説明

空気袋付きバンドの締結機構、それを含むエアマッサージ装置および血圧計

【課題】最適な締め付け状態を簡単に得ることのできる空気袋付きバンドの締結機構と、それを含むエアマッサージ装置計を提供する。
【解決手段】巻き付けバンド11に空気袋40を配し、バンドを巻き付けた状態で空気袋に加圧エアを導入することで身体組織に圧迫を加えるマッサージ装置であって、バンドの長さ方向の一端側に長さ調整ベルト12を連設し、そのベルトの先端部にベルトの余長分をスプリングの力で巻き取り且つスプリングの力に抗したベルトの引き出しを可能にする巻き取り装置30を設け、その巻き取り装置に、バンド側のフック21に係合するフック31と、ベルトの引き出しを制止するロック機構とを設け、巻き取り装置側のフック31をバンド側のフック21に追従して回動できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気袋付きバンドの締結機構、それを含むエアマッサージ装置および血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、エアマッサージ装置として、足や腕などの身体上のいずれかの部位に巻き付けるバンドに空気袋を配し、バンドを巻き付けた状態で空気袋に加圧エアを導入することで、加圧エアの力により身体組織に圧迫を加える空気袋付きバンドを使用したものがある。この種のエアマッサージ装置では、空気袋付きバンドを足や腕などに巻き付けた状態で締結するための手段として、広い面積で面係合する面ファスナを使用しているのが一般的である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−237344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、面ファスナは、最初に係合面と係合面を合わせたときに最適な状態に締結できればよいが、締め付けが緩かったりきつかったりした場合、締結のし直しを行うのが非常に面倒である。特にエアマッサージ装置の場合は加圧と除圧を繰り返し行うので、適正な締め付けを行っていないと、快適感を損なうという問題もあり、最適な締め付け状態を簡単に得られるようにすることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮し、最適な締め付け状態を簡単に得ることのできる空気袋付きバンドの締結機構、それを含むエアマッサージ装置および血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、身体のいずれかの部位に巻き付けるバンドに空気袋を配し、前記バンドを巻き付けた状態で前記空気袋に加圧エアを導入することで、加圧エアの力により身体組織に圧迫を加える空気袋付きバンドの締結機構であって、前記バンドの長さ方向の一端側に、巻き径に応じて長さを調整するための調整ベルトを連設し、その調整ベルトの先端部に、該調整ベルトの余長分をスプリングの力で巻き取ると共に該スプリングの力に抗した調整ベルトの引き出しを可能にする巻き取り装置を設け、その巻き取り装置に、前記バンドの長さ方向の他端側に設けた被係止部に係合可能な係止部と、前記調整ベルトの引き出しを制止するロック機構とを設け、更に、前記被係止部と係止部のいずれか一方を、他方に追従して回動可能に設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、前記ロック機構は、前記被係止部に係止部を係合させた際にそれに連動して前記調整ベルトの引き出しを制止するものであることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、前記被係止部として、前記バンドの幅方向に長い第1フックを固定的に設けると共に、前記係止部として、前記第1フックに係合可能で前記ベルトの幅方向に長い第2フックを前記巻き取り装置のケースに回動可能に設け、前記第2フックの回動中心を、該第2フックのベルト幅方向における長さの中央部に配したことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、前記巻き取り装置のケース内部に、前記ベルトの余長分を巻き取るローラと、該ローラを、ベルトを巻き取る方向に回転付勢する前記スプリングと、前記ロック機構とを収容し、前記巻き取り装置のケース下面に設けた開口またはケース内部に収容された部材に設けた開口に、前記第2フックに設けた一対の係合爪を差し込み係合させることにより、前記第2フックを巻き取り装置のケースに連結すると共に、前記一対の係合爪と該係合爪の係合する前記開口の周縁との摺接部により、前記第2フックを回動自在に支持したことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記の空気袋付きバンドの締結機構であって、前記ロック機構として、前記ローラに固定された歯車と、該歯車の歯に噛