を減じた長さ以下となるような縫製データを検索し、その縫製データをP1とすると共に、そのY座標をY[1]とする。
【0075】
ステップS55では、上述したステップS1と同様にして「後カッター」を実行するか否かを判定する。「後カッター」を実行する場合(ステップS55でYES)、次のステップS60に移る。このステップS60では、縫製終了位置67に対応する縫製データの次の縫製データ(縫製が終了して加工布を布送りした後の縫針32の落下位置に対応する縫製データ)をP3とし、そのY座標をY[3]とする。また、この縫製データP3の5針前に対応する縫製データをP2とし、そのY座標をY[2]とする。なお、上記5針は一例であり装置仕様等に応じ適宜針数を変更してもよい。
【0076】
上記ステップS55において「後カッター」を実行しない場合(ステップS55でNO)、ステップS65に移り、縫製終了位置67に対応する縫製データをP3とし、そのY座標をY[3]とする。また、この縫製データP3の5針前に対応する縫製データをP2とし、そのY座標をY[2]とする。
【0077】
図13に移り、ステップS70では、上記ステップS25,S35,S45において切断回数を1〜3回のいずれに設定したかを判定する。1回である場合(ステップS70で1回)、ステップS75に移り、縫製データP3にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の移動位置であるカッター座標cmm[1]を、上記ymm[3]から縫製データP3のY座標であるY[3]と2.2(mm)を減じた値に設定する。なお、上記カッター座標とはカッター51の縫針32に対する相対位置を表す座標であり、カッター51が最も縫針32に近づいた状態(すなわち縫針32とカッター51との間隔Lが2.2mmである状態)を0とする、穴かがり縫目60の長軸方向に沿った一軸座標系である。そして、本フローを終了する。
【0078】
上記ステップS70において、切断回数が2回である場合(ステップS70で2回)、ステップS80に移り、縫製データP1にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の1回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[1]を、上記ymm[1]から縫製データP1のY座標であるY[1]と2.2(mm)を減じた値に設定する。その後、ステップS85に移り、縫製データP3にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の2回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[2]を、上記ymm[3]から縫製データP3のY座標であるY[3]と2.2(mm)を減じた値に設定する。そして、本フローを終了する。
【0079】
上記ステップS70において、切断回数が3回である場合(ステップS70で3回)、ステップS90に移り、縫製データP1にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の1回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[1]を、上記ymm[1]から縫製データP1のY座標であるY[1]と2.2(mm)を減じた値に設定する。その後、ステップS93に移り、縫製データP2にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の2回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[2]を、上記ymm[2]から縫製データP2のY座標であるY[2]と2.2(mm)を減じた値に設定する。さらにその後、ステップS95に移り、縫製データP3にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の3回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[3]を、上記ymm[3]から縫製データP3のY座標であるY[3]と2.2(mm)を減じた値に設定する。そして、本フローを終了する。
【0080】
上記において、ステップS75、ステップS80、ステップS85、ステップS90、ステップS93、及びステップS95は、特許請求の範囲に記載の下降識別子を設定する識別子設定手段を構成すると共に、移動位置設定手段をも構成する。
【0081】
図14は、上述のようにして設定した縫製データP1,P2,P3及びカッター座標等の具体例を表す図である。この例では、各パラメータとして、千鳥縫い長さAを31(mm)、カッター寸法Sを13(mm)、前閂止め長さD1を2(mm)、奥閂止め長さD2を2(mm)、前カッタースペースYEを0.5(mm)、奥カッタースペースYSを0.5(mm)に設定している。その結果、切断回数は3回となり、各縫製データP1,P2,P3のY座標であるY[1],Y[2],Y[3]、対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[1],ymm[2],ymm[3]、カッター座標cmm[1],cmm[2],cmm[3]が図に示す値となっている。なお、この例は前述した「後カッター」を実行する場合であり、縫製データP3に対応する3回目の切断を、縫製終了後に加工布を布送りして行うようになっている。
