説明

窒素含有ポリマーを機械的に安定化させる方法

機械的に安定なポリアゾールポリマーを製造する方法であって、以下の工程:a)i)芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミンカルボン酸を反応させることによって得ることができるものを除く、少なくとも1つのアミノ基を繰り返し単位中に有するポリアゾール、ii)少なくとも1種の強酸、及びiii)少なくとも1種の安定化剤、を含み、且つ膜中、安定化剤の合計含有量は、0.01〜30質量%である膜を供給する工程、b)膜中の安定化反応を、直ちに、又は次の膜の処理工程で行う工程、c)適切であれば、追加的に、工程b)に従い得られた膜を、強酸でドープするか、又は存在する水を更に除去することによって、存在する酸を濃縮する工程、を含み、且つ前記安定化剤が、少なくとも1種のオキサジン−ベースの化合物を含むことを特徴とする方法。このようにして得られるポリアゾールポリマーは、特に、高い伝導性、及び非常に良好な機械的安定性でよって特徴付けられる。従って、これらは、燃料電池への適用に特に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な反応物質の反応を介して窒素含有ポリマーを機械的に安定させる方法、及びこのような安定化された材料を、電解質膜(PEMs)、膜電極アセンブリ(MEAs)及びPEM燃料電池に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質膜(PEMs)は既に公知であり、そして特に、燃料電池に使用されている。このことについて、スルホン酸で変性されたポリマー、特にペルフルオロ化されたポリマーがしばしば使用される。DuPont de Nemours,Willmington,USAからのNationTMが、この著名な例である。プロトンの伝導のために、比較的高い水の含有量が膜に必要とされ、これは典型的には、スルホン酸基当たり4〜20分子の量である。必要とされる水の含有量、及び酸性水、及び反応ガス、水素及び酸素と関連したポリマーの安定性は、通常、PEM燃料電池スタックの運転温度を80〜100℃に制限する。圧力を施した場合、運転温度は>120℃に増すことができる。そうでなければ、より高い温度の運転は、燃料電池の電力を損なうものである。
【0003】
システム−特有の理由により、しかしながら、100℃を超える燃料電池の運転温度が望ましい。貴金属に基づき、及び膜電極アセンブリ(MEA)に含まれる触媒の活性は、高い運転温度では、大きく改良される。いわゆる炭化水素からのリフォーマーが使用される場合、リフォーマーガスは、特に、相当量の一酸化炭素を含み、該一酸化炭素は通常、合成ガスコンディショニング又はガス精製工程を使用して除去する必要がある。触媒のCO不純物に対する許容性(tolerance)は、CO体積について数パーセントまで、高い運転温度で増加する。
【0004】
更に、燃料電池の運転の間、熱が生成される。しかしながら、これらのシステムの80℃未満への冷却は、非常に複雑なものである。電力出力に依存して、冷却装置は、複雑さを大きく低減して構成することができる。このことは、100℃を超える温度で運転される燃料電池内の廃熱を、明確により良好に使用できることを意味しており、従って、組み合わされた電力と熱生成を介した燃料電池システムの効率を増すことができることを意味している。
【0005】
これらの温度を達成するために、通常、新しい伝導メカニズムを有する膜が使用される。この目的のためのあるアプローチは、水を使用することなく導電率を示す膜の使用である。この方向における第1の前途有望な発達は、特許文献1(WO96/13872)に開示されている。例えば、特許文献1(WO96/13872)には、(キャスティング法を使用して製造された)酸−ドープしたポリベンズイミダゾール膜の使用を開示している。
【0006】
同様に、水を使用することなく導電率を示す酸−含有ポリアゾール膜の新しい生成方法が特許文献2(WO02/088219)に記載されている。特許文献2(WO02/088219)に開示された酸−含有ポリアゾール膜は、既に有益な特性プロフィールを示している。
【0007】
PEM燃料電池の意図する適用に基づいて、しかしながら、酸−含有ポリアゾール膜の機械的特性は常に改良する必要がある。例えば、このような膜はなお比較的柔らかく、及び従って、制限された機械的負荷しか耐えることができず、機械的安定性は、温度上昇に従って減少し、代表的な運転枠(約160℃〜180℃)の上限で、既に耐久力の問題を引き起こし得るものである。従って、高い伝導性を達成し、及び機械的特性を改良すること、特に膜の安定性を改良することが望ましい。
【0008】
ブリッジング又は架橋反応を介しての機械的な安定化は、ポリマー技術の分野で既に公知である。このことについて、しかしながら、ポリマー自体が十分な機械的強度を示したとしても、プロトン伝導性を与える強酸を含浸/ドーピングするために、ポリマーの機械的特性が不十分なレベルまで低下し得るという問題が存在する。
【0009】
酸含有ポリアゾール膜の機械的安定性を改良するための第1のアプローチを、特許文献3(WO00/44816)及び特許文献4(WO02/070592)に見出すことができる。このことについて、最初にポリアゾールポリマーの溶液が、非プロトン性、極性、有機溶媒内で製造され、そして架橋剤(bridging agent)がこの溶液に加えられる。フィルムを形成した後、有機溶媒が除去され、そして架橋反応(bridging reaction)が行われる。次にフィルムが、強酸でドープされ、そして使用される。得られた酸含有ポリアゾール膜は、非架橋の酸含有ポリアゾール膜と比較して、機械的な安定性が改良されており、そして良好な伝導性を達成している。
【0010】
更に、ベンズオキサジンを使用してポリアゾールポリマーを架橋することが、特許文献5(US2009/0042093A1)、特許文献6(US2009/0068543A1)、特許文献7(EP2036910A1)、特許文献8(EP2048183A1)、特許文献9(EP2056390A1)、特許文献10(2058321A1)、特許文献11(EP2055706A1)、特許文献12(US2009/0117440A1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO96/13872
【特許文献2】WO02/088219
【特許文献3】WO00/44816
【特許文献4】WO02/070592
【特許文献5】US2009/0042093A1
【特許文献6】US2009/0068543A1
【特許文献7】EP2036910A1
【特許文献8】EP2048183A1
【特許文献9】EP2056390A1
【特許文献10】2058321A1
【特許文献11】EP2055706A1
【特許文献12】US2009/0117440A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ポリアゾールポリマーのブリッジング又は架橋は、これまでの方法によって可能ではあるが、しかしながら、非プロトン性、極性、有機溶媒を使用することから、新しい制限がなされる。特に、高分子量ポリアゾールポリマーは、上述した有機溶媒に、限られた範囲でしか溶解できず、又は不溶性であり、従って処理することができない。
【0013】
従って、本発明の目的は、ポリアゾールポリマーに基く、機械的に安定させる酸−含有ポリアゾール膜のより良好な代替を見出すことにある。更に、酸−含有ポリアゾール膜の(特に伝導性についての)良好な特性プロフィールを維持するべきであり、又は改良されるべきである。更に、比較的単純な方法で、及び可能な限り費用をかけることなく、膜を製造するべきである。
【0014】
上記の関連で直接的に得られるこれらの目的及び他の目的は、請求項1の特徴の全てを備えた方法によって達成される。誘導される従属項は、本方法の特定の変形例である。更に、本方法によって得ることができる膜、及び膜電極アセンブリ、及びこれらを燃料電池に使用する方法が保護される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、機械的に安定なポリアゾールポリマーを製造するための方法であって、以下の工程
a)
i)芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミンカルボン酸を反応させることによって得ることができるものを除く、少なくとも1つのアミノ基を繰り返し単位中に有するポリアゾール、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化剤、
を含み、且つ膜中、安定化剤の合計含有量は、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、及び特に0.5〜10質量%の範囲であり、及び安定化剤の合計量は、膜中に存在するポリアゾールに対して、好ましくは20〜80モル%である膜を供給する工程、
b)膜中の安定化反応を、直ちに、又は次の膜、特にPEM燃料電池、例えば膜電極アセンブリ内の膜の処理工程で行う工程、
c)適切であれば、追加的に、工程b)に従い得られた膜を、強酸でドープするか、又は存在する水を更に除去することによって、存在する酸を濃縮する工程、
を含み、且つ前記安定化剤が、少なくとも1種のオキサジン−ベースの化合物を含むことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した方法を使用して、安定化された高分子量ポリアゾールポリマーに基づく酸−含有、プロトン−伝道性ポリアゾール膜を得ることが初めて可能になる。従来の公知の高分子量ポリアゾールポリマーは、安定化されておらず;ブリッジング及び/又は架橋で変性された、従来の公知のポリアゾールポリマーは、高分子量ポリアゾールポリマーを含んでいない。
【0017】
更に、上述した方法を使用して、プロトン伝導性を損なうことなく、弾性の係数が改良された、酸−含有、プロトン−伝道性、高分子量ポリアゾールポリマーを得ることが初めて可能になる。両方の特性は、ポリマー電解質膜を燃料電池のために使用するために、非常に重要である。この方法によって得ることができる電解質膜は、PBIの形状を成す電解質膜が単体で使用された場合に観察される問題(例えば高温での機械的、及び化学的な不安定性に起因するピンホール現象)を低減する。
【0018】
最後に、本発明に従う方法は、比較的単純な方法で、大規模にそして費用をかけることなく行うことができる。
【0019】
第1の好ましい変形例に従えば、本発明の方法は、以下の工程
a1−a)繰り返し単位中に、少なくとも1つのアミノ基を有するポリアゾールを含むフィルムを製造する工程、
a1−b)工程a)からのフィルムを、(i)少なくとも1種の強酸、及び(ii)少なくとも1種の安定化剤を含む溶液で処理する工程、
を含み、且つ前記溶液中の安定化反応物質の合計含有量が、0.01〜30質量%の範囲である。
【0020】
第1の好ましい変形例に従えば、本発明の方法は、以下の工程、
a2−a)
i)繰り返し単位中に、少なくとも1個のアミノ基を有するポリアゾール、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化剤、
を含み、且つ膜中の安定化剤の合計含有量が、0.01〜30質量%の範囲である溶液を製造する工程、
a2−b)工程a−1)の溶液を使用して、膜を製造する工程、
を含む。
【0021】
ポリアゾールを含む膜
本発明について、ポリアゾールは、ポリマー中の繰り返し単位が、好ましくは少なくとも1個の窒素原子を有する、少なくとも1個の芳香族環を含むポリマーを意味すると理解される。芳香族環は、好ましくは、1〜3個の窒素原子を有する、5−員、又は6−員の環で、該環は他の環、特に他の芳香族環とヒューズ(縮合又は融合)していても良い。このことについて、個々の窒素ヘテロ原子は、酸素、リン及び/又は硫黄原子で置き換えられていても良い。ヘテロ環式芳香族環は、好ましくはポリマーバックボーン中に存在する;しかしながら、側鎖中に存在することもできる。不飽和の5−員、又は6−員の芳香族単位(芳香族単位は、1〜5個の窒素原子、又は窒素原子に加え、1個以上のヘテロ原子を中心部分に含む)を繰り返し単位内に有するアルカリ性ポリマーが特に好ましい。
【0022】
本発明に従うポリアゾールは、少なくとも1つのアミノ基を、繰り返し単位中に有する。このことについて、アミノ基は、第1級アミノ基(NH2基)、第2級アミノ基(NH基)、又は第3級アミノ基(これらの基は、環式、任意に芳香の族構造の一部でも、又は芳香族単位上の置換基の一部でもある)として存在することができる。
【0023】
繰り返し単位内のアミノ基のために、ポリマーは、アルカリ性であり、及び繰り返し単位は、好ましくは、アミノ基を介して安定化反応物質と反応する。安定化剤に対する反応性について、繰り返し単位中のアミノ基は、好ましくは、第1級、又は第2級アミノ基、特に好ましくは(有利なことにはアゾール繰り返し単位の中心部分に属する)環式第2級アミノ基である。
【0024】
ポリアゾールを含むフィルムの製造は、既に公知である。この製造は、例えば、WO2004/024797に記載されたように行われ、そしてこれは
A)1種以上の芳香族テトラアミノ化合物を、(カルボン酸モノマーにつき、少なくとも2個の酸基を含む)1種以上の芳香族カルボン酸又はそのエステルと混合するか、又は1種以上の芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を、ポリリン酸中で混合し、溶液及び/又は分散物を形成する工程、
B)工程A)に従う混合物を使用して、支持体に層を施す工程、
C)工程B)に従い得られる平坦な構造物/層を、不活性ガスの存在下に、350℃以下の温度にまで、好ましくは280℃以下の温度にまで加熱し、ポリアゾールポリマーを形成する工程、
D)工程C)で形成されたポリマーフィルムを(自立可能になるまで)処理する工程、
E)工程D)で形成されたポリマーフィルムを支持体から取り外す工程、
F)存在するポリリン酸、又はリン酸を除去し、そして乾燥させる工程、
を含む。
【0025】
しかしながら、芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミンカルボン酸、例えばAB−PBI及びその誘導体を反応させることによって得られるポリアゾールは、本発明に使用されるべきではない。
i)芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミンカルボン酸を反応させることによって得ることができるものを除く、少なくとも1つのアミノ基を繰り返し単位中に有するポリアゾール、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化剤、
を含み、且つ膜中、安定化剤の合計含有量は、0.01〜30質量%である膜が、類似した方法で、例えば、成分を、適切な溶媒中に溶解させ、そして膜をキャスト(流し込み成形)することによって得ることができる。
【0026】
本発明に従い使用される芳香族、及び複素環式テトラアミノ化合物は、特に、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメチルメタン、及び3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルジメシチルメタン、及びその塩、特にそのモノヒドロクロリド、ジヒドロクロリド、トリヒドロクロリド、及びテトラヒロドクロリド誘導体を含む。
【0027】
本発明に従い使用される芳香族カルボン酸は、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸、及びテトラカルボン酸、又はこれらのエステル、又はこれらの無水物、又はこれらの酸クロリドである。芳香族カルボン酸という用語は、同様に、複素環式芳香族カルボン酸も含む。好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テトラフタル酸、フタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシテトラフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミノイソフタル酸、5−N,N−ジメチルアミオイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ジヒロドキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、2,2−ビス−(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4−カルボキシシナミック酸、又はそのC1−C20アルキルエステル、又はC5−C12アリールエステル、又はその酸無水物又はその酸塩化物である。芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸又はそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物は、好ましくは1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、(2−カルボキシフェニル)イミノジアセチック酸、3,5,3’−ビフェニルトリカルボン酸又は3,5,4’−ビフェニルトリカルボン酸である。
【0028】
芳香族テトラカルボン酸、又はそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物は、3,5,3’,5’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、又は1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸が好ましい。
【0029】
本発明に従い使用する複素環式芳香族カルボン酸は、複素環式芳香族ジカルボン酸、及びトリカルボン酸及びテトラカルボン酸、又はそのエステル又はその無水物である。複素環式芳香族カルボン酸は、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄又はリン原子を芳香族基中に有する、芳香族系を意味すると理解される。好ましくは、これは、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、又はベンズイミダゾール−5,6−ジカルボン酸及びそのC1−C20アルキルエステル又はC5−C12アリールエステル又はその酸無水物又はその酸塩化物である。
【0030】
トリカルボン酸又はテトラカルボン酸の含有量は、(使用するジカルボン酸に対して、)0〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に0.5〜10モル%である。
【0031】
少なくとも2種の芳香族カルボン酸の混合物が工程A)で使用されることが好ましい。芳香族カルボン酸に加え、複素環式芳香族カルボン酸をも含む混合物が使用されることが特に好ましい。芳香族カルボン酸の複素環式芳香族カルボン酸に対する混合割合は、1:99〜99:1の範囲、好ましくは1:50〜50:1の範囲である。
【0032】
これらの混合物は、特に、N−複素環式芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸の混合物である。これらの例(該例に限定されない)は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5−ヒドロキシテレフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、4,6−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシフタル酸、2,4−ジヒドロキシフタル酸、3,4−ジヒドロキシフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカボン酸である。
【0033】
工程A)で使用するポリリン酸は、例えばRiedel−de Haenから入手可能な通常のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+2n3n+1(n>1)は、通常、P25として(酸滴定により)計算して、少なくとも83%の濃度を有している。モノマーの溶液の替わりに、分散物(分散液)/懸濁物(懸濁液)を製造することも可能である。
【0034】
工程A)で製造された混合物は、ポリリン酸の全モノマーの合計に対する質量割合が、1:10000〜10000:1、好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0035】
工程B)に従う層処方(layer formation)は、ポリマーフィルム製造の従来技術では公知である(それ自身は公知の)方法(注ぎ、吹きつけ、ドクターブレードでの塗布)で行われる。この条件下では不活性と考えられる全ての支持体が、支持体(support)として適切である。しかしながら、これらの不活性支持体の他に、他の支持体、例えば工程B)で形成された層と結合を形成し、及び積層体を構成するポリマーフィルム、織布、及び不織布も適切である。粘度を調整するために、必要であれば、リン酸(濃度、リン酸、85%)を溶液に加えることができる。従って、粘度を所望の値に調節することができ、そして膜の形成が容易化される。
【0036】
工程B)に従い製造された層は、次の用途に適応された厚さを有し、そして制限させるものではない。通常、形成された層は、厚さが1〜5000μm、好ましくは1〜3500μm、特に1〜100μmである。
【0037】
工程C)で形成され、及びポリアゾールに基づくポリマーは、一般式(I)及び/又は(III)及び/又は(IV)及び/又は(V)及び/又は(VI)及び/又は(VII)及び/又は(VIII)及び/又は(IX)及び/又は(X)及び/又は(XI)及び/又は(XII)及び/又は(XIII)及び/又は(XIV):
【0038】
【化1−1】

