説明

立て管施工方法および立て管ユニット

【課題】 狭い施工スペースでも容易に、かつ、大掛かりな施工機械などを要しないで、立て管を設置することを可能にする。
【解決手段】 管材2が並列に配置され管材2と管材2とが接続プレート3で接続された立て管ユニット1を製作し、この立て管ユニット1を下階に設けた荷揚げスペースに仮置きする。上階に設置したウインチ21のワイヤ21Aの先端部を第1の立て管ユニット1の接続プレート3に接続して、第1の立て管ユニット1を所定の位置まで吊り上げ、建物に固定する。第1の立て管ユニット1の接続プレート3間にワイヤ21Aを通した状態で、ワイヤ21Aの先端部を第2の立て管ユニット1の接続プレート3に接続して、第2の立て管ユニット1を第1の立て管ユニットの下端まで吊り上げ、第1の立て管ユニット1の管材2と第2の立て管ユニット1の管材2とを接続する。以後同様にして順次、次の立て管ユニット1を接続していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調設備や衛生設備などの立て管(竪管)を建物に設置する立て管施工方法および、この方法に使用される立て管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
立て管を建物に設置する方法として、管材を縦につなげて吊り上げていく方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、立て管を構成するための管材を建物の一階に集積し、頂部に位置することになる第1の管材を上方から吊り上げ、この管材の下端に第2の管材を接合して、管材をさらに吊り上げる。同様にして、第2の管材の下端に第3の管材を接合し、順次、管材を縦につなげて吊り上げていくものである。
【0003】
また、架台に複数の管材を配置し、一階分ずつリフトアップする方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法は、上部架台の仮固定装置に上階の管材を仮固定し、ガイドレールに沿って昇降する可動架台の芯出し治具に、下階の管材をセットする。そして、可動架台を上昇させて、上階の管材に下階の管材を接触させ、接続作業を行うものである。
【特許文献1】特開平07−034666号公報
【特許文献2】特開平10−184016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された方法では、複数階分の管材をつなげて吊り上げるため、吊り上げ容量が大きい揚重機が必要となり、揚重機の費用がかさむことになる。また、複数の管材をつなげて吊り上げるため、管材が横振れし、安定した吊り上げが困難なために別途対策を講じる必要があり、さらに、複数階分をまとめて施工するため、本施工工程が建築工程に左右されがちである。
【0005】
一方、上記特許文献2に記載された方法では、管材をセットした状態で昇降する可動架台、つまり揚重機構付きの架台を要するため、その製作に時間と費用とを要する。また、揚重機と架台のスペースを要するのみならず、安全に管材を立て起こしたりするためのスペースなどを要する。さらには、管材を1本ずつ立て起して架台にセットしなければならず、改善の余地があった。
【0006】
そこでこの発明は、狭い施工スペースでも容易に、かつ、大掛かりな施工機械などを要しないで、立て管を設置することが可能な立て管施工方法および立て管ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、立て管を建物に設置する立て管施工方法であって、前記立て管を構成する複数本の管材が所定の距離を隔てて並列に配置され、隣接する管材と管材とを接続する接続部材が、当該両管材の軸線が位置する面を挟むように対向して配設された立て管ユニットを製作し、前記立て管ユニットを下階に設けた荷揚げスペースに位置させ、上階に設置した揚重機のワイヤの先端部を、前記荷揚げスペースの立て管ユニットの接続部材に接続し、前記ワイヤを巻き上げて前記立て管ユニットを所定の位置まで吊り上げ、建物に固定し、前記固定した上位の立て管ユニットの接続部材間を通して前記ワイヤを前記荷揚げスペースまで下げ、このワイヤの先端部を荷揚げスペースに位置されている次の立て管ユニットの接続部材に接続し、前記ワイヤを巻き上げて前記上位の立て管ユニットの下端まで吊り上げ、前記上位の立て管ユニットの管材下端部と吊り上げた立て管ユニットの管材上端部とを接続し、以後同様にして順次、次の立て管ユニットを接続していく、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の立て管施工方法において、前記荷揚げスペースを立て管の最下階に設けない場合に、前記荷揚げスペースよりも下の階用の立て管ユニットを当該階に位置させ、前記荷揚げスペースから上の階用の立て管ユニットを配設した後に、前記荷揚げスペースよりも下の階用の立て管ユニットを配設する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の立て管施工方法において、建物の各階の床に、前記立て管ユニットを貫通させ、断熱材の被覆代が確保された上で前記立て管ユニットとの隙間が小さくなるように大きさが設定され、前記立て管ユニットの断面形状と同形状のスリーブ開口を形成し、このスリーブ開口を貫通するように前記立て管ユニットを配設する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、建物に設置される立て管を構成する立て管ユニットであって、建物に設置される立て管を構成する立て管ユニットであって、複数本の管材が所定の距離を隔てて並列に配置され、隣接する管材と管材とを接続する接続部材として一対の金属製の接続プレートを採用し、この接続プレートは、当該両管材の軸線が位置する面を挟むように対向し、かつ、揚重機のワイヤを通せるように配設され、このような対の接続部材が、少なくとも前記管材の上端部側と下端部側とに配設され、少なくともひとつの前記接続部材に、揚重機のワイヤを接続する被接続部が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の立て管ユニットにおいて、上位の立て管ユニットの管材の下端部が、下位の立て管ユニットの管材の上端部内に嵌合するように、上端部および下端部の形状が設定されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から3に記載の立て管施工方法において、前記管材の定尺長と各階間の距離とに基づいて、定尺の管材が多く、かつ、前記管材下端部と管材上端部との接続部が各階において所定の高さに位置するように、前記立て管ユニットの長さを設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、立て管ユニットごとに吊り上げるため、大掛かりな施工機械、つまり吊り上げ容量が大きい揚重機などを要しない。また、吊り点が揚重対象の管材間に限定されるため、狭い施工スペースでも安全かつ容易に施工することが可能となる。しかも、既に設置した立て管ユニットの接続部材間に揚重機のワイヤを通して次の立て管ユニットを吊り上げるため、ワイヤが接続部材間でガイドされ、立て管ユニットが振れることなく安定して吊り上げられるとともに、固定済みの管材と揚重対象の管材との位置合わせを容易に行うことができる。これらの結果、容易かつ短期間に立て管を設置することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、荷揚げスペースから上の階用の立て管ユニットを配設した後に、下の階用の立て管ユニットを配設するため、逆打ち工法による場合や配設予定スペースに障害物がある場合など、立て管の施工(立て管ユニットの配設)を開始した後に下階に配設スペースが形成される場合であっても、立て管全体の施工工程に影響を与えることなく(他の施工状態に応じて柔軟に)施工を行うことが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、スリーブ開口と立て管ユニットとの隙間に断熱材を充填するだけで、あるいは多少のモルタル埋めなどを行うだけで、隙間の穴埋めを行え、穴埋め作業を削減できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、接続部材が少なくとも管材の上端部側と下端部側とに配設されているため、管材同士が強固に接続され、管材のひずみや曲がりなどを防止できる。また、上下の接続部材間に揚重機のワイヤを通すことで、より安定して次の立て管ユニットを吊り上げ、かつ、管材と管材との位置合わせをより容易に行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、上位の立て管ユニットの管材の下端部が、下位の立て管ユニットの管材の上端部内に嵌合し、下位の立て管ユニットの管材の上端縁が上方に向いた(露出した)状態となる。このため、この上端縁を上方から溶接することができ、管材の端面を突き合わせて溶接などする場合に比べて、狭いスペースでも容易かつ精度高く溶接などを行うことが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、定尺の管材が多くなるように立て管ユニットの長さが設定されるため、管材の廃材が減り、材料費や廃材処理費などを削減することができる。