説明

空気入りタイヤ

【課題】質量の増加を抑えつつ、乗り心地を損なうことなく操縦安定性の向上が達成された空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤ2は、トレッド4と、それぞれがトレッド4の端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール6と、それぞれがサイドウォール6よりも半径方向略内側に位置する一対のビード8と、一方のビード8と他方のビード8との間に架け渡されたカーカス10と、カーカス10の内側に位置するインナーライナー14と、カーカス10とインナーライナー14との間に位置する補強層16とを備える。補強層16は、短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、フォーマーのドラム上で、トレッド、サイドウォール等の部材を多数組み合わせて、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。このローカバーの成形工程では、ドラムが拡径され、このローカバーの形状が整えられる。
【0003】
この製造方法では、ローカバーはモールドに投入される。このとき、ブラダーはローカバーの内側に位置している。ブラダーにガスが充填されると、ブラダーが膨張する。これにより、ローカバーが変形する。モールドが締められ、ブラダーの内圧が高められる。ローカバーは、モールドとブラダーとに挟まれ加圧される。ローカバーは、ブラダー及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0004】
タイヤの性能は、これを構成する部材の特性を調整することにより制御される。操縦安定性の向上の観点から、タイヤの構成部材として、短繊維を含む部材が採用されることがある。
【0005】
上記短繊維を含む部材の採用例が、特開2003−146028公報に開示されている。この公報に記載のタイヤでは、短繊維を含む部材として短繊維補強ゴム層が用いられている。このタイヤでは、短繊維補強ゴム層はビードのエイペックスの軸方向外側に設けられている。
【0006】
図11には、従来タイヤ62の一例としてランフラットタイヤが示されている。このタイヤ62は、トレッド64、ウィング66、サイドウォール68、クリンチ70、ビード72、カーカス74、荷重支持層76、ベルト78、バンド80、インナーライナー82及びチェーファー84を備えている。
【0007】
このタイヤ62では、ビード72はコア86と、このコア86から半径方向外向きに延びるエイペックス88とを備えている。コア86はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤーを含む。エイペックス88は、半径方向外向きに先細りなテーパ状であり、高硬度な架橋ゴムからなる。カーカス74をなすカーカスプライ90は、両側のビード72の間に架け渡されており、トレッド64及びサイドウォール68の内側に沿っている。カーカスプライ90は、コア86の周りを、軸方向内側から外側に向かって巻かれている。カーカスプライ90の端は、トレッド64の近傍にまで至っている。このカーカス74の構造は、超ハイターンアップ構造と称される。荷重支持層76は、サイドウォール68の軸方向内側に位置している。荷重支持層76は、三日月に類似の形状である。荷重支持層76は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0008】
このタイヤ62では、パンクによってその内圧が低下した場合、荷重支持層76が車重を支える。この荷重支持層76により、内圧が低い場合でも、タイヤ62はある程度の距離を走行しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−146028公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ベルトに大きな外径を有するコードを用いて、タイヤの剛性が調整されることがある。このベルトは、高い剛性を有する。このベルトは、操縦安定性に寄与しうる。しかし、このベルトは乗り心地に影響する。しかも、大きな外径を有するコードは質量の増加を招来する。
【0011】
ベルトに含まれるコードの密度を高めて、タイヤの剛性が調整されることがある。このベルトは、高い剛性を有する。このベルトは、操縦安定性に寄与しうる。しかし、このベルトは乗り心地に影響する。このベルトに含まれるコードの本数が多いので、このベルトは質量の増加を招来する。
【0012】
大きな厚みを有するサイドウォールを採用し、タイヤの剛性が調整されることがある。このサイドウォールは、操縦安定性に寄与しうる。しかし、このサイドウォールは乗り心地に影響する。しかも、このサイドウォールは質量の増加を招来する。
【0013】
前述の、短繊維を含む部材によれば、質量の増加を抑えつつ、タイヤの剛性を調整できる。しかし、短繊維を多く含む部材の伸びは小さい。このため、タイヤの加硫工程において、ブラダーが膨張しローカバーが変形するとき、この部材がこの変形に追随できないことがある。ローカバーの変形を伴う製造方法では、短繊維を多く含む部材は採用できないという問題がある。
【0014】
上記図11に示されたタイヤ62では、荷重支持層76は、ゴム組成物を押し出して得たシートを用いて形成される。形成のとき、シートの一端とその他端とが継ぎ合わされる。このタイヤ62のローカバーでは、荷重支持層76に継ぎ目がある。
【0015】
前述したように、タイヤ62の加硫工程では、ブラダーが膨張しローカバーが変形する。この変形は例えば、荷重支持層76に形態変化を招来する。前述したように、荷重支持層76には継ぎ目がある。継ぎ目の部分の強度は、この継ぎ目のない部分の強度よりも小さい。このため、ローカバーが変形すると、継ぎ目の部分において、形態が顕著に変化する。このタイヤ2では、継ぎ目の部分の形態がこの継ぎ目のない部分の形態と相違することがある。この形態の相違がパンクによってタイヤ62の内圧が低下した場合における、このタイヤ62の耐久性(ランフラット耐久性とも称されている。)に影響することがある。
【0016】
本発明の目的は、質量の増加を抑えつつ、乗り心地を損なうことなく操縦安定性の向上が達成された空気入りタイヤの提供にある。さらに本発明の他の目的は、質量の増加を抑えつつ、パンクによってタイヤの内圧が低下した場合における、耐久性の向上が達成された空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このカーカスの内側に位置するインナーライナーと、上記トレッドの半径方向内側においてこのカーカスとこのインナーライナーとの間に位置する補強層とを備えている。この補強層は、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である。より好ましくは、上記短繊維の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である。
【0019】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層における短繊維は周方向に配向している。
【0020】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層は上記ゴム組成物からなるテープを周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されている。
【0021】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの幅は3mm以上25mm以下であり、このテープの厚みは0.3mm以上2.0mm以下である。
【0022】
好ましくは、この空気入りタイヤは、上記トレッドの内側において上記カーカスと積層されるベルトをさらに備えている。上記補強層の幅の、このベルトの幅に対する比率は、0.2以上0.95以下である。
【0023】
好ましくは、この空気入りタイヤは、上記サイドウォールの軸方向内側において、上記カーカスと上記インナーライナーとの間に位置する一対の荷重支持層をさらに備えている。それぞれの荷重支持層は、上記補強層から半径方向略内向きに延在している。この荷重支持層は、上記補強層のゴム組成物と同等のゴム組成物からなる。
【0024】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記ゴム組成物における上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である。より好ましくは、上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である。
【0025】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記荷重支持層及び上記補強層における短繊維は周方向に配向している。
【0026】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、一方の荷重支持層、上記補強層及び他方の荷重支持層は、上記ゴム組成物からなる第二テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより連続して形成されている。
【0027】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層の厚みは0.5mm以上2.0mm以下である。
【0028】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記荷重支持層の硬度は60以上85以下である。
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、
(1)トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このカーカスの内側に位置するインナーライナーと、上記トレッドの半径方向内側においてこのカーカスとこのインナーライナーとの間に位置する補強層とを備えており、この補強層が基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなる、ローカバーが組み立てられる工程、
(2)このローカバーが、モールドに投入される工程
及び
