立体画像表示装置
【課題】視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うディスプレイを、厚みを増大させることなく少ない部材で実現する立体画像表示装置を提供すること。
【解決手段】画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、前記電極の一部を有する第一電極基板と、前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、を有する立体画像表示装置。
【解決手段】画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、前記電極の一部を有する第一電極基板と、前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、を有する立体画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡無し(裸眼)の立体ディスプレイの開発が進んでいる。これらの多くは通常の2次元の平面ディスプレイを用いる。ディスプレイの前面、あるいは背面に何らかの光線制御素子を置くことにより、両眼視差を利用し、観察者から見た時、あたかもディスプレイから前後数cmの距離の物体から光線が出ているようにディスプレイからの光線の角度を制御することにより、立体映像を表示することができる。これは、ディスプレイの高精細化により、ディスプレイの光線を数種類の角度(視差と呼ぶ)に振り分けても、ある程度高精細の画像を得ることができるようになったためである。
【0003】
ところで、表示するコンテンツによっては、3D画像よりも2D画像により表示を行うことが望ましい場合がある。そこで、1つのディスプレイにより、2D画像の表示と3D画像の表示とを切り替える技術がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、GRIN(gradient index lens)レンズにより、偏光方向を回転させて2D/3D切替を行い、1つのディスプレイで2D画像と3D画像とを表示する立体画像表示装置の発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、異方性レンズと偏光方向を制御する平面表示装置とを用いる2D/3D切り替え装置の発明が開示されている。特許文献2に開示の光切り替え装置では、複屈折を持つ物質をレンズ形状の中に入れ、対向する位置に等方性物質を入れることにより、屈折率差のある方向の光に関してはレンズにより集光して3D画像を表示させ、屈折率差のない方向の光に関しては2D画像を表示させる。
【0006】
ところで、裸眼3Dディスプレイにおいては、視差数が少ない方が高解像度になるが、正常に3D画像を見ることのできる視域角が狭くなる。視差数が多くなると、正常に3D画像を見ることのできる視域角を広くすることができ、より多くの方向からの立体画像を見ることができるというメリットがある反面、視差数割り当てが多くなるため解像度の劣化が1/(視差数)と劣化する。一方で、眼鏡式立体ディスプレイの普及により、2視差のみで3D表示を行う方式のコンテンツが増大しつつある。
【0007】
そこで、1つのディスプレイで、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うことにより、コンテンツ毎に好ましい表示を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3940725号公報
【特許文献2】特表2004−538529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の発明では、2D/3D切替機能付き裸眼立体ディスプレイにおいて、部材の追加を極力少なくしつつ、かつ、多視差と2視差のコンテンツをほとんど解像度劣化なく表示することについては、考慮されていない。
【0010】
ここで、2視差と多視差(以下、「N視差」という。)の3Dディスプレイを同一パネルで実現する方法を考える。2視差のレンズとN視差のレンズは、レンズピッチ方向の背面に存在するLCD画素の個数が、それぞれ、2個及びN個であり、レンズピッチは多視差レンズの方がN/2倍広くなる。
【0011】
これを一のレンズで実現すると、要素画像を表示する背面LCDまでのギャップは等しいため、要素画像ひとつをひとつの方向に射出する裸眼立体ディスプレイの原理より、2視差と多視差のレンズの焦点距離は同一にしなければならない。そのため、2視差レンズの視域角よりも、多視差レンズの視域角が約N/2倍大きくなり、2種類のレンズの両方とも、それぞれの任意の視域角を実現できない。また、一のレンズで2視差のレンズとN視差のレンズを理想的に実現するためには、レンズ自体のレンズピッチをアクティブに変える必要がある。
【0012】
また、レンズを2種類積層して、2視差のレンズとN視差のレンズとを用いると、両方のレンズを積層方向の任意の位置におくことにより、所望の視域角を実現することができる。しかし、2視差のレンズとN視差のレンズのそれぞれを独立に動作させるための機構が必要となる。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みて、これらの問題を解消するために発明されたものであり、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うディスプレイを、厚みを増大させることなく少ない部材で実現する立体画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の立体画像表示装置は、画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、前記電極の一部を有する第一電極基板と、前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体画像表示装置によれば、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うディスプレイを、厚みを増大させることなく少ない部材で実現する立体画像表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】II方式の表示原理を示す図。
