説明

突板貼り化粧板

【課題】 合板、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等の木質系基材を使用した天然木化粧板(突板貼り化粧板)において、屋内材料としての経年変化により、特に高温高湿度下に長期間使用された場合、突板表面に変色が発生することがある。特に、ナラやホワイトオーク系の樹種の場合は顕著に現れることがある。本発明は、この種の突板に変色を生ずることを防止することを目的とする。
【解決手段】 突板3と木質系基材7の間に防湿シート5を介在させ、さらに突板と防湿性シートの間にキレート剤添加接着剤層4を有することにより、変色汚染を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面材、天井表面材及び可動間仕切り等の建築内装材の表面材、箪笥、テーブル及び椅子等の家具の表面材、什器等の一般木製品、並びに、電子機器及び楽器の表面材として使用される化粧板に係り、特に、表面の突板の変色や汚染を防止することが可能な突板貼り化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
突板貼り化粧板は、一般的に、合板や繊維板などの木質系基材を使用し、その表面に接着剤を介して突板を貼着し、さらに、その単板表面に透明塗装や着色塗装を施して製造されている。また、必要により木質系基材の突板側表面に予め繊維質シートや隠ぺい剤を介在させる場合もある。
【0003】
木材の変色防止は、木材を利用する上での大きな課題の一つである。変色はさまざまな要因で引き起こされ、鉄汚染やアルカリ汚染などの化学的要因、光や温度などの物理的要因などがある。近年、中密度繊維板(MDF)などの木質基材にナラやホワイトオークの突板単板を貼った製品の変色が増えている。特に、家具、ドア、壁面等に使われているナラやホワイトオーク突板仕上げの化粧板が、半年から2〜3年後に変色が発生したという事例が報告されている。この現象はナラやホワイトオーク材に多く含まれるタンニン類に起因すると考えられている。タンニン類は化学反応性に富み、鉄イオンと結合して黒褐色になる鉄汚染、褐色になるアルカリ汚染、赤っぽく変色する酸汚染などを引き起こし、ナラやホワイトオーク材は非常に変色しやすい木材と云われている。特に高温高湿時に発生しやすいという特徴があり、生物的な汚染が関与している可能性もあることが報告されている。
【0004】
このような背景から、これまでに、スライス単板製造時の汚染防止方法として、ナラ材フリッチあるいはナラスライス単板を、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム水溶液で処理することにより、タンニン酸が鉄と反応することを防止し、あるいはタンニン酸を分解する技術が開示されている(特許文献1参照。)。
【0005】
また、木質系基板表面に突板が貼着されている化粧板において、突板表面又は基材表面に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)系又はヒドロキシエチリデンビスホスホン酸(HEDP)系のキレート剤を含む塗布液を塗布した化粧板が開示されている(特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、ナラ材等を使用した突板貼り化粧板の鉄汚染防止対策としては、突板表面に1%ポリリン酸水溶液を約27g/m塗布する技術が報告されている。(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開平6−31705号公報
【特許文献2】 特開2009−202462号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】 松浦力「木材の鉄汚染防止」、広島県立東部工業技術センター研究報告、第16号(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した処理方法では、ある程度の変色防止効果は得られるものの、高温高湿の過酷な環境下では十分な効果が得られない。また、突板表面にキレート剤を塗工処理することは、処理後に天然木本来の色合いとは異なった色に変化したり、経時的に無処理突板とは異なった変色をきたすことがあり問題である。本発明は、係る問題点に鑑み、高温高湿条件下に長期間置かれても、突板の変色汚染を生じない化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の第1手段は、突板貼り化粧板であって、天然木の極薄突板とキレート剤を含む層と防湿シートと木質系基材とが、この順で積層一体化されていることを特徴とする。