(3)このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【0030】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である。より好ましくは、上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である。
【0031】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記補強層は、上記ゴム組成物からなる第一テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されている。
【0032】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記ローカバーは上記サイドウォールの軸方向内側において上記カーカスと上記インナーライナーとの間に位置する一対の荷重支持層をさらに備えている。それぞれの荷重支持層は、上記補強層から半径方向略内向きに延在している。この荷重支持層は、上記補強層のゴム組成物と同等のゴム組成物からなる。
【0033】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記ゴム組成物における上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である。より好ましくは、上記短繊維の配合量は上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である。
【0034】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、一方の荷重支持層、上記補強層及び他方の荷重支持層は、上記ゴム組成物からなる第二テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより連続して形成されている。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る空気入りタイヤでは、質量の増加を抑えつつ、乗り心地を損なうことなく操縦安定性の向上が達成される。本発明に係る他の空気入りタイヤでは、質量の増加を抑えつつ、パンクによってタイヤの内圧が低下した場合における、耐久性の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図3の補強層の短繊維が示された模式図である。
【図5】図5は、補強層の形成に用いるテープの一部が示された斜視図である。
【図6】図6は、図1のタイヤの製造の様子が示された模式図である。
【図7】図7は、図1のタイヤの製造の図6とは別の様子が示された模式図である。
【図8】図8は、図1のタイヤの製造の図7とは別の様子が示された模式図である。
【図9】図9は、図1のタイヤの製造の図8とは別の様子が示された模式図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図11】図11は、従来のタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0038】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。図2には、この図1のタイヤ2の赤道面の部分が示されている。この図2においては、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0039】
このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、インナーライナー14、補強層16、クッション層18及びチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0040】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4の外面は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド面22には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。図示されていないが、トレッド4は通常、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0041】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、その半径方向外側端において、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐光性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
【0042】
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。このタイヤ2では、ビード8は、第一パート26aと、第二パート26bとから構成されている。このタイヤ2では、軸方向において、第一パート26aはカーカス10の内側に位置している。軸方向において、第二パート26bはカーカス10の外側に位置している。
【0043】
第一パート26aは、第一コア28aと、この第一コア28aから半径方向外向きに延びる第一エイペックス30aとを備えている。第一コア28aはリング状であり、巻回された非伸縮性の第一ワイヤー32aを含む。このタイヤ2では、第一コア28aは第一ワイヤー32aが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第一ワイヤー32aの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス30aは、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス30aは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0044】
第二パート26bは、第二コア28bと、この第二コア28bから半径方向外向きに延びる第二エイペックス30bとを備えている。第二コア28bはリング状であり、巻回された非伸縮性の第二ワイヤー32bを含む。このタイヤ2では、第二コア28bは第二ワイヤー32bが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第二ワイヤー32bの典型的な材質は、スチールである。第二エイペックス30bは、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス30bは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0045】
カーカス10は、カーカスプライ34からなる。カーカスプライ34は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。このタイヤ2では、カーカスプライ34の端部はビード8の第一パート26aとその第二パート26bとの間に挟まれている。より詳細には、カーカスプライ34の端部はビード8の第一コア28aとその第二コア28bとの間に挟まれている。
【0046】
図示されていないが、カーカスプライ34は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、2枚以上のカーカスプライ34から形成されてもよい。
【0047】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層36a及び外側層36bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36aの幅は外側層36bの幅よりも若干大きい。このタイヤ2では、内側層36aの端38がベルト12の端である。
【0048】
図示されていないが、内側層36a及び外側層36bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層36aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト12が、3以上の層36を備えてもよい。
【0049】
インナーライナー14は、カーカス10の内側に位置している。このインナーライナー14は、タイヤ2の内面を形成している。インナーライナー14は、架橋ゴムからなる。インナーライナー14には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー14の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー14は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0050】
補強層16は、トレッド4の半径方向内側において、カーカス10とインナーライナー14との間に位置している。補強層16は、インナーライナー14に沿って軸方向に延在している。軸方向において、補強層16の幅はベルト12の幅よりも小さい。したがって、軸方向において、補強層16の端40はベルト12の端38よりも内側に位置している。
【0051】
このタイヤ2では、補強層16はゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴムを含む。この基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0052】
補強層16のゴム組成物は、短繊維をさらに含む。短繊維は、補強層16の強度に寄与しうる。この短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。
【0053】
このタイヤ2では、補強層16に含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下が好ましい。この短繊維の配合量が10質量部以上に設定されることにより、補強層16が適度な強度を有する。この補強層16は、タイヤ2の剛性に寄与しうる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上が特に好ましい。この短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、補強層16がインナーライナー14及びカーカス10のそれぞれと十分に接合されうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。