【図2】2D/3D切替機能付き立体画像表示装置の構成の例を示す図。
【図3】平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図(その1)。
【図4】平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図(その2)。
【図5】GRINレンズを多層化した場合の例を示す図。
【図6】裸眼立体ディスプレイにおける視域角について説明する図。
【図7】液晶の厚みtと視域角2θとの関係を示す図。
【図8】2視差レンズを実現している例を説明する図。
【図9】ダイレクタの傾きと屈折率とを示す図。
【図10】N視差レンズを実現する例を説明する図。
【図11】上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図(その1)。
【図12】上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図(その2)。
【図13】ダミー電極を設ける例を示す図。
【図14】2Dモードの例を示す図。
【図15】上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図。
【図16】2視差モードにおいて、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図。
【図17】N視差モードにおいて、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図。
【図18】2視差モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図19】N視差モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図20】高精細の2D表示モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図21】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置における2視差モードの例を示す図。
【図22】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置におけるN視差モードの例を示す図。
【図23】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置における高精細2Dモードの例を示す図。
【図24】縦視差の有無を切り替える際に、上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図。
【図25】補助電極を有する下部電極の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
〔本実施の形態〕
多数の視差画像を表示するインテグラルフォトグラフィー法(以下、IP法)あるいは光線再生法と呼ばれる、立体像を何らかの方法で記録しこれを立体像として再生する方法が知られている。左右の眼から物体を見たときに、近い距離にあるA点をみた時の左右の眼と成す角度をα、遠い距離にあるB点をみた時の左右の眼となす角度をβとすると、αとβはその物体と観察者の位置関係に応じて異なる。この(α―β)を両眼視差と呼び、人はこの両眼視差に敏感で立体視をすることができる。
【0019】
IP法をディスプレイに適用した3D表示方法をII(インテグラルイメージング)方式と呼ぶ。II方式において、ひとつのレンズから射出される光線は要素画像群の数に相当する。要素画像群の数を視差数と呼び、それぞれのレンズにおいて、視差光線は略平行に射出される。
【0020】
図1は、II方式の表示原理を示す図である。観測者の位置、あるいは、観測者の見る角度によって、1視差の画像であるγ、2視差の画像であるβ、3視差の画像であるαという異なる画像を見ることになる。そのため、観測者は右目と左目に入る視差により、立体を知覚する。レンチキュラーレンズを光線制御素子として用いた場合、スリットに比べて、光の利用効率が高いため輝度を高くできる。また、レンズアレイと画素間ギャップはレンズの略焦点距離ほど離した方がよく、そうするとひとつの画素をひとつの方向に射出することができ、見る角度によって異なる視差画像を見ることができる。
【0021】
複屈折性をもつ物質として最も良く知られているものが方解石である。また、複屈折の光学的な応用として、位相差フィルムに使用される延伸フィルムがある。また、液晶も複屈折性をもつ。
【0022】
液晶は分子が細長い形をしており、その分子の長手方向のダイレクタと呼ばれる分子の方向に屈折率の異方性が生じる。例えば、ネマティック液晶の分子の多くは細長い分子であり、その長軸方向をそろえ、配向しているが、分子の位置関係はランダムである。分子の配向方向がそろっているといっても、絶対零度ではないので完全に平行ではなく、ある程度ゆらぎがあるが、局所領域をみればほぼ一方向を向いているといえる。
【0023】