【0011】
第2手段は、第1手段に記載の突板貼り化粧板であって、キレート剤がエチレンジアミン4酢酸であることを特徴とする。
【0012】
第3手段は、第2手段に記載の突板貼り化粧板であって、キレート剤が接着剤と混合された層を形成し、当該層の塗布量が30〜90g/mで、かつキレート剤の割合が0.2〜4.0重量%であることを特徴とする。
【0013】
第4手段は、第2手段に記載の突板貼り化粧板であって、キレート剤が、水溶液の形態で塗布(当該キレート剤の塗布量が0.4〜4.0g/m)され、次いで乾燥させることにより得られ、突板と接着剤を介して積層されることを特徴とする。
【0014】
第5手段は、第1〜第4手段いずれかに記載の突板貼り化粧板であって、防湿シートが、アルミニウム箔の両面に繊維質シートを積層した構造、あるいは合成樹脂層の両面に繊維質シートを積層した構造であることを特徴とする。
【0015】
第6手段は、第1〜第5手段いずれかに記載の突板貼り化粧板であって、防湿シートの透湿度(JIS Z 0208)が25g/m・24時間(40℃)以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化粧板は、表面の突板と木質系基材の間に防湿シートが配置されており、木質系基材中の金属類、合成樹脂分あるいは木材成分が水分とともに突板に侵入するのを防止している。また、表面の突板と防湿シート間の接着剤に、キレート剤が内添されている場合は、突板表層部とキレート剤が接触することになり、突板中で金属類、特に鉄イオンとタンニン類やフェノール成分とが反応することによる変色を防止している。このように、キレート剤添加接着剤と防湿シートの併用により作製した本発明の化粧板は、高温高湿条件下に長期間置かれても化粧板表面の突板の変色汚染は発生せず、良好な効果が得られる。
【0017】
また、表面の突板側の防湿シート面にキレート剤が塗工される場合は、さらにその上に接着剤が塗工されるので、キレート剤が接着剤に一部溶け込み、結果的に表面の突板表層部とキレート剤がほぼ接触することになる。このため、キレート剤が内添されている場合と同様に変色を防止し良好な効果が得られる。
【0018】
なお、本発明では、突板自体にはキレート剤等の薬剤の直接塗布又は含浸等の処理を行っておらず、薬剤による突板の変色の危険性はなく、通常の無処理突板貼り化粧板と同様の外観安定性が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 キレート剤添加接着剤を使用した突板貼り化粧板断面図である。
【図2】 キレート剤を防湿シート面に塗工した突板貼り化粧板断面図である。
【図3】 実施例1における評価試験17日間後の化粧板の突板表面状態を表す写真である。
【図4】 実施例2における評価試験30日間後の化粧板の突板表面状態を表す写真である。
【図5】 実施例3における評価試験7日間後の化粧板の突板表面状態を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳述する。本発明の化粧板は、木質系基材の最表面に突板が貼着されているものであり、住宅などの内装において、壁材、天井材、床材などに使用され、また、家具や什器等にも同様に使用される。
【0021】
木質系の基材としては、合板、繊維板、パーティクルボード、LVL,集成材などであり、繊維板には、インシュレーションボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボードが含まれる。
【0022】
通常、突板と呼ばれる天然木単板は、フリッチと呼ばれる木材を、必要により予め煮沸や蒸煮を行い、スライサーレース、ロータリーレース、ハーフロータリーレース等の突板切削機を用いて、厚さ約0.2mm(0.08〜30mm)の厚さに切削することにより造られる。木材の種類としては、ホワイトオーク、レッドオーク、チェスナット、マホガニー、チーク、メープル、アメリカンチェリー、ホワイトアッシュ、シルバーハート、カバ、ウォールナット、ブビンガ、ブナ、ナラ、クリ、タモ、スギ、ヒノキなどが挙げられるが、本発明の化粧板は、経時的に変色汚染が発生しやすい材種で特に効果が期待できる。変色汚染の発生要因の一つとして、タンニン含有量とpHが関与しており、特にタンニン含有量の多い材種に発生しやすいと云われている。タンニン含有量の多い材種としては、ナラ、ホワイトオーク、レッドオーク、チェスナット、クリ、クルミなどが挙げられる。
