説明

穴の内部検査方法及びその装置

【課題】構造の継手部にある直径数ミリの穴内部全面を非破壊で直接横から正確に等距離から自動的または手動で検査をすることができる。
【解決手段】プローブ11を検査対象の穴5内部に挿入し、上方から光を当ててプローブ先端のプリズム26を介して穴側面を照らし、穴側面から反射した光を対物レンズ13で集めCCDカメラ15により記録し、プローブを回転させて穴内部全面について画像を記録し、画像処理装置16により検査対象の穴内部の画像を連続した一枚の画像に記録し、画像処理により損傷、亀裂、腐食等の有無や大きさや深さなどの程度およびその正確な位置を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴の内部検査、特に構造に使われる機械的継手部分のボルト、ファスナーおよびリベットを通すための穴等の穴内部を、破壊することなく検査を効率的にかつ正確に検査することができる穴の内部検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機等の構造の継手部にあるボルト、ファスナーおよびリベット結合用穴内部を整備段階で検査する場合、従来は穴内部を直接横から検査できるように、ボルト、ファスナーおよびリベットを取り除いた後に穴部を含めた板材を切断して検査すべき穴内部の一部を削除および損傷させてしまっており、かつ穴内部を全周に渡り検査できなかった(例えば、非特許文献1または2参照)。さらに、機構上の継手部にあるボルト、ファスナーおよびリベット結合用穴内部を製造時に検査する場合、上記のような破壊検査を適用することができないために、穴の上方または下方の位置より斜め方向から検査する必要があり、穴内部全面を正確に等距離から検査することが不可能で、目視による検査、画像による検査が困難であった。
【0003】
従来、比較的大きな穴が形成された非検査物(例えば内燃機関のシリンダライナやシリンダボア)の内面を検査する表面検査装置として、棒状の検査ロッドを穴に挿入し軸周りに回転させ、または光反射面のみを回転させ、穴の内面に光を当て帰ってきた光の強度を使い欠陥または異物を検出できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
これらの検査装置では、中空の検査ロッド内側に投光用光ファイバーと受光用光ファイバーを通しかつ光反射面を回転させる機構を検査ロッド先端に有しているために構造が複雑になり径が比較的太くなるために、直径数ミリの構造継手用穴には適用できない。また、内周面から反射される光の強度のみを使っているために、検査表面にある損傷や腐食の色調や損傷の深さなどの3次元計測に必要な画像情報が得られない。さらに、軸周りに光反射面を回転させているものの、その角度の絶対値を制御しておらず、欠陥や異物の有無が分かってもその正確な位置が記録できない。さらに、検査ロッドの穴軸に対して垂直方向への移動機能および制御機能を有していないために、多数の穴の自動内面検査ができないという欠点がある。
【0005】
【非特許文献1】Piascik, R. S., and Willard, S. A., “The Characterization of Fatigue Damage in the Fuselage Riveted Lap Splice Joint”, NASA/TP-97-206257, November 1997, p47, Fig.5.1
【非特許文献2】James L. Rudd, “Applications of the Equivalent Initial Quality Method”, Technical Memorandum AFFDL-TM-77-58-FBE, July 1977, p7, Fig.3
【特許文献1】特開平11−281582号公報
