説明

空気調和機の室内機、及び空気調和機

【課題】熱交換器を小型化することが可能な空気調和機の室内機を得る。
【解決手段】室内機100は、上部に吸込口2が形成され、前面部下側に吹出口3が形成されたケーシング1と、ケーシング1内の吸込口2の下流側に設けられた軸流型又は斜流型のファン20と、ケーシング1内であって、ファン20の下流側となり吹出口3の上流側となる位置に設けられた熱交換器50と、を備えたものである。また、熱交換器50は、所定の間隙を介して積層された複数のフィン56、及びこれら複数のフィン56を貫通する複数の伝熱管57を有するものである。そして、熱交換器50は、ファン20の外周側と対向する範囲の通風抵抗が、ファン20の中心部と対向する範囲の通風抵抗よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン及び熱交換器をケーシング内に収納した室内機、及びこの室内機を備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーシング内にフィンチューブ型熱交換器(所定の間隙を介して積層された複数のフィンと、これらフィンを貫通して設けられた複数の伝熱管と、を備えた熱交換器)を備えた空気調和機の室内機が知られている。このような従来の空気調和機の室内機としては、例えば「熱交換器4は、ファンロータ3の前方、上方および後部上方を取り囲むように設けられている。この熱交換器4は、左右両端で複数回折り返された伝熱管に多数の放熱フィンが取り付けられたものであり、ファンロータ3の駆動により上部吸込口10aおよび前面吸込口11aから吸い込まれた空気をファンロータ3側に通過させ、伝熱管内部を通過する冷媒との間で熱交換を行わせるものである。熱交換器4は、冷媒配管を介して室外機からの冷媒配管と接続される。」(特許文献1参照)というものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−254552号公報(段落0004、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、空気調和機の室内機を構成する各ユニットのうち、熱交換器に使用される材料が最も多い。このため、省資源化や省エネルギー化が求められている昨今、熱交換器の小型化は重要な課題となっている。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、熱交換器を小型化することが可能な空気調和機の室内機、及びこの室内機を備えた空気調和機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気調和機の室内機は、上部に吸込口が形成され、前面部下側に吹出口が形成されたケーシングと、ケーシング内の吸込口の下流側に設けられた軸流型又は斜流型のファンと、ケーシング内であって、ファンの下流側となり吹出口の上流側となる位置に設けられた熱交換器と、を備えたものである。また、熱交換器は、所定の間隙を介して積層された複数のフィン、及びこれら複数のフィンを貫通する複数の伝熱管を有するものである。そして、熱交換器は、ファンの外周側と対向する範囲の通風抵抗が、ファンの中心部と対向する範囲の通風抵抗よりも大きくなっている。
【0007】
また、本発明に係る空気調和機は、上記の室内機を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
軸流ファンや斜流ファンは、ファンの中心部側ほど風量が少なくなり、ファンの外周側ほど風量が多くなる。つまり、軸流ファンや斜流ファンと対向している範囲の熱交換器においては、ファンの中心部と対向している範囲ほど通過しようとする風量が少なくなり、ファンの外周側と対向している範囲ほど通過しようとする風量が多くなる。そこで、本発明に係る熱交換器は、通過しようとする風量が多くなる範囲(ファンの外周側と対向している範囲)の通風抵抗を、通過しようとする風量が少なくなる範囲(ファンの中心部と対向する範囲)の通風抵抗よりも大きくしている。このため、熱交換器の各範囲における風速(つまり、風量)が均一化し、熱交換器の熱交換能力が向上する。したがって、本発明においては、熱交換器を小型化することができ、室内機及びこの室内機を備えた空気調和機の省資源化及び省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
特に、本発明に係る室内機は、熱交換器の上流側にファンを配置し、吹出口から吹き出される空気の旋回流の発生や風速分布のバラツキの発生を抑制している。このような室内機においては、室内機の高さ寸法が大きくなり、据付け上の制約となる場合がある。したがって、熱交換器を小型化できる本発明は、熱交換器の上流側にファンを配置した本発明に係る室内機において、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る室内機を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る室内機を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る室内機を前面右側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る室内機を背面右側から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る室内機を前面左側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るドレンパンを示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る室内機の結露発生位置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る信号処理装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の室内機の別の一例を示す縦断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る室内機の別の一例を示す縦断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る室内機のさらに別の一例を示す縦断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る室内機のさらに別の一例を示す縦断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る室内機のさらに別の一例を示す縦断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る室内機を示す縦断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る室内機を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る空気調和機(より詳しくは、空気調和機の室内機)の具体的な実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態では、壁掛け型の室内機を例に本発明を説明する。また、各実施の形態で示す図では、各ユニット(又は各ユニットの構成部材)の形状や大きさ等が一部異なる場合もある。
【0012】
実施の形態1.
