説明

立体像表示装置および立体像表示装置作製方法

【課題】必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ所要時間を短くすることができる立体像表示装置および立体像表示装置作製方法を提供する。
【解決手段】立体像表示装置1の画像呈示部2は、その回転の際の所定方位にあるときに立体像を手前に(画像呈示部2から浮き上がらせて)表示し、その所定方位に対して直交する方位にあるときに立体像を遠方に(画像呈示部2より沈み込ませて)表示する。すなわち、この立体像表示装置1は、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と画像呈示部2の方位との関係に応じて、観察者9が観察し得る立体像の凹凸が反転するという効果(いわゆるキャッチアイの効果)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者に対して立体像を表示する立体像表示装置、および、このような立体像表示装置を作製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観察者に対して立体像を表示する立体像表示装置として以下のような従来技術1〜4が知られている。
【0003】
従来技術1の立体像表示装置は、複数のレンズが2次元配列されたレンズアレイ部と、レンズアレイ部の後焦点面に配置されて画像を呈示する画像部と、を備える。この従来技術1の立体像表示装置では、観察者は、複数のレンズそれぞれを通して画像部の画像を見ることで、立体像を観察することができる。
【0004】
従来技術1の立体像表示装置においてレンズアレイ部の後方に配置される画像部により呈示される画像は、例えば以下のようにして作成される。すなわち、先ず第1段階では、表示されるべき目標立体像がレンズアレイ部に対して第1の側に配置され、銀塩フィルム等の第1感光材料がレンズアレイ部に対して第2の側に配置されて、目標立体像の各位置から発して複数のレンズそれぞれを通った光により第1感光材料が露光される。この露光された第1感光材料は現像されて乾燥される。
【0005】
続く第2段階では、第1段階で露光・現像・乾燥された後の第1感光材料がレンズアレイ部に対して第2の側に配置され、第2感光材料がレンズアレイ部に対して第1の側に配置されて、第1感光材料の各位置から発して複数のレンズそれぞれを通った光により第2感光材料が露光される。この露光された第2感光材料は現像されて乾燥される。このようにして2段階の画像作成工程を経て作成された第2感光材料が、上記画像部として用いられ、レンズアレイ部の後焦点面に配置される。
【0006】
従来技術1の立体像表示装置においてレンズアレイ部の後方に配置される画像部により呈示される画像は、実在の目標立体像が用いられて上記のように感光材料に記録されることで作成されてもよいが、観察者の視点位置に対応して異なった立体像を表示したり動きがある立体像を表示したりする場合にはコンピュータにより仮想された目標立体像に基づいて計算により作成されてもよい。
【0007】
観察者の両眼を結ぶ直線が所定方位にある視点位置で観察するときに立体像を手前に表示させ、その所定方位に対して直交する方位にある視点位置で観察するときに前記立体像を遠方に表示させるためには、レンズアレイ部に含まれる個々のレンズの焦点位置に置かれる画像を作成するにあたって、それぞれの視点位置に対応した立体像をコンピュータにより仮想し、視点位置と目標立体像とを結ぶ直線と焦点位置の画像との交点に目標立体像の情報を貼り付けることを視点位置の数だけ繰り返し、焦点位置の画像を合成する。以上を全てのレンズの焦点位置の画像に対して作成する。
【0008】
従来技術2の立体像表示装置は、複数のピンホールが2次元配列されたピンホールアレイ部と、ピンホールアレイ部の後方に配置されて画像を呈示する画像部と、を備える(特許文献1参照)。この従来技術2の立体像表示装置では、観察者は、複数のピンホールそれぞれを通して画像部の画像を見ることで、立体像を観察することができる。従来技術2の立体像表示装置においてピンホールアレイ部の後方に配置される画像部により呈示される画像は、従来技術1の場合と同様にコンピュータにより仮想された目標立体像に基づいて計算により作成される。
【0009】
従来技術3の立体像表示装置は、複数の点光源が2次元配列された光源部と、この光源部の前方に配置されて画像を呈示する画像部と、を備える(特許文献2参照)。この従来技術3の立体像表示装置では、観察者は、複数の点光源それぞれから出力され画像部を通過して眼に達する光により、立体像を観察することができる。従来技術3の立体像表示装置において画像部により呈示される画像は、従来技術1の場合と同様にコンピュータにより仮想された目標立体像に基づいて計算により作成される。
【0010】
従来技術4の立体像表示装置は、複数の要素ホログラムが配列されたドット型ホログラフィックステレオグラムを備える(特許文献3参照)。この従来技術4の立体像表示装置では、観察者は、ドット型ホログラフィックステレオグラムに照明光が照射されたときに複数の要素ホログラムそれぞれで発生する再生光により、再生像である立体像を観察することができる。
【0011】
従来技術4の立体像表示装置のドット型ホログラフィックステレオグラムは、以下のようにして作成される。すなわち、フィルムや液晶パネル等の空間光変調器に呈示された画像から発した光がレンズにより集光されて、これが物体光とされる。ドット型ホログラフィックステレオグラムが記録されるべきホログラム記録材料の局所領域において、上記の物体光と平面波の参照光とが入射して干渉し、リップマン型の要素ホログラムが作成される。このような操作はホログラム記録材料の複数の局所領域それぞれに対して行われ、その際に局所領域の位置に応じた画像が空間光変調器に呈示される。なお、空間光変調器に呈示される画像は、従来技術1の場合と同様にコンピュータにより仮想された目標立体像に基づいて計算により作成される。
【特許文献1】特開平10−239785号公報
【特許文献2】特開2001−235708号公報
【特許文献3】特開平3−249686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の従来技術1〜4の立体像表示装置を作製する際には、観察者のそれぞれの視点位置に対応した立体像をコンピュータにより仮想し、視点位置と目標立体像と結ぶ直線と提示画像との交点に目標立体像の情報を貼り付けることを視点位置の数だけ繰り返し、提示画像を合成する必要がある。このことから、これらの従来の立体像表示装置の作製は、必要な画像を作成する際の処理量が多く、所要時間が長い。
【0013】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ所要時間を短くすることができる立体像表示装置および立体像表示装置作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る立体像表示装置は、観察者に対して立体像を表示する立体像表示装置であって、平板状の形状を有し、当該平板に垂直な所定軸を中心にして観察者に対して相対的に回転したときに、その回転の際の所定方位にあるときに立体像を手前に表示し、その所定方位に対して直交する方位にあるときに立体像を遠方に表示する画像呈示部を備えることを特徴とする。また、本発明に係る立体像表示装置は、所定軸を中心にして画像呈示部を回転させる回転部を更に備えるのが好適である。
【0015】