【0082】
次に、上述のようにして設定した複数の縫製データ及びカッターONフラグに基づき穴かがり縫目60を形成する際に、制御装置5が実行する制御内容を図15及び図16を用いて説明する。
【0083】
図15において、ステップS105では、駆動回路71に制御信号を出力して送り用ステッピングモータ13を駆動すると共に、駆動回路73に制御信号を出力してステッピングモータ36を駆動する。穴かがりミシンMは、加工布を布送りすると共に針棒31を揺動させて、縫針32を加工布の縫製開始位置66に対応する位置に移動させる。この場合、加工布の送り速度は、ミシンモータ2の回転速度と、送りピッチとに基づいて決定される。
【0084】
ステップS110では、駆動回路76に制御信号を出力してカッター進退用ステッピングモータ91を駆動し、カッター51を穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退させて上述したカッター座標cmm[1]に移動させる。
【0085】
ステップS115では、駆動回路70に起動信号を出力し、ミシンモータ2を起動させる。
【0086】
ステップS120では、対応するデータアドレスにそれぞれ格納した複数の縫製データのうち、最初のアドレスに対応する縫製データを読み込む。なおこのデータ読み込み時に、次回読み込みを円滑に行うためにデータアドレスを次に進める。
【0087】
ステップS125では、上記読み込んだ縫製データにカッターONフラグをセットしているか否かを判定する。カッターONフラグをセットしている場合(ステップS125でYES)、次のステップS130で駆動回路75に下降指令信号を出力する。これにより、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが前方に突出し、カッター51が下降して送り台11上の加工布を切断する。なおこのとき、カッター51の下降動作をトリガーとして、後述の図16に示すフローチャートを並行して開始する(詳細は後述)。一方、上記ステップS125において読み込んだ縫製データにカッターONフラグをセットしていない場合(ステップS125でNO)、次のステップS135に移る。
【0088】
ステップS135では、上記読み込んだ縫製データがミシンの停止に対応するミシン停止データであるか否かを判定する。ミシン停止データである場合(ステップS135でYES)、次のステップS140で駆動回路70に停止信号を出力し、ミシンモータ2を停止させる。その後、ステップS120に戻る。一方、ミシン停止データでない場合(ステップS135でNO)、次のステップS145に移る。
【0089】
ステップS145では、上記読み込んだ縫製データがエンドデータであるか否かを判定する。エンドデータである場合(ステップS145でYES)、本フローを終了する。一方、エンドデータでない場合(ステップS145でNO)、次のステップS150に移る。
【0090】
ステップS150では、上記読み込んだ縫製データが、針落ち位置の座標値を表すステッチデータ(X,Y)であるか否かを判定する。ステッチデータでない場合(ステップS150でNO)、後述のステップS160に移る。一方、読み込んだ縫製データがステッチデータである場合(ステップS150でYES)、ステップS155で所定の布送りタイミングとなったか否かを判定する。所定の布送りタイミングとなるまで本判定を繰り返し(ステップS155でNO)、所定の布送りタイミングとなった場合(ステップS155でYES)、次のステップS160に移る。
【0091】
ステップS160では、駆動回路71に制御信号を出力して送り用ステッピングモータ13を駆動すると共に、駆動回路73に制御信号を出力してステッピングモータ36を駆動し、加工布を1ピッチ分布送りすると共に針棒31を1ピッチ分揺動させて、縫針32を1ピッチ分先の位置に移動させる。そして、先のステップS120に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0092】
図16は、上述したようにカッター51の下降動作(1〜3回目のいずれも含む)をトリガーとして開始するフローチャートであり、上記図15に示すフローチャートと同時に並行して動作するものである。このような同時並行処理は、例えばコンピュータのOS等がしばしば行う「マルチタスク処理」と同様の公知の方式により、1つのCPUに行わせることができる。
【0093】
ステップS210では、予め定められた所定時間待機する。次のステップS220では、駆動回路75に上昇指令信号を出力する。これにより、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが後方に退き、カッター51が上昇する。
【0094】