<基本構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の室内機を示す縦断面図である。また、図2は、この室内機を示す外観斜視図である。なお、本実施の形態1及び後述する実施の形態では、図1の左側を室内機100の前面側として説明する。以下、図1及び図2に基づいて、室内機100の構成について説明する。
【0013】
(全体構成)
この室内機100は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを利用することで、室内等の空調対象域に空調空気を供給するものである。室内機100は、主に、室内空気を内部に吸い込むための吸込口2及び空調空気を空調対象域に供給するための吹出口3が形成されているケーシング1と、このケーシング1内に収納され、吸込口2から室内空気を吸い込み、吹出口3から空調空気を吹き出すファン20(ファン)と、ファン20から吹出口3までの風路に配設され、冷媒と室内空気とで熱交換することで空調空気を作り出す熱交換器50と、を有している。そして、これらの構成要素によりケーシング1内に風路(矢印Z)が連通されている。吸込口2は、ケーシング1の上部に開口形成されている。吹出口3は、ケーシング1の下部(より詳しくは、ケーシング1の前面部下側)に開口形成されている。ファン20は、吸込口2の下流側でかつ、熱交換器50の上流側に配設されており、例えば軸流ファン又は斜流ファン等で構成されている。
【0014】
このように構成された室内機100においては、ファン20が熱交換器50の上流側に設けられているので、吹出口3にファン20が設けられている従来の空気調和機の室内機と比べ、吹出口3から吹き出される空気の旋回流の発生や風速分布のバラツキの発生を抑制することができる。このため、空調対象域への快適な送風が可能となる。また、吹出口3にファン等の複雑な構造物がないため、冷房運転時に暖気と冷気の境界で生じる結露の対策も容易となる。さらに、ファンモーター30が空調空気である冷気や暖気にさらされることがないため、長時間の運転寿命を提供することができる。
【0015】
(ファン)
一般的に、空気調和機の室内機は設置スペースに制約があるため、ファンを大きくできないことが多い。このため、所望の風量を得るために、適度な大きさのファンを複数並列に配置する。本実施の形態1に係る室内機100は、図2に示すように、ケーシング1の長手方向(換言すると、吹出口3の長手方向)に沿って、3個のファン20が並列に配置されている。現在の一般的な空気調和機の室内機の寸法において所望の熱交換能力を得るには、ファン20はおよそ3個〜4個が好ましい。本実施の形態1に係る室内機においては、ファン20はすべて同一形状で構成され、動作回転数をすべて等しく運転することにより全てのファン20でほぼ等しい送風量を得ることができる。
【0016】
このように構成することにより、必要風量や室内機100内部の通風抵抗に応じてファン20の個数、形状及び大きさ等を組合せることで、多様なスペックの室内機100に対応した最適ファン設計が可能となる。
【0017】
(ベルマウス)
本実施の形態1に係る室内機100には、ファン20の周りに、ダクト上のベルマウス5が配置されている。ベルマウス5は、ファンへの吸気と排気を滑らかに誘導するためのものである。図1に示すように、本実施の形態1に係るベルマウス5は、平面視において略円形状をしている。また、縦断面において、本実施の形態1に係るベルマウス5は次のような形状をしている。上部5aは、その端部が上方に向かって広がる略円弧形状をしている。中央部5bは、ベルマウスの直径が一定となったストレート部分となっている。下部5cは、その端部が下方に向かって広がる略円弧形状をしている。そして、ベルマウス5の上部5aの端部(吸い込み側の円弧部分)で吸込口2を形成している。
【0018】
なお、ベルマウス5は、部品点数の削減や強度向上のため、例えばケーシング1と一体で形成してもよい。また例えば、ベルマウス5、ファン20及びファンモーター30等でモジュール化し、これらとケーシング1を着脱可能な構成として、メンテナンス性を向上してもよい。
【0019】
また、本実施の形態1においては、ベルマウス5の上部5aの端部(吸い込み側の円弧部分)は、ベルマウス5の開口面の周方向に対して、一様形状で構成されている。つまり、ファン20の回転軸20aを中心とした回転方向に対して、ベルマウス5は切り欠きやリブ等の構造が無く、軸対称性を有した一様な形状をしている。
【0020】
このようにベルマウス5を構成することにより、ファン20の回転に対してベルマウス5の上部5aの端部(吸い込み側の円弧部分)が一様な形状をしているので、ファン20の吸込み流れとしても一様な流れが実現される。このため、ファン20の吸込み流れの偏流によって発生する騒音を低減することができる。
【0021】
(仕切り板について)
図2に示すように、本実施の形態1に係る室内機100は、隣接したファン20の間に、仕切り板90が設けられている。これら仕切り板90は、熱交換器50とファン20の間に設置されている。つまり、熱交換器50とファン20の間の風路が、複数の風路(本実施の形態1では3つ)に分割されている。仕切り板90は、熱交換器50とファン20の間に設置されるため、熱交換器50に接する側の端部が熱交換器50に沿った形状となっている。より詳しくは、図1に示すように、熱交換器50は、室内機100の前面側から背面側にかけての縦断面(つまり、室内機100を右側から見た縦断面。以下、右側縦断面と称する)において、略Λ型に配置されている。このため、仕切り板90の熱交換器50側端部も略Λ型となっている。
【0022】
なお、仕切り板90のファン20側端部の位置は、例えば次のように決定すればよい。隣接するファン20が吸込側において互いに影響を生じない程度に十分離れている場合、仕切り板90のファン20側の端部は、ファン20の出口面までとすればよい。しかし、隣接するファン20が吸込側において互いに影響を及ぼす程度に近づいている場合で、さらにベルマウス5の上部5aの端部(吸い込み側の円弧部分)の形状が十分に大きく形成できる場合、仕切り板90のファン20側の端部は、隣接する風路に影響を与えないように(隣接するファン20が吸込側において互いに影響を及ぼさないように)、ファン20の上流側(吸入側)まで延設してもよい。
