説明

立体画像表示システム

【課題】複数の体験者が同時に裸眼で立体画像を視認することができる立体画像表示システムを提供する。
【解決手段】水平に置かれた再帰反射シート1の周囲に体験者Mの両眼の間隔に対応付けて、それぞれ複数個のプロジェクタ3と半透鏡2を配置する。各プロジェクタ3には、表示対象であるオブジェクトを全周囲から撮影した視差画像が与えられる。隣り合う2つのプロジェクタ3から照射された画像光(左右の視差画像)は半透鏡2で反射されて再帰反射シート1に入射する。入射した2つの画像光はそれぞれ再帰反射シート1で入射方向に反射される。2つの反射光は半透鏡2を透過して体験者Mの右眼と左眼にそれぞれ分離して入射する。これにより体験者Mは再帰反射シート1の全周囲から、それぞれの方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊なメガネを用いることなく両眼視差のある画像(右眼用画像と左眼用画像)を体験者の左右の眼に分離して入力し、立体画像として視認することができる立体画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の立体画像表示システムとして、再帰反射スクリーンを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、図15及び図16を参照して従来の立体画像表示システムについて説明する。図15は、再帰反射スクリーンを利用した表示装置の原理説明に供する側面図、図16は、従来の立体画像表示システムの概略構成を示した平面図である。
【0003】
再帰反射スクリーンを利用した表示装置は、図15に示すように、体験者Mの視線方向に再帰反射スクリーン21が立位状態で配置されている。体験者Mと再帰反射スクリーン21と間に、半透鏡22が設けられている。この半透鏡22の光入射面は体験者Mの顔面と正対している。さらに、所定画角の画像光L1を半透鏡22に向けて照射するプロジェクタ23が設けられている。プロジェクタ23から照射される画像光L1の画角と、その画像光L1の半透鏡22に対する入射角度を適宜に設定することにより、画像体験領域に居る体験者Mが半透鏡22を介して再帰反射スクリーン21を見たときの視野と、半透鏡22で画像光L1が反射されて再帰反射スクリーン21に投影したときの画像光L2とを重畳させるようにする。再帰反射スクリーン21は、画像光L2をその入射方向に反射する特性を有するので、再帰反射スクリーン21に投影された画像光L2は、その入射方向に反射され、更に半透鏡22を透過して体験者Mの眼に入射する。このようにして体験者Mは、画像光L2を視認することができる。
【0004】
このような表示の仕組みを利用して、従来の立体画像表示システムは構成されている。以下、図16を参照する。この立体画像表示システムは、右眼用の画像光L1Rを照射するプロジェクタ23Rと、左眼用の画像光L1Lを照射するプロジェクタ23Lと、2つの半透鏡22A、22Bなど備えている。プロジェクタ23Rから照射された右眼用の画像光L1Rは、半透鏡22Aと22Bによってその順に反射されて再帰反射スクリーン21に投影される。投影された画像光L2Rは、その入射方向に反射され、半透鏡22A、22Bを透過して体験者Mの右眼に入射する。一方、プロジェクタ23Lから照射された左眼用の画像光L1Lは、半透鏡22Aを透過し、次に半透鏡22Bによって反射されて再帰反射スクリーン21に投影される。投影された画像光L2Lは、その入射方向に反射され、半透鏡22A、22Bを透過して体験者Mの左眼に入射する。画像光L2R、L2Lは視差画像であるので、体験者Mは立体画像を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−113476号公報(段落0014〜0059、図1〜図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来の立体画像表示システムは、比較的に簡単な構成で立体画像を裸眼で視認することはできるが、特定の(一人の)体験者のみが立体画像を視認することができるだけで、複数の体験者が同時に立体画像を視認することができないという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の体験者が同時に裸眼で立体画像を視認することができる立体画像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を入射方向に反射させる再帰反射光学手段と、前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野を横切るように配設された半透鏡と、前記半透鏡に向けて、体験者が居る側とは反対側から画像光を照射する画像光照射手段と、前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、前記半透鏡は、前記画像光照射手段から照射された画像光を前記再帰反射光学手段に向けて反射するとともに、前記半透鏡で反射された画像光が体験者の視野に対して光学的に共役になるように、前記画像光照射手段と前記半透鏡との位置関係が設定されており、前記半透鏡と前記画像光照射手段と含む投影ユニットが、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各投影ユニットの間隔は、前記各投影ユニットに対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各投影ユニットの配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各投影ユニットの配置位置に応じて、前記各投影ユニットの前記画像光照射手段に与えることを特徴とする。