ステップS230では、予め定められた所定時間待機する。次のステップS240では、カッター51による所定回数(前述したステップS25,S35,S45で設定した切断回数)の切断が終了したか否かを判定する。終了していない場合(ステップS240でNO)、ステップS250に移り、対応するデータアドレスにそれぞれ格納した複数のカッター座標のうち、次のアドレスに対応するカッター座標を読み込む。なおこのデータ読み込み時に、その次のデータ読み込みを円滑に行うためにデータアドレスを次に進める。その後、ステップS260では、駆動回路76に制御信号を出力してカッター進退用ステッピングモータ91を駆動し、カッター51を上記読み込んだカッター座標に対応する位置に移動させる。そして、本フローを終了する。
【0095】
上記ステップS240において、カッター51による所定回数の切断が終了している場合(ステップS240でYES)、ステップS270に移り、駆動回路76に制御信号を出力してカッター進退用ステッピングモータ91を駆動し、カッター51を原点位置に移動させる。そして、本フローを終了する。
【0096】
上記制御内容により、穴かがりミシンMは次のように動作する。縫製を開始する際には、縫針32を加工布の縫製開始位置66に移動させると共に(ステップS105)、カッター51を進退させて対応するカッター座標位置に移動させた上で(ステップS110)、ミシンモータ2を起動する(ステップS115)。これにより、読み込んだ複数の縫製データに基づき、前閂止め部63の一部、往千鳥部61、奥閂止め部64、復千鳥部62、前閂止め部63の残りの部分の順で縫製し、対応する穴かがり縫目60を形成する。このとき、復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製時において、読み込んだ縫製データにカッターONフラグを設定していた場合(ステップS125でYES)、カッター51を下降させて送り台11上の加工布を切断する(ステップS130)。このとき、図16に示す処理を図15の処理と同時に並行して開始する。切断回数が1回である場合には切断が完了しているので(ステップS240でYES)、カッター51を原点位置に移動させる(ステップS270)。一方、切断回数が複数回である場合には、切断が完了していないので(ステップS240でNO)、カッター51を次のカッター座標位置に移動させる(ステップS260)。これにより、図16に示す処理は一旦終了する。
【0097】
その後、前閂止め部63の縫製を継続しつつ、読み込んだ縫製データに次のカッターONフラグを設定していた場合(ステップS125でYES)には、カッター51を下降させて2回目の切断を実行する(ステップS130)。このとき、図16に示す処理を再度並行して開始する。切断回数が2回である場合には切断が完了しているので(ステップS240でYES)、カッター51を原点位置に移動させる(ステップS270)。一方、切断回数が3回である場合には、切断が完了していないので(ステップS240でNO)、カッター51を次のカッター座標位置に移動させる(ステップS260)。そして、同様の動作を繰り返し、3回目の切断を実行する。
【0098】
以上説明した本実施形態の穴かがりミシンMは、布送り機構10と、縫製機構30とを有しており、制御装置5の制御に基づき、布送り機構10が加工布を布送りしつつ、縫製機構30が縫針32を上下動させることにより、布送り方向を長軸方向とする穴かがり縫目60を形成する。また本実施形態の穴かがりミシンMは、ボタン穴形成機構50をさらに有している。制御装置5の制御に基づき、ボタン穴形成機構50がカッター51を1回又は複数回下降させて加工布を切断することにより、ボタン穴65を形成する。
【0099】
このとき、本実施形態の穴かがりミシンMでは、カッター51を、ミシンMの機枠に対し進退可能に設置しており、上記のように形成した穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退可能である。これにより、穴かがり縫目60の長軸方向におけるカッター51による加工布の切断位置を、布送り機構10による布送り動作のみに依存することなく、自在に設定することができる。
【0100】
この結果、加工布の切断位置を細かく微調整して設定したり、詳細は後述するが、さらにその設定を縫製速度や縫製条件に応じて補正することも可能となる。また、一対の閂止め部63,64と一対の千鳥部61,62とからなる穴かがり縫目60の縫製の際、千鳥部61,62の縫製時に比べて布送り速度が小さい閂止め部63,64(本実施形態では前閂止め部63)の縫製時にカッター51を下降させ、加工布を切断するよう制御することができる。これらにより、操作者の意図する加工布の所望の位置に精度よくカッター51を下降させることができ、確実にボタン穴65を形成することができる。
【0101】
また、本実施形態では特に、ボタン穴形成機構50が、カッター駆動用ソレノイド81によりカッター51を上下動させるカッター上下動駆動機構80のみならず、カッター進退駆動機構90を備えている。これにより、カッター進退用ステッピングモータ91の駆動力を用いて、カッター51を穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0102】