そこで、巨視的には十分小さいが、液晶分子の大きさに比べれば十分に大きな領域を考えた時、その中での平均的な分子の配向方向は単位ベクトルnを用いて表される。その配向方向を表すベクトルをダイレクタまたは配向ベクトルという。ダイレクタが基板にほぼ平行となる配向をホモジニアス配向という。液晶は、ダイレクタに平行な方向と垂直な方向での光学的な異方性を有する。結晶などの他の異方性媒質に比べて分子の配列の自由度が高いため、複屈折性の目安である長軸と短軸の屈折率の差が大きい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る2D/3D切替機能付き立体画像表示装置100の構成の例を示す図である。図2の立体画像表示装置100は、FPD(Flat Panel Display)表示面1、偏光切替セル3、複屈折レンズ8、及び、電圧駆動装置25を有する。複屈折レンズ8と偏光切替セル3との組み合わせにより、表示の2D/3D切替が可能となる。
【0025】
FPD表示面1は、例えばFPDにLCDを用いた場合、画素とその上部に輝度を調整するための偏光面を有する。複屈折レンズ8は、屈折率nのレンズ型枠と対向基板とを有し、レンズ型枠と対向基板との間のレンズ部に一軸性の複屈折性物質が充填されたレンズである。
【0026】
レンズの稜線と平行な方向は屈折率neが発現し、ne>nである。レンズの稜線と垂直な方向は屈折率noが発現し、noとnは略同一の値である。レンズ部において、水平視差をN、サブピクセルピッチをspとすると、N×spのレンズ型枠のピッチで形成されている。
【0027】
偏光切替セル3は、FPD表示面1の前面に設けられ、偏光面を可変にすることができる。偏光切替セル3は、上部透明基板27及び下部透明基板26を有する。上部透明基板27は、複屈折レンズ8側に設けられ、下部透明基板26は、FPD表示面1側に設けられる。
【0028】
上部透明基板27及び下部透明基板26は、それぞれ、透明基板上に複数の透明電極を有する。透明電極間の距離は、上部透明基板27と下部透明基板26との間の距離dより小さい。上部透明基板27が有する電極(以下、「上部電極」ともいう。)の長手方向は複屈折レンズ8のレンズの稜線方向と直交する。下部透明基板26が有する電極(以下、「下部電極」ともいう。)は、偏光切替セル3の上部長手方向と直行する方向に設置される。
【0029】
上部電極、下部電極とも配向方向は複屈折レンズ8のレンズの稜線方向と直交する。下部電極のピッチは、サブピクセルピッチの整数倍である。
【0030】
上部電極は、27C及び27Dの2系統の電極を有する。27C及び27Dは、上部透明基板27上に交互に配置される。下部電極は、26A及び26Bの2系統の電極を有する。26A及び26Bは、下部透明基板26上に交互に配置される。
【0031】
電圧駆動装置25は、AないしDの4つの端子を有し、それぞれ、26A、26B、27C、及び、27Dの4系統の電位を制御する。
【0032】
複数種類のレンズをひとつのレンズで実現する方法の例について、説明する。この例では、液晶のダイレクタの軸方向による複屈折性を利用し、偏光方向をダイレクタに平行に合わせ、位置による屈折率分布を生じさせる。
【0033】
平行平板にくし型電極を敷設することにより、水平方向と垂直方向の電界を生じさせる。次式(1)により、z方向のリタデーションRe(x)をレンズピッチ方向xで考える。
【数1】
【0034】
図3は、偏光切替セル3の断面を示す図であって、平行平板GRINレンズのダイレクタ分布を示す図である。図3では、3つ図示する下部電極の両端を電源、中央部をグラウンドとする。また、図視する上部電極は、グラウンドとする。
【0035】
図3において、リタデーションをx方向で分布をとると、x=0付近では長軸方向の屈折率neでそろうため、(ne−no)×dをとる。x=lp/2付近では短軸方向の屈折率noでそろうため、0となる。
【0036】
GRINレンズの理想形は次式(2)に示す屈折率分布n(r)を持つことである。また、式(2)の屈折率分布を持つレンズの焦点距離はfは、次式(3)で表される。
【数2】
【0037】
図4は、図3と厚みが異なる平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図である。ダイレクタ分布に影響を及ぼす要因は主に、電界分布である。電界分布が式(2)を満たすようなダイレクタ分布になるような電界であるとよい。より詳細には、液晶にかける電圧、誘電率の異方性、電極構造(レンズピッチ/レンズ厚み)等が要因としてあげられる。
【0038】
例えば、K15という液晶を用いた場合、(レンズピッチ/レンズ厚み)=3の時に、開口数が最も最大化される。この構造条件では、シミュレーションにより(レンズピッチ/レンズ厚み)が2から3の時に、レンズ性能が向上する傾向にある。最適値は液晶の種類、電極幅等によっても変化するため、実験、あるいはシミュレーションにより決定するとよい。
【0039】
図3は、レンズピッチ520um,液晶の厚み100umの時で、(レンズピッチ/レンズ厚み)=5.20の液晶のダイレクタ分布を示した模式図である。レンズ中央部でダイレクタが水平方向を向いている領域が大きいため、レンズの理想形状との差分が大きくなっている。
【0040】
一方、図4は、レンズピッチ520um,液晶の厚み150umの時で、(レンズピッチ/レンズ厚み)=3.46の液晶のダイレクタ分布を示した模式図である。レンズ中央部でダイレクタが水平方向を向いている領域が図3より小さく、レンズの理想形状との差分が小さくなっている。
【0041】
図3の構造と図4の構造とにおいて、液晶セルの水平方向にかける電界は、レンズピッチが同一なため同じである。垂直方向は、厚みが異なるため、電界が異なる。液晶の櫛型電極によるGRINレンズは、電界分布により液晶のダイレクタ分布が決まる。よって、(レンズピッチ/レンズ厚み)が一定値に近い方がレンズとしての性能が向上する。
【0042】
式(2)において、(レンズピッチ/レンズ厚み)=(2×r0/t)が一定とすると、焦点距離fはr0/(ne−no)に比例する。roが2倍になると、焦点距離もfも2倍となる。そのため、要素画像を構成する背面画像とレンズの距離をある位置に固定するとレンズピッチが異なる。よって、その焦点距離を一致させることは困難である。