また、管材下端部と管材上端部との接続部が各階において所定の高さに位置するように立て管ユニットの長さが設定されるため、各階において溶接などの接続作業を容易かつ安全に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態に係る立て管ユニット1を示す平面図である。この立て管ユニット1は、建物に設置される立て管を構成するユニットであり、この実施の形態では、2本の管材2と2対の接続プレート(接続部材)3から構成されている。具体的には、同形の2本の管材2(ここでは、空調用冷温水の往還管)が、所定の距離を隔てて並列(平行)に配置され、接続プレート3によって接続されている。すなわち、図2に示すように、2枚の金属製の板状の接続プレート3が、2本の管材2の軸線Cが位置する中心面C1を挟むように、中心面C1から等間隔に対向して配設され、管材2との接触端が溶接されて、接続プレート3によって2本の管材2が接続されている。ここで、軸線Cは、管材2の軸方向(長手方向)に延びるそれぞれの管材2の中心線であり、2つの軸線Cがひとつの中心面C1上に位置する関係にある。具体的に、この実施の形態では、接続される2本の管材2に沿って、その間に対の接続プレート3が渡されている。なお、接続プレート3は、中心面C1から若干偏心していてもよい。
【0021】
また、管材2と接続プレート3とで囲まれた挿入空間C2に、後述するチェーンブロック27が挿入できるように、接続プレート3間の距離が設定され、このような挿入空間C2は、立て管ユニット1の中心に位置する。そして、このような対の接続プレート3が、管材2の上端部側と下端部側とに配設され、上端部側の接続プレート3には、後述するシャックル24のボルト24Aを挿入する接続穴(被接続部)3aが、水平方向に2つ形成されている。
【0022】
また、管材2は断面が円形のストレート管で、その上端部に接続リング2Aが、予め工場で溶接などによって接合されている。この接続リング2Aの内径は、管材2の外径よりも大きく設定され、後述するように、接続リング2A内に管材2の下端部が装着(嵌合)できるようになっている。このように、この実施の形態では、接続リング2Aによって、管材2の上端部内に下端部が嵌合するようになっているが、管材2の上端部を拡径加工して、上端部の内径を下端部の外径よりも大きくしてもよい。
【0023】
このような管材2の配置間隔W、つまり接続プレート3の接続方向の幅は、吊り具(チェーンブロック27など)を受け入れる範囲で、立て管の配置設計によって設定されている。また、管材2の長さLは、立て管の全長や管材2の定尺長の種類、各階間の距離などに基づいて、定尺の管材2が多く、かつ、後述する管材接続部が各階において所定の高さに位置するように設定されている。すなわち、できるだけ定尺の管材2を切断することなく使用し、かつ、管材接続部が所定の高さに位置するように、各管材2の長さLが設定されている。具体的には、例えば、最上位(最も上の階)でない立て管ユニット1に対しては各階間の距離と同程度の定尺長の管材2が選択され、最上位の立て管ユニット1に対しては管材接続部が各階の床上から1.5m以下(1.2m程度が望ましい)に位置するように管材2の長さLが設定されている。このように管材2の長さLが設定されているため、各立て管ユニット1の長さは、それぞれの配設位置(対応階、接続順)に応じて設定されていることになる。
【0024】
次に、このような構成の立て管ユニット1を用いて立て管を建物に設置する立て管施工方法について、図3のフローチャートに基づいて説明する。ここで、建物10は、図4に示すように、地上22階、地下3階の高層ビルとする。
【0025】
まず、各階の床に、立て管ユニット1を通すスリーブ開口10Aを形成する(ステップS1)。すなわち、コンクリート受け材(コンパネ板など)に筒状のスリーブを配設した状態でコンクリートを打ち、各階の床にスリーブ開口10Aを形成する。このとき、立て管ユニット1が貫通した状態で、断熱材の被覆代が確保された上で、スリーブ開口10Aとの隙間ができるだけ小さくなるように、スリーブ開口10Aつまりスリーブの形状を決定して、形成する。例えば、立て管ユニット1の外周に沿った形状(メガネ状)とする。
【0026】
次に、上記のような立て管ユニット1を製作し(ステップS2)、製作した立て管ユニット1のうち、地下1階から上の分を地下1階(下階)に設けた荷揚げスペースに仮置きし(揚重位置に搬入し)、地下2、3階用の立て管ユニット1をそれぞれ地下2階および地下3階に仮置きする(ステップS3)。ここで、スリーブ開口10Aの形成と立て管ユニット1の製作とは並行して行ってもよいし、立て管ユニット1の製作の後にスリーブ開口10Aを形成してもよい。また、本来であれば地上1階で揚重のためのセッティングなどの作業を行うと、立て管ユニット1を搬入するための移動が少ないが、この実施の形態では、地上1階では多職種の作業が輻輳して荷揚げスペースを確保するのが困難なことを想定し、荷揚げスペースを地下1階に設ける。さらに、立て管ユニット1を荷揚げスペースに仮置き(一時保管)することは必ずしも必要ではなく、揚重時にその都度工場から搬入してもよい。
