立体映像表示装置
【課題】立体映像表示装置において、映像発生装置とスクリーン及びプロジェクタとの間の同期を取るための大がかりなシステムを不要とし簡素な同期システムで動作することができる立体映像表示装置を提供する。
【解決手段】プロジェクタ2は映像発生装置1から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出する。複数の受光部5は奥行き位置に対応する信号光のみを受光する。積層スクリーン3は、入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーン3aで構成され、奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーンのみが散乱状態となり、他の個々のスクリーンは透過状態となる。
【解決手段】プロジェクタ2は映像発生装置1から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出する。複数の受光部5は奥行き位置に対応する信号光のみを受光する。積層スクリーン3は、入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーン3aで構成され、奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーンのみが散乱状態となり、他の個々のスクリーンは透過状態となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像を観察するための立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像を得る方法として従来から、ホログラフィー方式、液晶メガネ方式、レンチキュラー方式、及びスクリーンシフト方式等が提案されている。スクリーンシフト方式とは、CTやMRIで撮影される断層撮影像(断画像)に例示される「奥行き方向に応じた複数の映像」(以下、奥行き映像と称する。)に対し、個々の映像の奥行き情報に応じて投射するスクリーン位置を変化させることにより、奥行き映像を立体的に表示する方式である。スクリーンシフト方式は、メガネを必要とせず、輻輳による目の疲労がなく、比較的簡単に動画再生が可能な立体表示方法である。
【0003】
特許文献1には、概ね以下の内容が開示されている。奥行き映像を投射するプロジェクタと、プロジェクタからの投射光を平行ビームとするフレネルレンズと、フレネルレンズの射出側に配置した複数枚のスクリーンによって立体映像表示装置が構成される。奥行き映像信号とともに送出される同期信号により、複数枚のスクリーンの中で対応する特定のスクリーンが表示モードとして選択され、他のスクリーンは透明モードとして動作する。個々の奥行き映像は対応するスクリーンに時間順次に投影されることで立体映像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−228975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の立体映像表示装置においては、奥行き映像を発生する映像発生装置からプロジェクタ及び複数のスクリーンへ奥行き情報に関するパルス信号を送り、表示すべきスクリーンの選択とプロジェクタのフォーカス調整を行う同期システムが必要であった。スクリーンの積層数の増加、画面サイズ・投射距離の増大に応じて大掛かりなシステムが必要であるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、映像発生装置とスクリーン及びプロジェクタとの間の同期を取るための大がかりなシステムを不要とし簡素な同期システムで動作することができる立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、映像発生装置(1)から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出するプロジェクタ(2)と、前記奥行き位置に対応する信号光のみを受光する複数の受光部(3)と、入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーン(3a)で構成され、前記奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーン(3a)のみが散乱状態となり、他の個々のスクリーン(3a)は透過状態となる積層スクリーン(3)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
また、映像発生装置(1)から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報に応じた信号光を射出するプロジェクタ(2)と、前記信号光を受光する受光部(5)と、前記受光部が受けた前記信号光から対応するスクリーン(3a)を散乱状態に、前記対応するスクリーン以外の他のスクリーンを透過状態に制御する制御部(6)と、入射する光に対する透過状態または散乱状態を選択的に切り替えられる複数の前記スクリーンで構成され、前記制御部の制御する前記スクリーンのみが散乱状態となり、前記スクリーンの他のスクリーンは透過状態となる積層スクリーン(3)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、映像発生装置とスクリーン及びプロジェクタとの間の同期を取るための大がかりなシステムを不要とし簡素な同期システムで動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の立体映像表示装置を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の立体映像表示装置により観察できる奥行き映像の1例を示す説明図である。
【図3】図2の奥行き映像を構成する3枚の個々の奥行き映像を示し、それらの奥行き映像が積層スクリーンの異なるスクリーン面に対応している様子を示す図である。