【0043】
ひとつのGRINレンズで2視差とN視差を兼用すると、どちらかのレンズ性能を犠牲にすることになる。
そこで、GRINレンズの多層化すると良い。
【0044】
図5は、GRINレンズを多層化した場合の例を示す図である。図5では、N(>2)視差のGRINレンズが、観測者側である上側に位置し、2視差のGRINレンズが、観測者と反対側である下側に位置する。さらに、それぞれのレンズが3D画像を構成する要素画像を表示する2次元画像表示装置に光線が集光している様子を示す。
【0045】
ギャップg1はGRINレンズ(2視差)のレンズと要素画素との間の距離、ギャップg2はGRINレンズ(多視差)のレンズと要素画素との間の距離、光線18はレンズ効果によって屈折した光線、光線17は視差光線、幅Wpは背面FPDの1要素画像の幅、液晶の厚み24は、GRINレンズ(多視差)の液晶の厚みである。
【0046】
例えば、GRINレンズにおいて、N視差の裸眼3Dディスプレイを実現するためには、1サブピクセル幅Wpが1要素画像の場合には、レンズピッチがWp×Nになるようにするとよい。
【0047】
図6は、裸眼立体ディスプレイにおける視域角について説明する図である。レンズと要素画素との間のギャップの空気換算長をgとし、3Dが正常に見える視域角を2×θ4とすると、次式(4)が成り立つ。
【0048】
【数3】
そのため、視差数が多くなればなるほど、レンズ端で屈折するパワーを要する。また、図5及び図6を比較してわかるように、GRINレンズ(多視差)の焦点距離がf2、GRINレンズ(2視差)の焦点距離がf1の場合に、g2とf2とがほぼ等しくなる。さらに、g1とf1とがほぼ等しい場合に、要素画像1画素分を所望の方向に、輝度劣化なしに射出することができる。
【0049】
図7は、液晶の厚みtと視域角2θとの関係を示す図である。図7では、横軸が液晶の厚みであり、縦軸が視域角である。図7より、レンズピッチlpが大きくなればなるほど、同じ視域角2θを実現するためには液晶が厚くなる。液晶の厚みが100umより厚くなると、液晶の厚み方向における中央の液晶のダイレクタの向きの制御が困難になっていくため、液晶の厚みは薄い方が望ましい。
【0050】
9視差以上のGRINレンズで、自然で見やすいII方式立体ディスプレイを実現するための、液晶の厚みは、例えば視域角2θ>20度の場合、220um以上である。これは、レンズの性能に影響が生じる場合がある。
【0051】
そこで、本実施の形態では、9視差以上の多視差レンズをレンズ型枠から作成する複屈折レンズ、2視差のレンズをGRINレンズで作成する。
【0052】
図8ないし図10は、一のレンズで、2視差レンズと9視差レンズとを切り替えることを説明する図である。図8は、2視差レンズを実現している例を説明する図である。
【0053】
図8の構成は、FPD表示面1、偏光切替セル3、及び、複屈折レンズ8を有する。FPD表示面1は、要素画像を表示する2次元表示装置の表示面である。偏光切替セル3は、2視差モードと9視差モードとを切り替える。複屈折レンズ8は、レンズ型枠を有し、内部に液晶が充填されている。
【0054】
FPD表示面1に示す矢印4は、FPD表示面1の外側の偏光方向を表す。また、偏光切替セル3に示す矢印5は、下部透明基板26における配向方向(以下、「下側配向方向」という。)を表し、矢印6は、上部透明基板27配向方向(以下、「上側配向方向」とい。)を表す。また、矢印7は、偏光切替セル3から出射した光の偏光方向である。
【0055】
また、複数の楕円10は、偏光切替セル3の内部の液晶における屈折率が最大となる長軸方向を表す。
【0056】
複屈折レンズ8は、レンズ型枠12を有する。レンズ型枠の内部は一軸性複屈折を示す物質2が充填される。また、矢印11は、複屈折レンズ8から出射した光の偏光方向である。
【0057】
偏光方向は、FPD表示面1から射出される時は水平方向である。偏光切替セル3が有するGRINレンズでは液晶の長軸方向に入射するようにすることにより、光線が屈折する。また、複屈折レンズ8の液晶の長軸方向を垂直方向にすることにより、光線が屈折しないようにする。
【0058】
偏光切替セル3が有するGRINレンズの下部電極を、2つの櫛形電極26Aと26Bにし、互いに上と下とから挟み込む構成にするとよい。
【0059】
次に、電圧のかけ方を説明する。櫛型電極26Aと26Bとの間の電位差を、V−Ground1とし、V−Ground1に電圧をかける。さらに、下部電極と上部電極との間の電位差を、V−Ground2とし、V−Gound2に電圧をかける。ここで、Ground1−Ground2の間の電圧は同じ値でも異なる値でもよい。Ground1及びGround2は、液晶が立ち上がりはじめるしきい値電圧Vth以下である必要がある。以上の電圧制御は、図2に示す電圧駆動装置25が有する端子AとB、及び、AとDのそれぞれに対する電位差を制御することにより、実現することができる。
【0060】
なお、上部電極は全面電極、及び、櫛型電極の何れでもよいが、すべての電極に同一の電圧Ground2をかける。図8に示す例により、断面形状で図4に示すダイレクタ分布になり、偏光方向をレンズピッチ方向と水平方向にすることにより、断面形状に屈折率分布が生じる。
【0061】
ここで、電圧の値について、図9を用いて説明する。図9は、ダイレクタの傾きと屈折率とを示す図である。実際に光線が複屈折性物質を通った時の屈折率は、次式(5)で表される。
【数4】
【0062】
式(5)より、ダイレクタの傾きにより、屈折率分布を生じさせることができる。そこで、式(2)の屈折率分布を満たすように電圧を制御する。
【0063】