【0027】
続いて、図5に示すように、ウインチ(揚重機)21とワイヤドラム22とを設置する(ステップS4)。この実施の形態では、ウインチ21は摩擦巻胴式のエンドレスウインチで、22階のスリーブ開口10Aをまたぐようにウインチ架台23を設置し、このウインチ架台23にウインチ本体21を取り付け、21階の床上にワイヤドラム22を設置する。
【0028】
次に、最上位に位置する立て管ユニット1(以下、適宜「第1の立て管ユニット1」と言う)を配設する(ステップS5)。まず、ウインチ21のワイヤ21Aの先端部を、荷揚げスペースまで下ろし、第1の立て管ユニット1の上端部側の接続プレート3に接続する。具体的には、図6、7に示すように、逆U字状のシャックル24に吊りワイヤ25の端部リング25aを係止した状態で、ボルト24Aを接続プレート3の接続穴3aに挿入して、シャックル24のネジ孔にねじ込む。同様にして、対向する接続穴3aに対しても吊りワイヤ25の他端を接続し、このようにして2本の吊りワイヤ25を接続プレート3に取り付ける。次に、各吊りワイヤ25を滑車26に掛け、滑車26のフック26Aにチェーンブロック27の下側フック27Aを係止する。そして、チェーンブロック27の上側フック27Bを、ワイヤ21Aの先端に取り付けられたリング21Bに係止するものである。
【0029】
続いて、ウインチ21のワイヤ21Aを巻き上げて、第1の立て管ユニット1を所定の位置まで吊り上げる。この実施の形態では、図8に示すように、第1の立て管ユニット1の上部が20階の床上から所定高さに位置するまで吊り上げる。そして、第1の立て管ユニット1の上部に金属製のロケット4を溶接し、このロケット4を介して第1の立て管ユニット1を20階の床躯体に固定させる。ここで、溶接時には、下階のスリーブ開口10Aを蓋で閉じ、火花が落下しないように養生する。また、立て管の荷重は、すべてこのロケット4で支えられるため、溶接は仮付けではなく、本付け(全周付け)とする。
【0030】
次に、第1の立て管ユニット1の下に位置する立て管ユニット1(以下、適宜「第2の立て管ユニット1」と言う)を配設する(ステップS6)。まず、第1の立て管ユニット1からシャックル24を外し、チェーンブロック27と吊りワイヤ25を第1の立て管ユニット1の接続プレート3間、つまり上下端部側の挿入空間C2に通した状態で、ウインチ21のワイヤ21Aを荷揚げスペースまで下げる。ここで、チェーンブロック27を挿入空間C2に通せない場合には、ワイヤ21Aのみを挿入空間C2に通して下げる。次に、第1の立て管ユニット1の場合と同様にして、ウインチ21のワイヤ21Aの先端部を、チェーンブロック27やシャックル24などを介して第2の立て管ユニット1の上端部側の接続プレート3に接続する。
【0031】
続いて、ウインチ21のワイヤ21Aを巻き上げて(図9)、第2の立て管ユニット1を第1の立て管ユニット1の下端まで吊り上げる。そして、チェーンブロック27で第2の立て管ユニット1の曲がり(姿勢)やレベルを調整しながら、図10に示すように、第1の立て管ユニット1の管材2の下端部(管材下端部)を第2の立て管ユニット1の接続リング2A(管材上端部)に装着する。この状態で、第2の立て管ユニット1を仮支持台で支持し、管材下端部と管材上端部との管材接続部(接続リング2Aの上縁部)を溶接する。ここで、溶接時には、下階のスリーブ開口10Aを蓋で閉じて養生し、狭所(壁側など)のため、第1の立て管ユニット1の下端部が装着された接続リング2Aの上縁(外周)を、上方から溶接する。また、ここでの溶接は、管材2の全周の半分程度を溶接する仮溶接とし、すべての立て管ユニット1を配設し終えた後に、残りの部分を溶接して本付けする。
【0032】
以後同様にして、すべての立て管ユニット1が完了する(ステップS7で「Y」)まで、図11に示すように、順次、次の立て管ユニット1を配設(接続)していく。ここで、荷揚げスペースよりも下階の地下2、3階についても、同様にして、地下2階および地下3階に仮置きした立て管ユニット1を吊り上げて配設する。そして、すべての立て管ユニット1を配設し終えた後に、すべての立て管ユニット1に断熱材を被覆する(ステップS8)。このとき、各立て管ユニット1の接続プレート3にも断熱材を巻き、スリーブ開口10Aを貫通する部位については、その上部で巻き付けた断熱材をスリーブ開口10Aと立て管ユニット1との隙間に落とし込んで固定する。また、スリーブ開口10Aが矩形の孔などで、スリーブ開口10Aと立て管ユニット1との隙間が大きい場合には、その隙間をモルタルなどで埋める。また、20階と21階に対しては、ウインチ21やワイヤドラム22などを撤去した後に、予め仮置きした管材を立て起こして、第1の立て管ユニット1の上に接合する。