【特許文献2】特開2007−315805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、構造の継手部にあるボルト、ファスナーおよびリベット結合用穴のように直径数ミリの穴内部を製造段階および整備段階で検査する場合に、非破壊で穴内部全面を直接横から且つ等距離から自動的または手動で正確に検査をすることができる穴の内部検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に係る発明の穴の内面検査方法は、部材に形成された穴の内周面を非破壊で等距離からの検査を可能とする穴の内部検査方法であって、検査対象穴に入れることのできる鏡若しくはプリズムを角度を持って先端に有したプローブを前記検査対象穴の中心軸線上に挿入し、該プローブと前記検査対象穴を挟んで反対側に配置した対物レンズ側から前記鏡若しくはプリズムに光を当ててこの光がプローブ先端の鏡若しくはプリズムに反射して検査対象穴の内周面に対して直角に照らし、穴内周面から反射した光を前記鏡若しくはプリズムにより対物レンズに反射させて撮像手段により記録することを特徴とするものである。
本発明によれば、プローブは単に先端に鏡若しくはプリズムのみを有するものであるから、構成が簡単で且つ小型に形成できるから、小さな穴でも挿入してその内周面を正確に検査することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の穴の内部検査方法において、前記プローブを回転させることにより、穴内周面全面について等距離から複数画像により記録することを特徴とするものである。それにより、穴内周面を均一の精度で正確に検査できる。
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の穴の内部検査方法において、前記撮像手段で記録した画像を画像処理装置により損傷、亀裂、腐食等の表面状況の有無や大きさや深さなどの程度およびその正確な位置を判別することを特徴とするものである。それにより、損傷等の原因分析の解析向上に寄与することができる。
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構造継手用穴の内部検査方法において、前記撮像手段で穴内周面全面について記録した画像を画像処理装置により、検査対象の穴内部の画像を連続した一枚の画像に記録することを特徴とするものである。それにより、穴内周面全体を均一の精度でかつ瞬時に容易に観察できる。
【0009】
また、上記穴の内部検査方法を実施するための請求項5に係る本発明の穴の内部検査装置は、部材に形成された検査対象穴に入れることのできる鏡若しくはプリズムを角度を持って先端に有したプローブと、穴内部の状況を画像により記録することのできる対物レンズと撮像手段、取り入れた画像を画像処理する画像処理装置、前記プローブを前記検査対象穴に対して3軸方向の変位機構とプローブ軸回りの回転機構を有するプローブ駆動機構、前記対物レンズを前記検査対象穴に対して3軸方向の変位機構を有する対物レンズ駆動機構を備えたことを特徴とするものである。前記プローブ駆動機構及び前記対物レンズ駆動機構は、手動または自動の何れの駆動制御機構を採用してもよい。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の穴の内部検査装置において、前記プローブ又は前記対物レンズを3軸方向に位置決めするための左右位置決め用光源と前後位置決め用光源を備えたことを特徴とするものである。それにより、プローブ及び対物レンズを検査対象穴の中心位置への自動位置決めを可能とする。
また、請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の穴の内部検査装置において、前記対物レンズを検査対象の穴の上で、前記プローブと同期させてまたは非同期で回転させることのできる対物レンズ回転手段を有することを特徴とするものである。それにより、対物レンズに対する反射光の入射条件を一定に保つことができ、より鮮明な画像の取得を可能とする。
さらに、請求項8に係る発明は、請求項5〜7何れかに記載の穴の内部検査装置において、検査対象穴のタイプの違いを自動で認識し、穴のタイプに対応したプリズムを有するプローブを自動的に選択するプローブ選択機構を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明により、構造の継手部にあるボルト、ファスナーおよびリベット結合用等の直径数ミリの穴内部を整備段階で検査する場合、切断により検査すべき穴内部の一部を削除および損傷させることなく、かつ穴内部を連続的に且つ精密に検査できるようになり検査の品質向上が期待でき、また、これらの装置を自動化することにより多数の穴の検査を可能としかつ検査時間の短縮ができる。