説明

空焚きできる電磁調理器用食器

【課題】石鍋や陶板を電磁調理器を使用して300℃以上に加熱した場合、カーボンの発熱体が接着剤で石鍋に固着されている従来の電磁調理器用食器では、カーボン板の熱膨張のため発熱体が石鍋から剥離してしまう点が問題であった。
【解決手段】接着剤を一切使用せず、石鍋と発熱体であるカーボン板とを機械的に密着させ、密着状態を保持させるためにコの字型の金属製の帯で鍋の底部を巻くことで課題を解決した。なお、加熱されたカーボン板の輻射熱が電磁調理器に影響を与えないように、カーボン板の底面に表面処理を施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電磁調理器で加熱して用いる食器において、食器を300℃以上に加熱する石製や陶器製の食器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土鍋の底面に電磁調理器で発熱するカーボンの板を接着剤で固着させた電磁調理器用の土鍋が販売されている。しかし、カーボン板が300℃以上になると接着剤が劣化し、カーボン板が熱で膨張して土鍋との間にずれが生じる。そのため、300℃以上に耐える接着剤を用いて接着すると、カーボン板の膨張のためカーボン板は土鍋の底からはがれてしまう。
【0003】
この剥離を防止するため硬化後も弾性を有する接着剤を使用したいが、300℃を超える耐熱性のある硬化後も弾性を有する接着剤がないのが現状である。一方、外食産業ではオール電化厨房が増加し、ビビンバ料理や焼き肉料理用に300℃以上に加熱出来る電磁調理器用食器を要望する声が強くなってきている。
【特許文献1】特許出願 特平6−189399
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁調理器を用いて300℃以上に加熱できる石鍋や陶板を作るにはどのようにすればよいかを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、接着剤を用いずに食器とカーボンの板とを密着させ、熱によりカーボンの板が食器より膨張しても剥離しない構造とした。カーボンは300℃以上になっても鉄板のように変形することはない。この歪まない性質を利用して石鍋や陶板の底面にしっかり密着した状態に取り付け、カーボン板が食器から脱落しないように、その外側に金属の帯を巻き付ける。帯の上部と下部はコの字型に曲げ、上部は石鍋や陶板に設けた溝に嵌め込み取り付ける。下部はカーボン板の底部を支える形に取り付ける。この金属の帯によってカーボンの板を石鍋や陶板に密着させる。金属の帯はカーボン板と石鍋や陶板とを合体させたあと溶接して結合する。また、カーボン板の温度が300℃以上となるため電磁調理器の表面が熱くなり
、その熱が電磁調理器内部を加熱して電磁調理器の温度センサーにより加熱を中断させないように、金属の帯の下側に突起を設けてカーボン板と電磁調理器の間に隙間を設けた。また、加熱されたカーボン板の輻射熱が電磁調理器に影響を与えないように、カーボン板の底面に表面処理を施した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、ガスによる加熱時に比べて室内の温度は大幅に下がり、加熱に要するエネルギーも大幅に減少した。また、従来はガス以外では加熱が難しかった石鍋も電磁調理器で加熱できるため、オール電化厨房で利用できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
石鍋は機械を使って加工されるが、手作業の部分があるため石鍋によって個々の重量に差があり、外形寸法も微妙に異なっている。こおため、カーボンの板を石鍋に密着させながら固定する必要がある。このため石鍋に設ける溝を図3のようにコの字型の金属製の帯が溝に深く入るほどカーボンの板と石鍋とが密着するようにする。始めにコの字型の金属製の帯を嵌め込んだときカーボンの板と石鍋は密着せず隙間が出来る。そこで、コの字型の金属製の帯を削って短くする。短くすることでコの字型の帯は石鍋に設けられた溝に沿って溝を上昇し、カーボンの板を石鍋に密着させる方向に動く。コの字型の帯の長さを調整することでカーボンの板と石鍋の底とは隙間なく密着させられる。この状態にしたのちコの字型の帯を溶接することによって接着剤を用いることなく図3の(ロ)のようにカーボン板を石鍋の底部分に密着した状態で保持することが出来るようになる。
【0008】
また、石鍋の底面だけでなく側面も加熱したいという要望には、カーボンの内面と石鍋の側面を湾曲した形状に削って密着させる。この場合も接着剤を使用いないでコの字型の金属の帯で保持部材を作り、石鍋には図4のような溝を設け、帯の長さを少しずつ削ってカーボンが石鍋に密着した状態になったところで金属の帯を溶接する。溶接方法は図5のようにコの字型の金属帯両端の一部取り除き凸部と凹部を設け、この部分を密着させて溶接するが、帯の一端を帯の上に被せて帯を締め、カーボンを鍋に密着させてから溶接し固定させてもよい。または、帯の両端に別の金属片を被せ、この金属片を帯の両端に溶接して帯を結合させてもよい。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の1実施例の断面図であって、石鍋(1)の底部外側にカーボン板(2)を密着させたあと、コの字型の金属の帯(3)を嵌め込み、金属の帯の両端を溶接してカーボンの円板を石鍋に密着固定させた。
【実施例2】
【0010】
図2は別の実施例の断面図であって、石鍋(1)の底面だけでなく立ち上がり部分も加熱出来るように、カーボン板(2)を削って窪みを設け、石鍋(1)に密着させたものである。
【産業上の利用可能性】
【0011】
石の食器は厚さが15ミリ以上あり、加熱はガスで行うのが一般的であった。近年になり外食産業でもオール電化厨房が増加し、石製の食器の電気による加熱が強く要望されてきた。本八名は、その要望に応えるものの一つで外食産業による利用が見込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の断面図である。
【図2】実施例2の断面図である。
【図3】実施例1の石鍋とカーボンを密着させる金属製の帯の作用を示す説明図であって底部分の断面図である。(イ)は金属の帯を嵌め込んだ最初の状態。(ロ)は金属の帯を短くして石鍋の溝に食い込ませ溶接した状態を示す。
【図4】実施例2の金属製の帯の作用を示す一部拡大図である。帯の長さを削って短くすると、直径が小さくなりA点は溝に沿って上昇しカーボンは石鍋に密着する。(イ)は金属の帯を嵌め込んだ最初の状態。(ロ)はA点が溝に沿って上昇し、カーボンが石鍋に密着した状態を示す。
【図5】金属製の帯を溶接した状態を示す一部拡大図である。
【符号の説明】
【0013】
1 石鍋
2 カーボン板
3 金属製の帯
4 カーボン板の底面に施した断熱材による表面処理
5 金属帯の溶接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石材や陶器からなる食器の底面にカーボンの板を設けた食器において、食器の外側表面とカーボン板の表面とを密着させ、外周部分で食器とカーボン板とを保持部材で一体化させたことを特徴とする空焚きできる電磁調理器用食器。
【請求項2】
保持部材を取り付ける石鍋の溝の幅が深くなるに従い上向きに傾斜している溝であることを特徴とする請求項1記載の空焚きできる電磁調理器用食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307107(P2008−307107A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155266(P2007−155266)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000198514)
【Fターム(参考)】