図10は、N視差レンズを実現する例を示す図である。N視差を発現するためには、ディスプレイを正面から見た場合の偏光方向を、水平方向から垂直方向に90度回転する。偏光切替セル3で、偏光方向を90度回転させることができる。図10において、偏光切替セル3に示す楕円10の向きが、下部透明基板26では水平方向であり、上部透明基板27では垂直方向である。
【0064】
これを実現するために、上側電極間に電圧をかけて垂直方向に電界が生じさせる。この時、下部透明基板26及び上部透明基板27の間にかける電圧(以下、「対向基板間電圧」という。)を、液晶が垂直方向に立ち上がらないように、Vth以下にする。そこで、対向基板間電圧をVth以下、2つの上側電極の間にかける電圧を2×Vthとすることにより、液晶の立ち上がりによる光抜けが生じないようにすることができる。
【0065】
以上の電圧制御は、図2に示す電圧駆動装置25が有する端子AとB、AとC又はD、及び、CとDのそれぞれに対する電位差を制御することにより、実現することができる。
【0066】
図11及び図12は、偏光方向を90度回転させるために、上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図である。図11及び図12は、ディスプレイを正面から見た場合の、偏光切替セル3を垂直方向に切断した時の断面図である。図5は、下部にグラウンド電極がある場合であり、図6は、下部にグラウンド電極がない場合である。この偏光切替モードでは、対向基板間にかける電圧はしきい値電圧以下であるため、配向膜による液晶の配向力の方が高い。そのため、下側電極の有無による液晶のダイレクタ分布は変化しないため、パターンの有無による劣化はないといえる。
【0067】
なお、2つの上部電極間の距離Spは、電極間距離をtとすると、GRINレンズの時の条件よりピッチの狭いSp=tとするとよい。
【0068】
ここで、上部電極を櫛型電極にすることにより、2視差モードの際に、上部電極が存在しない部分が生じる。上部電極のない領域が広いと、電圧Vがかかっている下部電極の直上でも、その領域の液晶が立ち上がらなくなる。
【0069】
図13は、ダミー電極を設ける例を示す図である。2視差モードの際に、ダミー電極28を、2つの上部電極27C及び27Dの間に設け、ダミー電極28にGround2をかける。N視差モードの際には、ダミー電極28には電圧をかけずに、2つの櫛型電極の間の電位差を2×vthとしてもよい。2視差モードの場合は、上側電極がない部分でも、左右対称な電界分布より、電圧Vがかかっている電極の直上は液晶のダイレクタが立ち上がる。
【0070】
また、液晶の厚みは、モーガン条件といわれる偏光方向を90度回転したときの光漏れが最も小さくなる条件にするとよい。すなわち、次式(6)及び式(7)を満たす厚さdを求めるとよい。
【0071】
【数5】
但し、λは、偏光切替セル3に入射する光の波長、
Δnは、偏光切替セル3内の液晶の長軸方向と短軸方向との屈折率の差、である。
【0072】
図14は、2Dモードの例を示す図である。下部電極26A及び26Bの電位差は0であり、上部電極27C及び27Dの電位差も0である。図13に示すように、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極の両方に電圧をかけないことにより、偏光方向が変化せず、また、屈折率分布も生じない。これにより、複屈折レンズ8に、液晶のダイレクタ方向の垂直方向の偏光が入射し、複屈折レンズ8では光線は屈折せず、背面にある高精細2Dの画像をそのまま見ることができる。
【0073】
図15は、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図である。図15において、電圧をかける場合を「ON」、電圧をかけないGroundの場合を「OFF」と表記する。偏光切替セル3の上部電極、下部電極のそれぞれにかける電圧のON,OFFにより、M(<N)視差モード、N視差モード、及び、2D表示モードの3つのモードを一のディスプレイで実現することができる。
【0074】
図16及び図17は、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図である。図16は、2視差モードの例であり、図17は、N視差モードの例である。図16では、2つの上部電極27C及び27Dの電位をGroundとし、下部電極26Aの電位をV、下部電極26Bの電位をGroundとする。これにより、液晶のダイレクタの向きが矢印で示すようになり、GRINレンズを実現することができる。
【0075】
図17では、上部電極27C及び27Dの間の電位差をVとし、下部電極26A及び26Bの間の電位差を、V/2とする。これにより、N視差モードの複屈折レンズを実現することができる。
【0076】
図18ないし図20は、電圧駆動装置25が有する端子毎に印加する電位を説明する図である。図18は、2視差モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図18に示すように、下部電極26Aの電位を、表示画面の1フレームを周期とする、振幅Vの矩形信号とし、他の端子BないしDの電位をGroundとすることにより、左右の視差を有する表示を実現することができる。
【0077】
図19は、N視差モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図19では、端子A及びBにより、下部電極26A及び26Bの電位を、表示画面の1フレームを周期とする、振幅Vth/2の矩形信号とする等電位に制御する。さらに、端子Cにより、上部電極27Cの電位を、振幅Vの矩形信号とし、端子Dにより、上部電極27Dの電位をGroundにする。これらの制御により、N視差の表示を実現することができる。
【0078】
図20は、高精細の2D表示モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図20では、全ての端子の電位をGroundとする。
