説明

空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法

【課題】細胞間や細胞内で局在化しているmRNAやタンパク質を、局在空間情報を失わずに定量測定を行うことのできる方法を提供すること。
【解決手段】細胞あるいは試料薄片を所定の太さの棒状の等電点電気泳動用ゲルの間に挟み電気泳動を行わせる。これにより、細胞間や細胞内で局在化しているmRNAやタンパク質を2次元投影した形の分布の状態を保って、これらのpK値に応じた位置まで等電点電気泳動用ゲル内を移動させる。その後、棒状の等電点電気泳動用ゲルをpK値に応じた位置で薄膜状に切り取り、その位置にある内容物を調べて、局在空間情報を失わずに定量測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞内生体物質を細胞内の空間分布(二次元配置)を保った状態で解析する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲノム計画の進展とともにDNAレベルで生体を理解し、病気の診断や生命現象の理解をしようとする動きが活発化してきた。生命現象の理解や遺伝子の働きを調べるには遺伝子の発現状況を調べることが有効である。この有力な方法として、固体表面上に数多くのDNAプローブを種類毎に区分けして固定したDNAプローブアレー、あるいはDNAプローブチップ(実際には固定されているのはオリゴヌクレオチドの誘導体であるのでオリゴチップと呼ぶこともある)が用いられている。DNAプローブのかわりに抗体や抗原を基板上にアレイ状に固定したプロテインチップの概念も実用化されている。たとえば、基板上にアレルギーを起こす数十から数百の抗原(アレルゲン)を固定したデバイスに検体血清を反応させ、各抗原と抗原抗体反応を起こす血清中に存在するIgMを特異的に捕捉し、IgMに結合する酵素標識2次抗体を反応させ、酵素活性を化学発光と組み合わせることで測定して、アレルゲンを検出するアレルゲン検査用のシステムが医療検査用に実用化されている。
【0003】
DNAチップを作るには光化学反応と半導体工業でよく用いられるリソグラフィーを用いて区画された多数のセルに、設計された配列のオリゴマーを一塩基ずつ合成して行く方法(非特許文献1:Science 251, 767-773(1991))、あるいはDNAプローブやタンパク質プローブを各区画に一つ一つ植え込んでいく方法(非特許文献2:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 4613-4918 (1996))などがある。
【0004】
これらチップは、いずれもスライドガラスなどの平面上に区画を区切り、多数のプローブを、アレイ状に整列させた構造をしている。どのプローブがどの位置にあるかは、プローブが固定されている物理的な位置のみでインデクシングされるのが一般的である。
【0005】
検出には、DNAチップの類では標識物に蛍光色素を用いるケースが圧倒的に多い。プロテインチップでは上記したとおり、酵素標識物を用いて化学発光ないし生物発光の系で検出するケースが多いが、蛍光標識検出や、電気化学発光検出を行うケースと多様な方法が実用化されている。
【0006】
電気化学発光法では、電極表面に抗原捕捉用の抗体が存在する。サンドイッチ用抗体の標識物にはルテニウム錯体を用いる(非特許文献3:Clin. Chem., 37, 1534-1539 (1991))。電極表面ではルテニウムが酸化され、TPAのレドックス反応とカップルさせて還元するときに励起状態となったルテニウムの電子が基底状態に落ちる時に光を発する。
【0007】
これらに加えて、本願の発明者らにより、細胞を2次元投影した形で基板あるいは電極上に、細胞の内容物を捕捉する。このために、電気泳動的な力を利用する、あるいは、細胞の水分を瞬時に蒸発させて固定する。2次元平面に固定されたmRNAを、これにハイブリダイズする標識物付きの標識プローブで同定する方法により、細胞間や細胞内で局在化しているmRNAやタンパク質を、局在空間情報を失わずに定量測定を行うことが提案された(特許文献1)。
【非特許文献1】Science 251, 767-773(1991)
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 4613-4918(1996)
【非特許文献3】Clin. Chem., 37, 1534-1539 (1991)
【特許文献1】特開2007−14297
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献1〜3で開示される従来技術では、DNAプローブチップあるいはプロテインチップを用いる遺伝子転写産物であるmRNAや翻訳産物であるタンパク質の識別や検出法に関してはよく検討されており、何らかの方法で溶液状の試料が準備できていれば測定ができる。上記従来技術で説明した検体血清からのアレルゲン検査では、血清試料を用いる。mRNA検査では予め十分多量な細胞検体からRNA成分を抽出し、リバーストランスクリプターゼによる逆転写反応でcDNAを合成し、PCR増幅やcRNA合成により増幅を行う。また相補鎖合成時に標識dNTPを取り込ませて多量の標識DNA鎖を得る。最近ではアミノアリルdNTPを取り込ませて、その後にアミノ基に蛍光色素を反応させて蛍光標識DNA鎖を得る方法が主流となっている。このようにして得られた蛍光標識DNA鎖を、いわゆる、DNAチップとハイブリダイズさせて各種発現遺伝子の解析を行う。このように、予め溶液試料が得られる場合のみ解析が可能となる。