【0039】
【化1−2】

【0040】
【化1−3】

【0041】
(但し、
Arが、同一又は異なり、単環式(mononuclear)又は多環式(複環式:polynuclear)であって良く、そして4価の(tetravalent)芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar1が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価の(bivalent)芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar2が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価又は3価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar3が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが3価の(trivalent)芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar4が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが3価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar5が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが4価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar6が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar7が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar8が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そして3価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar9が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価又は3価又は4価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar10が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価又は3価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Ar11が、同一又は異なり、単環式又は多環式であって良く、そしてそれぞれが2価の芳香族又は複素環式芳香族基であり、
Xが、同一又は異なり、そして酸素、硫黄、又はアミノ基(これらは、水素原子、1〜20個の炭素原子を有する基、好ましくは、枝分かれした、又は枝分かれしていないアルキル又はアルコキシ基、又はアリール基を更なる基として有する)であり、
Rが、同一又は異なり、そして水素、アルキル基、及び芳香族基であり、及び
n、mが、10以上の整数、好ましくは100以上の整数である)
の繰り返しアゾール単位を含む(但し、芳香俗及び/又は複素環式ジアミノカルボン酸を反応させることによって得ることができるものを除く)。
【0042】
好ましい芳香族又は複素環式芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナンスロリン、及びフェナントレン(これらは任意に、置換されていても良い)から誘導されるものである。
【0043】
この場合、Ar1、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11は、如何なる置換パターンを有していても良く、例えばフェニレンの場合、Ar1、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11は、オルト−フェニレン、メタ−フェニレン、及びパラ−フェニレンであっても良い。特に好ましい基は、ベンゼン及びビフェニレン(これらは、置換されていても良い)から誘導される。
【0044】
好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はi−プロピル及びt−ブチル基である。
【0045】
好ましい芳香族基は、フェニル又はナフチル基である。アルキル基及び芳香族基は置換が可能である。
【0046】
好ましい置換基は、ハロゲン原子、例えば、フッ素、アミノ基、ヒドロキシ基又は短鎖アルキル基、例えばメチル又はエチル基である。
【0047】
繰り返し単位内の官能基Xが同一である、式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールが好ましい。
【0048】
ポリアゾールは、原則として、(例えば、その官能基Xが異なる)異なる繰り返し単位を有していても良い。しかしながら、繰り返し単位内に同一の官能基Xだけが存在していることが好ましい。
【0049】
更に好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)及びポリ(テトラザピレン)である。
【0050】
本発明の他の実施の形態では、繰り返しアゾール単位を有するポリマーは、式(I)〜(XIV)の、互いに異なる少なくとも2つの単位を含むコポリマー又はブレンドである。ポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダムブロックコポリマー、周期コポリマー及び/又は交互するポリマーの状態であることが可能である。
【0051】
本発明の特に好ましい実施の形態では、繰り返しアゾール単位を含むポリマーは、式(I)及び/又は(II)の単位だけを含むポリアゾールである。
【0052】
ポリマー中の繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは10以上の整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰り返しアゾールを含む。
【0053】
本発明において、繰り返しベンズイミダゾール単位を含むポリマーが好ましい。最も適切(有用)なポリマーの幾つかの例は、繰り返しベンズイミダゾール単位を含み、そして以下の式によって表される:
【0054】
【化2−1】

