空気入りタイヤ
【課題】軽量で、かつ耐カット性能に優れた空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤ2は、トレッド4と、それぞれがこのトレッド4の端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール6と、それぞれがサイドウォール6よりも半径方向略内側に位置する一対のビード8と、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿って一方のビード8と他方のビード8との間に架け渡されたカーカス10と、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層14とを備える。軸方向において、補強層14はカーカス10とサイドウォール6との間に位置する。補強層14は、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを有する。
【解決手段】このタイヤ2は、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤ2は、トレッド4と、それぞれがこのトレッド4の端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール6と、それぞれがサイドウォール6よりも半径方向略内側に位置する一対のビード8と、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿って一方のビード8と他方のビード8との間に架け渡されたカーカス10と、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層14とを備える。軸方向において、補強層14はカーカス10とサイドウォール6との間に位置する。補強層14は、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、フォーマーのドラム上で、トレッド、サイドウォール等の部材を多数組み合わせて、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。このローカバーの成形工程では、ドラムが拡径され、ローカバーの形状が整えられる。
【0003】
この製造方法では、ローカバーはモールドに投入される。このとき、ブラダーはローカバーの内側に位置している。ブラダーにガスが充填されると、ブラダーは膨張する。これにより、ローカバーは変形する。モールドが締められ、ブラダーの内圧が高められる。ローカバーは、モールドとブラダーとに挟まれ加圧される。ローカバーは、ブラダー及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0004】
地球環境保護の観点から、車両の低燃費化が指向されている。低燃費化の一環として、軽量なタイヤが望まれている。
【0005】
タイヤの性能は、これを構成する部材の特性を調整することにより制御される。軽量の観点から、小さな厚みを有するサイドウォールがタイヤに採用されることがある。薄いサイドウォールは、タイヤが縁石に衝突したときに、損傷しやすい。このタイヤは、耐カット性能に劣る。
【0006】
軽量と耐カット性能との観点から、カーカスプライとサイドウォールとの間に、ゴム補強層及び繊維補強層がタイヤに設けられることがある。このタイヤの一例が、特開2006−160106公報に開示されている。
【0007】
図10には、従来タイヤ62の一例としてランフラットタイヤが示されている。このタイヤ62は、トレッド64、ウィング66、サイドウォール68、クリンチ70、ビード72、カーカス74、荷重支持層76、ベルト78、バンド80、インナーライナー82及びチェーファー84を備えている。
【0008】
このタイヤ62では、ビード72は、コア86と、このコア86から半径方向外向きに延びるエイペックス88とを備えている。コア86はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤーを含む。エイペックス88は、半径方向外向きに先細りなテーパ状であり、高硬度な架橋ゴムからなる。カーカス74をなすカーカスプライ90は、両側のビード72の間に架け渡されており、トレッド64及びサイドウォール68の内側に沿っている。カーカスプライ90は、コア86の周りを、軸方向内側から外側に向かって巻かれている。カーカスプライ90の端は、トレッド64の近傍にまで至っている。このカーカス74の構造は、超ハイターンアップ構造と称される。荷重支持層76は、サイドウォール68の軸方向内側に位置している。荷重支持層76は、三日月に類似の形状である。荷重支持層76は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0009】
このタイヤ62では、パンクによってその内圧が低下した場合、荷重支持層76が車重を支える。この荷重支持層76により、内圧が低い場合でも、タイヤ62はある程度の距離を走行しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−160106公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
耐カット性能の観点から、周方向に延在するコードを含む補強層の採用が検討されることがある。この補強層は、周方向へはほとんど伸びない。このため、その形状を整えるシェーピングにおいて、この補強層はローカバーの変形に追随できない。加硫工程においても、ブラダーの膨張に伴うローカバーの変形にこの補強層は追随できない。ローカバーの変形を伴う製造方法では、この補強層の採用は難しい。
【0012】
タイヤのカーカスとサイドウォールとの間に短繊維を含む補強層を設け、耐カット性能の向上が検討されることがある。短繊維を多量に含む補強層は、伸びにくい。このため、その形状を整えるシェーピングにおいて、この補強層はローカバーの変形に追随できないことがある。加硫工程においても、ブラダーの膨張に伴うローカバーの変形にこの補強層が追随できないことがある。ローカバーの変形を伴う製造方法では、多量の短繊維を含む補強層の採用は難しい。この製造方法では、短繊維を含む補強層により耐カット性能を向上させるには限界がある。
【0013】
上記図10に示されたタイヤ62では、パンクによって内圧が低下した場合における耐久性向上の観点から、荷重支持層76が大きな厚みを有するようにこのタイヤ62が構成されることがある。この場合、タイヤ62の質量が増加してしまう。
【0014】
耐久性の観点から、このタイヤ62のカーカス74を2枚のカーカスプライ90で構成することがある。この場合、タイヤ62の剛性が全体として高められるので、乗り心地が損なわれる恐れがある。
【0015】
本発明の目的は、軽量で、かつ耐カット性能に優れた空気入りタイヤの提供にある。さらに本発明の他の目的は、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れた空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えている。軸方向において、この補強層はこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置している。この補強層は、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを有している。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層は周方向に延在するカーカスに沿って渦巻き状にテープを巻き回すことにより形成されている。このテープは、その幅方向に並列された15本以下の上記コードを含んでいる。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、半径方向において、ビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.5倍の位置からこのビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.85倍の位置までの領域に、上記補強層が存在している。
【0019】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記タイヤ断面高さに対するビードベスラインから上記補強層の内端までの半径方向高さの比は0.10以上0.30以下であり、このタイヤ断面高さに対するビードベスラインからこの補強層の外端までの半径方向高さの比は0.60以上0.85以下である。
【0020】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記ビードベースラインから上記補強層の内端までの半径方向高さは、このビードベースラインから上記ビードの外端までの半径方向高さと同等、又は、このビードベースラインからこのビードの外端までの半径方向高さよりも大きい。
【0021】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記トッピングゴムは基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなる。この短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である。
【0022】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープの第一縁は積層されているテープの第二縁に継ぎ合わされる。
【0023】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープは積層されているテープに重ね合わされる。
【0024】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープは積層されているテープと間隔を空けて配置される。
【0025】
好ましくは、この空気入りタイヤは、軸方向において上記サイドウォールの内側に位置する荷重支持部をさらに備えている。この荷重支持部は、軸方向においてカーカスの内側に位置する内側支持層と、このカーカスの外側に位置する外側支持層とを備えている。上記補強層は、この外側支持層に覆われている。
【0026】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記内側支持層又は外側支持層は、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる。
【0027】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である。
【0028】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、
(1)トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、軸方向においてこの補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、この補強層が周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている、ローカバーが組み立てられる工程と、
(2)このローカバーが、モールドに投入される工程
及び
(3)このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤは、中子を用いて製造されるので、そのバットレス領域に周方向に延在するコードを含む補強層を設けることができる。この補強層は、耐カット性能に寄与しうる。しかも、この補強層は、このバットレス領域におけるタイヤの厚みの低減に寄与しうる。このタイヤは、軽量で、かつ耐カット性能に優れる。
【0030】
さらに上記補強層がランフラットタイヤに適用された場合には、この補強層は、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に寄与しうる。しかもこの補強層は、サイドウォールの部分におけるタイヤの厚みの低減に寄与しうる。このタイヤは、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図3の補強層の短繊維が示された模式図である。
【図5】図5は、補強層の形成に用いるテープの一部が示された斜視図である。
【図6】図6は、図1のタイヤの製造の様子が示された模式図である。
【図7】図7は、図1のタイヤの製造の別の様子が示された模式図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図9】図9は、図8のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【図10】図10は、従来の空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0033】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0034】
このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、補強層14、インナーライナー16、クッション層18及びチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0035】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4の外面は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド面22には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。図示されていないが、トレッド4は通常、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0036】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、その半径方向外側端において、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
【0037】
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。このタイヤ2では、ビード8は、第一パート26aと、第二パート26bとから構成されている。このタイヤ2では、軸方向において、第一パート26aはカーカス10の内側に位置している。軸方向において、第二パート26bはカーカス10の外側に位置している。
【0038】
第一パート26aは、第一コア28aと、この第一コア28aから半径方向外向きに延びる第一エイペックス30aとを備えている。第一コア28aはリング状であり、巻回された非伸縮性の第一ワイヤー32aを含む。このタイヤ2では、第一コア28aは第一ワイヤー32aが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第一ワイヤー32aの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス30aは、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス30aは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0039】
第二パート26bは、第二コア28bと、この第二コア28bから半径方向外向きに延びる第二エイペックス30bとを備えている。第二コア28bはリング状であり、巻回された非伸縮性の第二ワイヤー32bを含む。このタイヤ2では、第二コア28bは第二ワイヤー32bが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第二ワイヤー32bの典型的な材質は、スチールである。第二エイペックス30bは、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス30bは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0040】
カーカス10は、カーカスプライ34からなる。カーカスプライ34は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。このタイヤ2では、カーカスプライ34の端はビード8の第一パート26aとその第二パート26bとの間に挟まれている。
【0041】
図示されていないが、カーカスプライ34は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、2枚以上のカーカスプライ34から形成されてもよい。
【0042】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層36a及び外側層36bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36aの幅は外側層36bの幅よりも若干大きい。
【0043】
図示されていないが、内側層36a及び外側層36bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層36aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト12が、3以上の層を備えてもよい。
【0044】
補強層14は、軸方向において、カーカス10とサイドウォール6との間に位置している。図1において、補強層14はカーカス10に沿って略半径方向に延在している。
【0045】
このタイヤ2では、補強層14はトレッド4のショルダーからサイドウォール6へかけての領域に位置している。この領域は、バットレス領域と称される。
【0046】
図2は、図1のタイヤ2の一部が示された拡大断面図である。この図2には、タイヤ2のバットレス領域に位置する補強層14の一部がサイドウォール6、カーカスプライ34及びインナーライナー16の一部とともに示されている。この図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0047】
このタイヤ2では、補強層14はコード38とトッピングゴム40とからなる。コード38は、トッピングゴム40で覆われている。コード38は、周方向に延在している。より詳細には、このコード38は、周方向に延在するカーカス10に沿って渦巻き状に巻回されている。この補強層14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコード38は、補強層14の周方向への伸びを抑制する。コード38の好ましい材質は、スチールである。コード38に、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0048】
トッピングゴム40は、ゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴムを含む。この基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0049】
トッピングゴム40のゴム組成物は、短繊維をさらに含むことができる。短繊維は、トッピングゴム40の強度に寄与しうる。この短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。
【0050】
このタイヤ2では、トッピングゴム40に含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下が好ましい。この短繊維の配合量が10質量部以上に設定されることにより、トッピングゴム40が適度な強度を有する。このトッピングゴム40を有する補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうる。このタイヤ2は、耐カット性能及び操縦安定性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は、25質量部以上がより好ましい。この短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、コード38とトッピングゴム40との接着性が適切に維持される。このタイヤ2では、ルースの発生が防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。しかも、この補強層14による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ2は軽量である。この観点から、この短繊維の配合量は45質量部以下がより好ましい。なお、短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるトッピングゴム40のストレッチは困難な状態となり、この場合、このトッピングゴム40は引っ張ると直ぐに破断する。
【0051】
好ましくは、トッピングゴム40のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0052】
好ましくは、トッピングゴム40のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0053】
トッピングゴム40のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。トッピングゴム40の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。トッピングゴム40の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0054】
トッピングゴム40のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。トッピングゴム40の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。トッピングゴム40の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0055】
トッピングゴム40のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0056】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。この図3には、補強層14におけるトッピングゴム40の断面が示されている。この図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の周方向である。なお、この図3には、コード38は示されていない。
【0057】
図示されているように、トッピングゴム40は、多数の短繊維42と、マトリクス44とで構成されている。換言すれば、このトッピングゴム40は繊維補強ゴム(FRR)からなる。これら短繊維42は、マトリクス44に分散している。これら短繊維42の長手方向は、略周方向に沿っている。このトッピングゴム40において、短繊維42は周方向に配向している。この短繊維42を含んだトッピングゴム40は、適度な強度を有する。このトッピングゴム40を有する補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうる。このタイヤ2は、耐カット性能及び操縦安定性に優れる。
【0058】
図4は、図3のトッピングゴム40の短繊維42が示された模式図である。図4において、左右方向がタイヤ2の周方向である。矢印θで示されているのは、短繊維42の角度である。角度θは、直線X1と直線X2とのなす角度の絶対値である。直線X1は、周方向に延びている。直線X2は、短繊維42の一端46a及び他端46bを通過している。この角度θは、短繊維42の長手方向が周方向に対してなす角度である。角度θは、0°以上90°以下である。なお、図4中、両矢印Lで示されているのが繊維長である。この繊維長Lは、一端46aから他端46bまでの長さが計測されることにより得られる。
【0059】
トッピングゴム40を有する補強層14がタイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうるとの観点から、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。比率の算出においては、トッピングゴム40の断面に露出した短繊維42の角度が、測定される。無作為に抽出された100本の短繊維42について、角度の測定がなされる。なお、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合が、短繊維42が周方向に配向している状態である。
【0060】
このタイヤ2では、短繊維42が効果的にトッピングゴム40の強度を高めるという観点から、短繊維42の平均長さL(図4参照)は、20μm以上が好ましい。平均長さLが20μm以上である短繊維42により、トッピングゴム40が十分に補強される。マトリクス44への分散性の観点から、平均長さLは5000μm以下が好ましい。
【0061】