【図4】図1に示すプロジェクタのフォーカス調整について説明する説明図である。
【図5】図1に示すプロジェクタの表示デバイスとして用いるアクティブマトリクス型液晶デバイスの動作を説明するための回路図である。
【図6】アクティブマトリクス型液晶デバイスの画素配置の1例を示す説明図である。
【図7】図1に示す積層スクリーンの配置を示す斜視図である。
【図8】積層スクリーンを構成する個々のスクリーンと対応する受光部の接続関係を示す回路図である。
【図9】積層スクリーン3と受光部5の相対配置の1例を示す配置図である。
【図10】図2の奥行き映像が投射された場合の、動作するフォトダイオードと個々の奥行き映像との関係を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図12】図11のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
【図13】本発明の第2の実施形態の立体映像表示装置の概略を示す概略構成図である。
【図14】図13に示す積層スクリーンと受光部の配置を示す斜視図である。
【図15】第2の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図16】図15に示したシーケンスのタイミングチャートを示す。
【図17】第3の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図18】図17のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の立体映像表示装置を示す概略構成図である。奥行き映像は、CAD、3次元CG等で作成された映像を基に映像発生装置1で再生されるか又は映像発生装置4自体で作成される。奥行き映像は奥行き情報とともに映像発生装置1からプロジェクタ2に送出される。
奥行き映像はプロジェクタ2の表示デバイス21で表示され、投射レンズ25で投射されて積層スクリーン3の個々のスクリーン3a上で結像する。観察者8は個々のスクリーン3a上に投射された映像を観察する。
【0012】
図2は、第1の実施形態の立体映像表示装置により観察できる奥行き映像の1例を示す図である。例示される映像4は、屋内から窓越しに外の風景を見る構図の映像である。図3は、図2の奥行き映像を構成する3枚の個々の奥行き映像を示し、それらの奥行き映像が積層スクリーン3の異なるスクリーン面に対応している様子を示す図である。映像の前景41は、窓枠である。映像の背景43が山脈である。映像の中間の景色42は、一本の木である。
【0013】
一般的に、立体表示をするためには、奥行き映像の奥行き数は最低2以上が必要である。図2、図3で例示した映像では奥行き数は3である。奥行き数Nである奥行き映像の集合が1フレームとなる。ところで、フリッカのない奥行き映像を再生するためには、フレーム周波数は60Hz以上必要であるとされている。したがって、奥行き映像を構成する個々の映像は、奥行き数N=2であれば120Hz、奥行き数=3であれば180Hzの周波数相当で表示することが望ましい。1フレーム中の奥行き映像の枚数(N)は多いほどより自然な立体感が得られる。
【0014】
本実施形態の立体映像表示装置では、図2、図3で例示する映像が入力された場合、奥行き情報に応じた3枚の個々の奥行き映像に時分割して積層スクリーン3上に表示する。前景41が、観察者8から見て一番手前のスクリーンに投射される。
【0015】
図4は図1に示すプロジェクタ2のフォーカス調整について説明する説明図である。通常のプロジェクタでは、レンズ全体を光軸にそって回転させながら前後に繰り出す全群繰出し機構が一般的である。しかしながら、本実施形態においては、積層スクリーン3の対応する個々のスクリーン3aに映像が結像するよう、奥行き映像の奥行き情報に応じてプロジェクタ2の投射レンズ25が高速でフォーカス移動する必要がある。そこで、プロジェクタ2本体の筐体22と投射レンズ25のフランジ24と間にアクチュエータ23が設けられる。
【0016】
アクチュエータ23は、奥行き映像の奥行き情報に応じて、奥行き情報に対応する予め設定された厚みに変化する。アクチュエータ23が所定の厚みに変化すると、投射レンズ25のフォーカスは移動し、映像は図1に示す積層スクリーン3の対応する個々のスクリーン3a上に結像する。図4(a)は、アクチュエータ23の厚みが最大の場合、図4(b)は、アクチュエータ23の厚みが最小の場合を示す。
【0017】
最も近くに位置する映像(前景)が積層スクリーン3の観察者に一番近いスクリーン3aに結像するように投射レン25のフォーカス調整条件を設定(メモリ1)する。最も遠くに位置する映像(背景)が積層スクリーン3の観察者に一番遠いスクリーンに結像するように投射レンズ25のフォーカス調整条件を設定(メモリ2)する。その他の中間の映像の場合の結像は、メモリ1からメモリ2の間で積層スクリーン数に対応して段階的に行う。
【0018】
図5は、図1に示すプロジェクタ2の表示デバイス21として用いるアクティブマトリクス型液晶デバイスの動作を説明するための回路図である。液晶79は反射電極77と対向電極78に挟まれている。反射電極77には画素選択のための画素トランジスタ75が接続されている。保持容量76は液晶79に印加される電荷を保持するための容量であり、液晶79と並列に配置されている。V(垂直)シフトレジスタ71からゲート線73にて各画素をアドレスするとともにH(水平)シフトレジスタ72から信号線74を経て各画素トランジスタ75に映像に応じた電荷が印加される。
【0019】
図6はアクティブマトリクス型液晶デバイスの画素配置の1例を示す説明図である。アクティブマトリクス型液晶デバイスの中央部には、有効画素領域702が形成されている。有効画素領域702の周りには調製画素領域701が設けられる。Hシフトレジスタ72、Vシフトレジスタ71は調製画素領域701の外側に配置される。有効画素1920×1080と表現される表示デバイス(フルハイビジョンまたはFHDと称される)では例えば水平・垂直共に8画素が調整画素として付加されるため、総画素数は1928×1088画素となる。