【0055】
【化2−2】

【0056】
【化2−3】

【0057】
【化2−4】

【0058】
【化2−5】

【0059】
最後の式で、アゾール単位、及びフッソ化された部分(moieties)の両方は、互いに任意の順序で結合されていても良い。生成物は、ポリマー、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーであることが可能である。
【0060】
更に、n及びmは、それぞれ互いに独立して、上述した式中、10以上の整数、好ましくは100以上の整数である。
【0061】
本発明に従う手順は、原則として、分子量とは無関係に、任意のポリアゾールにとって適切である。しかしながら、他の方法では得ることができない、高分子量のポリアゾールを安定化させるために、特に適切であることがわかった。高分子量ポリアゾール、特にポリゼンズイミダゾールは、固有粘度として測定して、少なくとも1.8dl/g、好ましくは少なくとも2.0dl/g、特に好ましくは少なくとも2.5dl/gである高分子量によって特徴付けられる。上限は、好ましくは、最も高くて8.0dl/g、特に好ましくは最も高くて6.8dl/g、極めて好ましくは最も高くて6.5dl/gである。従って、分子量は、従来のポリベンズイミダゾールのものよりも、明確に高い(IV<1.1dl/g)。
【0062】
固有粘度の測定は、以下に記載するように行われる:この目的のために、ポリマーが最初に160℃で2時間、乾燥される。このように乾燥した100mgのポリマーを、次に100mlの濃縮した硫酸(少なくとも96質量%)に、80℃で4時間にわたり溶解した。この溶液から、固有粘度(inherent viscosity)、又は固有粘度(intrinsic viscosity)を、ISO3105(DIN51562、ASTMD2515)に従い、Ubbelode粘度計を使用して25℃で測定した。
【0063】
工程Aに従う混合物がトリカルボン酸、又はテトラカルボン酸をも含む場合、形成したポリマーの枝分かれ/架橋がバックボーンに沿って、これと共に達成される。このことは、機械的特性の改良に貢献する。
【0064】
本方法の一変形例では、オリゴマー及び/又はポリマーの形成は、工程A)からの混合物を、350℃以下、好ましくは280℃以下の温度に加熱することによって行われる。選択した温度、及び継続時間に依存して、工程C)を部分的、又は完全になくすことができる。この変形例は、好ましい高分子量ポリアゾールを含む、工程a)に必要とされるフィルムの製造にとっても適切である。
【0065】
更に、芳香族ジカルボン酸(又は複素環式芳香族ジカルボン酸)、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4,6−ジヒロドキシイソフタル酸、2,6−ジヒドロキシイソフタル酸、ジフェン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4−トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、ピリジン−3,5−ジカルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸、ピリジン−2,4−ジカルボン酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピラゾールジカルボン酸、2,6−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピラジンジカルボン酸を使用する場合、工程C)の温度−又はオリゴマー及び/又はポリマーの形成が、工程A)で既に発生することを所望する場合、300℃以下の範囲、好ましくは100℃〜250℃の範囲が好ましいことがわかった。
【0066】
工程b)に必要とされるフィルムを製造するための、工程C)に従い製造されるポリマー層の処理は、幾つかの方法で行うことができる。
【0067】
一変形例(変形例A)では、本ポリリン酸、又はリン酸は、(更なる処理に干渉しないので)膜中に残る。この場合、工程C)に従い製造されたポリマー層の処理は、層が、意図する用途のために十分な強度を示すようになるまで、水分の存在下、所定の温度で、及び十分な期間行われる。処理は、膜が自立性になり、膜が支持体から、なんら損傷を受けることなく取外すことができる(工程E)範囲で行うことができる。工程D)及びE)は、同時に、又は他方の直後に行うこともできる。更に、工程D)及びE)を、工程b)、c)及び任意にd)の手段と結合することが可能である。例えば、工程D)での加水分解は、((i)少なくとも1種の強酸、及び(ii)少なくとも1種の安定化剤を含み、溶液中の安定化剤の合計含有量は、0.01〜30質量%の範囲である)溶液を使用して、工程C)に従い形成されたポリマーフィルムを処理することによって行っても良い。工程c)に従う安定化反応の実施は、熱的な乾燥、又は存在する酸の更なる濃縮と組合せても良い。
【0068】
工程D)でのポリマーフィルムの処理は、0℃を超え、及び150℃未満の温度、好ましくは、10℃〜120℃の範囲の温度、特に室温(20℃)〜90℃の温度で、水分、又は水、及び/又は蒸気、及び/又は85%以下の水含有リン酸の存在下に行われる。処理は、好ましくは、標準圧力で行われるが、しかしながら、圧力の作用下に行うこともできる。処理が、十分な水分の存在下に行なわれ、(低分子量ポリリン酸、及び/又はリン酸を形成する部分的な加水分解によって、)存在するポリリン酸が、ポリマーフィルムの固体化に貢献することが重要である。加水分解工程のために、ゾル−ゲル転移が行われ、これは膜の特定の形状に関与する。
【0069】
工程D)でのポリリン酸の部分的な加水分解は、ポリマーフィルムの固化をもたらし、ポリマーフィルムが自立性(self-supporting)になり、そして更に層厚さの減少につながる。
【0070】
工程B)に従うポリリン酸層内に存在する分子内、及び分子内構造は、工程C)で、形成されたポリマーフィルムの良好な特性に関与する秩序膜(ordered membrance)形成をもたらす。
【0071】
工程D)に従う処理のための上限温度は、代表例では180℃である。水分の非常に短い作用で、例えば極度に過熱された蒸気から、この蒸気はより熱くなることもできる。処理の継続時間は、温度の上限にとって重要である。
【0072】
部分的な加水分解(工程D)は、気候室内で行うこともでき、そして加水分解を、規定された水分の作用下に制御することができる。このことについて、水分(湿分)を、温度、又はこれに接する周囲領域、例えばガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素又は他の適切なガス又は蒸気の飽和状態により設定することができる。処理の期間は、前述のように選ばれたパラメーターに依存する。
【0073】
更に、処理の期間は、膜の厚さに依存する。
【0074】
典型的には、処理の期間は、例えば過熱蒸気を作用させて、数秒〜数分であり、又は例えば室温で開放された空気内で、及び比較的低い湿度で、数日間までである。好ましくは、処理の期間は、10秒〜300時間、特に1分〜200時間である。
【0075】
室温(20℃)で、及び相対湿度が40〜80%の環境の空気で、部分的な加水分解が行われる場合、処理の期間は、1〜200時間である。
【0076】
工程D)に従い得られる膜は、膜が自立性であるように、すなわち、工程E)に従い、膜を支持体から、何ら損傷を与えることなく取外すことができるように形成することができ、そして適切であれば、更に直接的に加工される。
【0077】
工程C)に従い得られる、支持体上のポリマーフィルムが、例えば複合膜へと更に処理される場合、工程D)を部分的に、又は完全になくすことができる。
【0078】
工程C)に従い存在するポリリン酸又はリン酸が、膜中に残る場合(変形例A)、工程b)でのフィルムの処理は、工程D)に類似して加水分解溶液中で行っても良い。このことについて、膜中に存在するポリリン酸又はリン酸は、(i)少なくとも1種の強酸、及び(ii)少なくとも1種の安定化反応物質を含む溶液によって、完全に、又は少なくとも部分的に置き換えられる。工程c)に従う安定化反応は、加水分解溶液内で、又は後に、好ましくは直後に行うことができる。膜の安定性に依存して、加水分解溶液中での処理は、支持体上で行うことができ、又は他に、事前に支持体を除去し、工程E)を任意になくすか、又は予め行うことができる。
【0079】
この変形例は、本発明の目的でもある。
【0080】
他の変形例(変形例B)では、本発明のポリリン酸、又はリン酸は、膜から除去される。この目的のために、工程C)に従い製造されたポリマー層の処理は、水分の存在下に、所定の温度で、及び層が更なる処理のために十分な強度を示すのに十分な期間、行われる。従って、工程D)での加水分解、及び工程E)での取り外しは同時に行われても良い。存在するポリリン酸、又はリン酸が、完全に除去され、そして(強酸を含む新鮮な溶液が、工程b)の時に、後の時点で再度導入されるので、)工程b)での処理のために存在するべきではない場合に、この加水分解の単純化は、特に可能である。
【0081】
ポリマーフィルム中になお残っているポリリン酸、又はリン酸が、工程F)に従い除去されるべきである場合、このことは、室温(20℃)〜処理溶液の(標準圧での)沸点の範囲の温度で行うことができる。
【0082】
本発明について、及び工程F)について、室温(すなわち20℃)で液体であり、アルコール、ケトン、アルカン(脂肪族及び脂環式)、エーテル(脂肪族及び脂環式)、グリコール、エステル、カルボン酸(ここで群の上述した膜は、ハロゲン化されても良い)、水及びこれらの混合物から成る群から選ばれる溶媒が、処理溶液として使用される。
【0083】
好ましくは、C1−C10アルコール、C2−C5ケトン、C1−C10アルカン(脂肪族、及び脂環式)、C2−C6エーテル(脂肪族及び脂環式)、C2−C5エステル、C1−C3カルボン酸、ジクロロメタン、水、及びこれらの混合物が使用される。
【0084】
工程F)で導入される処理溶液は、次に再度、除去される。このことは、好ましくは乾燥によって行われ、温度及び周囲圧力パラメーターが、処理溶液の蒸気分圧の関数として選択される。通常、乾燥工程は、標準圧力で、及び20℃〜200℃の温度で行われる。バキュオ内で、温和な乾燥が行われても良い。乾燥工程の替わりに、膜は、ダブ(たたくこと)されても良く、そして従って、過剰な処理液体が除去されても良い。順序は重要(臨界的)でない。
【0085】
フィルム含有ポリアゾールの製造は、上述した方法の変形例によってでも行うことができる。この目的のために、以下の工程が行われる:
i)1種以上の芳香族テトラアミノ化合物を、1種以上の芳香族カルボン酸、又はそのエステル(これらは、カルボン酸モノマー当たり、少なくとも2個の酸性基を含む)、又は1種以上の芳香族、及び/又は複素環式ジアミノカルボン酸と溶融物中で、350℃以下までの温度、好ましくは300℃以下までの温度で反応させる工程、
ii)工程i)に従い得られた固体プレポリマーを、ポリリン酸に溶解させる工程、
iii)工程ii)に従い得られる溶液を、不活性ガスの存在下に、300℃以下までの温度、好ましくは280℃以下までの温度に加熱し、溶解したポリアゾールポリマーを形成する工程、
iv)工程iii)に従うポリアゾールポリマーの溶液を使用して、膜を支持体上に形成する工程、及び
v)工程iv)で形成された膜を、該膜が自立性になるまで処理する工程。
【0086】
ポリアゾール及び更なるブレンド成分を含む膜
上述した、好ましい高分子量ポリアゾールに加え、1種以上の好ましい高分子量のポリアゾールと他のポリマーとのブレンドを使用することもできる。この場合、ブレンド成分の機能は、基本的に、機械的特性を改良し、そして材料のコストを低減するものである。ここで、ドイツ特許出願No.10052242.4に記載されているように、ポリエーテルスルホンが好ましいブレンドである。
【0087】
ブレンド成分として使用可能な好ましいポリマーは、特に、ポリオレフィン、例えばポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシレン)、ポリアリールメチレン、ポリアルメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、PTFEと、ヘキサフルオロプロピレンの、ペルフルオロプロピルビニルエーテルの、トリフルオロニトロソメタンの、スルホニルフルオリドビニルエーテルの、カルバルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリアクロライン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、シクロオレフィン性コポリマー、特にノルボルネンのもの;
バックボーンにC−O結合を有するポリマー、例えばポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキシド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒロドフラン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、特にポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
バックボーンにC−S−結合を有するポリマー、例えばポリスルフィッドエーテル、ポリフェニレンスルフィッド、ポリエーテルスルホン;
バックボーン中にC−N結合を有するポリマー、例えばポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリアニリン、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアジン;
液体結晶性ポリマー、特にVectra、及び無機ポリマー、例えばポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン、ポリフォスファーゼン、及びポリチアジルを含む。
【0088】
100℃を超える温度で、長期間の耐用年限を有する燃料電池に適用するために、ガラス転移温度又はVicat軟化点VST/A/50が、少なくとも100℃、好ましくは150℃、及び極めて好ましくは少なくとも180℃のブレンドポリマーが好ましい。ここで、Vicat軟化点VST/A/50が180℃〜230℃のポリスルホンが好ましい。
【0089】
好ましいポリマーは、ポリスルホン、特に、バックボーン中に芳香族基を含むポリスルホンを含む。本発明の特定の局面では、好ましいポリスルホン、及びポリエーテルスルホンは、溶融体積速度MVR300/21.6が、ISO 1133に従い測定して、40cm3/10min以下、特に30cm3/10min以下、及び特に好ましくは20cm3/10min以下である。
【0090】
ポリアゾール及び更なる添加剤を含む膜
アプリケーション技術において将来的な特性(future property)を改良するために、なお更なる充填剤、特にプロトン伝導性充填剤を、好ましくは高分子量のポリアゾール、又は酸−含有ポリアゾール膜に加えても良い。
【0091】
プロトン伝導性充填剤の非限定的な例は、以下のものである、
サルフェート、例えばCsHSO4、Fe(SO42、(NH43H(SO42、LiHSO4、NaHSO4、KHSO4、RbSO4、LiN25SO4、NH4HSO4
フォスフェイト、例えばZr3(PO44、Zr(HPO42、HZr2(PO43、UO2PO4.3H2O、H8UO2PO4、Ce(HPO42、Ti(HPO42、KH2PO4、NaH2PO4、LiH2PO4、NH42PO4、CsH2PO4、CaHPO4、MgHPO4、HSbP28、HSb3214、H5Sb5220
多塩基酸(polyacid)例えば、H3PW1240.nH2O(n=21−29)、H3SiW1240.nH2O(n=21−29)、HxWO3、HSbWO6、H3PMo1240、H2Sb411、HTaWO6、HNbO3、HTiNbO5、HTiTaO5、HSbTeO6、H5Ti49、HSbO3、H2MoO4
亜セレン酸塩及びヒ化物、例えば(NH43H(SeO42、UO2AsO4、(NH43H(SeO42、KH2AsO4、Cs3H(SeO42、Rb3H(SeO42
リン化物、例えばZrP、TiP、HfP、
酸化物、例えばAl23、Sb25、ThO2、SnO2、ZrO2、MoO3
シリケート、例えば例えばゼオライト、ゼオライト(NH4+)、フィロシリケート、テクトシリケート、H−ナトロライト、H−モルデナイト、NH4−アナルシン、NH4−ソダライト、NH4−ガレート、H−モントモリロナイト、オルトケイ酸Si(OH)4の他の濃縮(縮合)生成物、及びその塩、及びエステル、一般式H3Si−(O−SiH2−)n−O−SiH3のポリシロキサン、特に他のクレイ材料、例えばモントモリロナイト、ベルトナイト、カオリナイト、ピロフィリット、タルクム、クロライト、ムスコビト、マイカ、スメクタイト、ハロサイト、ベルミクライト、及びヒドロタルサイト、
酸、例えばHClO4、SbF5
充填剤、カーバイド、特にSiC、Si34、ファイバー、特にガラスファイバー、ガラス粉、及び/又はポリマーファイバー、好ましくはポリアゾールに基づくもの、及び部分的に架橋したもの。
【0092】
これらの添加剤は、通常の量で、プロトン−伝導性ポリマー膜中に含めることができるが、しかしながら、膜の積極的な特性、例えば大きな伝導性、長い耐用年数、及び高い機械的安定性は、添加剤を過度の量で加えることによって、過剰に影響されるべきではない。膜は、通常80質量%未満、好ましくは50質量%未満、及び特に好ましくは20質量%未満の添加剤を含む。これに関して、添加剤は、異なる粒子形状、及び粒子径、又は混合物で存在して良く、しかしながら、ナノ粒子の状態で存在することが特に好ましい。
【0093】
安定化溶液及び反応
以下の
i)繰り返し単位中に少なくとも1個のアミノ基を有するポリアゾール(芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミノカルボン酸を反応させて得ることができるものを除く)、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化反応物質(膜中の安定化反応物質の合計量は、0.01〜30質量%であり、好ましくは0.1〜20質量%、及び特に好ましくは0.5〜10質量%であり、及び安定化反応物質の合計量は、膜中に存在するポリアゾールに対して、20〜80モル%の範囲である)、
を含む膜の安定化反応が、工程b)で行われる。
【0094】
このことについて、適切な安定化剤(安定化反応物質)は、特に、好ましくは高分子量のポリアゾールを機械的に安定化させることができる、任意の化合物を含む。ポリマー電解質膜として、このような(好ましくは、高分子量ポリアゾールに基づく)安定化した酸−含有ポリアゾール膜は、化学的に、及び物理的に、より安定であり、そしてこのようなポリマー電解質膜を使用した高温燃料電池の運転を改良可能にする。
【0095】
安定化剤として使用される有機化合物は、溶液中に存在する強酸に対して十分な安定性を示すべきである。更に、これらは、強酸中への十分な溶解度を示し、工程b)での溶液中の安定化反応物質の合計含有量が、通常、0.01〜20質量%の範囲、好ましくは0.1〜15質量%の範囲、好ましくは0.25〜10質量%の範囲、特に1〜5質量%の範囲になるべきである。安定化反応物質が、強酸中への十分な溶解度を示さない場合、更なる不活性の可溶化剤を最小限の量で加えても良い。
【0096】
概して、しかしながら、溶解度は、便利なことには、工程b)での溶液が、安定化剤の合計含有量を、フィルム中に存在するポリアゾールに対して(ポリアゾールポリマーの繰り返し単位につき)0.01〜100モル%の範囲、好ましくは10〜80モル%、特に15〜65モル%の範囲に許容するように十分であるべきである。
【0097】
選択した安定化剤の割合が低過ぎる場合、ポリマー膜の機械的強度は十分には改良されない;選択した割合が高過ぎる場合、膜は脆弱で、そして膜の特性プロフィールは、不十分になる。
【0098】
更に、架橋反応中に電解質を含めることが可能である。このことについて、安定化剤は、電解質と部分的又は完全に反応することができ、又は後者と相互作用することができる。この反応又は相互作用によって、膜の、及びリン酸環境に対する機械的及び/又は化学的安定化が、同様に達成される。このことについて、安定化反応に電解質を含めることで、酸の強度を低減することができる。
【0099】
安定化した膜のプロトン伝導性は、160℃で、便利なことには30〜220mS/cm、好ましくは少なくとも40〜200mS/cm、特に好ましくは50〜200mS/cmである。
【0100】
プロトン伝導性は、インピーダンス分光法(Zahner IM5又はIM6スペクトロメーター)及び4ポイント測定セルを使用して測定される。このことについて、特定の手順を以下に記載する:
サンプルを製造するために、約3.5×7cmの大きさの部分を所定の方法で切り取り、そして膜のサンプルを、500gのロール形状の錘を使用して絞り、浮遊する酸を除去した。サンプルの厚さは、タイプ“Absolute Digmatic”のMitutoyo測定装置を使用して、3箇所を有利に測定し、そして平均した(サンプルストリップの始め、中央、及び終わり部分)。図1に示すように、サンプルを測定セル中に、都合良く固定した。
【0101】
数字は以下の内容を示す:
(1):I-
(3):U+
(5):U-
(7):I+
(9):コネクター
(11):Ptワイヤー
(13):ガスケット
(15):膜
(17):Ptプレート
【0102】
テストセルのスクリューは、好ましくはfinger−tightened(指締め)であり、そしてセルは、有利なことには、制御炉内に移され、制御炉内で表1に従う温度−頻度プログラムを行った。
【0103】
【表1】