本発明に係る立体像表示装置の画像呈示部は、所定軸に垂直な第1平面上に複数のレンズが2次元配列されたレンズアレイ部と、第1平面に対して平行であって複数のレンズの焦点距離だけ離間した第2平面上に複数のレンズに対して1対1に対応する複数の画像を呈示する画像部と、を含み、観察者の眼から複数のレンズそれぞれの中心を通って複数の画像に到る直線上の該画像の情報に基づいて、観察者に対して立体像を表示するのが好適である。このような立体像表示装置を作製する本発明に係る立体像表示装置作製方法は、(1) 第1平面上に複数のレンズが2次元配列されたレンズアレイ部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、他方の側に第1平面に対して平行であって複数のレンズの焦点距離だけ離間した第2平面上に中間画像部を配置し、目標立体像の各位置から複数のレンズそれぞれの中心を通って中間画像部に到る直線上の中間画像部の位置に、その直線上の目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、複数のレンズに対して1対1に対応する複数の中間画像を中間画像部に作成する第1工程と、(2) 中間画像部に作成された複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応するレンズの中心から第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示する画像部を作成する第2工程と、(3) レンズアレイ部に対して第2平面上に画像部を配置する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る立体像表示装置の画像呈示部は、所定軸に垂直な第1平面上に複数のピンホールが2次元配列されたピンホールアレイ部と、第1平面に対して平行な第2平面上に複数のピンホールに対して1対1に対応する複数の画像を呈示する画像部と、を含み、観察者の眼から複数のピンホールそれぞれを通って複数の画像に到る直線上の該画像の情報に基づいて、観察者に対して立体像を表示するのが好適である。このような立体像表示装置を作製する本発明に係る立体像表示装置作製方法は、(1) 第1平面上に複数のピンホールが2次元配列されたピンホールアレイ部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、他方の側に第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部を配置し、目標立体像の各位置から複数のピンホールそれぞれを通って中間画像部に到る直線上の中間画像部の位置に、その直線上の目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、複数のピンホールに対して1対1に対応する複数の中間画像を中間画像部に作成する第1工程と、(2) 中間画像部に作成された複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応するピンホールから第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示する画像部を作成する第2工程と、(3) ピンホールアレイ部に対して第2平面上に画像部を配置する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る立体像表示装置の画像呈示部は、所定軸に垂直な第1平面上に複数の点光源が2次元配列された光源部と、第1平面に対して平行な第2平面上に複数の点光源に対して1対1に対応する複数の画像を呈示し位置に応じて透過光を強度変調して出力する画像部と、を含み、観察者の眼から画像部を通って複数の点光源それぞれに到る直線上の画像部の位置における強度変調に基づいて、観察者に対して立体像を表示するのが好適である。このような立体像表示装置を作製する本発明に係る立体像表示装置作製方法は、(1) 第1平面上に複数の点光源が2次元配列された光源部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、光源部と目標立体像との間であって第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部を配置し、目標立体像の各位置から中間画像部を通って複数の点光源それぞれに到る直線上の中間画像部の位置に、その直線上の目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、複数の点光源に対して1対1に対応する複数の中間画像を中間画像部に作成する第1工程と、(2) 中間画像部に作成された複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応する点光源から第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示し位置に応じて透過光を強度変調して出力する画像部を作成する第2工程と、(3) 光源部に対して第2平面上に画像部を配置する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る立体像表示装置の画像呈示部は、所定軸に垂直な平面上に複数の要素ホログラムが2次元配列されたドット型ホログラフィックステレオグラムを含み、ドット型ホログラフィックステレオグラムに照明光が照射されたときに複数の要素ホログラムそれぞれで発生する再生光に基づいて、観察者に対して立体像を表示するのが好適である。このような立体像表示装置を作製する本発明に係る立体像表示装置作製方法は、(1) ドット型ホログラフィックステレオグラムを構成する複数の要素ホログラムそれぞれが記録されるべき局所領域の中心位置を仮想視点として、ドット型ホログラフィックステレオグラムにより再生されるべき目標再生像を透視変換して透視変換画像を作成する第1工程と、(2) 複数の局所領域に対応して作成された透視変換画像それぞれについて、局所領域の中心位置から透視変換画像の面に降ろした垂線に直交する該面上の所定直線に関して透視変換画像を線対称変換して反転透視変換画像を作成する第2工程と、(3) 複数の局所領域に対応して作成された反転透視変換画像それぞれに基づいて要素ホログラムを作成し、これら複数の要素ホログラムを配列してドット型ホログラフィックステレオグラムを作成する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ、所要時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、説明の便宜のためにxyz直交座標系を設定して、これを用いて説明をする。
【0021】
図1は、本実施形態に係る立体像表示装置1の構成を示す図である。本実施形態に係る立体像表示装置1は、画像呈示部2および回転部3を備え、観察者9に対して立体像を表示する。画像呈示部2は、平板状の形状を有し、回転部3により駆動されて、当該平板に垂直な所定軸を中心にして観察者9に対して相対的に回転することができる。
【0022】
画像呈示部2は、図示のように水平な所定軸を中心にして回転してもよいし、水平面に垂直な所定軸を中心にして回転してもよい。後者の場合、例えばテーブルや床に置かれた画像呈示部2を観察者9が上方から見るようにしてもよいし、例えば天井に取り付けられた画像呈示部2を観察者9が下方から仰ぎ見るようにしてもよい。
【0023】
画像呈示部2は、その回転の際の所定方位にあるときに立体像を手前に(画像呈示部2から浮き上がらせて)表示し、その所定方位に対して直交する方位にあるときに立体像を遠方に(画像呈示部2より沈み込ませて)表示する。すなわち、この立体像表示装置1は、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と画像呈示部2の方位との関係に応じて、観察者9が観察し得る立体像の凹凸が反転するという効果(いわゆるキャッチアイの効果)を有する。
【0024】
なお、本実施形態に係る立体像表示装置1は回転部3を備えていなくてもよい。画像呈示部2は、例えばアクセサリやバッグ等の携行品に貼り付けられてもよい。この場合、携行品とともに画像呈示部2が移動することにより、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と画像呈示部2の方位との関係が変化して、観察者9が観察し得る立体像の凹凸が反転し得る。