【0009】
検体の内、かなりの部分を占める細胞を扱う場合、測定対象となる細胞構成物質を溶液状態にする操作そのものが問題となるケースがある。多細胞生物においては、細胞は隣接する細胞群との相互インタラクションにより全体の調和を成立させているので、細胞群をすりつぶして均一な状態としてしまうと各細胞の持つ局在的な情報が失われる。さらに、個々の細胞内においても発現遺伝子であるmRNAは局在化しているし、最終産物であるタンパク質も細胞内でその機能に従い局在している。これら局在mRNAやタンパク質は、細胞の活動状態すなわち隣接する細胞群とのコミュニケーションにより変化するし、おかれている環境に対しても変動する。すなわち、生体機能をより正確に記述し、医療向けの検査や創薬に役立つ情報を得ようとすると、細胞間や細胞内で局在化しているmRNAやタンパク質を、局在空間情報を保持した状態で定量検出する必要がある。
【0010】
特開2007−14297に開示されたように、細胞を2次元投影した形で基板あるいは電極上に、細胞の内容物を捕捉することによりこの課題は達成できる。具体的には、電気泳動的な力を利用する。すなわち、極薄い間隔からなる2枚の電極で細胞を挟み、電界をかけることで細胞を破壊すると同時に細胞の内容物を電極表面に引き寄せる。あるいは、細胞の破壊にUV光を用いることも効果的である。350nm程度のUV光は溶媒である水では吸収されず、細胞で吸収される。このため、溶媒を沸騰させること無く細胞を可溶化することができる。このときも生体物質の内容物を2次元投影した形で捕捉するには電気泳動力を用いる。
【0011】
いずれの場合でも、生体物質の内容物を捕捉する基板、あるいは、電極表面にはmRNAの捕捉用にポリTのようなmRNAに結合する物質(プローブ)を固定しておき、電気泳動力で移動する生体物質の内容物をプローブに結合させることが必要である。そのため、測定対象に応じた適当なプローブを固定した基板、あるいは、電極を準備する必要がある。生体物質の内容物によっては、狭い領域に内容物が偏在して十分な精度での測定ができないことが起こりうる。
【0012】
本発明の目的は、上記問題点を克服し、適当なプローブを固定した基板、あるいは、電極の準備を不要とし、細胞間や細胞内で生体物質が局在化している場合にも、局在空間情報を失わずに定量測定を高精度で行うことのできる空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、下記の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法、および解析のための電気泳動装置を提供する。
(1)試料細胞あるいは試料薄片から所定の形態の試料を準備する工程、
該所定の形態の試料の位相差顕微鏡像を得る工程、
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
該等電点電気泳動用ゲルを上記円筒ごと長さ方向の所定の位置で二つに分割する工程、
上記二つに分割された等電点電気泳動用ゲルの分割面に上記所定の形態の試料を挟んで上記二つに分割された等電点電気泳動用ゲルを長さ方向に一体化して試料計測用等電点電気泳動用ゲルを形成する工程、
上記試料細胞あるいは試料薄片を分割面に挟んだ二つに分割された等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルおよび上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルを負極用の電解液を保持している電気泳動用負電極板および正極用の電解液を保持している電気泳動用正電極板の間に、各上記ゲルが各上記円筒の両端でそれぞれの上記電解液に接するように配置する工程、
上記電気泳動用負電極板および電気泳動用正電極板の間に所定の電気泳動用電圧を印加する工程、
上記電圧印加後、上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルからゲルの長さ方向の位置とpH値との関係を同定する工程、
上記試料細胞あるいは試料薄片の細胞内に存在する生体物質と結合するプローブをナノ粒子で標識する工程、
上記同定されたpH値を基準として上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルを所定の位置で切り出してその位置のゲル切断面にある生体物質に上記ナノ粒子で標識されたプローブを結合させて、上記プローブの標識ナノ粒子を走査型電子顕微鏡像として観察する工程、
上記試料の位相差顕微鏡像と上記標識ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像とを照合する工程、
よりなることを特徴とする空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