【0033】
以上のように、この立て管ユニット1および立て管施工方法によれば、立て管ユニット1ごとに吊り上げるため、大掛かりな施工機械を要せず、ウインチ21程度の揚重機ですむ。また、吊り点が揚重対象の管材2間に限定されるため、狭い施工スペースでも安全かつ容易に施工することが可能となる。しかも、既に設置した立て管ユニット1の挿入空間C2、つまり立て管ユニット1の中心部にワイヤ21Aを通して次の立て管ユニット1を吊り上げるため、ワイヤ21Aが挿入空間C2によって立て管ユニット1の中心にガイドされる。この結果、立て管ユニット1が振れることなく安定して吊り上げられるとともに、固定済みの管材2と揚重対象の管材2との位置合わせを容易に行うことができる。さらに、スリーブ開口10Aの形状が上記のように設定されているため、スリーブ開口10Aと立て管ユニット1との隙間に断熱材を充填するだけで、あるいは多少のモルタル埋めを行うだけで、隙間の穴埋めを行え、穴埋め作業を削減できる。
【0034】
また、定尺の管材が多くなるように立て管ユニット1の長さが設定されているため、管材2の廃材が減り、材料費や廃材処理費などを削減することができる。さらに、接続リング2A(管材接続部)が各階において床上から1.5m以下に位置するように立て管ユニット1の長さが設定されているため、各階における溶接作業を容易かつ安全に行うことが可能となる。しかも、上方の立て管ユニット1の管材2の下端部が下方の立て管ユニット1の接続リング2Aに装着するため、接続リング2Aの上縁を上方から溶接することができ、シャフト内が狭い場合や管材2が隅部(壁際など)に位置する場合でも、容易かつ精度高く溶接することが可能となる。また、管材2の上下端部側に対の接続プレート3が配設されているため、管材2同士が強固に接続され、管材2のひずみや曲がりなどを防止できる。さらに、この上下の接続プレート3間にワイヤ21Aを通すため、より安定して下方の立て管ユニット1を吊り上げ、案内し、かつ、管材2と管材2との位置合わせをより容易に行うことができる。
【0035】
一方、荷揚げスペースよりも下の階用の立て管ユニット1をそれぞれ地下2、3階に仮置きするため、上記のように、荷揚げスペースから上の階用の立て管ユニット1を配設した後に、地下2、3階用の立て管ユニット1を配設することができる。この結果、逆打ち工法による場合や配設予定スペースに障害物がある場合など、立て管の施工(立て管ユニット1の配設)を開始した後に、地下2、3階に配設スペースが形成、確保される場合であっても、立て管全体の施工工程に影響を与えることなく、短期間に施工を行うことが可能となる。
【0036】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、1つの立て管ユニット1に2対の接続プレート3を配設しているが、立て管ユニット1が長さや接続プレート3の大きさなどに応じて、1対または3対以上配設してもよい。また、管材2の大きさ(径、長さ)や用途などによっては、3本以上の管材2を並列に配置した立て管ユニットとしてもよい。さらに、平面視した場合に、図12(a)に示すように、3本の管材2をL字状に配置した立て管ユニットとしたり、図12(b)に示すように、4本の管材2を正方形状に配置した立て管ユニットとしてもよい。この場合、各階の床に、立て管ユニットの断面形状と同形状のスリーブ開口、つまりL字状や正方形状のスリーブ開口を形成し、吊り上げ時のバランスを考慮して一箇所または複数個所でワイヤ21Aを接続し、ウインチ21で吊り上げる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、この発明に係る立て管施工方法および立て管ユニットは、狭い施工スペースでも容易に、かつ、大掛かりな施工機械などを要しないで、立て管を設置することが可能なものとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態に係る立て管ユニットを示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る立て管施工方法による手順を示すフローチャートである。
【図4】図3の立て管施工方法において、第1の立て管ユニットを吊った状態を示す図である。
【図5】図3の立て管施工方法において、ウインチとワイヤドラムを設置した状態を示す図である。
【図6】図3の立て管施工方法において、ウインチのワイヤの先端部と第1の立て管ユニットの接続プレートとを接続した状態を示す図である。
【図7】図6のB−B方向から見た側面図である。
【図8】図3の立て管施工方法において、第1の立て管ユニットを所定の位置まで吊り上げて固定している状態を示す図である。
