説明

突出量可変式のリニアアクチュエータ及び椅子

【課題】リニアアクチュエータの構造を簡単なものとする。
【解決手段】本発明の突出量可変式のリニアアクチュエータ1は、円筒状の外筒体22と、この外筒体22の内挿される内筒体23と、外筒体22を摺動自在に支持する支持体24とを有している。また、外筒体22の内周面には突起部27が、また内筒体23の外周面にが突起部27を摺動自在に案内する案内溝28が形成される。そして、内筒体23と外筒体22とのいずれかを支持体24に対して押し込んだ際に、突起部27が案内溝28の終端部と係合して内筒体23と外筒体22とのいずれか他方が支持体24から突出する構成となっている。さらに、案内溝28は、内筒体23の外周面に終端部の位置が異なるように複数設けられ、複数の案内溝28のいずれかを選択することで、外筒体22又は内筒体23の突出量を変更可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出量可変式のリニアアクチュエータ及び椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理容室や美容室で使用される椅子や椅子型のマッサージ機にはリクライニング機能を有するものが多い。このようなリクライニング機能の駆動源としてはリニアアクチュエータが利用されている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、モータにより出力軸のウォームギヤ又はネジ部を回転させ、この歯車又はウォームギヤの回転をロッドに伝達してロッドを直線的に伸縮させるリニアアクチュエータが開示されている。リニアアクチュエータにはロッドが所定の伸縮量になったときに作動するリミットスイッチが設けられており、リミットスイッチによりロッドを所定の伸縮量に調整するようになっている。
【特許文献1】特開平10−318345号公報
【特許文献2】特開2004−36658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような椅子では背もたれやフットレストのリクライニング状態を多段階で調整したいという要望が大きい。特許文献1や特許文献2のようにリミットスイッチによりロッドの伸縮量に調整する機構では、リクライニング状態を多段階に調整しようとすれば複数のリミットスイッチとこれらを制御する制御部が必要となる。当然、リニアアクチュエータは構造が複雑になりやすいという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単な突出量可変式のリニアアクチュエータ及びそれを利用した椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明にかかる突出量可変式のリニアアクチュエータは、円筒状の外筒体と、この外筒体の内側に挿入される円筒状の内筒体と、前記外筒体を軸心方向に摺動自在に支持する支持体とを有し、前記外筒体の内周面には、径内方向に突出する突起部が形成されており、前記内筒体の外周面には、前記突起部を長手方向に沿って摺動自在に案内する案内溝が形成されており、前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を支持体に対して押し込んだ際に、前記突起部が案内溝の終端部と係合することで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出する構成となっており、前記内筒体の外周面には、周方向に沿って終端部の位置が異なる複数の案内溝が設けられ、前記複数の案内溝のいずれかを選択することで、前記外筒体又は内筒体の突出量を変更可能となっていることを特徴とする。
【0005】
なお、前記内筒体と外筒体とを相対回動させることで前記突起部が前記複数の案内溝間で移動可能となるように、前記複数の案内溝は互いに周方向に連通状に形成されていることが好ましい。
また、前記案内溝は、前記内筒体の先端縁から軸心方向に沿って形成されていることが好ましく、前記突起部は前記内筒体の端縁と係合可能に形成されているのが好ましい。
さらに、前記突起部が案内溝のいずれかに確実に嵌り込むように、前記外筒体に対する内筒体の回動位置を位置決めする位置決め手段を設けることもできる。
【0006】
さらにまた、前記外筒体の内部を軸心方向に貫通して前記外筒体の外側から前記内筒体を外筒体に対して回動させる操作体が備えられており、前記操作体は、前記内筒体に対して軸心方向に相対移動可能に係合されているのが好ましい。