短繊維42の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましい。平均直径Dが0.04μm以上である短繊維42により、トッピングゴム40の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、平均直径Dは500μm以下が好ましい。
【0062】
短繊維42のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましい。アスペクト比(L/D)が10以上である短繊維42により、トッピングゴム40の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、アスペクト比(L/D)は500以下が好ましい。
【0063】
図1において、実線BBLは、ビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。両矢印Hは、このタイヤ2の断面高さを表している。この断面高さHは、ビードベースラインから赤道までの半径方向高さにより表される。赤道は、溝24がないと仮定した場合におけるトレッド面22と赤道面との交点である。両矢印hoは、ビードベースラインから補強層14の外端48までの半径方向高さを表している。両矢印hiは、ビードベースラインから補強層14の内端50までの半径方向高さを表している。符号P85は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H85)が断面高さHの0.85倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P75は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H75)が断面高さHの0.75倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P60は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H60)が断面高さHの0.60倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P50は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H50)が断面高さHの0.50倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。
【0064】
このタイヤ2では、補強層14はそのバットレス領域に存在している。より詳細には、半径方向において、位置P50から位置P85までの領域に、この補強層14は存在している。前述したように、この補強層14は周方向に延在するコード38を含んでおり、このコード38が補強層14の周方向への伸びを抑制する。この補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を補強する。さらに補強層14の一部をなすトッピングゴム40が周方向に配向した短繊維42を含んでいるので、この補強層14はこのバットレス領域を効果的に補強する。しかも、この補強層14は、バットレス領域におけるタイヤ2の厚みの低減に寄与しうる。このタイヤ2は、軽量で、かつ耐カット性能に優れる。この観点から、位置P60から位置P75までの領域にこの補強層14が存在しているのが好ましい。
【0065】
このタイヤ2では、半径方向において、補強層14の外端48はベルト12の端52よりも内側に位置しているのが好ましい。これにより、補強層14とベルト12との接触が防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、高さhoの断面高さHに対する比は0.85以下が好ましい。このタイヤ2では、この比は0.75以上が好ましい。これにより、補強層14がタイヤ2の耐カット性能の向上及びその軽量化に効果的に寄与しうる。しかもこの補強層14が剛性に効果的に寄与しうるので、このタイヤ2は操縦安定性にも優れる。
【0066】
このタイヤ2では、半径方向において、補強層14の内端50は位置P50と同等の位置又はこの位置P50よりも外側に位置しているのが好ましい。これにより、補強層14が質量に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は、軽量である。しかもこの補強層14が剛性に与える影響が抑えられるので、このタイヤ2は乗り心地に優れる。この観点から、高さhiの断面高さHに対する比は0.50以上が好ましい。このタイヤ2では、この比は0.60以下が好ましい。これにより、補強層14がタイヤ2の耐カット性能の向上及びその軽量化に効果的に寄与しうる。しかもこの補強層14が剛性に効果的に寄与しうるので、このタイヤ2は操縦安定性にも優れる。
【0067】
図1において、両矢印Dは位置P85におけるタイヤ2の外面からカーカス10までの厚みを表している。両矢印Eは、位置P50におけるタイヤ2の外面からカーカス10までの厚みを表している。
【0068】
このタイヤ2では、軽量化及び乗り心地の観点から、厚みDは9mm以下が好ましい。耐カット性能及び操縦安定性の観点から、この厚みDは4mm以上が好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、軽量化及び乗り心地の観点から、厚みEは6mm以下が好ましい。耐カット性能及び操縦安定性の観点から、この厚みEは2mm以上が好ましい。
【0070】
以上説明されたタイヤ2は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。
【0071】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー16が巻かれる。インナーライナー16の端に、ビード8の一部をなす第一パート26aが組み合わされる。第一パート26a及びインナーライナー16が組み合わされたものの外側に、カーカスプライ34が形成される。このカーカスプライ34の端に、ビード8の他の一部をなす第二パート26bが組み合わされる。
【0072】
この製造方法では、トッピングゴム40のゴム組成物がコード38とともに押し出され、図5に示されたテープ54が形成される。図5中、矢印Aで示された方向はこのテープ54の押出方向である。この押出方向は、テープ54の長さ方向でもある。コード38は、このテープ54において、押出方向、言い換えれば、その長さ方向に延在している。
【0073】
この製造方法では、テープ54はその幅方向に並列された15本以下のコード38を含むのが好ましい。テープ54に含まれるコード38の本数が15本以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止される。この製造方法では、適正な形状を有する補強層14を備えたタイヤ2が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、このテープ54に含まれるコード38の本数は7本以下がより好ましい。この製造方法では、テープ54に含まれるコード38の本数の下限値は1本である。生産性の観点から、この本数は3本以上に設定されるのが好ましい。なお、図5に示されたテープ54は3本のコード38を含んでいる。これらコード38は、テープ54の幅方向に並列されている。
【0074】
この製造方法では、前述したように、トッピングゴム40のゴム組成物は短繊維42を含んでいる。したがって、このテープ54も短繊維42を含んでいる。前述したように、テープ54はゴム組成物を押し出して成形される。したがって、このテープ54において、その押出方向、言い換えれば、その長さ方向に、短繊維42は配向している。ここで「長さ方向に配向」とは、短繊維42の長手方向がテープ54の長さ方向に対してなす角度が20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合を意味している。このテープ54における短繊維42の長手方向がテープ54の長さ方向に対してなす角度は、前述の、補強層14における角度θの計測方法と同様の方法で計測される。なお、比率の算出においては、テープ54の表面に露出した短繊維42の角度が、測定される。
【0075】
図示されていないが、この製造方法では、タイヤ2のバットレス領域に相当する部分において、テープ54が周方向に延在するカーカスプライ34に沿って、補強層14の外端48の位置に相当する位置からその内端50の位置に相当する位置に向かって渦巻き状に巻回される。言い換えれば、このテープ54は略周方向に巻回される。これにより、架橋により補強層14をなす要素がカーカス10上に形成される。前述したように、テープ54において短繊維42は、その長さ方向に配向している。テープ54は周方向に巻回されているので、この要素に含まれる短繊維42は周方向に配向している。
【0076】
図6は、形成途中にある補強層14が示された拡大断面図である。この図6において、矢印Bで示された方向に、テープ54は渦巻き状に巻回されながらカーカスプライ34に積層される。この製造方法では、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54の第一縁56aは積層されているテープ54の第二縁56bに継ぎ合わされる。これにより、テープ54が隙間なくカーカス10上に積層される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅と同等とされる。このようなテープ54の巻き回しは、「一重巻き」と称される。ここで、テープ54の送りピッチは積層されているテープ54の第二縁56bから積層されるテープ54の第二縁56bまでのカーカス10に沿った距離で表される。
【0077】
この製造方法では、タイヤ2の軽量化が重視される場合、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54が積層されているテープ54と間隔を空けて配置されてもよい。これにより、テープ54が疎らに巻回された補強層14が形成される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅とこの間隔との和と同等とされる。この製造方法では、このようなテープ54の巻き回しは「疎巻き」と称される。
【0078】
この製造方法では、タイヤ2の耐カット性能が重視される場合、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54が積層されているテープ54に重ね合わされてもよい。これにより、テープ54が幾重にも巻回された補強層14が形成される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅よりも小さくされる。この製造方法では、特に、テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が1.5となるようなテープ54の巻回しは、「1.5重巻き」と称される。テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が2.0となるようなテープ54の巻回しは、「2重巻き」と称される。テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が3となるようなテープ54の巻回しは、「3重巻き」と称される。
【0079】
この製造方法では、補強層14が形成されると、ベルト12、サイドウォール6、トレッド4等がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ2)が得られる。この製造方法では、ローカバーが組み立てられる工程は成形工程と称される。
【0080】
この製造方法では、中子の外面において補強層14をはじめとする多数の要素が組み合わされてローカバーが得られる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0081】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0082】
この製造方法では、モールドが締められると、ローカバーはモールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この状態が、図7に示されている。
【0083】
この製造方法では、ローカバー(図7中の符号R)は、中子(図7中の符号N)及びモールド(図7中の符号M)からの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーRをなす各要素のゴム組成物が流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図1に示されたタイヤ2が得られる。このタイヤ2は、ローカバーRをモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティ(図7中の符号C)内で加圧及び加熱することにより形成される。この製造方法では、ローカバーRが加圧及び加熱される工程は架橋工程と称される。
【0084】
前述したように、この製造方法では、ローカバーRは中子Nに組み合わされた状態でモールドMに投入され、モールドMのキャビティ面58と中子Nの外面60とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーRは引き延ばされない。
【0085】
このタイヤ2の補強層14は、短繊維42を含むゴム組成物からなるトッピングゴム40と周方向に延在するコード38とを含む要素をモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティC内で加圧及び加熱されることにより形成される。この要素は、ほとんど伸びない。
【0086】
前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーRをなす各要素は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーRをなす各要素は引き延ばされない。このため、このローカバーRは、その一部にほとんど伸びない要素を含んでいても、成形されうる。そして、このローカバーRからタイヤ2が得られる。この製造方法によれば、周方向に延在するコード38を含む補強層14を備えたタイヤ2が高品質にしかも安定に生産されうる。この製造方法によれば、この補強層14をなすトッピングゴム40が多量の短繊維42を含んでいても、タイヤ2が高品質にしかも安定に生産されうる。
【0087】
図5において、両矢印WTは補強層14の形成に用いるテープ54の幅を表している。両矢印TTは、このテープ54の厚みを表している。
【0088】
この製造方法では、幅WTは1mm以上15mm以下が好ましい。この幅WSが1mm以上に設定されることにより、補強層14の形成に要する時間が生産性に与える影響が抑えられる。この観点から、この幅WTは3mm以上が好ましい。この幅WTが15mm以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止されるので、適正な形状を有する補強層14が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この幅WTは7mm以下がより好ましい。
【0089】
この製造方法では、厚みTTは0.5mm以上2mm以下が好ましい。この厚みTTが0.5mm以上に設定されることにより、適度な強度を有するテープ54が得られる。この製造方法では、タイヤ2の生産性が適切に維持されうる。この厚みTTが2mm以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止されるので、適正な形状を有する補強層14が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この補強層14による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ2は軽量である。
【0090】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤの各部材の寸法及び角度も、同様にして測定される。
【0091】
図8には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ92が示されている。図8において、上下方向がタイヤ92の半径方向であり、左右方向がタイヤ92の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ92の周方向である。図8において、一点鎖線CLはタイヤ92の赤道面を表わす。このタイヤ92の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。実線BBLは、ビードベースラインを表している。両矢印Hは、このタイヤ92の断面高さを表している。この断面高さHは、ビードベースラインから赤道までの半径方向高さにより表される。符号P85は、ビードベースラインからの半径方向距離(図8中の、両矢印H85)が断面高さHの0.85倍となる、このタイヤ92の外面上の位置を表している。符号P50は、ビードベースラインからの半径方向距離(図8中の、両矢印H50)が断面高さHの0.50倍となる、このタイヤ92の外面上の位置を表している。
【0092】
このタイヤ92は、トレッド94、サイドウォール96、クリンチ98、ビード100、カーカス102、ベルト104、バンド106、インナーライナー108、チェーファー110、荷重支持部112及び補強層114を備えている。このタイヤ92は、チューブレスタイプである。このタイヤ92は、乗用車に装着される。
【0093】
トレッド94は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド94の外面は、路面と接地するトレッド面116を形成する。トレッド面116には、溝118が刻まれている。この溝118により、トレッドパターンが形成されている。トレッド94は、ベース層120とキャップ層122とを有している。キャップ層122は、ベース層120に積層されている。ベース層120は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。このベース層120の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層122は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0094】
サイドウォール96は、トレッド94の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール96は、その半径方向外側端において、トレッド94と接合されている。サイドウォール96は、その半径方向内側端において、クリンチ98と接合されている。サイドウォール96は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール96は、カーカス102の損傷を防止する。
【0095】
クリンチ98は、サイドウォール96の半径方向略内側に位置している。クリンチ98は、軸方向において、ビード100及びカーカス102よりも外側に位置している。クリンチ98は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ98は、リムのフランジと当接する。
【0096】
ビード100は、サイドウォール96よりも半径方向略内側に位置している。ビード100は、クリンチ98の軸方向内側に位置している。このタイヤ92では、ビード100は、第一コア124aと、第二コア124bとから構成されている。第一コア124aは、軸方向においてカーカス102の内側に位置している。第二コア124bは、軸方向においてカーカス102の外側に位置している。このタイヤ92のビード100には、図1に示されたタイヤ2のビード8のように、架橋ゴムからなるエイペックスは設けられていない。
【0097】
このタイヤ92では、第一コア124aはリング状であり、渦巻き状に巻回された第一ワイヤー126aからなる。換言すれば、このタイヤ92のビード100は渦巻き状に巻回された第一ワイヤー126aを含む。第一ワイヤー126aの典型的な材質は、スチールである。
【0098】
このタイヤ92では、第二コア124bはリング状であり、渦巻き状に巻回された第二ワイヤー126bからなる。換言すれば、このタイヤ92のビード100は渦巻き状に巻回された第二ワイヤー126bを含む。第二ワイヤー126bの典型的な材質は、スチールである。
【0099】
カーカス102は、カーカスプライ128からなる。カーカスプライ128は、両側のビード100の間に架け渡されており、トレッド94及びサイドウォール96の内側に沿っている。このタイヤ92では、カーカスプライ128の端はビード100の第一コア124aとその第二コア124bとの間に挟まれている。
【0100】
図示されていないが、カーカスプライ128は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス102はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0101】
ベルト104は、トレッド94の半径方向内側に位置している。ベルト104は、カーカス102の半径方向外側に位置している。ベルト104は、カーカス102と積層されている。ベルト104は、カーカス102を補強する。ベルト104は、内側層130a及び外側層130bからなる。図8から明らかなように、軸方向において、内側層130aの幅は外側層130bの幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層130a及び外側層130bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層130aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層130bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト104の軸方向幅は、タイヤ92の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト104が、3以上の層を備えてもよい。
【0102】
バンド106は、ベルト104の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド106の幅はベルト104の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド106は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド106は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト104が拘束されるので、ベルト104のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0103】
インナーライナー108は、カーカス102の内側に位置している。このインナーライナー108は、タイヤ92の内面を形成している。インナーライナー108は、架橋ゴムからなる。インナーライナー108には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー108の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー108は、タイヤ92の内圧を保持する。
【0104】
チェーファー110は、ビード100の近傍に位置している。タイヤ92がリムに組み込まれると、このチェーファー110がリムと当接する。この当接により、ビード100の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー110は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー110が、クリンチ98と一体とされてもよい。この場合、チェーファー110の材質はクリンチ98の材質と同じとされる。
【0105】
荷重支持部112は、軸方向においてサイドウォール96の内側に位置している。荷重支持部112は、カーカス102に沿って半径方向に延在している。このタイヤ92では、荷重支持部112は、内側支持層132aと外側支持層132bとを備えている。内側支持層132aは、カーカス102とインナーライナー108との間に位置している。外側支持層132bは、カーカス102とサイドウォール96との間に位置している。
【0106】
内側支持層132aは、軸方向において、カーカス102の内側に位置している。このタイヤ92では、半径方向におけるこの内側支持層132aの内側部分は、軸方向において第一コア124aの内側に位置している。図示されているように、この内側支持層132aは第一コア124aからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。
【0107】
外側支持層132bは、軸方向において、カーカス102の外側に位置している。このタイヤ92では、半径方向におけるこの外側支持層132bの内側部分は、軸方向において第二コア124bの外側に位置している。図示されているように、この外側支持層132bは第二コア124bからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。