(2)上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルが上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと同じ二分割構成である上記(1)記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
(3)上記正極用の電解液は上記計測用等電点電気泳動用ゲルの長さ方向で該ゲルの半分の長さを覆う深さを有するものである上記(1)記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
(4)試料細胞あるいは試料薄片は金属線によるメッシュにより支持された細胞接着性の基質の上に載置されるとともに、上記試料測定用等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の太さのゲルを内部に保持する円筒の薄片上に載置されて上記所定の形態の試料とされた上記(1)記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
(5)試料細胞あるいは試料薄片から所定の形態の試料を準備する工程、
該所定の形態の試料の位相差顕微鏡像を得る工程、
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルおよび上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルを負極用の電解液を保持している電気泳動用負電極板および正極用の電解液を保持している電気泳動用正電極板の間に、各上記ゲルが各上記円筒の両端でそれぞれの上記電解液に接するように配置する工程、
上記試料を、上記電気泳動用正電極板と上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルとの間に配置する工程、
上記電気泳動用負電極板および電気泳動用正電極板の間に所定の電気泳動用電圧を印加する工程、
上記電圧印加後、上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルからゲルの長さ方向の位置とpH値との関係を同定する工程、
上記試料細胞あるいは試料薄片の細胞内に存在する生体物質と結合するプローブをナノ粒子で標識する工程、
上記同定されたpH値を基準として上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルを所定の位置で切り出してその位置のゲル切断面にある生体物質に上記ナノ粒子で標識されたプローブを結合させて、上記プローブの標識ナノ粒子を走査型電子顕微鏡像として観察する工程、
上記試料の位相差顕微鏡像と上記標識ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像とを照合する工程、
よりなることを特徴とする空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
(6)所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料測定用等電点電気泳動ゲル、
上記試料測定用等電点電気泳動ゲルと実質同一の素材からなり、上記円筒と実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動ゲル、
負電極板と該負電極板上に形成された壁とによって規定された、負極用の電解液を保持するための負極電解液容器、および
正電極板と該正電極板上に形成された壁とによって規定された、正極用の電解液を保持するための正極電解液容器とを備え、
上記試料測定用等電点電気泳動ゲルおよび上記pH測定用等電点電気泳動ゲルが、負極電解液容器と正極電解液容器との間に、各上記ゲルが各上記円筒の両端でそれぞれの上記電解液に接するように配置され、
上記試料測定用の等電点電気泳動ゲルが、長さ方向の所定の位置で2つの棒状ゲルに上記円筒ごと分割可能であり、
試料細胞あるいは試料薄片からの所定の形態の試料が、上記二つに分割された上記試料測定用等電点電気泳動ゲルの分割面に挟持される、空間分布を保った細胞内生体物質の解析のための電気泳動装置。
(7)上記pH計測用等電点電気泳動用ゲルが、上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと同じ二分割構成である上記(6)記載の電気泳動装置。
(8)上記正極電解液容器内の電解液は上記計測用等電点電気泳動用ゲルの長さ方向で該ゲルの半分の長さを覆う深さを有するものである上記(6)記載の電気泳動装置。
(9)試料細胞あるいは試料薄片は金属線によるメッシュにより支持された細胞接着性の基質の上に載置されるとともに、等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の太さのゲルを内部に保持する円筒の薄片上に載置されて上記所定の形態の試料とされた上記(6)記載の電気泳動装置。
(10)所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料測定用等電点電気泳動ゲル、