一方、本発明にかかる突出量可変式のリニアアクチュエータは、円筒状の外筒体と、この外筒体の内側に挿入される円筒状の内筒体と、前記外筒体を軸心方向に摺動自在に支持する支持体とを有し、前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を、支持体に対して押し込むことで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出するリニアアクチュエータであって、前記内筒体の外周面には、径外方向に突出する突起部が形成されており、前記外筒体の内周面には、前記突起部が長手方向に沿って摺動自在に移動する案内溝が形成されており、前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を支持体に対して押し込んだ際に、前記突起部が案内溝の終端部と係合することで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出する構成となっており、前記外筒体の内周面には、周方向に沿って終端部の位置が異なる複数の案内溝が設けられ、前記複数の案内溝のいずれかを選択することで、前記外筒体又は内筒体の突出量を変更可能となっていることを特徴とすることもできる。
【0007】
そして、本発明にかかる椅子は、座部と、座部の背面に設けられた背もたれ部と、座部の前面に設けられたフットレスト部とを備え、上述のようなリニアアクチュエータを用いて前記フットレスト部や前記背もたれ部が前記座部に対して傾動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る突出量可変式のリニアアクチュエータや椅子により、構造を簡単なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の突出量可変式のリニアアクチュエータ(以下、単にリニアアクチュエータ1と呼ぶ)及びリニアアクチュエータ1が用いられる椅子2を図面に基づき説明する。
本発明のリニアアクチュエータ1は様々な種類の椅子2のリクライニング機構3に用いることができる。以降では、リニアアクチュエータ1が用いられた美容院の椅子(以下、単に椅子2と呼ぶ)を例示して説明する。
図1に示されるように、椅子2は、座部4と、座部4の後端部に立設された背もたれ部5と、座部4の前端側に設けられたフットレスト部6と、を備えている。座部4、背もたれ部5、及びフットレスト部6は、いずれも棒材を組み合わせたフレーム体(図示略)を有しており、フレーム体における椅子2に座った人に面する側にはクッション材(図示略)が設けられている。椅子2は、リクライニング機構3を備えており、このリクライニング機構3を作動させることで背もたれ部5とフットレスト部6とのフレーム体を座部4のフレーム体に対して多段階にリクライニングさせることができるようになっている。
【0010】
以下、図1においてUの符号で示される方向を椅子2及びリニアアクチュエータ1を説明する際の上方、Dで示される方向を下方とする。また、図1のFで示される方向を前方、Bで示される方向を後方と呼ぶ。さらに、図1のRで示される方向を右方向、Lで示される方向を左方向と呼ぶ。これは椅子2に座った人から見た方向と一致する。
図2に示されるように、リクライニング機構3は、座部4に対する背もたれ部5とフットレスト部6との傾動状態(姿勢)を通常状態とリクライニング状態との間で変更するものである。
【0011】
図2(a)に示されるように、通常状態の椅子2では、背もたれ部5は座部4の後端側から座部4に対して略垂直方向に起立しており、またフットレスト部6は座部4の前端側から座部4に対して略垂直方向に垂下している。
図2(b)〜図2(d)に示されるように、リクライニング状態の椅子2では、背もたれ部5は座部4の後端側から座部4に対して略水平方向に(1状態に)しか揺動しないが、フットレスト部6は座部4の前端側から座部4に対して複数の揺動角度のいずれかを選択して揺動することができる。すなわち、フットレスト部6の揺動角度は、図2(b)に示されるように座部4に対して略水平方向な角度か、図2(c)に示されるように座部4に対して斜め下方に傾動した角度か、図2(d)に示されるように座部4に対して略垂直な角度の3状態のいずれかの角度となっている。このようにして、リクライニング機構3は、背もたれ部5の傾動状態を1状態にしかリクライニングさせないのに対して、フットレスト部6の傾動状態を多段階(3状態)にリクライニングさせることができるようになっている。
【0012】
以下、椅子2の詳細について述べる。座部4は、脚部7を介して支持されており、脚部7の上面側に水平方向に向かって配置されている。座部4の前方には座部4に座った人の脚をふくらはぎ側から支持するフットレスト部6が設けられており、また座部4の後方には座部4に座った人の背中を支持する背もたれ部5が設けられている。背もたれ部5は、座部4の後端側に設けられた枢支部8を中心に揺動自在となっている。また、フットレスト部6は、座部4の前端側に設けられた回動部9を中心に揺動自在となっている。