【0108】
このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、内側支持層132a及び外側支持層132bからなる荷重支持部112が車重を支える。これにより、内圧が低い場合でも、タイヤ92はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ92は、ランフラットタイヤである。このランフラットタイヤ92は、サイド補強型である。
【0109】
このタイヤ92では、内側支持層132aは架橋ゴムからなる。外側支持層132bは、架橋ゴムからなる。言い換えれば、この内側支持層132a及び外側支持層132bのそれぞれはゴム組成物が架橋されたものからなる。
【0110】
このタイヤ92では、内側支持層132aの硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この内側支持層132aが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0111】
本願において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図8に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
【0112】
このタイヤ92では、外側支持層132bの硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この外側支持層132bが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0113】
内側支持層132a及び外側支持層132bのそれぞれは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、従来のタイヤ62においてビード72の一部を構成するエイペックス88は不要である。この内側支持層132a及び外側支持層132bの採用は、タイヤ92を構成する部材の数の低減に寄与しうる。このタイヤ92によれば、生産コストの低減が達成される。
【0114】
このタイヤ92では、荷重支持部112の一部をなす内側支持層132aは第一短繊維を含むことができる。この場合、この内側支持層132aをなす第一ゴム組成物は、第一基材ゴム及び第一短繊維を含む。これにより、パンクによってタイヤ92の内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重を効果的に支えうる。この第一短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この第一短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。なお、第一基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。第一基材ゴムとして、2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0115】
このタイヤ92では、内側支持層132aの強度及びこの内側支持層132aにおける第一短繊維の分散性の観点から、この第一短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この第一短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この第一短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0116】
このタイヤ92では、内側支持層132aが第一短繊維を含む場合、この内側支持層132aに含まれる第一短繊維の配合量は、この内側支持層132aをなす第一ゴム組成物の第一基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましい。この第一短繊維の配合量が5質量部以上に設定されることにより、内側支持層132aが適度な強度を有する。この内側支持層132aは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。この観点から、この第一短繊維の配合量は、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。この第一短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、内側支持層132aがインナーライナー108及びカーカス102のそれぞれと十分に接合されうる。このタイヤ92は、耐久性に優れる。この観点から、この第一短繊維の配合量は55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。なお、第一短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるこの第一ゴム組成物からなる成形物(例えば、後述の第一ストリップ)のストレッチは困難な状態となる。この場合、この成形物は引っ張ると直ぐに破断してしまう。
【0117】
このタイヤ92では、内側支持層132aが第一短繊維を含む場合、この第一短繊維はこの内側支持層132aにおいて周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の第一短繊維は、内側支持層132aの強度に寄与しうる。この内側支持層132aは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重を支えうる。しかも内側支持層132aに含まれる第一短繊維が周方向に配向しているので、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの内側支持層132aに含まれる第一短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。なお、内側支持層132aにおいて第一短繊維が周方向に配向している状態は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様にして判断される。後述する、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合においても同様にして、外側支持層132bにおいて第二短繊維が周方向に配向している状態が判断される。
【0118】
このタイヤ92では、外側支持層132bは第二短繊維を含むことができる。この場合、この外側支持層132bをなす第二ゴム組成物は、第二基材ゴム及び第二短繊維を含む。これにより、パンクによってタイヤ92の内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重を効果的に支えうる。この第二短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この第二短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。なお、第二基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。第二基材ゴムとして、2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0119】
このタイヤ92では、外側支持層132bの強度及びこの外側支持層132bにおける第二短繊維の分散性の観点から、この第二短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この第二短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この第二短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0120】
このタイヤ92では、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合、この外側支持層132bに含まれる第二短繊維の配合量は、この外側支持層132bをなす第二ゴム組成物の第二基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましい。この第二短繊維の配合量が5質量部以上に設定されることにより、外側支持層132bが適度な強度を有する。この外側支持層132bは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。この観点から、この第二短繊維の配合量は、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。この第二短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、外側支持層132bがサイドウォール96及びカーカス102のそれぞれと十分に接合されうる。このタイヤ92は、耐久性に優れる。この観点から、この第二短繊維の配合量は55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。なお、第二短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるこの第二ゴム組成物からなる成形物(例えば、後述の第二ストリップ)のストレッチは困難な状態となる。この場合、この成形物は引っ張ると直ぐに破断してしまう。
【0121】
このタイヤ92では、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合、この第二短繊維はこの外側支持層132bにおいて周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の第二短繊維は、外側支持層132bの強度に寄与しうる。この外側支持層132bは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重を支えうる。しかも外側支持層132bに含まれる第二短繊維が周方向に配向しているので、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの外側支持層132bに含まれる第二短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。
【0122】
このタイヤ92では、軸方向においてカーカス102の外側及び内側のそれぞれに、半径方向に延在する支持層132が設けられている。このタイヤ92では、そのサイドウォール96の部分において、特異な剛性を有する部分の形成が防止されている。歪みの集中が抑えられるので、パンクによって内圧が低下した場合においても、このタイヤ92はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ92は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に優れる。特異な剛性を有する部分の形成防止の観点から、このタイヤ92では内側支持層132aと外側支持層132bとは同等のゴム組成物から形成されるのが好ましい。
【0123】
このタイヤ92の補強層114は、軸方向において、カーカス102とサイドウォール96との間に位置している。より詳細には、この補強層114は、軸方向においてカーカス102と外側支持層132bとの間に位置している。図示されているように、この補強層114は外側支持層132bで覆われている。
【0124】
このタイヤ92では、補強層114は第二コア124bからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。補強層114の外端134はトレッド94の端の近傍に位置している。補強層114の内端136は、ビード100の近傍に位置している。この補強層114の一部は、バットレス領域に位置している。より詳細には、この補強層114の一部は、半径方向において、位置P50から位置P85までの領域に存在している。
【0125】
補強層114は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様、コードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、コードはトッピングゴムで覆われている。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0126】
図示されていないが、補強層114のコードは周方向に延在するカーカス102に沿って渦巻き状に巻回されている。この補強層114は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードは、補強層114の周方向への伸びを抑制する。これにより、補強層114の剛性が高められている。この補強層114は、タイヤ92のバットレス領域からビード100に至る部分、言い換えれば、サイドウォール96の部分を効果的に補強しうる。この補強層114は、車重支持に効果的に寄与しうる。このタイヤ92は、パンクした場合においても、ある程度の距離を走行しうる。この補強層114は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に寄与しうる。しかもこの補強層114は、このタイヤ92のサイドウォール96の部分における厚みの低減に寄与しうる。この補強層114は、タイヤ92の軽量化に寄与しうる。このタイヤ92は、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れる。
【0127】
このタイヤ92では、補強層114のコードは略周方向に延在している。このため、補強層114による、サイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。
【0128】
補強層114のトッピングゴムは、ゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴムを含む。この基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0129】
トッピングゴムのゴム組成物は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様、短繊維をさらに含むことができる。短繊維は、トッピングゴムの強度に寄与しうる。この短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。
【0130】
このタイヤ92では、トッピングゴムの強度及びこのトッピングゴムにおける短繊維の分散性の観点から、この短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0131】
このタイヤ92では、補強層114のトッピングゴムが短繊維を含む場合、この短繊維はこの補強層114において周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の短繊維は、補強層114の強度に寄与しうる。この補強層114は、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、補強層114が車重支持に効果的に寄与しうる。しかも補強層114に含まれる短繊維が周方向に配向しているので、補強層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの補強層114に含まれる短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。なお、補強層114において短繊維が周方向に配向している状態は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様にして判断される。
【0132】
このタイヤ92では、補強層114のトッピングゴムが短繊維を含む場合、このトッピングゴムに含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下が好ましい。この短繊維の配合量が10質量部以上に設定されることにより、トッピングゴムが適度な強度を有する。このトッピングゴムを有する補強層114は、サイドウォール96の部分を効果的に補強しうる。この観点から、この短繊維の配合量は、25質量部以上がより好ましい。この短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、コードとトッピングゴムとの接着性が適切に維持される。このタイヤ92では、ルースの発生が防止される。しかも、この補強層114による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ92は軽量である。この観点から、この短繊維の配合量は45質量部以下がより好ましい。なお、短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるトッピングゴムのストレッチは困難な状態となり、この場合、このトッピングゴムは引っ張ると直ぐに破断する。
【0133】
このタイヤ92では、補強層114をなすトッピングゴムのゴム組成物は、前述の、基材ゴム及び短繊維以外に、図1に示されたタイヤ2の補強層14の一部をなすトッピングゴム40のゴム組成物と同様、硫黄、加硫促進剤、補強材、軟化剤等が、必要に応じ添加される。
【0134】
このタイヤ92の補強層114は、バットレス領域からビード100に至る部分において、カーカス102に沿って半径方向に延在している。図示されているように、補強層114の外端134はベルト104の端138の近傍に位置している。このタイヤ92では、この補強層114の外端134はベルト104の端138から適切な距離をあけて配置されるのが好ましい。言い換えれば、補強層114の外端134からベルト104の端138までの距離が適切に調整されるのが好ましい。これにより、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性が向上されるとともに、ベルト104の端138におけるルースの発生が防止される。
【0135】
このタイヤ92では、補強層114の内端136は、半径方向において、ビード100の外端140と一致している、又は、このビード100の外端140よりも外側にあるのが好ましい。これにより、補強層114とビード100との軸方向における重なりが防止される。この場合、補強層114によるタイヤ92の質量への影響が抑制される。補強層114とビード100との境界において、特異な剛性を有する部分の形成が防止されるとの観点から、補強層114の内端136は、半径方向において、ビード100の外端140と一致しているのがより好ましい。
【0136】
以上説明されたタイヤ92は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。
【0137】
この製造方法では、内側支持層132aの第一ゴム組成物が押し出され、第一ストリップが形成される。図示されていないが、この製造方法では、第一ストリップはその断面形状が矩形状を呈するように成形される。タイヤ92の生産性の観点から、この第一ストリップの幅は5mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この第一ストリップの厚みは、0.4mm以上が好ましく、2.5mm以下が好ましい。
【0138】
この製造方法では、外側支持層132bの第二ゴム組成物が押し出され、第二ストリップが形成される。図示されていないが、この製造方法では、第二ストリップはその断面形状が矩形状を呈するように成形される。タイヤ92の生産性の観点から、この第二ストリップの幅は5mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この第二ストリップの厚みは、0.4mm以上が好ましく、2.5mm以下が好ましい。
【0139】
この製造方法では、補強層114をなすトッピングゴムのゴム組成物がそのコードとともに押し出され、テープが形成される。この製造方法では、テープの巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成を防止し、適正な形状を有する補強層114が得られるとの観点から、このテープに含まれるコードの本数は15本以下が好ましい。生産性の観点から、このテープに含まれるコードの本数は3本以上が好ましい。図示されていないが、このテープは3本のコードを含んでいる。これらコードは、テープの幅方向に並列している。このテープは、図5に示されたテープ54と同等である。
【0140】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー108が巻かれる。このインナーライナー108上を第一ストリップが周方向に巻回される。これにより、このタイヤ92のサイドウォール96に相当する部分に、内側支持層132aが形成される。第一ワイヤー126aが渦巻き状に密に巻回され、第一コア124aが形成される。インナーライナー108、内側支持層132a及び第一コア124aが組み合わされたものの外側に、カーカスプライ128が形成される。このカーカスプライ128の端の部分において、第二ワイヤー126aが渦巻き状に密に巻回され、第二コア124bが形成される。
【0141】
この製造方法では、タイヤ92のバットレス領域からビード100に至る部分に相当する部分において、周方向に延在するカーカスプライ128に沿ってテープが渦巻き状に巻回される。言い換えれば、このテープは略周方向に巻回される。これにより、補強層114がカーカス102上に形成される。図示されていないが、このテープは隙間なくカーカス102上に積層されている。このテープは「一重巻き」で巻回されている。なお、この製造方法では、タイヤ92の軽量化が重視される場合、このテープが「疎巻き」で巻回されてもよい。車重支持のために剛性確保及び耐カット性能が重視される場合、このテープが「1.5重巻き」で巻回されてもよいし、「2重巻き」で巻回されてもよい。このテープを「3重巻き」で巻回した場合は、この補強層114がタイヤ92の質量に影響することがある。
【0142】
この製造方法では、補強層114が形成されると、第二ストリップが周方向に巻回され、外側支持層132bが形成される。ベルト104、サイドウォール96、トレッド94等がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。
【0143】
このタイヤ92の製造方法では、トロイダル状の中子の外面において補強層114をはじめとする多数の部材が組み合わされてローカバーが組み立てられる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0144】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0145】
この製造方法では、モールドが締められると、ローカバーはモールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。
【0146】
この製造方法では、ローカバーは、中子及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーをなす各要素のゴム組成物は流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図8に示されたタイヤ92が得られる。このタイヤ92は、ローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより形成される。
【0147】
この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入され、モールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0148】
前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーをなす各要素は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーをなす各要素は引き延ばされない。このため、この製造方法では、そのサイドウォール96の部分に略周方向に延在するコードを含む補強層114が配置されたローカバーの組み立てが可能である。そして、このローカバーからタイヤ92が得られる。換言すれば、この製造方法では、ローカバーの変形を伴う従来の製造方法で生産できなかった、サイドウォール96の部分に略周方向に延在するコードを含む補強層114を備えるタイヤ92が、高品質にしかも安定に生産されうる。この製造方法によれば、内側支持層132a又は外側支持層132bをなすゴム組成物に、これを引っ張ると伸びずに破断してしまう程度に多量の短繊維が配合された場合においても、ローカバーは成形されうる。そして、このローカバーからタイヤ92が得られる。この製造方法では、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れるタイヤ92が生産されうる。
【0149】
図8において、両矢印hoは、ビードベースラインから補強層114の外端134までの半径方向高さを表している。両矢印hiは、ビードベースラインから補強層114の内端136までの半径方向高さを表している。両矢印hbは、ビードベースラインからビード100の外端140までの半径方向高さを表している。