【0079】
図21ないし図24は、縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置の例を示す図である。図21ないし図23は、それぞれ、2視差モード、N視差モード、及び、2D表示モードの例である。図21ないし図23では、下部透明基板26及び上部透明基板27が有する櫛形電極が、それぞれ、図8、図10、及び図14に示す立体画像表示装置100が有する櫛形電極に対して、90度回転した位置に設けられている。その他の構成は、図8ないし図14で説明した構成と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0080】
図24は、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図である。図24において、電圧をかける場合を「ON」、電圧をかけないGroundの場合を「OFF」と表記する。偏光切替セル3の上部電極、下部電極のそれぞれにかける電圧のON,OFFにより、縦視差のM(<N)視差モード、縦視差のN視差モード、及び、2D表示モードの3つのモードを一のディスプレイで実現することができる。
【0081】
図25は、補助電極を有する下部電極の例を示す図である。図25の下部電極は、図1ないし図24で説明した櫛形電極に加えて、補助電極を有する。図25では、下部電極26A及び26Bの間に、下部電極26Aに近い側から順に、3つの補助電極26cないし26eが設けられている。
【0082】
2視差モードの際には、例えば、下部電極26Aの電位がVであり、下部電極26Bの電位がGroundとなる。さらに、補助電極26cないし26eの電位をVとGroundの間の値とし、下部電極26Aに近いほど、大きい電位を有するように制御する。すなわち、V≧(26cの電位)≧(26dの電位)≧(26eの電位)≧Groundとする。これにより、下部電極26Aと下部電極26Bとの間の電位差をより細かく制御することができ、ダイレクタを好適に制御することができる。
【0083】
なお、下部電極の間毎の補助電極の個数は、一定にするとよい。図25では、間隔毎に、3個の補助電極が設けられている。間隔毎の補助電極の個数をk個とすると、一のGrinレンズに含まれる下部透明基板26の電極は、(2k+3)個となる。
【0084】
なお、上部電極にも、補助電極を設けてもよい。
【0085】
(コンピュータ等による実現)
なお、本発明の実施の形態に係る立体画像表示装置100の電圧駆動装置25は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等で実現されてもよい。また、本発明の実施形態に係る立体画像表示装置100の表示を制御する方法は、例えば、CPUがROMやハードディスク装置等に記憶されたプログラムに従い、RAM等のメインメモリをワークエリアとして使用し、実行される。
【0086】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る立体画像表示装置は、視差が互いに異なる複数のコンテンツを表示する際に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 FPD表示面
3 偏光切替セル
8 複屈折レンズ
12 レンズ型枠
25 電圧駆動装置
26A 下部電極
26B 下部電極
26 下部透明基板
27C 上部電極
27D 上部電極
27 上部透明基板
28 ダミー電極
100 立体画像表示装置
A 端子
B 端子
C 端子
D 端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡無し(裸眼)の立体ディスプレイの開発が進んでいる。これらの多くは通常の2次元の平面ディスプレイを用いる。ディスプレイの前面、あるいは背面に何らかの光線制御素子を置くことにより、両眼視差を利用し、観察者から見た時、あたかもディスプレイから前後数cmの距離の物体から光線が出ているようにディスプレイからの光線の角度を制御することにより、立体映像を表示することができる。これは、ディスプレイの高精細化により、ディスプレイの光線を数種類の角度(視差と呼ぶ)に振り分けても、ある程度高精細の画像を得ることができるようになったためである。
【0003】
ところで、表示するコンテンツによっては、3D画像よりも2D画像により表示を行うことが望ましい場合がある。そこで、1つのディスプレイにより、2D画像の表示と3D画像の表示とを切り替える技術がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、GRIN(gradient index lens)レンズにより、偏光方向を回転させて2D/3D切替を行い、1つのディスプレイで2D画像と3D画像とを表示する立体画像表示装置の発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、異方性レンズと偏光方向を制御する平面表示装置とを用いる2D/3D切り替え装置の発明が開示されている。特許文献2に開示の光切り替え装置では、複屈折を持つ物質をレンズ形状の中に入れ、対向する位置に等方性物質を入れることにより、屈折率差のある方向の光に関してはレンズにより集光して3D画像を表示させ、屈折率差のない方向の光に関しては2D画像を表示させる。
【0006】
ところで、裸眼3Dディスプレイにおいては、視差数が少ない方が高解像度になるが、正常に3D画像を見ることのできる視域角が狭くなる。視差数が多くなると、正常に3D画像を見ることのできる視域角を広くすることができ、より多くの方向からの立体画像を見ることができるというメリットがある反面、視差数割り当てが多くなるため解像度の劣化が1/(視差数)と劣化する。一方で、眼鏡式立体ディスプレイの普及により、2視差のみで3D表示を行う方式のコンテンツが増大しつつある。