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、体験者の居る位置、即ち体験者の左右の眼が視認可能領域に位置しているとき、例えば右眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は、半透鏡で反射されて再帰反射光学手段の光入射面に入射する。再帰反射光学手段に入射した画像光は入射方向を反射され、半透鏡を透過して体験者の右眼に入射する。同様に、前記投影ユニットの隣りにある投影ユニット、即ち、左眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は、半透鏡及び再帰反射光学手段でそれぞれ反射された後、半透鏡を透過して体験者の左眼に入射する。前記2つの画像光照射手段には、画像送信手段から前記2つの投影ユニットの配置位置に対応する方向から見たときのオブジェクトの視差画像が送信されているので、体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。再帰反射光学手段の周囲の別の個所(別の視認可能領域)に居る体験者には、その体験者の位置に応じた2つの投影ユニットから、その体験者の居る方向から見たオブジェクトの視差画像に対応する画像光が照射されて、その体験者の両眼に2つの画像光が分離して入射する。したがって、その体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。このように、再帰反射光学手段の周囲に居る複数の体験者が、各々の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を同時に視認することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を入射方向に反射させる再帰反射光学手段と、 前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野方向から、前記再帰光学手段に向けて画像光を照射する画像光照射手段と、前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、前記画像光照射手段は、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各画像光照射手段の間隔は、前記各画像光照射手段に対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各画像光照射手段の配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各画像光照射手段の配置位置に応じて、前記各画像光照射手段に与えることを特徴とする。
【0011】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、体験者の居る位置、即ち体験者の左右の眼が視認可能領域に位置しているとき、例えば右眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は再帰反射光学手段の光入射面に入射する。再帰反射光学手段に入射した画像光は入射方向を反射されて画像光照射手段に戻るので、その画像光照射手段に遮られる。即ち、再帰反射光学手段で再帰反射された光は、体験者に視認されない。しかし、再起反射光学手段に入射した光は、その全てが入射方向に反射されるわけではなく、再帰反射手段の精度に起因して、入射した光の一部は入射方向を中心として拡散して反射する。この拡散反射光が体験者の眼(ここでは右眼)に入射する。同様に、前記投影ユニットの隣りにある投影ユニット、即ち、左眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は再帰反射光学手段で反射され、その反射光のうちの拡散反射光が体験者の左眼に入射する。前記2つの画像光照射手段には、画像送信手段から前記2つの投影ユニットの配置位置に対応する方向から見たときのオブジェクトの視差画像が送信されているので、体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。同様に、再帰反射光学手段の周囲の別の個所(別の視認可能領域)に居る体験者も、その体験者が居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。このように、再帰反射光学手段の周囲に居る複数の体験者が、各々の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を同時に視認することができる。請求項2に記載の発明によれば、再帰反射光学手段からの拡散反射光を利用するので請求項1に記載の発明のものに比べて、半透鏡を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を、平面視では入射方向と同じ方向であるが、側面視では上方向又は下方向に外れた方向に光を屈折して反射させる再帰反射光学手段と、 平面視では、前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野方向と同じ方向であるが、側面視では、前記再帰反射光学手段からの反射光が通過する領域から下側又は上側に外れた位置から、前記再帰反射光学手段に向けて画像光を照射する画像光照射手段と、前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、前記画像光照射手段は、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各画像光照射手段の間隔は、前記各画像光照射手段に対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各画像光照射手段の配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各画像光照射手段の配置位置に応じて、前記各画像光照射手段に与えることを特徴とする。