【0023】
図1は、本発明のキレート剤添加接着剤を使用した突板貼り化粧板断面図である。また、図2は、本発明のキレート剤を防湿シート面に塗工した突板貼り化粧板断面図である。
【0024】
突板3と木質系基材7の間に配置する防湿シート5は、木質系基材中の成分が水分と一緒に突板側に侵入するのを防ぎ、かつ、外気の湿気が基材を経由して突板側に侵入するのを防ぐことを目的としており、これを満足するシート状物であれば良い。本防湿シートは防湿性を限定しているものであり、JIS Z 0208の透湿度試験方法で、透湿度は50g/m・24時間(40℃)以下、好ましくは、25g/m・24時間(40℃)以下である。
【0025】
防湿シートの材料としては、アルミ箔の両面に接着剤を介して繊維質シートを配置した構成、あるいは合成樹脂層の両面に繊維質シートを配置した構成が望ましい。繊維質シートとしては、木材パルプを主原料とする薄葉紙や、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン、キュプラ、木材パルプ等を原料繊維とする不織布が使用される。アルミ箔については、特に厚さを限定するものではない。また、アルミ箔は長期的には腐食する危険性もあるので、各種市販されているアンカコート剤を用いて予め防食処理を施しておくことも有効である。また、合成樹脂層は、ポリオレフィン樹脂(低密度あるいは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等が使用される。この合成樹脂層と繊維質シートの複合には、合成樹脂接着剤を介して貼着しても良い。
【0026】
本発明で使用するキレート剤は、金属イオンに配位してキレート化合物をつくる多座配位子であり、金属封鎖剤とも呼ばれている。キレート剤には無機系と有機系(アミノカルボン酸塩)があるが、一般には後者の有機系を指す。キレート剤には、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン6酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸(HEDP)等がある。本発明では、変色や汚染の発生が特に少なかった無色の結晶性粉末であるエチレンジアミン4酢酸を使用する。エチレンジアミン4酢酸(EDTA)の中でも、エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物が特に望ましい。このキレート剤の他にも、これと近い変色汚染防止効果がある薬剤としてポリリン酸などがある。
【0027】
図1の構成において、エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物を突板3側のキレート剤添加接着剤層4に添加する割合は0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜4.0重量%である。この接着剤の塗布量は20〜220g/mであり、好ましくは30〜90g/mである。キレート剤の有効使用量が少ないと変色汚染防止効果が不十分であり、逆に多すぎると接着不良や突板自体が変色する場合がある。
【0028】
また、図2の構成において、エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物を突板3側の防湿シート5面に塗工する有効成分量は0.1〜10g/mであり、好ましくは0.4〜4g/mである。この場合においても、キレート剤の有効使用量が少ないと変色汚染防止効果が不十分であり、逆に多すぎると突板自体が変色する場合がある。
【0029】
突板3と防湿シート5を接着する接着剤は特に限定するものではなく、酢酸ビニル系接着剤、合成ゴムラテックス系接着剤、水性ビニル系接着剤等から選択される。図1の構成においては、この接着剤にキレート剤を規定量添加して撹拌した後、防湿シート面に塗布して突板を貼着する。
【0030】
また、防湿シート5と木質系基材7を接着する接着剤6についても特に限定するものではなく、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、合成ゴムラテックス系接着剤、水性ビニル系接着剤等から選択される。接着剤は木質系基材7に塗布されて防湿シート5と貼着される。