【0007】
そこで、1つのディスプレイで、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うことにより、コンテンツ毎に好ましい表示を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3940725号公報
【特許文献2】特表2004−538529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の発明では、2D/3D切替機能付き裸眼立体ディスプレイにおいて、部材の追加を極力少なくしつつ、かつ、多視差と2視差のコンテンツをほとんど解像度劣化なく表示することについては、考慮されていない。
【0010】
ここで、2視差と多視差(以下、「N視差」という。)の3Dディスプレイを同一パネルで実現する方法を考える。2視差のレンズとN視差のレンズは、レンズピッチ方向の背面に存在するLCD画素の個数が、それぞれ、2個及びN個であり、レンズピッチは多視差レンズの方がN/2倍広くなる。
【0011】
これを一のレンズで実現すると、要素画像を表示する背面LCDまでのギャップは等しいため、要素画像ひとつをひとつの方向に射出する裸眼立体ディスプレイの原理より、2視差と多視差のレンズの焦点距離は同一にしなければならない。そのため、2視差レンズの視域角よりも、多視差レンズの視域角が約N/2倍大きくなり、2種類のレンズの両方とも、それぞれの任意の視域角を実現できない。また、一のレンズで2視差のレンズとN視差のレンズを理想的に実現するためには、レンズ自体のレンズピッチをアクティブに変える必要がある。
【0012】
また、レンズを2種類積層して、2視差のレンズとN視差のレンズとを用いると、両方のレンズを積層方向の任意の位置におくことにより、所望の視域角を実現することができる。しかし、2視差のレンズとN視差のレンズのそれぞれを独立に動作させるための機構が必要となる。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みて、これらの問題を解消するために発明されたものであり、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うディスプレイを、厚みを増大させることなく少ない部材で実現する立体画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の立体画像表示装置は、画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、前記電極の一部を有する第一電極基板と、前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体画像表示装置によれば、視差数が異なる2以上の3D画像の表示、及び、2D画像の表示を切り替えて行うディスプレイを、厚みを増大させることなく少ない部材で実現する立体画像表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】II方式の表示原理を示す図。
【図2】2D/3D切替機能付き立体画像表示装置の構成の例を示す図。
【図3】平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図(その1)。
【図4】平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図(その2)。
【図5】GRINレンズを多層化した場合の例を示す図。
【図6】裸眼立体ディスプレイにおける視域角について説明する図。
【図7】液晶の厚みtと視域角2θとの関係を示す図。
【図8】2視差レンズを実現している例を説明する図。
【図9】ダイレクタの傾きと屈折率とを示す図。
【図10】N視差レンズを実現する例を説明する図。
【図11】上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図(その1)。
【図12】上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図(その2)。
【図13】ダミー電極を設ける例を示す図。
【図14】2Dモードの例を示す図。
【図15】上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図。
【図16】2視差モードにおいて、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図。
【図17】N視差モードにおいて、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図。
【図18】2視差モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図19】N視差モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図20】高精細の2D表示モードを実現する電圧制御の例を示す図。
【図21】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置における2視差モードの例を示す図。
【図22】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置におけるN視差モードの例を示す図。
【図23】縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置における高精細2Dモードの例を示す図。
【図24】縦視差の有無を切り替える際に、上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図。
【図25】補助電極を有する下部電極の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