【0020】
調整画素を付加する目的は、第一に、有効画素領域702の平坦性を確保するため、第二に、画素レベルで映像をシフトするためであるが、実際に使用されることは少ない。この調製画素領域702を用いて奥行き情報を、信号光として投射する。第1の実施形態では、奥行き数に応じた数の複数の信号光表示領域703が調製画素領域702内に設けられる。プロジェクタ2は奥行き情報を基に奥行き位置に対応する信号光表示領域702を表示させ積層スクリーン3の近くの対応する複数の場所に向けて信号光を射出する。
【0021】
図7は図1に示す積層スクリーン3の配置を示す斜視図である。図8は積層スクリーンを構成する個々のスクリーン3aと対応する受光部5の接続関係を示す回路図である。積層スクリーン3は、互いに平行に配置される個々のスクリーン3aで構成されている。個々のスクリーン3aには対応する受光部5が接続されている。個々のスクリーン3aは高分子分散型液晶(PDLC)33をガラス31、32でサンドイッチした構造のスクリーンである。図示されていないが、それぞれのガラス31、32の片側には透明電極が製膜されている。高分子分散型液晶は、液晶に電圧が印加されていない状態では光を散乱する散乱状態を呈し、液晶に所定の電圧が印加されているときには光を透過する透過状態を呈する。以後の説明では、液晶に電圧が印加されていない状態を電圧ロー状態、液晶に所定の電圧が印加されている状態を電圧ハイ状態と称する。
【0022】
個々のスクリーン3aの片側の透明電極には受光部5が接続されている。他の透明電極はグランド電位にされている。受光部5はフォトダイオード51と駆動回路からなる。プロジェクタ2からの信号光がフォトダイオード51に照射されない状態ではフォトダイオード51はオフ(高抵抗)である。トランジスタ52のベース電位は、抵抗53とフォトダイオードの抵抗との関係でローとなりエミッタ電流は流れない。したがって、抵抗54による電圧降下がなく、スクリーン3aに+V[v]の電圧がかかる(電圧ハイ状態)。一方、フォトダイオード51に信号光が照射されるとフォトダイオード51はオン(低抵抗)となる。この時、トランジスタ52のベース電位はハイとなりエミッタ電流が流れる。そして、抵抗54による電圧降下によりスクリーン3aの印加電圧はほぼ零となる(電圧ロー状態)。
【0023】
プロジェクタ2からの信号光が照射されると、信号光を受光した受光部5に対応するスクリーン3aの液晶のみが電圧ロー状態となる。スクリーン3aの高分子分散液晶が散乱状態を呈する結果、映像光が結像できる状態となる。
【0024】
図9は積層スクリーン3と受光部5の相対配置の1例を示す配置図である。図6における信号光表示領域703から射出する複数の信号光に対応して受光部5は複数の場所に配置される。図9では、受光部5は積層スクリーン3の投射領域の外周左側に1個ずつ、上下方向に設けられる。一番手前のスクリーン3aに対応する受光部5はスクリーンの一番左上に設置される。以下、手前からN番目のスクリーンに対応する受光部5は左上からN番目の位置に設けられる。
【0025】
図10は図2の奥行き映像が投射された場合の、動作する受光部5と個々の奥行き映像との関係を示す説明図である。図10ではN=3として説明する。左の図は前景41であり、一番上の受光部5が動作する。真中の図は中間42にある物体であり、2番目の受光部5が動作する。右の図は背景43であり、3番目の受光部5が動作する。このように、プロジェクタ2から投射される信号光の照射位置と各スクリーンの受光部5の位置を取り決めておくことで、積層スクリーン3の中から対応する所定のスクリーン3aを瞬時に選択することが可能となる。
【0026】
図11は、第1の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。各フィールドの初めにスタートパルスが発せられる(ステップS801)。スタートパルスに続いて信号光が出力される(ステップS804)。信号光出力にわずかに遅れてスクリーン選択(ステップS805)とフォーカス調整(ステップS806)が実行される。スクリーン選択(ステップS805)は、対応する受光部5のフォトダイオード51が信号光を受光し、対応するスクリーン3aの液晶層を電圧ロー状態とさせる過程である。スクリーン選択と同時に投射レンズ25のフォーカス調整が行われる(ステップS806)。具体的には駆動信号により投射レンズ25のアクチュエータ23が変位することでフォーカスが移動し選択されたスクリーン3a面上に、焦点が合う。スクリーン選択及びフォーカス調整の後、映像光が投射され、選択されたスクリーン3a上に映像が表示される(ステップS807)。
【0027】
図12は、図11のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。図11のS801からS807までの1つのシーケンスが図12の1フィールドに対応する。個々のステップは図11で説明した通りである。前述のフリッカの観点から、1フレームは60Hzに設定される。個々の奥行き映像は1フレーム内で時分割表示される。図3、図8の例示では奥行き数は3となり、1フィールドは180Hzとなる。また、スタートパルス、信号光出力、スクリーン選択及びフォーカス調整の期間を、映像光を送出しないブランキング期間(黒挿入される期間)とすることで、奥行き映像の奥行き方向のクロストークを防ぐ。
【0028】
<第2の実施形態>
図13は、は本発明の第2の実施形態の立体映像表示装置の概略を示す概略構成図である。図13において、表示デバイス21、積層スクリーン3、映像発生装置1、投射レンズ25は図1と同様である。図1との相違点は、受光部5が最もプロジェクタ側のスクリーン31近傍に一個配置される点である。プロジェクタ2の表示デバイス21については、信号光表示領域703を複数有し、その中の1つを用いてもよいし、信号光表示領域703を1つのみ有してもよい。