また、本実施形態では特に、カッター51を取り付けるための第1カッター取付軸53を筒部材82を介して第1軸保持部材83で保持し、この第1軸保持部材83に対しカッター上下動駆動機構80の第1上下動リンク機構84がカッター駆動用ソレノイド81の駆動力を伝達して、第1軸保持部材83を上下動させる。これにより、カッター51を加工布に対して下降させることができる。第1軸保持部材83は第1カッター取付軸53を筒部材82を介して回転可能に保持しており、カッター進退駆動機構90の回転リンク機構92が、カッター進退用ステッピングモータ91の駆動力を第1カッター取付軸53に伝達し、回転させる。カッター進退駆動機構90の変換機構95が、上記第1カッター取付軸53の回転動作を進退動作に変換することにより、カッター51を穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0103】
また、本実施形態では特に、布送り機構10による加工布の布送りに応じて、縫製機構30が縫製を行う。縫製機構30は、加工布に対し前閂止め部63の一部を形成した後、さらに往千鳥部61、奥閂止め部64、復千鳥部62の順で形成し、最後に前閂止め部63の残りの部分を形成して、穴かがり縫目60を完成させる。布送りのピッチは、閂止め部63,64よりも千鳥部61,62の方が大きい。それ故、加工布の布送り速度は、千鳥部61,62の方が閂止め部63,64よりも大きい。
【0104】
布送り速度が大きい千鳥部61,62の縫製時にカッター51を下降させる場合、カッター51が待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に布送りによって加工布が大きく移動し、ボタン穴65を形成する位置の精度が低下するおそれがある。また、カッター51の下降時にカッター51によって加工布が引っ張られ、千鳥部61,62の縫製に悪影響が出るおそれもある。さらに、上記引っ張りを防止するために穴かがりミシンMを減速させた場合にはサイクルタイムが増加してしまう。本実施形態では、布送り速度が特に小さい復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製時にカッター51を下降させることにより、上記の弊害を確実に回避し、高精度に且つサイクルタイムを増加することなく所望の位置にボタン穴65を形成することができる。また、復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製時にカッター51による切断を実施することで、切断位置の両側に位置する千鳥部61,62の縫製完了後、切断位置両側の加工布の剛性が増した状態で切断を実施することができるので、切断時の加工布の引っ張り等による悪影響を抑制できる効果もある。
【0105】
また、本実施形態では特に、制御装置5が、縫製データを次々と読み取りながら縫製機構30を制御し、縫製を実行させる。縫製機構30は、各縫製データに記載された針落ち位置において縫針32を下降させ、加工布に縫製を行う。このとき、カッター51の下降を制御するために上記縫製データを活用し、復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製時の縫製データに下降識別子としてのカッターONフラグを設定する。これにより、制御装置5は、前閂止め部63の適宜の針落ち位置の縫製タイミングで、カッターONフラグに基づき、ボタン穴形成機構50に対しカッター51の下降指示を行うことができる。
【0106】
また、本実施形態では特に、縫製データにカッターONフラグの設定があった場合、対応する針落ち位置の縫製タイミングでボタン穴形成機構50の上下動駆動機構80へ指示信号を出力し、カッター51の下降指示を行う。これにより、縫製時における縫針32を上下動させるタイミングに連動してカッター51を下降させ、加工布の切断を行うことができる。このように縫製作業中にカッター51による切断を行うことにより、縫製が完全に終了してからカッター51による切断を行う場合に比べ、全体の処理時間を短縮することができる。
【0107】
また、本実施形態では特に、上記のように適宜の針落ち位置での縫製実行タイミングに連動してカッター51を下降させるために、カッターONフラグの設定がある縫製データの針落ち位置座標値に対応させて、カッター51の移動位置であるカッター座標を設定する。制御装置5は、カッター進退駆動機構90を制御し、上記設定したカッター座標に対応する位置にカッター51を移動させる。これにより、実際にカッター51の下降に対応した針落ち位置の縫製実行タイミングが到来するより前に、予め、当該縫製実行タイミングに対応した移動位置にカッター51を移動させておくことができる。その結果、針落ち位置の縫製実行タイミングが到来した後にカッター51を対応する位置に移動させ且つ下降させる場合に比べ、当該タイミングで下降のみ行えばよいので、縫製実行タイミングに対応した移動位置に精度良くカッター51を下降させることができる。したがって、さらに確実に高精度にボタン穴65を形成することができる。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0109】
