説明

窓用偏光膜及び乗り物用前窓

【課題】乗り物用フロントガラスに対するダッシュボード反射像の映り込みを低減することができ、優れた防眩効果を備え、熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できる窓用偏光膜及び該窓用偏光膜を用いた乗り物用前窓の提供。
【解決手段】少なくとも異方性吸収子を含有し、乗り物用前窓に用いられる窓用偏光膜であって、前記窓用偏光膜が、前記乗り物用前窓からの入射光がダッシュボードから反射する反射光の反射スペクトルを、可視光波長領域において略平坦化する透過スペクトルを有する窓用偏光膜である。該ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを有する態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗り物用前窓に好適に用いられる窓用偏光膜及び乗り物用前窓に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用前窓へのダッシュボードからの反射像の映り込みを低減する方法として、本発明者らは、先に、乗り物用前窓にダッシュボードの水平面と平行なS波を吸収する偏光膜を用い、反射光のS波を吸収させて、映り込みを低減する方法を提案している(特願2006−167964号)。この提案によれば、裏面反射による車内のダッシュボードの反射像の映り込みを防止することでトータルの反射防止効果が飛躍的に上がって安全性が向上し、更にダッシュボードのデザイン性を向上させることができる。
しかし、この提案の吸収型の偏光膜は、その原理上片方の偏波を吸収するため偏光度の上昇に伴って透過率が低くなり、映り込み防止性能を高くすると、乗り物用前窓の透過率が下がってしまい、視野が暗くなってしまうという問題がある。
【0003】
また、特許文献1及び非特許文献1には、反射防止膜を用いたダッシュボード反射像の映り込み防止方法について提案されている。
しかし、これらの提案の反射防止膜を乗り物用前窓に用いると、映り込みを防止できても反射光の吸収効果がないため、目に入ってくる光量が減少せず眩しく、しかも熱線遮蔽効果もないため、車内の温度上昇を防止できないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−301090号公報
【非特許文献1】「旭硝子技報」55号(2005年)39頁−45頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、乗り物用フロントガラスに対するダッシュボード反射像の映り込みを低減することができ、優れた防眩効果を備え、しかも熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できる窓用偏光膜及び該窓用偏光膜を用いた乗り物用前窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、窓用偏光膜の吸収特性をダッシュボードの反射特性に合わせて、あるいは人間の目の視感度の高い550nm帯域の反射光を吸収するように設定することにより、同じ透過率でもより目視の映り込み防止効果を実感できる方法を知見した。即ち、ダッシュボードに使用する素材の反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域の吸収率が高い(透過率が低い)窓用偏光膜を設計し、使用することにより、同じ可視光線透過率でもより効果的に映り込みを防止でき、優れた防眩効果を備え、しかも熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できることを知見した。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも異方性吸収子を含有し、乗り物用前窓に用いられる窓用偏光膜であって、
前記窓用偏光膜が、前記乗り物用前窓からの入射光がダッシュボードから反射する反射光の反射スペクトルを、可視光波長領域において略平坦化する透過スペクトルを有することを特徴とする窓用偏光膜である。
<2> ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを有する前記<1>に記載の窓用偏光膜である。
<3> 異方性吸収子が、ヨウ素錯体、二色性色素、有機金属錯体、無機金属錯体、異方性金属ナノ粒子、及びカーボンナノチューブから選択されるいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の窓用偏光膜である。
<4> 異方性金属ナノ粒子が、金、銀、銅、及びアルミニウムの少なくとも1種を含有する前記<3>に記載の窓用偏光膜である。
<5> 少なくとも基材と、偏光膜とを有してなり、
前記偏光膜が、前記<1>から<4>のいずれかに記載の窓用偏光膜であることを特徴とする乗り物用前窓である。
<6> 基材の乗り物内側の面に偏光膜を有する前記<5>に記載の乗り物用前窓である。
<7> 乗り物内側の最表面に反射防止膜を有する前記<5>から<6>のいずれかに記載の乗り物用前窓である。
<8> 基材が2枚の板ガラス間に中間層を有する合わせガラスであり、かつ該中間層が偏光膜である前記<5>から<7>のいずれかに記載の乗り物用前窓である。
<9> 基材がポリマーの板状成形物であり、かつ該基材の表面及び内部のいずれかに偏光膜を有する前記<5>から<8>のいずれかに記載の乗り物用前窓である。
<10> 乗り物が、自動車である前記<5>から<9>のいずれかに記載の乗り物用前窓である。
【0008】
本発明の窓用偏光膜は、少なくとも異方性吸収子を含有し、乗り物用前窓に用いられ、
前記窓用偏光膜が、前記乗り物用前窓からの入射光がダッシュボードから反射する反射光の反射スペクトルを、可視光波長領域において略平坦化する透過スペクトルを有する。その結果、乗り物用前窓に対するダッシュボード反射像の映り込みを低減することができ、優れた防眩効果を備え、また、熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できる。
【0009】
本発明の乗り物用前窓は、少なくとも基材と、偏光膜とを有してなり、前記偏光膜が、本発明の前記窓用偏光膜である。
本発明の乗り物用前窓においては、初めてダッシュボードに多彩な色や模様を施しても。安全運転に支障の無い、映り込み低減レベルを達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、乗り物用前窓に対するダッシュボード反射像の映り込みを低減することができ、優れた防眩効果を備え、熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できる窓用偏光膜及び該窓用偏光膜を用いた乗り物用前窓を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(窓用偏光膜)
本発明の窓用偏光膜は、乗り物用前窓に用いられ、少なくとも異方性吸収子を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0012】
前記窓用偏光膜は、前記乗り物用前窓からの入射光がダッシュボードから反射する反射光の反射スペクトルを、可視光波長領域において略平坦化する透過スペクトルを有する。この場合、ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを有することが好ましい。
ここで、前記主ボトムとは、偏光膜の透過スペクトルにおいて、その透過率が最小となる波長領域を意味する。
前記主ピークとは、ダッシュボードの反射スペクトルにおいて、その反射率が最大となる波長領域を意味する。
前記略平坦化とは、ほぼ平坦になっていればよく、完全に平坦化していない場合も含む意味である。
【0013】
図1に示すように、窓用偏光膜の透過率が可視光全領域でほぼ均一(透過スペクトルがフラット)であると、ダッシュボードからの反射スペクトルが550nm付近に主ピークを有していると、フロントガラスに映り込んだダッシュボードの反射スペクトルにも550nm付近に主ピークを有し、この波長において映り込みが生じてしまう。
そこで、図2に示すように、ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを持たせることにより、ダッシュボードの主ピーク強度を小さくすることができ、フロントガラスに映り込んだダッシュボードの反射スペクトルが略平坦化して、映り込み防止効果が発揮される。
【0014】
前記窓用偏光膜が、ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、該窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを有する偏光膜を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば(1)延伸法により異方性吸収子を一軸配向させる方法、(2)ゲスト-ホスト液晶法により異方性吸収子を一軸配向させる方法、(3)配向場中で異方性吸収子を一軸配向形成する方法などが挙げられる。
【0015】
前記(1)の延伸法としては、例えば(i)マトリックスポリマーをヨウ素錯体で染色後、延伸及び硬膜化することにより作製する方法、(ii)マトリックスポリマーを二色性色素で染色後、延伸及び硬膜化することにより作製する方法、(iii)マトリックスポリマーを金属錯体で染色後、延伸及び硬膜化することにより作製する方法、(iv)マトリックスポリマー中にカーボンナノチューブを分散し、延伸することにより作製する方法、(v)マトリックスポリマー中に異方性金属ナノ粒子を分散し、延伸することにより作製する方法、などが挙げられる。これらの中でも、(ii)マトリックスポリマーを二色性色素で染色後、延伸及び硬膜化することにより作製する方法延伸法により二色性材料を一軸配向させる方法が特に好ましい。
【0016】
前記(2)ゲスト-ホスト液晶法としては、例えば(i)二色性色素を液晶分子と共に配向させた後、UVあるいは熱硬化させることにより作製する方法、(ii)異方性金属ナノ粒子を液晶分子と共に配向させた後、UVあるいは熱硬化させることにより作製する方法などが挙げられる。これらの中でも、(i)二色性色素を液晶分子と共に配向させた後、UVあるいは熱硬化させることにより作製する方法が特に好ましい。
【0017】
前記(3)の配向場中で異方性金属ナノ粒子を一軸配向形成する方法としては、例えば(i)液晶分子を配向させた後、光硬化あるいは熱硬化することにより配向場を形成し、この液晶配向膜に金属化合物を塗布あるいは浸漬後、更に金属イオンを光還元、化学還元(還元剤、水素ガス等)や熱還元させることにより異方性金属ナノ粒子を形成する方法、(ii)マトリックスポリマー中に金属化合物ナノ粒子を分散後、延伸により配向場を形成し、更に光還元、化学還元(還元剤、水素ガス等)や熱還元することにより異方性金属ナノ粒子を形成する方法などが挙げられる。(iii)マトリックスポリマー中に金属ナノ粒子を分散後、延伸により配向場を形成し、更に加熱することにより異方性金属ナノ粒子を形成する方法などが挙げられる。
【0018】
前記窓用偏光膜は、乗り物用前窓に用いられ、該乗り物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船などが挙げられる。これらの中でも、自動車が特に好ましい。
【0019】
−異方性吸収子−
前記異方性吸収子は、アスペクト比の平均値が1.5以上であり、1.6以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。前記アスペクト比の平均値が1.5未満であると、十分な異方性吸収効果を発揮できないことがある。
ここで、前記異方性吸収子のアスペクト比は、異方性吸収子の長軸長さ及び短軸長さを測定し、次式、(異方性吸収子の長軸長さ)/(異方性吸収子の短軸長さ)から求めることができる。
前記異方性吸収子の短軸長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、1nm〜50nmが好ましく、5nm〜30nmがより好ましい。前記異方性吸収子の長軸長さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、10nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0020】
前記異方性吸収子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ヨウ素錯体、二色性色素、有機金属錯体、無機金属錯体、異方性金属ナノ粒子、及びカーボンナノチューブなどが挙げられる。これらの中でも、二色性色素、異方性金属ナノ粒子、カーボンナノチューブが特に好ましい。
なお、現在、ディスプレイ用途において大量に使用されているヨウ素/PVA系の偏光板も勿論、本発明の窓用偏光膜として使用できる。ただし、窓用というのは直射日光、又は厚み数mmのガラス1枚を介して強度の高い日光に晒される時間が長いため、通常のヨウ素/PVA系偏光板では数ヶ月で退色及び変色してしまうので、用途が限られてしまう。また、特に自動車フロントガラスに用いる場合には、法規上、透過率70%以上を遵守しなければならないという制約が課せられるため、通常のヨウ素/PVA系偏光板では50%以下の透過率になってしまって使えない。このため、自動車用への応用する場合には、異方性吸収子として耐久性の高い異方性金属ナノ粒子又はカーボンナノチューブを用いることが好ましいが、これらの添加量を調整して透過率70%を下回らない範囲とする必要がある。
【0021】
−二色性色素−
前記二色性色素としては、例えば、アゾ系色素、アントラキノン系色素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明において、前記二色性色素とは、光を吸収する機能を有する化合物と定義される。前記二色性色素としては、吸収極大及び吸収帯については、いかなるものであってもよいが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する場合が好ましい。また、二色性色素は2種以上を用いてもよく、ダッシュボードの反射スペクトルの主ピークに対応する波長領域を吸収できる二色性色素を用いるのがより好ましい。ここで、イエロー域とは430〜500nmの範囲、マゼンタ域とは500〜600nmの範囲、シアン域とは600〜750nmの範囲である。