さらに、構造の継手部にあるボルト、ファスナーおよびリベット結合用穴内部を製造時に検査する場合、穴内部全面を正確に等距離から検査することが可能となり、製造時の継手品質向上に寄与することができ、また、これらの装置を自動化することにより検査時間の短縮ができる。穴内部を整備時に検査する場合、画像処理により損傷、亀裂、腐食等の表面状況の有無や大きさや深さなどの程度およびその正確な位置を検査および記録することが可能となり、整備精度の向上と検査時間の短縮ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本実施形態に係る穴の内部検査方法及び装置は、非破壊で穴内部全面を直接横から正確に等距離からの検査を可能とするために、検査対象となる直系数ミリの穴に入れることのできる鏡若しくはプリズムを角度を持って先端に有したプローブと、そのプローブと検査対象の穴との相対位置を調整する装置と、穴内部の状況を画像により記録することのできる対物レンズと撮像手段、検査対象の穴と対物レンズの相対位置を調整する装置、および取り入れた画像を画像処理する装置からなるものであり、プローブを検査対象の穴内部に挿入し、上方から光を当ててこの光がプローブ先端の鏡若しくはプリズムに反射して穴側面を照らし、穴側面から反射した光を前記鏡若しくはプリズムにより上方にあるレンズに反射させてCCDカメラにより記録し、さらにプローブを回転させることにより穴内部全面について画像を記録し、画像処理装置により検査対象の穴内部の画像を連続した一枚の画像に記録し、かつその記録された画像について画像処理により損傷、亀裂、腐食等の表面状況の有無や大きさや深さなどの程度およびその正確な位置を検査することを特徴とするものである。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る構造継手用穴の内部検査装置の概略図であり、図2はその要部拡大図である。本実施形態に係る構造継手用穴の内部検査装置は、構造組立等における部材と部材との継手部分のボルト、ファスナー及びリベットを通すための穴内部表面を破壊することなく検査するための装置であって、穴内部の内周面全体を等距離から光学的に検査する装置である。継手部分の穴の形状としては、一般に図3に示すように、穴内面が単純に円筒面となっている平穴2、穴の外周部が全体に内側に傾斜して穴内周面がテーパー状に傾斜して拡がっている皿出し穴3、穴の上部が皿状に傾斜している皿取り穴4の3種類があり、これらが本実施形態における検査対象穴5となっている。即ち、本実施形態の穴の内部検査装置は、その何れの形状の穴の検査にも容易に適用できるものである。
【0014】
本実施形態の穴の内部検査装置1は、その概略を図1に示すように、前記プローブ11と、該プローブを検査対象の穴に対して位置を調整するプローブ駆動装置12と、穴内部の状況を画像により記録することのできる対物レンズ13と撮像手段としてのCCD(電荷結合素子)カメラ15、対物レンズを検査対象の穴に対して位置を調整する対物レンズ駆動装置14、および取り入れた画像を画像処理する画像処理装置16とからなり、それらが検査台10のテーブル20を挟んで上下に配置されている。画像処理装置16は、本実施形態では後述するプローブ駆動装置12及び対物レンズ駆動装置14の制御手段も兼ねているコンピュータによって構成されている。
【0015】
検査台10は、テーブル20の中央に検査対象穴5の内径よりも充分大きな内径を有する透過穴21が形成され、検査対象物6を透過穴21の穴の位置に検査対象穴5を合わせて載置する。プローブ11は、プローブ軸25の先端部に所定角度に傾斜した反射鏡又はプリズム26を有し、上面より対物レンズ13を介して照射される照明光を該照明光が穴内周面に直角に照射するように光路を屈曲させると共に、穴内周の画像を対物レンズに対して垂直に反射させて対物レンズで集めて、撮像手段であるCCDカメラで穴内周面をその中心から等距離で撮影を可能にするものである。反射鏡又はプリズム26は、その反射面がプローブの回転軸に対して角度を持ってプローブ軸の先端に取り付けられており、その角度は検査対象穴5のタイプ(図3に示す平穴2、皿出し穴3、皿取り穴4が代表的タイプである。)によって使い分ける。
【0016】