【0025】
以下では、本実施形態に係る立体像表示装置1の更に具体的な実施形態について説明し、特に、画像呈示部2の具体的な構成および作製方法について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
【0027】
図2は、第1実施形態に係る立体像表示装置10の構成を示す図である。この図に示される立体像表示装置10は、レンズアレイ部11および画像部13を備える。
【0028】
レンズアレイ部11は、共通の構成を有する複数のレンズ12が2次元配列されたものである。レンズアレイ部11に含まれる複数のレンズ12は、回転部3による回転の際の回転軸となる所定軸(z軸に平行な方向)に垂直な第1平面(xy平面に平行な面)上に2次元配列されている。
【0029】
画像部13は、第1平面に対して平行であって複数のレンズ12の焦点距離だけ離間した第2平面上に複数の画像14を呈示するものである。画像部13において呈示される複数の画像14は、レンズアレイ部11に含まれる複数のレンズ12に対して1対1に対応する。画像部13は、自ら光を発して複数の画像14を呈示するものであってもよいし、背後(レンズアレイ部11と反対の側)から入射される照明光を受けて複数の画像14を呈示するものであってもよい。
【0030】
この立体像表示装置10は、観察者9の眼から複数のレンズ12それぞれの中心を通って複数の画像14に到る直線L上の該画像14の情報に基づいて、観察者9に対して立体像を表示する。すなわち、観察者9は、複数のレンズ12それぞれの中心を通る視線L上の該画像14の情報に基づいて、立体像を観察することができる。
【0031】
次に、図3および図4を用いて、第1実施形態に係る立体像表示装置10を作製する方法について説明する。なお、図3では、表示されるべき目標立体像8が示されているが、図4では、その目標立体像8に含まれる2つの物点P,Pが代表して示されている。
【0032】
立体像表示装置10を作製する方法の第1工程では、第1平面上に複数のレンズ12が2次元配列されたレンズアレイ部11に対して、一方の側(−z方向の側)に、表示されるべき目標立体像8が配置されるとともに、他方の側(+z方向の側)に、第1平面に対して平行であって複数のレンズ12の焦点距離だけ離間した第2平面上に中間画像部15が配置される(図3)。目標立体像8の各位置(物点P,P)から複数のレンズ12それぞれの中心を通って中間画像部15に到る直線上の中間画像部15の位置に、その直線上の目標立体像8の位置(物点P,P)の輝度情報または色情報が記録されて、複数のレンズ12に対して1対1に対応する複数の中間画像16が中間画像部15に作成される(図3,図4)。このとき、目標立体像8のうち観察者9により観察され得る範囲の各点について上記のような処理が行われる。
【0033】
第2工程では、中間画像部15に作成された複数の中間画像16それぞれについて、該中間画像16に対応するレンズ12の中心から第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線(以下、この所定直線をy軸に平行な直線とする。)に関して該中間画像16が線対称変換されて、この線対称変換により得られた複数の画像14を呈示する画像部13が作成される(図4)。図4では、線対称変換の様子が破線矢印で示されている。続く第3工程では、レンズアレイ部11に対して第2平面上に画像部13が配置される。すなわち、画像部13はレンズアレイ部11に対してレンズ12の焦点距離だけ離間して配置される(図2)。以上のようにして立体像表示装置10の画像呈示部2が作製される。
【0034】
なお、画像部13および中間画像部15それぞれは、感光材料であってもよいし、外部からの制御信号により画素毎に透過光強度を変調することができる空間光変調器であってもよい。後者の場合、上記の第1〜第3の工程はコンピュータによる演算により行われてもよい。
【0035】
以上のように、第1実施形態に係る立体像表示装置10およびその作製方法は、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ、所要時間を短くすることができる。
【0036】
次に、図5〜図7を用いて、上記のようにして作製された立体像表示装置10による立体像の表示の様子について説明する。
【0037】
図5は、図3および図4と同様の方向(y方向)に立体像表示装置10を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとしている。一方、図6は、図5で見た方向に対して垂直な方向(x方向)に立体像表示装置10を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとしている。
【0038】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとした図5では、立体像表示装置作製方法の第1工程の際の物点P,Pと各レンズ12の中心とを結ぶ線が破線で示されている。また、物点P,Pに対応する画像14上の点と該画像14に対応するレンズ12の中心とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、複数の画像14それぞれにおける物点P,Pの対応位置から発する光線は、対応するレンズ12の中心を通過して、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0039】
観察者9にとって、複数の画像14それぞれにおける物点Pの対応位置から発してレンズ12の中心を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、レンズアレイ部11の背後の位置)にある物点P1aから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、複数の画像14それぞれにおける物点Pの対応位置から発してレンズ12の中心を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、レンズアレイ部11の背後の位置)にある物点P2aから発した光線として知覚される。物点P1a,P2aは、レンズアレイ部11が配置される第1平面を挟んで物点P,Pに対して面対称位置にあり、観察者9にとって虚像として知覚される。
【0040】
観察者9の両眼と略同じy座標値を有する画像14からxz平面に平行に発散して進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に発散する光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の画像14からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、虚像形成に寄与しないので、レンズアレイ部11からの拡散光となり、レンズアレイ部11の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、レンズアレイ部11より遠方の像(レンズアレイ部11より沈み込んだ像)として観察者9により知覚される。
【0041】
観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとした図6では、物点P,Pに対応する画像14上の点と該画像14に対応するレンズ12の中心とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、複数の画像14それぞれにおける物点P,Pの対応位置から発する光線は、対応するレンズ12の中心を通過して、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0042】