【0023】
ここで、前記二色性色素に用いられる発色団について説明する。前記二色性色素の発色団としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素、フェノキサジン色素などが挙げられる。これらの中でも、アゾ色素、アントラキノン色素、フェノキサジン色素が好ましく、アントラキノン色素、フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)が特に好ましい。
【0024】
前記アゾ色素としては、例えばモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などが挙げられるが、これらの中でも、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素が特に好ましい。
前記アゾ色素に含まれる環構造としては、芳香族基(ベンゼン環、ナフタレン環等)のほかにも複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環等)であってもよい。
【0025】
前記アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0026】
前記フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基である。
【0027】
本発明で用いられる二色性色素としては、下記一般式(1)で表される置換基を有しているものが好ましい。
一般式(1):−(Het)−{(B−(Q−(B−C
ただし、前記一般式(1)中、Hetは酸素原子又は硫黄原子であり、B及びBは、各々独立に、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表す。jは0又は1を表す。p、q及びrは、各々独立に0〜5の整数を表す。nは1〜3の整数を表し、(p+r)×nは3〜10の整数であり、p、q及びrがそれぞれ2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は、それぞれ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
Hetは、酸素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。
及びBは、各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表し、いずれも置換基を有していてもいなくてもよい。
及びBで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。好ましいアリーレン基としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の基である。特に好ましくは、ベンゼン環、置換ベンゼン環の基であり、更に好ましくは1,4−フェニレン基である。
及びBで表されるヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1〜20のヘテロアリーレン基であり、より好ましくは炭素数2〜9のヘテロアリーレン基である。好ましいヘテロアリーレン基としては、例えばピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環からなる基、又はこれらが縮環して形成される縮環ヘテロアリーレン基である。
及びBで表される2価の環状脂肪族炭化水素基としては、好ましくは、炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜10の2価の環状脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の環状脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロヘキサンジイル、シクロペンタンジイルであり、より好ましくはシクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、シクロヘキサン−1,4−ジイル基である。
【0029】
及びBの表す2価のアリーレン基、ヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基は、更に置換基を有していてもよく、置換基としては、下記の置換基群Vが挙げられる。
【0030】
<置換基群V>
ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、沃素原子、フッ素原子)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基)、炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルフォニル基)、ニトロ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基)、炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基)、炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基)、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする}、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル器)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換又は無置換のヘテロアリール基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基)。
【0031】
これら置換基群Vはベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。更に、これらの置換基上に更に此処までに説明したVの説明で示した置換基が置換していてもよい。
【0032】
前記置換基群Vとして好ましいものは、上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
【0033】
は2価の連結基を表す。好ましくは、炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子から構成される原子団からなる連結基である。Qが表す2価の連結基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキシル−1,4−ジイル基)、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニレン基(例えば、エテニレン基)、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニレン基(例えば、エチニレン基)、アミド基、エーテル基、エルテル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜10のアルキル基であり、Rで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは6〜10のアリール基である。)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基(好ましくは、炭素数2〜20、より好ましくは炭素数4〜10の複素環2価基であり、例えば、ピペラジン−1,4−ジイル基である)を1つ又はそれ以上組み合わせて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0034】
の表す2価の連結基として、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、及びそれらを組み合わせた基である。
は更に置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基群Vが挙げられる。
【0035】
はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を表す。Cが表すアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基には、置換基を有するそれぞれの基も含むものとする。
は好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基及びシクロアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基)、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基)、炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基)、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアシル基(例えばアセチル基、ホルミル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基)、又は炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基)を表す。
【0036】
は好ましくは、アルキル基又はアルコキシ基であり、更に好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はトリフルオロメトキシ基である。
は更に置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基群Vが挙げられる。
【0037】
で表されるアルキル基の置換基としては、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0038】
で表されるシクロアルキル基の置換基は、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキル基であることが好ましい。
【0039】
で表されるアルコキシ基の置換基は、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子(特にフッ素原子)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0040】
で表されるアルコキシカルボニル基の置換基は、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0041】
で表されるアシル基の置換基は、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0042】
で表されるアシルオキシ基の置換基は、置換基群Vのうち、例えばハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基であることが好ましい。
【0043】
jは、0又は1を表し、好ましくは0である。
p、q及びrは、各々0〜5の数を表し、nは1〜3の数を表し、B及びBで表される基の総数、即ち(p+r)×nは、3〜10の整数であり、より好ましくは3〜5の整数である。なお、p、q、又はrが2以上のとき、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、nが2以上のとき、2以上の{(B−(Q−(B}は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
好ましいp、q、r及びnの組合せについて以下に記載する。
(i)p=3、q=0、r=0、n=1
(ii)p=4、q=0、r=0、n=1
(iii)p=5、q=0、r=0、n=1
(iv)p=2、q=0、r=1、n=1
(v)p=2、q=1、r=1、n=1
(vi)p=1、q=1、r=2、n=1
(vii)p=3、q=1、r=1、n=1
(viii)p=2、q=0、r=2、n=1
(ix)p=1、q=1、r=1、n=2
(x)p=2、q=1、r=1、n=2
【0045】
これらの中でも、特に好ましくは、(i)p=3、q=0、r=0、n=1;(iv)p=2、q=0、r=1、n=1;及び(v)p=2、q=1、r=1、n=1;の組合せである。
【0046】
なお、−{(B−(Q−(B−Cとしては、液晶性を示す部分構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコティック液晶であり、特に好ましくは、ネマチック液晶である。
【0047】
−{(B−(Q−(B−Cの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記化学式中、波線は連結位置を表す。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
本発明に用いられる二色性色素は、−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基を1個以上有しているのが好ましく、1〜8個がより好ましく、1〜4個が更に好ましく、1又は2個が特に好ましい。
【0051】
前記一般式(1)で表される置換基の好ましい構造は、下記の組み合わせである。
〔1〕Hetが硫黄原子であり、Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、j=1、p=2、q=0、r=1及びn=1を表す構造
〔2〕Hetが硫黄原子であり、Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、j=1、p=1、q=0、r=2及びn=1を表す構造
【0052】
特に好ましい構造としては、下記の組み合わせである。
〔I〕 Hetが硫黄原子を表し、Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキシル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、j=1、p=2、q=0、r=1及びn=1である下記一般式(a−1)で表される構造
〔II〕 Hetが硫黄原子を表し、Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、j=1、p=1、q=0、r=2及びn=1である下記一般式(a−2)で表される構造
【0053】
【化3】