【0013】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、体験者の居る位置、即ち体験者の左右の眼が視認可能領域に位置しているとき、例えば右眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は再帰反射光学手段の光入射面に入射する。請求項3記載の発明で用いられる再帰反射光学手段は、その光入射面に入射した光を、平面視では入射方向と同じであるが、側面視では上方向又は下方向に光を屈折して反射する。従って、この再帰反射光学手段で反射された光は、画像光照射手段の上方向又は下方向を通過して戻るので、画像光照射手段に遮られることはない。このようにして再帰反射光学手段で屈折して反射された反射光が体験者の眼(ここでは右眼)に入射する。同様に、前記投影ユニットの隣りにある投影ユニット、即ち、左眼の位置に対応した投影ユニットの画像光照射手段から照射された画像光は再帰反射光学手段で屈折して反射され、その反射光が体験者の左眼に入射する。前記2つの画像光照射手段には、画像送信手段から前記2つの投影ユニットの配置位置に対応する方向から見たときのオブジェクトの視差画像が送信されているので、体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。同様に、再帰反射光学手段の周囲の別の個所(別の視認可能領域)に居る体験者も、その体験者が居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。このように、再帰反射光学手段の周囲に居る複数の体験者が、各々の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を同時に視認することができる。請求項3に記載の発明によれば、再帰反射光学手段から屈折して反射される光を利用するので、視認される立体画像の輝度を低下させることなく、しかも、半透鏡を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。
【0014】
上述した本発明に係る立体画像表示システムにおいて、好ましくは、前記再帰反射光学手段の周囲の視認可能領域に居る体験者を検出する体験者検出手段と、前記体験者検出手段によって体験者が検出されている場合に、その検出された体験者の位置に対応した前記画像光照射手段だけを稼動状態にし、それ以外の前記画像光照射手段を非稼動状態にする制御手段とを備える(請求項4記載の発明)。
【0015】
このように構成すれば、体験者検出手段が、再帰反射光学手段の周囲に居る体験者を検出している場合に、その検出された体験者の位置に対応した画像光照射手段だけを稼動状態にし、それ以外の画像光照射手段を非稼動状態にするので、体験者の居ない方向への画像光の無駄な照射を無くし、電力消費の低減及び画像送信手段の負担の軽減を図ることができる。
【0016】
上述した本発明に係る立体画像表示システムにおいて、好ましくは、前記再帰反射光学手段の周囲の視認可能領域を含む所定エリア内にいる体験者を検出する体験者検出手段と、 前記体験者検出手段によって体験者が検出されている場合に、その検出された体験者の位置に対応した前記画像光照射手段を稼動状態にするとともに、前記所定エリアに対応する他の前記画像光照射手段も稼動状態にし、前記エリアを外れた前記画像光照射手段を非稼動状態にする制御手段とを備える(請求項5記載の発明)。
【0017】
このように構成すれば、非稼動状態にある画像光照射手段を稼動状態に移行する際の表示の遅延による不自然さを防止することができる。すなわち、非稼動状態にある画像光照射手段を稼動状態にする場合、直ぐには十分な明度が得られないのが普通である。そのため、体験者が移動した後に、新たな位置に対応した画像光照射手段を非稼動状態から稼動状態に切り換えたのでは、体験者に画像光を送るのが遅れてしまうという不都合を生じる。そこで、体験者検出手段が再帰反射光学手段の周囲の視認可能領域を含む所定エリア内にいる体験者を検出するように構成する。そして、所定エリア内に体験者が居ることが検出されると、そのエリアに対応する全ての画像光照射手段を稼動状態にしておく。このようにすれば、体験者がそのエリア内で移動しても、予めそのエリアに対応した画像光照射手段は稼動状態になっているので、表示の遅延を防止することができる。
【0018】
上述した本発明に係る立体画像表示システムにおいて、好ましくは、前記体験者検出手段は、複数個のセンサで体験者を検出するように構成されており、前記制御手段は、前記複数個のセンサの全てによって体験者が検出されている場合に、前記画像光照射手段を稼動状態にする(請求項6記載の発明)。
【0019】
こうのように構成すれば、体験者の誤検出を防止することができる。即ち、単一のセンサで体験者を検出するように構成すると、そのセンサが視認可能領域から離れた位置に立っている人物を誤検出したり、或いは、外光変化により誤動作すると、不所望に画像光照射手段が稼動状態になる。しかし、複数個のセンサで体験者を検出するように構成し、複数個の全てのセンサが体験者を検出した場合に画像光照射手段を稼動状態にすれば、一つのセンサが誤動作しても、画像光照射手段が不所望に稼動状態になるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、再帰反射光学手段の周囲に居る複数の体験者が同時に、各々の方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明のものに比べて、半透鏡を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。さらに、請求項3に記載の発明によれば、再帰反射光学手段から屈折して反射される光を利用するので、視認される立体画像の輝度を低下させることなく、しかも、半透鏡を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る立体画像表示システムの光学系の概略構成を示した平面図である。