み合うことで歯車の回転を阻止する制止爪を有し前記巻き取り装置のケースに回動自在に取り付けられたロックレバーと、前記制止爪を前記歯車の歯から離間するように前記ロックレバーを回動付勢する保留バネと、前記第2フックを第1フックに係合させた際の第2フックの変位により前記ロックレバーを制止爪が歯車の歯に噛み合う位置に変位させる連動機構と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、前記バンドの外周部に、前記空気袋よりも硬質の樹脂シート材よりなり前記空気袋の外周方向への膨らみを防止する樹脂カバーを設け、その樹脂カバーに前記第1フックを形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、身体のいずれかの部位にバンドを巻き付け、そのバンドに配した空気袋に加圧エアを導入したりその加圧エアを排出したりすることで身体にマッサージ作用を与えるエアマッサージ装置において、前記バンドの締結機構として、請求項1〜5のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構を具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、身体のいずれかの部位にカフ帯を巻き付け、そのカフ帯に配した空気袋に加圧エアを導入することで血圧測定を行う血圧計において、前記カフ帯の締結機構として、請求項1〜5のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、空気袋付きバンドの一端側に、巻き径に応じて長さを調整するための調整ベルトを連設し、その調整ベルトの先端部にスプリング式の巻き取り装置を設けたので、巻き取り装置を持って引っ張るだけで、必要な長さの調整ベルトを自由に引き出すことができる。従って、巻き付け対象部位の径によらず、テンションのかかった状態で弛みなく、バンドを対象部位に巻き付けることができる。そして、バンドを巻き付けた状態で、バンドの他端側にある被係止部に巻き取り装置側の係止部を係合させ、同時にロック機構により調整ベルトのそれ以上の引き出しをロックすることで、バンドを適正に装着することができる。
【0014】
よって、面ファスナのように広い面積で係合させるのと違い、慣れていない人にとっても、最適な締め付け状態を容易に得ることができ、着脱も容易にできる。また、面ファスナのように関係ない場所に無用にくっつくおそれも無くすことができるので、やさしく取り扱うことができるし、ストッキングの上からでも容易に装着することができる。また、ストッキングの上から装着した場合でも、面ファスナのように無用にストッキングにくっついたりしないので、いわゆるストッキングの「伝線」を防止することもできる。また、いったん装着した場合には、強固な締結状態を保つことができ、外れにくくすることができる。更に、面ファスナと違って、取り外し時の剥がれ音も発生しないようにすることができる。
【0015】
また、本発明では、バンド側の被係止部と巻き取り装置側の係止部のいずれか一方を、他方に追従して回動可能に設けているので、バンド及びベルトの幅方向の一端側と他端側で巻き付け径に大きな差があって、それにより、例えば被係止部が係止部に対して傾斜した姿勢となっていても、被係止部と係止部を無理のない姿勢で係合させることができる。つまり、一方が他方に追従しながら回動するので、確実な係合状態を無理なく得ることができ、バンド及びベルトをしっかりと固定することができる。
【0016】
特に調整ベルトは、巻き取り装置への巻き込み及び巻き取り装置からの引き出し操作の繰り返しに耐えるように柔軟性のある薄い布状部材で作ることになるが、被係止部と係止部が無理のない姿勢で係合することにより、ベルトの幅方向に巻き径の差があっても、ベルトの幅方向の張力差を緩和することができる。例えば、巻き径の大きい側には巻き径の小さい側よりも大きなストレスがかかるおそれがあるが、そのストレスの差を緩和することができる。従って、ストレスの差によってベルトが局部的に変形して、その結果、ベルトの巻き込みや引き出しに支障を来すようなことを未然に防ぐことができて、スムーズな操作を保証することができる。
【0017】
また、本発明を特にエアマッサージ装置に適用した場合は、加圧と解放の繰り返しにより、バンドやベルトに加わる力の向きが種々変化する可能性があるが、被係止部と係止部が柔軟に姿勢を変えながら適正な係合状態を維持するので、その係合部分によって無用な力を吸収することができ、被係止部や係止部の劣化はもちろん、ベルトの劣化も防止することができる。
【0018】