【0054】
好ましくは、補強層16のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0055】
好ましくは、補強層16のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0056】
補強層16のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。補強層16の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。補強層16の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0057】
補強層16のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。補強層16の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。補強層16の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0058】
補強層16のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0059】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。この図3には、補強層16の一部が示されている。この図3において、上下方向がタイヤ2の周方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向である。
【0060】
図示されているように、補強層16は、多数の短繊維42と、マトリクス44とで構成されている。換言すれば、この補強層16は繊維補強ゴム(FRR)からなる。これら短繊維42は、マトリクス44に分散している。これら短繊維42の長手方向は、略周方向に沿っている。この補強層16において、短繊維42は周方向に配向している。この補強層16は、タイヤ2の剛性に寄与しうる。
【0061】
図4は、図3の補強層16の短繊維42が示された模式図である。図4において、上下方向が周方向である。矢印θで示されているのは、短繊維42の角度である。角度θは、直線X1と直線X2とのなす角度の絶対値である。直線X1は、周方向に延びている。直線X2は、短繊維42の一端46及び他端48を通過している。この角度θは、短繊維42の長手方向が周方向に対してなす角度である。角度θは、0°以上90°以下である。なお、図4中、両矢印Lで示されているのが繊維長である。この繊維長Lは、一端46から他端48までの長さが計測されることにより得られる。
【0062】
補強層16がタイヤ2の剛性に効果的に寄与しうるとの観点から、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。比率の算出においては、補強層16の、周方向に沿った断面に露出した短繊維42の角度が、測定される。無作為に抽出された100本の短繊維42について、角度の測定がなされる。なお、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合が、短繊維42が周方向に配向している状態である。
【0063】
このタイヤ2では、短繊維42が補強層16の強度を効果的に高めている。この補強層16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。この補強層16は、タイヤ2のトレッド4の部分の剛性に寄与しうる。
【0064】
このタイヤ2では、補強層16は、周方向に配向した多数の短繊維42を含んでいる。この補強層16は、周方向の剛性に寄与しうる。この補強層16は、微小舵角付近(ニュートラル付近)においてハンドルを操作するドライバーが感じとる手応えを向上しうる。この補強層16がトレッド4の半径方向内側においてカーカス10とインナーライナー14との間に設けられていることが、この手応えの向上に貢献している。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。
【0065】
このタイヤ2では、補強層16に含まれる短繊維42が周方向に配向しているので、補強層16による軸方向の剛性への影響が抑えられている。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。しかも、短繊維42が、タイヤ2の質量に与える影響は小さい。このタイヤ2では、質量の増加を抑えつつ、乗り心地を損なうことなく操縦安定性の向上が達成されている。
【0066】
このタイヤ2では、補強層16の幅が適切に調整されている。これにより、補強層16がカーカス10と干渉することが効果的に防止されている。この干渉によるルースの発生が防止されているので、このタイヤ2は耐久性に優れている。
【0067】
図1において、両矢印RWは軸方向における補強層16の幅を表している。両矢印BWは、軸方向におけるベルト12の幅を表している。
【0068】
このタイヤ2では、幅RWの幅BWに対する比は0.2以上0.95以下が好ましい。この比が0.2以上に設定されることにより、補強層16がタイヤ2の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比は0.4以上がより好ましい。この比が0.95以下に設定されることにより、この補強層16の幅が適切に維持される。これにより、補強層16がカーカス10と干渉することにより生じるルースの発生が防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この比は0.7以下がより好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、短繊維42が効果的に補強層16の強度を高めるという観点から、短繊維42の平均長さL(図4参照)は、20μm以上が好ましい。平均長さLが20μm以上である短繊維42により、補強層16が十分に補強される。マトリクス44への分散性の観点から、平均長さLは5000μm以下が好ましい。
【0070】
短繊維42の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましい。平均直径Dが0.04μm以上である短繊維42により、補強層16の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、平均直径Dは500μm以下が好ましい。
【0071】
短繊維42のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましい。アスペクト比(L/D)が10以上である短繊維42により、補強層16の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、アスペクト比(L/D)は500以下が好ましい。
【0072】
以上説明されたタイヤ2は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。
【0073】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー14が巻かれる。補強層16のゴム組成物が押し出され、図5に示されたテープ50が形成される。図5中、矢印Aで示された方向はこのテープ50の長さ方向である。この長さ方向は、テープ50の押出方向でもある。
【0074】
この製造方法では、テープ50はその断面形状が矩形状を呈するように成形される。前述したように、補強層16のゴム組成物は短繊維42を含んでいる。したがって、このテープ50も短繊維42を含んでいる。テープ50はゴム組成物を押し出して成形されるので、短繊維42は、このテープ50において、その押出方向、言い換えれば、その長さ方向に配向している。ここで「長さ方向に配向」とは、短繊維42の長手方向がテープ50の長さ方向に対してなす角度が20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合を意味している。このテープ50における短繊維42の長手方向がテープ50の長さ方向に対してなす角度は、前述の、補強層16における角度θの計測方法と同様の方法で計測される。なお、比率の算出においては、テープ50の表面に露出した短繊維42の角度が、測定される。
【0075】
この製造方法では、テープ50はインナーライナー14上に巻回される。これにより、補強層16が形成される。この形成の様子が、図6〜図8に示されている。これら図において、左右方向がタイヤ2の軸方向に相当し、上下方向がタイヤ2の周方向に相当する。
【0076】
図6に示されているのは、補強層16の形成が開始される様子である。この製造方法では、ヘッド(図示されず)からテープ50が送り出され、このテープ50の先端がインナーライナー14上に積層される。
【0077】
この製造方法では、テープ50の先端がインナーライナー14に積層されると、中子の回転が開始される。この回転とともに、ヘッドがテープ50を送り出しながら、軸方向に移動させられる。この様子が、図7に示されている。図7中、矢印Bで示された方向が中子の回転方向である。この回転方向Bは、タイヤ2の周方向に相当する。矢印Cで示された方向が、ヘッドの移動方向である。この移動方向Cは、タイヤ2の軸方向に相当する。
【0078】
この製造方法では、ヘッドの移動とともに中子が回転させられるので、テープ50はインナーライナー14上を周方向に螺旋状に巻回される。これにより、図8に示されているように、インナーライナー14上に架橋により補強層16をなす要素52が形成される。この要素52には、一枚のシートを巻き回して、このシートの一端とその他端とを継ぎ合わせた場合に形成される、継ぎ目はない。
【0079】
この製造方法では、テープ50の巻回しのピッチは、このテープ50の幅に一致している。図7に示されているように、この巻回しにおいては、積層されるテープ50の第一縁54aは、既に積層されているテープ50の第二縁54bに合わせられる。積層されるテープ50は、既に積層されているテープ50と隙間なく継ぎ合わされる。なお、この製造方法では、積層されるテープ50が、既に積層されているテープ50の一部と重ね合わされるように巻回されてもよい。テープ50が、既に積層されているテープ50と間隔を空けてインナーライナー14上に積層されてもよい。このテープ50の巻き方は、製造されるタイヤ2の仕様等が考慮され適宜決められる。