プローブ駆動装置12は、プローブ11を上下(Z軸)、前後(Y軸)、左右(X軸)の3軸方向への並進駆動及びプローブ軸(Z軸)回り回転の駆動機構からなっている。該駆動機構は、X−Y軸ステージとZ軸ステージを有する3軸駆動機構とZ軸回りの回転駆動機構の組み合わせからなる手動又は自動の公知の位置決め機構を適宜採用することができ、その構成は特に限定されるものではない。自動位置決め駆動機構を採用する場合は、駆動源としてそれぞれの軸方向に駆動制御するためのアクチュエータとしてサーボモータを採用するのが望ましい。そして、テーブル20に図1に示すように左右位置決め用光源17と前後位置決め用光源18を光線が直交するように設け、後述するように自動的にプローブ11を穴の中心に位置決めを可能としている。
【0017】
同様に対物レンズ側もプローブ駆動装置12と同様に、X−Y軸ステージとZ軸ステージを有する3軸駆動機構とZ軸回りの回転駆動機構の組み合わせからなる対物レンズ駆動装置14を採用することにより、穴のタイプによって対物レンズ13のZ軸方向の調整、及び穴の中心位置への位置決め、および撮影時にプローブの回転と同期して対物レンズを回転させることができ、より鮮明な画像を得ることが可能となる。なお、光源は対物レンズ側に設置してあり、対物レンズ13と一体に移動する。
【0018】
図4及び図5は対物レンズの左右方向(X軸方向)の自動位置決め方法の一例を示している。図は検査対象物6の穴が平穴の場合を示しているが、他のタイプの穴の場合も同様にして行うことができる。
例えば図4に示すように、検査前に対物レンズ13を検査対象穴5と大まかな位置で合わせておき、対物レンズ側から光を当てながら対物レンズ13のみを自動的に左から右(若しくは右から左)へ移動させることによる対物レンズ13で受ける光の強さは、図5(b)のグラフで示すように、穴のない位置では反射光が多くて強く、次第に穴にかかることによって反射光が少なくなり弱くなる。ここで、光の強さに対しある閾値以下のときの対物レンズ位置が穴の開いた部分の上にあると判断できるので、図5(b)に示す位置XaとXbの中間点Xcenterを左右方向の穴位置と判断する。該位置のX座標点をコンピュータ16に記憶しておく。同じように、対物レンズ13のみを自動的に前から後(若しくは後から前)へ移動させることにより、Y軸方向の中間点Ycenterを得、同様にコンピユータにY座標点を記憶することにより、中心座標点が求まり、X軸駆動アクチュエータ及びY軸駆動アクチュエータが駆動して、対物レンズを穴の中心位置に位置決めを行う。また、Z軸方向は検査対象物のタイプに応じて予め設定しておく。
【0019】
また、プローブの位置決め方法を図6、7に示す。
検査前に予め上記のように対物レンズ13と検査対象の穴中心位置を合わせておき、プローブ11が検査対象物6を置いたテーブル20の下部にある状態でプローブ11と対物レンズ13を同時に大まかな位置まで移動させて置く。その後、図7(a)に示すように左右方向位置決め用光源17の光を使い、自動的にプローブ11と対物レンズ13を同時に穴の無い部分から穴の部分を含めて左から右(若しくは右から左)へ移動させることにより、対物レンズにより受ける光の強さは、光線と穴の位置関係から図7(b)に示すようになる。ここで、光の強さに対しある閾値以上のときのプローブ位置が穴の開いた部分の下にあると判断できるので、図7(b)の位置XaとXbの中間点Xcenterを左右方向の穴位置と判断する。この場合位置XaとXbは穴の縁を示さなくてもよく、また、プローブの移動方向は穴中心を通っていなくてもXcenterは左右方向の穴中心位置を示している。同じように、前後方向位置決め用光源18の光を使い自動的に穴の無い部分から穴の部分を含めて前から後(若しくは後から前)へプローブ11と対物レンズ13を同時に移動させることにより前後方向の中間点Ycenterを得る。こうすることにより穴中心位置XcenterとYcenterの座標位置情報に基づいて、プローブ駆動装置を駆動制御することにより自動的にプローブ11を穴中心位置に位置決め調整および制御することができる。
【0020】
本発明の穴の内部検査装置は以上のように構成され、部材の穴の内部を検査するには、検査対象穴のタイプにより予めプロープ軸25に設置する鏡又はプリズム26の角度を設定し、検査対象穴5がテーブル20の透過穴21の上方に位置するように手動又はマニピュレータ等により自動的に検査対象物6をテーブル20上に供給し、その後対物レンズ駆動装置14及びプローブ駆動装置12が駆動されて前記の方法により対物レンズ13の位置決め、次いでプローブ11の位置決めを行う。この状態でプローブ駆動装置のX軸駆動アクチュエータが作動してプローブを反射鏡又はプリズムが正確に被検査対象穴の内周面に直角に光照射できる位置まで上昇駆動させる。