【0029】
図14は図13に示す積層スクリーン3の配置を示す斜視図である。積層スクリーン3は、図7の場合と同様に、互いに平行に配置される個々のスクリーン3aで構成されている。図7では、個々のスクリーン3aには対応する受光部5が接続されているが、図14では、受光部5が最もプロジェクタ側のスクリーン31近傍に一個配置され、受光部5には制御部6が接続されている。
【0030】
制御部6は受光部5で受光した信号光を復調して対応するスクリーン3aを選択する。具体的には、第1の実施形態の場合の信号光は無変調であるのに対し、本実施形態においては、信号光は所定の変調を施される。変調された信号光は受光部5で受光されて制御部6で復調される。対応するスクリーン3aのみ電圧ロー状態(散乱状態)、他のスクリーンは電圧ハイ状態(透過状態)に制御される。信号光が例えば8ビット信号であれば、理論的には最大256層のスクリーンを切り替えることができる。
【0031】
図15は、第2の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連のシステムの動作を示すフローチャートである。第1の実施形態との相違点は、フォトダイオード51がスタートパルスを受けた時点で、投射レンズ25のフォーカスが受光部5の配置されたスクリーン3aに移動する点である(ステップS802)。受光部5のフォトダイオード51上で信号光がデフォーカスするのを防ぎ、受光動作を確実にするためである。以下、受光部5の配置されたスクリーンを原点スクリーンと称する。
【0032】
図16は、図15のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。スタートパルスが発せられると、投射レンズのフォーカスは原点スクリーンに復帰する(ステップS802)、その後信号光が投射される(ステップS804)。受光部5は信号光を受光して、最適なスクリーンが選択され、映像光が投射される(ステップS805、S806、S807)。
【0033】
<第3の実施形態>
図17は、第3の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。図18は、図18のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
まず、各フィールドの初めにスタートパルスが発せられる(ステップS801)。次に、スタートパルスに遅延して100%階調信号が出力される(ステップS803)。100%階調信号が出力される点が、第1、第2の実施形態との相違点である。その後信号光が出力される(ステップS804)。
【0034】
100%階調信号を出力してから信号光を出力するのは、光源や表示デバイスの経時変化、周囲環境(温度条件、迷光など)等の原因によるフォトダイオード51の信号光の誤検知を排除するためである。本実施形態では、100%の階調信号と変調された信号光の輝度の差分を検出する事で信号光の誤検出を防止する。また、投射レンズ25のフォーカスを原点スクリーンに復帰させる必要なくなるという効果が得られる。
【0035】
すなわち、第2の実施形態において、受光部5のフォトダイオード51がスタートパルスを受ける際、いったん投射レンズのフォーカスを原点スクリーンに復帰するのは、フォトダイオード51上で信号光がデフォーカスするのを防ぎ、受光動作を確実にするためである。しかし、第3の実施形態においては100%の階調信号と変調された信号光の輝度の差分を検出する事で信号光の誤検出を防止するため、投射レンズ25のフォーカスを原点スクリーンに復帰させる必要はない。
【0036】
信号光出力(ステップS804)の後スクリーン選択(ステップS805)及びフォーカス調整(ステップS806)がされ、その後、映像光が投射される(ステップS807)。
【0037】
第1の実施形態から第3の実施形態において、表示デバイスとしては液晶デバイスを例として説明してきたが、透過型液晶デバイス、反射型液晶デバイスの他に、DLP(Digital Light Processing)素子や、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を表示素子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 映像発生装置、
2 プロジェクタ、21 表示デバイス、22 プロジェクタ筐体、
23 アクチュエータ、24 投射レンズのフランジ、25 投射レンズ
3 積層スクリーン、3a 個々のスクリーン、
31、32 ガラス、33 高分子分散液晶(PDLC)、
4 例示される映像、41 前景、42 中間の景色、43 背景
5 受光部、51 フォトダイオード、52 トランジスタ、
53 抵抗、54 抵抗、
6 制御部、
71 Vシフトレジスタ、72 Hシフトレジスタ、73ゲート線、
74 信号線、75画素トランジスタ、76保持容量、77 反射電極、
78 対向電極、79 液晶、701 調整画素領域、702 有効画素領域、
703 信号光表示領域、
8 観察者
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像を観察するための立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像を得る方法として従来から、ホログラフィー方式、液晶メガネ方式、レンチキュラー方式、及びスクリーンシフト方式等が提案されている。スクリーンシフト方式とは、CTやMRIで撮影される断層撮影像(断画像)に例示される「奥行き方向に応じた複数の映像」(以下、奥行き映像と称する。)に対し、個々の映像の奥行き情報に応じて投射するスクリーン位置を変化させることにより、奥行き映像を立体的に表示する方式である。スクリーンシフト方式は、メガネを必要とせず、輻輳による目の疲労がなく、比較的簡単に動画再生が可能な立体表示方法である。
【0003】