図3及び図4に示されるように、リクライニング機構3は、座部4の底面側に設けられており、大別すると電動モータ10、左右の回転軸11L、11R、摺動部材12、リニアアクチュエータ1から構成されている。リクライニング機構3は、摺動部材12を前後方向に移動させて背もたれ部5を揺動させると共にリニアアクチュエータ1を伸縮させて、フットレスト部6を回動部9を中心に揺動させる構成となっている。
【0013】
図4に示されるように、電動モータ10は、座部4の中央部に設けられており、左右両側に伸びる駆動軸(図示略)とこの駆動軸を外側から覆っている左右のギヤボックス14L、14Rとを備えている。左右のギヤボックス14L、14Rには駆動軸とは直交する方向に向かって回転軸11L、11Rがそれぞれ設けられており、駆動軸と回転軸11L、11Rとの間に設けられたウォームギヤ(図示略)によって電動モータ10の回転を駆動軸を経由して回転軸11L、11Rにそれぞれ伝達できるようになっている。
回転軸11L、11Rは、左右のギヤボックス14L、14Rにそれぞれ1軸ずつ、前後方向に沿って配備されている。回転軸11L、11Rは、座部4に対して回転自在に取り付けられており、電動モータ10により互いに異なる回転方向に回転するようになっている。回転軸11L、11Rの周面にはネジ部15L、15Rが左右の回転軸11L、11R同士で異なる方向になるように形成されている。回転軸11L、11Rの軸長手方向の中途側には、ネジ部15L、15Rに螺合する移動体16L、16Rが左右の回転軸11L、11Rにそれぞれ設けられている。
【0014】
移動体16L、16Rは、摺動部材12の左右方向の中途側に固定されており、回転軸11L、11Rの軸心回りの回動を規制している。左側の移動体16Lは、左側の回転軸11Lに螺合しており、左側の回転軸11Lがf方向に回転すると前方にまたf’方向に回転すると後方に移動するようになっている。一方、右側の移動体16Rは、右側の回転軸11Rに螺合しており、右側の回転軸11Rがf’方向に回転すると前方にまたf方向に回転すると後方に移動するようになっている。移動体16L、16Rは、回転軸11L、11Rの回転方向の力を前後方向に沿った並進方向の力に変換して、摺動部材12を前後方向に移動させている。
【0015】
図3に示されるように、摺動部材12は、左右方向に沿って帯板状に形成されており、複数の案内シャフト17に案内されて前後方向に向かって摺動自在に取り付けられている。摺動部材12は、左右方向の中途側にリニアアクチュエータ1の後端が固定されており、リニアアクチュエータ1を後端側から前端側に向けて押し込んだり前端側から後端側に向けて引き出したりできるようになっている。リニアアクチュエータ1の前端にはカバー体18が取り付けられており、カバー体18の前端面にはフットレスト部6の連結杆19が当接している。
【0016】
摺動部材12は、左側端部と右側端部にそれぞれ起立部材20L、20Rが取り付けられている。起立部材20L、20Rは板状に形成されており、上方に向かって突出状に形成されている。起立部材20L、20Rには後方の斜め上方に向かって長孔21が形成されており、この長孔21に背もたれ部5のフレーム体の一端が孔内を移動可能に係合されている。それゆえ、摺動部材12の移動に伴って起立部材20L、20Rが前後に移動すると、背もたれ部5の一端が長孔21に沿って移動し、背もたれ部5が枢支部8を中心に回動する。
【0017】
上述したリクライニング機構3は、以下のように動作する。なお、本発明の椅子2のリクライニング機構3ではフットレスト部6の座部4に対する揺動角度が3段階で調整できるようになっているが、ここではフットレスト部6が座部4に対して水平な位置まで揺動する場合(揺動角度が最大の場合)を例にとって説明する。
図4(a)に示すように、通常状態のリクライニング機構3では、摺動部材12は後方に位置しており、リニアアクチュエータ1は前端が突出していない状態(縮退状態)になっている。電動モータ10を正転させると、移動体16L、16Rとこの移動体16L、16Rが取り付けられた摺動部材12が前方に向かって移動する。
【0018】
図3(a)に示すように、摺動部材12が前方に移動すると、リニアアクチュエータ1の後端が前方に向けて押し込まれる。リニアアクチュエータ1では、後端が押し込まれると前端が前方に突出する。そして、リニアアクチュエータ1の前端に取り付けられたカバー体18が、リニアアクチュエータ1の突出に合わせて前方に向かって移動する。その結果、フットレスト部6が回動部9を中心として前方に向かって回動(揺動)し、フットレスト部6がリクライニング状態となる。