上記試料測定用等電点電気泳動ゲルと実質同一の素材からなり、上記円筒と同じ長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動ゲル、
負電極板と該負電極板上に形成された壁とによって規定された、負極用の電解液を保持するための負極電解液容器、および
正電極板と該正電極板上に形成された壁とによって規定された、正極用の電解液を保持するための正極電解液容器とを備え、
上記試料測定用等電点電気泳動ゲルおよび上記pH測定用等電点電気泳動ゲルが、負極電解液容器と正極電解液容器との間に、各上記ゲルが各上記円筒の両端でそれぞれの上記電解液に接するように配置され、
試料細胞あるいは試料薄片からの所定の形態の試料が上記正電極板と上記試料計測用等電点電気泳動用ゲルとの間に配置されている、空間分布を保った細胞内生体物質の解析のための電気泳動装置。
【0014】
本発明では、細胞あるいは試料薄片を所定の太さの棒状の等電点電気泳動用ゲルの間に挟み電気泳動を行わせる。これにより、細胞間や細胞内で局在化している細胞内生体物質を2次元投影した形の分布の状態を保って、これら細胞内生体物質のpK値に応じた位置まで等電点電気泳動用ゲル内を移動させる。その後、棒状の等電点電気泳動用ゲルをpK値に応じた位置で薄膜状に切り取り、その位置にある内容物を調べて、局在空間情報を失わずに定量測定を行う。
【0015】
第2の方法では、細胞あるいは試料薄片を電気泳動用の電極面に置き、この上に所定の太さの棒状の等電点電気泳動用ゲルを置いて電気泳動を行わせる。この方法においても、棒状の等電点電気泳動用ゲルをpK値に応じた位置で薄膜状に切り取り、その位置にある内容物を調べて、局在空間情報を失わずに定量測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、細胞内の局在mRNAやタンパク質等の生体物質を結合させるための基板あるいは電極を準備する必要が無いのみならず、局在mRNAやタンパク質等の細胞内および細胞間の位置情報と量を高精度に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施例1)
図1は本発明の細胞内生体物質の解析方法の実施例1の等電点電気泳動用ゲル計測システムの構成の概念を示す斜視図である。1は電気泳動用負電極板であり、その上に壁2を備え、壁2とともに負極用の電解液を保持するための容器(reservoir)を規定する。3は電気泳動用正電極板であり、その上に壁4を備え、壁4とともに正極用の電解液を保持するための容器を規定する。51u、51dおよび52u、52dは、それぞれ、上下に2分割された円筒である。それぞれの円筒内部には等電点電気泳動用ゲル61u、61dおよび62u、62dを保持する。上下に2分割された円筒51u、51dでは分割面に被計測試料8が挟まれて、一体化されOリングあるいはパラフイルム71、72により強固に支持される。円筒52u、52dでは分割面にpK計測用試料10が挟まれて、一体化されOリングあるいはパラフイルム71、72により強固に支持される。円筒51u、51dおよびその内部に保持された等電点電気泳動用ゲル61u、61dは試料計測用であり、円筒52u、52dおよびその内部に保持された等電点電気泳動用ゲル62u、62dはpK計測用である。円筒51dおよび52dは、壁4で囲われた領域内で電気泳動用正電極板3の上面に載置される。円筒51uおよび52uは、電気泳動用負電極板1の図示しない開口を通して壁2で囲われた領域内で電気泳動用負電極板1の上面まで連なっている。91、92は切り欠きであり、試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを保持している円筒51u、51dの外面に形成される。この切り欠きは被計測試料8およびその内部の局在mRNAやタンパク質等の生体物質の位置を同定するために使用される。pK計測用試料10は任意の化学物質でよいが、電気泳動されるときに負電極板1から正電極板3までのゲル位置に応じたpK値に対して万遍無く分布されるものとされるのがよい。
【0018】
11は電気泳動用電源であり、負電極および正電極がそれぞれ電気泳動用負電極板1および電気泳動用正電極板2に接続される。電気泳動用負電極板1の上面まで連なっている円筒51u、52uの内部に保持されている等電点電気泳動用ゲル61u、62uは円筒51u、52uの上端面で壁2で囲われた領域内に保持された負極用の塩基性電極液に接している。電気泳動用正電極板3の上面に載置された円筒51dおよび52dは壁4で囲われた領域内に配置される。壁4の高さは等電点電気泳動用ゲル61uおよび61dの接合面、62uおよび62dの接合面よりも電気泳動用負電極板1の方に延伸されていて、壁4内に保持される正極用の酸性電極液が電気泳動中の等電点電気泳動用ゲル61u、61dおよび62u、62dを冷却する機能を果たすために利用される。
【0019】