特許文献1には、概ね以下の内容が開示されている。奥行き映像を投射するプロジェクタと、プロジェクタからの投射光を平行ビームとするフレネルレンズと、フレネルレンズの射出側に配置した複数枚のスクリーンによって立体映像表示装置が構成される。奥行き映像信号とともに送出される同期信号により、複数枚のスクリーンの中で対応する特定のスクリーンが表示モードとして選択され、他のスクリーンは透明モードとして動作する。個々の奥行き映像は対応するスクリーンに時間順次に投影されることで立体映像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−228975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の立体映像表示装置においては、奥行き映像を発生する映像発生装置からプロジェクタ及び複数のスクリーンへ奥行き情報に関するパルス信号を送り、表示すべきスクリーンの選択とプロジェクタのフォーカス調整を行う同期システムが必要であった。スクリーンの積層数の増加、画面サイズ・投射距離の増大に応じて大掛かりなシステムが必要であるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、映像発生装置とスクリーン及びプロジェクタとの間の同期を取るための大がかりなシステムを不要とし簡素な同期システムで動作することができる立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、映像発生装置(1)から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出するプロジェクタ(2)と、前記奥行き位置に対応する信号光のみを受光する複数の受光部(3)と、入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーン(3a)で構成され、前記奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーン(3a)のみが散乱状態となり、他の個々のスクリーン(3a)は透過状態となる積層スクリーン(3)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
また、映像発生装置(1)から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報に応じた信号光を射出するプロジェクタ(2)と、前記信号光を受光する受光部(5)と、前記受光部が受けた前記信号光から対応するスクリーン(3a)を散乱状態に、前記対応するスクリーン以外の他のスクリーンを透過状態に制御する制御部(6)と、入射する光に対する透過状態または散乱状態を選択的に切り替えられる複数の前記スクリーンで構成され、前記制御部の制御する前記スクリーンのみが散乱状態となり、前記スクリーンの他のスクリーンは透過状態となる積層スクリーン(3)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、映像発生装置とスクリーン及びプロジェクタとの間の同期を取るための大がかりなシステムを不要とし簡素な同期システムで動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の立体映像表示装置を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の立体映像表示装置により観察できる奥行き映像の1例を示す説明図である。
【図3】図2の奥行き映像を構成する3枚の個々の奥行き映像を示し、それらの奥行き映像が積層スクリーンの異なるスクリーン面に対応している様子を示す図である。
【図4】図1に示すプロジェクタのフォーカス調整について説明する説明図である。
【図5】図1に示すプロジェクタの表示デバイスとして用いるアクティブマトリクス型液晶デバイスの動作を説明するための回路図である。
【図6】アクティブマトリクス型液晶デバイスの画素配置の1例を示す説明図である。
【図7】図1に示す積層スクリーンの配置を示す斜視図である。
【図8】積層スクリーンを構成する個々のスクリーンと対応する受光部の接続関係を示す回路図である。
【図9】積層スクリーン3と受光部5の相対配置の1例を示す配置図である。
【図10】図2の奥行き映像が投射された場合の、動作するフォトダイオードと個々の奥行き映像との関係を示す説明図である。
【図11】第1の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図12】図11のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
【図13】本発明の第2の実施形態の立体映像表示装置の概略を示す概略構成図である。
【図14】図13に示す積層スクリーンと受光部の配置を示す斜視図である。
【図15】第2の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図16】図15に示したシーケンスのタイミングチャートを示す。
【図17】第3の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図18】図17のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の立体映像表示装置を示す概略構成図である。奥行き映像は、CAD、3次元CG等で作成された映像を基に映像発生装置1で再生されるか又は映像発生装置4自体で作成される。奥行き映像は奥行き情報とともに映像発生装置1からプロジェクタ2に送出される。
奥行き映像はプロジェクタ2の表示デバイス21で表示され、投射レンズ25で投射されて積層スクリーン3の個々のスクリーン3a上で結像する。観察者8は個々のスクリーン3a上に投射された映像を観察する。
【0012】