【0054】
前記一般式(a−1)及び(a−2)において、Ra1〜Ra12は各々独立に、水素原子又は置換基を表す。該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれる置換基が挙げられる。
a1〜Ra12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であるのが好ましい。Ra1〜Ra12で表されるアルキル基、アリール基、及びアルコキシ基のうち、好ましいものは、前述の置換基群Vに記載のアルキル基、アリール基、及びアルコキシ基と同義である。
【0055】
前記一般式(a−1)及び(a−2)において、Ca1及びCa2は各々独立してアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、又はノニル基を表す。
【0056】
前記アゾ色素はモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかヘテロ環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0057】
前記アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基である。
該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、又は1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0058】
前記アントラキノン系色素としては、より好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物であり、フェノキサゾン色素としては、より好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0059】
一般式(2)
【化4】

【0060】
前記一般式(2)中、R、R、R、R、R、R、R及びRの少なくとも一つは、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cであり、他は各々独立に、水素原子又は置換基である。
【0061】
一般式(3)
【化5】

【0062】
前記一般式(3)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の少なくとも一つ以上は、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cであり、他はそれぞれ水素原子又は置換基である。
ここで、Het、B、B、Q、p、q、r、n、及びCは、一般式(1)におけるHet、B、B、Q、p、q、r、n、及びCと同定義である。
【0063】
前記一般式(2)中、R、R、R、R、R、R及びRで表される前記置換基としては、上記置換基群Vが挙げられるが、好ましくは、炭素数6〜80、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、4−n−プロピルフェニルチオ基、2−n−ブチルフェニルチオ基、3−n−ブチルフェニルチオ基、4−n−ブチルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基、3−t−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、3−n−ペンチルフェニルチオ基、4−n−ペンチルフェニルチオ基、4−アミルペンチルフェニルチオ基、4−ヘキシルフェニルチオ基、4−ヘプチルフェニルチオ基、4−オクチルフェニルチオ基、4−トリフルオロメチルフェニルチオ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基)、炭素数1〜80、より好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基)、置換若しくは無置換のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、フェネチルチオ基)、置換若しくは無置換のアミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、3−n−プロピルフェニルアミノ基、4−n−プロピルフェニルアミノ基、3−n−ブチルフェニルアミノ基、4−n−ブチルフェニルアミノ基、3−n−ペンチルフェニルアミノ基、4−n−ペンチルフェニルアミノ基、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、3−ピリジルアミノ基、2−チアゾリルアミノ基、2−オキサゾリルアミノ基、N,N−メチルフェニルアミノ基、N,N−エチルフェニルアミノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、置換若しくは無置換のアルキル基(例えば、メチル基、トリフルオロメチル基)、置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基)、置換若しくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基)、置換若しくは無置換のヘテロアリール基(例えば、2−ピリジル基)、置換若しくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基(例えば、3−チエニルオキシ基)などである。
【0064】
、R、R、R、R、R及びRとして好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、置換若しくは無置換の、アリールチオ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリーロキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、置換若しくは無置換の、アリールチオ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基又はアリールアミノ基である。
【0065】
また、更に好ましくは、前記一般式(2)において、R、R、R、及びRの少なくとも一つが、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cの場合である。
【0066】
前記一般式(3)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミド基であり、特に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリールチオ基、アミド基である。
【0067】
16として、好ましくはアミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ基を含む)、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基であり、特に好ましくはアミノ基である。
【0068】
以下に、本発明に使用可能な二色性色素の具体例を示すが、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0069】
【化6】

【0070】
【化7】

【0071】
【化8】

ただし、前記式中、Etはエチル基、t−Buはターシャリーブチル基を表す。
【0072】
【化9】

【0073】
以下に、本発明に使用可能なアゾ系二色性色素の具体例を示すが、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0074】
【化10】

【0075】
以下に、本発明に使用可能なジオキサジン系二色性色素及びメロシアニン系二色性色素の具体例を示すが、以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0076】
【化11】