【0150】
このタイヤ92では、高さhoの断面高さHに対する比Roは0.60以上0.85以下が好ましい。この比Roが0.60以上に設定されることにより、車重支持のための剛性が確保されるとともに耐カット性能が向上しうる。この観点から、この比Roは0.70以上がより好ましい。この比Roが0.85以下に設定されることにより、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性が向上されるとともに、ベルト104の端138におけるルースの発生が防止される。この観点から、この比Roは0.75以下がより好ましい。
【0151】
このタイヤ92では、高さhiの断面高さHに対する比Riは0.10以上0.30以下が好ましい。この比Riが0.10以上に設定されることにより、補強層114によるタイヤ92の質量への影響が抑制される。この観点から、この比Riは0.19以上がより好ましい。この比Riが0.30以下に設定されることにより、補強層114がタイヤ92のサイドウォール96の部分における、剛性の均整化に寄与しうる。このタイヤ92は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に優れる。この観点から、この比Riは0.25以下がより好ましい。
【0152】
このタイヤ92では、高さhbの断面高さHに対する比Rbは、0.10以上0.30以下が好ましい。この比Rbが0.10以上に設定されることにより、ビード100がパンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に効果的に寄与しうる。この比Rbが0.30以下に設定されることにより、このビード100による、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性への影響が抑えられる。
【0153】
このタイヤ92では、比Riと比Rbとの差(Ri−Rb)は0.10以下が好ましい。これにより、補強層114とビード100との境界において、特異な剛性を有する部分の形成が防止される。この観点から、この比は0.05以下がより好ましい。この差(Ri−Rb)は0以上とされるのが好ましい。これにより、補強層114とビード100との軸方向における重なりが防止される。補強層114とビード100との軸方向における重なりと、補強層114とビード100との境界において特異な剛性を有する部分の形成とが防止されるとの観点から、この差(Ri−Rb)は0とされるのが特に好ましい。
【0154】
図9には、図8に示されたタイヤ92の一部が示されている。この図9において、両矢印Tは、位置P50におけるタイヤ92の厚みを表している。両矢印Tiは、位置P50における内側支持層132aの厚みを表している。両矢印Toは、位置P50における外側支持層132bの厚みを表している。
【0155】
このタイヤ92では、厚みTは9mm以上17mm以下が好ましい。この厚みTが9mm以上に設定されることにより、このタイヤ92のサイドウォール96の部分が車重支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みTは11mm以上がより好ましい。この厚みTが17mm以下に設定されることにより、このタイヤ92の剛性過大が防止される。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この厚みTは15mm以下がより好ましい。
【0156】
このタイヤ92では、厚みTiは2mm以上10mm以下が好ましい。この厚みTiが2mm以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みTiは3mm以上がより好ましい。この厚みTiが10mm以下に設定されることにより、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みTiが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みTiは7mm以下がより好ましい。
【0157】
このタイヤ92では、厚みToは2mm以上10mm以下が好ましい。この厚みToが2mm以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みToは3mm以上がより好ましい。この厚みToが10mm以下に設定されることにより、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みToが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みToは7mm以下がより好ましい。
【0158】
このタイヤ92では、厚みTiは厚みToと同等とされる、または、この厚みToよりも大きくされるのが好ましい。車重支持の観点から、厚みTiは厚みToよりも大きくされるのがより好ましい。より詳細には、厚みTiの厚みToに対する比は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。この比は、3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。
【実施例】
【0159】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0160】
[実験A]
[実施例1]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図1に示された基本構成を備え、下記の表2に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。このタイヤが中子工法で製造されたことが、この表において「A」で表されている。このタイヤでは、補強層の外端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.78とされた。補強層の内端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.57とされた。この補強層の形成に用いたテープの幅WTは、3.0mmとされた。巻回しにおけるテープの送りピッチは、3.0mmとされた。したがって、テープ同士の間隔は、0mmである。この実施例1におけるテープの巻回しは、「1重巻き」と称される。テープに含まれるコードには、スチールコード(「1×1」構造、直径=0.30mm)が用いられた。このことが、表中、「スチール」で表されている。テープに含まれるコードの本数は、3本とされた。この補強層の一部をなすトッピングゴムには、その短繊維の配合量が40質量部とされたゴム組成物が用いられた。短繊維には、アラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)が用いられた。位置P85における厚みDは、7.5mmとされた。位置P50における厚みEは、4.0mmとされた。
【0161】
[実施例7−13]
短繊維の配合量を下記の表2及び3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7−13のタイヤを得た。
【0162】
[実施例2−6]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、コードの本数を下記の表1及び2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−6のタイヤを得た。
【0163】
[実施例14−25]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、比(ho/H)及び比(hi/H)を下記の表4及び5の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14−25のタイヤを得た。
【0164】
[実施例26−33]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、幅WT、ピッチ及び間隔を下記の表6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例26−33のタイヤを得た。この実施例26−30におけるテープの巻回しは、「疎巻き」と称される。実施例31におけるテープの巻回しは、「1.5重巻き」と称される。実施例32におけるテープの巻回しは、「2重巻き」と称される。実施例33におけるテープの巻回しは、「3重巻き」と称される。
【0165】
[比較例1−2]
比較例1−2は、中子工法で製造された従来のタイヤである。この比較例1−2には、補強層は設けられていない。比較例1では、厚みDが7.5mm、厚みEが4.0mmとされた。比較例2では、厚みDが9.0mm、厚みEが4.0mmとされた。
【0166】
[比較例3]
従来の製造方法により、実施例3と同じ構成を有する比較例3のタイヤを製作した。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように従来の工法でタイヤを製造したことが、この表において「C」で表されている。
【0167】
[補強層の質量]
補強層の形成に用いたテープの質量を計測した。この結果が、実施例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0168】
[タイヤの質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0169】
[耐カット性能]
タイヤを15×6JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、速度(開始速度は5km/h)を変えながら、タイヤを縁石に衝突させた。タイヤのサイド部にカットが生じた速度に基づいて、指数化した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0170】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.0kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行時間を、測定した。この結果が、指数として、下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0171】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを15×6JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0172】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果が、下記の表1から7に、比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
【表6】
【0179】
【表7】
【0180】
表1から7に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例3では、シェーピング中に補強層が変形しなかったために、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例3のタイヤは製造できなかった。
【0181】
[実験B]
[実施例34]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図8に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた実施例34の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、ランフラットタイヤである。このタイヤが中子工法で製造されたことが、この表において「A」で表されている。このタイヤでは、補強層の外端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.73とされた。補強層の内端までの半径方向高さhiの断面高さHに対する比(hi/H)は、0.20とされた。この補強層の形成に用いたテープの幅WTは、3.0mmとされた。巻回しにおけるテープの送りピッチは、3.0mmとされた。したがって、テープ同士の間隔は、0mmである。この実施例34におけるテープの巻回しは、「1重巻き」と称される。テープに含まれるコードには、スチールコード(「1×1」構造、直径=0.30mm)が用いられた。このことが、表中、「スチール」で表されている。テープに含まれるコードの本数は、3本とされた。この補強層の一部をなすトッピングゴムには、短繊維は配合されていない。
【0182】
このタイヤでは、内側支持層は第一ストリップを用いて形成された。この第一ストリップの幅は16mmとされ、その厚みは1.0mmとされた。この内側支持層には、短繊維は配合されていない。この内側支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、内側支持層の厚みTiは5.5mmとされた。外側支持層は第二ストリップを用いて形成された。この第二ストリップの幅は16mmとされ、その厚みは1.0mmとされた。この外側支持層には、短繊維は配合されていない。この外側支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、外側支持層の厚みToは3.5mmとされた。なお、このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、厚みTは13mmとされた。ビードベースラインからビードの外端までの半径方向高さhbの、タイヤ断面高さHに対す比(hb/H)は、0.20とされた。
【0183】
[実施例35−39]
補強層形成のためのテープの仕様を下記の表9の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例35−39のタイヤを得た。
【0184】
[実施例40−43]
比(ho/H)を下記の表10の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例40−43のタイヤを得た。
【0185】
[実施例44−50]
比(hi/H)を下記の表10、11及び12の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例44−50のタイヤを得た。
【0186】
[実施例51−57]
テープのピッチ及び間隔を下記の表12及び13の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例51−57のタイヤを得た。この実施例51−55におけるテープの巻回しは、「疎巻き」と称される。実施例56におけるテープの巻回しは、「1.5重巻き」と称される。実施例57におけるテープの巻回しは、「2重巻き」と称される。
【0187】
[実施例58−66]
テープのトッピングゴムにアラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)を配合し、その配合量を下記の表13、14及び15の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例58−66のタイヤを得た。実施例58−60のそれぞれでは、未架橋状態でトッピングゴムをその長さ方向に引っ張ると、このトッピングゴムは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。これら以外では、トッピングゴムをその長さ方向に引っ張るとこのトッピングゴムは直ぐに破断した。
【0188】
[実施例67−76]
内側支持層及び外側支持層のそれぞれにアラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)を配合し、その配合量を下記の表15、16及び17の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例67−76のタイヤを得た。実施例67−70のそれぞれでは、内側支持層をなす第一ストリップ及び外側支持層をなす第二ストリップをその長さ方向に引っ張ると、これらは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。実施例71−76では、第一ストリップ及び第二ストリップをその長さ方向に引っ張るとこれらは直ぐに破断した。
【0189】
[実施例77−81]
厚みT、厚みTo及び厚みTiを下記の表17及び18の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例77−81のタイヤを得た。
【0190】
[比較例7]
補強層を軸方向においてカーカスの内側に設けた他は実施例34と同様にして、比較例7のタイヤを得た。
【0191】
[比較例4]
従来の製造方法により、図9に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた比較例4の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、従来のランフラットタイヤである。このタイヤが従来の製造方法で製造されたことが、この表において「C」で表されている。このタイヤの荷重支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さHの半分の高さHhにおける、このタイヤの厚みTは15mmとされた。なお、この荷重支持層には短繊維は含まれていない。このタイヤのビードは、エイペックスを備えている。
【0192】
[比較例5−6]
従来の製造方法により、実施例34と同じ構成を有する比較例6のタイヤと、実施例80と同じ構成を有する比較例5のタイヤとを製作した。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように従来の工法でタイヤを製造したことが、この表において「C」で表されている。
【0193】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例4を100とした指数値で下記の表8から18に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0194】
[ランフラット耐久性]
タイヤがパンクして内圧が低下した場合における、耐久性を、以下のようにして評価した。タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.5kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例4を100とした指数値で下記の表8から18に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0195】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを18×8.5Jのリムに組み込み、標準内圧となるようにタイヤに空気を充填した。これを、排気量が3.0リットルであり、前側エンジン後輪駆動の乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表8から18に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0196】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果が、下記の表8から18に、比較例4を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0197】
【表8】
【0198】
【表9】
【0199】
【表10】
【0200】
【表11】
【0201】
【表12】
【0202】
【表13】
【0203】
【表14】
【0204】
【表15】
【0205】
【表16】
【0206】
【表17】
【0207】
【表18】
【0208】
表8から18に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例5及び6では、シェーピング中に補強層がローカバーの変形に追随できなかったため、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例5及び6のタイヤは製造できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0209】
以上説明された方法は、様々なタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0210】
2、62、92・・・タイヤ
4、64,94・・・トレッド
6、68、96・・・サイドウォール
8、72、100・・・ビード
10、74、102・・・カーカス
12、78、104・・・ベルト
14、114・・・補強層
28a、28b、86,124a、124b・・・コア
32a、32b、126a、126b・・・ワイヤー
34、90、128・・・カーカスプライ
38・・・コード
40・・・トッピングゴム
42・・・短繊維
48・・・外端
50・・・内端
54・・・テープ
56a、56b・・・縁
76・・・荷重支持層
88・・・エイペックス
112・・・荷重支持部
132a、132b・・・支持層
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、フォーマーのドラム上で、トレッド、サイドウォール等の部材を多数組み合わせて、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。このローカバーの成形工程では、ドラムが拡径され、ローカバーの形状が整えられる。
【0003】
この製造方法では、ローカバーはモールドに投入される。このとき、ブラダーはローカバーの内側に位置している。ブラダーにガスが充填されると、ブラダーは膨張する。これにより、ローカバーは変形する。モールドが締められ、ブラダーの内圧が高められる。ローカバーは、モールドとブラダーとに挟まれ加圧される。ローカバーは、ブラダー及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0004】
地球環境保護の観点から、車両の低燃費化が指向されている。低燃費化の一環として、軽量なタイヤが望まれている。
【0005】
タイヤの性能は、これを構成する部材の特性を調整することにより制御される。軽量の観点から、小さな厚みを有するサイドウォールがタイヤに採用されることがある。薄いサイドウォールは、タイヤが縁石に衝突したときに、損傷しやすい。このタイヤは、耐カット性能に劣る。
【0006】
軽量と耐カット性能との観点から、カーカスプライとサイドウォールとの間に、ゴム補強層及び繊維補強層がタイヤに設けられることがある。このタイヤの一例が、特開2006−160106公報に開示されている。
【0007】
図10には、従来タイヤ62の一例としてランフラットタイヤが示されている。このタイヤ62は、トレッド64、ウィング66、サイドウォール68、クリンチ70、ビード72、カーカス74、荷重支持層76、ベルト78、バンド80、インナーライナー82及びチェーファー84を備えている。
【0008】
このタイヤ62では、ビード72は、コア86と、このコア86から半径方向外向きに延びるエイペックス88とを備えている。コア86はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤーを含む。エイペックス88は、半径方向外向きに先細りなテーパ状であり、高硬度な架橋ゴムからなる。カーカス74をなすカーカスプライ90は、両側のビード72の間に架け渡されており、トレッド64及びサイドウォール68の内側に沿っている。カーカスプライ90は、コア86の周りを、軸方向内側から外側に向かって巻かれている。カーカスプライ90の端は、トレッド64の近傍にまで至っている。このカーカス74の構造は、超ハイターンアップ構造と称される。荷重支持層76は、サイドウォール68の軸方向内側に位置している。荷重支持層76は、三日月に類似の形状である。荷重支持層76は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0009】
このタイヤ62では、パンクによってその内圧が低下した場合、荷重支持層76が車重を支える。この荷重支持層76により、内圧が低い場合でも、タイヤ62はある程度の距離を走行しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−160106公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
耐カット性能の観点から、周方向に延在するコードを含む補強層の採用が検討されることがある。この補強層は、周方向へはほとんど伸びない。このため、その形状を整えるシェーピングにおいて、この補強層はローカバーの変形に追随できない。加硫工程においても、ブラダーの膨張に伴うローカバーの変形にこの補強層は追随できない。ローカバーの変形を伴う製造方法では、この補強層の採用は難しい。
【0012】