【0104】
オーブンプログラムを開始し、そして4−ポイント乾燥−測定セルを有するZahner−Elektrik impedance spectrometer IM6を使用して、20℃から160℃で、及び逆に、160℃から20℃に、好ましくは20℃のインクレメント(増加)で、測定の前に有利に採られるドウェル時間(滞留時間)10分で、インピーダンススペクトルを測定した。スペクトルを保存し、そして好ましくは文献から公知のBode and Niquist法に従い評価した。ここで、以下の式を使用してプロトン伝導性を評価した:
【0105】
【数1】

【0106】
I(接触の間隔)=2cm、b(膜の幅)=3.5cm、d=膜の厚さ(cm)、R=測定した抵抗(オーム)
【0107】
本発明に従い、安定化剤は、少なくとも1種のオキサジン−ベースの化合物を含む。オキサジンは、1つの酸素及び1つの窒素を含む複素環式化合物である。ヘテロ原子の相対位置、及び二重結合の相対位置に依存して、多くの異性体が存在する。好ましい構造を以下に示す。
【0108】
【化3】

【0109】
「オキサジンベースの化合物」という用語は、少なくとも1種のオキサジン部分(moity)を含む化合物、好ましくは構造(a)〜(h)を有するもの、又は上述したオキサジン部分、好ましくは(a)〜(h)を有するものジヒドロ誘導体を含む化合物を意味する。
【0110】
ベンズオキサジン−ベース化合物が、本発明に好ましい。
【0111】
特に適切なベンズオキサジン−ベースの化合物は、以下の式1(処方1)によって表される第1のベンズオキサジン−ベースのモノマー及び/又は以下の式2(処方2)によって表される第2のベンズオキサジン−ベースのモノマー及び/又はこれらのポリマーである。
【0112】
【化4】

【0113】
ここで、
1が、水素、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、又は置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はシアノ基であり;
2が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC7〜C20アリールアルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C20ヘテロアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環基、置換された又は置換されていないC5〜C20炭素環アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、又は置換された又は置換されていないC3〜C20ヘテロ環アルキル基であり;
3が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニレン基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリーレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、又は−SO2−である。
【0114】
第1のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、好ましくは(電解質膜を形成するために使用される)ポリマーマトリックスを形成するためのモノマーとして使用され、そして第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、電解質膜が形成される時に、好ましくは添加剤として使用される。
【0115】
式1及び2内で、R2は、好ましくはフェニル基、−CH2−CH=CH2、又は以下の式、
【0116】
【化5】

によって表される基である。
【0117】
式2内で、R3は、好ましくは−C(CH32−、−C(CF32−、−C(=O)−、−SO2−、−CH2−、−C(CCl3)−、−CH(CH3)−、又は−CH(CF3)−であり、これにより、第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、2個のベンズオキサジン環を含む、2官能性のベンズオキサジン−ベースの化合物になる。
【0118】
本発明の他の好ましい実施の形態に従えば、R3は、以下の式によって表される基であり、これにより、第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、3個のベンズオキサジン環を含む、3官能性のベンズオキサジン−ベースの化合物である。
【0119】
【化6】

【0120】
式1(処方1)の第1のベンズオキサジン−ベースのモノマーの、特に好ましい例は、以下の式5から15によって表される化合物を含む。
【0121】
【化7】

【0122】
式2の第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーの特に好ましい例は、以下の式16〜20によって表される化合物を含む。
【0123】
【化8】

【0124】
ここで、R2は、フェニル基、−CH2−CH=CH2、又は以下の式、
【0125】
【化9】

によって表される基である。
【0126】
第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーの量は、第1のベンズオキサジン−ベースのモノマーを100質量部として、好ましくは0.5〜50質量部の範囲、及びより好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0127】
この種のポリベンズオキサジン−ベースの化合物についての更なる詳細は、US2009/0042093A1及びEP2048183A1に記載されている。
【0128】
更なる特に適切なベンズオキサジン−ベースの化合物は、以下の式1(処方1)によって表される。
【0129】
【化10】

【0130】
ここで、
1及びR2が、それぞれ独立して、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、又は以下の式によって表される基であり、
【0131】
【化11】

ここで、
3が、水素原子、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6〜C20アリール基、ハロゲン化されたC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、又はハロゲン化されたC1〜C20ヘテロ環基である。
【0132】
好ましいリン含有ベンズオキサジン−ベースのモノマーの群は、式2〜4によって表される化合物を含む。
【0133】
【化12】

【0134】
ここで、
2が、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C6−C10アリール基、又はC6−C10アリールオキシ基であり、及び
【0135】
【化13】

で、ここで、R4、及びR5が、C6−C10アリール基である。
【0136】
式2〜4のR3は、以下の式で表される群から選ばれる。
【0137】
【化14−1】

【0138】
【化14−2】

【0139】
式2〜4中、R3が、フッ素で置換されたフェニル基の場合。
【0140】
好ましくは、式3は、式5又は6によって表される化合物である。
【0141】
【化15】

【0142】
ここで、式5及び6のR3は、以下の式によって表される群から選ばれる。
【0143】
【化16−1】

【0144】
【化16−2】

【0145】
好ましくは、式4によって表される化合物は、式7によって表される化合物である。
【0146】
【化17】

【0147】
3は、好ましくは以下の式によって表される群から選ばれる。
【0148】
【化18】

【0149】
リン含有ベンズオキサジン−ベースのモノマーの、特に好ましい例は、式8〜14によって表される化合物を含む。
【0150】
【化19−1】

【0151】
【化19−2】

【0152】
以下に、本発明のこの実施の形態に従う式1によって表される、リン含有ベンズオキサジン−ベースのモノマーを製造する方法を説明する。例えば、式2、5〜7によって表される化合物が記載されるが、しかし同様の方法で、他の化合物を合成することができると理解される。
【0153】
以下の反応スキームを参照して、式2、5〜7によって表されるリン含有ベンズオキサジン−ベースのモノマーは、リン含有フェノールベースの化合物、アミン化合物、及びp−ホルムアルデヒドを、溶媒と一緒に、又は溶媒なしに加熱し、混合物を還流させ、及び生成物を後処理することによって製造することができる。
【0154】
反応スキーム1
【0155】
【化20】

【0156】
ここで、反応スキーム1は、好ましくは、式2、5〜7で定義された、以下の式によって表される群から選ばれる。
【0157】
【化21】

【0158】
好ましい溶媒は、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFを含む。好ましい加熱温度は、50〜90℃の範囲である。最も好ましくは、溶媒は、還流される温度に調整される。
【0159】
反応スキーム1で使用されるリン含有フェノールベースの化合物は、4−ベンジルオキシフェノール及びホスホリルクロリドを使用することによって、保護反応(protection reaction)及び脱保護反応(deprotection reaction)によって、エステル化及び水素化を使用して、反応スキーム2に示したように製造することができる。
【0160】
【化22−1】

【0161】
【化22−2】

【0162】
エステル化は、塩基、例えばピリジン、及びトリエチルアミンの存在下に、還流条件下で、反応スキーム1に示したように行なわれることが好ましいが、エステル化条件は、これには限られない。
【0163】
水素化は、室温(20〜25℃)で、水素及び触媒、例えばPd/Cの存在下に、反応スキーム1に示したように行われることが好ましいが、水素化条件は、これには限られない。
【0164】
本発明の一実施の形態に従えば、式1によって表される、リン含有ベンズオキサジン−ベースのモノマーが使用される。
【0165】
ポリマーは、ベンズオキサジン−ベースのモノマーを溶媒に溶解させ、そして熱処理によって溶媒を重合することによって製造されることが好ましい。熱処理は、180〜250℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理温度が180℃未満の場合、重合の反応性は低減され得るものである。一方、温度が250℃よりも高い場合、副反応から生じた副生成物が収率を低下させ得る。所望により重合触媒を使用することができる。
【0166】
好ましい溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、及びジメチルアセトアミド(DMAc)であり、及び溶媒の量は、好ましくは、ベンズオキサジン−ベースのモノマー100質量部に対して、0.05〜65質量部の範囲から選ばれる。溶媒の量が0.05質量部未満の場合、膜の堅さは不十分になり得る。この一方で、溶媒の量が65質量部を超える場合、膜を形成する特性が低下し得る。
【0167】
そのような種類のポリベンズオキサジン−ベースの化合物についての更なる詳細は、US2009/0068543A1に記載されている。
【0168】
本発明の好ましい一実施の形態は、式1によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーを使用する。
【0169】
【化23】

【0170】
ここで、A、B、C、D及びEは炭素、又はA、B、C、D及びEの1個又は2個が窒素であり、及び他のものが炭素であり、及びR1及びR2は、相互に結合して環を形成し、該環は、C6−C10シクロアルキル基、C3−C10ヘテロアリール基、縮合(融合)したC3−C10ヘテロアリール基、C3−C10ヘテロ環基、又は縮合したC6−C10ヘテロ環基である。
【0171】
式1中のR1及びR2によって形成される環は、以下の式によって表されることが好ましい。
【0172】
【化24】

【0173】
ここで、R3〜R7が、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル基、C6〜C20アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、C6〜C10シクロアルキル基、C1〜C10ヘテロアリール基、又はC1〜C10ヘテロ環基であり、ここで、*aは、式1のR1に結合され、及び*bが、式1のR2に結合されている。
【0174】
式1の
【0175】
【化25】

は、好ましくは、以下の式によって表される。
【0176】
【化26】

【0177】
本発明の一実施の形態に従うベンズオキサジン−ベースのモノマーは、酸のための親和性を改良可能な構造を有している。本発明の一実施の形態に従えば、式10によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーが、燃料電池のための電極に加えられる場合、式10のベンズオキサジン−ベースのモノマーが、(燃料電池が運転されており、そして従って反応スキーム1に示したように酸を捕捉する間)開環重合によって、複数の第3級アミンを有する構造に変換される。
【0178】
反応スキーム1
【0179】
【化27】

【0180】
好ましいベンズオキサジン−ベースのモノマーは、式1A〜1Dによって表される
化合物の一つを含む。
【0181】
【化28】

【0182】
ここで、Rは、水素原子、又はC1−C10アルキル基である。
【0183】
【化29】

【0184】
ここで、式1A〜1Dの
【0185】
【化30】

は、好ましくは以下の式で表される。
【0186】
【化31】

【0187】
式1によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーは、出発材料として、ピリジン又はピリジン誘導体を有するフェノール化合物、アミン化合物、及びp−ホルムアルデヒドを使用して合成することができる。反応のための条件は限定されない。例えば、反応は、溶媒を使用することなく、80〜100℃の範囲の温度で、メルト法によって行うことができ、及び温度は置換基のタイプによって変化しても良い。
【0188】
以下に、式1によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーを製造する方法を説明する。例えば、式1A及び1Bによって表される化合物が記載されるが、しかし他の化合物も同様の態様で、合成することができる。
【0189】
最初に、式1A及び式1Bによって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーを、(8−ヒドロキシキノリン(A)、p−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)の混合物を、)溶媒を使用することなく加熱することによって製造することができ、又はこの混合物に溶媒を加え、混合物を還流し、そして反応スキーム2に示したように、生成物を後処理することによって製造することができる。
【0190】
【化32】