【0077】
前記一般式(1)で表される置換基を有する二色性色素は、公知の方法を組み合わせて合成することができ、例えば、特開2003−192664号公報等に記載の方法に従って合成することができる。
【0078】
−異方性金属ナノ粒子−
前記異方性金属ナノ粒子は、数nm〜100nmのナノサイズの棒状金属微粒子である。ここで、前記棒状金属微粒子とは、アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)が1.5以上である粒子を意味する。
このような異方性金属ナノ粒子は、表面プラズモン共鳴を示し、紫外〜赤外領域に吸収を示す。例えば短軸長さが1nm〜50nm、長軸長さが10nm〜1000nm、アスペクト比が1.5以上の異方性金属ナノ粒子は、短軸方向と、長軸方向とで吸収位置を変えることができるので、このような異方性金属ナノ粒子を膜の水平面に対し略水平に配向させた窓用偏光膜は、異方性吸収膜となる。
ここで、図2に、短軸長さ12.4nm、長軸長さ45.5nmの異方性金属ナノ粒子の吸収スペクトルを示す。このような異方性金属ナノ粒子の短軸の吸収は530nm付近であり、赤色を示し、異方性金属ナノ粒子の長軸の吸収は780nm付近であり、青色を示す。
【0079】
前記異方性金属ナノ粒子の金属種としては、例えば金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、金、銀、銅、アルミニウムが好ましく、金、銀が特に好ましい。
次に、異方性金属ナノ粒子の好適な一例としての金ナノロッドについて説明する。
【0080】
−−金ナノロッド−−
前記金ナノロッドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)電解法、(2)化学還元法、(3)光還元法などが挙げられる。
【0081】
前記(1)電解法〔Y.−Y.Yu,S.−S.Chang,C.−L.Lee,C.R.C.Wang,J.Phys.Chem.B,101,6661(1997)〕は、カチオン性界面活性剤を含む水溶液を定電流電解し、陽極の金板から金クラスターを溶脱させて金ナノロッドを生成する。界面活性剤としては窒素原子に4つの疎水的な置換基が結合した構造を有する4級アンモニウム塩が用いられ、更に自律的な分子集合体を形成しない化合物、例えば、テトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)などが添加されている。金ナノロッドを製造する場合には、金の供給源は陽極の金板から溶脱する金クラスターであり、塩化金酸等の金塩は用いられていない。電解中は超音波を照射し、溶液中に銀板を浸漬して金ナノロッドの成長を促す。
この電解法では、電極とは別に浸漬する銀板の面積を変えることによって生成する金ナノロッドの長さを制御できる。金ナノロッドの長さを調整することによって近赤外光域の吸収バンドの位置を700nm付近から1200nm付近の間に設定することが可能となる。反応条件を一定に保てばある程度一定形状の金ナノロッドを製造することができる。しかし、電解に用いる界面活性剤溶液は過剰の4級アンモニウム塩とシクロヘキサンとアセトンを含む複雑な系であり、超音波照射など不確定な要素を有するため、生成する金ナノロッドの形状と各種調製条件との因果関係を理論的に解析し、金ナノロッド調製条件の最適化を行うことは困難である。また、電解という性質上、本質的にスケールアップが容易ではなく、大量の金ナノロッドの調製には適さない。
【0082】
前記(2)化学還元法〔N.R.Jana,L.Gearheart,C.J.Murphy,J.Phys.Chem.B,105,4065(2001)〕は、NaBHによって塩化金酸を還元して金ナノ粒子を生成させる。この金ナノ粒子を「種粒子」とし、溶液中で成長させることによって金ナノロッドを得る。この「種粒子」と成長溶液に添加する塩化金酸の量比により生成する金ナノロッドの長さが決定される。この化学還元法では前記(1)の電解法よりも長い金ナノロッドを作製することが可能であり、長さ1,200nmを超える近赤外光域に吸収ピークをもつ金ナノロッドが報告されている。
しかし、この化学還元法は「種粒子」の調製と、成長反応との2つの反応槽が必要である。また「種粒子」の生成は数分間で終了するが、生成する金ナノロッドの濃度を上げることが困難であり、金ナノロッドの生成濃度は、前記(1)の電解法の10分の1以下である。
【0083】
前記(3)光還元法〔F.kim,J.H.Song,P.Yang,J.Am.Chem.Soc.,124,14316(2002)〕は、前記(1)の電解法とほぼ同じ溶液に塩化金酸を添加し、紫外線照射により塩化金酸を還元する。紫外線照射には低圧水銀ランプを用いている。この光還元法では、種粒子を生成させずに金ナノロッドを生成することができる。金ナノロッドの長さの制御は照射時間によって可能である。生成する金ナノロッドの形状が均一に揃っていることが特徴的である。また、前記(1)の電解法では反応後に大量の球形粒子が共存するので遠心分離による分画が必要であるが、この光還元法では球状粒子の割合が少ないので分画処理が不要である。また、再現性が良好であり、一定操作でほぼ確実に同サイズの金ナノロッドを得ることができる。
【0084】
−カーボンナノチューブ−
前記カーボンナノチューブは、繊維径が1nm〜1,000nm、長さが0.1μm〜1,000μm、アスペクト比が100〜10,000の細長い炭素からなるチューブ状の炭素である。
前記カーボンナノチューブの作製方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法などが知られている。前記アーク放電法及びレーザー蒸発法により得られるカーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層のみの単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single Wall Nanotube)と、複数のグラフェンシートからなる多層カーボンナノチューブ(MWNT:Maluti Wall Nanotube)とが存在する。
また、熱CVD法及びプラズマCVD法では、主としてMWNTが作製できる。前記SWNTは、炭素原子同士がSP2結合と呼ばれる最も強い結合により6角形状につながったグラフェンシート一枚が筒状に巻かれた構造を有する。
【0085】
前記カーボンナノチューブ(SWNT、MWNT)は、グラフェンシート1枚〜数舞を筒状に丸めた構造を有する直径0.4nm〜10nm、長さ0.1μm〜数100μmのチューブ状物質である。グラフェンシートをどの方向に丸めるかによって、金属になったり半導体になったりするというユニークな性質を有する。このようなカーボンナノチューブは長さ方向に光吸収や発光が起こり易く、径方向は光吸収や発光が起こりにくいという性質を有し、異方性吸収材料、異方性散乱材料として用いられる。
【0086】
前記異方性吸収子の前記窓用偏光膜における含有量は、0.1質量%〜90.0質量%が好ましく、1.0質量%〜30.0質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、十分な偏光性が得られないことがあり、90質量%を超えると、窓用偏光膜の成膜がうまく行えなかったり、窓用偏光膜の透過率が下がり過ぎてしまうことがある。
【0087】
前記窓用偏光膜は、前記異方性吸収子以外にも窓用偏光膜の形成方法(配向方法)に応じて、分散剤、溶媒、バインダー樹脂等のその他の成分を含有してなる。