【0080】
この製造方法では、補強層16をなす要素52が形成されると、ビード8の一部をなす第一パート26aがインナーライナー14の端に組み合わされる。第一パート26a、補強層16及びインナーライナー14が組み合わされたものの外側に、カーカスプライ34が形成される。このカーカスプライ34の端に、ビード8の他の一部をなす第二パート26bが組み合わされる。そしてベルト12、サイドウォール6、トレッド4等が組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。この製造方法では、ローカバーが組み立てられる工程は成形工程と称される。
【0081】
この製造方法では、中子の外面において補強層16をはじめとする多数の要素52が組み合わされてローカバーが得られる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0082】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0083】
この製造方法では、図9に示されているように、モールド(図中の符号M)が締められると、ローカバー(図中の符号R)はモールドMのキャビティ面56と中子(図中の符号N)の外面58とに挟まれて加圧される。ローカバーRは、中子N及びモールドMからの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーRをなす各要素52のゴム組成物が流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図1に示されたタイヤ2が得られる。このタイヤ2は、ローカバーRをモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティ60内で加圧及び加熱することにより形成される。この製造方法では、ローカバーRが加圧及び加熱される工程は架橋工程と称される。
【0084】
前述したように、この製造方法では、ローカバーRは中子Nに組み合わされた状態でモールドMに投入され、モールドMのキャビティ面56と中子Nの外面58とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーRは引き延ばされない。
【0085】
このタイヤ2の補強層16は、短繊維42を含むゴム組成物からなる要素52をモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティ60内で加圧及び加熱されることにより形成される。前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーRをなす各要素52は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーRをなす各要素52は引き延ばされない。このため、この製造方法では、補強層16のためのテープ50が、作業者が指で摘んで引っ張ると伸びずに破断してしまう程度に多量の短繊維を含んでいても、このテープ50から補強層16が形成され、ローカバーRが得られる。そして、このローカバーRからタイヤ2が得られる。この製造方法によれば、多量の短繊維42を含有する補強層16を備えたタイヤ2が高品質にしかも安定に生産されうる。
【0086】
図5において、両矢印TTは補強層16の形成に用いるテープ50の厚みを表している。両矢印WTは、このテープ50の幅を表している。
【0087】
この製造方法では、厚みTTは0.3mm以上2.0mm以下が好ましい。この厚みTTが0.3mm以上に設定されることにより、テープ50の強度が適切に維持される。しかもこのテープ50により形成される補強層16が、タイヤ2の剛性に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みTTは0.5mm以上がより好ましい。この厚みTTが2.0mm以下に設定されることにより、このテープ50により形成される補強層16がタイヤ2の質量に与える影響が抑えられる。しかも、この厚みTTに起因する段差の形成が防止される。このテープ50によれば、タイヤ2の耐久性への影響が抑えられた補強層16が形成されうる。この観点から、この厚みTTは1.0mm以下がより好ましい。
【0088】
この製造方法では、幅WTは3mm以上25mm以下が好ましい。この幅WTが3mm以上に設定されることにより、このタイヤ2の生産性が適切に維持されうる。この観点から、この幅WTは5mm以上が好ましい。この幅WTが25mm以下に設定されることにより、このテープ50の巻き始めと巻き終わりにおける剛性差が適切に維持される。このテープ50によれば、補強層16がタイヤ2の耐久性を阻害することが防止されうる。この観点から、この幅WTは15mm以下がより好ましい。
【0089】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤの各部材の寸法及び角度も、このタイヤ2と同様にして測定される。
【0090】
図10には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ92が示されている。図10において、上下方向がタイヤ92の半径方向であり、左右方向がタイヤ92の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ92の周方向である。図10において、一点鎖線CLはタイヤ92の赤道面を表わす。このタイヤ92の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。実線BBLは、ビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ92が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。
【0091】
このタイヤ92は、トレッド94、サイドウォール96、クリンチ98、ビード100、カーカス102、ベルト104、バンド106、インナーライナー108、チェーファー110、補強層112及び荷重支持層114を備えている。このタイヤ92は、チューブレスタイプである。このタイヤ92は、乗用車に装着される。
【0092】
トレッド94は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド94の外面は、路面と接地するトレッド面116を形成する。トレッド面116には、溝118が刻まれている。この溝118により、トレッドパターンが形成されている。トレッド94は、ベース層120とキャップ層122とを有している。ベース層120は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層120の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層122は、ベース層120の半径方向外側に位置している。キャップ層122は、ベース層120に積層されている。キャップ層122は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0093】
サイドウォール96は、トレッド94の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール96は、その半径方向外側端において、トレッド94と接合されている。このサイドウォール96は、その半径方向内側端において、クリンチ98と接合されている。このサイドウォール96は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール96は、カーカス102の損傷を防止する。
【0094】
クリンチ98は、サイドウォール96の半径方向略内側に位置している。クリンチ98は、軸方向において、ビード100及びカーカス102よりも外側に位置している。クリンチ98は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ98は、リム(図示されず)のフランジと当接する。
【0095】
ビード100は、サイドウォール96よりも半径方向略内側に位置している。ビード100は、クリンチ98の軸方向内側に位置している。
【0096】
このタイヤ92では、ビード100は、第一コア124aと、第二コア124bと、エイペックス126とを備えている。より詳細には、ビード100は、第一コア124a、第二コア124b及びエイペックス126から構成されている。
【0097】
第一コア124aは、軸方向においてカーカス102よりも内側に位置している。第一コア124aは、リング状であり、巻回された非伸縮性の第一ワイヤー128aを含む。このタイヤ92では、第一コア124aは第一ワイヤー128aが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第一ワイヤー128aの典型的な材質は、スチールである。
【0098】
第二コア124bは、軸方向においてカーカス102よりも外側に位置している。図から明らかなように、第二コア124bはエイペックス126により覆われている。第二コア124bはリング状であり、巻回された非伸縮性の第二ワイヤー128bを含む。このタイヤ92では、第二コア124bは第二ワイヤー128bが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第二ワイヤー128bの典型的な材質は、スチールである。このタイヤ92では、第二ワイヤー128bは第一ワイヤー128aと同等である。
【0099】
エイペックス126は、高硬度な架橋ゴムからなる。エイペックス126は、軸方向においてカーカス102よりも外側に位置している。図から明らかなように、エイペックス126はクリンチ98とカーカス102との間に位置している。このエイペックス126は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス126の外端は、半径方向において第二コア124bの外端より外側に位置している。エイペックス126の外端は、半径方向において第一コア124aの外端より外側に位置している。エイペックス126の外端は、半径方向においてクリンチ98の外端よりも内側に位置している。