観察者9にとって、複数の画像14それぞれにおける物点Pの対応位置から発してレンズ12の中心を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、レンズアレイ部11の手前の位置)にある物点P1bから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、複数の画像14それぞれにおける物点Pの対応位置から発してレンズ12の中心を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、レンズアレイ部11の手前の位置)にある物点P2bから発した光線として知覚される。物点P1b,P2bは、物点P,Pと同じ位置にあり、立体視の効果および観察者9の眼の焦点調節の効果により、観察者9にとって実像として知覚される。
【0043】
観察者9の両眼と略同じx座標値を有する画像14からyz平面に平行に進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に進む光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の画像14からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、実像形成に寄与しないので、レンズアレイ部11からの拡散光となり、レンズアレイ部11の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、レンズアレイ部11より手前の像(レンズアレイ部11から浮き上がった像)として観察者9により知覚される。
【0044】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面およびyz平面の何れにも平行でない場合には、画像14から発した光線は、レンズ12を通過して観察者9の瞳に入射しても、像形成に寄与しないのでレンズアレイ部11からの拡散光となり、レンズアレイ部11の平面上の背景として知覚される。
【0045】
図7は、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と立体像表示との関係を示している。観察者9の両眼91R,91Lを結ぶ直線がxz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1aはレンズアレイ部11より遠方に観測される。一方、観察者9の両眼92R,92Lを結ぶ直線がyz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1bはレンズアレイ部11より手前に観測される。
【0046】
(第2実施形態)
【0047】
図8は、第2実施形態に係る立体像表示装置20の構成を示す図である。この図に示される立体像表示装置20は、ピンホールアレイ部21および画像部23を備える。
【0048】
ピンホールアレイ部21は、共通の構成を有する複数のピンホール22が2次元配列されたものである。ピンホールアレイ部21に含まれる複数のピンホール22は、回転部3による回転の際の回転軸となる所定軸(z軸に平行な方向)に垂直な第1平面(xy平面に平行な面)上に2次元配列されている。
【0049】
画像部23は、第1平面に対して平行な第2平面上に複数の画像24を呈示するものである。画像部23において呈示される複数の画像24は、ピンホールアレイ部21に含まれる複数のピンホール22に対して1対1に対応する。画像部23は、自ら光を発して複数の画像24を呈示するものであってもよいし、背後(ピンホールアレイ部21と反対の側)から入射される照明光を受けて複数の画像24を呈示するものであってもよい。
【0050】
この立体像表示装置20は、観察者9の眼から複数のピンホール22それぞれを通って複数の画像24に到る直線L上の該画像24の情報に基づいて、観察者9に対して立体像を表示する。すなわち、観察者9は、複数のピンホール22それぞれを通る視線L上の該画像24の情報に基づいて、立体像を観察することができる。
【0051】
次に、図9および図10を用いて、第2実施形態に係る立体像表示装置20を作製する方法について説明する。なお、図9では、表示されるべき目標立体像8が示されているが、図10では、その目標立体像8に含まれる2つの物点P,Pが代表して示されている。
【0052】
立体像表示装置20を作製する方法の第1工程では、第1平面上に複数のピンホール22が2次元配列されたピンホールアレイ部21に対して、一方の側(−z方向の側)に、表示されるべき目標立体像8が配置されるとともに、他方の側(+z方向の側)に、第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部25が配置される(図9)。目標立体像8の各位置(物点P,P)から複数のピンホール22それぞれを通って中間画像部25に到る直線上の中間画像部25の位置に、その直線上の目標立体像8の位置(物点P,P)の輝度情報または色情報が記録されて、複数のピンホール22に対して1対1に対応する複数の中間画像26が中間画像部25に作成される(図9,図10)。このとき、目標立体像8のうち観察者9により観察され得る範囲の各点について上記のような処理が行われる。
【0053】
第2工程では、中間画像部25に作成された複数の中間画像26それぞれについて、該中間画像26に対応するピンホール22から第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線(以下、この所定直線をy軸に平行な直線とする。)に関して該中間画像26が線対称変換されて、この線対称変換により得られた複数の画像24を呈示する画像部23が作成される(図10)。図10では、線対称変換の様子が破線矢印で示されている。続く第3工程では、ピンホールアレイ部21に対して第2平面上に画像部23が配置される。すなわち、画像部23はピンホールアレイ部21に対して平行に配置される(図8)。以上のようにして立体像表示装置20の画像呈示部2が作製される。
【0054】
なお、画像部23および中間画像部25それぞれは、感光材料であってもよいし、外部からの制御信号により画素毎に透過光強度を変調することができる空間光変調器であってもよい。後者の場合、上記の第1〜第3の工程はコンピュータによる演算により行われてもよい。
【0055】
以上のように、第2実施形態に係る立体像表示装置20およびその作製方法は、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ、所要時間を短くすることができる。
【0056】
次に、図11〜図13を用いて、上記のようにして作製された立体像表示装置20による立体像の表示の様子について説明する。
【0057】
図11は、図9および図10と同様の方向(y方向)に立体像表示装置20を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとしている。一方、図12は、図11で見た方向に対して垂直な方向(x方向)に立体像表示装置20を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとしている。
【0058】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとした図11では、立体像表示装置作製方法の第1工程の際の物点P,Pと各ピンホール22とを結ぶ線が破線で示されている。また、物点P,Pに対応する画像24上の点と該画像24に対応するピンホール22とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、複数の画像24それぞれにおける物点P,Pの対応位置から発する光線は、対応するピンホール22を通過して、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0059】