前記窓用偏光膜の形成方法としては、膜の水平面に対し異方性吸収子の長軸が略水平となるように配向させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)延伸法、(2)ゲスト−ホスト液晶法、(3)高シェア塗布法、(4)ラングミュア・ブロジェット(LB)法、(5)鋳型法、(6)蒸着−延伸法、(7)ミクロ相分離法などが挙げられ、これらの中でも、(1)ゲスト−ホスト液晶法、(2)延伸法が特に好ましい。なお、前記(1)延伸法及び前記(2)ゲスト−ホスト液晶法については、後述する窓用偏光膜の製造方法において詳細に説明する。
【0088】
(3)高シェア塗布法
異方性吸収子、必要に応じて、バインダー、溶剤、界面活性剤などを分散した塗布溶液をスリットコーターやダイコーター等の塗布時に高シェアをかけることができる方法により塗布することにより、異方性吸収子が膜の水平面に対し略水平に配向した窓用偏光膜が得られる。
(4)ラングミュア・ブロジェット(LB)法
異方性吸収子を分散した溶液を水面に展開し、異方性吸収子を水面に浮かべた後、水面面積を狭めることにより、異方性吸収子が膜の水平面に対し略水平に配向した窓用偏光膜が得られる。
(5)鋳型法
異方性吸収子をナノ凹凸、又はナノ溝を設けた基体表面に塗布することにより、異方性吸収子が膜の水平面に対し略水平に配向した窓用偏光膜が得られる。
(6)蒸着−延伸法
基材表面に異方性Arスパッタにより金属薄膜を蒸着させた後、基材のガラス転移温度程度まで加熱し、延伸することにより、異方性金属ナノ粒子が基材面(水平面)に対し略水平に配向した窓用偏光膜が得られる。
【0089】
<窓用偏光膜の製造方法>
−第1形態の窓用偏光膜の製造方法−
前記第1形態の窓用偏光膜の製造方法は、少なくとも異方性吸収子を含有する膜を形成し、該膜を一軸延伸して前記異方性吸収子の長軸が前記膜の水平面に対し略水平に配向している窓用偏光膜を形成する。
この第1形態の窓用偏光膜の製造方法は、前記(1)の延伸法と同様である。
【0090】
前記の延伸法では、基材上にポリマー溶液中に異方性吸収子を分散させた塗布液を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成した後、該塗布膜中のポリマーのガラス転移温度程度まで加熱し、一軸延伸する。また、上記方法以外にも、(1)基材上に異方性吸収子と、紫外線(UV)硬化性モノマー又は熱硬化性モノマーとを含有する塗布液を塗布し、乾燥させた後、UV照射又は加熱して得られた硬化膜を該硬化膜のガラス転移温度程度まで加熱し、一軸延伸する方法、(2)ポリマー膜表面に異方性吸収子の膜を転写後、ポリマーのガラス転移温度程度まで加熱し、一軸延伸する方法などが挙げられる。
【0091】
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン;ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、アルミニウム、銅、鉄等の金属製基板;セラミック製基板、ガラス製基板等であってもよい。
【0092】
前記ポリマーとして用いられる樹脂としては、特に制限はなく、可視光線から近赤外光領域の光に対して透過性を有する各種樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。
【0093】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマーが溶解もしくは安定に分散するような溶媒の中から適宜選択することができるが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール類;キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類、又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0094】
前記塗布方法としては、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビア法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
【0095】
前記延伸は、塗布膜中のポリマーのガラス転移温度程度まで加熱下で行うことが好ましい。また、延伸のため樹脂面に細い凸状や凹状の筋状痕などの欠陥が生じることがあるので、延伸後、塗布面を押圧し、平滑化処理することも好ましい。なお、押圧のための加圧手段としては、加圧ロールを用いるのが一般的であり、樹脂が加圧ロールに付着しないように、塗布面に離型紙など離型性のあるシートを重ね合わせるのが好ましい。
【0096】
前記延伸に用いる延伸装置の構成としては、例えば延伸すべきフィルムの走行通路の中心に対して対称に配設されたエンドレス状ガイドレールと、該エンドレス状ガイドレールにそれぞれ走行可能に支持されたフィルムクリップ群と、フィルムを延伸しやすくするための加熱ゾーンと、延伸後の形態を安定化するための冷却ゾーンを備えたものが適用できる。テンタークリップとしては、例えば、特開平6−344437号公報、特開2001−187421号公報に記載されているものが適用できる。
【0097】
−第2形態の窓用偏光膜の製造方法−
前記第2形態の窓用偏光膜の製造方法は、表面に配向膜を有する基材上に、少なくとも紫外線硬化性液晶化合物、及び異方性吸収子を含有する窓用偏光膜塗布液を塗布し、乾燥させて塗布層を形成し、該塗布層を液晶相が発現する温度にまで加熱した状態で紫外線照射して、前記異方性吸収子の長軸が前記基材面に対し略水平に配向している窓用偏光膜を形成する。
この第2形態の窓用偏光膜の製造方法は、前記(2)のゲスト−ホスト液晶法と同様である。
【0098】
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
【0099】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜500μmが好ましく、50μm〜300μmがより好ましい。
【0100】
前記配向膜は、前記基材の表面に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール等の膜を積層し、例えばラビングにより配向処理したものである。前記ラビングは、レーヨンや綿等からなる毛足の短いベルベット状の布を巻付けたドラムを回転させながら配向膜の表面に接触させる方法であり、ラビング処理を施された配向膜は、その表面に微細な溝が一方向に形成され、ここに接触する液晶を配向させるようになっている。
また、前記配向膜は、ラビング法によらず光配向処理したものであってもよい。この光配向は、アドベンゼン系ポリマーやポリビニルシンナメート等の光活性分子に光化学反応を起こす波長の直線偏光や斜め非偏光を照射して光配向膜の表面に異方性を生成させるものであり、入射光によって膜の最表面の分子長軸の配向が生成され、この最表面の分子に接触する液晶を配向させる駆動力が形成されている。
なお、前記光配向膜の材料としては、前記の他に、光活性分子が光化学反応を起こす波長の直線偏光又は斜め非偏光照射による光異性化、光二量化、光環化、光架橋、光分解、光分解−結合のうち、いずれかの反応により膜表面に異方性を生成するものであればよく、例えば、「長谷川雅樹、日本液晶学会誌、Vol.3 No.1,p3(1999)」、「竹内安正、日本液晶学会誌、Vol.3 No.4,p262(1999)」などに記載されている種々の光配向膜材料を使用することができる。
上記のような配向膜に液晶を塗布すると、配向膜表面の微細な溝及び最表面の分子の配向の少なくともいずれかを駆動力として液晶が配向される。
【0101】
前記紫外線硬化性液晶化合物としては、重合性基を有し、紫外線の照射によって硬化するものであれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、下記構造式で表される化合物が好適に挙げられる。ただし、これらに制限されるものではない。
【0102】
【化12】

