説明

突板化粧材及び突板化粧材の黒変防止方法

【課題】水分による表面の黒変が生じ難い突板化粧材、及び水分による表面の黒変を容易に抑制可能な突板化粧材の黒変防止方法を提供すること。
【解決手段】本発明の突板化粧材は、木質材からなる基材に片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない表面塗装が施されている突板化粧材であって、前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤が塗布されており、突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤が塗布されている。本発明の突板化粧材の黒変防止方法は、木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない塗料を用いた表面塗装が施されている突板化粧材における、前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤を塗布し、前記突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒変が防止された突板化粧材及び突板化粧材の黒変防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にホワイトオークやチーク、メイプルなどの、木目の美しさや硬さ、希少性を有する木材は銘木と呼ばれる。このような銘木の有効利用や意匠性に優れた建材を手頃な価格で提供するために、銘木や広葉樹等の木材を、コンマ数ミリから数ミリ程度に薄く切削して突板(つきいた)とし、該突板を、MDFやパーティクルボード、合板等の基材に接合し、更に表面を塗装により仕上げて、壁材、床材、天井材、階段の側板や段板、建具等の内装材として用いることが広く行われている。
【0003】
しかし、突板を用いた建材は、梅雨の時期などには、高温多湿の環境や結露による水分などにより、突板の表面の全体又は一部が黒く変色する現象が生じることがある。このような黒変は、顧客からのクレーム等にも繋がる。
建材の吸湿をアルキルアルコキシシランまたはその縮合物により抑制して、吸水を防止する技術が知られている(特許文献1参照)が、当該技術は、2〜5回重ね塗りすることが必要である上、オークの異変に対する効果は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−291225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、水分による表面の黒変が生じ難い突板化粧材を提供することにある。また、本発明の目的は、水分による表面の黒変を容易に抑制可能な突板化粧材の黒変防止方法を提供することにある。
【0006】
本発明は、木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない表面塗装が施されている突板化粧材であって、前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤が塗布されており、突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤が塗布されていることを特徴とする突板化粧材を提供するものである。
また、本発明は、木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない塗料を用いた表面塗装が施されている突板化粧材の水分による黒変を防止する方法であって、前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤を塗布し、前記突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤を塗布することを特徴とする突板化粧材の黒変防止方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の突板化粧材は、水分による表面の黒変が生じ難いものである。
本発明の突板化粧材の黒変防止方法は、水分による表面の黒変を容易に抑制可能な突板化粧材の黒変防止方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1,3の試験片の素寒天培地上放置2週間後の状態を示す写真である。
【図2】図2は、実施例1及び比較例4の試験片の素寒天培地上放置4週間後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の突板化粧材は、木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない表面塗装が施されている。