【0023】
また、仕切り板90は、種々の材質で形成することができる。例えば、スチールやアルミ等の金属で仕切り板90を形成してもよい。また例えば、樹脂等で仕切り板90を形成してもよい。ただし、熱交換器50は暖房運転のときに高温となるため、仕切り板90が樹脂等のような低融点の材質で形成されている場合、仕切り板90と熱交換器50との間にわずかな空間を形成するとよい。仕切り板90がアルミやスチール等の融点が高い材質の場合、仕切り板90を熱交換器50と接するように配置してもよい。熱交換器50が例えばフィンチューブ型熱交換器の場合、熱交換器50のフィン間に仕切り板90を挿入してもよい。
【0024】
上述したように、熱交換器50とファン20の間の風路が、複数の風路(本実施の形態1では3つ)に分割されている。この風路内、つまり、仕切り板90やケーシング1等に吸音材を設けて、ダクト内で生じる騒音を低減することもできる。
【0025】
また、これら分割された風路は、平面視において、一辺がL1及びL2となった略四角形状に形成されている。つまり、分割された風路の幅が、L1及びL2となっている。このため、例えば、L1,L2で形成された略四角形状の内部に設置されたファン20が生じる風量は、確実にファン20の下流にあるL1,L2で囲まれた領域の熱交換器50を通過する。
【0026】
このようにケーシング1内の風路を複数の風路に分割することにより、ファン20が下流に作る流れ場が旋回成分を有していても、各ファン20から吹き出された空気が室内機100の長手方向(図1紙面直交方向)に自由に移動できなくなる。このため、ファン20が吹き出した空気は、このファン20の下流にあるL1,L2で囲まれた領域の熱交換器50に通過させることが可能となる。その結果として、熱交換器50全体に流入する室内機100の長手方向(図1紙面直交方向)の風量分布のバラツキを抑制し、高い熱交換性能を有すことができる。また、ケーシング1内を仕切り板90で分断することで、互いに隣接したファン20同士において、隣接したファン20の発生する旋回流との干渉を防ぐことができる。このため、旋回流同士の干渉による流体のエネルギーのロスを抑制することができ、風速分布の改善と合わせて、室内機100の圧力損失低減が可能となる。なお、各仕切り板90は一枚の板で形成されている必要はなく、複数の板で形成されていてもよい。例えば、仕切り板90を前面側熱交換器51側と背面側熱交換器55側で二分割してもよい。言うまでもなく仕切り板90を構成する各板どうしの接合箇所には隙間はない方が好ましい。仕切り板90を複数に分割することにより、仕切り板90の組み付け性が向上する。
【0027】
(ファンモーター)
ファン20はファンモーター30で回転駆動される。用いられるファンモーター30は、インナーローター型でもよいし、アウターローター型でもよい。アウターローター型のファンモーター30の場合には、ローターをファン20のボス21と一体にした構造(ボス21にローターを持たせる)のものも用いられる。また、ファンモーター30の寸法をファン20のボス21の寸法よりも小さくすることで、ファン20の生成する気流に損失を与えることを防止できる。さらに、ボス21の内部にモーターを配設することで、軸方向寸法も小さくすることができる。ファンモーター30とファン20を着脱容易な構造とすることにより、清掃性も向上する。
【0028】
なお、ファンモーター30として比較的コストの高いDCブラシレスモーターを用いることにより、効率の向上、長寿命化及び制御性の向上を図ることができるが、他の形式のモーターを採用しても空気調和機としての一次機能が満足されることは言うまでもない。 また、ファンモーター30駆動用の回路は、ファンモーター30と一体にしてもよいし、外部で構成して防塵、防火対策を施すこともできる。
【0029】
ファンモーター30は、モーターステイ16により、ケーシング1に取り付けられている。さらに、ファンモーター30をCPU冷却に用いられるボックス型(ファン20、筐体、ファンモーター30等が一体でモジュール化されているもの)とし、モーターステイ16と着脱可能な構造とすれば、メンテナンス性が向上し、ファン20のチップクリアランスの精度も高くすることができる
【0030】
なお、ファンモーター30の駆動回路は、ファンモーター30内部に構成しても良いし、外部にあってもよい。
【0031】
(モーターステイ)
モーターステイ16は、固定部材17及び支持部材18を備えている。固定部材17は、ファンモーター30が取り付けられるものである。支持部材18は、固定部材17をケーシング1へ固定するための部材である。支持部材18は、例えば棒状のものであり、固定部材17の外周部から例えば放射状に延設されている。図1に示すように、本実施の形態1に係る支持部材18は、およそ水平方向に延設されている。
【0032】
(熱交換器)
本実施の形態1に係る室内機100の熱交換器50は、ファン20の風下側に配置されている。この熱交換器50には、例えばフィンチューブ型熱交換器等を用いるとよい。熱交換器50は、図1に示すように、右側縦断面において、対称線50aで分断されている。対称線50aは、この断面における熱交換器50の設置範囲を、略中央部において左右方向に分断するものである。つまり、前面側熱交換器51は対称線50aに対して前面側(図1の紙面左側)に、背面側熱交換器55は対称線50aに対して背面側(図1の紙面右側)に、それぞれ配置されている。そして、前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55は、前面側熱交換器51と背面側熱交換器55との間の間隔が空気の流れ方向に対して広がるように、つまり右側縦断面において熱交換器50の断面形状が略Λ型となるように、ケーシング1内に配置されている。つまり、前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55は、ファン20から供給される空気の流れ方向に対して傾斜を有するように配置されているのである。