【0103】
【化13】

【0104】
前記液晶化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Silicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83などが挙げられる。
【0105】
前記液晶性化合物の含有量は、前記窓用偏光膜塗布液の全固形分(質量)に対し5質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜80質量%がより好ましい。
【0106】
前記窓用偏光膜塗布液は光重合開始剤を含有することが好ましい。前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィン誘導体、チオキサントン/アミン、チタノセンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記光重合開始剤としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPOなどが挙げられる。
前記光重合開始剤の添加量は、前記窓用偏光膜塗布液の全固形分質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜5質量%がより好ましい。
【0107】
前記窓用偏光膜塗布液は、例えば、前記紫外線硬化性液晶化合物、異方性吸収子、必要に応じてその他の成分を適当な溶媒に溶解乃至分散することによって調製できる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記窓用偏光膜塗布液を、表面に配向膜を有する基材上に塗布し、乾燥させて塗布層を形成した後、異方性吸収子の配向状態を固定するため、塗布層を液晶相が発現する温度にまで加熱した状態で紫外線照射する。これにより、前記異方性吸収子の長軸が前記膜の水平面に対し略水平に配向した窓用偏光膜を形成することができる。
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、照射紫外線は、160nm〜380nmが好ましく、250nm〜380nmがより好ましい。照射時間は、例えば、0.1秒間〜600秒間が好ましく、0.3秒間〜300秒間がより好ましい。また、前記加熱条件は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜120℃が好ましい。
前記紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などを挙げることができる。
【0109】
(乗り物用前窓)
本発明の乗り物用前窓は、基材と、偏光膜とを有してなり、反射防止膜、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記偏光膜としては、本発明の前記窓用偏光膜が用いられる。
前記偏光膜は、基材の乗り物内側の面(外光が入射しない側の面)に有することが好ましい。
【0110】
前記乗り物前窓では、通常、基材面と水平基準面とのなす角が20度〜50度であることが好ましい。
ここで、前記乗り物用前窓は、図4に示すように、前記フロントガラスを構成する基材1の光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。また、フロントガラスが2枚の板ガラスの間に中間層を有する合わせガラスの場合には、図5に示すように前記窓用偏光膜を中間層6とするか、又は図6に示すように合わせガラスの光入射側でない面(うら面)に形成することが好ましい。
【0111】
前記乗り物としては、乗り物のフロントガラスと水平基準面とのなす角が20度〜50度であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船、などが挙げられ、これらの中でも、自動車が特に好ましい。
【0112】
<基材>
本発明の乗り物用前窓に用いられる基材としてはガラスが最も適している。これは、ガラスは風雨に晒される環境において乗り物の概略寿命である12年の耐久性を持ち、偏光を乱さない、と言う点において最も実績があるからである。しかし、最近ではポリマーの板状成形物においてもノルボルネン系高分子等のように高耐久性であって等方性が高く偏光を乱しにくいプラスチックが提供されており、基材としてガラス以外を用いることも可能である。
【0113】
−基材ガラス−
前記基材ガラスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単層ガラス、合わせガラス、強化合わせガラス、複層ガラス、強化複層ガラス、合わせ複層ガラスなどが挙げられる。
このようなガラスを構成する板ガラスの種類としては、例えば透明板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、強化板ガラス、熱線反射板ガラス、熱線吸収板ガラス、Low−E板ガラス、その他各種板ガラスなどが挙げられる。
なお、前記基材ガラスは、透明ガラスであれば無色透明ガラス及び有色透明ガラスのどちらであってもよい。
前記基材ガラスの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mm〜20mmが好ましく、4mm〜10mmがより好ましい。
【0114】
−合わせガラス−
前記合わせガラスは、2枚の板ガラスの間に中間層を介在させて一体化したものである。このような合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することがなく安全であるため、自動車等の乗り物のフロントガラス、建築物等の窓ガラスとして広く用いられている。自動車用合わせガラスの場合には、最近では軽量化を図るため相当薄いものが用いられており、1枚のガラスは厚みが1mm〜3mmであり、該ガラス2枚を厚みが0.3mm〜1mmの粘着層で貼り合わせて、合計厚み約3mm〜6mmの合わせガラスとしている。
【0115】
前記2枚の板ガラスとしては、上述した各種板ガラスを目的に応じて適宜使用することができる。
前記中間層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力等の諸性能のバランスに優れた中間層が得られることから、ポリビニルアセタール系樹脂が特に好ましい。
【0116】
前記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することもある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。
前記ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均重合度が200〜5,000のものが好ましく、500〜3,000のものがより好ましい。前記平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を用いた中間層の強度が弱くなりすぎることがあり、5,000を超えると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を成形する際に不具合が生じることがある。
前記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アセタール化度が40モル%〜85モル%であるものが好ましく、50モル%〜75モル%のものがより好ましい。前記アセタール化度が40モル%未満又は85モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂は反応機構上、合成が困難となることがある。前記アセタール化度は、JIS K6728に準拠して測定することができる。
【0117】
前記中間層には、前記熱可塑性樹脂以外にも、必要に応じて例えば可塑剤、顔料、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外吸収剤などを添加することができる。
前記中間層の成形方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂及びその他の成分を含有する組成物を均一に混練りした後、押出し法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等の従来公知の方法によりシート状に作製する方法などが挙げられる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3mm〜1.6mmが好ましい。
本発明においては、前記中間層が、本発明の前記窓用偏光膜であることが生産性、耐久性などの点から好ましい。前記中間層が本発明の前記窓用偏光膜である場合には、該中間層は異方性吸収子を含有し、該異方性吸収子を略水平方向に配向させること以外は同様である。なお、前記偏光膜は合わせガラスの片方の面に設けることもできる。
【0118】
前記合わせガラスの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2枚の透明なガラス板の間に中間膜を挟み、この合わせガラス構成体を例えばゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65kPa〜−100kPaの減圧度となるように減圧吸引(脱気)しながら温度が約70℃〜110℃の予備接着を行った後、この予備接着された合わせガラス構成体をオートクレーブの中に入れ、温度120℃〜150℃、圧力0.98MPa〜1.47MPaの条件で加熱加圧して本接着を行うことにより、所望の合わせガラスを得ることができる。
【0119】
<反射防止膜>
前記反射防止膜は、前記基材の少なくとも片方の最表面に反射防止膜を有することが好ましく、基材の光入射側でない面(乗り物内側の面)に偏光膜と、該偏光膜上に反射防止膜とを有することがより好ましい。
【0120】
前記反射防止膜は、実使用上充分な耐久性、耐熱性を有し、例えば60度入射での反射率を5%以下に抑えることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)微細な表面凹凸を形成した膜、(2)高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせた2層膜の構成、(3)中屈折率膜、高屈折率膜、及び低屈折率膜を順次積層した3層膜構成などが挙げられる。これらの中でも、(2)及び(3)が特に好ましい。
これら反射防止膜は、基材ガラス表面に直接ゾルゲル法、スパッタリング法、蒸着法、CVD法などで形成してもよい。また、透明支持体上にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法による塗布により反射防止膜を形成し、基材ガラス表面に反射防止膜を粘着又は接着してもよい。
【0121】
前記反射防止膜は、上述したとおり、透明支持体上に低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層)、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層を二層とする場合には、透明支持体上に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。このような構成の反射防止膜は、「高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率」の関係を満足する屈折率を有するように設計される。なお、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
【0122】
−透明支持体−
前記透明支持体としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースアシレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトンなどが挙げられる。
【0123】
−高屈折率層及び中屈折率層−
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを含有する硬化性膜からなることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられ、特に好ましい元素はCoである。
Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対して0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.2質量%〜7質量%が更に好ましく、0.3質量%〜5質量%が特に好ましく、0.5質量%〜3質量%が最も好ましい。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部や表面に存在する。Co、Al、Zrが二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称することもある)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物は、Coイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。
ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、Biなど挙げられ、これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が最も好ましい。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子のいずれの状態で存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することが好ましい。表面と内部との両方に存在することがより好ましい。
【0124】
上記のような超微粒子とするには、粒子表面を表面処理剤で処理する方法、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法、及び、特定の分散剤を併用する方法等が挙げられる。
粒子表面を表面処理剤で処理する方法に挙げられる表面処理剤としては、例えば、特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、及び特開2000−9908号公報に記載されたシランカップリング剤等、特開2001−310432号公報等に記載されたアニオン性化合物又は有機金属カップリング剤が開示されている。