【図2】実施例1で使用される投影ユニットの説明図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図3】(a)は隣り合う投影ユニットの配置関係を示す図、(b)は隣り合う投影ユニット間の角度の説明に供する図である。
【図4】画像送信装置と各投影ユニットとの関係を示したブロック図である。
【図5】画像送信装置から送信される視差画像の説明図である。
【図6】実施例2に係る立体画像表示システムの要部を示した側面図である。
【図7】実施例2に係る立体画像表示システムの要部を示した平面図である。
【図8】実施例3で使用される再帰反射シートからの拡散反射光の説明に供する図である。
【図9】(a)は実施例3に係る立体画像表示システムの要部構成を示した側面図、(b)は平面図である。
【図10】実施例4で使用される再帰反射シートの屈折反射の説明図である。
【図11】実施例4に係る立体画像表示システムの要部構成を示した側面図である。
【図12】実施例4で使用される再帰反射シートの一部拡大断面図である。
【図13】実施例4で使用される再帰反射シートとプロジェクタの配置関係を示す図である。
【図14】実施例4で使用される砲弾型のガラスビーズにおける光の反射の説明に供する図であり、(a)は側面図、(b)は平面である。
【図15】再帰反射スクリーンを利用した従来の表示装置の原理説明に供する側面図である。
【図16】従来の立体画像表示システムの概略構成を示した平面図である。
【実施例1】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る立体画像表示システムの光学系の概略構成を示した平面図である。なお、実施例1に係る立体画像表示システムは、請求項1に記載の発明に対応している。
【0023】
本実施例に係る立体画像表示システムは、両眼視差のある画像(視差画像)を体験者Mの左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようになっている。光学系の中心部に再帰反射シート1が略水平姿勢で置かれており、この再帰反射シート1の周囲に予め設定された視認可能領域に居る複数の体験者M(MA、MB、・・・)が、特殊な眼鏡などを装着することなく同時に立体画像を視認できるようになっている。
【0024】
ここで視認可能領域とは、立体画像を視認することができる、即ち視差画像光を入射することができる体験者Mの眼の位置的範囲をいう。例えば、図1中に符号ALで示した領域は、体験者MAの左眼の視認可能領域である。体験者MAの左眼がこの視認可能領域ALにあるときに体験者MAの左眼は左眼用の視差画像を入射することができる。また、符号ARで示した領域は、体験者MAの右眼の視認可能領域である。体験者MAの右眼がこの視認可能領域ARにあるときに体験者MAの右眼は右眼用の視差画像を入射することができる。従って、隣り合う視認可能領域AL、AR(以下、両者を特に区別しない場合は、符号Aを付す)は、体験者Mの両眼の間隔と同じ距離になるように設定されている。このような視認可能領域Aが再帰反射シート1の周囲に予め多数設定されているのである。
【0025】
再帰反射シート1は、平台などに置かれることにより略水平姿勢になった光入射面1aを有し、この光入射面に入射した光を入射方向に反射させる光学シートである。このような再帰反射シート1は、微小な球形のガラスビーズをシートの全面に接着剤で被着することにより形成することができる。この再帰反射シート1は、本発明(請求項1に記載の発明)における再帰反射光学手段に相当する。
【0026】
再帰反射シート1の周囲には、この再帰反射シート1の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者Mが再帰反射シート1を見たときに、その視線を横切るように複数の半透鏡(ハーフミラー)2が配設されている。半透鏡2は再帰反射シート1の周囲に連ねられて、全体としてはリング状になっている。
【0027】
リング状に配設された各半透鏡2に向けて、体験者Mが居る側(即ち、体験者Mが目視する側)とは反対側から画像光を照射する複数のプロジェクタ3が、再帰反射シート1の周囲にリング状に配設されている。半透鏡2は、プロジェクタ3から照射された画像光を再帰反射シート1に向けて反射する。プロジェクタ3は、本発明における画像光照射手段に相当する。一つの視認可能領域Aに対応する半透鏡2とプロジェクタ3の組み合わせを投影ユニット4と呼ぶ。このような投影ユニット4が、再帰反射シート1の周囲に設定された視認可能領域に対応して複数個設けられている。また、各投影ユニット4の間隔は、各投影ユニット4に対応する視認可能領域Aが体験者の両眼の間隔になるように設定されている。
【0028】
図2を参照する。図2は投影ユニットの説明図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。1つの投影ユニット4を構成している上述したプロジェクタ3と半透鏡2とは、半透鏡2で反射された画像光が体験者Mの視野に対して光学的に共役になるように、両者の位置関係が設定されている。つまり、半透鏡2に対して、体験者Mの眼Eとプロジェクタ3とは共役な位置関係にある。したがって、プロジェクタ3から照射された画像光は、半透鏡2で反射されて再帰反射シート1に入射する。そして、再帰反射シート1に入射した画像光は、その入射方向に反射され、半透鏡2を透過して体験者Mの眼(右眼又は左眼)Eに入射する。
【0029】
