説明

空中散布装置

【課題】薬液や液状の肥料を広範囲に亘ってミスト状に噴霧して、作業性を大幅に向上させた空中散布装置を提供するものである。
【解決手段】上下両端を開口した筒状ケース2の内側に電動ファン3を取付けた送風機1を、台車フレーム5に上下方向に回動自在に支持し、この送風機1の開口した下端開口部を空気吸込口13とし、上端開口部を空気吹出口14とし、水タンク8に高圧噴射ポンプ9を接続し、この高圧噴射ポンプ9にホース22を介して接続した第1の噴霧ノズル20と、農薬タンク10に薬液噴射ポンプ11を接続し、この薬液噴射ポンプ11にホース22を介して接続した第2の噴霧ノズル21とを送風機1の空気吹出口14に、吹出方向に沿って取付けて、液状の農薬をミスト状に空中に噴霧するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い果樹園や水田、畑などを広範囲に亘って農薬や肥料を散布したり、人の集まる場所にインフルエンザウイルスの殺菌剤を空中散布する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹園や水田、畑など広い農地に農薬を散布する場合、従来はエンジン式の動力噴霧器を肩に背負って散布している。しかしながら、これらエンジン式の動力噴霧器は重く、ノズルを手で持って左右に振りながら広い農地全体に亘って散布するのは重労働で、作業時間がかかる問題があった。このためノズルを自動的に左右に振って農薬を散布する動力噴霧器も開発されている(特許文献1)。またエンジン式の動力噴霧器を搭載した自走式のものも開発されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、これら従来の動力噴霧器は、エンジンの動力により噴射ポンプを駆動させて噴霧する方式であるのでその散布範囲は狭く、広い果樹園や水田、畑などを散布するには作業性が悪い問題があった。またインフルエンザが流行している時期に、駅や体育館など多くの人の集まる場所を広範囲に殺菌する装置はなかった
【特許文献1】特開2008−125514
【特許文献2】特開2002−136575
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を改善し、液状の薬液や肥料を広範囲に亘ってミスト状に噴霧して、作業性を大幅に向上させた空中散布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の空中散布装置は、上下両端を開口した筒状ケースの内側に電動ファンを取付けた送風機を、フレームに上下方向に回動自在に支持し、この送風機の開口した下端開口部を空気吸込口とし、上端開口部を空気吹出口とし、薬液または液状の肥料のタンクに噴射ポンプを接続し、この噴射ポンプにホースを介して接続した噴霧ノズルを前記送風機の空気吹出口に、吹出方向に沿って取付けて、薬液または液状の肥料をミスト状に空中に噴霧するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2記載の空中散布装置は、請求項1において、更に送風機の内側に、表面を銀または銅もしくは亜鉛で形成した金網と、放熱フィン、およびこれを加熱するヒーターを設け、加熱により発生した前記金属のイオンと高温加熱により、噴射する空気を殺菌するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3記載の空中散布装置は、請求項1または2において、更に送風機の空気吸込口に近接して、紫外線ランプを取付けて、噴射する空気を殺菌するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4記載の空中散布装置は、請求項1または2において、更にフレームに電撃殺虫器を取付けて、空中の虫を殺虫するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の空中散布装置によれば、噴射ポンプと送風機とを組合せて、送風機から吹き出された空気により、噴射ポンプに接続した噴霧ノズルから噴霧された薬液や肥料を、ミスト状にして噴霧することにより広範囲に散布して作業性を向上させることができる。
【0010】
本発明に係る請求項2記載の空中散布装置によれば、表面を銀または銅もしくは亜鉛で形成した金網と、放熱フィン、およびこれを加熱するヒーターを設け、これらを高温に加熱すると、ここから金属イオンが発生し、ここを通過する空気に含まれる細菌類が金属イオンと高温加熱により殺菌され、殺菌された空気が送風機の空気吹出口から噴出して、水と薬液や肥料をミストにして噴射するので、更に殺虫効果や散布効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る請求項3記載の空中散布装置によれば、送風機の空気吸込口に近接して、紫外線ランプを取付けて、噴射する空気を殺菌することにより更に殺菌効果を高めることができる。