【0010】
本発明において基材として用いる木質材について説明する。
木質材としては、木質繊維板、合板、LVL(単板積層材)、OSB(配向性ストランドボード)、パーティクルボード等が挙げられ、木質繊維板を用いることが好ましい。
木質材を構成するエレメントとしては、従来、その木質材の構成材料として用いられている各種のものを用いることができる。
木質繊維板等に用いられる木質繊維等としては、従来、木質繊維板等の原料として用いられている各種公知のものを用いることができ、例えば、木材チップ、単板クズ、合板切りクズ、樹皮等の木質系繊維、麻、綱麻、シュロ、ヤシ、ケナフ、コーリャン、竹、麦わら、稲わら、ビートパルプ等の植物系繊維素等の挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を混合して使用することができる。これらの木質繊維の中でも、本発明の効果を一層顕著に発現させる観点から、木質系繊維、麻、ケナフ、コーリャンが好ましく、特に木質系繊維が好ましい。
【0011】
木質材に用いるバインダー樹脂としては、従来、その木質材の製造に用いられている各種公知のものを用いることができ、例えば、木質繊維板に用いるバインダー樹脂としては、ホルムアルデヒド系樹脂、水性高分子―イソシアネート系樹脂、イソシアネート・ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、α―オレフィン・無水マレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、リグニン系樹脂、タンニン系樹脂、タンパク系樹脂などが挙げられる。
前記ホルムアルデヒド系樹脂としては、メラミン樹脂、ユリア樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール樹脂、フェノール・メラミン共縮合樹脂、レゾルシノール樹脂等が挙げられ、前記イソシアネート・ポリウレタン系樹脂としては、ジフェニルメタン−4,4’―ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。
これらのバインダー樹脂は、一種を単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0012】
優れた黒変抑制効果を得る観点等から、バインダー樹脂としては、ホルムアルデヒド系樹脂及び/又はイソシアネート化合物を用いることが好ましい。前記ホルムアルデヒド系樹脂としては、メラミン樹脂、ユリア樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂を用いることが好ましい。前記イソシアネート化合物としては、上述したイソシアネート・ポリウレタン系樹脂、水性高分子―イソシアネート系樹脂等が挙げられるが、イソシアネート・ポリウレタン系樹脂がより好ましく、特にMDI又はPMDIが好ましい。
【0013】
木質繊維板は、中比重繊維板(MDF)、低比重繊維板及び高比重繊維板の何れでも良いが、MDF(密度0.35g/cm3以上0.8g/cm3未満)を用いることが好ましい。
【0014】
木質材に接合する突板は、国内外の樹種の木材をスライサー、ロータリーといった機械で薄くスライスしたものであり、木目を有するものを特に制限なく用いることができる。
突板の原木の樹種としては、例えば、ホワイトオークやレッドオーク等のオーク、チーク、メイプル、杉、ウォルナット、チェリー、バンブー等が挙げられるが、特に黒変の問題が生じやすいホワイトオークであることが好ましい。
【0015】
突板の厚み(突板化粧材中の厚み)は、0.2〜0.5mm、特に0.2〜0.3mmであることが好ましい。
【0016】
突板を木質材に接合する接着剤としては、天然木化粧材等の製造に従来用いられている各種公知のものを用いることができ、例えば、酢酸ビニル系の接着剤を用いることができる。酢酸ビニル系の接着剤としては、酢酸ビニル樹脂接着剤、酢酸ビニル樹脂にイソシアネート系架橋剤又は尿素樹脂を添加したもの、アクリル変性酢酸ビニル樹脂若しくはエチレン酢酸ビニル共縮合樹脂などが使用できる。
【0017】
本発明においては、突板の表面に、木目の視認性を損なわない表面塗装を施す。表面塗装に用いる塗料は、ウレタン系塗料、ポリエステル系塗料、フェノール樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料等を用いることができるが、ウレタン系塗料を用いてウレタン塗装を施すことが好ましい。表面塗装に用いる塗料は、透明、半透明の塗膜を形成し得るものが好ましく、塗膜の厚みは1〜2μmくらいが適当である。