【0191】
ここで、Rが、水素原子又はC1−C10アルキル基であり、及び−Qが、
【0192】
【化33】

であり、これは以下の式の何れかであることが好ましい。
【0193】
【化34】

【0194】
溶媒が使用される場合、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、又はTHFを溶媒として使用することが好ましい。好ましい加熱温度は、50〜90℃の範囲であり、そして好ましくは約80℃である。最も好ましくは、溶媒が還流される温度に調節される。
【0195】
好ましいベンズオキサジン−ベースのモノマーは、式2〜21によって表される化合物を含む。
【0196】
【化35−1】

【0197】
【化35−2】

【0198】
【化35−3】

【0199】
本発明の、この実施の形態に従うベンズオキサジン−ベースのモノマーは、酸のために良好な親和力、高い耐熱性、及び高い耐リン酸性を有している。燃料電池のための電極及び電解質膜の製造に使用した場合、ベンズオキサジン−ベースのモノマーは、(主鎖のバックボーンが、開環重合によってリン酸に親和力を有する)第3級アミン構造を有することができる。従って、リン酸のための親和力が増し、リン酸の容量が最大化される。従って、ベンズオキサジン−ベースのモノマーを含む電解質膜を使用した燃料電池は、卓越した有用性、高い伝導性、及び長い耐用年限を有しており、そして湿気なしで、高い温度で運転可能であり、そして卓越した電力生成効率を有している。
【0200】
本発明の目的のために、式1に表されたベンズオキサジン−ベースのモノマーのポリマーを使用することが有利である。
【0201】
ポリマーは、ベンズオキサジン−ベースのモノマーを、溶媒中に溶解させ、そして熱処理によって溶媒を重合させることによって製造することができる。熱処理は、150〜240℃の範囲の温度で行っても良い。熱処理温度が150℃未満の場合、重合の反応性は低下し得る。この一方で、温度が240℃を超える場合には、副反応によって生成した副生成物が収率を低下し得る。
【0202】
必要な場合には、重合触媒を使用することができる。
【0203】
好ましい溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、及びジメチルアセトアミド(DMAc)を含み、及び溶媒の量は、ベンズオキサジン−ベースのモノマー100質量部に対して、5〜95質量部の範囲から選ばれることが好ましい。
【0204】
そのような種のポリベンズオキサジン−ベースの化合物についての更なる詳細は、EP2036910A1に記載されている。
【0205】
本発明では、以下の式1によって表される、第1のベンズオキサジン−ベースのモノマー及び/又以下の式2によって表される、第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーの使用も好ましい。
【0206】
【化36】

【0207】
ここで、R1〜R4が、それぞれ独立して、水素、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルコキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリールオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアクキルオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はシアノ基である。
【0208】
5が、ハロゲン化されたC1〜C20アルキル基、ハロゲン化されたC1〜C20アルコキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20アルケニル基、ハロゲン化されたC2〜C20アルキニル基、ハロゲン化されたC6〜C20アリール基、ハロゲン化されたC6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC7〜C20アリールアルキル基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリールアルキル基、ハロゲン化されたC4〜C20炭素環基、ハロゲン化されたC4〜C20炭素環アルキル基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロ環基、又はハロゲン化されたC2〜C20ヘテロ環アルキル基である。
【0209】
5’が、置換された、又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルコキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリールオキシ基、置換された又は置換されていないC7〜C20アリールアルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、又は置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環アルキル基である。
【0210】
6が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニレン基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリーレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、及び−SO2−から成る群から選ばれる。
【0211】
好ましくは、R5’及びR6の少なくとも1つが、ハロゲン化された置換基である。
このようにして得ることができる電解質膜は、ポリベンズイミダゾール単体で形成された電解質膜を使用した時に観察される問題、例えばポリベンズイミダゾールだけを含む電解質膜の高温での機械的、化学的な不安定さに起因するピンホール現象を低減する。
【0212】
式1で、R5は、好ましくは以下の式によって表される化合物の群から選ばれる:
【0213】
【化37】

【0214】
式1中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、F、C1〜C10アルキル基、アリル基、又はC6〜C10アリール基であることが好ましい。更に、式2中、好ましくは、R6が、−C(CF32−、SO2−、又は−C(CH32−であり、及びR5’が、フェニル基、又は以下の式によって表される、上述したR5のフッ素化された官能基と同一の基の一つである:
【0215】
【化38−1】

【0216】
【化38−2】

【0217】
式2中、好ましくは、R5’及びR6の少なくとも1つが、ハロゲン化された置換基、好ましくはフッ素化された置換基である。
【0218】
式1の、第1のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、好ましくは、以下の式3又は4によって表される化合物である。
【0219】
【化39】

【0220】
式2の、第2のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、好ましくは、以下の式5によって表される化合物である。
【0221】
【化40】

【0222】
そのような種類のポリベンズオキサジン−ベースについての更なる詳細は、EP2056390A1に記載されている。
【0223】
本発明の目的のために、以下の式1によって表されるモノマーを含むリン含有モノマーの使用も好ましい。
【0224】
【化41】

【0225】
ここで、Aが、置換された又は置換されていないC1〜C20ヘテロ環基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基であり、及び
2及びR3が、それぞれ独立して、水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、又はヒドロキシル基である。
【0226】
ここで、モノマーは、少なくとも1つのオキサジン部分(oxazine moity)を含む。
【0227】
好ましくは、Aは、以下の式:
【0228】
【化42】

【0229】
(但し、R1が、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、又はハロゲン化されたC1−C20ヘテロ環基である)
によって表される基の一つである。
【0230】
好ましいリン含有モノマーは、以下の式2及び3によって表される化合物を含む:
【0231】
【化43】

【0232】
(但し、R1が、以下の式によって表される基から選ばれるものの一つである)。
【0233】
【化44】

【0234】
この実施の形態に従うリン含有モノマーは、卓越した熱安定性を有しており、及びリン酸を保持することができる。
【0235】
式2又は3によって表される化合物の例は、以下の式4〜10によって表される化合物を含む。
【0236】
【化45−1】

【0237】
【化45−2】

【0238】
以下に、本発明のこの実施の形態に従う式1のリン含有モノマーを製造する方法を説明する。本発明の一実施の形態として、式2又は3によって表される化合物を製造するための方法を説明する;しかし、上述した他の化合物を、本発明のこの実施の形態に従う製造方法に類似した方法で合成することもできる。
【0239】
以下の反応スキーム1及び2を参照して、式2の化合物は、ジオール含有DOPO(A)、p−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)を、溶媒無しに加熱し、又は溶媒A、B及びCを加えて加熱し、そして次に混合物を還流させ、そしてこの後に生成物を後処理することによって製造することができる。式3の化合物は、ジオール含有DOPO(A)の替わりにトリオール含有DOPO(A’)を使用することを除いて、反応スキーム1に記載したものと同様の態様で製造することができる。
【0240】
反応スキーム1
【0241】
【化46】

【0242】
反応スキーム2
【0243】
【化47】

【0244】
反応スキーム1及び2で、R1は、式2又は3に定義した以下の式によって表される、同じ群から選ばれる。
【0245】
【化48】

【0246】
上述した反応に使用される溶媒は、1,4−ジキオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFであっても良い。加熱温度は、溶媒が還流される温度、好ましくは80〜120℃の範囲、特に約110℃の温度に調節されることが好ましい。
【0247】
後処理工程の、非限定的な実施の形態として、得られた反応混合物が1N NaOH水溶液と水で洗浄され、そして乾燥剤、例えば硫酸マグネシウムを使用して乾燥され、そして次に、結果物がろ過され、そして結果物から溶媒を除去するために、減圧下で蒸発され、そして乾燥されて目的とする材料が得られる。
【0248】
反応スキーム1で使用されるジオール含有DOPO(A)は、DOPOとp−ベンゾキノンを、以下の反応スキーム3に示したように反応させることによって製造することができる。
【0249】
反応スキーム3
【0250】
【化49】

【0251】
更に、トリオール含有DOPO(A’)は、DOPOとロゾール酸を、以下の反応スキーム4に示したように反応させることによって製造することができる。
【0252】
反応スキーム4
【0253】
【化50】

【0254】
反応スキーム3及び4の反応の条件は、特に限定されない。しかしながら、反応スキーム3の場合、ジオール含有DOPO(A)は、溶媒として2−エトキシエタノールを使用して、DOPO及びp−ベンゾキノンを125℃で4時間、反応させることなよって合成され、及び反応スキーム4の場合、反応は溶媒還流下に行なわれる。例えば、溶媒としてエタノールが使用される場合、反応は90℃で、少なくとも24時間、行われても良い。
【0255】
その種のポリベンズオキサジン−ベースの化合物についての更なる詳細は、EP2058321A1に記載されている。
【0256】
本発明で、以下の式1によって表されるナフトキサジンベンズオキサジン−ベースのモノマー、及び/又はそのポリマーの使用も好ましい。
【0257】
【化51】

【0258】
(但し、
2及びR3、又はR3及びR4が、相互に結合して以下の式2によって表される基を形成し、
5及びR6、又はR6及びR7が、相互に結合して以下の式2によって表される基を形成し、
【0259】
【化52】

【0260】
1が、置換された、又は置換されていないC1−C20アルキル基、置換された、又は置換されていないC1−C20アルコキシ基、置換された、又は置換されていないC2−C20アルケニル基、置換された、又は置換されていないC2−C20アルキニル基、置換された、又は置換されていないC6−C20アリール基、置換された、又は置換されていないC6−C20アリールオキシ基、置換された、又は置換されていないC7−C20アリールアルキル基、置換された、又は置換されていないC2−C20ヘテロアリール基、置換された、又は置換されていないC2−C20ヘテロアリールオキシ基、置換された、又は置換されていないC2−C20ヘテロアリールアルキル基、置換された、又は置換されていないC4−C20炭素環基、置換された、又は置換されていないC4−C20炭素環アルキル基、置換された、又は置換されていないC2−C20ヘテロ環基、又は置換された、又は置換されていないC2−C20ヘテロ環アルキル基である)
式2中、*は、式1の、R2及びR3、R3及びR4、R5及びR6、又はR6及びR7の結合位置を表す。
【0261】
1は、好ましくは、以下の式によって表される基から選ばれる。
【0262】
【化53−1】

【0263】
【化53−2】

【0264】
ナフトキサジンベンズオキサジン−ベースのモノマーは、好ましくは、式3〜5によって表される化合物から選ばれるものの少なくとも1つである。
【0265】
【化54】

【0266】
式3〜5中、R1は、式1に定義された基であっても良く、及び好ましくは、以下の式によって表される基から選ばれる。
【0267】
【化55−1】

【0268】
【化55−2】

【0269】
本発明の、この実施の形態に従うナフトキサジンベンオキサジン−ベースのモノマーは、分子内の水素結合、及び分子間の水素結合を最大にすることができる、ナフトキサジン基を含む。従って、ナフトキサジンベンズオキサジンベースのモノマーを使用することによって、燃料電池は、卓越した熱的安定性及び運転温度での耐久力を有することができ、これにより、長い耐用年限を有するものが製造可能になる。
【0270】
式1によって表される、ナフトキサジンベンズオキサジン−ベースのモノマーは、好ましくは、式6〜11によって表される化合物から選ばれる。
【0271】
【化56−1】

【0272】
【化56−2】

【0273】
式1のナフトキサジンベンズオキサジン−ベースのモノマーを製造する方法を、以下に記載する。本発明の一実施の形態として、式3〜5によって表される化合物を製造する方法をここで記載する;しかしながら、上述した他の化合物も、後述する製造方法に類似した態様で合成することができる。
【0274】
以下の反応スキーム1〜3を参照し、式3の化合物は、1,5−ジヒドロキシナフタレン(A)、p−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)を、溶媒を使用することなく、又は溶媒を加えて加熱し、そして次に混合物を還流して、その後生成物を後処理することによって製造することができる。式4及び式5の化合物は、1,6−ジヒドロキシナフタレン(A’)及び2,7−ジヒドロキシナフタレン(A”)が、1,5−ジヒドロキシナフタレン(A)の替わりに使用されたことを除いて、反応スキーム1と同様の態様で製造することができる。
【0275】
【化57】

【0276】
反応スキーム1〜3で、(式3〜5で定義された)R1は、以下の式によって表されるものと同一の基から選ばれる。
【0277】
【化58−1】

【0278】
【化58−2】

【0279】
上述した反応中に使用される溶媒は、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFであっても良い。加熱温度は、好ましくは、溶媒を還流させることができる温度、好ましくは80〜110℃、より好ましくは約110℃に調節される。
【0280】
後処理工程の非限定的な実施の形態として、得られた反応混合物が1N NaOH水溶液と水で洗浄され、そして乾燥剤、例えば硫酸マグネシウムを使用して乾燥され、そして次に、結果物がろ過され、そして結果物から溶媒を除去するために、減圧下で蒸発され、そして乾燥されて目的とする材料が得られる。
【0281】
ポリマーは、式1のナフトキサジンベンズオキサジンベースのモノマーを溶媒中に溶解させ、そして次に、熱処理によって得られたものを重合させることによって製造することができる。ここで、熱処理温度は、180〜250℃の範囲の温度で行われることが好ましい。温度が180℃よりも低い場合、重合の反応性は減少し、この一方で、温度が250℃よりも高い場合、収率が低下する。
【0282】
必要であれば、重合触媒を使用することができる。
【0283】
重合反応で使用される好ましい溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、及びジメチルアセトアミド(DMAc)を含み、及び溶媒の量は、式1のナフトキサジンベンズオキサジン−ベースのモノマーを100質量部として、5〜30質量部の範囲であっても良い。
【0284】
その種のポリベンズオキサジン−ベースの化合物についての更なる詳細は、EP2055706A1に記載されている。
【0285】
本発明では、式1によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマー及び/又はそのポリマーを使用することが好ましい。
【0286】
【化59】