図2(A)〜(C)は円筒5およびその中に保持された試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを2分割形として形成する工程の一例を示す図である。まず、図2(A)に示すように、例えば、5〜10mmφの合成樹脂の円筒5を準備する。円筒5の肉厚は1mm程度とする。円筒5の内部に、定法に従って、等電点電気泳動用ゲル6を充填する。次いで、図2(B)に示すように、等電点電気泳動用ゲル6が充填された円筒5を、中央部分で分割して、円筒51u、等電点電気泳動用ゲル61uおよび円筒51d、等電点電気泳動用ゲル61dとする。次いで、図2(C)に示すように、試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dの上面に被計測試料8を載置して、試料計測用等電点電気泳動用ゲル61uが充填された円筒51uを、円筒51dの上に載置する。その後、円筒51uと円筒51dの接合面の周囲を粘着テープ71でしっかりと固める。ここでは、図示しないが、被計測試料8を、図3(D)に示すような試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dと円筒51dの薄片20の上に載置しているときは、円筒51uと円筒51dの接合面の間に薄片20を入れて周囲を粘着テープ71でしっかりと固めることは当然である。
【0020】
pK計測用等電点電気泳動用ゲル62u、62dは分割面に被計測試料8に代えてpK計測用試料10が挟まれる点を除けば試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dと同じであるから、図示は省略した。
【0021】
図3(A)〜(F)は実施例1により等電点電気泳動される試料の作成方法の具体例を説明する図である。図3(A)はサンプルとしての細胞8を示す。ここでは5個の細胞8が準備された例である。図3(B)はサンプルとしての細胞8を載せるための細胞接着性の基質、たとえば、コラーゲンフイルム12を示す。図3(C)はコラーゲンフイルム12を支持するための金属線によるメッシュ13を示す。金属としては、金または白金がよい。メッシュ13は試料を取り扱うときの試料支持体として利用されるものであるから、円筒5の内径より小さいものであることが必要である。図3(D)は試料の位相差顕微鏡像の基準位置を示すための試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dと円筒51dの薄片20である。この薄片20は、例えば、図2で説明した試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを2分割形として形成する工程の中で、二つに分割する時に切り出すものとすればよい。図3(E)は試料の作成時に補助ベースとして使用されるガラス板14を示す。図3(F)は、図3(A)〜(F)に示す材料によって等電点電気泳動される試料を作成した状態を示す図である。すなわち、まず、ガラス板14の上に試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dと円筒51dの薄片20を載せ、次いで、金属線によるメッシュ13を載せ、その上にコラーゲンフイルム12を載せてから、細胞8を載せる。その後、必要に応じて、ガラス板14に試料を載せたまま、細胞8を培養する。試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dの上面に試料を載置するときは、ガラス板14の上面から薄片20ごと細胞8を剥がして試料計測用等電点電気泳動用ゲル61dと円筒51dの上面に試料を載置する。
【0022】
pK計測用試料10は、薄片20を作成する必要はなく、分割された状態の等電点電気泳動用ゲル62dの上面に滴下する等の簡便な方法で実装できるから図示および説明は省略する。
【0023】
図4は作成された試料の位相差顕微鏡像の一例を模式的に示す図である。5は円筒、91、92は円筒51dの外面に形成されている切り欠き、8は細胞、13は金属線によるメッシュである。コラーゲン12およびガラス板14は顕微鏡像としては認識できない。細胞8内には局在mRNAやタンパク質、遺伝子等各種の生体物質がさまざまに分布しているが、これらは位相差顕微鏡像として見えるわけではなく、細胞8は外形が認識できるだけである。ここでは、しかしながら、細胞8内に局在mRNAやタンパク質等各種の生体物質がさまざまに分布していることを示す意味で、これらの物質を模式的に丸、三角およびひし形として表示したものである。
【0024】
試料の位相差顕微鏡像は、試料を等電点電気泳動したときの局在mRNAやタンパク質等各種の生体物質の2次元構造の評価の基礎となるものである。等電点電気泳動の結果として得られる画像に現れる切り欠き91、92の位置は、基準位置となる試料の位相差顕微鏡像の切り欠き91、92に対応する。等電点電気泳動の結果として得られる画像の局在mRNAやタンパク質等各種の生体物質に対応する位置を切り欠き91、92を基準点として評価することにより、試料の細胞8の位置を基準とした2次元構造の評価が可能となる。
【0025】