(1)ボタン穴形成機構の変形例
図17は本変形例のボタン穴形成機構150の全体構造を斜め右上方向から見た斜視図であり、図18は斜め左上方向から見た斜視図である。図17及び図18に示すように、ボタン穴形成機構150は、カッター上下動駆動機構180とカッター進退駆動機構190とを有している。カッター上下動駆動機構180は、カッター51を上下動させるためのカッター駆動用ソレノイド181(第1アクチュエータに相当)を備えている。カッター進退駆動機構190は、カッター51を進退させるためのカッター進退用ステッピングモータ191(第2アクチュエータに相当)を備えている。
【0110】
カッター上下動駆動機構180は、第2上下動リンク機構184と第2カッター取付板153(第2取付部材に相当)とを有している。第2上下動リンク機構184は、後述する第2カッター取付板153(第2取付部材に相当)を進退可能に作動連結し、カッター駆動用ソレノイド181の駆動力により第2カッター取付板153を上下動させる。第2カッター取付板153は、長手方向中央部に開口部153aを有する。第2カッター取付板153は、その下端部にカッターホルダ52を固着している。カッターホルダ52は、その下部にカッター51を着脱可能に固着している。第2上下動リンク機構184は、略L字形状のカッター作動腕185と、このカッター作動腕185の前方部分を上方へ付勢するバネ部材186とスライダ187とを有している。スライダ187は、カッター作動腕185の前端部分に連結し、第2カッター取付板153の開口部153a内を前後方向に摺動可能である。カッター作動腕185は、支持軸185aがカッター作動腕185の前後方向中央部を支持する。カッター作動腕185は、支持軸185aを支点として、ミシン機枠に対し揺動可能となっている。カッター作動腕185は、その後上端部が、カッター駆動用ソレノイド181から前方へ突出したプランジャ181aに回動可能に連結している。カッター作動腕185が反時計回り(図17において)に往動すると、スライダ187は第2カッター取付板153を下方に移動させる。この場合、スライダ187は開口部153a内を前方(図17において)に移動する。カッター作動腕185が時計回り(図17において)に往動すると、スライダ187は第2カッター取付板153を上方に移動させる。この場合、スライダ187は開口部153a内を後方(図17において)に移動する。
【0111】
前述したカッター上下動駆動機構180は、カッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが突出/退避することで、カッター作動腕185、スライダ187、第2カッター取付板153、及びカッターホルダ52を介してカッター51を上下動させる。
【0112】
カッター進退駆動機構190は、第2カッター取付板153を上下動可能に保持する第2軸保持部材192(第2保持部材に相当)と進退リンク機構193とを有している。進退リンク機構193は、カッター進退用ステッピングモータ191の駆動力により第2軸保持部材192を進退動作させる。進退リンク機構193は、第1クランク板194と第2クランク板195とを有している。第1クランク板194は、カッター進退用ステッピングモータ191から右方へ突出した出力軸191a(図示せず)に連結し、出力軸191aを中心に回動する。第2クランク板195は、その後端側を第1クランク板194に回動可能に連結している。第2クランク板195は、その前端側を第2軸保持部材192に回動可能に連結している。第2軸保持部材192は、ミシン機枠に固定したスライド支持部材196と、スライド軸197と、軸受け198と、係合部材199とで構成している。スライド支持部材196は、上下2本のスライド軸197を支持している。各スライド軸197は、軸受け198を摺動可能に支持している。各軸受け198は、第2カッター取付板153と係合し、第2カッター取付板153を上下に摺動可能に且つ前後の移動を規制する係合部材199を備えている。
【0113】
前述したカッター進退駆動機構190は、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸191aが回動することによって、第1及び第2クランク板194,195、第2軸保持部材192、第2カッター取付板153、及びカッターホルダ52を介してカッター51を進退駆動させることができる。
【0114】