観察者9にとって、複数の画像24それぞれにおける物点Pの対応位置から発してピンホール22を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、ピンホールアレイ部21の背後の位置)にある物点P1aから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、複数の画像24それぞれにおける物点Pの対応位置から発してピンホール22を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、ピンホールアレイ部21の背後の位置)にある物点P2aから発した光線として知覚される。物点P1a,P2aは、ピンホールアレイ部21が配置される第1平面を挟んで物点P,Pに対して面対称位置にあり、観察者9にとって虚像として知覚される。
【0060】
観察者9の両眼と略同じy座標値を有する画像24からxz平面に平行に発散して進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に発散する光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の画像24からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、虚像形成に寄与しないので、ピンホールアレイ部21からの拡散光となり、ピンホールアレイ部21の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、ピンホールアレイ部21より遠方の像(ピンホールアレイ部21より沈み込んだ像)として観察者9により知覚される。
【0061】
観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとした図12では、物点P,Pに対応する画像24上の点と該画像24に対応するピンホール22とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、複数の画像24それぞれにおける物点P,Pの対応位置から発する光線は、対応するピンホール22を通過して、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0062】
観察者9にとって、複数の画像24それぞれにおける物点Pの対応位置から発してピンホール22を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、ピンホールアレイ部21の手前の位置)にある物点P1bから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、複数の画像24それぞれにおける物点Pの対応位置から発してピンホール22を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、ピンホールアレイ部21の手前の位置)にある物点P2bから発した光線として知覚される。物点P1b,P2bは、物点P,Pと同じ位置にあり、立体視の効果および観察者9の眼の焦点調節の効果により、観察者9にとって実像として知覚される。
【0063】
観察者9の両眼と略同じx座標値を有する画像24からyz平面に平行に進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に進む光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の画像24からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、実像形成に寄与しないので、ピンホールアレイ部21からの拡散光となり、ピンホールアレイ部21の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、ピンホールアレイ部21より手前の像(ピンホールアレイ部21から浮き上がった像)として観察者9により知覚される。
【0064】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面およびyz平面の何れにも平行でない場合には、画像24から発した光線は、ピンホール22を通過して観察者9の瞳に入射しても、像形成に寄与しないのでピンホールアレイ部21からの拡散光となり、ピンホールアレイ部21の平面上の背景として知覚される。
【0065】
図13は、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と立体像表示との関係を示している。観察者9の両眼91R,91Lを結ぶ直線がxz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1aはピンホールアレイ部21より遠方に観測される。一方、観察者9の両眼92R,92Lを結ぶ直線がyz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1bはピンホールアレイ部21より手前に観測される。
【0066】
(第3実施形態)
【0067】
図14は、第3実施形態に係る立体像表示装置30の構成を示す図である。この図に示される立体像表示装置30は、光源部31および画像部33を備える。
【0068】
光源部31は、共通の構成を有する複数の点光源32が2次元配列されたものである。光源部31に含まれる複数の点光源32は、回転部3による回転の際の回転軸となる所定軸(z軸に平行な方向)に垂直な第1平面(xy平面に平行な面)上に2次元配列されている。なお、複数の点光源32それぞれは、ピンホールおよび白色光源を含む構成として、白色LED等の光源から出力された光のうちピンホールを通過した光を画像部33へ出力するようにしてもよい。
【0069】
画像部33は、第1平面に対して平行な第2平面上に複数の画像34を呈示し、位置に応じて透過光を強度変調して出力する。画像部33において呈示される複数の画像34は、光源部31に含まれる複数の点光源32に対して1対1に対応する。
【0070】
この立体像表示装置30は、観察者9の眼から画像部33を通って複数の点光源31それぞれに到る直線L上の画像部33の位置における強度変調に基づいて、観察者9に対して立体像を表示する。すなわち、観察者9は、複数の点光源32それぞれを通る視線L上の該画像34の情報に基づいて、立体像を観察することができる。
【0071】
次に、図15および図16を用いて、第3実施形態に係る立体像表示装置30を作製する方法について説明する。なお、図15では、表示されるべき目標立体像8が示されているが、図16では、その目標立体像8に含まれる2つの物点P,Pが代表して示されている。
【0072】
立体像表示装置30を作製する方法の第1工程では、第1平面上に複数の点光源32が2次元配列された光源部31に対して、一方の側(−z方向の側)に、表示されるべき目標立体像8が配置されるとともに、光源部31と目標立体像8との間であって第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部35が配置される。(図15)。目標立体像8の各位置(物点P,P)から中間画像部35を通って複数の点光源32それぞれに到る直線上の中間画像部35の位置に、その直線上の目標立体像8の位置(物点P,P)の輝度情報または色情報が記録されて、複数の点光源32に対して1対1に対応する複数の中間画像36が中間画像部35に作成される(図15,図16)。このとき、目標立体像8のうち観察者9により観察され得る範囲の各点について上記のような処理が行われる。
【0073】
第2工程では、中間画像部35に作成された複数の中間画像36それぞれについて、該中間画像36に対応する点光源32から第2平面に降ろした垂線に直交する第2平面上の所定直線(以下、この所定直線をy軸に平行な直線とする。)に関して該中間画像36が線対称変換されて、この線対称変換により得られた複数の画像34を呈示する画像部33が作成される(図16)。図16では、線対称変換の様子が破線矢印で示されている。続く第3工程では、光源部31に対して第2平面上に画像部33が配置される。すなわち、画像部33は光源部31に対して平行に配置される(図14)。以上のようにして立体像表示装置30の画像呈示部2が作製される。