図3を参照して、隣り合う投影ユニット4の配置関係について説明する。同図(a)は隣り合う投影ユニットの配置を示す図、同図(b)は隣り合う投影ユニット間の角度の説明に供する図である。図3(a)に示すように、隣り合う投影ユニット4L及び4Rは、視認可能領域AL及びARが体験者Mの両眼EL及びERの間隔DEYEとなるように、再帰反射シート1の周囲に配置される。従って、体験者Mの左眼ELに投影ユニット4Lのプロジェクタ3から照射された画像光が入射している場合に、体験者Mの右眼には投影ユニット4Rのプロジェクタ3から照射された画像光が入射することになる。後述するように、各投影ユニット4L、4Rのプロジェクタ3には、それぞれの投影ユニット4L、4Rの方向から表示対象であるオブジェクトを撮影して得られた視差画像が与えられているので、体験者Mはその方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。
【0030】
ここで体験者Mが右に移動(図3(a)において、再帰反射シート1の周囲を反時計回りに移動)して、投影ユニット4Rの視認可能領域ARに体験者Mの左眼が位置した場合、そのときの体験者Mの右眼には、投影ユニット4Rの右側に隣接する投影ユニット4´からの画像光が入射する。投影ユニット4´のプロジェクタ3にも、その方向からオブジェクトを撮影して得られた視差画像が与えられているので、右に移動した体験者は、その方向から見たオブジェクトの別異の立体画像を視認することができる。
【0031】
図3(b)を参照する。上述のような立体画像を視認するためには、左右の視差画像を投影する2つの投影ユニット4L、4Rと再帰反射シート1の中心Sとがなす角度θが、適切な値に設定されることが好ましい。ここで体験者Mの両眼の中心Eから再帰反射シート1の中心Sまでの距離をD、両眼の間の距離をDEYEとすると、前記角度θは、次式で求まる角度に設定される。例えば、両眼の距離を63mm、両眼の中心から再帰反射シート1の中心Sまでの距離を400mmとすると、隣り合う投影ユニット4L、4Rの配置角度θは約9度になる。
【0032】
【数1】


【0033】
次に各投影ユニット4のプロジェクタ3に画像を送信する画像送信装置について説明する。図4は、画像送信装置5と各投影ユニット4(4、4、4、・・・、4)との関係を示したブロック図である。図5(a)〜(c)に示すように、画像送信装置5は、各投影ユニット4(4、4、4、・・・、4)の配置位置に対応する方向から撮影して得られた全周囲からの視差画像P、P、P、・・・を、各投影ユニット4の配置位置に応じて、各投影ユニット4のプロジェクタ3に与える。なお、図5中の「×」印は、撮影時の焦点にあたる部分である。隣り合う投影ユニット4の配置角度が9度である場合に、視差画像P、P、P、・・・もまた、オブジェクトの全周囲から9度間隔で撮影して得られる。このような視差画像P、P、P、・・・が、各投影ユニット4のプロジェクタ3に与えられることにより、複数の体験者Mが、再帰反射シート1の全周囲の各視認可能領域において、各体験者Mが居る位置に応じたオブジェクトの立体画像を同時に視認することができる。
【実施例2】
【0034】
図6及び図7を参照して、実施例2に係る立体画像表示システムについて説明する。
図6は実施例2に係る立体画像表示システムの要部を示した側面図、図7は平面図である。
【0035】
この立体画像表示システムの特徴は、実施例1で説明した立体画像表示システムに、再帰反射シート1の周囲の視認可能領域に居る体験者Mを検出するための体験者検出センサSを付加した点にある。体験者検出センサSは、投影ユニット4と同様の間隔で再帰反射シート1の周囲に複数個設けられている。各体験者検出センサSは、再帰反射シート1の側から体験者Mが立つであろう方向に向けられている。体験者検出センサSは、赤外線センサ、或いはCCDカメラなどで構成することができる。体験者検出センサSは、本発明における体験者検出手段に相当する。
【0036】
各体験者検出センサSの検出信号は制御部10に与えられる。制御部10は、体験者検出センサSによって体験者Mが検出されている場合に、その検出された体験者Mの位置に対応した投影ユニット4のプロジェクタ3にだけ給電して稼動状態にし、それ以外の投影ユニット4のプロジェクタ3への給電を停止して非稼動状態にする。また、制御部10は、画像送信装置5も制御し、検出された体験者Mの位置に対応した投影ユニット4のプロジェクタ3にだけ画像を送るようにさせる。この実施例では、体験者の両眼に対応して2つの視認可能領域に向けられた少なくとも2つの体験者検出センサS(図7に示した例では、センサS及びS)が体験者Mを検出するので、前記2つの視認可能領域に対応した2つの投影ユニット4の各プロジェクタ3(図7に示した例では、プロジェクタ3及び3)が稼動状態になる。なお、制御部10は、本発明における制御手段に相当する。
【0037】
このように構成すれば、体験者Mが居ない方向の投影ユニット4への給電が停止されるので、無駄な電力消費を抑えることができるとともに、画像送信装置5の画像送信の負担を軽減させることができる。
【0038】
<実施例2の変形例1>
前述の省電力化処理により非稼動状態(消灯状態)にされたプロジェクタ3は、その後に再点灯しても、すぐには十分な輝度が得られないことがある。また、画像送信装置5側で再度立体画像を生成することも考えると、非稼動状態になった投影ユニット4に画像を再表示するにはある程度の時間が必要である。これらの要因が立体画像表示を行う上で不都合となる可能性がある。
【0039】
例えば、図7に示したシステムにおいて、体験者検出センサS及びSのみが体験者Mを検出している状態であり、それに対応するプロジェクタ3及び3のみが稼動状態で画像を照射していたとする。次の瞬間に体験者Mが左に移動して体験者検出センサS及びSの範囲に移動した場合、上記の要因により、体験者検出センサSに対応するプロジェクタ3からの画像の照射が遅延し、体験者Mの左眼に画像が投射されず、立体画像が視認できない現象が生じる。
【0040】