また、ウレタン塗装に用いる塗料には、各種の着色料、特に顔料系の着色料、例えば、カシュー株式会社の「TXL−200リベラカラーステイン」のホワイト、イエロー、レッド等を配合して調色することも好ましい。
【0018】
表面塗装の前には、突板の表面を研磨する木地研磨を行うことも好ましい。木地研磨は、例えば、電動工具であるサンダー等を用いて行う。
また、表面塗装の前の突板には、突板側の表面に、シーラー処理及びUVサンディング塗装を行うことが好ましい。このような下塗りないし中塗り塗装を行う場合、防カビ剤を塗布する表面塗装の塗膜表面は上塗り塗装の塗膜の表面である。
前記シーラー処理は、塗料の吸い込みを防ぐためと表面を平坦にすることを目的として行うものであり、シーラー剤としては、Z7−71−P(玄々化学工業株式会社)等の目止めシーラー、TXL8号ストップシーラー等のヤニ止めストップシーラー剤、スロトンTXLRC(カシュー株式会社)等の下塗シーラー剤等が挙げられる。特に好ましいのは、Z7−71−P(玄々化学工業株式会社)である。
また、シーラー剤には、各種の着色料、特に顔料系の着色料、例えば、カシュー株式会社の「TXL−200リベラカラーステイン」のホワイト、イエロー、レッド等を配合して調色することも好ましい。
【0019】
UVサンディング塗装は、塗膜硬度が硬く、耐摩耗、耐薬品、平坦性の向上を目的として行うものであり、UVサンディング塗装に用いる塗料としては、TXFサンディングSR#2(ミクニペイント株式会社)等のUV塗料、サンディングLEVEL#5000(浜二ペイント株式会社)等のUV塗料、UVTXL635クリヤー(カシュー株式会社)等のUV塗料等が挙げられる。特に好ましいのは、TXFサンディングSR#2である。
シーラー剤及びUVサンディング塗装に用いる塗料の塗布方法は、それぞれ、各種公知の方法を用いることができ、ローラー塗り、スプレーによる塗布、刷毛塗り等、適宜に選択できる。表面塗装前には、UVサンディング塗装面を研磨する中間研磨を行うことも好ましい。中間研磨は、例えば、電動工具であるサンダー等を用いて行う。
【0020】
本発明においては、前述の表面塗装の塗膜の表面に更に防カビ剤を塗布する。防カビ剤の塗布により、突板化粧材の表面が水分による黒変(色が黒色に変化すること)を防止することができる。
防カビ剤としては、真菌類の増殖を抑制し得る各種のものを用いることができ、例えば、有機窒素硫黄系ハロゲン化合物等の有機窒素硫黄系防カビ剤、有機ヨウ素系防カビ剤、有機塩素系の防カビ剤、硼砂、硼酸系の防カビ剤等を用いることができるが、有機窒素硫黄系防カビ剤を用いることが好ましい。有機窒素硫黄系防カビ剤は、他の種類の防カビ剤と組み合わせて用いても良い。有機窒素硫黄系防カビ剤としては、例えば、住化エンビロサインス株式会社の、ネオシントールW−5000、ネオシントールW−8000、スラノック1700、スラノックBX1300、スラノックSW−100等が挙げられ、特にネオシントールW−5000を用いることが好ましい。ネオシントールW−5000は、
有機塩素系の防カビ剤としては、2,4,6−トリクロロフェノール、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル等が挙げられる。硼砂、硼酸系の防カビ剤としては、例えば、特開平10−278013号公報に記載のもの等が挙げられる。有機ヨウ素系防カビ剤としては、例えば、特開2002−036215号公報に記載のもの等が挙げられる。これらの各種の防カビ剤は、1種を単独で使用することもできるし又は2種以上を併用することもできる。併用の態様は、混合して用いても良いし、順次塗り重ねても良い。
【0021】
防カビ剤は、水で希釈して塗布できるものが好ましい。防カビ剤の塗布方法は、それぞれ、各種公知の方法を用いることができ、ローラー塗り、スプレーによる塗布、刷毛塗り等、適宜に選択できる。
また、防カビ剤は、水溶性又は水に均一分散可能なものが好ましい。水に均一に分散した状態は、エマルジョンでも、単なる分散状態でも良い。防カビ剤の塗布は、表面塗装による塗膜が完全に硬化した後に行うことが好ましい。
防カビ剤の塗布量は、防カビ剤の種類等に応じて適宜に決定することができる。防カビ剤は、木質材からなる基材の突板が接合されている面の全面に塗布することが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤を塗布する。突板化粧材の木口面は、突板化粧材の上下面以外の面である。
木口面に対するシアノアクリレート系接着剤の塗布は、木質材からなる基材から突板部分に亘るように行うことが好ましい。