また、本発明では、使わないときには、調整ベルトを巻き取り装置で巻き取って収納しておけるので、調整ベルトが邪魔にならず、コンパクトな形態で保管することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、バンドの他端側にある被係止部に巻き取り装置側の係止部を係合させることにより、調整ベルトのそれ以上の引き出しをロックすることができるので、調整ベルトの長さを簡単に固定することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、バンドやベルトの幅方向に長いフックを被係止部及び係止部として設けており、巻き取り装置側のフック(第2フック)を回動可能に設けて、その回動中心をフックの長さ方向(バンドやベルトの幅方向)の中央部に配置しているので、バンドやベルトを幅方向の広い範囲にわたり確実に連結することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、巻き取り装置のケース内部に、ベルトの余長分を巻き取るローラと、ローラを巻き取り方向に回転付勢するスプリングと、ロック機構とを収容しているので、巻き取り装置を、調整ベルトを引き出してフックを係合させる際の取っ手として扱いやすい。また、巻き取り装置側の第2フックを、巻き取り装置のケース下面に連結するための一対の係合爪によって回動自在に取り付けているので、特別な回動軸を別に設ける必要がなく、構成の簡略化が図れて組立も容易にできる。
【0022】
請求項5の発明によれば、ロック機構を、歯車と、制止爪を有したロックレバーと、ロックレバーを回動付勢する保留バネと、第2フックの変位によりロックレバーを変位させる連動機構とで構成しているので、最小の部品点数で確実にベルトの引き出しを制止することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、バンドの外周部に硬質の樹脂シートよりなる樹脂カバーを設け、その樹脂カバーにより空気袋の外周方向への膨らみを防止するので、少ない加圧エアの導入により効率よく身体組織に圧迫を加えることができる。また、その樹脂カバーにバンド側の第1フックを形成しているので、変形しにくいフックを簡単に成形することができる。
【0024】
請求項7、8の発明によれば、請求項1〜6のいずれかの空気袋付きバンドの締結機構をエアマッサージ装置または血圧計に適用したので、上記の作用効果を最大限に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は本発明を適用したエアマッサージ装置の実施形態の説明図で、図1はエアマッサージ装置の全体概要を示す斜視図、図2は図1の反対側から見たエアマッサージ装置の全体概要を示す斜視図、図3は例えば上から下に細くなっている使用者の下肢に対してエアマッサージ装置を装着した状態を示す斜視図、図4はそのときのフックの係止部分を正面から見た図である。また、図5〜図9は本エアマッサージ装置に使用している巻き取り装置の説明図、図10は本エアマッサージ装置のバンド部分の概略断面図、図11はエアマッサージ装置本体の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、このエアマッサージ装置10は、例えば使用者の下肢Maにバンド11を巻き付けて、そのバンド11に配した空気袋40に、エアマッサージ装置本体50から加圧エアを導入したり、その加圧エアを排出したりすることで、筋肉に圧迫と解放を繰り返し与えて、マッサージ効果を得るものである。ここでは、下肢Maにエアマッサージ装置10を装着する場合を例にとって説明する。下肢Maに装着する場合は、主にふくらはぎ部分の筋肉がマッサージの対象部位であるので、図2に示すように、下肢Maの裏側からバンド11を装着することになる。
【0027】
エアマッサージ装置10のバンド11は、図1、図10に示すように、芯材となる硬質で柔軟性を有する樹脂シート20と、その内面側に配された偏平な空気袋(ブラダー)40と、空気袋40及び樹脂シート20をくるむ布製の外袋13とから構成されている。樹脂シート20は、柔軟材料(例えばEVA)よりなる空気袋40よりも硬質の樹脂のシート材よりなり、空気袋40の外周方向への膨らみを防止する機能を果たす。樹脂シート20、空気袋40、外袋13は、各部の必要な機能を阻害しないように、縫製や接着等の手段により一体化されている。
【0028】
バンド11の長さ方向の一端部の外周側には、エアマッサージ装置本体50が取り付けられており、図11に示すように、エアマッサージ装置本体50の2つの接続口56、57は、バンド11内部の空気袋40の接続口41、42に接続されている。エアマッサージ装置本体50は、図示しないバッテリと、空気袋40に加圧エアを供給する加圧ポンプ51と、空気袋40のエアを排気する電気排気弁52と、空気袋40内のエア圧力を検出する圧力センサ53と、主として圧力センサ53の測定値に応じて加圧ポンプ51や電磁排気弁52などを制御してマッサージ動作を作り出すコントローラ55と、コントローラ55に繋がる図示しないスイッチやディスプレイなどを有している。
【0029】