そこで、体験者検出センサSの検出範囲に左右の幅を持たせ、各センサSに対応する視認可能領域を含む所定エリア内に居る体験者を検出するようにする。例えば、図7に示した体験者検出センサSは、図7に破線で示す検出エリアをもち、その検出エリア内に体験者Mが入った場合に体験者Mを検出するように構成する。そうすると、図7に示した位置に体験者Mが位置した場合、体験者検出センサSからSが反応することになり、それらに対応するプロジェクタ3から3が稼動状態になって画像を照射する。体験者Mは、プロジェクタ3及び3以外の画像を視認できるわけではないが、隣接する投影ユニット4のプロジェクタ3を画像照射状態にすることで、上述した表示の遅延による不都合を回避することができる。
【0041】
<実施例2の変形例2>
体験者検出センサSの検出エリアを重複させることで、体験者検出センサSの誤検出を防止することができる。立体画像を視認することができるエリアは限られており、体験者Mが立体画像を視認できる位置に接近した場合には複数の体験者検出センサSが反応することになる。
【0042】
これを利用して、隣接する体験者検出センサS同士の判定を確認することで、視認可能領域から離れた位置に立っている人物や外光変化によって、仮に1つの体験者検出センサが反応した場合にも、隣接する体験者検出センサSが反応していない場合は、前者の体験者検出センサSの反応は誤検出であると判定する。例えば、図7に示した例において、体験者検出センサSのみが反応したとする。その体験者検出センサSに対応する視認可能領域に人が居た場合、検知範囲から考えると複数の体験者検出センサS(例えば、センサS〜S)が反応するはずである。したがって、体験者検出センサSDのみが反応した場合には誤検出と判定して、システムの誤動作を回避することができる。
【実施例3】
【0043】
実施例3に係る立体画像表示システムについて説明する。
実施例3に係る立体画像表示システムは、再帰反射シート1から入射方向に拡散して戻ってくる拡散反射光を利用して立体画像を視認させるものである。実施例3に係る立体画像表示システムは、請求項2に係る発明に対応する。
【0044】
図8を参照する。図8は、再帰反射シートの拡散反射光の説明に供する図である。再帰反射シート1に入射した光は、その全てが入射方向に反射する(再帰反射する)わけではなく、再帰反射シート1の精度に起因して、入射した光の一部は入射方向を中心として拡散して反射する。
【0045】
図9を参照して本実施例に係る立体画像表示システムを説明する。図9(a)は実施例3に係る立体画像表示システムの要部構成を示した側面図、同図(b)は平面図である。本実施例に係る立体画像表示システムのプロジェクタ3は、再帰反射シート1の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者Mが再帰反射シート1を見たときの視野方向から、再帰光学シート1に向けて画像光を照射するように構成されている。プロジェクタ3が、再帰反射シート1の周囲の複数個設けられている点、各プロジェクタ3の間隔が、各プロジェクタ3に対応する視認可能領域が体験者Mの両眼の間隔となるように設定されている点、画像送信装置5が、表示対象であるオブジェクトを各プロジェクタ3の配置位置に対応する方向から撮影して得られた全周囲方向からの視差画像を、各プロジェクタ3の配置位置に応じて、各プロジェクタ3に与える点は、上述した実施例1と同様である。
【0046】
体験者Mの居る位置、即ち体験者Mの左右の眼が視認可能領域に位置しているとき、例えば右眼の位置に対応した投影ユニット4のプロジェクタ3から照射された画像光は再帰反射シート1の光入射面1aに入射する。再帰反射シート1に入射した画像光は入射方向を反射されてプロジェクタ3に戻るので、そのプロジェクタ3に遮られる。即ち、再帰反射シート1で再帰反射された光は、体験者Mに視認されない。しかし、再起反射シート1で拡散反射されて入射方向に戻ってくる拡散反射光は体験者Mの眼(ここでは右眼)に入射する。同様に、左眼の位置に対応した投影ユニット4のプロジェクタ3から照射された画像光は再帰反射シート1で反射され、その反射光のうちの拡散反射光が体験者Mの左眼に入射する。前記2つのプロジェクタ3には、画像送信装置5から2つの投影ユニット4の配置位置に対応する方向から撮影されたオブジェクトの視差画像が送信されているので、体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。同様に、再帰反射シート1の周囲の別の個所(別の視認可能領域)に居る体験者も、その体験者が居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。
【0047】
本実施例に係る立体画像表示システムによれば、再帰反射シート1からの拡散反射光を利用するので実施例1のものに比べて、半透鏡を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。
【実施例4】
【0048】
実施例4に係る立体画像表示システムについて説明する。
実施例4に係る立体画像表示システムは、入射した光を上方向又は下方向に屈折して再帰反射させる特殊な再帰反射シート1´を用いた点に特徴がある。実施例4に係る立体画像表示システムは、請求項3に係る発明に対応する。
【0049】
図10を参照して、本実施例で使用される再帰反射シート1´について説明する。図10は、実施例4で使用される再帰反射シート1´の屈折反射の説明図である。この再帰反射シート1´は、略水平に配置された光入射面1a´を有し、この光入射面1a´に入射した光L1を、平面視では入射方向と同じ方向であるが、側面視では図10に示すように上方向に角度θだけ屈折した光L2を反射する。
【0050】