図19(a)及び図19(b)は、カッター上下動駆動機構180によるカッター51の上下動動作を表す図である。図19(a)は前述した図17と同じ状態を表している。図19(a)に示すように、カッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが後方に退避すると(矢印X1参照)、カッター作動腕185が支持軸185a回りに回動する(矢印X2参照)。カッター作動腕185は、スライダ187を上昇させる。それ故、第2カッター取付板153は、開口部153a内においてスライダ187を前方に摺動させつつスライダ187と共に上昇する(矢印X3参照)。その結果、カッターホルダ52と共にカッター51が上昇する(矢印X4参照)。図19(b)に示すようにカッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが前方に突出すると(矢印X5参照)、カッター作動腕185が支持軸185a回りに回動し(矢印X6参照)、この回動によりスライダ187が下降する。それ故、第2カッター取付板153は、開口部153a内においてスライダ187を後方に摺動させつつスライダ187と共に下降する(矢印X7参照)。その結果、カッターホルダ52と共にカッター51が下降する(矢印X8参照)。これにより送り台11上の加工布を切断することができる。
【0115】
図20(a)及び図20(b)は、カッター進退駆動機構190によるカッター51の進退動作を表す図である。図20(a)は前述した図18と同じ状態を表している。図20(a)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸91aに連結した第1クランク板194が前方側に回動すると(矢印Y1参照)、第1クランク板194及び第2クランク板195が回動動作を前後方向の進退動作に変換する(矢印Y2参照)。これにより第2軸保持部材192が第2カッター取付板153と共に前方側に摺動する(矢印Y3参照)。その結果、第2カッター取付板153の下端部にカッターホルダ52を介して連結したカッター51が、前方に進む(矢印Y4参照)。
【0116】
図20(b)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸91aに連結した第1クランク板194が後方側に回動すると(矢印Y5参照)、第1クランク板194及び第2クランク板195が回動動作を前後方向の進退動作に変換する(矢印Y6参照)。これにより第2軸保持部材192が第2カッター取付板153と共に後方側に摺動する(矢印Y7参照)。その結果、第2カッター取付板153の下端部にカッターホルダ52を介して連結したカッター51が、後方に退く(矢印Y8参照)。
【0117】
本変形例の穴かがりミシンMの上記以外の構成及び制御装置5の制御内容については、前述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0118】
以上説明した変形例においては、カッター51を取り付けるための第2カッター取付板153に対しカッター上下動駆動機構180の第2上下動リンク機構184を作動連結しており、カッター駆動用ソレノイド181の駆動力を伝達して、第2カッター取付板153を上下動させる。これにより、カッター51を加工布に対して下降させることができる。また、第2軸保持部材192は第2カッター取付板153を上下動可能に保持しており、この第2軸保持部材192に対しカッター進退駆動機構190の進退リンク機構193がカッター進退用ステッピングモータ191の駆動力を伝達し、第2軸保持部材192を進退させる。これにより、カッター52を穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退させることができる。
【0119】
(2)カッター座標位置の補正を行う場合
ミシンモータ2の回転速度やピッチが大きいことによる布送り速度が速い場合には、カッター51が待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に加工布が移動し、本来ボタン穴65を形成したい位置とカッター51の下降位置とがずれる可能性がある。また加工布や縫製糸の種類によっては、摩擦等の影響により上記と同様のずれが発生する可能性がある。本変形例は、このような事態に備え、上記ミシンモータ回転速度、布送り速度、加工布・縫製糸種類等に対応してカッター座標位置の補正を行うことにより、上記のずれの影響を回避するものである。
【0120】
図21は、本変形例におけるパラメータ項目を説明するための図である。図21に示すように、本変形例のパラメータは、複数回切断の場合におけるカッター51の切断奥側位置(最も奥側にある切断位置の奥側位置)の座標を補正するためのカッター奥側座標補正ADJを含んでいる。操作者は、例えばミシンモータ2の回転速度、布送り機構10の布送り速度(送りピッチ)、加工布の種類、及び縫製糸の種類等のうち少なくとも1つに応じて、操作パネル4を用いてカッター奥側座標補正ADJを適宜の値に設定することが可能である。なお、これ以外のパラメータについては前述の実施形態と同様である。
【0121】
なお、上記ではカッター51の切断奥側位置の座標を補正する場合を一例として示したが、例えば切断手前側位置(最も手前にある切断位置の手前側位置)の座標を補正するようにしてもよいし、切断奥側位置と切断手前側位置の両方の座標を補正可能としてもよい。
【0122】
次に、本変形例における制御装置5がカッターONフラグを設定する際に行う制御内容を説明する。なお、前述の図12及び図13に示す制御内容と異なる部分についてのみ、図22を用いて説明する。
【0123】