図2は、第1の実施形態の立体映像表示装置により観察できる奥行き映像の1例を示す図である。例示される映像4は、屋内から窓越しに外の風景を見る構図の映像である。図3は、図2の奥行き映像を構成する3枚の個々の奥行き映像を示し、それらの奥行き映像が積層スクリーン3の異なるスクリーン面に対応している様子を示す図である。映像の前景41は、窓枠である。映像の背景43が山脈である。映像の中間の景色42は、一本の木である。
【0013】
一般的に、立体表示をするためには、奥行き映像の奥行き数は最低2以上が必要である。図2、図3で例示した映像では奥行き数は3である。奥行き数Nである奥行き映像の集合が1フレームとなる。ところで、フリッカのない奥行き映像を再生するためには、フレーム周波数は60Hz以上必要であるとされている。したがって、奥行き映像を構成する個々の映像は、奥行き数N=2であれば120Hz、奥行き数=3であれば180Hzの周波数相当で表示することが望ましい。1フレーム中の奥行き映像の枚数(N)は多いほどより自然な立体感が得られる。
【0014】
本実施形態の立体映像表示装置では、図2、図3で例示する映像が入力された場合、奥行き情報に応じた3枚の個々の奥行き映像に時分割して積層スクリーン3上に表示する。前景41が、観察者8から見て一番手前のスクリーンに投射される。
【0015】
図4は図1に示すプロジェクタ2のフォーカス調整について説明する説明図である。通常のプロジェクタでは、レンズ全体を光軸にそって回転させながら前後に繰り出す全群繰出し機構が一般的である。しかしながら、本実施形態においては、積層スクリーン3の対応する個々のスクリーン3aに映像が結像するよう、奥行き映像の奥行き情報に応じてプロジェクタ2の投射レンズ25が高速でフォーカス移動する必要がある。そこで、プロジェクタ2本体の筐体22と投射レンズ25のフランジ24と間にアクチュエータ23が設けられる。
【0016】
アクチュエータ23は、奥行き映像の奥行き情報に応じて、奥行き情報に対応する予め設定された厚みに変化する。アクチュエータ23が所定の厚みに変化すると、投射レンズ25のフォーカスは移動し、映像は図1に示す積層スクリーン3の対応する個々のスクリーン3a上に結像する。図4(a)は、アクチュエータ23の厚みが最大の場合、図4(b)は、アクチュエータ23の厚みが最小の場合を示す。
【0017】
最も近くに位置する映像(前景)が積層スクリーン3の観察者に一番近いスクリーン3aに結像するように投射レン25のフォーカス調整条件を設定(メモリ1)する。最も遠くに位置する映像(背景)が積層スクリーン3の観察者に一番遠いスクリーンに結像するように投射レンズ25のフォーカス調整条件を設定(メモリ2)する。その他の中間の映像の場合の結像は、メモリ1からメモリ2の間で積層スクリーン数に対応して段階的に行う。
【0018】
図5は、図1に示すプロジェクタ2の表示デバイス21として用いるアクティブマトリクス型液晶デバイスの動作を説明するための回路図である。液晶79は反射電極77と対向電極78に挟まれている。反射電極77には画素選択のための画素トランジスタ75が接続されている。保持容量76は液晶79に印加される電荷を保持するための容量であり、液晶79と並列に配置されている。V(垂直)シフトレジスタ71からゲート線73にて各画素をアドレスするとともにH(水平)シフトレジスタ72から信号線74を経て各画素トランジスタ75に映像に応じた電荷が印加される。
【0019】
図6はアクティブマトリクス型液晶デバイスの画素配置の1例を示す説明図である。アクティブマトリクス型液晶デバイスの中央部には、有効画素領域702が形成されている。有効画素領域702の周りには調製画素領域701が設けられる。Hシフトレジスタ72、Vシフトレジスタ71は調製画素領域701の外側に配置される。有効画素1920×1080と表現される表示デバイス(フルハイビジョンまたはFHDと称される)では例えば水平・垂直共に8画素が調整画素として付加されるため、総画素数は1928×1088画素となる。
【0020】
調整画素を付加する目的は、第一に、有効画素領域702の平坦性を確保するため、第二に、画素レベルで映像をシフトするためであるが、実際に使用されることは少ない。この調製画素領域702を用いて奥行き情報を、信号光として投射する。第1の実施形態では、奥行き数に応じた数の複数の信号光表示領域703が調製画素領域702内に設けられる。プロジェクタ2は奥行き情報を基に奥行き位置に対応する信号光表示領域702を表示させ積層スクリーン3の近くの対応する複数の場所に向けて信号光を射出する。
【0021】
図7は図1に示す積層スクリーン3の配置を示す斜視図である。図8は積層スクリーンを構成する個々のスクリーン3aと対応する受光部5の接続関係を示す回路図である。積層スクリーン3は、互いに平行に配置される個々のスクリーン3aで構成されている。個々のスクリーン3aには対応する受光部5が接続されている。個々のスクリーン3aは高分子分散型液晶(PDLC)33をガラス31、32でサンドイッチした構造のスクリーンである。図示されていないが、それぞれのガラス31、32の片側には透明電極が製膜されている。高分子分散型液晶は、液晶に電圧が印加されていない状態では光を散乱する散乱状態を呈し、液晶に所定の電圧が印加されているときには光を透過する透過状態を呈する。以後の説明では、液晶に電圧が印加されていない状態を電圧ロー状態、液晶に所定の電圧が印加されている状態を電圧ハイ状態と称する。
【0022】
個々のスクリーン3aの片側の透明電極には受光部5が接続されている。他の透明電極はグランド電位にされている。受光部5はフォトダイオード51と駆動回路からなる。プロジェクタ2からの信号光がフォトダイオード51に照射されない状態ではフォトダイオード51はオフ(高抵抗)である。トランジスタ52のベース電位は、抵抗53とフォトダイオードの抵抗との関係でローとなりエミッタ電流は流れない。したがって、抵抗54による電圧降下がなく、スクリーン3aに+V[v]の電圧がかかる(電圧ハイ状態)。一方、フォトダイオード51に信号光が照射されるとフォトダイオード51はオン(低抵抗)となる。この時、トランジスタ52のベース電位はハイとなりエミッタ電流が流れる。そして、抵抗54による電圧降下によりスクリーン3aの印加電圧はほぼ零となる(電圧ロー状態)。