また、図1、図2に示すように、バンド11の長さ方向の一端側には、巻き径に応じて長さを調整するための調整ベルト12が連設されている。この調整ベルト12は、伸縮性はないが柔軟性のある薄い帯状布よりなるものであり、施術可能な最も大きい施術部周長に合わせた所定長を有し、不使用時は、その先端に設けたスプリング式の巻き取り装置30に大部分が巻き取られている。巻き取り装置30は、長さ調節した調整ベルト12の余長分をスプリングの力で巻き取ると共にそのスプリングの力に抗した調整ベルト12の引き出しを可能にするものであり、調整ベルト12を引き出すための取っ手を兼ねている。この巻き取り装置30は、調整ベルト12の余長分を貯留するリザーバーと呼ぶことができる
【0030】
バンド11と調整ベルト12の係合手段として、バンド11の他端側(エアマッサージ装置本体50を取り付けた側と反対側)の外周面には、バンド11の幅方向に長い第1フック(被係止部)21が固定的に設けられ、巻き取り装置30の下面には、バンド11側の第1フック21に係合可能な第2フック(係止部)31が設けられている。バンド11側のフック21は、芯材としての樹脂シート20に一体に形成されており、外袋13のスリット(図示略)から外に露出している。
【0031】
また、巻き取り装置30には、バンド11側の第1フック21に巻き取り装置30側の第2フック31を係合させた際に、巻き取り装置30からの調整ベルト12の引き出しを制止するロック機構(後述)が設けられている。
【0032】
また、本エアマッサージ装置10における特徴的なこととして、巻き取り装置30側のフック31は、バンド11側のフック21に追従して回動できるように、巻き取り装置30のケースに対して回動自在に取り付けられている。この場合の回動角度範囲は、基準線(ベルト12の幅方向に平行な線)に対して±約15度くらいに設定されている。
【0033】
巻き取り装置30側のフック31は、バンド11側のフック21と同様に、調整ベルト12の幅方向に長く形成されており、巻き取り装置30のケース下面に回動可能に取り付けられ、そのフック31の回動中心がフック31の長さ方向の中央部に配されている。
【0034】
次に、図5〜図8を参照して巻き取り装置30の構成について詳細に説明する。巻き取り装置30のケースは、半筒状の上ケース32と、板状の下ケース33とからなる。下ケース33は、上ケース32の下面開口を塞ぐように組み付けられ、その状態でネジ止めされている。上ケース32と下ケース33の合わせ部には、図8に示すように、ケースの一側縁に位置させて調整ベルト12を引き出すための引出用スリット30Aが確保されている。
【0035】
巻き取り装置30のケース内部には、自身が回転することで調整ベルト12の余長分を巻き取るパイプ状のローラ34と、ローラ34を調整ベルト12を巻き取る方向に回転付勢する巻取スプリング38と、バンド11側のフック21に巻き取り装置30側のフック31を係合させた際に調整ベルト12の引き出しを制止するロック機構30Bとが収容されている。
【0036】
この場合のロック機構30Bは、図5に示すように、ローラ34の両端に固定された歯車36A、36Bと、歯車36A、36Bの歯36cに噛み合うことで歯車36A、36Bの回転を阻止する制止爪37cを有し且つ巻き取り装置30のケースに回動自在に取り付けられたロックレバー37と、制止爪37cを歯車36A、36Bの歯36cから離間するようにロックレバー37を回動付勢する保留バネ39と、バンド11側の第1フック21に巻き取り装置30側の第2フック31を係合させた際の第2フック31の変位によりロックレバー37を、制止爪37cが歯車36A、36Bの歯36cに噛み合う位置に変位させる連動機構30C(図8参照)と、から構成されている。
【0037】
より具体的に述べると、図5に示すように、ローラ34の両端には外周に歯36cを有する歯車36A、36Bが固定されている。固定の仕方としては、パイプ状のローラ34の端部を歯車36A、36Bの各内孔36bに挿入し、同時に内孔36bの内周の突起36bを、ローラ34の端部に形成したスリット(図示略)に嵌めて回転止めする構成を採用している。
【0038】
ローラ34の内部には細径の固定シャフト35が挿入されており、固定シャフト35の両端35a、35bが、ローラ34の両端に固定した歯車36A、36Bの端面孔36eを貫通することにより、固定シャフト35の周囲にローラ34が回転自在に支持されている。固定シャフト35の両端35a、35bは、歯車36A、36Bの端面孔36eから外に突出しており、組立時に、上ケース32の溝32aに挿入した上で、下ケース33の突片33dにより押さえ付けることで、巻き取り装置30のケースに回り止め固定されている。固定シャフト35の片端35bには、シャフト35自体の回り止めに使用するDカット部が形成されている。
【0039】
ローラ34の内周と固定シャフト35の外周との隙間には、ローラ34を回転付勢するコイル状の巻取スプリング38が挿入されている。この巻取スプリング38は、一端38aが歯車36Aに係止され、他端38bが固定シャフト35の端部35bのDカット部に係止されることで、ローラ34に、調整ベルト12を巻き取る方向の回転付勢力を付与している。