【0100】
このタイヤ92では、エイペックス126は十分な大きさを有している。このエイペックス126を含むビード100は、タイヤ92をリムに十分に締め付ける。このビード100には、カーカス102の軸方向内側に位置する別のエイペックスは不要である。このビード100は、タイヤ92を構成する部品数の低減に寄与しうる。しかもカーカス102の軸方向外側にのみエイペックス126を設ければよいので、このビード100の製造は容易である。このビード100は、生産性の向上に寄与しうる。
【0101】
カーカス102は、カーカスプライ130からなる。カーカスプライ130は、両側のビード100の間に架け渡されており、トレッド94及びサイドウォール96の内側に沿っている。このタイヤ92では、カーカスプライ130の端部はビード100の第一コア124aとその第二コア124bとの間に挟まれている。このカーカス102は、図1に示されたタイヤ2のカーカス10と同等の構成を有している。
【0102】
このタイヤ92では、カーカス102の形成に際し、従来のタイヤ62のようにカーカスプライ90を折り返す必要はない。このタイヤ92では、カーカス102の形成は容易である。このカーカス102は、生産性の向上に寄与しうる。
【0103】
ベルト104は、カーカス102の半径方向外側に位置している。ベルト104は、カーカス102と積層されている。ベルト104は、カーカス102を補強する。ベルト104は、内側層132a及び外側層132bからなる。図10から明らかなように、軸方向において、内側層132aの幅は外側層132bの幅よりも若干大きい。このベルト104は、図1に示されたタイヤ2のベルト12と同等の構成を有している。
【0104】
バンド106は、ベルト104の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド106の幅はベルト104の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド106は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド106は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト104が拘束されるので、ベルト104のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0105】
インナーライナー108は、カーカス102の内側に位置している。このインナーライナー108は、タイヤ92の内面を形成している。インナーライナー108は、架橋ゴムからなる。インナーライナー108には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー108の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー108は、タイヤ92の内圧を保持する。
【0106】
チェーファー110は、ビード100の近傍に位置している。タイヤ92がリムに組み込まれると、チェーファー110はリムと当接する。この当接により、ビード100の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー110は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー100がクリンチ98と一体とされてもよい。この場合は、チェーファーの材質はクリンチ98の材質と同じとされる。
【0107】
補強層112は、トレッド94の半径方向内側において、カーカス102とインナーライナー108との間に位置している。補強層112は、インナーライナー108に沿って軸方向に延在している。
【0108】
このタイヤ92では、補強層112はゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴム及び短繊維を含んでいる。
【0109】
このタイヤ92では、図1に示されたタイヤ2の補強層16をなすゴム組成物と同等のゴム組成物が補強層112に用いられている。このゴム組成物の基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。
【0110】
このタイヤ92では、図1に示されたタイヤ2の補強層16に含まれる短繊維42と同等の短繊維が補強層112に用いられる。短繊維としては、有機繊維及び紙繊維が例示される。補強層112の強度及びこの補強層112における短繊維の分散性の観点から、この短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0111】
このタイヤ92の補強層112は、図1に示されたタイヤ2の補強層16と同様、多数の短繊維と、マトリクスとで構成されている。これら短繊維は、マトリクスに分散している。図示されていないが、これら短繊維の長手方向は略周方向に沿っている。この補強層112において、短繊維は周方向に配向している。
【0112】
周方向に配向した多数の短繊維は、補強層112の強度に寄与しうる。この補強層112は、タイヤ92の剛性に寄与しうる。
【0113】
このタイヤ92では、短繊維が補強層112の強度を効果的に高めている。この補強層112は、トレッド94の半径方向内側に位置している。この補強層112は、タイヤ92のトレッド94の部分の剛性に寄与しうる。
【0114】
このタイヤ92では、補強層112は、周方向に配向した多数の短繊維を含んでいる。この補強層112は、周方向の剛性に寄与しうる。この補強層112は、微小舵角付近(ニュートラル付近)においてハンドルを操作するドライバーが感じとる手応えを向上しうる。この補強層112がトレッド94の半径方向内側においてカーカス102とインナーライナー108との間に設けられていることが、この手応えの向上に貢献している。このタイヤ92は、操縦安定性に優れる。
【0115】
このタイヤ92では、補強層112に含まれる短繊維が周方向に配向しているので、補強層112による軸方向の剛性への影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかも、短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加を抑えつつ、乗り心地を損なうことなく操縦安定性の向上が達成されている。
【0116】
荷重支持層114は、軸方向においてサイドウォール96よりも内側に位置している。荷重支持層114は、軸方向においてカーカス102よりも内側に位置している。荷重支持層114は、軸方向においてインナーライナー108よりも外側に位置している。図から明らかなように、荷重支持層114は補強層112から半径方向略内向きに延在している。このタイヤ92では、補強層112と荷重支持層114とは一体的に形成されている。
【0117】
このタイヤ92では、荷重支持層114はゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴム及び短繊維を含んでいる。
【0118】
このタイヤ92の荷重支持層114には、補強層112をなすゴム組成物と同等のゴム組成物が用いられる。この荷重支持層114は、補強層のゴム組成物と同等のゴム組成物からなる。この荷重支持層114のゴム組成物における基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。短繊維としては、有機繊維及び紙繊維が例示される。
【0119】
このタイヤ92では、荷重支持層114の短繊維は、補強層112に含まれる短繊維と同等である。したがって、この短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。この短繊維は、荷重支持層114の強度及びこの荷重支持層114における短繊維の分散性に効果的に寄与しうる。
【0120】
このタイヤ92の荷重支持層114は、補強層112と同様、多数の短繊維と、マトリクスとで構成されている。これら短繊維は、マトリクスに分散している。図示されていないが、これら短繊維の長手方向は略周方向に沿っている。この荷重支持層114において、短繊維は周方向に配向している。
【0121】
周方向に配向した多数の短繊維は、荷重支持層114の強度に寄与しうる。この荷重支持層114は、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、荷重支持層114が車重を支えうる。しかもこの荷重支持層114に含まれる短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられている。
【0122】
このタイヤ92では、荷重支持層114に含まれる短繊維が周方向に配向しているので、荷重支持層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。
【0123】
このタイヤ92では、サイドウォール96の軸方向内側において、カーカス102とインナーライナー108との間に荷重支持層114が位置している。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、荷重支持層114が車重を支えうる。これにより、内圧が低い場合でも、タイヤ92はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ92は、ランフラットタイヤである。このタイヤ92は、サイド補強型である。
【0124】
後述するが、このタイヤ92では、荷重支持層114の厚み及びサイドウォール96の厚みが適切に調整されている。このタイヤ92では、この荷重支持層114に加えて、カーカス102とサイドウォール96との間に別の荷重支持層を設ける必要がない。言い換えれば、このタイヤ92には、カーカス102とサイドウォール96との間に荷重支持層は不要である。本発明によれば、軽量化が達成されうる。しかも本発明は、タイヤ92を構成する部材の数の低減に寄与しうる。本発明にによれば、生産コストの低減が達成されうる。
【0125】
前述したように、荷重支持層114のゴム組成物は補強層112のゴム組成物と同等であり、このゴム組成物は短繊維を含む。補強層112及び荷重支持層114が適度な剛性を有するとの観点から、ゴム組成物に含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上ががさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。補強層112及び荷重支持層114のそれぞれがインナーライナー108及びカーカス102と十分に接合されうるとの観点から、この短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。