図5は実施例1による計測結果の評価方法を説明する図である。図1の構成において、電源11を電気泳動用負電極板1と電気泳動用正電極板3との間に印加すると、試料である細胞8は即座に破砕され、細胞内生体物質は、そのpK値に応じて、等電点電気泳動用ゲル61u、61d内に分布する。図の左側に試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61d内に、細胞内で局在化しているmRNAやタンパク質等の細胞内生体物質が局在空間情報を保持した状態で検出されている状態を模式的に示す。図の右側に、試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dの位置に対応させてpH計測用等電点電気泳動用ゲル62u、62dによって得られたゲルの位置とpH値との関係を示す。この例では、pH計測用等電点電気泳動用ゲルの最上段がpH=8、最下段がpH=3.5で、位置に対してほぼ直線的な関係である。
【0026】
したがって、pH計測用等電点電気泳動用ゲル62u、62dによってゲルの位置とpH値との関係を知った後、pH値に応じた位置の試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出すと、その表面に、試料細胞のそのpH値の局在mRNAやタンパク質等各種の生体物質をゲル6の切断面に二次元情報を保った状態で得ることが出来る。すなわち、pH1は試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dの位置h1に対応し、pH2は位置h2に対応し、pH3は位置h3に対応するのであるから、それぞれの位置で試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出せばよい。図5では、試料細胞のそれぞれのpKに対応する生体物質のみがそれぞれの位置のゲルの切断表面に得られていることを、細胞8の外形を示す線とともに、丸、三角およびひし形で表示している。もちろん、細胞8の外形を示す生体物質が、薄く切り出された試料計測用等電点電気泳動用ゲルの切断表面に表れているわけではないが、図4で細胞8の外形と各種の生体物質とを一緒に表示したのと同様に、参考に示した。
【0027】
薄く切り出された試料計測用等電点電気泳動用ゲルの切断表面に表れている各種の生体物質は、これら生体物質の個々に特異的に結合するプローブを利用して認識することが出来る(例えば、生体物質が核酸であればそれに特異的にハイブリダイズする核酸プローブ、タンパク質であればそれに対する抗体など)。すなわち、プローブをサイズあるいは組成を異にする金をベースにした、例えば粒子径が10nmから50nmの、ナノ粒子で標識する。このナノ粒子で標識されたプローブを薄く切り出された試料計測用等電点電気泳動用ゲルの切断表面に作用させ、生体物質とプローブとを結合させると、ゲルの切断表面には、ゲルの切断表面に表れている各種の生体物質に結合したプローブを標識しているナノ粒子が配列される。これを、走査型電子顕微鏡像としてナノ粒子を検出することにより、各種の生体物質の二次元配列情報が得られる。ナノ粒子で標識されたプローブによる生体物質の検出については、例えば、特開2006−153826に開示されるように、ナノ粒子の構成を工夫すれば、走査型電子顕微鏡像と特性X線をエネルギー分散型特性X線検出器により元素分析像を組み合わせた形で非常に多種類の生体物質を一挙に検出できる。
【0028】
図6A、図6Bおよび図6Cは、それぞれ、位置h1、h2およびh3で試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出して得たナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を模式的に示す図である。試料の位相差顕微鏡像の一例を模式的に示す図4と対比して明らかなように、円筒5の切り欠き91、92を基準位置として試料細胞のどの位置に、どのような生体物質が存在したか知ることが出来る。
【0029】
図6A、図6Bおよび図6Cは、図を簡単にするために、切り出された試料計測用等電点電気泳動用ゲルの表面には、それぞれ、一つの生体物質のみが表れているように表示したが、実際は多数の物質が表れるものであることはいうまでも無い。
【0030】
(実施例2)
実施例1では、等電点電気泳動される試料を2分割された等電点電気泳動用ゲル61u、61dの接合面に配置するものとした。このことは、電気泳動の電圧印加が試料に与えるかもしれない悪影響を避けるうえで、有用である。しかし、等電点電気泳動用ゲルを2分割することが必要であるのみならず、2分割された等電点電気泳動用ゲル61u、61dの接合面に試料を配置する作業も必要であり、計測の作業が煩雑である。
【0031】
このため、実施例2では、図1に示す等電点電気泳動用ゲル61u、61dは、図2(A)に示すように一体のままとして使用することとし、試料は電極3の面に直接載せてその上に等電点電気泳動用ゲル6を載せる。この場合、試料と電極3が直接接触するから、試料によっては悪影響を受けることあるが、試料を選択すれば、実用的に支障なく、等電点電気泳動用ゲルによる本発明の効果を得ることが出来る。もっとも、この場合でも、図4に示す試料の位相差顕微鏡像は準備する必要があるのはいうまでも無い。
【0032】
上記の実施例では、試料計測用等電点電気泳動用ゲルおよびpH計測用等電点電気泳動用ゲルがそれぞれ一つの形で示したが、複数、例えば、20本程度の試料計測用等電点電気泳動用ゲルに一つのpH計測用等電点電気泳動用ゲルを備える形で装置を構成して計測のスループットを上げることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の細胞内生体物質の解析方法の実施例1の等電点電気泳動用ゲル計測システムの構成の概念を示す斜視図である。