【0074】
なお、画像部33および中間画像部35それぞれは、感光材料であってもよいし、外部からの制御信号により画素毎に透過光強度を変調することができる空間光変調器であってもよい。後者の場合、上記の第1〜第3の工程はコンピュータによる演算により行われてもよい。
【0075】
以上のように、第3実施形態に係る立体像表示装置30およびその作製方法は、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ、所要時間を短くすることができる。
【0076】
次に、図17〜図19を用いて、上記のようにして作製された立体像表示装置30による立体像の表示の様子について説明する。
【0077】
図17は、図15および図16と同様の方向(y方向)に立体像表示装置30を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとしている。一方、図18は、図17で見た方向に対して垂直な方向(x方向)に立体像表示装置30を見たときの立体像の表示の様子を示す図であり、観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとしている。
【0078】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行であるとした図17では、立体像表示装置作製方法の第1工程の際の物点P,Pと各点光源32とを結ぶ線が破線で示されている。また、物点P,Pに対応する画像34上の点と該画像34に対応する点光源32とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、各点光源32から出力され画像34における物点P,Pの対応位置を通過する光線は、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0079】
観察者9にとって、各点光源32から出力され画像34における物点Pの対応位置を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、光源部31の背後の位置)にある物点P1aから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、各点光源32から出力され画像34における物点Pの対応位置を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、光源部31の背後の位置)にある物点P2aから発した光線として知覚される。物点P1a,P2aは、光源部31が配置される第1平面を挟んで物点P,Pに対して面対称位置にあり、観察者9にとって虚像として知覚される。
【0080】
観察者9の両眼と略同じy座標値を有する点光源32からxz平面に平行に発散して進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に発散する光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の点光源32からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、虚像形成に寄与しないので、光源部31からの拡散光となり、光源部31の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、光源部31より遠方の像(光源部31より沈み込んだ像)として観察者9により知覚される。
【0081】
観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行であるとした図18では、物点P,Pに対応する画像34上の点と該画像34に対応する点光源32とを結ぶ線が実線で示されている。この実線に示されるように、各点光源32から出力され画像34における物点P,Pの対応位置を通過する光線は、観察者9がいる方向(−z方向)へ進む。
【0082】
観察者9にとって、各点光源32から出力され画像34における物点Pの対応位置を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、光源部31の手前の位置)にある物点P1bから発した光線として知覚される。同様に、観察者9にとって、各点光源32から出力され画像34における物点Pの対応位置を通過する光線は、これらの光線が交差する位置(すなわち、光源部31の手前の位置)にある物点P2bから発した光線として知覚される。物点P1b,P2bは、物点P,Pと同じ位置にあり、立体視の効果および観察者9の眼の焦点調節の効果により、観察者9にとって実像として知覚される。
【0083】
観察者9の両眼と略同じx座標値を有する点光源32からyz平面に平行に進む光線群は観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に進む光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の点光源32からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、実像形成に寄与しないので、光源部31からの拡散光となり、光源部31の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1b,P2bを含む立体像は、光源部31より手前の像(光源部31から浮き上がった像)として観察者9により知覚される。
【0084】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面およびyz平面の何れにも平行でない場合には、点光源32から発した光線は、画像部33を通過して観察者9の瞳に入射しても、像形成に寄与しないので光源部31からの拡散光となり、光源部31の平面上の背景として知覚される。
【0085】
図19は、観察者9の両眼を結ぶ直線の方向と立体像表示との関係を示している。観察者9の両眼91R,91Lを結ぶ直線がxz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1aは光源部31より遠方に観測される。一方、観察者9の両眼92R,92Lを結ぶ直線がyz平面に平行である場合、表示される立体像の物点P1bは光源部31より手前に観測される。
【0086】
(第4実施形態)
【0087】
図20は、第4実施形態に係る立体像表示装置40の構成および立体像の表示の様子を示す図である。この図に示される立体像表示装置40は、所定軸(z軸に平行な方向)に垂直な平面(xy平面に平行な面)上に複数の要素ホログラム42が2次元配列されたドット型ホログラフィックステレオグラム41を備える。また、この立体像表示装置40は、ドット型ホログラフィックステレオグラム41に対して−z方向に垂直に照明光Lを入射させる照明光源および光学系を備えるのが好適である。立体像表示装置40は、ドット型ホログラフィックステレオグラム41に照明光Lが照射されると、複数の要素ホログラム42それぞれで再生光L,Lを発生させる。
【0088】