【0012】
本発明に係る請求項4記載の空中散布装置によれば、フレームに電撃殺虫器を取付けて、夜間点灯させることにより、近傍を飛んでいる虫が引き寄せられて、高電圧に触れて殺虫することができ、虫による作物の被害を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図4を参照して詳細に説明する。図において1は送風機で、これは上下が開口した円筒状のケース2の内側に電動ファン3が設けられて構成されている。また送風機1は、車輪4を設けた台車フレーム5に、支持軸6で上下に回動自在に支持されている。また台車フレーム5には水タンク8と、これにホース22を介して接続した高圧噴射ポンプ9と、農薬タンク10と、これにホース22を介して接続した薬液噴射ポンプ11とが設けられている。更に送風機1の開口した下端開口部を空気吸込口13とし、上端開口部を空気吹出口14とし、空気吸込口13の近傍に紫外線ランプ15と、この上方に電撃殺虫器16が設けられている。なお図2に示すように、農薬タンク10の横には三相のエンジン発電機18が取付けられている。
【0014】
また前記送風機1の空気吹出口14の横には、図1に示すように第1の噴霧ノズル20と第2の噴霧ノズル21が空気吹出口14の、吹出方向に沿って取付けられている。第1の噴霧ノズル20はホース22を介して、前記高圧噴射ポンプ9に接続され、この高圧噴射ポンプ9はホース22を介して水タンク8に接続され、水タンク8内の水を第1の噴霧ノズル20から前方に向けて噴霧するようになっている。
【0015】
また第2の噴霧ノズル21はホース22を介して、前記薬液噴射ポンプ11に接続され、この薬液噴射ポンプ11はホース22を介して農薬タンク10に接続され、農薬タンク10内の液状の農薬23を噴霧するようになっている。
【0016】
また送風機1の中間部は図2に示すように、支持軸6の端部に連結されたハンドル24が、複数の孔を形成したストッパー25に嵌合して送風機1の傾動角度を任意の角度に固定するようになっている。
【0017】
更に送風機1の内側は、図3および図4に示すように空気吸込口13側に、複数本の電熱ヒーター26が平行に配置され、この表面は銀メッキされている。またこの上方に近接して亜鉛メッキした金網27が取付けられ、金網27を電熱ヒーター26で加熱するようになっている。
【0018】
またこの金網27の上方に近接して、複数枚の銅板28をラジエターのフィン状に平行に配置し、ここを横方向に貫通して電熱ヒーター26が取付けられている。更に空気吹出口14の内側にも同様に、複数枚の銅板28をラジエターのフィン状に平行に配置し、ここを横方向に貫通して電熱ヒーター26が取付けられている。
【0019】
上記構成の空中散布装置は、図示しないトラクターなどで牽引して、果樹園などを走行する。この場合、予め電熱ヒーター26に通電して、金網27や銅板28を80℃程度に加熱しておく。次に電動ファン3と高圧噴射ポンプ9、薬液噴射ポンプ11を駆動させる。電動ファン3を回転させると、外気が空気吸込口13から吸引されて上部の空気吹出口14から排出される。
【0020】
一方、高圧噴射ポンプ9が駆動すると、水タンク8に貯められた水道水が吸引され、圧力を加えられて空気吹出口14の横に取付けた第1の噴霧ノズル20から噴霧される。また同時に、薬液噴射ポンプ11が駆動して、農薬タンク10に貯められた液状の農薬23が圧力を加えられて空気吹出口14の横に取付けた第2の噴霧ノズル21から噴霧される。この結果、第1の噴霧ノズル20から噴霧された水と第2の噴霧ノズル21から噴霧された液状の農薬23が混ざった状態で、送風機1からの吹き出される強力な風により農薬のミスト30となって遠くまで散布することができる。
【0021】
つまり、高圧噴射ポンプ9と薬液噴射ポンプ11だけを駆動させて噴射しても10m程度の距離しか散布できないが、送風機1から排出される強力な風と共にミスト状に噴霧することにより30m程度の距離まで広い範囲に亘って散布することができる。
【0022】
また送風機1の空気吸込口13の近傍には紫外線ランプ15が設けられているので、ここを通過する空気に含まれる細菌が殺菌されて、空気吸込口13に供給される。更に送風機1の内側には、図3に示すように空気吸込口13側に、表面が銀メッキされた複数本の電熱ヒーター26と、これにより加熱された亜鉛メッキ金網27、電熱ヒーター26により加熱されたラジエターのフィン状の銅板28が設けられているので、高温に加熱されるとここから金属イオンが発生し、ここを通過する空気に含まれる細菌類が金属イオンにより殺菌される。このように殺菌された空気が送風機1の空気吹出口14から噴出して、水と液状の農薬23をミスト30にして噴射するので、更に殺虫効果を向上させることができる。
【0023】