また、摺動部材12が前方に移動すると、摺動部材12に合わせて起立部材20L、20Rも前方に移動する。その結果、起立部材20L、20Rの移動に合わせて背もたれ部5の一端が長孔21内を後方に移動し、背もたれ部5が枢支部8を中心に回動し、背もたれ部5がリクライニング状態となる。。
【0019】
一方、図4(b)に示すように、リクライニング状態では、摺動部材12は前方に位置しており、リニアアクチュエータ1は前端が前方に向けて突出状態となっている。電動モータ10を逆方向に回転させると、移動体16L、16Rとこの移動体16L、16Rが取り付けられた摺動部材12が後方に向かって移動する。
図3(b)に示すように、摺動部材12が後方に移動すると、リニアアクチュエータ1の後端が後方に向けて引き出される。リニアアクチュエータ1では、後端が引き出されると前端が後方に後退する。そして、リニアアクチュエータ1の前端に取り付けられたカバー体18が、リニアアクチュエータ1の後退に合わせて後方に向かって移動する。その結果、フットレスト部6が回動部9を中心として後方に向かって回動(揺動)し、フットレスト部6が通常状態に復帰する。
【0020】
また、摺動部材12が後方に移動すると、摺動部材12に合わせて起立部材20L、20Rも後方に移動する。その結果、起立部材20L、20Rの移動に合わせて背もたれ部5の一端が長孔21内を前方に移動し、背もたれ部5が枢支部8を中心に回動して背もたれ部5が通常状態に復帰する。
次に、リニアアクチュエータ1について詳しく説明する。
図5〜図8に示すように、第1実施形態のリニアアクチュエータ1は、円筒状の外筒体22と、この外筒体22の内側に挿入される円筒状の内筒体23と、外筒体22を軸心方向に摺動自在に支持する支持体24とを有している。
【0021】
図5に示すように、支持体24は、左部材24Lと右部材24Rとの左右一対で構成されており、座部4にボルトなどで固定されている。左部材24L及び右部材24Rは、それぞれが円筒を長手方向に沿って中央で半分に割ったような形状に形成されている。支持体24は、左部材24Lと右部材24Rとをネジで連結すると両者の間に孔部25が前後方向に沿って形成され、この孔部25に外筒体22を挿脱自在に挿入可能となっている。
外筒体22は、前後方向に長い円筒状に形成されており、支持体24の孔部25に前後方向に移動可能に挿入されている。外筒体22における前後方向の中途側の外周面は周壁の一部が凹状に陥没形成されており、この凹状に形成された部分の内周面は径内側に向かって突出した突起部27となっている。
【0022】
内筒体23は、外筒体22に内挿可能な外径を備えた円筒状に形成されている。内筒体23の外周面には前後方向に長い案内溝28が周方向に複数形成されており、突起部27を長手方向に沿って摺動自在に案内できるようになっている。内筒体23の後端側は摺動部材12に固定されており、摺動部材12に合わせて前端側が外筒体22の内部に向けて内挿可能となっている。
内筒体23の中心には貫通孔29が前後方向に沿って形成されている。さらに貫通孔29の内周面には前後方向の中途側から後端にかけて係合溝30が周方向に貫通孔29の軸心を挟んで一対形成されている。
【0023】
ところで、第1実施形態のリニアアクチュエータ1は、上述の案内溝28が内筒体23の外周面に互いに長手方向の長さを異ならせて複数設けられている。また、内筒体23には外筒体22の内部を貫通して外筒体22の外側から内筒体23を回転させる操作体31が設けられている。操作体31は、後側(後側に設けられた係止ピン37)が内筒体23の貫通孔29の内周面に形成された係合溝30に係合可能となっており、内筒体23を外筒体22に対して回動できるようになっている。それゆえ、操作体31により内筒体23を外筒体22に対して回転させることで、突起部27が複数の案内溝28のいずれかを選択して係合し、支持体24に対する外筒体22の突出量が変更可能となっている。
【0024】
図5の展開図に示されるように、案内溝28は、外筒体22の突起部27を収容可能な深さに内筒体23の外周面に形成されると共に前後方向に沿って直線状に形成されており、突起部27が案内溝28中を前後方向に移動できるようになっている。
案内溝28は、周方向に沿って、前後方向に沿った長さの短い第1案内溝32と、この第1案内溝32より前後方向に沿った長さが長い第2案内溝33とが2種類形成されている。これらの第1案内溝32と第2案内溝33とは、内筒体23の周方向に軸心を挟んで一対形成されており、外筒体22の内周面に一対形成される突起部27をそれぞれ案内できるようになっている。
【0025】
案内溝28には内筒体23の上下の外周面に無溝部34がそれぞれ設けられている。無溝部34の周方向に隣接して第1案内溝32と第2案内溝33とが形成されている。第1案内溝32は、内筒体23を前方から見た場合に無溝部34から反時計方向にほぼ60°ずれた外周面に形成されている。第2案内溝33は、内筒体23を前方から見た場合に無溝部34から時計方向にほぼ60°ずれた外周面に形成されている。