【0287】
(但し、R1、R1’、R1”及びR2の少なくとも1つが、ハロゲン原子、ハロゲン化されたC1−C20アルキル基、ハロゲン化されたC1−C20アコキシ基、ハロゲン化されたC2−C20アルケニル基、ハロゲン化されたC2−C20アルキニル基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC2−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC2−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC2−C20ヘテロ環基であり、
1、R1’、R1”及びR2の他のものが、置換された、又は置換されていない、非ハロゲン化のC2−C20ヘテロ環基であり、及び
1、R1’、R1”及びR2の残りが、水素である)。
【0288】
好ましくは、式1中、R1、R1’、R1”及びR2の少なくとも1つが、フッ素、フッ素化されたC1−C20アルキル基、フッ素化されたC6−C20アリール基、フッ素化されたC2−C20ヘテロアリール基、フッ素化されたC2−C20ヘテロアリールオキシ基、フッ素化されたC4−C20シクロアルキル基、又はフッ素化されたC2−C20ヘテロ環基であり、そしてR1、R1’、R1”及びR2の他の一つが、第3級アミンから誘導される窒素含有C3−C6ヘテロ環基、例えばピリジン、より好ましくは以下の基の一つである。
【0289】
【化60】

【0290】
特に好ましいフッ素化されたC2−C20アリール基は、以下の式によって表される:
【0291】
【化61−1】

【0292】
【化61−2】

【0293】
式1中、R1、R1’、R1”の少なくとも1つが、フッ素、フッ素化されたC1−C20アルキル基、フッ素化されたC6−C20アリール基、フッ素化されたC2−C20ヘテロアリール基、フッ素化されたC2−C20ヘテロアリールオキシ基、フッ素化されたC4−C20シクロアルキル基、又はフッ素化されたC2−C20ヘテロ環基であり、及びR2が窒素含有C3−C6ヘテロ環基であることも好ましい。
【0294】
式1の、特に好ましいベンズオキサジン−ベースのモノマーは、式6〜9の化合物を含む:
【0295】
【化62】

【0296】
更なる好ましいモノマーは、式2〜5の化合物を含む:
【0297】
【化63−1】

【0298】
【化63−2】

【0299】
(但し、
2が、ハロゲン原子、ハロゲン化されたC1−C20アルキル基、ハロゲン化されたC1−C20アコキシ基、ハロゲン化されたC2−C20アケニル基、ハロゲン化されたC2−C20アルキニル基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC2−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC2−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、又はハロゲン化されたC2−C20ヘテロ環基である)。
【0300】
好ましくは、R2は、以下の式のものによって表される基である。
【0301】
【化64】

【0302】
式2〜5のものによって表されるモノマーの、特に好ましい例は式10〜13の化合物を含む。
【0303】
【化65−1】

【0304】
【化65−2】

【0305】
本発明の好ましい実施の形態に従えば、ベンズオキサジン−ベースのモノマーのポリマーが使用され、好ましくは式2〜5に従うモノマー、より好ましくは式10〜13に従うモノマーが使用される。
【0306】
式6〜9によって表されるベンズオキサジン−ベースのモノマーは、R1としてフッ素、又はフッ素−含有官能基、及びR2としてピリジル基を有する。これらの構造的特性のために、ベンズオキサジン−ベースのモノマー及びこれらのポリマーは、フッ素官能性基及びピリジル基を含み、これにより、卓越した耐熱性、及びリン酸に対する耐性を有する。
【0307】
更に、式10〜12によって表されるモノマー、及びこれらのポリマーが、式6〜9のものによって表されるベンズオキサジン−ベースのものに類似した構造的特性を有する。すなわち、式10〜12によって表されるモノマー、及びこれらのポリマーは、フッ素基を含み(これにより、高温での改良された熱的安定性を有する)、及びピリジン−ベースのアミン構造を含む(これにより、酸の改良された保持容量を有する)。
【0308】
式1のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、以下の反応スキーム1に従って製造されても良い。
【0309】
反応スキーム1を参照して、式2のベンズオキサジン−ベースのモノマーは、フェノール化合物(A)、p−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)を、溶媒無しに加熱し、又は溶媒をA、B及びC加えて加熱し、そして次に混合物を還流させ、そしてその後に得られたものを後処理することによって製造することができる:
【0310】
【化66】