なお台車フレーム5に取付けた電撃殺虫器16は、夜間点灯させると、近傍を飛んでいる虫が引き寄せられて、高電圧に触れて殺虫することができ、虫による作物の被害を少なくすることができる。
【0024】
なお農薬23の濃度を調整する場合には、薬液噴射ポンプ11や高圧噴射ポンプ9の出力を調整することにより容易に行なうことができる。
【0025】
また農薬23の代わりに、液状の肥料を広範囲に散布することもできる。更に夏季に気温が上昇して、作物が弱ってくるような場合には、電熱ヒーター26と薬液噴射ポンプ11を停止し、高圧噴射ポンプ9と電動ファン3を駆動させて水タンク8内の水だけをミスト状に噴射することができる。
【0026】
このように水だけをミスト状に噴霧することにより長い距離まで噴霧することができ、また空中に噴霧されたミストは、水蒸気となって気化する時の気化熱によって、空気中の熱が奪われ気温が低下し、作物の高温障害を防止することもできる。
【0027】
なお上記説明では、水を噴霧する第1の噴霧ノズル20と農薬23を噴霧する第2の噴霧ノズル21の2本を設けた場合について示したが、一定の濃度に薄めた農薬をタンクに入れて、これを噴霧する場合には1本の噴霧ノズルだけの構成でも良い。また台車フレーム5にターンテーブルを取付ければ、送風機1を水平方向に回転させることもできる。また送風機1のケースは上下が開口した円筒状に限らず角筒状でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
なお上記説明では農薬を散布する場合について示したが、液状の肥料を広い農地に散布する場合にも適用することができる。また薬液としては農薬に限らず殺菌剤を散布しても良い。インフルエンザが大流行している時に、人が多く集まる駅や体育館、室内競技場などで、空中にインフルエンザウイルスの殺菌剤を広範囲に亘って散布することにより流行の拡大を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の一形態による空中散布装置の正面図である。
【図2】図1に示す空中散布装置の背面図である。
【図3】図1に示す空中散布装置の送風機を拡大して示す断面図である。
【図4】送風機の空気吸込口を示す底面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 送風機
2 円筒状のケース
3 電動ファン
4 車輪
5 台車フレーム
6 支持軸
8 水タンク
9 高圧噴射ポンプ
10 農薬タンク
11 薬液噴射ポンプ
13 空気吸込口
14 空気吹出口
15 紫外線ランプ
16 電撃殺虫器
18 エンジン発電機
20 第1の噴霧ノズル
21 第2の噴霧ノズル
22 ホース
23 農薬
24 ハンドル
25 ストッパー
26 電熱ヒーター
27 金網
28 銅板
30 ミスト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両端を開口した筒状ケースの内側に電動ファンを取付けた送風機を、フレームに上下方向に回動自在に支持し、この送風機の開口した下端開口部を空気吸込口とし、上端開口部を空気吹出口とし、薬液または液状の肥料のタンクに噴射ポンプを接続し、この噴射ポンプにホースを介して接続した噴霧ノズルを前記送風機の空気吹出口に、吹出方向に沿って取付けて、薬液または液状の肥料をミスト状に空中に噴霧するようにしたことを特徴とする空中散布装置。
【請求項2】
請求項1記載の空中散布装置において、更に送風機の内側に、表面を銀または銅もしくは亜鉛で形成した金網と、放熱フィン、およびこれを加熱するヒーターを設け、加熱により発生した前記金属のイオンと高温加熱により、噴射する空気を殺菌するようにしたことを特徴とする空中散布装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の空中散布装置において、更に送風機の空気吸込口に近接して、紫外線ランプを取付けて、噴射する空気を殺菌するようにしたことを特徴とする空中散布装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の空中散布装置において、更にフレームに電撃殺虫器を取付けて、空中の虫を殺虫するようにしたことを特徴とする空中散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−135812(P2011−135812A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297632(P2009−297632)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(507271282)
【出願人】(507271293)
【出願人】(507271307)
【出願人】(507271329)
【Fターム(参考)】