【0040】
また、巻き取り装置30のケース内には、ローラ34と平行にロックレバー37が配設されている。ロックレバー37は、図7に示すように、中央底面に扇形を2つ合わせたような蝶形の開口37bを有するベース部37aと、ベース部37aの長手方向の両端に突設された凸軸37dと、凸軸37dの内側に歯車36A、36Bに対応して形成された制止爪37cと、を有するもので、組立時に凸軸37dを上ケース32の溝32bに挿入し、その凸軸37dを下ケース33の突片33dで押さえることで、巻き取り装置30のケースに回動自在に取り付けられている。
【0041】
巻き取り装置30の下ケース33には、ロックレバー37の蝶形の開口37bに対応した開口33bが形成されており、その開口33を通して、ロックレバー37の開口37bの周縁に、フック31のベース上面に設けた一対の係合爪31bが差し込み係合されている。そしてそれにより、フック31が巻き取り装置30のケースに連結され、同時に、図7に示すように、互いに離間した一対の係合爪31bがロックレバー37の開口37bの円弧状周縁に摺動自在となっていることにより、その摺動部によって、フック31が巻き取り装置30のケースに対して回動自在に支持されている。
【0042】
フック31は、図8に示すように、ベース部分の下側にL字状に延びた引っ掛け部31aを有すると共に、ベース部分の上面に前記一対の係合爪31b、31b間に位置させて突起31cを有している。この突起31cは、ロックレバー37の蝶形の開口33の中央の狭い部分に挿入されており(図7参照)、フック31が図8中の矢印F1方向に力を受けた際(つまり、バンド11側のフック21に係合して反力を受けた際)に、ロックレバー37を同じ方向に押し移動する。なお、突起31c以外に係合爪31bも、その位置によっては、ロックレバー37の開口37bの周縁を押し移動する役目を果たす。
【0043】
ロックレバー37の回転中心である凸軸37dは、制止爪37cと、フック31の突起31cによる押圧作用点(ロックレバー37の開口37bの周縁)との中間に位置しており、ロックレバー37は保留バネ39により、制止爪37cが歯車36A(36B)の歯36cから離れる方向(矢印R1方向)に向けて回転付勢されている。
【0044】
従って、フック31が矢印F方向に変位して、ロックレバー37が保留バネ39に抗する力を受けた際に、ロックレバー37が矢印R2方向に回動して、制止爪37cの先端が歯車36A(36B)の歯36cに噛み合い、歯車36A(36B)の回転、つまりローラ34の回転を阻止して、調整ベルト12の引き出しを制止するようになっている。なお、制止爪37cの先端には、歯車36A、36Bが巻き取り方向に回動しようとした場合にだけ、ロックを外して回動を許す一方向クラッチ機能を果たすための傾斜37ckが設けられている。
【0045】
ここでは、突起31bとロックレバー37の開口37bの組み合わせが、フック31の変位によりロックレバー37を、制止爪37cが歯車36A、36Bの歯36cに噛み合う位置に変位させる連動機構30Cを構成している。
【0046】
次に作用を説明する。
このエアマッサージ装置10の使用前の状態において、調整バンド12は、巻き取り装置30のケースの内部にほとんど全部が収容されている(図1では説明の便宜上、少しだけ調整ベルト12が出ている状態を示してある)。従って、コンパクトな形態であり、保管するのに便利である。
【0047】
このエアマッサージ装置10を使用する場合は、バンド11を身体の施術部位に巻き付けて締結する。例えば、このエアマッサージ装置10で、使用者の下肢Maをマッサージする場合は、図2に示すように、ふくらはぎの裏側からバンド11を巻き付ける。
【0048】
その際、バンド11から巻き取り装置30を手で引っ張って、巻き取り装置30の内部から調整ベルト12を引き出しながら、空気袋40のある方を内側にしてバンド11をふくらはぎにあてがい、下肢Maに巻き付ける。そして、巻き取り装置30のケース下面に存在するフック31を、バンド11側の他端側の外周面に設けたフック21に係合させる。そうすると、巻き取り装置30からの調整ベルト12の引き出しが自動的にロックされ、調整ベルト12の有効な長さが固定されて、バンド11が下肢Maに適正に巻き付けられる。
【0049】
この際の動作について詳述すると、図9に示すように、巻き取り装置30側のフック31をバンド11側のフック21に係合させると、バンド11及びベルト12の張力により、図8中の矢印F1方向への力がフック31に作用することになり、その力で、フック31によりロックレバー37の開口37bの縁部が矢印F1方向へ押されることにより、ロックレバー37が保留バネ39に抗して図8中の矢印R2方向に回動し、制止爪37cが歯車36A、36Bの歯36cに噛み合って、歯車36A、36Bの回転、つまりローラ34の回転を阻止して、調整ベルト12の引き出しが制止される。