【0031】
突板3表面には場合によっては着色や塗装が施される。図1の構成における突板3、キレート剤添加接着剤層4、防湿シート5、接着剤層6、木質系基材7の順、あるいは図2の構成における突板3、接着剤層6、キレート剤層8、防湿シート5、接着剤層6、木質系基材7の順に配置貼着された突板貼り化粧板1の突板3表面には、表面を研磨した後、着色剤による生地着色、あるいはクリヤー塗装、あるいはカラー塗膜塗装などにより塗膜2を形成する場合がある。使用される塗料は特に限定されるものではなく、二液型ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル系樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料、湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン系樹脂塗料、紫外線(UV)硬化型塗料などの合成樹脂塗料、オイルフィニッシュ用塗料、合成樹脂調合ペイントなどの油性塗料、ニトロセルロースラッカー、カシュー樹脂塗料などの天然樹脂塗料などから選択される。
【0032】
塗料の種類、塗装方法あるいは塗布量(塗膜厚さ)は、変色や汚染の発生に影響を与えることがある。塗膜2面から突板3への水分や湿気の侵入をできるだけ少なくすることは、変色や汚染発生を遅延させる効果があり、引いては発生を抑制する効果が期待できる。
【0033】
また、木質系基材7の突板3側と反対面に、例えば合成樹脂の両側に繊維シートを配置した構成の反り止め防湿シートを接着剤を介して貼着することもあるが、本発明の効果を損なうものではない。
【0034】
なお、本発明で十分な変色汚染防止効果を発揮するためには、防湿シートの挿入だけでは不十分であり、キレート剤の接着剤への添加や、キレート剤の塗工だけでも効果は不十分である。この防湿シートが挿入され、かつ、キレート剤が突板表層部とほぼ接触するような配置されていることで、はじめて十分な変色汚染防止効果を発揮する。
【実施例1】
【0035】
下記に記載する一体化積層成形構成をなす化粧板A、B、C及びDを製作し、下記の評価試験に供することにした。まず、化粧板A及びBは本発明の1実施形態であり、基材である合板の上に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布し、防湿シートX及びYを熱圧接着する。この防湿シートX及びYの上にキレート剤エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物5%水溶液を塗布(塗布量20g/m)して乾燥し、さらにこのキレート剤塗工面に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布して、その上にホワイトオーク突板(0.22mm厚)を載せて熱圧接着する。出来上がった化粧板の突板表面を研磨後、ポリウレタン樹脂系塗装を施した。化粧板Aには、防湿シートX(順に、薄葉紙23g/m、アルミ箔12μm厚、薄葉紙23g/m)を、接着剤を介して積層接着したものを使用し、化粧板Bには、防湿シートY(順に、薄葉紙23g/m、ポリオレフィン系樹脂フイルム40μm厚、薄葉紙23g/m)を積層接着したものを使用した。また、化粧板Cは比較例であり、同じ合板基材の上に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布し、薄葉紙を熱圧接着した。この薄葉紙の上に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布し、その上にホワイトオーク突板(0.22mm厚)を載せて熱圧接着した。出来上がった化粧板の突板表面は、研磨後にポリウレタン樹脂系塗装を施した。さらに化粧板Dも比較例であり、同じ合板基材の上に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布して防湿シートYを熱圧接着する。この防湿シートYの上に合成ゴムラテックス系接着剤を塗布して、その上にホワイトオーク突板(0.22mm厚)を載せて熱圧接着する。出来上がった化粧板の突板表面を研磨後、ポリウレタン樹脂系塗装を施した。なお、この化粧板Dに使用した防湿シートYは、化粧板Bに使用したものと同じである。化粧板A〜Dに使用した合成ゴムラテックス系樹脂接着剤の塗布量は約55g/mである。