また、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法としては、特開2001−166104号公報、及び米国特許公開2003/0202137号公報等に記載の技術を用いることができる。
更に、特定の分散剤を併用する方法は、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858明細書、及び特開2002−2776069号公報等に記載の技術が挙げられる。
【0125】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性、及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されているものが挙げられる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。中屈折率層の厚みは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0126】
−低屈折率層−
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50がより好ましい。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
【0127】
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50が好ましく、1.36〜1.47がより好ましい。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35質量%〜80質量%の範囲で含む架橋性、若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、及び特開2004−45462号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物が好適であり、これらの中でも、高分子鎖中に硬化性官能基又は重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが特に好ましい。例えば、反応性シリコーン〔例えばサイラプレーン(チッソ株式会社製)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)〕などが挙げられる。
【0128】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。前記重合開始剤、及び前記増感剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0129】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報等に記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報に記載の化合物等)等が挙げられる。
前記低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、前記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。前記中空の無機微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、1.17〜1.37がより好ましく、1.17〜1.35が更に好ましい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
前記低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30%〜100%が好ましく、35%〜80%がより好ましく、40%〜60%が更に好ましい。
即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、35nm以上80nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下が更に好ましい。
ここで、前記中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ株式会社製)にて測定することができる。
【0130】
その他の添加剤としては、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0131】
前記低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよいが、安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
前記低屈折率層の厚みは、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることが更に好ましく、60nm〜120nmであることが特に好ましい。
【0132】
前記乗り物用前窓におけるその他の層としては、必要に応じて例えば、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層、保護層等を設けてもよい。
【0133】
−乗り物用前窓の用途等−
本発明の乗り物用前窓は、以上説明したように、優れた光学的異方性(異方性吸収、異方散乱性、偏光、複屈折性等)を備えているので、自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラスとして好適に用いられるが、乗り物用窓以外にも、例えば一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【0134】
本発明の乗り物用前窓は、以上説明したように、自動車等の乗り物のフロントガラスに用いた場合には、車内のダッシュボード等の構造物の反射像や外灯等の映り込みを防止することができ、運転者の前方の安全視界が確保される。また、本発明の乗り物用前窓を使用することにより、従来は用いることのできなかった明るい色や絵柄の付いた意匠性の高いダッシュボードを採用することが可能になる。
【実施例】
【0135】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0136】
(実施例1)
−窓用偏光膜の作製−
<ゲスト−ホスト型液晶法による二色性色素が配向した偏光膜の作製>
−配向膜の作製−
清浄な幅20cm、長さ30cm、厚み100μmのTACベースに、ポリビニルアルコール(PVA)配向膜溶液(メタノール溶液)をバーコート塗布し、100℃で3分間乾燥させることにより、厚み1.0μmのPVA膜を作製した。このPVA膜表面をラビング装置(常陽工学株式会社製、回転数1000rpm、押し込み量0.35mm)で2回ラビングすることにより、PVA配向膜を作製した。
【0137】
−偏光層塗布液の調製−
光重合性基を有する液晶化合物(Merck社製、商品名:RM257)2.25gをメチルエチルケトン(MEK)3.48gに溶解した液晶溶液に、〔イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.90g、及びカヤキュアDETX(日本化薬株式会社製)0.30gをメチルエチルケトン(MEK)8.80gに溶解した溶液〕0.78gを添加し、更に水平配向剤(メガファックF780F、大日本インキ化学工業株式会社製)の5.0質量%メチルエチルケトン溶液0.47gを添加し、15分間攪拌することにより、完全に溶解させた。
次に、得られた溶液に二色性色素(G−241、株式会社林原生物化学研究所製:主吸収波長550nm)0.027gを添加し、5分間攪拌することにより、偏光層塗布液を調製した。
【0138】
−二色性色素の配向及び硬化−
得られた偏光層塗布液を、上記PVA配向膜上に、バーコート塗布し、塗布面の反対側の面が接触するようにホットプレートに載せ、90℃で1分間加熱した後、加熱した状態で紫外線(UV)照射(高圧水銀灯、1kW、330mJ/mm)することにより、二色性色素が配向した厚み1.2μmの偏光層を形成した。
【0139】
(実施例2)
−窓用偏光膜の作製−
実施例1で用いた二色性色素G−241を、二色性色素G−205(株式会社林原生物化学研究所製、主吸収波長490nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光膜を作製した。
【0140】
(実施例3)
−窓用偏光膜の作製−
実施例1で用いた二色性色素G−241を、二色性色素G−472(株式会社林原生物化学研究所製:主吸収波長620nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、偏光膜を作製した。
【0141】
(実施例4)
−窓用偏光膜の作製−
実施例1と同様に偏光膜を作製した。
−反射防止膜付きガラスの作製−
真空槽内に金属チタン(Ti)と比抵抗1.2Ω・cmのn型Si(リンドープ単結晶)をターゲットとしてカソード上に設置し、真空槽を1.3×10−3Pa(1×10−5Torr)まで排気した。真空槽内に設置した無着色のソーダライムガラス基板1(厚み2mm)上に、以下のようにして、反射防止膜をガラス基板上に形成した。
(1)まず、放電ガスとしてアルゴンと窒素の混合ガス(10%窒素)を導入し、圧力が0.27Pa(2×10−3Torr)になるようコンダクタンスを調整した。次いでTiのカソードに負のDC電圧を印加し、TiターゲットのDCスパッタリングにより、7.2nmの窒化チタン膜2(光吸収膜、可視光領域における消衰係数が0.5以上、波長550nmにおける消衰係数が1.26、屈折率が1.9)を成膜した。
(2)ガス導入を停止し、真空槽内を高真空とした後、放電ガスとしてアルゴンと窒素の混合ガス(33%窒素)を導入し、圧力が0.27Pa(2×10−3Torr)になるようコンダクタンスを調整した。次いで、SiのカソードにDC電源からSPARCLE−V(アドヴァンスト・エナジー社製)を経由してパルス化されたDC電圧を印加し、Siターゲットの間欠DCスパッタリングにより、5nmの透明な窒化シリコン膜(透明窒化物膜、本例ではバリア膜に相当する:波長550nmにおける消衰係数が0.01、屈折率が1.93)を形成した。
(3)ガス導入を停止し、真空槽内を高真空とした後、放電ガスとして酸素ガス(100%)を導入し、圧力が0.27Pa(2×10−3Torr)になるようコンダクタンスを調整した。次いで、SiのカソードにDC電源からSPARCLE−V(アドヴァンスト・エナジー社製)を経由してパルス化されたDC電圧を印加し、Siターゲットの間欠DCスパッタリングにより、122nmの酸化シリコン膜(酸化物膜、波長550nmにおける屈折率が約1.47)を形成した。
【0142】
(比較例1)
偏光膜、及び反射防止膜の無い、素ガラスのみの基板を比較例1とした。
【0143】
(比較例2)
偏光膜は無く、反射防止膜のみを設けたガラス基板を比較例2とした。なお、反射防止膜は、実施例4と同様に作製した。
【0144】
(比較例3)
以下のようにして透過スペクトルに主ボトムの無い偏光膜を作製し、反射防止膜は無いガラス基板を比較例3とした。
−窓用偏光膜の作製−
PVAフィルム(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコールフィルム)を純水に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素0.5g、ヨウ化カリウム5.0gを水494.5gに溶解した染色液に30秒間浸漬し、ヨウ化カリウム10.0g、ホウ酸10.0gを水480.0gに溶解した硬膜液に60秒間浸漬し、一軸延伸機にフィルムの両端をセットし、高温高湿下(60℃、90%RH)で5倍まで延伸した。更に、70℃で4分間乾燥させることにより、ヨウ素錯体が延伸配向した偏光膜を得た。
【0145】
(比較例4)
透過スペクトルに主ボトムの無い偏光膜と、反射防止膜を設けたガラス基板を比較例4とした。透過スペクトルに主ボトムの無い偏光膜は、比較例3と同様に作製した。
【0146】
(比較例5)
偏光膜は無く、「旭硝子技報」55号(2005年)に記載の反射防止膜のみを設けたガラス基板を比較例5とした。なお、反射防止膜付きガラスは、「旭硝子技報」55号(2005年)p.44に記載の方法により、ガラス/TiO(5層)/TiNx(5層)Si(5層)/SiO(115層)を作製した。
なお、比較例5の反射防止膜付きガラスの反射特性を有効に評価するため、比較例5についてのみ、ダッシュボードサンプルはエメラルドグリーンではなく、白色レザークロスにブルーを塗布したものを用いた。
【0147】
次に、得られた実施例1〜4及び比較例1〜5のサンプルについて、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0148】
<可視光線透過率T(%)の測定>
可視光線透過率T(%)は、図7に示す合せガラスのサンプルを作製し、分光スペクトロメーター(日本分光株式会社製、V−560)で垂直入射の透過スペクトルを測定した。なお、サンプルは偏光フィルムの吸収軸を水平面に対し、45°傾けて測定を行った。なお、図7中、11はガラス、12は反射防止膜、13は偏光層、14は光学用粘着テープ又はマッチングオイル、15は検出器をそれぞれ表す。
【0149】
<反射率R(%)の測定>
可視光線反射率R(%)は、図8に示す合せガラスのサンプルを作製し、絶対反射率測定ユニット付き(AR−475)の分光スペクトロメーター(日本分光株式会社製、V−560)を用い、入射角度55°の反射スペクトルを測定した。なお、45°に傾けた偏光子入射光光路に挿入し、無偏光光と見なせる状態で測定を行った。図8中、11はガラス、12は反射防止膜、13は偏光層、14は光学用粘着テープ又はマッチングオイル、15は検出器をそれぞれ表す。
【0150】
<映り込み及び眩しさの評価>
図9に示すように人工太陽灯1(セリック社製、XC−100AF)、合せガラスサンプル2、ダッシュボードサンプル3、色度計(マルチメディアテスタ、横河電機株式会社製)4を設置し、映り込み量の色度、輝度(眩しさ)、及び目視評価を実施した。
ダッシュボードサンプル3としては、市販の白色レザークロス(三裕商会株式会社製、40012)にエメラルドグリーン(アサヒペン株式会社製)をスプレー塗装し、乾燥した後、塗布面をスポンジタワシでこすったものを用いた。このダッシュボードサンプルの反射スペクトルは、550nmに主ピークを有していた。
【0151】
<車内温度の評価>
図10に示すように人工太陽灯1(セリック社製、XC−100AF)、合せガラスサンプル2、ダッシュボードサンプル3、熱電対4、アクリル製カバー5を設置し、太陽灯による光照射時のダッシュボードの温度を測定した。
【0152】
【表1】