図22において、ステップS70及びステップS75は前述の図13と同様である。ステップS70において、切断回数が2回である場合(ステップS70で2回)、ステップS80Aに移り、縫製データP1にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の1回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[1]を、上記ymm[1]から縫製データP1のY座標であるY[1]と2.2(mm)を減じた値に、カッター奥側座標補正ADJを加えた値に設定する。その後、ステップS85に移る。ステップS85は前述の図13と同様である。
【0124】
一方、上記ステップS70において、切断回数が3回である場合(ステップS70で3回)、ステップS90Aに移り、縫製データP1にカッターONフラグをセットする。また、カッター51の1回目の切断に対応する移動位置であるカッター座標cmm[1]を、上記ymm[1]から縫製データP1のY座標であるY[1]と2.2(mm)を減じた値に、カッター奥側座標補正ADJを加えた値に設定する。その後のステップS93及びステップS95は前述の図13と同様である。
【0125】
以上のように、カッター奥側座標補正ADJはカッター51の切断奥側位置の座標を補正するためのパラメータであるから、縫製データP1についてのみそのカッター座標cmm[1]の値にカッター奥側座標補正ADJを加えるようになっている。
【0126】
上記において、ステップS80A及びステップS90Aにおいて、カッター座標cmm[1]の設定値である上記ymm[1]から縫製データP1のY座標であるY[1]と2.2(mm)を減じた値に、カッター奥側座標補正ADJを加える部分が、特許請求の範囲に記載の移動位置を補正する移動位置補正手段を構成する。
【0127】
図23は、本変形例において設定した縫製データP1,P2,P3及びカッター座標等の具体例を表す図である。この例では、各パラメータとして、千鳥縫い長さAを31(mm)、カッター寸法Sを20(mm)、前閂止め長さD1を1(mm)、奥閂止め長さD2を1(mm)、前カッタースペースYEを0.5(mm)、奥カッタースペースYSを0.5(mm)、カッター奥側座標補正ADJを0.3(mm)に設定している。その結果、切断回数は2回となり、各縫製データP1,P3のY座標であるY[1],Y[3]、対応する切断位置68の手前側位置のY座標であるymm[1],ymm[3]、カッター座標cmm[1],cmm[3]が図に示す値となっている。
【0128】
以上説明した変形例においては、パラメータとして複数回切断の場合におけるカッター51の切断奥側位置(最も奥側にある切断位置の奥側位置)の座標を補正するためのカッター奥側座標補正ADJを含むので、設定したカッター51の移動位置を、縫製速度や縫製条件に応じてさらに細かく調整することができる。この結果、さらに確実に高精度にボタン穴65を形成することができる。また一般にミシンモータ2の回転速度や布送り速度が速い場合には、カッター51が待機位置から下降して加工布を切断するまでのわずかな時間の間に加工布が移動し、本来ボタン穴65を形成したい位置とカッター51の下降位置とがずれる可能性がある。また加工布や縫製糸の種類によっては、摩擦等の影響により上記と同様のずれが発生する可能性がある。これに対し本変形例によれば、ミシンモータ回転速度、布送り速度、加工布・縫製糸種類等に対応してカッター奥側座標補正ADJを決定することで、上記のずれの影響を回避することができる。この結果、さらに確実に高精度にボタン穴65を形成することができる。
【符号の説明】
【0129】
5 制御装置(制御手段)
10 布送り機構(布送り手段)
30 縫製機構(縫製手段)
32 縫針
50 ボタン穴形成機構(ボタン穴形成手段)
51 カッター
53 第1カッター取付軸(第1取付部材)
60 穴かがり縫目
61 往千鳥部
62 復千鳥部
63 前閂止め部
64 奥閂止め部
65 ボタン穴
80 カッター上下動駆動機構
81 カッター駆動用ソレノイド(第1アクチュエータ)
83 第1軸保持部材(第1保持部材)
84 第1上下動リンク機構
90 カッター進退駆動機構
91 カッター進退用ステッピングモータ(第2アクチュエータ)
92 回転リンク機構
95 変換機構
153 第2カッター取付軸(第2取付部材)
180 カッター上下動駆動機構
181 カッター駆動用ソレノイド(第1アクチュエータ)
184 第2上下動リンク機構
190 カッター進退駆動機構
192 第2軸保持部材(第2保持部材)
193 進退リンク機構
M 穴かがりミシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を布送りする布送り手段と、
上下動する縫針を備え、加工布に穴かがり縫目を形成する縫製手段と、
加工布を切断してボタン穴を形成するカッターを有するボタン穴形成手段と、
前記カッターの長さ及び前記ボタン穴の長さに基づき、1回又は複数回の前記カッターの下降動作によって前記ボタン穴を形成するように、前記布送り手段、前記縫製手段、及び前記ボタン穴形成手段を制御する制御手段と