タイヤのカーカスとサイドウォールとの間に短繊維を含む補強層を設け、耐カット性能の向上が検討されることがある。短繊維を多量に含む補強層は、伸びにくい。このため、その形状を整えるシェーピングにおいて、この補強層はローカバーの変形に追随できないことがある。加硫工程においても、ブラダーの膨張に伴うローカバーの変形にこの補強層が追随できないことがある。ローカバーの変形を伴う製造方法では、多量の短繊維を含む補強層の採用は難しい。この製造方法では、短繊維を含む補強層により耐カット性能を向上させるには限界がある。
【0013】
上記図10に示されたタイヤ62では、パンクによって内圧が低下した場合における耐久性向上の観点から、荷重支持層76が大きな厚みを有するようにこのタイヤ62が構成されることがある。この場合、タイヤ62の質量が増加してしまう。
【0014】
耐久性の観点から、このタイヤ62のカーカス74を2枚のカーカスプライ90で構成することがある。この場合、タイヤ62の剛性が全体として高められるので、乗り心地が損なわれる恐れがある。
【0015】
本発明の目的は、軽量で、かつ耐カット性能に優れた空気入りタイヤの提供にある。さらに本発明の他の目的は、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れた空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成される。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えている。軸方向において、この補強層はこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置している。この補強層は、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを有している。
【0017】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記補強層は周方向に延在するカーカスに沿って渦巻き状にテープを巻き回すことにより形成されている。このテープは、その幅方向に並列された15本以下の上記コードを含んでいる。
【0018】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、半径方向において、ビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.5倍の位置からこのビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.85倍の位置までの領域に、上記補強層が存在している。
【0019】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記タイヤ断面高さに対するビードベスラインから上記補強層の内端までの半径方向高さの比は0.10以上0.30以下であり、このタイヤ断面高さに対するビードベスラインからこの補強層の外端までの半径方向高さの比は0.60以上0.85以下である。
【0020】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記ビードベースラインから上記補強層の内端までの半径方向高さは、このビードベースラインから上記ビードの外端までの半径方向高さと同等、又は、このビードベースラインからこのビードの外端までの半径方向高さよりも大きい。
【0021】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記トッピングゴムは基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなる。この短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である。
【0022】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープの第一縁は積層されているテープの第二縁に継ぎ合わされる。
【0023】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープは積層されているテープに重ね合わされる。
【0024】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープは積層されているテープと間隔を空けて配置される。
【0025】
好ましくは、この空気入りタイヤは、軸方向において上記サイドウォールの内側に位置する荷重支持部をさらに備えている。この荷重支持部は、軸方向においてカーカスの内側に位置する内側支持層と、このカーカスの外側に位置する外側支持層とを備えている。上記補強層は、この外側支持層に覆われている。
【0026】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記内側支持層又は外側支持層は、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる。
【0027】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である。
【0028】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、
(1)トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、軸方向においてこの補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、この補強層が周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている、ローカバーが組み立てられる工程と、
(2)このローカバーが、モールドに投入される工程
及び
(3)このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る空気入りタイヤは、中子を用いて製造されるので、そのバットレス領域に周方向に延在するコードを含む補強層を設けることができる。この補強層は、耐カット性能に寄与しうる。しかも、この補強層は、このバットレス領域におけるタイヤの厚みの低減に寄与しうる。このタイヤは、軽量で、かつ耐カット性能に優れる。
【0030】
さらに上記補強層がランフラットタイヤに適用された場合には、この補強層は、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に寄与しうる。しかもこの補強層は、サイドウォールの部分におけるタイヤの厚みの低減に寄与しうる。このタイヤは、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図3の補強層の短繊維が示された模式図である。
【図5】図5は、補強層の形成に用いるテープの一部が示された斜視図である。
【図6】図6は、図1のタイヤの製造の様子が示された模式図である。
【図7】図7は、図1のタイヤの製造の別の様子が示された模式図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図9】図9は、図8のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【図10】図10は、従来の空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0033】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0034】
このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、補強層14、インナーライナー16、クッション層18及びチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0035】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4の外面は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド面22には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。図示されていないが、トレッド4は通常、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0036】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、その半径方向外側端において、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
【0037】
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。このタイヤ2では、ビード8は、第一パート26aと、第二パート26bとから構成されている。このタイヤ2では、軸方向において、第一パート26aはカーカス10の内側に位置している。軸方向において、第二パート26bはカーカス10の外側に位置している。
【0038】
第一パート26aは、第一コア28aと、この第一コア28aから半径方向外向きに延びる第一エイペックス30aとを備えている。第一コア28aはリング状であり、巻回された非伸縮性の第一ワイヤー32aを含む。このタイヤ2では、第一コア28aは第一ワイヤー32aが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第一ワイヤー32aの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス30aは、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス30aは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0039】
第二パート26bは、第二コア28bと、この第二コア28bから半径方向外向きに延びる第二エイペックス30bとを備えている。第二コア28bはリング状であり、巻回された非伸縮性の第二ワイヤー32bを含む。このタイヤ2では、第二コア28bは第二ワイヤー32bが周方向に沿って渦巻き状に巻き回されることにより形成されている。第二ワイヤー32bの典型的な材質は、スチールである。第二エイペックス30bは、半径方向外向きに先細りである。第二エイペックス30bは、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0040】
カーカス10は、カーカスプライ34からなる。カーカスプライ34は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。このタイヤ2では、カーカスプライ34の端はビード8の第一パート26aとその第二パート26bとの間に挟まれている。
【0041】
図示されていないが、カーカスプライ34は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、2枚以上のカーカスプライ34から形成されてもよい。
【0042】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層36a及び外側層36bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層36aの幅は外側層36bの幅よりも若干大きい。
【0043】
図示されていないが、内側層36a及び外側層36bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層36aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト12が、3以上の層を備えてもよい。
【0044】
補強層14は、軸方向において、カーカス10とサイドウォール6との間に位置している。図1において、補強層14はカーカス10に沿って略半径方向に延在している。
【0045】
このタイヤ2では、補強層14はトレッド4のショルダーからサイドウォール6へかけての領域に位置している。この領域は、バットレス領域と称される。
【0046】
図2は、図1のタイヤ2の一部が示された拡大断面図である。この図2には、タイヤ2のバットレス領域に位置する補強層14の一部がサイドウォール6、カーカスプライ34及びインナーライナー16の一部とともに示されている。この図2において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
【0047】
このタイヤ2では、補強層14はコード38とトッピングゴム40とからなる。コード38は、トッピングゴム40で覆われている。コード38は、周方向に延在している。より詳細には、このコード38は、周方向に延在するカーカス10に沿って渦巻き状に巻回されている。この補強層14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコード38は、補強層14の周方向への伸びを抑制する。コード38の好ましい材質は、スチールである。コード38に、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0048】
トッピングゴム40は、ゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴムを含む。この基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0049】
トッピングゴム40のゴム組成物は、短繊維をさらに含むことができる。短繊維は、トッピングゴム40の強度に寄与しうる。この短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。
【0050】
このタイヤ2では、トッピングゴム40に含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下が好ましい。この短繊維の配合量が10質量部以上に設定されることにより、トッピングゴム40が適度な強度を有する。このトッピングゴム40を有する補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうる。このタイヤ2は、耐カット性能及び操縦安定性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は、25質量部以上がより好ましい。この短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、コード38とトッピングゴム40との接着性が適切に維持される。このタイヤ2では、ルースの発生が防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。しかも、この補強層14による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ2は軽量である。この観点から、この短繊維の配合量は45質量部以下がより好ましい。なお、短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるトッピングゴム40のストレッチは困難な状態となり、この場合、このトッピングゴム40は引っ張ると直ぐに破断する。
【0051】
好ましくは、トッピングゴム40のゴム組成物は、硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
【0052】
好ましくは、トッピングゴム40のゴム組成物は、硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
【0053】
トッピングゴム40のゴム組成物は、補強材を含む。典型的な補強材は、カーボンブラックである。FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。トッピングゴム40の強度の観点から、カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。トッピングゴム40の軟質の観点から、カーボンブラックの量は50質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えて、シリカが用いられてもよい。乾式シリカ及び湿式シリカが用いられうる。
【0054】
トッピングゴム40のゴム組成物は、軟化剤を含む。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。トッピングゴム40の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。トッピングゴム40の強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。
【0055】
トッピングゴム40のゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
【0056】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。この図3には、補強層14におけるトッピングゴム40の断面が示されている。この図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の周方向である。なお、この図3には、コード38は示されていない。
【0057】
図示されているように、トッピングゴム40は、多数の短繊維42と、マトリクス44とで構成されている。換言すれば、このトッピングゴム40は繊維補強ゴム(FRR)からなる。これら短繊維42は、マトリクス44に分散している。これら短繊維42の長手方向は、略周方向に沿っている。このトッピングゴム40において、短繊維42は周方向に配向している。この短繊維42を含んだトッピングゴム40は、適度な強度を有する。このトッピングゴム40を有する補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうる。このタイヤ2は、耐カット性能及び操縦安定性に優れる。
【0058】
図4は、図3のトッピングゴム40の短繊維42が示された模式図である。図4において、左右方向がタイヤ2の周方向である。矢印θで示されているのは、短繊維42の角度である。角度θは、直線X1と直線X2とのなす角度の絶対値である。直線X1は、周方向に延びている。直線X2は、短繊維42の一端46a及び他端46bを通過している。この角度θは、短繊維42の長手方向が周方向に対してなす角度である。角度θは、0°以上90°以下である。なお、図4中、両矢印Lで示されているのが繊維長である。この繊維長Lは、一端46aから他端46bまでの長さが計測されることにより得られる。
【0059】
トッピングゴム40を有する補強層14がタイヤ2のバットレス領域を効果的に補強しうるとの観点から、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。比率の算出においては、トッピングゴム40の断面に露出した短繊維42の角度が、測定される。無作為に抽出された100本の短繊維42について、角度の測定がなされる。なお、角度θが20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合が、短繊維42が周方向に配向している状態である。
【0060】
このタイヤ2では、短繊維42が効果的にトッピングゴム40の強度を高めるという観点から、短繊維42の平均長さL(図4参照)は、20μm以上が好ましい。平均長さLが20μm以上である短繊維42により、トッピングゴム40が十分に補強される。マトリクス44への分散性の観点から、平均長さLは5000μm以下が好ましい。
【0061】
短繊維42の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましい。平均直径Dが0.04μm以上である短繊維42により、トッピングゴム40の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、平均直径Dは500μm以下が好ましい。
【0062】
短繊維42のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましい。アスペクト比(L/D)が10以上である短繊維42により、トッピングゴム40の強度が十分に高められる。マトリクス44への分散性の観点から、アスペクト比(L/D)は500以下が好ましい。
【0063】
図1において、実線BBLは、ビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。両矢印Hは、このタイヤ2の断面高さを表している。この断面高さHは、ビードベースラインから赤道までの半径方向高さにより表される。赤道は、溝24がないと仮定した場合におけるトレッド面22と赤道面との交点である。両矢印hoは、ビードベースラインから補強層14の外端48までの半径方向高さを表している。両矢印hiは、ビードベースラインから補強層14の内端50までの半径方向高さを表している。符号P85は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H85)が断面高さHの0.85倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P75は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H75)が断面高さHの0.75倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P60は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H60)が断面高さHの0.60倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。符号P50は、ビードベースラインからの半径方向距離(図1中の、両矢印H50)が断面高さHの0.50倍となる、このタイヤ2の外面上の位置を表している。
【0064】
このタイヤ2では、補強層14はそのバットレス領域に存在している。より詳細には、半径方向において、位置P50から位置P85までの領域に、この補強層14は存在している。前述したように、この補強層14は周方向に延在するコード38を含んでおり、このコード38が補強層14の周方向への伸びを抑制する。この補強層14は、タイヤ2のバットレス領域を補強する。さらに補強層14の一部をなすトッピングゴム40が周方向に配向した短繊維42を含んでいるので、この補強層14はこのバットレス領域を効果的に補強する。しかも、この補強層14は、バットレス領域におけるタイヤ2の厚みの低減に寄与しうる。このタイヤ2は、軽量で、かつ耐カット性能に優れる。この観点から、位置P60から位置P75までの領域にこの補強層14が存在しているのが好ましい。
【0065】
このタイヤ2では、半径方向において、補強層14の外端48はベルト12の端52よりも内側に位置しているのが好ましい。これにより、補強層14とベルト12との接触が防止される。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、高さhoの断面高さHに対する比は0.85以下が好ましい。このタイヤ2では、この比は0.75以上が好ましい。これにより、補強層14がタイヤ2の耐カット性能の向上及びその軽量化に効果的に寄与しうる。しかもこの補強層14が剛性に効果的に寄与しうるので、このタイヤ2は操縦安定性にも優れる。
【0066】
このタイヤ2では、半径方向において、補強層14の内端50は位置P50と同等の位置又はこの位置P50よりも外側に位置しているのが好ましい。これにより、補強層14が質量に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は、軽量である。しかもこの補強層14が剛性に与える影響が抑えられるので、このタイヤ2は乗り心地に優れる。この観点から、高さhiの断面高さHに対する比は0.50以上が好ましい。このタイヤ2では、この比は0.60以下が好ましい。これにより、補強層14がタイヤ2の耐カット性能の向上及びその軽量化に効果的に寄与しうる。しかもこの補強層14が剛性に効果的に寄与しうるので、このタイヤ2は操縦安定性にも優れる。
【0067】
図1において、両矢印Dは位置P85におけるタイヤ2の外面からカーカス10までの厚みを表している。両矢印Eは、位置P50におけるタイヤ2の外面からカーカス10までの厚みを表している。
【0068】
このタイヤ2では、軽量化及び乗り心地の観点から、厚みDは9mm以下が好ましい。耐カット性能及び操縦安定性の観点から、この厚みDは4mm以上が好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、軽量化及び乗り心地の観点から、厚みEは6mm以下が好ましい。耐カット性能及び操縦安定性の観点から、この厚みEは2mm以上が好ましい。
【0070】
以上説明されたタイヤ2は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。
【0071】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー16が巻かれる。インナーライナー16の端に、ビード8の一部をなす第一パート26aが組み合わされる。第一パート26a及びインナーライナー16が組み合わされたものの外側に、カーカスプライ34が形成される。このカーカスプライ34の端に、ビード8の他の一部をなす第二パート26bが組み合わされる。