【0050】
なお、この段階でも、フック31を強制的に元の位置(矢印F1と反対方向)に戻し、保留バネ39の力を利用して、制止爪37cを歯車36A、36Bの歯36から外すことにより、調整ベルト12を微調整のために引き出したり巻き取ったりすることは可能である。また、調整ベルト12を巻き取り装置30内に押し込むことにより、調整ベルト12を更にきつく締め付けることも可能である。
【0051】
また、巻き取り装置30側のフック31をバンド11側のフック31に係合させた際に、巻き取り装置30側のフック31がバンド11側のフック31に追従して回動するので、適正な姿勢で両フック31、21を係合させることができる。即ち、図3に示すように、バンド11及びベルト12の幅方向の一端側(下肢Maの上側)と他端側(下側)で巻き付け径に大きな差があって、それにより、図4に示すように、バンド11側のフック21が巻き取り装置30に対して傾斜した姿勢となっていても、巻き取り装置30側のフック31がバンド11側のフック21に追従して回動することにより、両フック31、21を無理のない姿勢で確実に係合させることができ、バンド11及びベルト12をしっかりと固定することができる。
【0052】
特に調整ベルト12は、巻き取り・引き出し操作の繰り返しに耐えるように柔軟性のある薄い布状部材で作ることになるが、両フック31、21が無理のない姿勢で係合することにより、調整ベルト12の幅方向に巻き径の差があっても、調整ベルト12の幅方向の張力差を緩和することができる。つまり、巻き径の大きい側に巻き径の小さい側よりも大きなストレスがかかるおそれがあるが、そのストレスの差を緩和することができる。従って、ストレスの差によって調整ベルト12が局部的に変形してしまい、その結果、調整ベルト12の巻き込みや引き出しに支障を来すようなことを未然に防ぐことができ、スムーズな操作を保証することができる。
【0053】
また、エアマッサージ装置10の場合、加圧と解放の繰り返しにより、バンド11や調整ベルト12に加わる力の向きが種々変化する可能性があるが、フック31が柔軟に姿勢を変えながら適正な係合状態を維持するので、その係合部分によって無用な力を吸収することができ、フック31、21の劣化はもちろん、ベルト12等の劣化も防止することができる。
【0054】
そして、適正にバンド11を巻き付けたら、エアマッサージ装置本体50のスイッチによりマッサージ動作をスタートさせる。動作がスタートすると、空気袋40に加圧エアが送り込まれて、加圧エアの力でバンド11を巻き付けた部分の筋肉が圧迫される。また、加圧エアが排気されることで除圧が行われ、加圧と除圧が繰り返し行われることで、筋肉が揉みほぐされて、血行が促進され、筋肉痛や疲労感が取り除かれる。
【0055】
この場合、バンド11の外周部に硬質の樹脂シート20を配置し、その樹脂カバー20によって空気袋40の外周方向への膨らみを防止するようにしているので、少ない加圧エアの導入によって、効率よく身体組織に圧迫を加えることができる。
【0056】
マッサージが終わったら、巻き取り装置30側のフック31をバンド11側のフック21から外して、バンド11を取り外す。そうすると、巻き取り装置30の働きにより、自動的に調整ベルト12が巻き取られて収納される。従って、調整ベルト12が邪魔になることがなく、コンパクトな形態で保管することができる。
【0057】
以上説明したように、実施形態のエアマッサージ装置10によれば、空気袋付きバンド11の一端側に、巻き径に応じて長さを調整するための調整ベルト12を連設し、その調整ベルト12の先端部にスプリング式の巻き取り装置30を設けたので、巻き取り装置30を手で持って引っ張るだけで、必要な長さだけの調整ベルト12を自由に引き出すことができる。従って、巻き付け対象部位の径によらず、テンションのかかった状態で弛みなく、バンド11を対象部位に巻き付けることができる。そして、バンド11を巻き付けた状態で、バンド11の他端側にあるフック21に巻き取り装置30側のフック31を係合させることにより、調整ベルト12のそれ以上の引き出しをロックすることができるので、調整ベルト12の長さを簡単に固定することができる。
【0058】
よって、面ファスナのように広い面積で係合させるのと違い、慣れていない人にとっても、最適な締め付け状態を容易に得ることができ、着脱も容易にできる。また、面ファスナのように関係ない場所に無用にくっつくおそれも無くすことができるので、やさしく取り扱うことができるし、ストッキングの上からでも容易に装着することができる。また、ストッキングの上から装着した場合でも、面ファスナのように無用にストッキングにくっついたりしないので、いわゆるストッキングの「伝線」を防止することもできる。また、いったん装着した場合には、強固な締結状態を保つことができ、外れにくい。更に、面ファスナと違って、取り外し時の剥がれ音も発生しないので、静かな環境で使用する場合にも周囲に無用な気兼ねを払う必要がない。