図11を参照する。図11は実施例4に係る立体画像表示システムの要部構成を示した側面図である。上記のような特性を有する再帰反射シート1´に向けてプロジェクタ3から画像光を照射する。プロジェクタ3は、平面視では、再帰反射シート1´の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者Mが再帰反射シート1´を見たときの視野方向と同じ方向であるが、側面視では、再帰反射シート1´からの反射光が通過する領域から下側又は上側(本実施例では下側)に外れた位置から、再帰反射シート1´に向けて画像光を照射するようになっている。プロジェクタ3が、再帰反射シート1´の周囲の複数個設けられている点、各プロジェクタ3の間隔が、各プロジェクタ3に対応する視認可能領域が体験者Mの両眼の間隔となるように設定されている点、画像送信装置5が、表示対象であるオブジェクトを各プロジェクタ3の配置位置に対応する方向から撮影して得られた全周囲方向からの視差画像を、各プロジェクタ3の配置位置に応じて、各プロジェクタ3に与える点は、上述した実施例1と同様である。
【0051】
このように構成すれば、体験者Mの居る位置に対応したプロジェクタ3から照射された画像光は、再帰反射シート1´で少し上方に屈折されて平面視では入射方向に戻ってくる。
したがって、反射光L2は、プロジェクタ3の上方向を通過して戻るので、プロジェクタ3に遮られることはない。このようにして再帰反射シート1´で屈折して反射された反射光L2が体験者の眼に入射する。隣り合う2つの投影ユニット4の各プロジェクタ3から照射された視差画像光が体験者Mの左右の眼に分離して入射することにより、体験者は、体験者の居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。同様に、再帰反射シート1´の周囲の別の個所(別の視認可能領域)に居る体験者も、その体験者が居る方向から見たオブジェクトの立体画像を視認することができる。
【0052】
本実施例によれば、再帰反射シート1´から屈折して反射される光を利用するので、視認される立体画像の輝度を低下させることなく、しかも、半透鏡2を使用しないのでシステムの構成を簡素化することができる。また、プロジェクタ3の位置を体験者の眼の位置に対して低く配置できるので、プロジェクタ3によって体験者の視界を遮られることがない。
【0053】
次に図12〜図14を参照して、上述した再帰反射シート1´の構成例を説明する。
図12は、実施例4で使用される再帰反射シート1´の一部拡大断面図、図13は再帰反射シート1´とプロジェクタ3の配置関係を示す図、図14は砲弾型のガラスビーズにおける光の反射の説明に供する図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【0054】
実施例1で説明した再帰反射シート1は球形のガラスビーズを使用したが、本実施例の再帰反射シート1´は球形のガラスビーズに代えて、砲弾型のガラスビーズ11を使用する。焦点距離fがガラスビーズ11のドーム部の半径rと同じ長さになるように屈折率が設定されることは、実施例1で説明した再帰反射シート1の場合と同様である。多数の砲弾型のガラスビーズ11がシート状の全反射材12の全面に配置されている。このような砲弾型のガラスビーズ11を使用すると、図14に示すように、水平面に対して45度よりも浅い角度で入射した光LAは、入射角度よりも大きい反射角度をもつ反射光LAとなって反射される。また、水平面に対して45度よりも深い角度で入射した光LBは、入射角度よりも浅い反射角度をもつ反射光LBとなって反射される。さらに、水平面に対して45度の角度で入射した光LCは、入射角度と同じ反射角度をもつ反射光LCとなって反射される。
【0055】
本実施例では、再帰反射シート1´へのプロジェクタ3からの画像光が全て45度以内で入射するように、図13に示すように、プロジェクタ3から再帰反射シート1´までの距離nが、プロジェクタ3の高さhよりも長い距離になるように、再帰反射シート1´とプロジェクタ3との位置関係が設定されている。
【0056】
本発明は上記実施例に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0057】
(1)実施例2で説明したような体験者検出センサSや制御部10を、実施例3及び実施例4に係る立体画像表示システムに適用してもよい。
【0058】
(2)上述した各実施例では、視認可能領域Aを再帰「反射シート1の全周囲に設定した。しかし、視認可能領域Aは、必ずしも再帰反射シート1の全周囲に設定する必要はなく、例えば、再帰反射シート1の前面180度の範囲内に設定するようにしてもよい。このように視認可能領域Aを再帰反射シート1の周囲の限られた範囲内に設定した場合には、それに応じて、例えば実施例1では、半透鏡2とプロジェクタ3とを備える投影ユニット4の設置個数は少なくなる。同様に、オブジェクトの視差画像も投影ユニット4の配置位置も応じた分を用意すればよい。その他の実施例についても同様である。
【0059】
(3)上述した各実施例では、表示対象であるオブジェクトの周囲方向からの視差画像を、オブジェクトをその周囲から実際に撮影をして得た。しかし、オブジェクトの周囲方向からの視差画像は、三次元CAD(Computer aided design)などで作成されたコンピュータグラフィクスであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1、1´ … 再帰反射シート
1a … 光入射面
2 … 半透鏡
3 … プロジェクタ
4 … 投影ユニット
5 … 画像送信装置
10 … 制御部
M … 体験者
A … 視認可能領域
S … 体験者検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、
略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を入射方向に反射させる再帰反射光学手段と、
前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野を横切るように配設された半透鏡と、
前記半透鏡に向けて、体験者が居る側とは反対側から画像光を照射する画像光照射手段と、