第1案内溝32及び第2案内溝33は、いずれも内筒体23の前端から前方に向かって開放状に形成されており、突起部27を内筒体23の前方から案内溝28内にスムーズに案内できるようになっている。また、第1案内溝32及び第2案内溝33は、いずれも内筒体23の前後方向の中途側で溝が終わるように形成されている。
【0026】
第1案内溝32と第2案内溝33とは、溝の終端部の位置が前後方向で異なっている。第2案内溝33は、第1案内溝32より前後方向の長さが長いため、その終端部が第2案内溝33よりも後方に位置している。それゆえ、第2案内溝33は、第1案内溝32より後方まで突起部27を案内でき、第1案内溝32より後方で突起部27と係合する。
無溝部34は、その前端面が内筒体23の前端面と面一となっており、この前端面に突起部27が係合するようになっている。無溝部34の前端面は第1案内溝32や第2案内溝33の終端部より前方に位置しており、第1案内溝32や第2案内溝33より前方で突起部27と係合する。
【0027】
上述のように、第1案内溝32の終端部、第2案内溝33の終端部及び無端部34の前端面は前後方向に異なる位置に設けられている。そして、内筒体23と外筒体22とを相対回動させることで、突起部27は第1案内溝32の終端部、第2案内溝33の終端部又は無端部34の前端面のいずれかひとつを選んで前後方向に異なる位置で係合するようになる。それゆえ、内筒体23と外筒体22とを相対回動させると、突起部27が係合する部分が第1案内溝32の終端部、第2案内溝33の終端部、無端部34の前端面のなかで切り替わる。そして、内筒体23が外筒体22に係合する位置が前後方向に変化し、支持体24に対する外筒体22の突出量が3段階に切り替わる。
【0028】
すなわち、支持体24に対する外筒体22の突出量は、突起部27が無端部34の前端面に係合するときに最大となり、突起部27が第2案内溝33の終端部に係合するときに最小となる。そして、突起部27が第1案内溝32の終端部に係合するときには、最大突出時の中間まで突出することになる。
図6に示すように、操作体31は、外筒体22の内部を前後方向に貫通する操作棒部35と、操作棒部35の前端側に設けられる操作つまみ36と、操作棒部35の後端側に設けられる係止ピン37とを備えている。
【0029】
外筒体22の前端にはカバー体18が取り付けられており、操作棒部35はこのカバー体18を前後方向に貫通している。カバー体18より前方の操作棒部35には操作つまみ36が設けられており、操作つまみ36を回動させることで操作棒部35を回動操作できるようになっている。
操作棒部35の後端側には、操作棒部35を径方向に貫通するように係止ピン37が設けられている。係止ピン37は、操作棒部35から径外側に向かって突出するように設けられており、その突端が内筒体23の内周面に形成された係合溝30に入り込むようになっている。それゆえ、操作体31は、その係止ピン37を係合溝30に係合させることで、内筒体23と一体に回動するようになっている。
【0030】
係合溝30は前後方向に直線状に形成されており、係止ピン37が係合溝30内を前後方向に移動できるようになっている。それゆえ、係止ピン37を係合溝30に係合させても、内筒体23と外筒体22とは前後方向に沿って相対移動でき、操作体31が内筒体23と外筒体22との相対移動を邪魔することはない。
カバー体18と操作棒部35との間には内筒体23の外筒体22に対する回動位置を位置決めする位置決め手段38が設けられている。位置決め手段38は、カバー体18側に設けられた案内孔39、球体40及び弾性部材41と、操作棒部35側に設けられた複数の位置決め凹部42とで構成されている。
【0031】
案内孔39は、カバー体18に操作棒部35の軸心と垂直な方向に穿孔されている。案内孔39の内部には、球体40と、この球体40を操作棒部35の軸心方向に付勢する弾性部材41とが設けられている。そして、操作棒部35の外周面には、球体40と係合する位置決め凹部42が周方向に複数設けられている。
位置決め手段38は、弾性部材41によって操作棒部35の軸心方向に向かって付勢され球体40が、操作棒部35の外周面に周方向に複数形成された位置決め凹部42のいずれかと係合することで、外筒体22に対する内筒体23の回動位置を位置決めできるようになっている。このような位置決め手段38を設けることで、内筒体23と外筒体22とを所定の回動位置まで相対回動させることができ、突起部27を案内溝28のいずれかに確実に案内することが可能となる。
【0032】
次に、図6〜図8を用いて、リニアアクチュエータ1の動作について説明する。