複数の要素ホログラム42それぞれで発生した再生光Lは、図中において破線で示されるように、ドット型ホログラフィックステレオグラム41の背後の位置にある物点P1aから発した光線として観察者9により知覚される。観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面に平行である場合、観察者9の両眼と略同じy座標値を有する要素ホログラム42からxz平面に平行に発散して進む再生光Lは観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に発散する光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の要素ホログラム42からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、虚像形成に寄与しないので、ドット型ホログラフィックステレオグラム41からの拡散光となり、ドット型ホログラフィックステレオグラム41の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1bを含む立体像は、ドット型ホログラフィックステレオグラム41より遠方の像(ドット型ホログラフィックステレオグラム41より沈み込んだ像)として観察者9により知覚される。
【0089】
一方、複数の要素ホログラム42それぞれで発生した再生光Lは、図中において実線で示されるように、ドット型ホログラフィックステレオグラム41の手前の位置にある物点P1bから発した光線として観察者9により知覚される。観察者9の両眼を結ぶ直線がyz平面に平行である場合、観察者9の両眼と略同じx座標値を有する要素ホログラム42からyz平面に平行に進む再生光Lは観察者9にとって立体像の表示に寄与するが、その他の方向に進む光線は観察者9の瞳に入射しない。また、他の要素ホログラム42からの光線は、観察者9の瞳に入射しても、実像形成に寄与しないので、ドット型ホログラフィックステレオグラム41からの拡散光となり、ドット型ホログラフィックステレオグラム41の平面上の背景として知覚される。それ故、物点P1bを含む立体像は、ドット型ホログラフィックステレオグラム41より手前の像(ドット型ホログラフィックステレオグラム41から浮き上がった像)として観察者9により知覚される。
【0090】
観察者9の両眼を結ぶ直線がxz平面およびyz平面の何れにも平行でない場合には、要素ホログラム42から発した再生光は、観察者9の瞳に入射しても、像形成に寄与しないのでドット型ホログラフィックステレオグラム41からの拡散光となり、ドット型ホログラフィックステレオグラム41の平面上の背景として知覚される。
【0091】
次に、図21を用いて、第4実施形態に係る立体像表示装置40を作製する方法について説明する。レンズ44を挟んで一方の側に空間光変調器43が配置され、他方の側にレンズ44の焦点距離だけ隔てて感光材料45が配置される光学系を想定する。感光材料45は、露光・現像後にドット型ホログラフィックステレオグラム41になるべきもので、要素ホログラム42が記録されるべき局所領域46が2次元配列されている。
【0092】
立体像表示装置40を作製する方法の第1工程では、ドット型ホログラフィックステレオグラム41を構成する要素ホログラム42が記録されるべき感光材料45の局所領域46の中心位置が仮想視点とされて、ドット型ホログラフィックステレオグラム41により再生されるべき目標再生像が透視変換されて透視変換画像が作成される。
【0093】
第2工程では、その局所領域46に対応して作成された透視変換画像について、局所領域46の中心位置から透視変換画像の面に降ろした垂線に直交する該面上の所定直線(y軸に平行な直線)に関して透視変換画像が線対称変換されて反転透視変換画像が作成される。
【0094】
第3工程では、その反転透視変換画像が空間光変調器43に呈示され、この空間光変調器43の背後から入射して空間光変調器43を透過した光が物体光Iとされる。この物体光Iは、+z方向に進みレンズ44により局所領域46に集光される。また、参照光Iは、−z方向に局所領域46に垂直入射する。局所領域46では、これらの物体光Iと参照光Iとが同時に入射されて両者が干渉し、リップマン型ホログラムとして要素ホログラム42が記録される。
【0095】
以上のように、感光材料45上の複数の局所領域46に対応して作成された反転透視変換画像それぞれに基づいて要素ホログラム42が作成され、これら複数の要素ホログラム42が配列されてドット型ホログラフィックステレオグラム41が作成される。なお、上記の第1〜第3の工程はコンピュータによる演算により行われてもよい。
【0096】
以上のように、第4実施形態に係る立体像表示装置40およびその作製方法は、必要な画像を作成する際の処理量を少なくすることができ、所要時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態に係る立体像表示装置1の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る立体像表示装置10の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る立体像表示装置10を作製する方法を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係る立体像表示装置10を作製する方法を説明する図である。
【図5】第1実施形態に係る立体像表示装置10による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図6】第1実施形態に係る立体像表示装置10による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図7】第1実施形態に係る立体像表示装置10による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る立体像表示装置20の構成を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る立体像表示装置20を作製する方法を説明する図である。
【図10】第2実施形態に係る立体像表示装置20を作製する方法を説明する図である。
【図11】第2実施形態に係る立体像表示装置20による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図12】第2実施形態に係る立体像表示装置20による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図13】第2実施形態に係る立体像表示装置20による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図14】第3実施形態に係る立体像表示装置30の構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る立体像表示装置30を作製する方法を説明する図である。
【図16】第3実施形態に係る立体像表示装置30を作製する方法を説明する図である。
【図17】第3実施形態に係る立体像表示装置30による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図18】第3実施形態に係る立体像表示装置30による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図19】第3実施形態に係る立体像表示装置30による立体像の表示の様子を説明する図である。
【図20】第4実施形態に係る立体像表示装置40の構成および立体像の表示の様子を示す図である。
【図21】第4実施形態に係る立体像表示装置40を作製する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0098】
1…立体像表示装置、2…画像呈示部、3…回転部、8…目標立体像、9…観察者、10…立体像表示装置、11…レンズアレイ部、12…レンズ、13…画像部、14…画像、15…中間画像部、16…中間画像、20…立体像表示装置、21…ピンホールアレイ部、22…ピンホール、23…画像部、24…画像、25…中間画像部、26…中間画像、30…立体像表示装置、31…光源部、32…点光源、33…画像部、34…画像、35…中間画像部、36…中間画像、40…立体像表示装置、41…ドット型ホログラフィックステレオグラム、42…要素ホログラム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者に対して立体像を表示する立体像表示装置であって、