前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、
前記半透鏡は、前記画像光照射手段から照射された画像光を前記再帰反射光学手段に向けて反射するとともに、
前記半透鏡で反射された画像光が体験者の視野に対して光学的に共役になるように、前記画像光照射手段と前記半透鏡との位置関係が設定されており、
前記半透鏡と前記画像光照射手段と含む投影ユニットが、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各投影ユニットの間隔は、前記各投影ユニットに対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、
前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各投影ユニットの配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各投影ユニットの配置位置に応じて、前記各投影ユニットの前記画像光照射手段に与える
ことを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項2】
両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、
略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を入射方向に反射させる再帰反射光学手段と、
前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野方向から、前記再帰光学手段に向けて画像光を照射する画像光照射手段と、
前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、
前記画像光照射手段は、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各画像光照射手段の間隔は、前記各画像光照射手段に対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、
前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各画像光照射手段の配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各画像光照射手段の配置位置に応じて、前記各画像光照射手段に与える
ことを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項3】
両眼視差のある画像を体験者の左右の眼に分離して入射させて立体画像を視認させるようにした立体画像表示システムであって、
略水平に配置された光入射面を有し、前記光入射面に入射した光を、平面視では入射方向と同じ方向であるが、側面視では上方向又は下方向に外れた方向に光を屈折して反射させる再帰反射光学手段と、
平面視では、前記再帰反射光学手段の周囲に予め設定された視認可能領域に居る体験者が前記再帰反射光学手段を見たときの視野方向と同じ方向であるが、側面視では、前記再帰反射光学手段からの反射光が通過する領域から下側又は上側に外れた位置から、前記再帰反射光学手段に向けて画像光を照射する画像光照射手段と、
前記画像光照射手段に画像を送信する画像送信手段とを備え、
前記画像光照射手段は、前記再帰反射光学手段の周囲に複数個配置されているとともに、前記各画像光照射手段の間隔は、前記各画像光照射手段に対応する前記視認可能領域が体験者の両眼の間隔となるように設定されており、
前記画像送信手段は、表示対象であるオブジェクトを前記各画像光照射手段の配置位置に対応する方向から見たときの視差画像を、前記各画像光照射手段の配置位置に応じて、前記各画像光照射手段に与える
ことを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の立体画像表示システムにおいて、前記システムは更に、
前記再帰反射光学手段の周囲の視認可能領域に居る体験者を検出する体験者検出手段と、
前記体験者検出手段によって体験者が検出されている場合に、その検出された体験者の位置に対応した前記画像光照射手段だけを稼動状態にし、それ以外の前記画像光照射手段を非稼動状態にする制御手段と
を備えることを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の立体画像表示システムにおいて、前記システムは更に、
前記再帰反射光学手段の周囲の視認可能領域を含む所定エリア内にいる体験者を検出する体験者検出手段と、
前記体験者検出手段によって体験者が検出されている場合に、その検出された体験者の位置に対応した前記画像光照射手段を稼動状態にするとともに、前記所定エリアに対応する他の前記画像光照射手段も稼動状態にし、前記エリアを外れた前記画像光照射手段を非稼動状態にする制御手段と
を備えたことを特徴とする立体画像表示システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の立体画像表示システムにおいて、
前記体験者検出手段は、複数個のセンサで体験者を検出するように構成されており、
前記制御手段は、前記複数個のセンサの全てによって体験者が検出されている場合に、前記画像光照射手段を稼動状態にする
ことを特徴とする立体画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−2894(P2010−2894A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121036(P2009−121036)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】