また、シアノアクリレート系接着剤の塗布は、防カビ剤の塗布の前に行っても後に行っても良く、同時に行っても良いが、防カビ剤の塗布後に行うことが、作業性の点から好ましい。
【0023】
シアノアクリレート系接着剤は、シアノアクリレートを含み、そのシアノアクリレートが、水、メタノール、苛性ソーダ等の陰イオンをもつ物質によって重合することによって硬化するものである。
シアノアクリレート系接着剤としては、シアノアクリレートが重合して硬化するものを特に制限なく用いることができる。シアノアクリレート系接着剤は、瞬間接着剤として知られている。シアノアクリレート系接着剤としては市販のものを用いることもでき、例えば、住友林業クレスト株式会社製のインスターボンド40S、東洋プライウッド株式会社製のα−250Pやα40S、株式会社スリーボンド製のスリーボンド1700シリーズのもの、東亜合成株式会社のアロンアルファ(登録商標)GEL−10等を用いることができる。
【0024】
シアノアクリレート系接着剤に含まれるシアノアクリレートとしては、例えば、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート等が挙げられ、これらの2種以上のシアノアクリレートを含むものであっても良い。シアノアクリレートは、メチル又はエチルシアノアクリレートであることが経済性の点で好ましく、ブチルシアノアクリレートがVOC等の環境への配慮の点から好ましい。なお、シアノアクリレート系接着剤に含まれるシアノアクリレートの量は、公知のシアノアクリレート系接着剤と同様とすることができる。但し、木口面に被膜ないし塗膜を形成し得る量であることが好ましい。また、シアノアクリレート系接着剤中には、シアノアクリレート以外の成分が配合されていても良く、そのような成分の種類や量も、公知のシアノアクリレート系接着剤と同様とすることができる。
【0025】
突板化粧材の木口面を、シアノアクリレート系接着剤で処理するには、該接着剤を、突板化粧材の木口面に塗布するだけで良い。塗布方法としては、刷毛塗り、スプレー、瞬間接着剤自動塗布機等の各種の方法を用いることができる。本発明においては、シアノアクリレート系接着剤を、突板化粧材の木口面を他の部材に接合するために用いるのではなく、木口面を介した水分の吸収及び放出を遮断するために用いる。従って、突板化粧材における、シアノアクリレート系接着剤を塗布した面は、他の部材に接合されていないか、又はシアノアクリレート系接着剤の硬化(乾燥)後に、別の手段により他の部材に接合されていることが好ましい。
【0026】
シアノアクリレート系接着剤は、塗布後に、熱処理、UV照射処理等の特段の処理をしなくても硬化し、また、瞬間接着剤として使用されているように短時間に硬化する。従って、処理が容易で作業効率も良い。また、このため、工場で階段段板を効率良く処理することもできるし、建築現場で、階段の寸法等に応じて階段段板をカットし、そのカットした面をシアノアクリレート系接着剤で処理することもできる。また、シアノアクリレート系接着剤は、液状でもゲル状でも良いが、液状であることが好ましい。液状のものとしては、例えば、粘度が2000cP以下のもの(1000cP,1500cPのもの等)挙げられ、ゲル状のものとしては、例えば、粘度が10万cP以上のもの(17万cPのもの等)が挙げられる。
【0027】
また、突板化粧材の木口面から吸い込まれにくいので、比較的少量でも、該木口面表面に、水分の吸収や放出に対して遮断効果の高い被膜(塗膜)が形成され易い。
シアノアクリレート系接着剤の塗布量は、樹種等に応じて適宜に変更でき、特に制限されないが、例えば、0.5〜1.2g/100cm2とすることができる。突板化粧材が平面視、四角形状であり、周面に4側面を有する場合、当該4側面の全域にシアノアクリレート系接着剤を塗布することが好ましい。また、突板化粧材の木口面に、雄実部及び/又は雌実部等の実加工を施し、実加工を施した面に、シアノアクリレート系接着剤を塗布しても良い。
【0028】
本発明においては、木質材からなる前記基材の他面(突板が接合されている面とは反対側の面)にもシーラー処理を施すことが好ましい。このシーラー処理は、水分の吸い込みを防ぐことを目的として行うものであり、シーラー剤としては、PFX700(浜二ペイント株式会社)等のサンディングシーラー、NTXサンディングバリュー(大阪塗料)等のサンディングシーラー、TXL−CP目詰めシーラー(カシュー株式会社)等の、下塗りシーラー等が挙げられる。特に好ましいのは、PFX700(浜二ペイント株式会社)である。