【0023】
プロジェクタ2からの信号光が照射されると、信号光を受光した受光部5に対応するスクリーン3aの液晶のみが電圧ロー状態となる。スクリーン3aの高分子分散液晶が散乱状態を呈する結果、映像光が結像できる状態となる。
【0024】
図9は積層スクリーン3と受光部5の相対配置の1例を示す配置図である。図6における信号光表示領域703から射出する複数の信号光に対応して受光部5は複数の場所に配置される。図9では、受光部5は積層スクリーン3の投射領域の外周左側に1個ずつ、上下方向に設けられる。一番手前のスクリーン3aに対応する受光部5はスクリーンの一番左上に設置される。以下、手前からN番目のスクリーンに対応する受光部5は左上からN番目の位置に設けられる。
【0025】
図10は図2の奥行き映像が投射された場合の、動作する受光部5と個々の奥行き映像との関係を示す説明図である。図10ではN=3として説明する。左の図は前景41であり、一番上の受光部5が動作する。真中の図は中間42にある物体であり、2番目の受光部5が動作する。右の図は背景43であり、3番目の受光部5が動作する。このように、プロジェクタ2から投射される信号光の照射位置と各スクリーンの受光部5の位置を取り決めておくことで、積層スクリーン3の中から対応する所定のスクリーン3aを瞬時に選択することが可能となる。
【0026】
図11は、第1の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。各フィールドの初めにスタートパルスが発せられる(ステップS801)。スタートパルスに続いて信号光が出力される(ステップS804)。信号光出力にわずかに遅れてスクリーン選択(ステップS805)とフォーカス調整(ステップS806)が実行される。スクリーン選択(ステップS805)は、対応する受光部5のフォトダイオード51が信号光を受光し、対応するスクリーン3aの液晶層を電圧ロー状態とさせる過程である。スクリーン選択と同時に投射レンズ25のフォーカス調整が行われる(ステップS806)。具体的には駆動信号により投射レンズ25のアクチュエータ23が変位することでフォーカスが移動し選択されたスクリーン3a面上に、焦点が合う。スクリーン選択及びフォーカス調整の後、映像光が投射され、選択されたスクリーン3a上に映像が表示される(ステップS807)。
【0027】
図12は、図11のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。図11のS801からS807までの1つのシーケンスが図12の1フィールドに対応する。個々のステップは図11で説明した通りである。前述のフリッカの観点から、1フレームは60Hzに設定される。個々の奥行き映像は1フレーム内で時分割表示される。図3、図8の例示では奥行き数は3となり、1フィールドは180Hzとなる。また、スタートパルス、信号光出力、スクリーン選択及びフォーカス調整の期間を、映像光を送出しないブランキング期間(黒挿入される期間)とすることで、奥行き映像の奥行き方向のクロストークを防ぐ。
【0028】
<第2の実施形態>
図13は、は本発明の第2の実施形態の立体映像表示装置の概略を示す概略構成図である。図13において、表示デバイス21、積層スクリーン3、映像発生装置1、投射レンズ25は図1と同様である。図1との相違点は、受光部5が最もプロジェクタ側のスクリーン31近傍に一個配置される点である。プロジェクタ2の表示デバイス21については、信号光表示領域703を複数有し、その中の1つを用いてもよいし、信号光表示領域703を1つのみ有してもよい。
【0029】
図14は図13に示す積層スクリーン3の配置を示す斜視図である。積層スクリーン3は、図7の場合と同様に、互いに平行に配置される個々のスクリーン3aで構成されている。図7では、個々のスクリーン3aには対応する受光部5が接続されているが、図14では、受光部5が最もプロジェクタ側のスクリーン31近傍に一個配置され、受光部5には制御部6が接続されている。
【0030】
制御部6は受光部5で受光した信号光を復調して対応するスクリーン3aを選択する。具体的には、第1の実施形態の場合の信号光は無変調であるのに対し、本実施形態においては、信号光は所定の変調を施される。変調された信号光は受光部5で受光されて制御部6で復調される。対応するスクリーン3aのみ電圧ロー状態(散乱状態)、他のスクリーンは電圧ハイ状態(透過状態)に制御される。信号光が例えば8ビット信号であれば、理論的には最大256層のスクリーンを切り替えることができる。
【0031】
図15は、第2の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連のシステムの動作を示すフローチャートである。第1の実施形態との相違点は、フォトダイオード51がスタートパルスを受けた時点で、投射レンズ25のフォーカスが受光部5の配置されたスクリーン3aに移動する点である(ステップS802)。受光部5のフォトダイオード51上で信号光がデフォーカスするのを防ぎ、受光動作を確実にするためである。以下、受光部5の配置されたスクリーンを原点スクリーンと称する。
【0032】
図16は、図15のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。スタートパルスが発せられると、投射レンズのフォーカスは原点スクリーンに復帰する(ステップS802)、その後信号光が投射される(ステップS804)。受光部5は信号光を受光して、最適なスクリーンが選択され、映像光が投射される(ステップS805、S806、S807)。
【0033】
<第3の実施形態>
図17は、第3の実施形態において、信号光が発せられてから映像が表示されるまでの一連の動作を示すフローチャートである。図18は、図18のフローチャートに対応するタイミングチャートを示す。