【0021】
その際、例えば図3に示すように、検査対象物の穴のタイプに対応したプリズムを有するプローブ11を用意し、検査対象となる構造継手用穴のタイプを自動的に認識し、認識したタイプに対応したプローブを自動的に選択し準備する機能を備えることもできる。構造継手用穴のタイプを自動的に認識する方法として、例えば図8に示すように特定の傾斜角度(図8では45゜)を有する対物レンズ13およびプローブ11の軸心を検査対象穴の中心に合わせた状態において、プローブ11を検査対象穴の下から上へ(または上から下へ)移動させたときに対物レンズ13により受ける光の強さを測定すると、図9(b)のようにそれぞれの穴のタイプにより光の強さを示すグラフ上の曲線が変わるので、予め穴のタイプごとの光の強さを示すグラフ上の曲線を求めておき、検査対象穴を計測する直前に計測した光の強さを示すグラフ上の曲線の形状と比較することにより穴のタイプを自動的に認識することができる。また穴のタイプに対応したプリズムを有するプローブを自動的に選択する機能を付加することもできる。特定のプローブを自動的に選択し装着できる装置、例えば、NCマシンのヘッド交換のように予め複数の異なるプローブを装着したプローブ交換装置を備え、検査対象穴のタイプが判明すると、認識した穴のタイプに合わせて図3に示すような適切な傾斜角度を持ったプリズムまたは鏡をもったプローブを自動的に装着する。なお、場合によっては対物レンズとプローブの位置関係を自動的に上下逆にする機能を備えることもできる。
【0022】
このようにして検査の準備が完了すると、プローブ駆動装置12により、プローブ11を検査対象の穴内部に挿入し、上方から光を当ててこの光がプローブ先端の鏡若しくはプリズム26に反射して穴側面を照らし、穴側面から反射した光を前記鏡若しくはプリズム26により上方にある対物レンズ13に反射させてCCDカメラ15により記録し、さらにプローブ11を順次所定角度づつ回転させて撮影することにより360゜穴内部全面について画像を記録する。そして得られた複数枚ごとの画像データを用いて、それらを画像処理により順番につなぎあわせることにより、パノラマ写真のように検査対象穴内部の表面状態を一枚の画像にし記録する。そして、その記録された穴内部の損傷、亀裂、腐食等の表面状態を画像の色、輝度、焦点距離データから、表面状況の分類、損傷や亀裂及び腐食等の大きさ面積および深さの計測、状況の程度区別を行ない、かつその正確な位置を記録する。
【0023】
さらに、上記の検査において、対物レンズ13を検査対象の穴の上で、前記プローブと同期させてまたは非同期で回転させることによってより正確な画像を得ることができる。例えば対物レンズ13をプローブ11の回転角度と全く等しく回転させるか、あるいはプローブの回転角度とは関係なく(即ち非同期で)回転させる。このとき、プローブの回転と非同期させて対物レンズを回転させて画像を記録した場合には各画像で検査対象穴の表面画像の角度が画像のフレームに対して任意になってしまうが、プローブの回転角度と同期させて対物レンズ13を回転させて画像を記録すると全ての画像が画像フレームに対し同じ位置および角度で記録でき、より鮮明な画像を得ることができる。図10は上記実施形態の装置により構造継手用穴の内面を撮影した写真であり、穴内周面の状態が鮮明に写し出されている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の穴の内部検査及びその装置は、継手部分のボルト、ファスナーおよびリベットを通すための穴等の穴内部を、直径の小さい穴でも破壊することなく検査対象穴の全周面の状態を内部から等距離で撮影することができ、穴内面を効率的にかつ精密に検査することができ、特に各種構造の継手穴等の検査に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る穴の内部検査装置の概略図である。
【図2】その要部拡大図である。
【図3】検査対象穴のタイプを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)はそのA−A断面におけるプローブとの位置関係を示す説明図である。