シーラー剤の塗布方法は、それぞれ、各種公知の方法を用いることができ、ローラー塗り、スプレーによる塗布、刷毛塗り等、適宜に選択できる。このシーラー処理は、木口面に対するシアノアクリレート系接着剤の塗布前に行っても塗布後に行っても良い。また、表面塗装の後に行っても表面塗装の前に行って良い。表面塗装の前に行う場合、突板の接合前に行っても良いし、突板接合後表面塗装前等に行っても良い。また、このシーラー剤は、木質材からなる基材の突板が接合されている面とは反対側の面の全面に塗布することが好ましい。
【0029】
本発明の突板化粧材又は本発明の黒変防止方法を施した後の突板化粧材によれば、高湿度の環境下に放置しても、表面に黒変が生じにくく、黒変を抑制(防止)することができる。
突板化粧材の用途としては、内装材、建具材、造作部材等の建築用材や、家具、ピアノの構成部材が挙げられ、例えば、壁材、床材、天井材、階段の側板や段板、框扉の框や鏡板、窓枠、幅木、腰壁、家具の表面や内部材等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、表面塗装前の木地研磨、突板表面のシーラー処理、UVサンディング塗装、UVサンディング塗装後の研磨(中間研磨)は、一つ又は2以上を省略することもできる。また、基材裏面のシーラー処理も、省略することもできる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例によって何ら制限されるものではない。
〔実施例1〕
(1)メラミン系接着剤を用いたメラミンタイプ(Mタイプ)の厚さ7mmのMDF(中密度繊維板)を基材とし、該基材の片面に、厚さ0.25mmのホワイトオーク柾目の突板を酢酸ビニル系の接着剤で接着した。次いで、突板の表面を木地研磨(♯180〜240サンドペーパー2回)した後、着色剤を添加したシーラー剤をローラー塗りし、更にUVサンディング剤を塗工した。次いで、UVサンディング剤の塗装面を中間研磨(♯400サンドペーパー1回)した後、ウレタン塗料を用いた表面仕上げ塗装を行い中間積層材を得た。
前記シーラー剤、前記UVサンディング剤及び前記ウレタン塗料は、下記を用いた。
シーラー剤:玄々化学工業株式会社「Z7−71−P」
UVサンディング剤:ミクニペイント株式会社「TXFサンディングSR♯2」
ウレタン塗料:玄々化学工業株式会社の「UF−25−95」と玄々化学工業株式会社「CB079」とを混合して使用
(2)得られた中間積層材を50mm角に切断し、そのそれぞれの表面(突板側の面)に防カビ剤を塗工し、4側面(4面の木口面)に瞬間接着剤を塗工し、裏面に第2のシーラー剤を塗工した。これを実施例1の試験片とした。
前記防カビ剤は、下記のものを下記方法で塗工した。
防カビ剤:住化エンビロサイエンス株式会社ネオシントールW−5000(有機窒素硫黄系ハロゲン化合物、有機ヨウ素系化合物、ポリエキシエチレン・ノニルフェニル・エーテルの混合物)
塗工方法:水で100倍に希釈した防カビ剤を塗布量44〜46g/m2にて刷毛を使用して手塗りした。
前記瞬間接着剤は、下記のものを下記方法で塗工した。
瞬間接着剤:住友林業クレスト株式会社インスターボンド40S(シアノアクリレート)
塗工方法:瞬間接着剤をプラスチックボトルより基材木口面に5cm程度垂らし、ヘラで素早く塗り広げる。これを繰り返し木口全面に塗布した。
第2のシーラー剤は、下記のものを下記方法で塗工した。
第2のシーラー剤:浜二ペイント株式会社UVコートサンディングPFX700(酢酸ブチル、酢酸エチル、ステアリン酸亜鉛の混合物)
塗工方法:塗布量55〜56g/m2にてロール塗布または手吹き塗布した。
【0031】
〔実施例2〕
第2のシーラー剤として、下記のものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の試験片を得た。
第2のシーラー剤:大谷塗料株式会社セーフティワルツ ハイブリッドサンディングHV
【0032】
〔実施例3〕
実施例2において、メラミンタイプのMDFに代えて、ユリア系接着剤を用いたユリアタイプの厚さ7mmのMDF(中密度繊維板)を基材に用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例3の試験片を得た。
【0033】
〔比較例1〕
実施例1において、50mm角に切断した中間積層材の表面に防カビ剤を塗工せず、また、第2のシーラー剤として実施例2と同じものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の試験片を得た。
【0034】
〔比較例2〕
実施例1と同様にして中間積層材を得た。得られた中間積層材を50mm角に切断したものを、比較例2の試験片とした。
【0035】
〔比較例3〕
実施例1において、メラミンタイプのMDFに代えて、ユリア系接着剤を用いたユリアタイプの厚さ7mmのMDF(中密度繊維板)を基材に用いた以外は、実施例1と同様にして中間積層材を得た。得られた中間積層材を50mm角に切断したものを、比較例3の試験片とした。