【図9】図3の立て管施工方法において、第2の立て管ユニットを吊り上げている状態を示す図である。
【図10】図3の立て管施工方法において、第1の立て管ユニットの下端部と第2の立て管ユニットの上端部とを接続している状態を示す図である。
【図11】図3の立て管施工方法において、順次立て管ユニットを配設している状態を示す図である。
【図12】本発明の変形例を示し、管材をL字状に配置した立て管ユニット(a)と、管材を正方形状に配置した立て管ユニット(b)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 立て管ユニット
2 管材
2A 接続リング
3 接続プレート(接続部材)
3a 接続穴(被接続部)
C2 挿入空間
4 ロケット
10 高層ビル(建物)
10A スリーブ開口
21 ウインチ(揚重機)
21A ワイヤ
22 ワイヤドラム
23 ウインチ架台
24 シャックル
25 吊りワイヤ
26 滑車
27 チェーンブロック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立て管を建物に設置する立て管施工方法であって、
前記立て管を構成する複数本の管材が所定の距離を隔てて並列に配置され、隣接する管材と管材とを接続する接続部材が、当該両管材の軸線が位置する面を挟むように対向して配設された立て管ユニットを製作し、
前記立て管ユニットを下階に設けた荷揚げスペースに位置させ、
上階に設置した揚重機のワイヤの先端部を、前記荷揚げスペースの立て管ユニットの接続部材に接続し、前記ワイヤを巻き上げて前記立て管ユニットを所定の位置まで吊り上げ、建物に固定し、
前記固定した上位の立て管ユニットの接続部材間を通して前記ワイヤを前記荷揚げスペースまで下げ、このワイヤの先端部を荷揚げスペースに位置されている次の立て管ユニットの接続部材に接続し、前記ワイヤを巻き上げて前記上位の立て管ユニットの下端まで吊り上げ、前記上位の立て管ユニットの管材下端部と吊り上げた立て管ユニットの管材上端部とを接続し、以後同様にして順次、次の立て管ユニットを接続していく、
ことを特徴とする立て管施工方法。
【請求項2】
前記荷揚げスペースを立て管の最下階に設けない場合に、前記荷揚げスペースよりも下の階用の立て管ユニットを当該階に位置させ、前記荷揚げスペースから上の階用の立て管ユニットを配設した後に、前記荷揚げスペースよりも下の階用の立て管ユニットを配設する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立て管施工方法。
【請求項3】
建物の各階の床に、前記立て管ユニットを貫通させ、断熱材の被覆代が確保された上で前記立て管ユニットとの隙間が小さくなるように大きさが設定され、前記立て管ユニットの断面形状と同形状のスリーブ開口を形成し、
このスリーブ開口を貫通するように前記立て管ユニットを配設する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の立て管施工方法。
【請求項4】
建物に設置される立て管を構成する立て管ユニットであって、
複数本の管材が所定の距離を隔てて並列に配置され、
隣接する管材と管材とを接続する接続部材として一対の金属製の接続プレートを採用し、この接続プレートは、当該両管材の軸線が位置する面を挟むように対向し、かつ、揚重機のワイヤを通せるように配設され、
このような対の接続部材が、少なくとも前記管材の上端部側と下端部側とに配設され、
少なくともひとつの前記接続部材に、揚重機のワイヤを接続する被接続部が設けられている、
ことを特徴とする立て管ユニット。
【請求項5】
上位の立て管ユニットの管材の下端部が、下位の立て管ユニットの管材の上端部内に嵌合するように、上端部および下端部の形状が設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載の立て管ユニット。
【請求項6】
前記管材の定尺長と各階間の距離とに基づいて、定尺の管材が多く、かつ、前記管材下端部と管材上端部との接続部が各階において所定の高さに位置するように、前記立て管ユニットの長さを設定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立て管施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−264025(P2009−264025A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116125(P2008−116125)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】