【0033】
さらに、熱交換器50は、背面側熱交換器55の風路面積が前面側熱交換器51の風路面積よりも大きくなっていることを特徴としている。つまり、熱交換器50は、背面側熱交換器55の風量が前面側熱交換器51の風量よりも大きくなっている。本実施の形態1では、右側縦断面において、背面側熱交換器55の長手方向の長さが前面側熱交換器51の長手方向長さよりも長くなっている。これにより、背面側熱交換器55の風路面積は、前面側熱交換器51の風路面積よりも大きくなっている。なお、前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55のその他の構成(図1における奥行き方向の長さ等)は、同じとなっている。つまり、背面側熱交換器55の伝熱面積は、前面側熱交換器51の伝熱面積よりも大きくなっている。また、ファン20の回転軸20aは、対称線50aの上方に設置されている。
【0034】
このように熱交換器50を構成することにより、吹出口にファンが設けられている従来の空気調和機の室内機と比べ、吹出口3から吹き出される空気の旋回流の発生や風速分布の発生を抑制することができる。また、このように熱交換器50を構成することにより、背面側熱交換器55の風量が前面側熱交換器51の風量よりも大きくなる。そして、この風量差により、前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55のそれぞれを通過した空気が合流した際、この合流した空気は前面側(吹出口3側)へ曲がることとなる。このため、吹出口3近傍で気流を急激に曲げる必要が無くなり、吹出口3近傍での圧力損失を低減することができる。
【0035】
また、本実施の形態1に係る室内機100においては、背面側熱交換器55から流出する空気の流れ方向が、背面側から前面側への流れとなる。このため、本実施の形態1に係る室内機100は、右側縦断面において熱交換器50を略v型に配置する場合と比べて、熱交換器50を通過した後の空気の流れをより曲げやすくなる。
【0036】
室内機100は、ファン20を複数個有するため、重量が重くなりがちである。室内機100が重くなると、室内機100を据付けするための壁面の強度が必要とされ、据付け上の制約となる。このため、熱交換器50の軽量化を図ることが好ましい。また、室内機100は、熱交換器50の上流側にファン20を配置するので、室内機100の高さ寸法が大きくなり、据付け上の制約となりがちである。このため、熱交換器50を小型化することが好ましい。
【0037】
そこで、本実施の形態1では、熱交換器50(前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55)としてフィンチューブ型熱交換器を用い、熱交換器50の小型化を図っている。より詳しくは、本実施の形態1に係る熱交換器50は、所定の間隙を介して積層された複数のフィン56と、これらフィン56を貫通する複数の伝熱管57と、を備えている。本実施の形態1では、ケーシング1の左右方向(図1の紙面直交方向)に、フィン56を積層している。つまり、伝熱管57は、ケーシング1の左右方向(図1の紙面直交方向)に沿って、フィン56を貫通している。また、本実施の形態1では、熱交換器50の熱交換効率を向上させるため、熱交換器50の通風方向(フィン56の幅方向)に伝熱管57を2列配置している。これら伝熱管57は、右側縦断面において略千鳥形状に配置されている。
【0038】
また、伝熱管57を直径が細い(直径3mm〜7mm程度)円管で構成し、伝熱管57を流れる冷媒(室内機100及びこの室内機100を備えた空気調和機に用いられる冷媒)をR32とすることにより、熱交換器50の小型化を図っている。つまり、熱交換器50は、伝熱管57の内部を流れる冷媒と室内空気とがフィン56を介して熱交換するものである。このため、伝熱管57を細くした場合、伝熱管の径が太い熱交換器と比べ、同一冷媒循環量では冷媒の圧力損失が大きくなる。しかしながら、R32は、R410Aと比べ、同一温度における蒸発潜熱が大きく、より少ない冷媒循環量で同一能力を発揮できる。このため、R32を使用することにより、使用する冷媒量の削減が可能となり、熱交換器50において圧力損失の低減ができる。したがって、伝熱管57を細い円管で構成し、冷媒としてR32を用いることにより、熱交換器50を小型化することができる。
【0039】
また、本実施の形態1に係る熱交換器50では、フィン56及び伝熱管57をアルミニウム又はアルミニウム合金で形成することにより、熱交換器50の軽量化を図っている。なお、熱交換器50の重量が据付状の制約とならない場合、伝熱管57を銅で構成しても勿論よい。
【0040】
なお、本実施の形態1では、右側縦断面略Λ型の熱交換器50において小型化及び軽量化を図ったが、熱交換器50の形状はこれに限られるものではない。フィン56及び伝熱管57で構成される熱交換器50は、例えば以下のように形成されてもよい。
【0041】
図10〜図13は、本発明の実施の形態1に係る室内機の別の一例を示す縦断面図である。
右側縦断面において、フィン56及び伝熱管57で構成される熱交換器50は、例えば略N型(図10)に形成されてもよいし、例えば略W型(図11)に形成されてもよいし、例えば略И型(図12)に形成されてもよいし、例えば略M型(図13)に形成されてもよい。このとき、対称線50aよりも前側に配置された熱交換器51a及び熱交換器51bが前面側熱交換器51となる。また、対称線50aよりも後側に配置された熱交換器55a及び熱交換器55bが背面側熱交換器55となる。図10〜図13のように熱交換器50を構成することにより、熱交換器50を通過する風量が増加し、熱交換器50の熱交換能力がさらに向上する。このため、熱交換器50をさらに小型化することができる。