【0072】
この製造方法では、トッピングゴム40のゴム組成物がコード38とともに押し出され、図5に示されたテープ54が形成される。図5中、矢印Aで示された方向はこのテープ54の押出方向である。この押出方向は、テープ54の長さ方向でもある。コード38は、このテープ54において、押出方向、言い換えれば、その長さ方向に延在している。
【0073】
この製造方法では、テープ54はその幅方向に並列された15本以下のコード38を含むのが好ましい。テープ54に含まれるコード38の本数が15本以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止される。この製造方法では、適正な形状を有する補強層14を備えたタイヤ2が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、このテープ54に含まれるコード38の本数は7本以下がより好ましい。この製造方法では、テープ54に含まれるコード38の本数の下限値は1本である。生産性の観点から、この本数は3本以上に設定されるのが好ましい。なお、図5に示されたテープ54は3本のコード38を含んでいる。これらコード38は、テープ54の幅方向に並列されている。
【0074】
この製造方法では、前述したように、トッピングゴム40のゴム組成物は短繊維42を含んでいる。したがって、このテープ54も短繊維42を含んでいる。前述したように、テープ54はゴム組成物を押し出して成形される。したがって、このテープ54において、その押出方向、言い換えれば、その長さ方向に、短繊維42は配向している。ここで「長さ方向に配向」とは、短繊維42の長手方向がテープ54の長さ方向に対してなす角度が20°以下である短繊維42の数の、短繊維42の総数に対する比率が90%以上である場合を意味している。このテープ54における短繊維42の長手方向がテープ54の長さ方向に対してなす角度は、前述の、補強層14における角度θの計測方法と同様の方法で計測される。なお、比率の算出においては、テープ54の表面に露出した短繊維42の角度が、測定される。
【0075】
図示されていないが、この製造方法では、タイヤ2のバットレス領域に相当する部分において、テープ54が周方向に延在するカーカスプライ34に沿って、補強層14の外端48の位置に相当する位置からその内端50の位置に相当する位置に向かって渦巻き状に巻回される。言い換えれば、このテープ54は略周方向に巻回される。これにより、架橋により補強層14をなす要素がカーカス10上に形成される。前述したように、テープ54において短繊維42は、その長さ方向に配向している。テープ54は周方向に巻回されているので、この要素に含まれる短繊維42は周方向に配向している。
【0076】
図6は、形成途中にある補強層14が示された拡大断面図である。この図6において、矢印Bで示された方向に、テープ54は渦巻き状に巻回されながらカーカスプライ34に積層される。この製造方法では、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54の第一縁56aは積層されているテープ54の第二縁56bに継ぎ合わされる。これにより、テープ54が隙間なくカーカス10上に積層される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅と同等とされる。このようなテープ54の巻き回しは、「一重巻き」と称される。ここで、テープ54の送りピッチは積層されているテープ54の第二縁56bから積層されるテープ54の第二縁56bまでのカーカス10に沿った距離で表される。
【0077】
この製造方法では、タイヤ2の軽量化が重視される場合、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54が積層されているテープ54と間隔を空けて配置されてもよい。これにより、テープ54が疎らに巻回された補強層14が形成される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅とこの間隔との和と同等とされる。この製造方法では、このようなテープ54の巻き回しは「疎巻き」と称される。
【0078】
この製造方法では、タイヤ2の耐カット性能が重視される場合、このテープ54の巻回しにおいて、積層されるテープ54が積層されているテープ54に重ね合わされてもよい。これにより、テープ54が幾重にも巻回された補強層14が形成される。この場合、テープ54の送りピッチはテープ54の幅よりも小さくされる。この製造方法では、特に、テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が1.5となるようなテープ54の巻回しは、「1.5重巻き」と称される。テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が2.0となるようなテープ54の巻回しは、「2重巻き」と称される。テープ54の送りピッチに対するテープ54の幅の比が3となるようなテープ54の巻回しは、「3重巻き」と称される。
【0079】
この製造方法では、補強層14が形成されると、ベルト12、サイドウォール6、トレッド4等がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ2)が得られる。この製造方法では、ローカバーが組み立てられる工程は成形工程と称される。
【0080】
この製造方法では、中子の外面において補強層14をはじめとする多数の要素が組み合わされてローカバーが得られる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0081】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0082】
この製造方法では、モールドが締められると、ローカバーはモールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この状態が、図7に示されている。
【0083】
この製造方法では、ローカバー(図7中の符号R)は、中子(図7中の符号N)及びモールド(図7中の符号M)からの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーRをなす各要素のゴム組成物が流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図1に示されたタイヤ2が得られる。このタイヤ2は、ローカバーRをモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティ(図7中の符号C)内で加圧及び加熱することにより形成される。この製造方法では、ローカバーRが加圧及び加熱される工程は架橋工程と称される。
【0084】
前述したように、この製造方法では、ローカバーRは中子Nに組み合わされた状態でモールドMに投入され、モールドMのキャビティ面58と中子Nの外面60とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーRは引き延ばされない。
【0085】
このタイヤ2の補強層14は、短繊維42を含むゴム組成物からなるトッピングゴム40と周方向に延在するコード38とを含む要素をモールドMと中子Nとの間に形成されたキャビティC内で加圧及び加熱されることにより形成される。この要素は、ほとんど伸びない。
【0086】
前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーRをなす各要素は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーRをなす各要素は引き延ばされない。このため、このローカバーRは、その一部にほとんど伸びない要素を含んでいても、成形されうる。そして、このローカバーRからタイヤ2が得られる。この製造方法によれば、周方向に延在するコード38を含む補強層14を備えたタイヤ2が高品質にしかも安定に生産されうる。この製造方法によれば、この補強層14をなすトッピングゴム40が多量の短繊維42を含んでいても、タイヤ2が高品質にしかも安定に生産されうる。
【0087】
図5において、両矢印WTは補強層14の形成に用いるテープ54の幅を表している。両矢印TTは、このテープ54の厚みを表している。
【0088】
この製造方法では、幅WTは1mm以上15mm以下が好ましい。この幅WSが1mm以上に設定されることにより、補強層14の形成に要する時間が生産性に与える影響が抑えられる。この観点から、この幅WTは3mm以上が好ましい。この幅WTが15mm以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止されるので、適正な形状を有する補強層14が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この幅WTは7mm以下がより好ましい。
【0089】
この製造方法では、厚みTTは0.5mm以上2mm以下が好ましい。この厚みTTが0.5mm以上に設定されることにより、適度な強度を有するテープ54が得られる。この製造方法では、タイヤ2の生産性が適切に維持されうる。この厚みTTが2mm以下に設定されることにより、テープ54の巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成が防止されるので、適正な形状を有する補強層14が得られうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この補強層14による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ2は軽量である。
【0090】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤの各部材の寸法及び角度も、同様にして測定される。
【0091】
図8には、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ92が示されている。図8において、上下方向がタイヤ92の半径方向であり、左右方向がタイヤ92の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ92の周方向である。図8において、一点鎖線CLはタイヤ92の赤道面を表わす。このタイヤ92の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。実線BBLは、ビードベースラインを表している。両矢印Hは、このタイヤ92の断面高さを表している。この断面高さHは、ビードベースラインから赤道までの半径方向高さにより表される。符号P85は、ビードベースラインからの半径方向距離(図8中の、両矢印H85)が断面高さHの0.85倍となる、このタイヤ92の外面上の位置を表している。符号P50は、ビードベースラインからの半径方向距離(図8中の、両矢印H50)が断面高さHの0.50倍となる、このタイヤ92の外面上の位置を表している。
【0092】
このタイヤ92は、トレッド94、サイドウォール96、クリンチ98、ビード100、カーカス102、ベルト104、バンド106、インナーライナー108、チェーファー110、荷重支持部112及び補強層114を備えている。このタイヤ92は、チューブレスタイプである。このタイヤ92は、乗用車に装着される。
【0093】
トレッド94は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド94の外面は、路面と接地するトレッド面116を形成する。トレッド面116には、溝118が刻まれている。この溝118により、トレッドパターンが形成されている。トレッド94は、ベース層120とキャップ層122とを有している。キャップ層122は、ベース層120に積層されている。ベース層120は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。このベース層120の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層122は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0094】
サイドウォール96は、トレッド94の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール96は、その半径方向外側端において、トレッド94と接合されている。サイドウォール96は、その半径方向内側端において、クリンチ98と接合されている。サイドウォール96は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール96は、カーカス102の損傷を防止する。
【0095】
クリンチ98は、サイドウォール96の半径方向略内側に位置している。クリンチ98は、軸方向において、ビード100及びカーカス102よりも外側に位置している。クリンチ98は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ98は、リムのフランジと当接する。
【0096】
ビード100は、サイドウォール96よりも半径方向略内側に位置している。ビード100は、クリンチ98の軸方向内側に位置している。このタイヤ92では、ビード100は、第一コア124aと、第二コア124bとから構成されている。第一コア124aは、軸方向においてカーカス102の内側に位置している。第二コア124bは、軸方向においてカーカス102の外側に位置している。このタイヤ92のビード100には、図1に示されたタイヤ2のビード8のように、架橋ゴムからなるエイペックスは設けられていない。
【0097】
このタイヤ92では、第一コア124aはリング状であり、渦巻き状に巻回された第一ワイヤー126aからなる。換言すれば、このタイヤ92のビード100は渦巻き状に巻回された第一ワイヤー126aを含む。第一ワイヤー126aの典型的な材質は、スチールである。
【0098】
このタイヤ92では、第二コア124bはリング状であり、渦巻き状に巻回された第二ワイヤー126bからなる。換言すれば、このタイヤ92のビード100は渦巻き状に巻回された第二ワイヤー126bを含む。第二ワイヤー126bの典型的な材質は、スチールである。
【0099】
カーカス102は、カーカスプライ128からなる。カーカスプライ128は、両側のビード100の間に架け渡されており、トレッド94及びサイドウォール96の内側に沿っている。このタイヤ92では、カーカスプライ128の端はビード100の第一コア124aとその第二コア124bとの間に挟まれている。
【0100】
図示されていないが、カーカスプライ128は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス102はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0101】
ベルト104は、トレッド94の半径方向内側に位置している。ベルト104は、カーカス102の半径方向外側に位置している。ベルト104は、カーカス102と積層されている。ベルト104は、カーカス102を補強する。ベルト104は、内側層130a及び外側層130bからなる。図8から明らかなように、軸方向において、内側層130aの幅は外側層130bの幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層130a及び外側層130bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層130aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層130bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト104の軸方向幅は、タイヤ92の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト104が、3以上の層を備えてもよい。
【0102】
バンド106は、ベルト104の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド106の幅はベルト104の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド106は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド106は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト104が拘束されるので、ベルト104のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0103】
インナーライナー108は、カーカス102の内側に位置している。このインナーライナー108は、タイヤ92の内面を形成している。インナーライナー108は、架橋ゴムからなる。インナーライナー108には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー108の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー108は、タイヤ92の内圧を保持する。
【0104】
チェーファー110は、ビード100の近傍に位置している。タイヤ92がリムに組み込まれると、このチェーファー110がリムと当接する。この当接により、ビード100の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー110は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー110が、クリンチ98と一体とされてもよい。この場合、チェーファー110の材質はクリンチ98の材質と同じとされる。
【0105】
荷重支持部112は、軸方向においてサイドウォール96の内側に位置している。荷重支持部112は、カーカス102に沿って半径方向に延在している。このタイヤ92では、荷重支持部112は、内側支持層132aと外側支持層132bとを備えている。内側支持層132aは、カーカス102とインナーライナー108との間に位置している。外側支持層132bは、カーカス102とサイドウォール96との間に位置している。
【0106】
内側支持層132aは、軸方向において、カーカス102の内側に位置している。このタイヤ92では、半径方向におけるこの内側支持層132aの内側部分は、軸方向において第一コア124aの内側に位置している。図示されているように、この内側支持層132aは第一コア124aからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。
【0107】
外側支持層132bは、軸方向において、カーカス102の外側に位置している。このタイヤ92では、半径方向におけるこの外側支持層132bの内側部分は、軸方向において第二コア124bの外側に位置している。図示されているように、この外側支持層132bは第二コア124bからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。
【0108】
このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、内側支持層132a及び外側支持層132bからなる荷重支持部112が車重を支える。これにより、内圧が低い場合でも、タイヤ92はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ92は、ランフラットタイヤである。このランフラットタイヤ92は、サイド補強型である。
【0109】
このタイヤ92では、内側支持層132aは架橋ゴムからなる。外側支持層132bは、架橋ゴムからなる。言い換えれば、この内側支持層132a及び外側支持層132bのそれぞれはゴム組成物が架橋されたものからなる。
【0110】
このタイヤ92では、内側支持層132aの硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この内側支持層132aが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0111】
本願において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図8に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
【0112】
このタイヤ92では、外側支持層132bの硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、この外側支持層132bが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
【0113】
内側支持層132a及び外側支持層132bのそれぞれは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、従来のタイヤ62においてビード72の一部を構成するエイペックス88は不要である。この内側支持層132a及び外側支持層132bの採用は、タイヤ92を構成する部材の数の低減に寄与しうる。このタイヤ92によれば、生産コストの低減が達成される。
【0114】
このタイヤ92では、荷重支持部112の一部をなす内側支持層132aは第一短繊維を含むことができる。この場合、この内側支持層132aをなす第一ゴム組成物は、第一基材ゴム及び第一短繊維を含む。これにより、パンクによってタイヤ92の内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重を効果的に支えうる。この第一短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この第一短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。なお、第一基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。第一基材ゴムとして、2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0115】
このタイヤ92では、内側支持層132aの強度及びこの内側支持層132aにおける第一短繊維の分散性の観点から、この第一短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この第一短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この第一短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0116】
このタイヤ92では、内側支持層132aが第一短繊維を含む場合、この内側支持層132aに含まれる第一短繊維の配合量は、この内側支持層132aをなす第一ゴム組成物の第一基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましい。この第一短繊維の配合量が5質量部以上に設定されることにより、内側支持層132aが適度な強度を有する。この内側支持層132aは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。この観点から、この第一短繊維の配合量は、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。この第一短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、内側支持層132aがインナーライナー108及びカーカス102のそれぞれと十分に接合されうる。このタイヤ92は、耐久性に優れる。この観点から、この第一短繊維の配合量は55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。なお、第一短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるこの第一ゴム組成物からなる成形物(例えば、後述の第一ストリップ)のストレッチは困難な状態となる。この場合、この成形物は引っ張ると直ぐに破断してしまう。
【0117】
このタイヤ92では、内側支持層132aが第一短繊維を含む場合、この第一短繊維はこの内側支持層132aにおいて周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の第一短繊維は、内側支持層132aの強度に寄与しうる。この内側支持層132aは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重を支えうる。しかも内側支持層132aに含まれる第一短繊維が周方向に配向しているので、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの内側支持層132aに含まれる第一短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。なお、内側支持層132aにおいて第一短繊維が周方向に配向している状態は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様にして判断される。後述する、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合においても同様にして、外側支持層132bにおいて第二短繊維が周方向に配向している状態が判断される。