【0311】
但し、R1及びR2は、式1で定義したものと同様であり、そしてR1’及びR1”は、それぞれ独立して、反応スキーム1内の式1の化合物中に水素である。
【0312】
フェノール化合物(A)、p−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)に溶媒を加える場合、使用する溶媒は、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFであっても良い。加熱温度は、好ましくは、使用する溶媒を還流することができる温度の範囲内である。
【0313】
式2〜5によって表されるモノマー、及びこれらのポリマーは、フェノール化合物(A)に対応する、ジドロキシピリジン、又はヒドロキシキノリン化合物(例えば、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、5−ヒドロキシピリジン)を使用しても良いこと以外は、反応スキーム1に示した態様と同様の態様で製造することができる。
【0314】
その種のベンズオキサジン−ベースの化合物に関しての詳細は、US2009/0117440A1に記載されている。
【0315】
オキサジンベースの化合物について、以下の定義が費用される。
【0316】
「C1−C20アルキル基」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシルを表す。C1−C20アルキル基は、置換されなくても良く、又はアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、ハロゲン原子(例えば、CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3、及びこれらに類似するもの)、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基、又はこれらの塩、スルホン酸基、又はこれらの塩、リン酸、又はこれらの塩、C1−C20アルキル基、C2−C20アルケニル基、C2−C20アルキニル基、C1−C20ヘテロアルキル基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールアルキル基、C6−C20ヘテロアリール基、又はC6−C20ヘテロアリールアルキル基で置換されても良い。
【0317】
「C2−C20アルケニル基」という用語は、ビニレン、アリーレンを表す。C2−C20アルケニル基は、置換されていなくても良く、又はアルケニル基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0318】
「C2−C20アルキニル基」という用語は、アセチレンを表す。C2−C20アルキニル基は、置換されてなくても良く、又はアルキニル基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0319】
「C1−C20アルキレン基」という用語は、メチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン、イソ−アミレン、ヘキシレンを表す。C1−C20アルキレン基は、置換されてなくても良く、又はアルキレン基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0320】
「C2−C20アルケニレン基」という用語は、アリル基を表す。C2−C20アルケニレン基は、置換されてなくても良く、又はアルケニレン基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0321】
「C2−C20アルキニレン基」という用語は、ジラジカルアセチレン基を表す。C2−C20アルキニレン基は、置換されてなくても良く、又はアルキニレン基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0322】
「シクロアルキル基」という用語は、5〜10個の炭素原子を有する非芳香族環基を表す。特に適切な化合物は、シクロヘキシル基、及びシクロペンチル基を含む。シクロアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、上述したアルキル基におけるものと同様の置換基で置換されても良い。
【0323】
「アリール基」という用語は、少なくとも1個の環を含むC6−C20炭素環芳香族系を表し、ここで上記環は、ペンダント的な方法で互いに結合していても良く、又は互いに縮合(融合:fuse)していても良い。
【0324】
「アリール」という用語は、例えばフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル等の芳香族基を表す。アリール基は、置換されていなくても良く、又は置換基、例えばハロアルキレン、ニトロ、シアノ、アルコキシ、及び低級アルキルアミノを有していても良い。特に、アリール基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0325】
「アリーレン基」という用語は、少なくとも1個の環を有するジラジカルC6−C20炭素環芳香族系を表わし、ここで上記環は、ペンダント的に互いに結合していても良く、又は互いに融合していても良い。「アリーレン」という用語は、芳香族ジラジカル、例えばフェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレンを表す。アリーレン基は、置換されていなくても良く、又は置換基、例えばハロアクキレン、ニトロ、チアノ、アルコキシ、及び低級アルキルアミノを有していても良い。特に、アリーレン基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0326】
「アリールアルキル基」という用語は、上述したアリール基中の少なくとも1個の水素原子が基、例えば低級アルキル、例えばメチル、エチル、プロピルで置換された基を表す。例えば、アリールアルキル基は、ベンジル、フェニルエチルであっても良い。アリールアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルキル基について上述した置換基の一つで置換されていても良い。
【0327】
「ヘテロアリール基」という用語は、一価の、単環の、又は二環の芳香族の二価の有機化合物(該有機化合物は、N、O、P及びSから成る群から選ばれる1、2又は3個のヘテロ原子を含み、及び1〜20個の炭素原子を含む)を表す。好ましいヘテロアリール基は、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、イソチアゾルイル、オキサゾルイル、チゾルイル、トリアゾルイル、及び1,2,4−チアジアゾルイルを含む。ヘテロアリール基は、置換されてなくても良く、又はヘテロアリール基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0328】
「縮合(融合)したヘテロアリール基」は、単−環又は2重−環系(少なくとも1個の原子が、炭素意外の原子、例えば窒素、酸素、又は硫黄である、8〜11個の環で構成されるもの)を表す。縮合したヘテロアリール基の少なくとも1個の水素原子は、C1−C20アルキル基で上述して、官能基と同様の基で置換することができる。
【0329】
「ヘテロアリーレン基」という用語は、N、O、P及びSから成る群から選ばれる1、2又は3個のヘテロ原子を含み、及び1〜20個の炭素原子を有する、二価の芳香族有機基を表す。ヘテロアリーレン基は、置換されてなくても良く、又はヘテロアリーレン基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0330】
「ヘテロアリールアルキル基」は、上述したヘテロアリール基の少なくとも1個の水素原子が、アルキル基で置換された基を表す。ヘテロアリールアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0331】
「アルコキシ基」という用語は、Alk−O−形式の一価の基を表す。ここでAlkは、アルキル基である。アルコキシ基の好ましい例は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基である。アルコキシ基中の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換可能である。
【0332】
「アリールオキシ基」という用語は、Ar−O−の形式の一価の基を表す。ここでArは、アリール基である。特に適切な基は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、テトラヒドロナフチルオキシ基、及びこれらに類似するものを含む。アリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基と同一の置換基で置換されても良い。
【0333】
「ヘテロアリールオキシ基」という用語は、ヘテロアリール−O−の形式の基を表す。特に適切な基は、ピラジニルオキシ、フルアニルオキシ、チエニルオキシ、ピリジルオキシ、ピリミジニルオキシ、イソチアゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、トリアゾリルオキシ、及び1,2,4−チアジアゾリルオキシを含む。ヘテロアリールオキシ基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基と同一の置換基で置換されても良い。
【0334】
「炭素環基」という用語は、C5−C10非−芳香族環基、例えばシクロヘキシル基を表す。炭素環基は、置換されてなくても良く、又は炭素環基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0335】
「炭素環アルキル基」という用語は、上述した炭素環基の少なくとも1個の水素原子が、アルキル基で置換された基を表す。炭素環アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0336】
「ヘテロ環基」という用語は、ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄、リン、酸素、及びこれらに類似するものを含む、非芳香族の、5〜10員の環式基を表す。ヘテロ環基は、置換されてなくても良く、又はヘテロ環基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0337】
「縮合ヘテロ環基」という用語は、ヘテロ環基の単環、又は二重環−系を表す。
【0338】
「ヘテロ環アルキル基」という用語は、上述したヘテロ環基の幾つかの水素原子が、アルキル基で置換された基を表す。ヘテロ環アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、(アルキル基について上述した)置換基の一つで置換されていても良い。
【0339】
「ハロゲン化された」という用語は、ハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、又はヨウ素での置換を表す。
【0340】
安定化は、便利なことには不活性ガス下に、250℃以下の温度、好ましくは100℃〜160℃の温度の範囲に、有利なことには、5分間〜120分間の期間、好ましくは5分間〜30分間、特に好ましくは10分間、加熱することによって行われることが好ましい。
【0341】
工程c)に従う安定化反応の実施は、電磁波(例えば、光化学的反応、IR及び/又はUV照射)を使用した照射、電子の照射で、又は熱的に行なわれても良い。熱的な反応制御の場合、20℃(室温)〜240℃の温度範囲内で反応を行うことが有利である。反応時間は、数分から数時間までで、反応物質の反応性に依存する。安定化反応は1段階又は数段階で行うことができる。
【0342】
上述した安定化物質の幾つかを使用して、幾つかの安定化反応を連続的に行うことも可能である。このことについて、最初に、本発明に従うポリアゾール膜内での第2のポリマーの形成が行われ、次に、ポリアゾールと、予め形成された第2のポリマー成分との架橋が行われる反応が特に記載されるべきである。このことについて、形成された膜は、最初に、上述した化合物からの単官能性の成分で処理され、そして第2に、第1の安定化反応の後に、2官能性の化合物が加えられても良く、そして第2の反応工程で反応されても良い。
【0343】
本発明に従い使用される強酸は、プロトン酸、好ましくはリン酸、及び/又は硫酸であってもよい。
【0344】
本記載の範囲内で、「リン酸(phosphoric acid)」は、ポリリン酸、ホスホン酸(H3PO3)、オルトリン酸(H3PO4),ピロリン酸(H427)、三リン酸(H5310)、メタリン酸、及び誘導体、特に有機誘導体、例えば環式有機リン酸、及びその誘導体、例えば酸エステルを意味すると理解される。リン酸、特に、オルトリン酸は、好ましくは少なくとも80質量%の濃度、特に好ましくは少なくとも90質量%の濃度、更に好ましくは少なくとも5質量%の濃度、及び極めて好ましくは少なくとも98質量%の濃度を有しており、ここで、濃度の値は、膜中の、又は加水分解中の酸の有効濃度に対するものである。
【0345】
膜をその更なる用途に適用するために、工程c)に従う安定化の後に、膜の追加的なドーピングも行なわれて良い。このことについて、前に述べた添加剤を加えることができ、又は他に、上述した強酸を加えることによって、ドーピングの程度を達成することができる。更に、存在する水を、(例えば、存在する強酸を更に濃縮することによって)膜から抽出することができる。追加的に、安定化反応のために必要とされる触媒、及び上述した群の異なる安定化反応物質の混合物を加えることができる。
【0346】
安定化した、好ましくは高分子量のポリアゾールポリマーに基づく、本発明に従う酸含有ポリアゾール膜は、酸と酸−塩基(base)複合体を形成し、及び水が存在しなくてもプロトン伝導性である。この、いわゆるグロッタス伝導性メカニズムは、高温燃料電池を、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃、特に少なくとも160℃の、長期間にわたる運転温度で使用することを可能にする。本発明に従う膜は、従って、電気化学電池、特に燃料電池のための電解質として使用することができる。
【0347】
安定化した、好ましくは高分子量ポリアゾールポリマーに基づく、本発明に従う酸含有ポリアゾール膜は、機械的特性が改良されているという特徴を有している。従って、本発明に従う膜は、弾性の係数(モジュール)が、少なくとも3MPa、便利なことには少なくとも4MPa、好ましくは少なくとも5MPa、特に好ましくは少なくとも6MPa、望ましくは少なくとも7MPa、特に少なくとも8MPaである。更に、本発明に従う膜は、破断伸び(elongation at break)が、50%〜150%、好ましくは少なくとも60%、特に少なくとも80%を示す。
【0348】
応力−ひずみ特性は、好ましくは、標準引っ張り強さ試験機Zwick Z010を使用して測定され、以下の手順が特に有利であることがわかった。最初に、サンプルを、幅1.5cm及び長さ12cmのストリップに都合良く切断する。好ましくは、2〜3個が製造され、そしてサンプルごとに測定され、そして結果が平均化される。サンプルの厚さは、好ましくはタイプAbsolute DigmaticのMitutoyo厚さ測定装置を使用して、3箇所で測定され、そして平均化される(好ましくは、ストリップの最初部分、中央部分、及び終わり部分)。測定は、以下のように行うことが好ましい。サンプルストリップを固定し、そして0.1Nの予備の力で1分間、保持する。次に、好ましくは5mm/minの引っ張り速度で(tensile specimen)、好ましくはRT(室温)で、弾性(MPa)のモジュールが測定されるまで、測定が自動的に行なわれる(Zwick software TextExpert (version11)を使用した自動手順)。そして測定は、サンプルストリップが裂けるまで、好ましくは30mm/minの引っ張り速度で続けられる。測定が完了した時に、破壊強度(kJ/m2)及び破断伸び(%)が測定される。
【0349】
安定化された、好ましくは高分子量ポリアゾールポリマーに基づく、本発明に従う酸含有ポリアゾール膜の伝導性は、好ましくは少なくとも50mS/cm、好ましくは少なくとも100mS/cm、特に少なくとも110mS/cmである。
【0350】
安定化された、好ましくは高分子量ポリアゾールポリマーに基づく、本発明に従う酸含有ポリアゾール膜は、更に、高温燃料電池中のプロトン伝導性膜として使用された場合に、安定性が増していることで特徴付けられる。このような系の運転で、特にリン酸系で、酸含有ポリアゾール膜の安定性が更に改良されるべきであることがわかった。本発明に従う膜は、このような改良された安定性によって特徴付けられ、そして好ましくは、99%リン酸に、85℃〜180℃の温度範囲で、不溶性である。このことについて、不溶性とは、存在する酸中で、膨張(膨潤)が300%を超えることなく、及び自立性支持体フィルムの分解が発生しないことを意味する。
【0351】
本発明に従う安定化した膜は、更に、長期間にわたる安定性が改良されていることに特徴付けられる。
【0352】
更なる適用は、表示要素、エレクトロクロミック素子、又は異なるセンサーのための電解質としての使用を含む。
【0353】
本発明の他の目的は、更に、本発明に従うポリマー電解質膜を、燃料電池のための個々のセル(MEA)に、好ましく使用することである。
【0354】
燃料電池のための個々のセルは、本発明に従う、少なくとも1個の膜、及び2個の電極(該電極間に、プロトン伝導性膜が、サンドイッチ状に配置される)を含む。
電極は、それぞれ、触媒活性層、及び触媒活性層に反応ガスを供給するガス拡散層を特徴付ける。ガス拡散層は多孔性であり、これにより反応ガスがこれを通ることができる。
本発明に従うポリマー電解質膜は、電解質膜として使用することができる。電解質膜、及び個々のセル(MEA)のための前駆体(precursor)は、触媒活性層の一方、又は両方を使用して製造されても良い。さらに、個々のセルは、ガス拡散層を前駆体(プレカーサー)に固定することによって製造することもできる。
【0355】
本発明の他の目的(対象)は、複数個の個々のセル(MEAs)を有する燃料電池であり、上記個々のセルは、上記方法に従い製造された一つの膜、及びその間に該膜がサンドイッチ状に配置される2個の電極を含んでいる。
【0356】
本発明に従う安定化は、膜からMEAを製造した後に行っても良い。この目的のために、上述のように、膜を安定化剤でドーピングすることが行われる。しかしながら、工程c)に従う安定化反応、又は安定化成分の活性化は、次に、サンドイッチ状に配置されたMEA内で起こる。
【0357】
ここで、工程c)に従う安定化反応の実施は、電磁波(例えば、光化学反応、IR及び/又はUV反応)、電子で、又は熱的に行われても良い。熱的反応制御の場合、反応を、20℃(室温)〜240℃の範囲内で行うことが有利である。安定化は、160〜200℃で行うことが特に好ましい。反応時間は、数分から数時間までで、反応物質の反応性に依存する。MEA中の安定化反応を、1段階〜数段階で行うことができる(温度傾斜)。
以下に幾つかの実施例を使用して本発明を説明するが、これらの実施例で本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0358】
実施例1:本発明に従う安定化を実施するためのルートI(洗浄したポリアゾールフィルムの安定化)
好ましくは高分子量のポリアゾール及び強酸を含むフィルムを、水性溶媒、特に好ましくは純水を有するバス(溶液)内に、0℃〜90℃、特に好ましくは40〜70℃で置く。この過程で、フィルム中に含まれる酸が、溶媒を置き換えることによって希釈されるか、又は完全に洗浄除去される。このことについて、酸は、水によって、1〜100%の範囲で置き換えられることができる。溶液の置き換えは、使用する温度、及び溶媒の濃度に依存して、数分〜数時間で行うことができる。このことについて、120分以下の洗浄工程が特に好ましい。処理したフィルムは、次にバス(溶液)から取り出され、そして上澄みの(浮遊する)溶媒が、例えば吸収パッドで叩くことによって、表面的に除去される。
【0359】
次にこのフィルムが、強酸、及び本発明に従う少なくとも1種の安定化剤を含む、他のバス内に配置される。このことについて、バスは、安定化剤を0.01〜30質量%含むことが特に好ましい。溶媒を取り替えることによるドーピングは、バス内で行われ、事前に導入された水は、安定化剤を有する酸性溶液によって置き換えられる。この過程で、少なくとも0℃、及び120℃以下の温度が、使用するのに特に好ましい。次にフィルムは、バスから取り出され、そして上澄み溶媒(表面の溶媒)を再度、吸収することができるが、表面上に残すこともできる。次に、この方法は、ルートIa又はIbに従って継続される。
【0360】
ルートIa:フィルムは、次に、2枚の支持体フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(250μm)又はガラスプレート)の間で、加熱炉内で70〜250℃で、1分〜24時間、処理され(10時間以下で、180〜200℃が特に好ましい)、本発明に従う安定化がこの過程で行われる。このことについて、炉内の温度の漸進的上昇及び/又は低下も可能である。安定化が行われた時に、フィルムが溶液から取り出され、そして(i)更に処理/直接使用しても良く、又は他に(ii)濃度が30〜99%、特に好ましくは30〜85%のリン酸のバスで、30分〜24時間、調整しても良い。この調整(コンディショニング)は、例えば、特定の用途のためのフィルム中に含まれる酸の濃度を調節するために重要である。
【0361】
ルートIb:次に、フィルムが(好ましくは70〜250℃に)予熱された、強酸又は酸混合物を含む他のバスに移され、そして数分間〜数時間、その中に残され、液体、酸性媒体中で、本発明に従う安定化が直接的に行なわれる。このことについて、酸の濃度は、10〜99%、特に好ましくは30〜85%である。
【0362】
安定化が行われた場合、フィルムは溶液から取り出され、そして(i)更に処理/直接使用しても良く、又は他に(ii)濃度が30〜99%、特に好ましくは30〜85%のリン酸のバスで、30分〜24時間、調整しても良い。この調整(コンディショニング)は、例えば、特定の用途のためのフィルム中に含まれる酸の濃度を調節するために重要である。
【0363】
実施例2:本発明に従う安定化を実施するためのルートII(液体媒体中での安定化)
好ましくは高分子量のポリアゾール及び少なくとも1種の強酸を、強酸及び本発明に従う安定化反応物質を含むバス内に置く。このことに関して、バスは、特に好ましくは、0.01〜30質量%の安定化物質を含む。溶媒の取替えによるフィルムのドーピングをバス内で行い、予め導入された水性溶媒は、安定化剤を有する酸性溶液によって置き換えられる。
【0364】
この過程で、少なくとも0℃、及び120℃以下の温度を適用することが特に好ましい。次にフィルムは、バスから取り出され、そして表面の溶媒を再度吸収することができるが、しかしフィルムの表面上に残すこともできる。次に、工程が、ルートIIa又はIIbに従い継続される。
【0365】
ルートIIa:次に、フィルムが、2枚の支持体フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(250μm)又はガラスプレート)の間で、70〜250℃で、1分から24時間までの間(特に好ましくは180〜200℃で、10時間以下の間)処理され、この過程で、本発明に従う安定化が行われる。このことについて、炉内の温度の漸進的上昇及び/又は低下も可能である。
【0366】
安定が行われた時に、フィルムが溶液から取り出され、そして(i)更に処理/直接使用しても良く、又は他に(ii)濃度が30〜99%、特に好ましくは30〜85%のリン酸のバスで、30分〜24時間、調整しても良い。この調整(コンディショニング)は、例えば、特定の用途のためのフィルム中に含まれる酸の濃度を調節するために重要である。
【0367】
ルートIIb:次に、フィルムが(好ましくは70〜250℃に)予熱された、強酸又は酸混合物を含む他のバスに移され、そして数分間〜数時間、その中に残され、液体、酸性媒体中で、本発明に従う安定化が直接的に行なわれる。このことについて、酸の濃度は、10〜99%、特に好ましくは30〜85%である。
【0368】
安定化が行われた場合、フィルムは溶液から取り出され、そして(i)更に処理/直接使用しても良く、又は他に(ii)濃度が30〜99%、特に好ましくは30〜85%のリン酸のバスで、好ましくは30分〜24時間、調整しても良い。この調整(コンディショニング)は、例えば、特定の用途のためのフィルム中に含まれる酸の濃度を調節するために重要である。
【0369】
実施例3:燃料電池内でのインサイチュ(現場)安定化(MEA内での安定化)
ルートI又はルートIIによって製造され、そして好ましくは高分子量ポリアゾール、少なくとも1種の強酸、及び本発明に従う安定化剤を含むポリアゾールフィルムが製造され、実際の安定化反応(それぞれルートIa又はルートIb又はルートIIa又はルートIIb)が、最初に無しで済まされる。
【0370】
フィルムは、更にMEAに加工され、これは、圧縮、積層化、又は単に2個のガス拡散電極を重ねることによって行うことができる。製造されたフィルムの両側を、触媒層(例えば、炭素上の白金)で被覆し、そして触媒−被覆膜(CCM)を製造することも考えられる。CCMは、圧縮、積層化、又は単に2個のガス拡散電極を重ねることによって順次、MEAに加工される。
【0371】
次に、MEA内で安定化反応が、空気、又は保護ガス雰囲気下で、60〜200℃で、数分間から数時間までの期間、直接的に行なわれる。安定化は、特に好ましくは、90〜180℃で、1〜120分間、行われる。
【0372】
実施例4:本発明に従う安定化を実施するためのルートIV(次の安定化剤での表面の被覆による安定化)
製造が完了した時に、好ましくは、高分子量のポリアゾール、及び少なくとも1種の強酸を含む、自立性フィルムが、次に、安定化剤(安定化反応物質)と少なくとも1種の強酸、好ましくはリン酸の溶液で、表面にスプレーされ、又は表面に被覆される。そして溶液は、膜上に作用し、例えば巻き取られるか、又は溶液は、連続的な工程で、数分間から24時間までの期間作用する。
【0373】
本発明に従う安定化反応が、次に行われるか、又は自立性の膜がMEAに加工され、そしてその後に、安定化反応が行われる。
【0374】
【表2】