【0042】
(フィンガーガード&フィルター)
また、本実施の形態1に係る室内機100は、吸込口2に、フィンガーガード15やフィルター10が設けられている。フィンガーガード15は、回転するファン20に手を触れることができないようにする目的で設置されているものである。このため、フィンガーガード15の形状は、ファン20に手を触れることができなければ任意である。例えば、フィンガーガード15の形状は、格子状でもよいし、多数の大小異なるリングで構成されたような円形状でもよい。また、フィンガーガード15は、樹脂等の材料で構成しても金属の材料で構成してもよいが、強度が必要な場合、金属で構成することが望ましい。また、フィンガーガード15は、通風抵抗の低下と強度の保持の観点からできるだけ細く、強い材料や形状が好ましい。フィルター10は、室内機100の内部へ粉塵が流入することを防止するために設けられているものである。フィルター10は、着脱自在にケーシング1に設けられている。また、本実施の形態1に係る室内機100は、フィルター10を自動で掃除する自動清掃機構を備えている。
【0043】
(風向制御ベーン)
また、本実施の形態1に係る室内機100は吹出口3に、気流の吹出し方向を制御する機構である上下ベーン70(図2参照)と図示しない左右ベーン(図示せず)が設けられている。
【0044】
(ドレンパン)
図3は、本発明の実施の形態1に係る室内機を前面右側から見た斜視図である。図4は、この室内機を背面右側から見た斜視図である。図5は、この室内機を前面左側から見た斜視図である。また、図6は、本発明の実施の形態1に係るドレンパンを示す斜視図である。なお、ドレンパンの形状の理解を容易とするため、図3及び図4では室内機100の右側を断面で示し、図5では室内機100の左側を断面で示している。
【0045】
前面側熱交換器51の下端部(前面側熱交換器51の前面側端部)の下方には、前面側ドレンパン110が設けられている。背面側熱交換器55の下端部(背面側熱交換器55の背面側端部)の下方には、背面側ドレンパン115が設けられている。なお、本実施の形態1では、背面側ドレンパン115とケーシング1の背面部1bが一体で形成されている。この背面側ドレンパン115には、左側端部及び右側端部の双方に、ドレンホース117が接続される接続口116が設けられている。なお、接続口116の双方へドレンホース117を接続する必要はなく、どちらか一方の接続口116へドレンホース117を接続すればよい。例えば、室内機100の据付工事の際に室内機100の右側へドレンホース117を引き出したい場合、背面側ドレンパン115の右側端部に設けられた接続口116へドレンホース117を接続し、背面側ドレンパン115の左側端部に設けられた接続口116はゴムキャップ等で閉塞すればよい。
【0046】
前面側ドレンパン110は、背面側ドレンパン115よりも高い位置に配置されている。また、前面側ドレンパン110と背面側ドレンパン115との間には、左側端部及び右側端部の双方に、ドレンの移動路となる排水路111が設けられている。排水路111は、前面側の端部が前面側ドレンパン110と接続されており、前面側ドレンパン110から背面側ドレンパン115に向かって下方に傾斜するように設けられている。また、排水路111の背面側の端部には、舌部111aが形成されている。排水路111の背面側の端部は、背面側ドレンパン115の上面に覆い被さるように配置されている。
【0047】
冷房運転時、熱交換器50で室内空気が冷却される際、熱交換器50に結露が発生する。そして、前面側熱交換器51に付着した露は、前面側熱交換器51の下端部から滴下し、前面側ドレンパン110で回収される。背面側熱交換器55に付着した露は、背面側熱交換器55の下端部から滴下し、背面側ドレンパン115で回収される。
また、本実施の形態1では背面側ドレンパン115よりも高い位置に前面側ドレンパン110を設けているので、前面側ドレンパン110で回収されたドレンは、背面側ドレンパン115の方へ向かって排水路111を流れる。そして、このドレンは、排水路111の舌部111aから背面側ドレンパン115へ滴下し、背面側ドレンパン115で回収される。背面側ドレンパン115で回収されたドレンは、ドレンホース117を通って、ケーシング1(室内機100)の外部へ排出される。
【0048】
本実施の形態1のように、背面側ドレンパン115よりも高い位置に前面側ドレンパン110を設けることにより、両ドレンパンで回収されたドレンを、背面側ドレンパン115(最もケーシング1の背面側に配置されたドレンパン)に集めることができる。このため、背面側ドレンパン115にドレンホース117の接続口116を設けることにより、前面側ドレンパン110及び背面側ドレンパン115で回収されたドレンをケーシング1の外部へ排出することができる。したがって、ケーシング1の前面部等を開けて室内機100のメンテナンス(熱交換器50の清掃等)を行う場合等、ドレンホース117の接続されたドレンパンを着脱等する必要がなく、メンテナンス等の作業性が向上する。
【0049】
また、排水路111が左側端部及び右側端部の双方に設けられているので、室内機100が傾いた状態で設置されても、前面側ドレンパン110で回収されたドレンを確実に背面側ドレンパン115へ導くことができる。また、ドレンホース117を接続する接続口が左側端部及び右側端部の双方に設けられているので、室内機100の据付条件に応じてホースの引き出し方向を選択することができ、室内機100を設置する際の作業性が向上する。また、排水路111が背面側ドレンパン115の上方に覆い被さるように配置されているので(つまり、排水路111と背面側ドレンパン115との間に接続機構が不要となるので)、前面側ドレンパン110を着脱することが容易となり、メンテナンス性がより向上する。
【0050】