【0118】
このタイヤ92では、外側支持層132bは第二短繊維を含むことができる。この場合、この外側支持層132bをなす第二ゴム組成物は、第二基材ゴム及び第二短繊維を含む。これにより、パンクによってタイヤ92の内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重を効果的に支えうる。この第二短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この第二短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。なお、第二基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。第二基材ゴムとして、2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0119】
このタイヤ92では、外側支持層132bの強度及びこの外側支持層132bにおける第二短繊維の分散性の観点から、この第二短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この第二短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この第二短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0120】
このタイヤ92では、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合、この外側支持層132bに含まれる第二短繊維の配合量は、この外側支持層132bをなす第二ゴム組成物の第二基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましい。この第二短繊維の配合量が5質量部以上に設定されることにより、外側支持層132bが適度な強度を有する。この外側支持層132bは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。この観点から、この第二短繊維の配合量は、15質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。この第二短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、外側支持層132bがサイドウォール96及びカーカス102のそれぞれと十分に接合されうる。このタイヤ92は、耐久性に優れる。この観点から、この第二短繊維の配合量は55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が特に好ましい。なお、第二短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるこの第二ゴム組成物からなる成形物(例えば、後述の第二ストリップ)のストレッチは困難な状態となる。この場合、この成形物は引っ張ると直ぐに破断してしまう。
【0121】
このタイヤ92では、外側支持層132bが第二短繊維を含む場合、この第二短繊維はこの外側支持層132bにおいて周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の第二短繊維は、外側支持層132bの強度に寄与しうる。この外側支持層132bは、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重を支えうる。しかも外側支持層132bに含まれる第二短繊維が周方向に配向しているので、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの外側支持層132bに含まれる第二短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。
【0122】
このタイヤ92では、軸方向においてカーカス102の外側及び内側のそれぞれに、半径方向に延在する支持層132が設けられている。このタイヤ92では、そのサイドウォール96の部分において、特異な剛性を有する部分の形成が防止されている。歪みの集中が抑えられるので、パンクによって内圧が低下した場合においても、このタイヤ92はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ92は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に優れる。特異な剛性を有する部分の形成防止の観点から、このタイヤ92では内側支持層132aと外側支持層132bとは同等のゴム組成物から形成されるのが好ましい。
【0123】
このタイヤ92の補強層114は、軸方向において、カーカス102とサイドウォール96との間に位置している。より詳細には、この補強層114は、軸方向においてカーカス102と外側支持層132bとの間に位置している。図示されているように、この補強層114は外側支持層132bで覆われている。
【0124】
このタイヤ92では、補強層114は第二コア124bからカーカス102に沿って半径方向外向きに延在している。補強層114の外端134はトレッド94の端の近傍に位置している。補強層114の内端136は、ビード100の近傍に位置している。この補強層114の一部は、バットレス領域に位置している。より詳細には、この補強層114の一部は、半径方向において、位置P50から位置P85までの領域に存在している。
【0125】
補強層114は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様、コードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、コードはトッピングゴムで覆われている。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0126】
図示されていないが、補強層114のコードは周方向に延在するカーカス102に沿って渦巻き状に巻回されている。この補強層114は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードは、補強層114の周方向への伸びを抑制する。これにより、補強層114の剛性が高められている。この補強層114は、タイヤ92のバットレス領域からビード100に至る部分、言い換えれば、サイドウォール96の部分を効果的に補強しうる。この補強層114は、車重支持に効果的に寄与しうる。このタイヤ92は、パンクした場合においても、ある程度の距離を走行しうる。この補強層114は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に寄与しうる。しかもこの補強層114は、このタイヤ92のサイドウォール96の部分における厚みの低減に寄与しうる。この補強層114は、タイヤ92の軽量化に寄与しうる。このタイヤ92は、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れる。
【0127】
このタイヤ92では、補強層114のコードは略周方向に延在している。このため、補強層114による、サイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。
【0128】
補強層114のトッピングゴムは、ゴム組成物が架橋されたものからなる。このゴム組成物は、基材ゴムを含む。この基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
【0129】
トッピングゴムのゴム組成物は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様、短繊維をさらに含むことができる。短繊維は、トッピングゴムの強度に寄与しうる。この短繊維としては、有機繊維が例示される。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維が例示される。質量の軽量化及び低コスト化の観点から、この短繊維として、クラフト紙及び新聞古紙からなる原料紙が細片化されて叩解されることにより得られる紙繊維が用いられてもよい。
【0130】
このタイヤ92では、トッピングゴムの強度及びこのトッピングゴムにおける短繊維の分散性の観点から、この短繊維の平均長さLは、20μm以上が好ましく5000μm以下が好ましい。この短繊維の平均直径Dは、0.04μm以上が好ましく500μm以下が好ましい。この短繊維のアスペクト比(L/D)は、10以上が好ましく500以下が好ましい。
【0131】
このタイヤ92では、補強層114のトッピングゴムが短繊維を含む場合、この短繊維はこの補強層114において周方向に配向しているのが好ましい。周方向に配向した多数の短繊維は、補強層114の強度に寄与しうる。この補強層114は、タイヤ92の剛性に寄与しうる。このタイヤ92では、パンクによってその内圧が低下した場合、補強層114が車重支持に効果的に寄与しうる。しかも補強層114に含まれる短繊維が周方向に配向しているので、補強層114によるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられている。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。さらにこの補強層114に含まれる短繊維が、タイヤ92の質量に与える影響は小さい。このタイヤ92では、質量の増加が抑えられる。なお、補強層114において短繊維が周方向に配向している状態は、図1に示されたタイヤ2の補強層14と同様にして判断される。
【0132】
このタイヤ92では、補強層114のトッピングゴムが短繊維を含む場合、このトッピングゴムに含まれる短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下が好ましい。この短繊維の配合量が10質量部以上に設定されることにより、トッピングゴムが適度な強度を有する。このトッピングゴムを有する補強層114は、サイドウォール96の部分を効果的に補強しうる。この観点から、この短繊維の配合量は、25質量部以上がより好ましい。この短繊維の配合量が60質量部以下に設定されることにより、コードとトッピングゴムとの接着性が適切に維持される。このタイヤ92では、ルースの発生が防止される。しかも、この補強層114による質量への影響が抑えられるので、このタイヤ92は軽量である。この観点から、この短繊維の配合量は45質量部以下がより好ましい。なお、短繊維の配合量が30質量部を超えると、未架橋状態にあるトッピングゴムのストレッチは困難な状態となり、この場合、このトッピングゴムは引っ張ると直ぐに破断する。
【0133】
このタイヤ92では、補強層114をなすトッピングゴムのゴム組成物は、前述の、基材ゴム及び短繊維以外に、図1に示されたタイヤ2の補強層14の一部をなすトッピングゴム40のゴム組成物と同様、硫黄、加硫促進剤、補強材、軟化剤等が、必要に応じ添加される。
【0134】
このタイヤ92の補強層114は、バットレス領域からビード100に至る部分において、カーカス102に沿って半径方向に延在している。図示されているように、補強層114の外端134はベルト104の端138の近傍に位置している。このタイヤ92では、この補強層114の外端134はベルト104の端138から適切な距離をあけて配置されるのが好ましい。言い換えれば、補強層114の外端134からベルト104の端138までの距離が適切に調整されるのが好ましい。これにより、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性が向上されるとともに、ベルト104の端138におけるルースの発生が防止される。
【0135】
このタイヤ92では、補強層114の内端136は、半径方向において、ビード100の外端140と一致している、又は、このビード100の外端140よりも外側にあるのが好ましい。これにより、補強層114とビード100との軸方向における重なりが防止される。この場合、補強層114によるタイヤ92の質量への影響が抑制される。補強層114とビード100との境界において、特異な剛性を有する部分の形成が防止されるとの観点から、補強層114の内端136は、半径方向において、ビード100の外端140と一致しているのがより好ましい。
【0136】
以上説明されたタイヤ92は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。この外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。
【0137】
この製造方法では、内側支持層132aの第一ゴム組成物が押し出され、第一ストリップが形成される。図示されていないが、この製造方法では、第一ストリップはその断面形状が矩形状を呈するように成形される。タイヤ92の生産性の観点から、この第一ストリップの幅は5mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この第一ストリップの厚みは、0.4mm以上が好ましく、2.5mm以下が好ましい。
【0138】
この製造方法では、外側支持層132bの第二ゴム組成物が押し出され、第二ストリップが形成される。図示されていないが、この製造方法では、第二ストリップはその断面形状が矩形状を呈するように成形される。タイヤ92の生産性の観点から、この第二ストリップの幅は5mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この第二ストリップの厚みは、0.4mm以上が好ましく、2.5mm以下が好ましい。
【0139】
この製造方法では、補強層114をなすトッピングゴムのゴム組成物がそのコードとともに押し出され、テープが形成される。この製造方法では、テープの巻き始め及び巻き終わりにおける段差の形成を防止し、適正な形状を有する補強層114が得られるとの観点から、このテープに含まれるコードの本数は15本以下が好ましい。生産性の観点から、このテープに含まれるコードの本数は3本以上が好ましい。図示されていないが、このテープは3本のコードを含んでいる。これらコードは、テープの幅方向に並列している。このテープは、図5に示されたテープ54と同等である。
【0140】
この製造方法では、中子の外面にインナーライナー108が巻かれる。このインナーライナー108上を第一ストリップが周方向に巻回される。これにより、このタイヤ92のサイドウォール96に相当する部分に、内側支持層132aが形成される。第一ワイヤー126aが渦巻き状に密に巻回され、第一コア124aが形成される。インナーライナー108、内側支持層132a及び第一コア124aが組み合わされたものの外側に、カーカスプライ128が形成される。このカーカスプライ128の端の部分において、第二ワイヤー126aが渦巻き状に密に巻回され、第二コア124bが形成される。
【0141】
この製造方法では、タイヤ92のバットレス領域からビード100に至る部分に相当する部分において、周方向に延在するカーカスプライ128に沿ってテープが渦巻き状に巻回される。言い換えれば、このテープは略周方向に巻回される。これにより、補強層114がカーカス102上に形成される。図示されていないが、このテープは隙間なくカーカス102上に積層されている。このテープは「一重巻き」で巻回されている。なお、この製造方法では、タイヤ92の軽量化が重視される場合、このテープが「疎巻き」で巻回されてもよい。車重支持のために剛性確保及び耐カット性能が重視される場合、このテープが「1.5重巻き」で巻回されてもよいし、「2重巻き」で巻回されてもよい。このテープを「3重巻き」で巻回した場合は、この補強層114がタイヤ92の質量に影響することがある。
【0142】
この製造方法では、補強層114が形成されると、第二ストリップが周方向に巻回され、外側支持層132bが形成される。ベルト104、サイドウォール96、トレッド94等がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤ)が得られる。
【0143】
このタイヤ92の製造方法では、トロイダル状の中子の外面において補強層114をはじめとする多数の部材が組み合わされてローカバーが組み立てられる。前述したように、この中子の外面は、空気が充填されその内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ92の内面形状に近似されている。この製造方法では、従来の製造方法のようなローカバーのシェーピングは不要である。この製造方法では、成形工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0144】
ローカバーは、開かれたモールドに投入される。この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入される。したがって、モールドに投入されたローカバーの内側には、中子が位置している。
【0145】
この製造方法では、モールドが締められると、ローカバーはモールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。
【0146】
この製造方法では、ローカバーは、中子及びモールドからの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーをなす各要素のゴム組成物は流動する。加熱によりゴム組成物が架橋反応を起こし、図8に示されたタイヤ92が得られる。このタイヤ92は、ローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより形成される。
【0147】
この製造方法では、ローカバーは中子に組み合わされた状態でモールドに投入され、モールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧及び加熱される。この製造方法では、従来の製造方法で使用されるブラダーは不要である。この製造方法では、架橋工程においてローカバーは引き延ばされない。
【0148】
前述したように、この製造方法では、成形工程においてローカバーをなす各要素は引き延ばされない。架橋工程においても、ローカバーをなす各要素は引き延ばされない。このため、この製造方法では、そのサイドウォール96の部分に略周方向に延在するコードを含む補強層114が配置されたローカバーの組み立てが可能である。そして、このローカバーからタイヤ92が得られる。換言すれば、この製造方法では、ローカバーの変形を伴う従来の製造方法で生産できなかった、サイドウォール96の部分に略周方向に延在するコードを含む補強層114を備えるタイヤ92が、高品質にしかも安定に生産されうる。この製造方法によれば、内側支持層132a又は外側支持層132bをなすゴム組成物に、これを引っ張ると伸びずに破断してしまう程度に多量の短繊維が配合された場合においても、ローカバーは成形されうる。そして、このローカバーからタイヤ92が得られる。この製造方法では、軽量で、かつ、パンクによって内圧が低下した場合における、耐久性に優れるタイヤ92が生産されうる。
【0149】
図8において、両矢印hoは、ビードベースラインから補強層114の外端134までの半径方向高さを表している。両矢印hiは、ビードベースラインから補強層114の内端136までの半径方向高さを表している。両矢印hbは、ビードベースラインからビード100の外端140までの半径方向高さを表している。
【0150】
このタイヤ92では、高さhoの断面高さHに対する比Roは0.60以上0.85以下が好ましい。この比Roが0.60以上に設定されることにより、車重支持のための剛性が確保されるとともに耐カット性能が向上しうる。この観点から、この比Roは0.70以上がより好ましい。この比Roが0.85以下に設定されることにより、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性が向上されるとともに、ベルト104の端138におけるルースの発生が防止される。この観点から、この比Roは0.75以下がより好ましい。
【0151】
このタイヤ92では、高さhiの断面高さHに対する比Riは0.10以上0.30以下が好ましい。この比Riが0.10以上に設定されることにより、補強層114によるタイヤ92の質量への影響が抑制される。この観点から、この比Riは0.19以上がより好ましい。この比Riが0.30以下に設定されることにより、補強層114がタイヤ92のサイドウォール96の部分における、剛性の均整化に寄与しうる。このタイヤ92は、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に優れる。この観点から、この比Riは0.25以下がより好ましい。
【0152】
このタイヤ92では、高さhbの断面高さHに対する比Rbは、0.10以上0.30以下が好ましい。この比Rbが0.10以上に設定されることにより、ビード100がパンクによってその内圧が低下した場合における耐久性に効果的に寄与しうる。この比Rbが0.30以下に設定されることにより、このビード100による、パンクによってその内圧が低下した場合における耐久性への影響が抑えられる。
【0153】
このタイヤ92では、比Riと比Rbとの差(Ri−Rb)は0.10以下が好ましい。これにより、補強層114とビード100との境界において、特異な剛性を有する部分の形成が防止される。この観点から、この比は0.05以下がより好ましい。この差(Ri−Rb)は0以上とされるのが好ましい。これにより、補強層114とビード100との軸方向における重なりが防止される。補強層114とビード100との軸方向における重なりと、補強層114とビード100との境界において特異な剛性を有する部分の形成とが防止されるとの観点から、この差(Ri−Rb)は0とされるのが特に好ましい。
【0154】
図9には、図8に示されたタイヤ92の一部が示されている。この図9において、両矢印Tは、位置P50におけるタイヤ92の厚みを表している。両矢印Tiは、位置P50における内側支持層132aの厚みを表している。両矢印Toは、位置P50における外側支持層132bの厚みを表している。
【0155】
このタイヤ92では、厚みTは9mm以上17mm以下が好ましい。この厚みTが9mm以上に設定されることにより、このタイヤ92のサイドウォール96の部分が車重支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みTは11mm以上がより好ましい。この厚みTが17mm以下に設定されることにより、このタイヤ92の剛性過大が防止される。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この厚みTは15mm以下がより好ましい。
【0156】
このタイヤ92では、厚みTiは2mm以上10mm以下が好ましい。この厚みTiが2mm以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、内側支持層132aが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みTiは3mm以上がより好ましい。この厚みTiが10mm以下に設定されることにより、内側支持層132aによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みTiが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みTiは7mm以下がより好ましい。
【0157】
このタイヤ92では、厚みToは2mm以上10mm以下が好ましい。この厚みToが2mm以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ92の内圧が低下した場合、外側支持層132bが車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この厚みToは3mm以上がより好ましい。この厚みToが10mm以下に設定されることにより、外側支持層132bによるサイドウォール96の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ92では、乗り心地が適切に維持される。しかもこの厚みToが過大でないので、タイヤ92の質量が適切に維持される。この観点から、この厚みToは7mm以下がより好ましい。
【0158】
このタイヤ92では、厚みTiは厚みToと同等とされる、または、この厚みToよりも大きくされるのが好ましい。車重支持の観点から、厚みTiは厚みToよりも大きくされるのがより好ましい。より詳細には、厚みTiの厚みToに対する比は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。この比は、3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。
【実施例】