【0126】
以上説明されたタイヤ92は、次のようにして製造される。この製造方法では、図1に示されたタイヤ2の製造方法と同様、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。
【0127】
このタイヤ92の製造方法では、補強層112及び荷重支持層114のためのゴム組成物が押し出され、テープ(ストリップとも称されている)が形成される。図示されていないが、このテープは図5に示されたテープと同等の構成を有している。このテープでは、その長さ方向に短繊維が配向している。タイヤ92の生産性の観点から、このテープの幅は5mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。このテープの厚みは、0.4mm以上が好ましく、2.5mm以下が好ましい。
【0128】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー108が形成される。このインナーライナー108上をテープが周方向に螺旋状に巻回される。これにより、このタイヤ92の一方のサイドウォール96に相当する部分に、架橋により一方の荷重支持層114をなす要素が形成される。このタイヤ92のトレッド94に相当する部分に、架橋により補強層112をなす要素が形成される。このタイヤ92の他方のサイドウォール96に相当する部分に、架橋により他方の荷重支持層114をなす要素が形成される。
【0129】
この製造方法では、一方の荷重支持層114をなす要素、補強層112をなす要素及び他方の荷重支持層114をなす要素が連続して形成される。この製造方法は、一方の荷重支持層114の要素の形成から補強層112の要素の形成への切り替えにおいて、作業は中断されない。この補強層112の要素の形成から他方の荷重支持層114の要素の形成への切り替えにおいて、作業は中断されない。このタイヤ92は、生産性の向上に寄与しうる。
【0130】
この製造方法では、荷重支持層114をなす要素に、ビード100の一部をなす第一コア124aが組み合わされる。インナーライナー108に、補強層112及び荷重支持層114をなす要素並びに第一コア124aが組み合わされたものの外側に、カーカスプライ130が形成される。このカーカスプライ130の端部に、ビード100の他の一部をなす第二コア124bが組み合わされる。この第二コア124bを覆うように、エイペックス126が組み合わされる。ベルト104、サイドウォール96、トレッド94等がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。
【0131】
この製造方法では、中子の外面において補強層112及び荷重支持層114をはじめとする多数の部材が組み合わされてローカバーが得られる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0132】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0133】
この製造方法では、モールドが締められると、ローカバーはモールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、ローカバーは、中子及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーをなす各要素のゴム組成物が流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図10に示されたタイヤ92が得られる。このタイヤ92は、ローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより形成される。
【0134】
前述したように、この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入され、モールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0135】
このタイヤ92の補強層112及び荷重支持層114のそれぞれは、短繊維を含むゴム組成物からなる要素を、モールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより形成される。前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーをなす各要素は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーをなす各要素は引き延ばされない。このため、この製造方法では、補強層112及び荷重支持層114のためのテープを作業者が指で摘んで引っ張ると伸びずに破断してしまう程度に、多量の短繊維がゴム組成物に配合されても、ローカバーが成形されうる。そして、このローカバーからタイヤ92が得られる。この製造方法によれば、多量の短繊維を含有する補強層112及び荷重支持層114を備えたタイヤ92が高品質にしかも安定に生産されうる。
【0136】
このタイヤ92では、荷重支持層114はテープを周方向に螺旋状に巻回して形成される。この荷重支持層114には、従来のタイヤ92の荷重支持層114のように、一枚のシートを巻き回して、このシートの一端とその他端とを継ぎ合わせた場合に形成される、継ぎ目はない。この荷重支持層114の形態は、特異でない。しかもローカバーを引き延ばすことなくタイヤ92が得られるので、このタイヤ92の製造方法では、荷重支持層114の形態変化が効果的に抑えられる。この荷重支持層114は、周方向において一様な形態を有する。この荷重支持層114は、パンクによってタイヤ92の内圧が低下した場合における、このタイヤ92の耐久性の向上に寄与しうる。
【0137】
このタイヤ92では、荷重支持層114の硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この荷重支持層114が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、荷重支持層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0138】
本願において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図10に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
【0139】
このタイヤ92では、補強層112の硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、補強層112がトレッド94の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ92は、操縦安定性に優れる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、トレッド94の部分の剛性過大が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0140】
図10において、両矢印tは赤道面における補強層112の厚さを表している。両矢印Hは、ビードベースラインからタイヤ92の赤道までの半径方向距離を表している。この半径方向距離Hは、このタイヤ92の断面高さである。符号Phで示されているのは、ビードベースラインからの半径方向距離(図中の両矢印Hh)がこのタイヤ92の断面高さHの半分となる、このタイヤ92の外面上の位置を表している。言い換えれば、この位置Phは、このタイヤ92の断面高さHの半分の高さに相当する位置を表している。両矢印eは、位置Phにおける荷重支持層114の厚さを表している。両矢印Eは、位置Phにおけるサイドウォール96の厚さを表している。
【0141】
このタイヤ92では、補強層112の厚さtは0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。この厚さtが0.5mm以上に設定されることにより、補強層112がタイヤ92のトレッド94の部分における剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ92は、操縦安定性に優れる。この観点から、この厚さtは0.8mm以上がより好ましい。この厚さtが2.0mm以下に設定されることにより、このトレッド94の部分が過大な剛性を有することが防止される。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この厚さtは1.3mm以下がより好ましい。
【0142】
このタイヤ92では、荷重支持層114の厚さeは1mm以上15mm以下が好ましい。この厚さeが1mm以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この荷重支持層114が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚さeは3mm以上がより好ましい。この厚さeが15mm以下に設定されることにより、荷重支持層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みeが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みeは12mm以下がより好ましい。
【0143】
このタイヤ92では、サイドウォール96の厚さEは1mm以上10mm以下が好ましい。この厚さEが1mm以上に設定されることにより、サイドウォール96がカーカス102の保護に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚さEは2mm以上がより好ましい。この厚さEが10mm以下に設定されることにより、サイドウォール96による撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みEが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みEは7mm以下がより好ましい。