まず、操作つまみ36を回転させずに、突起部27を無溝部34に係合させる場合について説明する。
図6(a)に示されるように、リクライニング機構3を作動させて摺動部材12を前端側に向かって移動させる。このようにすると、内筒体23が摺動部材12に合わせて後端側から前端側に向かって移動する。このとき、外筒体22と内筒体23との間では、突起部27が内筒体23の無溝部34に係合し、外筒体22が内筒体23と一緒に前端側に向けて移動する。
【0033】
図6(b)に示されるように、摺動部材12が前後方向の中途部まで移動すると、内筒体23が前端側に移動した分だけ外筒体22が前端側に突出する。そして、外筒体22の前端に取り付けられたカバー体18がフットレスト部6を前方に向かって押し、フットレスト部6が回動部9を中心として跳ね上がる方向に揺動する。
図6(c)に示されるように、摺動部材12が前端側まで移動すると、外筒体22が前端側に最大突出量で突出する。そして、外筒体22のカバー体18によりフットレスト部6が回動部9を中心として座部4とほぼ水平となる位置まで跳ね上がる方向に回動する。
【0034】
次に、操作つまみ36を前方から見て時計回りに回転させて、突起部27を第1案内溝32に係合させる。このようにすると、操作つまみ36に合わせて操作棒部35及び係止ピン37が回転し、内筒体23が外筒体22に対して時計回りに回転する。そして、突起部27が第1案内溝32に係合する回動位置まで回動すると、位置決め手段38により回動位置が位置決めされる。
図7(a)に示されるように、リクライニング機構3を作動させて摺動部材12を後端側から前端側に移動させると、内筒体23が摺動部材12に合わせて後端側から前端側に向かって移動する。このとき、突起部27は第1案内溝32内にあり、係止ピン37も係合溝30内にある。それゆえ、外筒体22が内筒体23や摺動部材12に合わせて移動することはなく、フットレスト部6が揺動することもない。
【0035】
図7(b)に示されるように、摺動部材12が前後方向の中途部まで移動すると、突起部27が第1案内溝32の終端部に達して突起部27が終端部に係合する。その結果、外筒体22が内筒体23と一体に前方に向かって移動を開始する。
図7(c)に示されるように、摺動部材12が前端側まで移動すると、突起部27が第1案内溝32の終端部に係合してから移動が終了するまでの間に摺動部材12が移動した距離分だけ外筒体22が前端側に突出する。しかし、外筒体22が内筒体23に合わせて最初から移動する訳ではないため、外筒体22の突出量は最大突出量より小さくなる。その結果、フットレスト部6が図6(c)より小さい揺動角(水平方向に対して斜め下方に傾いた位置)まで揺動し、通常状態とリクライニング状態との中間の傾動状態に変化する。
【0036】
一方、操作つまみ36を前方から見て反時計回りに回転させて、突起部27を第2案内溝33に係合させる。このようにすると、操作つまみ36に合わせて操作棒部35及び係止ピン37が回転し、内筒体23が外筒体22に対して反時計回りに回転する。そして、突起部27が第2案内溝33に係合する回動位置まで回動すると、位置決め手段38により回動位置が位置決めされる。
図8(a)に示されるように、リクライニング機構3を作動させて摺動部材12を後端側から前端側に移動させると、内筒体23が摺動部材12に合わせて後端側から前端側に向かって移動する。このとき、突起部27は第1案内溝32内にあり、係止ピン37も係合溝30内にある。それゆえ、外筒体22が内筒体23や摺動部材12に合わせて移動することはなく、フットレスト部6が揺動することはない。
【0037】
図8(b)に示されるように、摺動部材12が前後方向の中途部まで移動しても、第2案内溝33は第1案内溝32より前後方向に長く形成されているため、突起部27は依然第2案内溝33の中にある。それゆえ、外筒体22が内筒体23や摺動部材12に合わせて移動することはなく、フットレスト部6が揺動することもない。
図8(c)に示されるように、摺動部材12が前端側まで移動しても、突起部27は依然第2案内溝33の中にあり、外筒体22が内筒体23や摺動部材12に合わせて移動することはない。それゆえ、突起部27を第2案内溝33に係合させた場合には、摺動部材12を前後方向に移動させてもフットレスト部6は全く揺動しない。
【0038】
本発明のリニアアクチュエータ1は、外筒体22の内周面に径内方向に突出状に形成された突起部27と、内筒体23の外周面に突起部27を長手方向に沿って摺動自在に案内できるように形成された案内溝28とを備え、突起部27が案内溝28の終端部と係合することで、内筒体23と外筒体22とのいずれか他方が支持体24から突出する構成となっている。