【0036】
評価試験方法として、40℃、95%の相対湿度に設定した恒温恒湿器内に17日間静置して、表面突板の変色汚染状態を観察した。その結果は、表1に示すように、本発明である化粧板A及びBにおいては、突板の変色汚染は全く認められなかった。また、比較例である化粧板Cにおいては、4日間後に全体が黒褐色に変化した。化粧板Dは防湿シートを配置しているが、17日間後には試験体周辺部に黒褐色の変色が認められ、十分な変色汚染防止効果は発揮されていない。
【0037】
【表1】

【0038】
図3は、評価試験17日間後の突板表面状態である。化粧板Cの変色が顕著であり、化粧板A及びBでは変色していないことが分かる。
【実施例2】
【0039】
実施例2は、合板を基材として、この基材の上に接着剤を介して突板(ホワイトオーク)を貼着した突板貼り化粧合板とその評価試験結果である。下記の化粧板E、F及びGを製作し、評価試験に供することにした。化粧板Eは本発明の1実施形態であり、最上層から、塗膜、突板、接着剤層、キレート剤層、防湿シートX、接着剤層、木質系基材(合板、4mm厚)の順に配置されている。化粧板Fは比較例であり、最上層から、塗膜、突板、接着剤層、木質系基材(合板、4mm厚)の順に配置されている。化粧板Gも比較例であり、最上層から、塗膜、突板、接着剤層、防湿シートX、接着剤層、木質系基材(合板、4mm厚)の順に配置されている。いずれの化粧板も、塗料はポリウレタン系2液型塗料で塗布量も同じである。突板はホワイトオーク材(0.20mm厚)、接着剤は合成ゴムラテックス系樹脂で、その塗布量は約55g/mである。化粧板Eのキレート剤は、エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物5%水溶液を使用し、防湿シートの突板側に塗布乾燥し、塗布量は約20g/mとした。また、防湿シートXは、順に薄葉紙23g/m、アルミ箔12μm厚、薄葉紙23g/mを、接着剤を介して積層接着したものである。
【0040】
評価試験方法として、40℃、95%の相対湿度に設定した恒温恒湿器内に30日間静置し、表面突板の変色汚染状態を観察した。その結果は表2に示すように、本発明である化粧板Eは、30日間の長期に渡る試験において、ごく一部僅かの変色は発生したが、変色汚染は極端に少ない。比較例である化粧板Fは従来の製法による化粧板であり、また、比較例の化粧板Gは、防湿シートを配置しキレート剤の使用のない化粧板である。いずれも、21日間以降は突板表面に黒褐色の変色汚染が広がった。
【0041】
【表2】

【0042】
評価試験30日間後の突板表面状態は図4に示す。
【実施例3】
【0043】
実施例3は、中密度繊維板(MDF)を基材として、この基材の上に、接着剤を介して、突板(ホワイトオーク)を貼着した突板貼り化粧板とその評価試験結果である。下記の積層構成をなす化粧板H、I及びJを製作し、評価試験に供することにした。化粧板Hは本発明の実施形態であり、最上層から、塗料、突板、キレート剤添加接着剤層、防湿シートX、接着剤層、中密度繊維板(MDF、4mm厚)の順に配置されている。化粧板Iも本発明の実施形態であり、最上層から、塗料、突板、キレート剤添加接着剤層、防湿シートZ、接着剤層、中密度繊維板(MDF、4mm厚)の順に配置されている。化粧板Jは比較例であり、最上層から、塗料、突板、接着剤層、中密度繊維板(MDF、4mm厚)の順に配置されている。化粧板H、I、Jともに、塗料はポリウレタン系2液型塗料で同塗布量、突板はホワイトオーク材(0.25mm厚)、接着剤は合成ゴムラテックス系樹脂で塗布量は約55g/mである。いずれも、接着剤(合成ゴムラテックス系樹脂)にキレート剤としてエチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物を1.2%添加したものである。化粧板Hの防湿シートXは、順に薄葉紙23g/m、アルミ箔12μm厚、薄葉紙23g/mを、接着剤を介して積層接着したものであり、この防湿シートXの透湿度(JIS Z 0208)は0.1g/m・24hrs(25℃)以下である。また、化粧板Iの防湿シートZは、順に、薄葉紙23g/m、ポリエステルフイルム12μm厚、薄葉紙23g/mを、接着剤を介して積層接着したものであり、この防湿シートZの透湿度(JIS Z 0208)は16.0g/m・24hrs(25℃)である。