【0144】
このタイヤ92では、サイドウォール96の厚さEに対する荷重支持層114の厚さeの比は1以上5以下が好ましい。この比が1以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この荷重支持層114が車重の支持に効果的に寄与しうる。しかもこの荷重支持層114がタイヤ92の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ92は操縦安定性に優れる。この観点から、この比は2以上がより好ましい。この比が5以下に設定されることにより、荷重支持層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この比は3.5以下がより好ましい。
【実施例】
【0145】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0146】
[実験A]
[実施例1]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図1に示された基本構成を備え、下記の表2に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)を製作した。このタイヤが中子を用いて製造されたことが、この表において「A」で表されている。このタイヤのベルトには、その材質がスチールとされたコードが用いられた。このコードの構成が2+2×0.23とされた。このことが、この表において「R」で表されている。このタイヤでは、補強層の幅RWのベルトの幅BWに対する比(RW/BW)は、0.6とされた。この補強層の形成に用いられたテープの幅WTは10mm、その厚みTTは0.8mmとされた。この補強層における短繊維の配合量は、40質量部とされた。このテープをその長さ方向に引っ張るとこのテープは伸びずに破断した。このことが、この表において、「B」で表されている。短繊維には、アラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)が用いられた。テープは周方向に螺旋状に巻回された。このテープの送りピッチは、このテープの幅WTと同等とされた。したがって、積層されるテープの第一縁が、既に積層されているテープの第二縁に継ぎ合わされた。このことが、この表において、「1」で表されている。この巻き構造は、一重巻きと称される。
【0147】
[実施例2−10]
短繊維の配合量を下記の表2及び3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−10のタイヤを製作した。実施例2−4では、テープをその長さ方向に引っ張ると、このテープは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。このことが、この表において、「S」で表されている。実施例5−10では、テープをその長さ方向に引っ張るとこのテープは伸びずに破断した。
【0148】
[実施例11−16]
テープの幅WTを下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例11−16のタイヤを製作した。
【0149】
[実施例17−22]
テープの厚みTTを下記の表5の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例17−22のタイヤを得た。
【0150】
[実施例23−28]
比(RW/BW)を下記の表6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例23−28のタイヤを製作した。
【0151】
[実施例29−31]
テープの巻き構造を下記の表7の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例29−31のタイヤを製作した。表中、「0.5」は、積層されるテープと既に積層されているテープとの間に、このテープの幅WTの半分の長さに相当する間隔が空けられて、テープが巻回されたことを表している。この巻き構造は、0.5重巻きと称される。「1.5」は、送りピッチがテープの幅WTの2/3とされて、このテープが巻回されたことを表している。この巻き構造は、1.5重巻きと称される。「2」は、送りピッチがテープの幅WTの1/2とされて、このテープが巻回されたことを表している。この巻き構造は、2重巻きと称される。実施例31と32とでは、積層されるテープの一部が既に積層されているテープの一部と重複するように、テープが巻回されている。
【0152】
[比較例1−3]
補強層を設けず、ベルトにおけるコードの構成及びフィラーについて下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例1−3のタイヤを製作した。比較例2−3では、ベルトに含まれるコードの構成が、1×4×0.27とされた。このことが、この表において、「SP」で表されている。この比較例1−3は、従来のタイヤである。なお、比較例3では、カーカスとサイドウォールとの間にフィラーが設けられた。このことが、表において「Y」で表されている。
【0153】
[比較例4−6]
従来の製造方法により、実施例4と同じ構成を有する比較例4のタイヤを製作し、実施例5と同じ構成を有する比較例5のタイヤを製作し、実施例1と同じ構成を有する比較例6のタイヤを製作した。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように従来の工法でタイヤを製造したことが、この表において「C」で表されている。
【0154】
[テープの質量]
補強層の形成に用いたテープの質量を計測した。この結果が、実施例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0155】
[タイヤの質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0156】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを15×6JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0157】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.0kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行時間を、測定した。この結果が、指数として、下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0158】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果(計測された時間の逆数)が、下記の表1から7に、比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が大きいほど、評価が高い。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
【表4】

【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
【表7】

【0166】
表1から7に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例5及び6では、シェーピング中にテープが破断したため、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例5及び6のタイヤは製造できなかった。
【0167】
[実験B]
[実施例32]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図10に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた実施例32の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、ランフラットタイヤである。このタイヤが中子工法で製造されたことが、この表において「A」で表されている。荷重支持層及び補強層の形成には、短繊維の配合量が40質量部とされたゴム組成物からなるテープが用いられた。このテープを周方向に螺旋状に巻回すことにより、一方の荷重支持層、補強層及び他方の荷重支持層が連続して形成された。このテープの幅は10mmとされ、その厚みは0.8mmとされた。なお、このテープを指で摘んでその長さ方向に引っ張ると、このテープは直ぐに破断した。このことが、この表において、「B」で表されている。短繊維には、アラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)が用いられた。荷重支持層及び補強層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、荷重支持層の厚さeは10mmとされた。この位置におけるサイドウォールの厚さEは、4mmとされた。したがって厚さEに対する厚さeの比(e/E)は2.5であった。赤道面における補強層の厚さtは、0.8mmとされた。
【0168】
[実施例33−39及び比較例11]
ゴム組成物における短繊維の配合量を下記の表9及び10の通りとした他は実施例32と同様にして、実施例33−39及び比較例11のタイヤを得た。比較例11及び実施例33−35では、テープを指で摘んで長さ方向に引っ張ると、このストリップは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。このことが、この表において、「S」で表されている。これら以外では、テープを指で摘んで長さ方向に引っ張ると直ぐにこのテープは破断した。
【0169】
[実施例40−48]
厚みtを下記の表10、11及び12の通りとした他は実施例32と同様にして、実施例42−48のタイヤを得た。
【0170】
[実施例49−56]
荷重支持層の硬度(及び補強層の硬度)を下記の表12及び13の通りとした他は実施例32と同様にして、実施例49−56のタイヤを得た。
【0171】
[比較例10]
補強層を設けなかった他は実施例32と同様にして、比較例10のタイヤを得た。
【0172】
[比較例7]