【0159】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0160】
[実験A]
[実施例1]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図1に示された基本構成を備え、下記の表2に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。このタイヤが中子工法で製造されたことが、この表において「A」で表されている。このタイヤでは、補強層の外端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.78とされた。補強層の内端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.57とされた。この補強層の形成に用いたテープの幅WTは、3.0mmとされた。巻回しにおけるテープの送りピッチは、3.0mmとされた。したがって、テープ同士の間隔は、0mmである。この実施例1におけるテープの巻回しは、「1重巻き」と称される。テープに含まれるコードには、スチールコード(「1×1」構造、直径=0.30mm)が用いられた。このことが、表中、「スチール」で表されている。テープに含まれるコードの本数は、3本とされた。この補強層の一部をなすトッピングゴムには、その短繊維の配合量が40質量部とされたゴム組成物が用いられた。短繊維には、アラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)が用いられた。位置P85における厚みDは、7.5mmとされた。位置P50における厚みEは、4.0mmとされた。
【0161】
[実施例7−13]
短繊維の配合量を下記の表2及び3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7−13のタイヤを得た。
【0162】
[実施例2−6]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、コードの本数を下記の表1及び2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−6のタイヤを得た。
【0163】
[実施例14−25]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、比(ho/H)及び比(hi/H)を下記の表4及び5の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14−25のタイヤを得た。
【0164】
[実施例26−33]
トッピングゴムに短繊維を含めることなく、幅WT、ピッチ及び間隔を下記の表6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例26−33のタイヤを得た。この実施例26−30におけるテープの巻回しは、「疎巻き」と称される。実施例31におけるテープの巻回しは、「1.5重巻き」と称される。実施例32におけるテープの巻回しは、「2重巻き」と称される。実施例33におけるテープの巻回しは、「3重巻き」と称される。
【0165】
[比較例1−2]
比較例1−2は、中子工法で製造された従来のタイヤである。この比較例1−2には、補強層は設けられていない。比較例1では、厚みDが7.5mm、厚みEが4.0mmとされた。比較例2では、厚みDが9.0mm、厚みEが4.0mmとされた。
【0166】
[比較例3]
従来の製造方法により、実施例3と同じ構成を有する比較例3のタイヤを製作した。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように従来の工法でタイヤを製造したことが、この表において「C」で表されている。
【0167】
[補強層の質量]
補強層の形成に用いたテープの質量を計測した。この結果が、実施例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0168】
[タイヤの質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0169】
[耐カット性能]
タイヤを15×6JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、速度(開始速度は5km/h)を変えながら、タイヤを縁石に衝突させた。タイヤのサイド部にカットが生じた速度に基づいて、指数化した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0170】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.0kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行時間を、測定した。この結果が、指数として、下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0171】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを15×6JJのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、排気量が2000ccである乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表1から7に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0172】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果が、下記の表1から7に、比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
【表6】
【0179】
【表7】
【0180】
表1から7に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例3では、シェーピング中に補強層が変形しなかったために、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例3のタイヤは製造できなかった。
【0181】
[実験B]
[実施例34]
中子の外面にローカバーを成形し、この中子と組み合わせたままこのローカバーをモールドに投入した。このローカバーをモールドと中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱することにより、図8に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた実施例34の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、ランフラットタイヤである。このタイヤが中子工法で製造されたことが、この表において「A」で表されている。このタイヤでは、補強層の外端までの半径方向高さhoの断面高さHに対する比(ho/H)は、0.73とされた。補強層の内端までの半径方向高さhiの断面高さHに対する比(hi/H)は、0.20とされた。この補強層の形成に用いたテープの幅WTは、3.0mmとされた。巻回しにおけるテープの送りピッチは、3.0mmとされた。したがって、テープ同士の間隔は、0mmである。この実施例34におけるテープの巻回しは、「1重巻き」と称される。テープに含まれるコードには、スチールコード(「1×1」構造、直径=0.30mm)が用いられた。このことが、表中、「スチール」で表されている。テープに含まれるコードの本数は、3本とされた。この補強層の一部をなすトッピングゴムには、短繊維は配合されていない。
【0182】
このタイヤでは、内側支持層は第一ストリップを用いて形成された。この第一ストリップの幅は16mmとされ、その厚みは1.0mmとされた。この内側支持層には、短繊維は配合されていない。この内側支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、内側支持層の厚みTiは5.5mmとされた。外側支持層は第二ストリップを用いて形成された。この第二ストリップの幅は16mmとされ、その厚みは1.0mmとされた。この外側支持層には、短繊維は配合されていない。この外側支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、外側支持層の厚みToは3.5mmとされた。なお、このタイヤの断面高さの、半分の高さに相当する位置における、厚みTは13mmとされた。ビードベースラインからビードの外端までの半径方向高さhbの、タイヤ断面高さHに対す比(hb/H)は、0.20とされた。
【0183】
[実施例35−39]
補強層形成のためのテープの仕様を下記の表9の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例35−39のタイヤを得た。
【0184】
[実施例40−43]
比(ho/H)を下記の表10の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例40−43のタイヤを得た。
【0185】
[実施例44−50]
比(hi/H)を下記の表10、11及び12の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例44−50のタイヤを得た。
【0186】
[実施例51−57]
テープのピッチ及び間隔を下記の表12及び13の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例51−57のタイヤを得た。この実施例51−55におけるテープの巻回しは、「疎巻き」と称される。実施例56におけるテープの巻回しは、「1.5重巻き」と称される。実施例57におけるテープの巻回しは、「2重巻き」と称される。
【0187】
[実施例58−66]
テープのトッピングゴムにアラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)を配合し、その配合量を下記の表13、14及び15の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例58−66のタイヤを得た。実施例58−60のそれぞれでは、未架橋状態でトッピングゴムをその長さ方向に引っ張ると、このトッピングゴムは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。これら以外では、トッピングゴムをその長さ方向に引っ張るとこのトッピングゴムは直ぐに破断した。
【0188】
[実施例67−76]
内側支持層及び外側支持層のそれぞれにアラミド繊維からなる短繊維(平均外径=10μm、平均長さ=500μm)を配合し、その配合量を下記の表15、16及び17の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例67−76のタイヤを得た。実施例67−70のそれぞれでは、内側支持層をなす第一ストリップ及び外側支持層をなす第二ストリップをその長さ方向に引っ張ると、これらは僅かに伸長した(伸長率で約3%)。実施例71−76では、第一ストリップ及び第二ストリップをその長さ方向に引っ張るとこれらは直ぐに破断した。
【0189】
[実施例77−81]
厚みT、厚みTo及び厚みTiを下記の表17及び18の通りとした他は実施例34と同様にして、実施例77−81のタイヤを得た。
【0190】
[比較例7]
補強層を軸方向においてカーカスの内側に設けた他は実施例34と同様にして、比較例7のタイヤを得た。
【0191】
[比較例4]
従来の製造方法により、図9に示された基本構成を備え、下記の表8に示された仕様を備えた比較例4の空気入りタイヤ(サイズ:245/40R18)を得た。このタイヤは、従来のランフラットタイヤである。このタイヤが従来の製造方法で製造されたことが、この表において「C」で表されている。このタイヤの荷重支持層の硬度は、75とされた。このタイヤの断面高さHの半分の高さHhにおける、このタイヤの厚みTは15mmとされた。なお、この荷重支持層には短繊維は含まれていない。このタイヤのビードは、エイペックスを備えている。
【0192】
[比較例5−6]
従来の製造方法により、実施例34と同じ構成を有する比較例6のタイヤと、実施例80と同じ構成を有する比較例5のタイヤとを製作した。この製造方法では、その成形工程において、ローカバーはシェーピングされた。架橋工程では、ブラダーを用いてローカバーが膨張された。このように従来の工法でタイヤを製造したことが、この表において「C」で表されている。
【0193】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例4を100とした指数値で下記の表8から18に示されている。数値が小さいほど質量が小さいことが示されている。
【0194】
[ランフラット耐久性]
タイヤがパンクして内圧が低下した場合における、耐久性を、以下のようにして評価した。タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、7.5kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例4を100とした指数値で下記の表8から18に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0195】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを18×8.5Jのリムに組み込み、標準内圧となるようにタイヤに空気を充填した。これを、排気量が3.0リットルであり、前側エンジン後輪駆動の乗用車に装着した。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この結果が、満点が10点とされた指数として下記の表8から18に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0196】
[生産性]
1本のタイヤの生産に要する時間を計測した。その結果が、下記の表8から18に、比較例4を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0197】
【表8】
【0198】
【表9】
【0199】
【表10】
【0200】
【表11】
【0201】
【表12】
【0202】
【表13】
【0203】
【表14】
【0204】
【表15】
【0205】
【表16】
【0206】
【表17】
【0207】
【表18】
【0208】
表8から18に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、比較例5及び6では、シェーピング中に補強層がローカバーの変形に追随できなかったため、ローカバーを成形することができなかった。したがって、この比較例5及び6のタイヤは製造できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0209】
以上説明された方法は、様々なタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0210】
2、62、92・・・タイヤ
4、64,94・・・トレッド
6、68、96・・・サイドウォール
8、72、100・・・ビード
10、74、102・・・カーカス
12、78、104・・・ベルト
14、114・・・補強層
28a、28b、86,124a、124b・・・コア
32a、32b、126a、126b・・・ワイヤー
34、90、128・・・カーカスプライ
38・・・コード
40・・・トッピングゴム
42・・・短繊維
48・・・外端
50・・・内端
54・・・テープ
56a、56b・・・縁
76・・・荷重支持層
88・・・エイペックス
112・・・荷重支持部
132a、132b・・・支持層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成されており、
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、
軸方向において、この補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、
この補強層が、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記補強層が、周方向に延在するカーカスに沿って渦巻き状にテープを巻き回すことにより形成されており、
このテープが、その幅方向に並列された15本以下の上記コードを含んでいる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
半径方向において、ビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.5倍の位置から、このビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.85倍の位置までの領域に、上記補強層が存在している請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記タイヤ断面高さに対するビードベスラインから上記補強層の内端までの半径方向高さの比が、0.10以上0.30以下であり、
このタイヤ断面高さに対するビードベスラインからこの補強層の外端までの半径方向高さの比が、0.60以上0.85以下である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記ビードベースラインから上記補強層の内端までの半径方向高さが、このビードベースラインから上記ビードの外端までの半径方向高さと同等、又は、このビードベースラインからこのビードの外端までの半径方向高さよりも大きい請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記トッピングゴムが、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなり、
この短繊維の配合量が、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープの第一縁が積層されているテープの第二縁に継ぎ合わされる請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープが積層されているテープに重ね合わされる請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープが積層されているテープと間隔を空けて配置される請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
軸方向において上記サイドウォールの内側に位置する荷重支持部をさらに備えており、
この荷重支持部が、軸方向においてカーカスの内側に位置する内側支持層と、このカーカスの外側に位置する外側支持層とを備えており、
上記補強層が、この外側支持層に覆われている請求項1から9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
上記内側支持層又は外側支持層が、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
上記短繊維の配合量が、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、軸方向においてこの補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、この補強層が周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている、ローカバーが組み立てられる工程と、
このローカバーが、モールドに投入される工程と、
このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程と
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項1】
トロイダル状の中子の外面において組み立てられ、モールドとこの中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱されることにより形成されており、
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、
軸方向において、この補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、
この補強層が、周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記補強層が、周方向に延在するカーカスに沿って渦巻き状にテープを巻き回すことにより形成されており、
このテープが、その幅方向に並列された15本以下の上記コードを含んでいる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
半径方向において、ビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.5倍の位置から、このビードベースラインからの半径方向距離がタイヤ断面高さの0.85倍の位置までの領域に、上記補強層が存在している請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
上記タイヤ断面高さに対するビードベスラインから上記補強層の内端までの半径方向高さの比が、0.10以上0.30以下であり、
このタイヤ断面高さに対するビードベスラインからこの補強層の外端までの半径方向高さの比が、0.60以上0.85以下である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記ビードベースラインから上記補強層の内端までの半径方向高さが、このビードベースラインから上記ビードの外端までの半径方向高さと同等、又は、このビードベースラインからこのビードの外端までの半径方向高さよりも大きい請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記トッピングゴムが、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物からなり、
この短繊維の配合量が、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上60質量部以下である請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープの第一縁が積層されているテープの第二縁に継ぎ合わされる請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープが積層されているテープに重ね合わされる請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
上記テープの巻回しにおいて、積層されるテープが積層されているテープと間隔を空けて配置される請求項2から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
軸方向において上記サイドウォールの内側に位置する荷重支持部をさらに備えており、
この荷重支持部が、軸方向においてカーカスの内側に位置する内側支持層と、このカーカスの外側に位置する外側支持層とを備えており、
上記補強層が、この外側支持層に覆われている請求項1から9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
上記内側支持層又は外側支持層が、基材ゴム及び短繊維を含むゴム組成物が架橋されたものからなる請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
上記短繊維の配合量が、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上60質量部以下である請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
トロイダル状の中子の外面において、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれがそのバットレス領域に位置する一対の補強層とを備えており、軸方向においてこの補強層がこのカーカスとこのサイドウォールとの間に位置しており、この補強層が周方向に延在するコードとトッピングゴムとを備えている、ローカバーが組み立てられる工程と、
このローカバーが、モールドに投入される工程と、
このローカバーが、このモールドと上記中子との間に形成されたキャビティ内で加圧及び加熱される工程と
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−82421(P2013−82421A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34495(P2012−34495)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】
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