【0044】
評価試験は、40℃、95%の相対湿度に設定した恒温恒湿器内に7日間静置し、表面突板の変色汚染状態を観察する方法によった。その結果は表3に示すように、本発明である化粧板H及びIはいずれも変色汚染が発生しなかった。比較例である化粧板Jは、2日間後から変色汚染が始まり、7日間後には全面に黒褐色の変色汚染が発生した。
【0045】
【表3】

【0046】
評価試験7日間後の突板表面状態を図5に示す。
【実施例4】
【0047】
実施例4は、中密度繊維板(MDF)を基材として、突板(ホワイトオーク)を貼着した突板貼り化粧板とその評価試験結果である。化粧板Kは本発明の実施形態であり、最上層から、塗料、突板、キレート剤添加接着剤層、防湿シートX、接着剤層、中密度繊維板(MDF、3mm厚)の順に配置されている。化粧板Lは比較例であり、最上層から、塗料、突板、接着剤層、中密度繊維板(MDF、3mm厚)の順に配置されている。化粧板Mも比較例であり、塗料、突板、キレート剤添加接着剤層、中密度繊維板(MDF、3mm厚)の順に配置されている。いずれも、塗料はポリウレタン系2液型塗料で同塗布量、突板はホワイトオーク材(0.22mm厚)、接着剤は合成ゴムラテックス系樹脂で塗布量は約55g/mである。化粧板K及びMのキレート剤添加接着剤は、合成ゴムラテックス系樹脂系接着剤にキレート剤としてエチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム2水和物を1.2%添加したものである。また、防湿シートXは、順に薄葉紙23g/m、アルミ箔12μm厚、薄葉紙23g/mを接着剤を介して積層接着したものである。
【0048】
評価試験は、40℃、95%の相対湿度に設定した恒温恒湿器内に10日間静置し、表面突板の変色汚染状態を観察する方法によった。その結果は表4に示すように、本発明である化粧板Kは、10日間で全く変色汚染の発生がない。比較例とした化粧板L及びMは、7日間後には変色汚染が発生し、10日間後はほぼ全面に黒褐色の変色汚染が発生した。両化粧板の色差(試験前と試験後の色差△E*ab)は約8程度であり、著しく変色汚染が発生していることが分かる。なお、本発明の化粧板Kの色差(試験前との色差△E*ab)は0.34であり、変色汚染が発生していないことが分かる。
【0049】
【表4】

【符号の説明】
【0050】
1 突板貼り化粧板
2 塗膜
3 突板
4 キレート剤添加接着剤層
5 防湿シート
6 接着剤層
7 木質系基材
8 キレート剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然木の極薄突板とキレート剤を含む層と防湿シートと木質系基材とが、この順で積層一体化されていることを特徴とする突板貼り化粧板。
【請求項2】
キレート剤がエチレンジアミン4酢酸であることを特徴とする請求項1に記載の突板貼り化粧板。
【請求項3】
キレート剤が接着剤と混合される層を形成し、当該層の塗布量が30〜90g/mで、かつキレート剤の割合が0.2〜4.0重量%であることを特徴とする請求項2に記載の突板貼り化粧板。
【請求項4】
キレート剤が、水溶液の形態で塗布(当該キレート剤の塗布量が0.4〜4.0g/m)され、次いで乾燥させることにより得られ、突板と接着剤を介して積層されることを特徴とする請求項2に記載の突板貼り化粧板。
【請求項5】
防湿シートが、アルミニウム箔の両面に繊維質シートを積層した構造、あるいは合成樹脂層の両面に繊維質シートを積層した構造であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の突板貼り化粧板。
【請求項6】
防湿シートの透湿度(JIS Z 0208)が25g/m・24時間(40℃)以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の突板貼り化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22953(P2013−22953A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171354(P2011−171354)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(591214619)北三株式会社 (6)
【Fターム(参考)】