なお、排水路111の背面側の端部を背面側ドレンパン115と接続し、前面側ドレンパン110が排水路111の上方に覆い被さるように、排水路111を配置してもよい。このような構成でも、排水路111が背面側ドレンパン115の上方に覆い被さるように配置された構成と同様の効果を得ることができる。また、前面側ドレンパン110が背面側ドレンパン115よりも高い必要は必ずしもなく、前面側ドレンパン110と背面側ドレンパン115が同じ高さであっても、両ドレンパンで回収したドレンを背面側ドレンパン115に接続されたドレンホースから排出することができる。
【0051】
(ノズル)
また、本実施の形態1に係る室内機100は、右側縦断面において、ノズル6の入り口側の開口長さd1(前面側ドレンパン110と背面側ドレンパン115部分との間で定義されるドレンパン間の絞り長さd1)が、ノズル6の出口側の開口長さd2(吹出口3の長さ)よりも大きく構成されている。つまり、室内機100のノズル6は、d1>d2となっている。
【0052】
ノズル6がd1>d2となっているのは、次のような理由のためである。なお、d2は室内機の基本機能の一つである気流の到達性に影響するため、以下では、本実施の形態1に係る室内機100のd2が従来の室内機の吹出口と同程度の長さであるとして説明する。
【0053】
縦断面におけるノズル6の形状をd1>d2とすることにより、空気の風路が大きくなると共に、上流側に配置された熱交換器50の角度A(熱交換器50の下流側における前面側熱交換器51と背面側熱交換器55とがなす角度)を大きくすることが可能となる。このため、熱交換器50に生じる風速分布が緩和されると共に、熱交換器50の下流の空気の風路を大きく形成できるため、室内機100全体の圧力損失の低減が可能となる。さらに、ノズル6の入口付近に生じていた風速分布の偏りを、縮流する効果によって均一化し、吹出口3に案内することができる。
【0054】
例えばd1=d2の場合、ノズル6の入口付近で生じた風速分布の偏り(例えば、背面側に偏った流れ)が、そのまま吹出口3における風速分布の偏りとなる。つまり、d1=d2の場合、風速分布の偏りを持った状態で、吹出口3から空気が吹き出される。また、例えばd1<d2の場合、前面側熱交換器51及び背面側熱交換器55を通過した空気がノズル6の入口付近で合流する際、縮流損失が大きくなってしまう。このため、d1<d2の場合、吹出口3のディフューズ効果が得られなければ、縮流損失分の損失が発生する。
【0055】
(ANC)
また、本実施の形態1に係る室内機100は、図1に示すように能動的消音機構が設置されている。
【0056】
より詳しくは、本実施の形態1に係る室内機100の消音機構は、騒音検出マイクロホン161、制御スピーカー181、消音効果検出マイクロホン191、及び信号処理装置201により構成されている。騒音検出マイクロホン161は、ファン20の送風音を含む室内機100の運転音(騒音)を検出する騒音検出装置である。この騒音検出マイクロホン161は、ファン20と熱交換器50との間に配置されている。本実施の形態1では、ケーシング1内の前面部に設けられている。制御スピーカー181は、騒音に対する制御音を出力する制御音出力装置である。この制御スピーカー181は、騒音検出マイクロホン161の下側であって、熱交換器50の上側に配置されている。本実施の形態1では、ケーシング1内の前面部に、風路の中央を向くように設けられている。消音効果検出マイクロホン191は、制御音による消音効果を検出する消音効果検出装置である。この消音効果検出マイクロホン191は、吹出口3から出てくる騒音を検出するため、吹出口3近傍に設けられている。また、消音効果検出マイクロホン191は、吹出口3から出てくる吹出空気に当たらないように、風流を避けた位置に取り付けられている。信号処理装置201は、騒音検出マイクロホン161及び消音効果検出マイクロホン191の検出結果に基づき、制御スピーカー181に制御音を出力させる制御音生成装置である。
【0057】
図8は、本発明の実施の形態1に係る信号処理装置を示す構成図である。騒音検出マイクロホン161、及び消音効果検出マイクロホン191から入力された電気信号はマイクアンプ151により増幅され、A/D変換器152によりアナログ信号からデジタル信号に変換される。変換されたデジタル信号はFIRフィルター158、及びLMSアルゴリズム159に入力される。FIRフィルター158では騒音検出マイクロホン161で検出した騒音が、消音効果検出マイクロホン191が設置されている場所に到達したときの騒音と同振幅・逆位相となるように補正をかけた制御信号を生成し、D/A変換器154によりデジタル信号からアナログ信号に変換された後、アンプ155により増幅され、制御スピーカー181から制御音として放出される。
【0058】
空気調和機が冷房運転する場合等、図7に示すように、熱交換器50と吹出口3の間の領域Bは、冷気により温度が低下するため、空気中の水蒸気が水滴となって現れる結露が発生する。このため、室内機100には、吹出口3付近に水滴が吹出口3から出てこないようにするための水受け等(図示せず)が取り付けられている。なお、熱交換器50の上流である騒音検出マイクロホン161及び制御スピーカー181が配置される領域は、冷気により冷やされる領域の上流にあたるため、結露が生じない。
【0059】
次に室内機100の運転音の抑制方法について説明する。室内機100におけるファン20の送風音を含む運転音(騒音)は、ファン20と熱交換器50との間に取り付けられた騒音検出マイクロホン161で検出してマイクアンプ151、A/D変換器152を介してデジタル信号となり、FIRフィルター158とLMSアルゴリズム159に入力される。
【0060】
FIRフィルター158のタップ係数はLMSアルゴリズム159により逐次更新される。LMSアルゴリズム159にてタップ係数は式1(h(n+1)=h(n)+2・μ・e(n)・x(n))に従って更新され、誤差信号eがゼロに近づくように最適なタップ係数が更新される。
なお、h:フィルターのタップ係数、e:誤差信号、x:フィルター入力信号、μ:ステップサイズパラメータであり、ステップサイズパラメータμはサンプリングごとのフィルター係数更新量を制御するものである。
【0061】