【0375】
実施例1〜4は、標準膜V1(比較例)の3.5MPaのE−モジュールと比較して、10〜28MPaの上昇したE−モジュールを示し、安定化の効果を有するオキサジンタイプ添加剤を実証した。
【0376】
実施例5:本発明に従う安定化を実施するためのルートV(安定化反応物質をポリアゾール/酸溶液に加えることによる安定化)
安定化オキサジン添加剤を、ポリアゾール(2〜40質量%ポリマー含有量)、強酸、及び更なる任意の添加剤を含む溶液内に混合する。溶液を、ドクターブレードを使用してガラスプレート上にキャストしてフィルムとし、そして次に窒素雰囲気下で、70〜250℃に、数分間〜数時間、処理する。液体の酸ポリアゾール含有媒体中で、安定化が起こる。安定化が行われた時、フィルムが、30〜99%、特に好ましくは30〜85%の濃度のリン酸のバス内で、好ましくは30分〜24時間の期間、処理される。
【0377】
実施例6
膜が膜電極アセンブリ内に組み込まれた場合、本発明に従う安定化された膜は、加速化された老化条件下において、改良された安定性をも示す。膜電極アセンブリは、膜及び2個の電極に基づいて製造され、そして次に、シングルセル試験装置内で、酸化条件を受ける。膜安定性は、開回路電圧を評価することによって評価される。膜及び2個のガス拡散電極に基づく、膜電極サンドイッチをホットプレス条件下に製造することは、当業者にとって公知である(そして最先端である)。手順の擦り合わせとして、シングルセルが160℃に加熱され、アノードに3〜5l/hの水素が供給され、そしてカソードに5l/hの空気が供給される。開回路電圧及びセルの抵抗は、インピーダンス分光法によって測定される。開回路電圧及びセル抵抗の測定は、当業者にとって公知であり、そして最先端(state of the art)である。擦り合わせ手順の後、シングルセルが大気雰囲気条件下に、ガスを供給することなく160℃に保持される。開回路電圧の測定は、1週間につき2〜3回行われ、そして開回路電圧の減少とセル抵抗の増加が、膜の劣化のサインとして考えられる。開回路電圧が800mV未満に低下した時に、迅速老朽化試験が終了される。寿命の開始当初では、開回路電圧は、典型的には、約1000mVの値を有している。本発明に従う膜は、この試験条件下で、相当に改良された耐用年限を示す。標準膜(比較例)は、250時間(+/−50時間)の露出の後、開回路電圧が800mV未満になる。安定化された膜は、使用するオキサジン添加剤の量に依存して、800〜1200時間以内に劣化するが、このことは、ファクター3〜4だけ(劣化が)遅いことを意味する。
【0378】
【表3】

【0379】
表2は、標準膜(比較例)のための開回路電圧の低下を、(0.5質量%の、式15に従うベンスオキサジン添加剤を使用して安定化された膜と比較して)示している。標準膜について、800mV未満への低下は、250時間後に発生し、この一方で安定化された膜(実施例1)は、耐用年限が約1150時間であった。
【0380】
実施例8
本発明に従う安定化された膜は、膜が膜電極アセンブリ内に組み込まれた時に、挑戦的(provoking)な運転条件下で、改良された安定性をも示す。膜電極アセンブリは、膜と2個の電極に基づいて製造され、そして次にシングルセル試験装置内で、8.1l/hの水素がアノードに供給され、そして6.6l/hの酸素がカソードに供給された、挑戦的(provoking)な運転条件に置かれる。膜の安定性は、200℃で、0.35A/cm2で、運転時間を評価することによって評価される。膜と2つのガス拡散電極に基づく膜電極サンドイッチを、例えばホットプレス条件下に製造することは、当業者にとって公知であり、そして最先端である。0.35A/cm2で、200℃で、電圧が連続的に測定され、そして電圧の突然の低下が、膜電極アセンブリの不具合のサインとして、及び従って、膜の劣化のサインとして考えられる。本発明に従う安定化した膜は、上述した試験条件下で、大きく改良された耐用年限を示す。標準膜(比較例)と比較して、安定化した膜は、ファクター1.5〜3の改良された耐用年限を示す。
【0381】
【表4】

【0382】
比較例
ポリリン酸(112質量%)中、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル及びテレフタル酸の等モル量の溶液2質量%を、100時間以内に、280℃以下に加熱する。得られたポリベンズイミダゾール−リン酸溶液を100℃の温度に冷却し、支持体材料、例えばポリエチレンテレフタレート上に、フィルムとしてキャストし、次に室温で一晩、50質量%リン酸中で加水分解させる。加水分解が完了した後、自立性のポリベンズイミダゾール膜が、支持体材料から取外される。ポリベンズイミダゾール膜の特性を、表2に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的に安定なポリアゾールポリマーを製造するための方法であって、以下の工程
a)
i)芳香族及び/又は複素環式芳香族ジアミンカルボン酸を反応させることによって得ることができるものを除く、少なくとも1つのアミノ基を繰り返し単位中に有するポリアゾール、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化剤、
を含み、且つ膜中、安定化剤の合計含有量は、0.01〜30質量%の範囲である膜を供給する工程、
b)膜中の安定化反応を、直ちに、又は次の膜の処理工程で行う工程、
c)適切であれば、追加的に、工程b)に従い得られた膜を、強酸でドープするか、又は存在する水を更に除去することによって、存在する酸を濃縮する工程、
を含み、且つ前記安定化剤が、少なくとも1種のオキサジン−ベースの化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
以下の工程
a1−a)繰り返し単位中に、少なくとも1つのアミノ基を有するポリアゾールを含むフィルムを製造する工程、
a1−b)工程a)からのフィルムを、(i)少なくとも1種の強酸、及び(ii)少なくとも1種の安定化剤を含む溶液で処理する工程、
を含み、且つ前記溶液中の安定化剤の合計含有量が、0.01〜30質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程、
a2−a)
i)繰り返し単位中に、少なくとも1個のアミノ基を有するポリアゾール、
ii)少なくとも1種の強酸、及び
iii)少なくとも1種の安定化剤、
を含み、且つ膜中の安定化剤の合計含有量が、0.01〜30質量%の範囲である溶液を製造する工程、
a2−b)工程a−1)の溶液を使用して、膜を製造する工程、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリアゾールが、(固有粘度として測定して)少なくとも1.8dl/gの分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の強、プロトン酸、特にリン酸、及び/又は硫酸に基づく少なくとも1種の強、プロトン酸が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リン酸が、ポリリン酸、ホスホン酸(H3PO3)、オルトリン酸(H3PO4)、ピロリン酸(H427)、三リン酸(H5310)、メタリン酸、及び誘導体、特に有機誘導体、例えば環式の有機リン酸、及びその誘導体、例えば酸エステルを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式1によって表される第1のベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又は式2によって表される第2のベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化1】

ここで、
1〜R4が、それぞれ独立して、水素、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルコキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリールオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキルオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はシアノ基であり;
5が、ハロゲン化されたC1〜C20アルキル基、ハロゲン化されたC1〜C20アルコキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20アルケニル基、ハロゲン化されたC2〜C20アルキニル基、ハロゲン化されたC6〜C20アリール基、ハロゲン化されたC6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC7〜C20アリールアルキル基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリールアルキル基、ハロゲン化されたC4〜C20炭素環基、ハロゲン化されたC4〜C20炭素環アルキル基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロ環基、又はハロゲン化されたC2〜C20ヘテロ環アルキル基であり;
5’が、置換された、又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルコキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリールオキシ基、置換された又は置換されていないC7〜C20アリールアルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、又は置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環アルキル基であり;
6が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニレン基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリーレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、及び−SO2−から成る群から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下の式1によって表される第1のベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又は以下の式2によって表される第2のベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化2】

ここで、
1が、水素、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、又は置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はシアノ基であり;
2が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC7〜C20アリールアルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C20ヘテロアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環基、置換された又は置換されていないC5〜C20炭素環アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、又は置換された又は置換されていないC3〜C20ヘテロ環アルキル基であり;
3が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニレン基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリーレン基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、又は−SO2−である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式1によって表されるベンズオキサジンベースの化合物、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化3】

ここで、
1及びR2が、それぞれ独立して、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、又は以下の式によって表される基であり、
【化4】

ここで、
3が、水素原子、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6〜C20アリール基、ハロゲン化されたC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、又はハロゲン化されたC1〜C20ヘテロ環基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式1によって表されるベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化5】

ここで、
A、B、C、D及びEが炭素であるか、又はA、B、C、D及びEの1つ又は2つが、窒素であり、及び他のものが炭素であり、及び
1とR2が相互に結合して環を形成し、該環は、C6〜C10シクロアルキル基、C3〜C10ヘテロアリール基、縮合したC3〜C10ヘテロアリール基、C3〜C10ヘテロ環基、又は縮合したC3〜C10ヘテロ環基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式1によって表されるリン含有モノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化6】

ここで、
Aが、置換された又は置換されていないC1〜C20ヘテロ環基、置換された又は置換されていないC4〜C20シクロアルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基であり、及び
2及びR3が、それぞれ独立して、水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、又はヒドロキシル基であり、
前記モノマーは、少なくとも1つのオキサジンベースの部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
以下の式1によって表されるナフトキサジンベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化7】

ここで、
2及びR3又はR3及びR4が、互いに結合し、以下の式2によって表される基を形成し、
5及びR6又はR6及びR7が、互いに結合し、以下の式2によって表される基を形成し、
【化8】

ここで、
1が、置換された又は置換されていないC1〜C20アルキル基、置換された又は置換されていないC1〜C20アルコキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルケニル基、置換された又は置換されていないC2〜C20アルキニル基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリール基、置換された又は置換されていないC6〜C20アリールオキシ基、置換された又は置換されていないC7〜C20アリールアルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環基、置換された又は置換されていないC4〜C20炭素環アルキル基、置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環基、又は置換された又は置換されていないC2〜C20ヘテロ環アルキル基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式1によって表されるベンズオキサジンベースのモノマー、及び/又はこれらのポリマーが使用され、
【化9】

ここで、
1、R1’、R1”及びR2の少なくとも1つが、ハロゲン原子、ハロゲン化されたC1〜C20アルキル基、ハロゲン化されたC1〜C20アルコキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20アルケニル基、ハロゲン化されたC2〜C20アルキニル基、ハロゲン化されたC6〜C20アリール基、ハロゲン化されたC6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC2〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC4〜C20シクロアルキル基、又はハロゲン化されたC2〜C20ヘテロ環基であり;
1、R1’、R1”及びR2の他の1つが、置換された、又は置換されていない、ハロゲン化されていないC2〜C20ヘテロ環基であり;
及びR1、R1’、R1”及びR2の残っているものが、水素である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
これが、少なくとも3MPaの弾性の係数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって得ることができる膜。
【請求項16】
85℃〜120℃の温度範囲において、99%リン酸中、0.5質量%未満のポリアゾールポリマーの溶解度を有することを特徴とする、請求項15に記載の膜。
【請求項17】
膜電極アセンブリを製造するために、請求項15又は16の何れかに記載の膜を使用する方法。
【請求項18】
請求項15又は16の何れかに記載の膜を少なくとも1つ含む膜電極アセンブリ。
【請求項19】
燃料電池を製造するために、請求項18に記載の膜電極アセンブリを使用する方法。
【請求項20】
請求項18に記載の膜電極アセンブリを少なくとも1つ含む燃料電池。

【公表番号】特表2013−510912(P2013−510912A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538243(P2012−538243)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006912
【国際公開番号】WO2011/057804
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】