まず、各フィールドの初めにスタートパルスが発せられる(ステップS801)。次に、スタートパルスに遅延して100%階調信号が出力される(ステップS803)。100%階調信号が出力される点が、第1、第2の実施形態との相違点である。その後信号光が出力される(ステップS804)。
【0034】
100%階調信号を出力してから信号光を出力するのは、光源や表示デバイスの経時変化、周囲環境(温度条件、迷光など)等の原因によるフォトダイオード51の信号光の誤検知を排除するためである。本実施形態では、100%の階調信号と変調された信号光の輝度の差分を検出する事で信号光の誤検出を防止する。また、投射レンズ25のフォーカスを原点スクリーンに復帰させる必要なくなるという効果が得られる。
【0035】
すなわち、第2の実施形態において、受光部5のフォトダイオード51がスタートパルスを受ける際、いったん投射レンズのフォーカスを原点スクリーンに復帰するのは、フォトダイオード51上で信号光がデフォーカスするのを防ぎ、受光動作を確実にするためである。しかし、第3の実施形態においては100%の階調信号と変調された信号光の輝度の差分を検出する事で信号光の誤検出を防止するため、投射レンズ25のフォーカスを原点スクリーンに復帰させる必要はない。
【0036】
信号光出力(ステップS804)の後スクリーン選択(ステップS805)及びフォーカス調整(ステップS806)がされ、その後、映像光が投射される(ステップS807)。
【0037】
第1の実施形態から第3の実施形態において、表示デバイスとしては液晶デバイスを例として説明してきたが、透過型液晶デバイス、反射型液晶デバイスの他に、DLP(Digital Light Processing)素子や、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を表示素子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 映像発生装置、
2 プロジェクタ、21 表示デバイス、22 プロジェクタ筐体、
23 アクチュエータ、24 投射レンズのフランジ、25 投射レンズ
3 積層スクリーン、3a 個々のスクリーン、
31、32 ガラス、33 高分子分散液晶(PDLC)、
4 例示される映像、41 前景、42 中間の景色、43 背景
5 受光部、51 フォトダイオード、52 トランジスタ、
53 抵抗、54 抵抗、
6 制御部、
71 Vシフトレジスタ、72 Hシフトレジスタ、73ゲート線、
74 信号線、75画素トランジスタ、76保持容量、77 反射電極、
78 対向電極、79 液晶、701 調整画素領域、702 有効画素領域、
703 信号光表示領域、
8 観察者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像発生装置から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出するプロジェクタと、
前記奥行き位置に対応する信号光のみを受光する複数の受光部と、
入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーンで構成され、前記奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーンのみが散乱状態となり、他の個々のスクリーンは透過状態となる積層スクリーンと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
映像発生装置から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報に応じた信号光を射出するプロジェクタと、
前記信号光を受光する受光部と、
前記受光部が受けた前記信号光から対応するスクリーンを散乱状態に、前記対応するスクリーン以外の他のスクリーンを透過状態に制御する制御部と、
入射する光に対する透過状態または散乱状態を選択的に切り替えられる複数の前記スクリーンで構成され、前記制御部の制御する前記スクリーンのみが散乱状態となり、前記スクリーンの他のスクリーンは透過状態となる積層スクリーンと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項1】
映像発生装置から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報のそれぞれの奥行き位置に対応する複数の場所に信号光を射出するプロジェクタと、
前記奥行き位置に対応する信号光のみを受光する複数の受光部と、
入射する光に対する透過状態と散乱状態とが選択的に切り替えられる複数のスクリーンで構成され、前記奥行き位置に対応する信号光を受光した受光部に対応した前記個々のスクリーンのみが散乱状態となり、他の個々のスクリーンは透過状態となる積層スクリーンと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
映像発生装置から送出される奥行き映像に対応する映像光を射出するとともに、奥行き情報に応じた信号光を射出するプロジェクタと、
前記信号光を受光する受光部と、
前記受光部が受けた前記信号光から対応するスクリーンを散乱状態に、前記対応するスクリーン以外の他のスクリーンを透過状態に制御する制御部と、
入射する光に対する透過状態または散乱状態を選択的に切り替えられる複数の前記スクリーンで構成され、前記制御部の制御する前記スクリーンのみが散乱状態となり、前記スクリーンの他のスクリーンは透過状態となる積層スクリーンと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−14109(P2012−14109A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153064(P2010−153064)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]