このように、LMSアルゴリズム159でタップ係数が更新されたFIRフィルター158を通過したデジタル信号は、D/A変換器154にてアナログ信号に変換され、アンプ155で増幅され、ファン20と熱交換器50との間に取り付けられた制御スピーカー181から制御音として室内機100内の風路に放出される。
【0062】
一方、室内機100の下端で、吹出口3から放出される風が当たらないように吹出口3の外側壁方向に取り付けられた消音効果検出マイクロホン191には、ファン20から風路を通って伝播し吹出口3から出てくる騒音に制御スピーカー181から放出された制御音を干渉させた後の音が検出される。上述したLMSアルゴリズム159の誤差信号には、消音効果検出マイクロホン191で検出された音を入力しているため、この干渉後の音がゼロに近づくようにFIRフィルター158のタップ係数が更新されることになる。その結果、FIRフィルター158を通過した制御音により吹出口3近傍の騒音を抑制することができる。
【0063】
このように、能動的消音方法を適用した室内機100においては、騒音検出マイクロホン161と制御スピーカー181をファン20と熱交換器50との間に配置し、消音効果検出マイクロホン191を吹出口3からの風流が当たらない箇所に取り付けている。このため、結露が起きる領域Bに能動的消音の必要部材を取り付けなくて済むため、制御スピーカー181、騒音検出マイクロホン161及び消音効果検出マイクロホン191への水滴の付着を防止し、消音性能の劣化やスピーカーやマイクロホンの故障を防ぐことができる。
【0064】
なお、本実施の形態1で示した騒音検出マイクロホン161、制御スピーカー181及び消音効果検出マイクロホン191の取り付け位置は、あくまでも一例である。例えば、図9に示すように、騒音検出マイクロホン161と制御スピーカー181と共に、消音効果検出マイクロホン191をファン20と熱交換器50との間に配置してもよい。また、騒音や制御音により騒音を打ち消した後の消音効果の検出手段としてマイクロホンを例に挙げたが、ケーシングの振動を検知する加速度センサー等で構成されてもよい。また、音を空気流れの乱れとして捉え、騒音や制御音により騒音を打ち消した後の消音効果を、空気流れの乱れとして検出してもよい。つまり、騒音や制御音により騒音を打ち消した後の消音効果の検出手段として、空気流れを検出する流速センサー、熱線プローブ等を用いてもよい。マイクロホンのゲインを上げて、空気流れを検出することも可能である。
【0065】
また、本実施の形態1では、信号処理装置201にてFIRフィルター158とLMSアルゴリズム159を用いたが、消音効果検出マイクロホン191で検出した音をゼロに近づける適応信号処理回路であればよく、能動的消音方法で一般的に使用されているfiltered−Xアルゴリズムを用いたものでもよい。さらに、信号処理装置201は適応信号処理ではなく、固定のタップ係数により制御音を生成する構成にしても良い。また、信号処理装置201はデジタル信号処理ではなく、アナログ信号処理回路であってもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態1では結露が起こるような空気の冷却を行う熱交換器50を配置した場合について記載したが、結露が起きない程度の熱交換器50を配置する場合であっても適用でき、熱交換器50による結露発生の有無を考慮せずに騒音検出マイクロホン161、制御スピーカー181及び消音効果検出マイクロホン191等の性能劣化を防止できる効果がある。
【0067】
実施の形態2.
(扁平管)
実施の形態1では、伝熱管57を円管で構成した。これに限らず、伝熱管57を扁平管で構成しても勿論よい。なお、本実施の形態2では、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付している。
【0068】
図14は、本発明の実施の形態2に係る室内機を示す縦断面図である。
本実施の形態2に係る熱交換器50は、伝熱管57が扁平管で構成されている。その他の構成は、実施の形態1で示した熱交換器50と同様である。また、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、伝熱管57を流れる冷媒(室内機100及びこの室内機100を備えた空気調和機に用いられる冷媒)をR32としている。
【0069】
扁平管状の伝熱管57を用いた熱交換器50は、円管状の伝熱管を用いた熱交換器と比べ、冷媒流路が狭くなる。このため、扁平管状の伝熱管57を用いた熱交換器50は、円管状の伝熱管を用いた熱交換器と比べ、同一冷媒循環量では冷媒の圧力損失が大きくなる。しかしながら、R32は、R410Aと比べ、同一温度における蒸発潜熱が大きく、より少ない冷媒循環量で同一能力を発揮できる。このため、R32を使用することにより、使用する冷媒量の削減が可能となり、熱交換器50において圧力損失の低減ができる。したがって、伝熱管57を扁平管で構成し、冷媒としてR32を用いることにより、熱交換器50を小型化することができる。
【0070】
また、本実施の形態2では、伝熱管57の長辺方向が通風方向に沿うように、熱交換器50を配置している。より詳しくは、ファン20が駆動されると、熱交換器50の通風方向(熱交換器50を流れる空気の方向)は、図14に白抜き矢印で示す方向となる。そして、本実施の形態2では、伝熱管57の長辺方向がこの通風方向に沿うように、熱交換器50を配置している。これにより、熱交換器50の通風抵抗が低減されるので、ファン20の動力を小さく抑えることができ、ファン20の消費電力を削減することができる。また、熱交換器50の通風抵抗が低減されるので、隣接する伝熱管57の間の間隔を小さく(狭く)することができる。このため、熱交換器50をより小型化することができる。
【0071】
また、本実施の形態2に係る熱交換器50においても、フィン56及び伝熱管57をアルミニウム又はアルミニウム合金で形成するとよい。これにより、熱交換器50の軽量化を図ることができる。
【0072】
実施の形態3.