従来の製造方法により、図11に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた比較例7の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、従来のランフラットタイヤである。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように、タイヤが従来の製造方法で製造されたことが、この表において「C」で表されている。このタイヤの荷重支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さHの半分の高さHhにおける、この荷重支持層の厚さeは12mmとされた。この断面高さHの半分の高さHhにおける、サイドウォールの厚さEは4mmとされた。したがって厚さEに対する厚さeの比(e/E)は3であった。なお、この荷重支持層には短繊維は含まれていない。
【0173】
[比較例8−9]
荷重支持層にアラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)を配合し、その配合量を下記の表8の通りとした他は比較例7と同様にして、比較例8−9のタイヤを得た。
【0174】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例7を100とした指数値で下記の表8から13に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0175】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.5kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例7を100とした指数値で下記の表8から13に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0176】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを18×8.5Jのリムに組み込み、標準内圧となるようにタイヤに空気を充填した。これを、排気量が3.0リットルであり、前側エンジン後輪駆動の乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表8から13に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0177】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果(計測された時間)が、下記の表8から13に、比較例7を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0178】
【表8】

【0179】
【表9】

【0180】
【表10】

【0181】
【表11】

【0182】
【表12】

【0183】
【表13】

【0184】
表8から13に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例9では、シェーピング中にストリップが破断したため、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例9のタイヤは製造できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0185】
以上説明された方法は、様々なタイヤの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0186】
2、62,92・・・タイヤ
4、64、94・・・トレッド
6、68、96・・・サイドウォール
8、72、100・・・ビード
10、74、102・・・カーカス
12、78、104・・・ベルト
14、82、108・・・インナーライナー
16・・・補強層
26a、26b・・・パート
28a、28b、86、124a、124b・・・コア
30a、30b、88、126・・・エイペックス
42・・・短繊維
44・・・マトリクス
50・・・テープ
56・・・キャビティ面
58・・・外面
60・・・キャビティ
76、114・・・荷重支持層
112・・・補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成されており、
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このカーカスの内側に位置するインナーライナーと、上記トレッドの半径方向内側においてこのカーカスとこのインナーライナーとの間に位置する補強層とを備えており、
この補強層が、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記補強層における短繊維が、周方向に配向している請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記補強層が、上記ゴム組成物からなる第一テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されている請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記第一テープの幅が、3mm以上25mm以下であり、
この第一テープの厚みが、0.3mm以上2.0mm以下である請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
上記トレッドの内側において上記カーカスと積層されるベルトをさらに備えており、
上記補強層の幅の、このベルトの幅に対する比率が、0.2以上0.95以下である請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
上記サイドウォールの軸方向内側において、上記カーカスと上記インナーライナーとの間に位置する一対の荷重支持層をさらに備えており、
それぞれの荷重支持層が上記補強層から半径方向略内向きに延在しており、
この荷重支持層が、上記補強層のゴム組成物と同等のゴム組成物からなる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
上記ゴム組成物における上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
上記荷重支持層及び上記補強層における短繊維が周方向に配向している請求項8から10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
一方の荷重支持層、上記補強層及び他方の荷重支持層が、上記ゴム組成物からなる第二テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより連続して形成されている請求項8から11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
上記補強層の厚みが0.5mm以上2.0mm以下である請求項8から12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
上記荷重支持層の硬度が60以上85以下である請求項8から13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このカーカスの内側に位置するインナーライナーと、上記トレッドの半径方向内側においてこのカーカスとこのインナーライナーとの間に位置する補強層とを備えており、この補強層が基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなる、ローカバーが組み立てられる工程と、
このローカバーが、モールドに投入される工程と、
このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程と
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項16】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である請求項15に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項17】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である請求項16に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項18】
上記補強層が、上記ゴム組成物からなる第一テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されている、請求項15から17のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項19】
上記ローカバーが上記サイドウォールの軸方向内側において上記カーカスと上記インナーライナーとの間に位置する一対の荷重支持層をさらに備えており、
それぞれの荷重支持層が上記補強層から半径方向略内向きに延在しており、
この荷重支持層が、上記補強層のゴム組成物と同等のゴム組成物からなる、請求項15に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項20】
上記ゴム組成物における上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である請求項19に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項21】
上記短繊維の配合量が、上記基材ゴム100質量部に対して30質量部以上である請求項20に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項22】
一方の荷重支持層、上記補強層及び他方の荷重支持層が、上記ゴム組成物からなる第二テープを周方向に螺旋状に巻回すことにより連続して形成されている請求項19から21のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−79064(P2013−79064A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196914(P2012−196914)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】