【図2】(A)〜(C)は円筒5およびその中に保持された等電点電気泳動用ゲル6を2分割形として形成する工程の一例を示す図である。
【図3】(A)〜(F)は実施例1により等電点電気泳動される試料の作成方法の具体例を説明する図である。
【図4】作成された試料の顕微鏡像の一例を模式的に示す図である。
【図5】実施例1による計測結果の評価方法を説明する図である。
【図6A】位置h1で試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出して得た顕微鏡像を模式的に示す図である。
【図6B】位置h2で試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出して得た顕微鏡像を模式的に示す図である。
【図6C】位置h3で試料計測用等電点電気泳動用ゲル61u、61dを薄く切り出して得た顕微鏡像を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1…電気泳動用負電極板、2…負極用の電解液を保持するための壁、3…電気泳動用正電極板、4…正極用の電解液を保持するための壁、51u,51dおよび52u,52d…上下に2分割された円筒、61u,61dおよび62u,62d…等電点電気泳動用ゲル、71,72…Oリングあるいはパラフイルム、8…被計測試料、91,92…円筒5の外面に形成された切り欠き、11…電気泳動用電源、12…コラーゲンフイルム、13…金属線によるメッシュ、14…ガラス板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料細胞あるいは試料薄片から所定の形態の試料を準備する工程、
該所定の形態の試料の位相差顕微鏡像を得る工程、
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
該等電点電気泳動用ゲルを前記円筒ごと長さ方向の所定の位置で二つに分割する工程、
前記二つに分割された等電点電気泳動用ゲルの分割面に前記所定の形態の試料を挟んで前記二つに分割された等電点電気泳動用ゲルを長さ方向に一体化して試料計測用等電点電気泳動用ゲルを形成する工程、
前記試料細胞あるいは試料薄片を分割面に挟んだ二つに分割された等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルおよび前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルを負極用の電解液を保持している電気泳動用負電極板および正極用の電解液を保持している電気泳動用正電極板の間に、各前記ゲルが各前記円筒の両端でそれぞれの前記電解液に接するように配置する工程、
前記電気泳動用負電極板および電気泳動用正電極板の間に所定の電気泳動用電圧を印加する工程、
前記電圧印加後、前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルからゲルの長さ方向の位置とpH値との関係を同定する工程、
前記試料細胞あるいは試料薄片の細胞内に存在する生体物質と結合するプローブをナノ粒子で標識する工程、
前記同定されたpH値を基準として前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルを所定の位置で切り出してその位置のゲル切断面にある生体物質に前記ナノ粒子で標識されたプローブを結合させて、前記プローブの標識ナノ粒子を走査型電子顕微鏡像として観察する工程、
前記試料の位相差顕微鏡像と前記標識ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像とを照合する工程、
よりなることを特徴とする空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
【請求項2】
前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルが前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと同じ二分割構成である請求項1記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
【請求項3】
前記正極用の電解液は前記計測用等電点電気泳動用ゲルの長さ方向で該ゲルの半分の長さを覆う深さを有するものである請求項1記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
【請求項4】
試料細胞あるいは試料薄片は金属線によるメッシュにより支持された細胞接着性の基質の上に載置されるとともに、前記試料測定用等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の太さのゲルを内部に保持する円筒の薄片上に載置されて前記所定の形態の試料とされた請求項1記載の空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
【請求項5】
試料細胞あるいは試料薄片から所定の形態の試料を準備する工程、