(伝熱管密度)
例えば、以下のように熱交換器50を構成しても、熱交換器50を小型化することができる。なお、本実施の形態3では、上述した実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態1及び実施の形態2と同一部分には、同一符号を付している。
【0073】
図15は、本発明の実施の形態3に係る室内機を示す縦断面図である。
軸流ファンや斜流ファンであるファン20は、ファン20の中心部側ほど風量が少なくなり、ファン20の外周側ほど風量が多くなる。つまり、ファン20と対向している範囲の熱交換器50においては、ファン20の中心部と対向している範囲ほど通過しようとする風量が少なくなり、ファン20の外周側と対向している範囲ほど通過しようとする風量が多くなる。そこで、本実施の形態3に係る熱交換器50は、通過しようとする風量が多くなる範囲(ファン20の外周側と対向している範囲)の通風抵抗を、通過しようとする風量が少なくなる範囲(ファン20の中心部と対向する範囲)の通風抵抗よりも大きくしている。
【0074】
より詳しくは、右側縦断面が略Λ型となっている本実施の形態3に係る熱交換器50においては、前面側熱交換器51の背面側端部から前面側熱交換器51の前面側端部にかけて、徐々に通風抵抗を増加させている。また、背面側熱交換器55の前面側端部から背面側熱交換器55の背面側端部にかけて、徐々に通風抵抗を増加させている。本実施の形態3では、隣接する伝熱管57の間隔を調整することにより、通風抵抗を調整している。つまり、右側縦断面が略Λ型となっている本実施の形態3に係る熱交換器50においては、前面側熱交換器51の背面側端部から前面側熱交換器51の前面側端部にかけて、隣接する伝熱管57の間隔が徐々に小さくなっている。また、背面側熱交換器55の前面側端部から背面側熱交換器55の背面側端部にかけて、隣接する伝熱管57の間隔が徐々に小さくなっている。
【0075】
このように熱交換器50を構成することにより、熱交換器50の各範囲における風速(つまり、風量)が均一化し、熱交換器50の熱交換能力が向上する。このため、熱交換器50を小型化することができる。
【0076】
なお、本実施の形態3では、隣接する伝熱管57の間隔を調整することにより通風抵抗を調整したが、伝熱管57の直径を変更することにより通風抵抗を調整してもよい。つまり、右側縦断面が略Λ型となっている本実施の形態3に係る熱交換器50においては、前面側熱交換器51の背面側端部から前面側熱交換器51の前面側端部にかけて、伝熱管57の直径を徐々に大きくすればよい。また、背面側熱交換器55の前面側端部から背面側熱交換器55の背面側端部にかけて、伝熱管57の直径を徐々に大きくすればよい。
【0077】
また、熱交換器50の通風抵抗は、ファン20の中心部と対向する範囲からファン20の外周側と対向する範囲にかけて徐々に大きくする必要はない。例えば、ファン20の中心部と対向する範囲からファン20の外周側と対向する範囲にかけて、熱交換器50の通風抵抗を段階的に増加させていってもよい。つまり、ファン20の外周側と対向している範囲の通風抵抗が、ファン20の中心部と対向する範囲の通風抵抗よりも大きくなっていればよい。
【0078】
また、本実施の形態3に係る熱交換器50の伝熱管57は、実施の形態1で示したように直径が細い(直径3mm〜7mm程度)円管で構成してもよいし、実施の形態2で示したように扁平管で構成してもよい。このとき、冷媒としてR32を用いることにより、熱交換器50をより小型化することができる。伝熱管57を扁平管で構成する場合、扁平管の長辺方向が通風方向に沿うように熱交換器50を配置することで、熱交換器50をさらに小型化することができる。
【0079】
また、本実施の形態3に係る熱交換器50においても、フィン56及び伝熱管57をアルミニウム又はアルミニウム合金で形成するとよい。これにより、熱交換器50の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ケーシング、1b 背面部、2 吸込口、3 吹出口、5 ベルマウス、5a 上部、5b 中央部、5c 下部、6 ノズル、10 フィルター、15 フィンガーガード、16 モーターステイ、17 固定部材、18 支持部材、20 ファン、20a 回転軸、21 ボス、30 ファンモーター、50 熱交換器、50a 対称線、51 前面側熱交換器、51a 熱交換器、51b 熱交換器、55 背面側熱交換器、55a 熱交換器、55b 熱交換器、56 フィン、57 伝熱管、70 上下ベーン、90 仕切り板、100 室内機、110 前面側ドレンパン、111 排水路、111a 舌部、115 背面側ドレンパン、116 接続口、117 ドレンホース、151 マイクアンプ、152 A/D変換器、154 D/A変換器、155 アンプ、158 FIRフィルター、159 LMSアルゴリズム、161 騒音検出マイクロホン、181 制御スピーカー、191 消音効果検出マイクロホン、201 信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に吸込口が形成され、前面部下側に吹出口が形成されたケーシングと、
前記ケーシング内の前記吸込口の下流側に設けられた軸流型又は斜流型のファンと、
前記ケーシング内であって、前記ファンの下流側となり前記吹出口の上流側となる位置に設けられた熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、
所定の間隙を介して積層された複数のフィン及びこれら複数の前記フィンを貫通する複数の伝熱管を有し、前記ファンの外周側と対向する範囲の通風抵抗が、前記ファンの中心部と対向する範囲の通風抵抗よりも大きくなっていることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項2】
前記熱交換器は、
前記ファンの外周側と対向する範囲に配置された前記伝熱管の直径が、前記ファンの中心部と対向する範囲に配置された前記伝熱管の直径よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内機。
【請求項3】
前記熱交換器の隣接する前記伝熱管の間隔は、前記ファンの中心部と対向する範囲に配置された前記伝熱管と比べ、前記ファンの外周側と対向する範囲に配置された前記伝熱管の方が小さくなっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和機の室内機。
【請求項4】
冷媒としてR32を用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項5】
前記伝熱管は直径3mm〜7mmの円管であることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機の室内機。
【請求項6】
前記伝熱管は扁平管であることを特徴とする請求項4に記載の空気調和機の室内機。
【請求項7】
上部に吸込口が形成され、前面部下側に吹出口が形成されたケーシングと、
前記ケーシング内の前記吸込口の下流側に設けられた軸流型又は斜流型のファンと、
前記ケーシング内であって、前記ファンの下流側となり前記吹出口の上流側となる位置に設けられた熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、所定の間隙を介して積層された複数のフィンと、複数の前記フィンを貫通する複数の伝熱管と、を有し、
複数の前記伝熱管は直径3mm〜7mmの円管であり、
冷媒としてR32を用いることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項8】
上部に吸込口が形成され、前面部下側に吹出口が形成されたケーシングと、
前記ケーシング内の前記吸込口の下流側に設けられた軸流型又は斜流型のファンと、
前記ケーシング内であって、前記ファンの下流側となり前記吹出口の上流側となる位置に設けられた熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、所定の間隙を介して積層された複数のフィンと、複数の前記フィンを貫通する複数の伝熱管と、を有し、
複数の前記伝熱管は扁平管であり、
冷媒としてR32を用いることを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項9】
前記熱交換器は、前記伝熱管の長辺方向が通風方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項6又は請求項8に記載の空気調和機の室内機。
【請求項10】
前記伝熱管及び前記フィンが、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の空気調和機の室内機。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の室内機を備えたことを特徴とする空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−37085(P2012−37085A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175257(P2010−175257)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】