【図4】対物レンズを位置決めする説明図である。
【図5】(a)はそのX軸方向の位置決め方法説明図、(b)は対物レンズの移動と対物レンズで受ける光の強さとの関係を示す線図である。
【図6】プローブを位置決めする説明図である。
【図7】(a)はそのX軸方向の位置決め方法説明図、(b)はプローブの移動と対物レンズで受ける光の強さとの関係を示す線図である。
【図8】検査対象物の穴のタイプを自動認識方法の説明図である。
【図9】(a)は皿出し穴の場合の認識方法の説明図、(b)はプローブの中心の上下位置と対物レンズで受ける光の強さとの関係を示す線図である。
【図10】本実施形態の装置で検査した検査対象穴の内周面写真である。
【符号の説明】
【0026】
1 穴の内部検査装置 2 平穴
3 皿出し穴 4 皿取り穴
6 検査対象物 10 検査台
11 プローブ 12 プローブ駆動装置
13 対物レンズ 14 対物レンズ駆動装置
15 CCDカメラ(撮像手段) 16 画像処理装置
17 左右位置決め用光源 18 前後位置決め用光源
20 テーブル 21 透過穴
25 プローブ軸 26 プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に形成された穴の内周面を非破壊で等距離からの検査を可能とする穴の内部検査方法であって、検査対象穴に入れることのできる鏡若しくはプリズムを角度を持って先端に有したプローブを前記検査対象穴の中心軸線上に挿入し、該プローブと前記検査対象穴を挟んで反対側に配置した対物レンズ側から前記鏡若しくはプリズムに光を当ててこの光がプローブ先端の鏡若しくはプリズムに反射して検査対象穴の内周面に対して直角に照らし、穴内周面から反射した光を前記鏡若しくはプリズムにより対物レンズに反射させて撮像手段により記録することを特徴とする穴の内部検査方法。
【請求項2】
前記プローブを回転させることにより、穴内周面全面を等距離から複数画像により記録することを特徴とする請求項1に記載の穴の内部検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段で記録した画像を画像処理装置により損傷、亀裂、腐食等の表面状況の有無や大きさや深さなどの程度およびその正確な位置を判別することを特徴とする請求項1又は2に記載の穴の内部検査方法。
【請求項4】
前記撮像手段で穴内周面全面について記録した画像を画像処理装置により、検査対象の穴内部の画像を連続した一枚の画像に記録することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の構造継手用穴の内部検査方法。
【請求項5】
部材に形成された検査対象穴に入れることのできる鏡若しくはプリズムを角度を持って先端に有したプローブと、穴内部の状況を画像により記録することのできる対物レンズと撮像手段、取り入れた画像を画像処理する画像処理装置、前記プローブを前記検査対象穴に対して3軸方向の変位機構とプローブ軸回りの回転機構を有するプローブ駆動機構、前記対物レンズを前記検査対象穴に対して3軸方向の変位機構を有する対物レンズ駆動機構を備えたことを特徴とする穴の内部検査装置。
【請求項6】
前記プローブ又は前記対物レンズを3軸方向に位置決めするための左右位置決め用光源と前後位置決め用光源を備えたことを特徴とする請求項5に記載の穴の内部検査装置。
【請求項7】
前記対物レンズ駆動機構は、前記対物レンズを検査対象の穴の上で、前記プローブと同期させてまたは非同期で回転させることのできる対物レンズ回転手段を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の穴の内部検査装置。
【請求項8】
検査対象穴のタイプの違いを自動で認識し、穴のタイプに対応した鏡若しくはプリズムを有するプローブを自動的に選択するプローブ選択機構を有することを特徴とする請求項5〜7何れかに記載の穴の内部検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−257979(P2009−257979A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108500(P2008−108500)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】