平板状の形状を有し、当該平板に垂直な所定軸を中心にして前記観察者に対して相対的に回転したときに、その回転の際の所定方位にあるときに前記立体像を手前に表示し、その所定方位に対して直交する方位にあるときに前記立体像を遠方に表示する画像呈示部を備えることを特徴とする立体像表示装置。
【請求項2】
前記画像呈示部が、
前記所定軸に垂直な第1平面上に複数のレンズが2次元配列されたレンズアレイ部と、前記第1平面に対して平行であって前記複数のレンズの焦点距離だけ離間した第2平面上に前記複数のレンズに対して1対1に対応する複数の画像を呈示する画像部と、を含み、
前記観察者の眼から前記複数のレンズそれぞれの中心を通って前記複数の画像に到る直線上の該画像の情報に基づいて、前記観察者に対して前記立体像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項3】
前記画像呈示部が、
前記所定軸に垂直な第1平面上に複数のピンホールが2次元配列されたピンホールアレイ部と、前記第1平面に対して平行な第2平面上に前記複数のピンホールに対して1対1に対応する複数の画像を呈示する画像部と、を含み、
前記観察者の眼から前記複数のピンホールそれぞれを通って前記複数の画像に到る直線上の該画像の情報に基づいて、前記観察者に対して前記立体像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項4】
前記画像呈示部が、
前記所定軸に垂直な第1平面上に複数の点光源が2次元配列された光源部と、前記第1平面に対して平行な第2平面上に前記複数の点光源に対して1対1に対応する複数の画像を呈示し位置に応じて透過光を強度変調して出力する画像部と、を含み、
前記観察者の眼から前記画像部を通って前記複数の点光源それぞれに到る直線上の前記画像部の位置における強度変調に基づいて、前記観察者に対して前記立体像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項5】
前記画像呈示部が、
前記所定軸に垂直な平面上に複数の要素ホログラムが2次元配列されたドット型ホログラフィックステレオグラムを含み、
前記ドット型ホログラフィックステレオグラムに照明光が照射されたときに前記複数の要素ホログラムそれぞれで発生する再生光に基づいて、前記観察者に対して前記立体像を表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体像表示装置。
【請求項6】
前記所定軸を中心にして前記画像呈示部を回転させる回転部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の立体像表示装置。
【請求項7】
請求項2に記載の立体像表示装置を作製する方法であって、
第1平面上に複数のレンズが2次元配列されたレンズアレイ部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、他方の側に前記第1平面に対して平行であって前記複数のレンズの焦点距離だけ離間した第2平面上に中間画像部を配置し、前記目標立体像の各位置から前記複数のレンズそれぞれの中心を通って前記中間画像部に到る直線上の前記中間画像部の位置に、その直線上の前記目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、前記複数のレンズに対して1対1に対応する複数の中間画像を前記中間画像部に作成する第1工程と、
前記中間画像部に作成された前記複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応するレンズの中心から前記第2平面に降ろした垂線に直交する前記第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示する画像部を作成する第2工程と、
前記レンズアレイ部に対して前記第2平面上に前記画像部を配置する第3工程と、
を備えることを特徴とする立体像表示装置作製方法。
【請求項8】
請求項3に記載の立体像表示装置を作製する方法であって、
第1平面上に複数のピンホールが2次元配列されたピンホールアレイ部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、他方の側に前記第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部を配置し、前記目標立体像の各位置から前記複数のピンホールそれぞれを通って前記中間画像部に到る直線上の前記中間画像部の位置に、その直線上の前記目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、前記複数のピンホールに対して1対1に対応する複数の中間画像を前記中間画像部に作成する第1工程と、
前記中間画像部に作成された前記複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応するピンホールから前記第2平面に降ろした垂線に直交する前記第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示する画像部を作成する第2工程と、
前記ピンホールアレイ部に対して前記第2平面上に前記画像部を配置する第3工程と、
を備えることを特徴とする立体像表示装置作製方法。
【請求項9】
請求項4に記載の立体像表示装置を作製する方法であって、
第1平面上に複数の点光源が2次元配列された光源部に対して一方の側に表示されるべき目標立体像を配置するとともに、前記光源部と前記目標立体像との間であって前記第1平面に対して平行な第2平面上に中間画像部を配置し、前記目標立体像の各位置から前記中間画像部を通って前記複数の点光源それぞれに到る直線上の前記中間画像部の位置に、その直線上の前記目標立体像の位置の輝度情報または色情報を記録して、前記複数の点光源に対して1対1に対応する複数の中間画像を前記中間画像部に作成する第1工程と、
前記中間画像部に作成された前記複数の中間画像それぞれについて、該中間画像に対応する点光源から前記第2平面に降ろした垂線に直交する前記第2平面上の所定直線に関して該中間画像を線対称変換して、この線対称変換により得られた複数の画像を呈示し位置に応じて透過光を強度変調して出力する画像部を作成する第2工程と、
前記光源部に対して前記第2平面上に前記画像部を配置する第3工程と、
を備えることを特徴とする立体像表示装置作製方法。
【請求項10】
請求項5に記載の立体像表示装置を作製する方法であって、
ドット型ホログラフィックステレオグラムを構成する複数の要素ホログラムそれぞれが記録されるべき局所領域の中心位置を仮想視点として、前記ドット型ホログラフィックステレオグラムにより再生されるべき目標再生像を透視変換して透視変換画像を作成する第1工程と、
複数の前記局所領域に対応して作成された前記透視変換画像それぞれについて、前記局所領域の中心位置から前記透視変換画像の面に降ろした垂線に直交する該面上の所定直線に関して前記透視変換画像を線対称変換して反転透視変換画像を作成する第2工程と、
複数の前記局所領域に対応して作成された前記反転透視変換画像それぞれに基づいて要素ホログラムを作成し、これら複数の要素ホログラムを配列してドット型ホログラフィックステレオグラムを作成する第3工程と、
を備えることを特徴とする立体像表示装置作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−66387(P2010−66387A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231064(P2008−231064)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】