【0059】
特に、長さのあるフック21、31を被係止部及び係止部として設け、巻き取り装置30側のフック(第2フック)31を回動可能に設けて、その回動中心をフック31の長さ方向(調整ベルト12の幅方向)の中央部に配置しているので、バンド11やベルト12を幅方向の広い範囲にわたり確実に連結することができる。
【0060】
また、巻き取り装置30のケースの内部に、調整ベルト12の余長分を巻き取るローラ34と、ローラ34を巻き取り方向に回転付勢する巻取スプリング38と、ロック機構30Bとを収容しており、余計な部品がケース外に出ていないので、巻き取り装置30を取っ手として扱いやすい。また、第2フック31を巻き取り装置30のケース下面に連結するための一対の係合爪31b、31bで、第2フック31を回動自在に支持しているので、特別な回動軸を別に設ける必要がなく、構成の簡略化が図れる上、組立も容易にできる。
【0061】
また、ロック機構30Bを、歯車36A、36Bと、制止爪37cを有したロックレバー37と、ロックレバー37を回動付勢する保留バネ39と、第2フック31の変位によりロックレバー37を変位させる連動機構30Cとで構成しているので、最小の部品点数で確実に調整ベルト12の引き出しを制止することができ、構成の簡略化が図れる。
【0062】
また、バンド11の芯材として設けた樹脂カバー20に第1フック21を形成しているので、変形しにくいフックを簡単に成形することができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、ロック機構30Bを、フック31、21の係合に連動させるように構成したが、ロック機構を単独で動作するように構成してもよい。例えば、ボタンを押すとロック解除して、調整ベルト12の巻き取り・引き出しが自由にでき、ボタンを離すとロックがかかるような構成を採用することもできる。
【0064】
また、上記実施形態では、バンド11側のフック21を固定的に設け、巻き取り装置30側のフック31を回動可能に設けた場合を示したが、それとは逆に、バンド11側のフック21を回動可能に設け、巻き取り装置30側のフック31を固定的に設けても、一方のフック31に他方のフック21を追従させることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、使用者の下肢Maに装着する場合を例示したが、下肢以外に上肢、上腕や肘と手首の間などの他の部位に装着してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、本発明の空気袋付きバンドの締結機構を、エアマッサージ装置に適用した場合を説明したが、血圧計に対しても適用できる。即ち、血圧計は、身体のいずれかの部位にカフ帯を巻き付け、そのカフ帯に配した空気袋に加圧エアを導入することで血圧測定を行うものであるので、そのカフ帯の締結機構として、本発明の空気袋付きバンドの締結機構を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を適用したエアマッサージ装置の実施形態の説明図で、エアマッサージ装置の全体概要を示す斜視図である。
【図2】図1の反対側から見たエアマッサージ装置の全体概要を示す斜視図である。
【図3】上から下に細くなっている使用者の下肢に対して実施形態のエアマッサージ装置を装着した状態を示す斜視図である。
【図4】上から下に細くなった下肢に実施形態のエアマッサージ装置を装着したときのフックの係止部分を正面から見た図である。
【図5】実施形態のエアマッサージ装置に使用している巻き取り装置の分解斜視図である。
【図6】(a)は同巻き取り装置の下面図、(b)は同側面図である。
【図7】図6(b)のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図6(b)のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】(a)は前記巻き取り装置の下面のフックをバンド側のフックに係合させたときの状態を示す側面図、(b)は同断面図である。
【図10】実施形態のエアマッサージ装置のバンド部分の概略断面図である。
【図11】実施形態のエアマッサージ装置本体の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
Ma 下肢(巻き付け対象部位)
10 エアマッサージ装置
11 バンド
12 調整ベルト
13 外袋
20 樹脂シート
21 第1フック(被係止部)
30 巻き取り装置
30B ロック機構
30C 連動機構
31 第2フック(係止部)
31b 係合爪
32 上ケース
33 下ケース
34 ローラ
36A,36B 歯車
36c 歯
37 ロックレバー
37b 開口
37c 制止爪
38 巻取スプリング