【0036】
〔比較例4〕(比較例3の中塗りに防カビ剤)
実施例1において、メラミンタイプのMDFに代えて、ユリア系接着剤を用いたユリアタイプ(Uタイプ)の厚さ7mmのMDF(中密度繊維板)を基材に用いると共に、突板表面に塗工するシーラー剤として実施例1で用いたシーラー剤に下記防カビ剤を5%配合したものを、塗布量55〜56g/m2にてロール塗布した以外は、実施例1と同様にして中間積層材を得た。得られた中間積層材を50mm角に切断したものを、比較例4の試験片とした。
防カビ剤:ユニオンペイント株式会社「バイナックマルチ46−90」(酢酸ブチル、アセトンの混合物)
【0037】
〔黒変抑制効果の評価〕
(評価方法)
実施例1〜3及び比較例1〜4の試験片のそれぞれについて、表面の黒変抑制効果の評価試験として、JIS Z2911に準拠したカビ抵抗性試験を行った。但し、培地は素寒天培地を用いカビ胞子をスプレーしない方法で行った。より具体的には、実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて3つの突板化粧材のサンプル(n=3)を用意し、そのそれぞれの裏面に、寒天培地から直接吸湿しないように60mm角のOHPフィルムを両面テープで固定した後、各サンプルを、シャーレに形成した寒天培地上に設置した。サンプルを設置したシャーレを、26℃の環境下に4週間放置(培養)し、突板の木目が表れている表面の黒変状況を観察した。培養中、シャーレの蓋は閉じた状態とした。培養開始後1週間後,2週間後、4週間後における黒変状態を下記の評価基準で評価し、その結果を表1に示した。
また、実施例1及び比較例1,3の2週間後の状態を図1、実施例1及び比較例4の4週間後の状態を図2に示した。
【0038】
〔評価基準〕
0:試験片に黒変が認められない。
1:試験片に認められる黒変部分の面積が全面積の1/3未満。または、ごく軽い黒変。
2:試験片に認められる黒変部分の面積が全面積の1/3以上2/3以下。または、黒変がはっきり見える。
3:試験片に認められる黒変部分の面積が全面積の2/3を超える。または、黒変が著しい状態。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す結果より、比較例1,4は、比較例2,3の結果に近い黒変が出ており、黒変抑制の効果は殆ど認められなかった。これに対して、実施例1〜3の、瞬間接着剤、第2シーラー剤及び防カビ剤で処理したものは黒変に対して抑制効果が認められた。なお、防カビ剤や第2シーラー剤はそれぞれ単体で使用しても効果が認められなかったが、瞬間接着剤と共に使用することにより黒変抑制効果があることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない表面塗装が施されている突板化粧材であって、
前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤が塗布されており、突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤が塗布されていることを特徴とする突板化粧材。
【請求項2】
前記基材の他面にシーラー剤が塗布されていることを特徴とする、請求項1記載の突板化粧材。
【請求項3】
前記木質材が、メラニン系接着剤をバインダーに用いたMDFであることを特徴とする、請求項1又は2記載の突板化粧材。
【請求項4】
前記表面塗装がウレタン塗装であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項記載の突板化粧材。
【請求項5】
木質材からなる基材の片面に突板が接合され、該突板の表面に、木目の視認性を損なわない塗料を用いた表面塗装が施されている突板化粧材の水分による黒変を防止する方法であって、
前記表面塗装の塗膜の表面に防カビ剤を塗布し、前記突板化粧材の木口面にシアノアクリレート系接着剤を塗布することを特徴とする突板化粧材の黒変防止方法。
【請求項6】
前記基材の他面にシーラー剤を塗布することを特徴とする、請求項5記載の突板化粧材の黒変防止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−201035(P2012−201035A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68836(P2011−68836)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(501195625)住友林業クレスト株式会社 (43)
【Fターム(参考)】