また、本発明のリニアアクチュエータ1は、内筒体23の外周面に周方向に沿って終端部の位置が異なる複数の案内溝28が設けられ、複数の案内溝28のいずれかに突起部27が係合することで、支持体24に対する外筒体22の突出量を多段階に調整可能となっている。
【0039】
それゆえ、リニアアクチュエータ1は外筒体22と内筒体23とを組み合わした簡単な構造とされており、また従来のリニアアクチュエータ1のように複数のリミットスイッチを用いる必要もない。その結果、本発明のリニアアクチュエータ1では部品点数を減らすことができ、その分軽量化が可能となる。また、部品点数が減らせるので、製造コストも低減でき価格を抑えることもできる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
【0040】
なお、上記実施形態では、外筒体22の内周面に突起部27が形成され、内筒体23の外周面に突起部27と係合する案内溝28が形成されていた。しかし、突起部27を内筒体23の外周面に形成し、案内溝28を外筒体22の内周面に形成することもできる。
つまり、突起部27は内筒体23と外筒体22とのいずれか一方に設けられれば良く、案内溝28は内筒体23と外筒体22との他方に設けられれば良い。突起部27や案内溝28を内筒体23と外筒体22とのいずれに設けるかは、突起部27や案内溝28の形成や取付のしやすさ等に応じて適宜変更できるものであり、どちらに設けても同様な作用効果が得られる。
【0041】
上記実施形態では、リニアアクチュエータ1が設けられた椅子2として、美容院の椅子を例示した。しかし、本発明のリニアアクチュエータ1はリクライニング機能を備えた椅子2であればどのような椅子2にも用いることができ、また理容室の椅子や椅子型マッサージ機にも用いることができる。
上記実施形態では、フットレスト部6を座部4に対してリクライニングさせる際のリニアアクチュエータ1を例示したが、本発明のリニアアクチュエータ1は背もたれ部5を座部4に対してリクライニングさせるリクライニング機構3にも用いることができる。また、背もたれ部5とフットレスト部6との両方が座部4に対して複数の傾動状態にリクライニングするリクライニング機構3にあっては、上記リニアアクチュエータ1をフットレスト部6のリクライニング機構とフットレスト部6のリクライニング機構の双方に用いることもできる。
【0042】
上記実施形態では、案内溝28が内筒体23の外周面に長さを変えて2種類設けられたものを例示したが、案内溝28の種類は2つに限定されるものではない。例えば、案内溝28を1種類だけとしたり、3種類以上とすることもできる。具体的には、内筒体23の外周面にほぼ45°の角度で3種類の案内溝28と無溝部34とを設け、フットレスト部6や背もたれ部5が4段階の傾動状態にリクライニングするリクライニング機構3を用いることもできる。
また、案内溝28の長さは、背もたれ部5やフットレスト部6のリクライニング角度(揺動角度)に合わせて適宜変更することができる。例えば、背もたれ部5やフットレスト部6のリクライニング角度(揺動角度)を浅くしたいときには案内溝28を短くすれば良く、深くしたいときには長くすることもできる。
【0043】
上記実施形態では、操作体31により内筒体23を外筒体22に対して回動させるものを例示した。しかし、内筒体23と外筒体22とを相対的に回動させる手段は操作体31に限られるものではない。例えば、内筒体23を支持体24に対して回動しないように設け、外筒体22を回動させることで内筒体23と外筒体22とを相対的に回動させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のリニアアクチュエータを備えた椅子の斜視図である。
【図2】椅子のリクライニング姿勢の変化を示す説明図である。
【図3】椅子の座部の底面図である。
【図4】椅子の座部、背もたれ部、及びフットレスト部の側面図である。
【図5】第1実施形態のリニアアクチュエータの分解説明図である。
【図6】突起部を無溝部に係合させる場合のリニアアクチュエータの説明図である。
【図7】突起部を第1案内溝に係合させる場合のリニアアクチュエータの説明図である。
【図8】突起部を第2案内溝に係合させる場合のリニアアクチュエータの説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 リニアアクチュエータ
2 椅子
3 リクライニング機構
4 座部
5 背もたれ部
6 フットレスト部
7 脚部
8 枢支部
9 回動部
10 電動モータ
11 回転軸
12 摺動部材
13 駆動軸
14 ギヤボックス
15 ネジ部
16 移動体
17 案内シャフト
18 カバー体
19 連結杆
20 起立部材
21 長孔
22 外筒体
23 内筒体
24 支持体
24L 支持体の左部材
24R 支持体の右部材
25 孔部
27 突起部
28 案内溝
29 貫通孔