を備えた穴かがりミシンにおいて、
前記ボタン穴形成手段は、
前記カッターを、ミシンの機枠に対し、前記穴かがり縫目の長軸方向に沿って進退可能に設けた
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項2】
請求項1記載の穴かがりミシンにおいて、
前記ボタン穴形成手段は、
前記カッターを上下動させるための第1アクチュエータを備えたカッター上下動駆動機構と、
前記カッターを進退させるための第2アクチュエータを備えたカッター進退駆動機構と
をさらに備えることを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項3】
請求項2記載の穴かがりミシンにおいて、
前記カッター上下動駆動機構は、
前記カッターを取り付けるための第1取付部材を回動可能に保持するための第1保持部材と、
前記第1アクチュエータの駆動力により前記第1保持部材を上下動させる第1上下動リンク機構と
をさらに備え、
前記カッター進退駆動機構は、
前記第2アクチュエータの駆動力により前記第1取付部材を回動させる回動リンク機構と、
前記第1取付部材の回動動作を、前記カッターの前記穴かがり縫目の長軸方向に沿った進退動作に変換する変換機構と
をさらに備えることを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項4】
請求項2記載の穴かがりミシンにおいて、
前記カッター上下動駆動機構は、
前記カッターを取り付けるための第2取付部材を進退可能に作動連結し、前記第1アクチュエータの駆動力により前記第2取付部材を上下動させる第2上下動リンク機構をさらに備え、
前記カッター進退駆動機構は、
前記第2取付部材を上下動可能に保持する第2保持部材と、
前記第2アクチュエータの駆動力により前記第2保持部材を前記進退動作させる進退リンク機構と
をさらに備えることを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の穴かがりミシンにおいて、
前記縫製手段は、
前記加工布に対し、前閂止め部の一部、往千鳥部、奥閂止め部、復千鳥部、及び前記前閂止め部の順で前記穴かがり縫目を形成し、
前記制御手段は、
前記縫製手段が前記復千鳥部の縫製後の前記前閂止め部の縫製を行っているときに前記カッターを下降させ前記ボタン穴を形成するように、前記布送り手段、前記縫製手段、及び前記ボタン穴形成手段を制御する
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項6】
請求項5記載の穴かがりミシンにおいて、
前記制御手段は、
縫製パターンを規定する多数の針落ち位置の座標値を数値化し縫い順に並べた複数の縫製データを順次読み込み、当該複数の前記縫製データに基づき、対応する前記穴かがり縫目を形成するように前記布送り手段及び前記縫製手段を制御し、
前記復千鳥部の縫製後の前閂止め部の縫製における少なくとも1つの前記縫製データに対し、前記カッターを下降させるための下降識別子を設定する識別子設定手段を設けた
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項7】
請求項6記載の穴かがりミシンにおいて、
前記制御手段は、
読み込んだ前記縫製データが前記下降識別子を設定していた場合には、前記カッターを下降させるように前記カッター上下動駆動機構へ指示信号を出力する
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の穴かがりミシンにおいて、
前記下降識別子を設定した前記縫製データの前記針落ち位置の前記座標値を、前記カッターの移動位置に設定する移動位置設定手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記移動位置設定手段により設定された前記移動位置へ前記カッターを移動させるように、前記カッター進退駆動機構を制御する
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項9】
請求項8記載の穴かがりミシンにおいて、
前記移動位置設定手段により設定された前記移動位置を補正する移動位置補正手段をさらに備える
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項10】
請求項9記載の穴かがりミシンにおいて、
前記移動位置補正手段は、
ミシンモータの回転速度、前記布送り手段の布送り速度、前記布送り手段の布送りピッチ、前記加工布の種類、及び縫製糸の種類のうち少なくとも1つに応じて、前記移動位置の補正量を決定する
ことを特徴とする穴かがりミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−220929(P2010−220929A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73624(P2009−73624)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】