39 保留バネ
40 空気袋
50 エアマッサージ装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体のいずれかの部位に巻き付けるバンドに空気袋を配し、前記バンドを巻き付けた状態で前記空気袋に加圧エアを導入することで、加圧エアの力により身体組織に圧迫を加える空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記バンドの長さ方向の一端側に、巻き径に応じて長さを調整するための調整ベルトを連設し、
その調整ベルトの先端部に、該調整ベルトの余長分をスプリングの力で巻き取ると共に該スプリングの力に抗した調整ベルトの引き出しを可能にする巻き取り装置を設け、
その巻き取り装置に、前記バンドの長さ方向の他端側に設けた被係止部に係合可能な係止部と、前記調整ベルトの引き出しを制止するロック機構とを設け、
更に、前記被係止部と係止部のいずれか一方を、他方に追従して回動可能に設けたことを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項2】
請求項1に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記ロック機構は、前記被係止部に係止部を係合させた際にそれに連動して前記調整ベルトの引き出しを制止するものであることを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記被係止部として、前記バンドの幅方向に長い第1フックを固定的に設けると共に、前記係止部として、前記第1フックに係合可能で前記ベルトの幅方向に長い第2フックを前記巻き取り装置のケースに回動可能に設け、前記第2フックの回動中心を、該第2フックのベルト幅方向における長さの中央部に配したことを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項4】
請求項3に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記巻き取り装置のケース内部に、前記ベルトの余長分を巻き取るローラと、該ローラを、ベルトを巻き取る方向に回転付勢する前記スプリングと、前記ロック機構とを収容し、
前記巻き取り装置のケース下面に設けた開口またはケース内部に収容された部材に設けた開口に、前記第2フックに設けた一対の係合爪を差し込み係合させることにより、前記第2フックを巻き取り装置のケースに連結すると共に、前記一対の係合爪と該係合爪の係合する前記開口の周縁との摺接部により、前記第2フックを回動自在に支持したことを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項5】
請求項3に記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記ロック機構として、前記ローラに固定された歯車と、該歯車の歯に噛み合うことで歯車の回転を阻止する制止爪を有し前記巻き取り装置のケースに回動自在に取り付けられたロックレバーと、前記制止爪を前記歯車の歯から離間するように前記ロックレバーを回動付勢する保留バネと、前記第2フックを第1フックに係合させた際の第2フックの変位により前記ロックレバーを制止爪が歯車の歯に噛み合う位置に変位させる連動機構と、を設けたことを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構であって、
前記バンドの外周部に、前記空気袋よりも硬質の樹脂シート材よりなり前記空気袋の外周方向への膨らみを防止する樹脂カバーを設け、その樹脂カバーに前記第1フックを形成したことを特徴とする空気袋付きバンドの締結機構。
【請求項7】
身体のいずれかの部位にバンドを巻き付け、そのバンドに配した空気袋に加圧エアを導入したりその加圧エアを排出したりすることで身体にマッサージ作用を与えるエアマッサージ装置において、
前記バンドの締結機構として、請求項1〜6のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構を具備したことを特徴とするエアマッサージ装置。
【請求項8】
身体のいずれかの部位にカフ帯を巻き付け、そのカフ帯に配した空気袋に加圧エアを導入することで血圧測定を行う血圧計において、
前記カフ帯の締結機構として、請求項1〜6のいずれかに記載の空気袋付きバンドの締結機構を具備したことを特徴とする血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−75294(P2007−75294A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265818(P2005−265818)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】