30 係合溝
31 操作体
32 第1案内溝
33 第2案内溝
34 無溝部
35 操作棒部
36 操作つまみ
37 係止ピン
38 位置決め手段
39 案内孔
40 球体
41 弾性部材
42 位置決め凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外筒体と、この外筒体の内側に挿入される円筒状の内筒体と、前記外筒体を軸心方向に摺動自在に支持する支持体とを有し、
前記外筒体の内周面には、径内方向に突出する突起部が形成されており、
前記内筒体の外周面には、前記突起部を長手方向に沿って摺動自在に案内する案内溝が形成されており、
前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を支持体に対して押し込んだ際に、前記突起部が案内溝の終端部と係合することで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出する構成となっており、
前記内筒体の外周面には、周方向に沿って終端部の位置が異なる複数の案内溝が設けられ、前記複数の案内溝のいずれかを選択することで、前記外筒体又は内筒体の突出量を変更可能となっていることを特徴とする突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記内筒体と外筒体とを相対回動させることで前記突起部が前記複数の案内溝間で移動可能となるように、前記複数の案内溝は互いに周方向に連通状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記案内溝は、前記突起部を内筒体の先端側から案内溝内に案内できるように、前記内筒体の先端縁から軸心方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記突起部は、前記内筒体の端縁と係合可能に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記突起部が案内溝のいずれかに確実に嵌り込むように、前記内筒体の外筒体に対する回動位置を位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記外筒体の内部を軸心方向に貫通して前記外筒体の外側から前記内筒体を外筒体に対して回動させる操作体が備えられており、
前記操作体は、前記内筒体に対して軸心方向に相対移動可能に係合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
円筒状の外筒体と、この外筒体の内側に挿入される円筒状の内筒体と、前記外筒体を軸心方向に摺動自在に支持する支持体とを有し、前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を、支持体に対して押し込むことで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出するリニアアクチュエータであって、
前記内筒体の外周面には、径外方向に突出する突起部が形成されており、
前記外筒体の内周面には、前記突起部が長手方向に沿って摺動自在に移動する案内溝が形成されており、
前記内筒体と外筒体とのいずれか一方を支持体に対して押し込んだ際に、前記突起部が案内溝の終端部と係合することで、前記内筒体と外筒体とのいずれか他方が支持体から突出する構成となっており、
前記外筒体の内周面には、周方向に沿って終端部の位置が異なる複数の案内溝が設けられ、前記複数の案内溝のいずれかを選択することで、前記外筒体又は内筒体の突出量を変更可能となっていることを特徴とする突出量可変式のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
座部と、座部の背面に設けられた背もたれ部と、座部の前面に設けられたフットレスト部とを備え、
請求項1〜7のいずれかに記載の突出量可変式のリニアアクチュエータを用いて前記フットレスト部が前記座部に対して傾動されることを特徴とする椅子。
【請求項9】
座部と、座部の背面に設けられた背もたれ部と、座部の前面に設けられたフットレスト部とを備え、
請求項1〜7のいずれかに記載の突出量可変式のリニアアクチュエータを用いて前記背もたれ部が前記座部に対して傾動されることを特徴とする椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−257449(P2009−257449A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106387(P2008−106387)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】