*ボトム位置とは、偏光膜、又はフロントガラスサンプルの透過スペクトルにおいて、透過率が400nm〜800nmの範囲において最小となる領域を意味する。
【0153】
【表2】

*ボトム位置とは、偏光膜、又はフロントガラスサンプルの透過スペクトルにおいて、透過率が400nm〜800nmの範囲において最小となる領域を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の窓用偏光膜及び乗り物用前窓は、特に、自動車等の乗り物のフロントガラスに好適に用いられ、ダッシュボード反射像の映り込みを低減でき、安全性に優れ、優れた防眩効果を備え、しかも熱線遮蔽効果により乗り物内の温度上昇を防止できる。また、従来は用いることのできなかった明るい色や絵柄の付いた意匠性の高いダッシュボードを用いることができるので、自動車、電車、新幹線、飛行機などをはじめ各種乗り物のフロントガラスなどに幅広く好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、従来の偏光膜の可視光領域での乗り物用前窓に映り込んだダッシュボードの反射スペクトルを示す図である。
【図2】図2は、本発明の偏光膜の可視光領域において乗り物用前窓にダッシュボードの反射像の移り込み防止を説明するための図である。
【図3】図3は、異方性金属ナノ粒子の吸収スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、ガラスの片面側に偏光膜を設けた一例を示す図である。
【図5】図5は、合わせガラスの中間層として偏光膜を設けた一例を示す図である。
【図6】図6は、合わせガラスの片面側に偏光膜を設けた一例を示す図である。
【図7】図7は、実施例における可視光線透過率T(%)を測定する方法を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例における反射率R(%)を測定する方法を説明するための図である。
【図9】図9は、実施例における映り込み及び眩しさを評価する方法を説明するための図である。
【図10】図10は、実施例における車内温度を評価する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0156】
1 基材
2 偏光膜
3 反射防止膜
6 中間層
11 ガラス
12 反射防止膜
13 偏光層
14 光学用粘着テープ又はマッチングオイル
15 検出器
P 異方性吸収子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも異方性吸収子を含有し、乗り物用前窓に用いられる窓用偏光膜であって、
前記窓用偏光膜が、前記乗り物用前窓からの入射光がダッシュボードから反射する反射光の反射スペクトルを、可視光波長領域において略平坦化する透過スペクトルを有することを特徴とする窓用偏光膜。
【請求項2】
ダッシュボードにおける反射スペクトルの主ピークに相当する波長領域に、窓用偏光膜の透過スペクトルの主ボトムを有する請求項1に記載の窓用偏光膜。
【請求項3】
異方性吸収子が、ヨウ素錯体、二色性色素、有機金属錯体、無機金属錯体、異方性金属ナノ粒子、及びカーボンナノチューブから選択されるいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の窓用偏光膜。
【請求項4】
異方性金属ナノ粒子が、金、銀、銅、及びアルミニウムの少なくとも1種を含有する請求項3に記載の窓用偏光膜。
【請求項5】
少なくとも基材と、偏光膜とを有してなり、
前記偏光膜が、請求項1から4のいずれかに記載の窓用偏光膜であることを特徴とする乗り物用前窓。
【請求項6】
基材の乗り物内側の面に偏光膜を有する請求項5に記載の乗り物用前窓。
【請求項7】
乗り物内側の最表面に反射防止膜を有する請求項5から6のいずれかに記載の乗り物用前窓。
【請求項8】
基材が2枚の板ガラス間に中間層を有する合わせガラスであり、かつ該中間層が偏光膜である請求項5から7のいずれかに記載の乗り物用前窓。
【請求項9】
基材がポリマーの板状成形物であり、かつ該基材の表面及び内部のいずれかに偏光膜を有する請求項5から8のいずれかに記載の乗り物用前窓。
【請求項10】
乗り物が、自動車である請求項5から9のいずれかに記載の乗り物用前窓。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−233757(P2008−233757A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76465(P2007−76465)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】