該所定の形態の試料の位相差顕微鏡像を得る工程、
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動用ゲルを準備する工程、
前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルおよび前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルを負極用の電解液を保持している電気泳動用負電極板および正極用の電解液を保持している電気泳動用正電極板の間に、各前記ゲルが各前記円筒の両端でそれぞれの前記電解液に接するように配置する工程、
前記試料を、前記電気泳動用正電極板と前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルとの間に配置する工程、
前記電気泳動用負電極板および電気泳動用正電極板の間に所定の電気泳動用電圧を印加する工程、
前記電圧印加後、前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルからゲルの長さ方向の位置とpH値との関係を同定する工程、
前記試料細胞あるいは試料薄片の細胞内に存在する生体物質と結合するプローブをナノ粒子で標識する工程、
前記同定されたpH値を基準として前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルを所定の位置で切り出してその位置のゲル切断面にある生体物質に前記ナノ粒子で標識されたプローブを結合させて、前記プローブの標識ナノ粒子を走査型電子顕微鏡像として観察する工程、
前記試料の位相差顕微鏡像と前記標識ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像とを照合する工程、
よりなることを特徴とする空間分布を保った細胞内生体物質の解析方法。
【請求項6】
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料測定用等電点電気泳動ゲル、
前記試料測定用等電点電気泳動ゲルと実質同一の素材からなり、前記円筒と実質同一の長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動ゲル、
負電極板と該負電極板上に形成された壁とによって規定された、負極用の電解液を保持するための負極電解液容器、および
正電極板と該正電極板上に形成された壁とによって規定された、正極用の電解液を保持するための正極電解液容器とを備え、
前記試料測定用等電点電気泳動ゲルおよび前記pH測定用等電点電気泳動ゲルが、負極電解液容器と正極電解液容器との間に、各前記ゲルが各前記円筒の両端でそれぞれの前記電解液に接するように配置され、
前記試料測定用の等電点電気泳動ゲルが、長さ方向の所定の位置で2つの棒状ゲルに前記円筒ごと分割可能であり、
試料細胞あるいは試料薄片からの所定の形態の試料が、前記二つに分割された前記試料測定用等電点電気泳動ゲルの分割面に挟持される、空間分布を保った細胞内生体物質の解析のための電気泳動装置。
【請求項7】
前記pH計測用等電点電気泳動用ゲルが、前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルと同じ二分割構成である請求項6記載の電気泳動装置。
【請求項8】
前記正極電解液容器内の電解液は前記計測用等電点電気泳動用ゲルの長さ方向で該ゲルの半分の長さを覆う深さを有するものである請求項6記載の電気泳動装置。
【請求項9】
試料細胞あるいは試料薄片は金属線によるメッシュにより支持された細胞接着性の基質の上に載置されるとともに、等電点電気泳動用ゲルと実質同一の素材で実質同一の太さのゲルを内部に保持する円筒の薄片上に載置されて前記所定の形態の試料とされた請求項6記載の電気泳動装置。
【請求項10】
所定の太さと長さの円筒内に保持された棒状の試料測定用等電点電気泳動ゲル、
前記試料測定用等電点電気泳動ゲルと実質同一の素材からなり、前記円筒と同じ長さの円筒内に保持された棒状のpH計測用等電点電気泳動ゲル、
負電極板と該負電極板上に形成された壁とによって規定された、負極用の電解液を保持するための負極電解液容器、および
正電極板と該正電極板上に形成された壁とによって規定された、正極用の電解液を保持するための正極電解液容器とを備え、
前記試料測定用等電点電気泳動ゲルおよび前記pH測定用等電点電気泳動ゲルが、負極電解液容器と正極電解液容器との間に、各前記ゲルが各前記円筒の両端でそれぞれの前記電解液に接するように配置され、
試料細胞あるいは試料薄片からの所定の形態の試料が前記正電極板と前記試料計測用等電点電気泳動用ゲルとの間に配置されている、空間分布を保った細胞内生体物質の解析のための電気泳動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2009−36694(P2009−36694A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202560(P2007−202560)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】