〔本実施の形態〕
多数の視差画像を表示するインテグラルフォトグラフィー法(以下、IP法)あるいは光線再生法と呼ばれる、立体像を何らかの方法で記録しこれを立体像として再生する方法が知られている。左右の眼から物体を見たときに、近い距離にあるA点をみた時の左右の眼と成す角度をα、遠い距離にあるB点をみた時の左右の眼となす角度をβとすると、αとβはその物体と観察者の位置関係に応じて異なる。この(α―β)を両眼視差と呼び、人はこの両眼視差に敏感で立体視をすることができる。
【0019】
IP法をディスプレイに適用した3D表示方法をII(インテグラルイメージング)方式と呼ぶ。II方式において、ひとつのレンズから射出される光線は要素画像群の数に相当する。要素画像群の数を視差数と呼び、それぞれのレンズにおいて、視差光線は略平行に射出される。
【0020】
図1は、II方式の表示原理を示す図である。観測者の位置、あるいは、観測者の見る角度によって、1視差の画像であるγ、2視差の画像であるβ、3視差の画像であるαという異なる画像を見ることになる。そのため、観測者は右目と左目に入る視差により、立体を知覚する。レンチキュラーレンズを光線制御素子として用いた場合、スリットに比べて、光の利用効率が高いため輝度を高くできる。また、レンズアレイと画素間ギャップはレンズの略焦点距離ほど離した方がよく、そうするとひとつの画素をひとつの方向に射出することができ、見る角度によって異なる視差画像を見ることができる。
【0021】
複屈折性をもつ物質として最も良く知られているものが方解石である。また、複屈折の光学的な応用として、位相差フィルムに使用される延伸フィルムがある。また、液晶も複屈折性をもつ。
【0022】
液晶は分子が細長い形をしており、その分子の長手方向のダイレクタと呼ばれる分子の方向に屈折率の異方性が生じる。例えば、ネマティック液晶の分子の多くは細長い分子であり、その長軸方向をそろえ、配向しているが、分子の位置関係はランダムである。分子の配向方向がそろっているといっても、絶対零度ではないので完全に平行ではなく、ある程度ゆらぎがあるが、局所領域をみればほぼ一方向を向いているといえる。
【0023】
そこで、巨視的には十分小さいが、液晶分子の大きさに比べれば十分に大きな領域を考えた時、その中での平均的な分子の配向方向は単位ベクトルnを用いて表される。その配向方向を表すベクトルをダイレクタまたは配向ベクトルという。ダイレクタが基板にほぼ平行となる配向をホモジニアス配向という。液晶は、ダイレクタに平行な方向と垂直な方向での光学的な異方性を有する。結晶などの他の異方性媒質に比べて分子の配列の自由度が高いため、複屈折性の目安である長軸と短軸の屈折率の差が大きい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る2D/3D切替機能付き立体画像表示装置100の構成の例を示す図である。図2の立体画像表示装置100は、FPD(Flat Panel Display)表示面1、偏光切替セル3、複屈折レンズ8、及び、電圧駆動装置25を有する。複屈折レンズ8と偏光切替セル3との組み合わせにより、表示の2D/3D切替が可能となる。
【0025】
FPD表示面1は、例えばFPDにLCDを用いた場合、画素とその上部に輝度を調整するための偏光面を有する。複屈折レンズ8は、屈折率nのレンズ型枠と対向基板とを有し、レンズ型枠と対向基板との間のレンズ部に一軸性の複屈折性物質が充填されたレンズである。
【0026】
レンズの稜線と平行な方向は屈折率neが発現し、ne>nである。レンズの稜線と垂直な方向は屈折率noが発現し、noとnは略同一の値である。レンズ部において、水平視差をN、サブピクセルピッチをspとすると、N×spのレンズ型枠のピッチで形成されている。
【0027】
偏光切替セル3は、FPD表示面1の前面に設けられ、偏光面を可変にすることができる。偏光切替セル3は、上部透明基板27及び下部透明基板26を有する。上部透明基板27は、複屈折レンズ8側に設けられ、下部透明基板26は、FPD表示面1側に設けられる。
【0028】
上部透明基板27及び下部透明基板26は、それぞれ、透明基板上に複数の透明電極を有する。透明電極間の距離は、上部透明基板27と下部透明基板26との間の距離dより小さい。上部透明基板27が有する電極(以下、「上部電極」ともいう。)の長手方向は複屈折レンズ8のレンズの稜線方向と直交する。下部透明基板26が有する電極(以下、「下部電極」ともいう。)は、偏光切替セル3の上部長手方向と直行する方向に設置される。
【0029】
上部電極、下部電極とも配向方向は複屈折レンズ8のレンズの稜線方向と直交する。下部電極のピッチは、サブピクセルピッチの整数倍である。
【0030】
上部電極は、27C及び27Dの2系統の電極を有する。27C及び27Dは、上部透明基板27上に交互に配置される。下部電極は、26A及び26Bの2系統の電極を有する。26A及び26Bは、下部透明基板26上に交互に配置される。
【0031】
電圧駆動装置25は、AないしDの4つの端子を有し、それぞれ、26A、26B、27C、及び、27Dの4系統の電位を制御する。
【0032】
複数種類のレンズをひとつのレンズで実現する方法の例について、説明する。この例では、液晶のダイレクタの軸方向による複屈折性を利用し、偏光方向をダイレクタに平行に合わせ、位置による屈折率分布を生じさせる。
【0033】
平行平板にくし型電極を敷設することにより、水平方向と垂直方向の電界を生じさせる。次式(1)により、z方向のリタデーションRe(x)をレンズピッチ方向xで考える。
【数1】
【0034】
図3は、偏光切替セル3の断面を示す図であって、平行平板GRINレンズのダイレクタ分布を示す図である。図3では、3つ図示する下部電極の両端を電源、中央部をグラウンドとする。また、図視する上部電極は、グラウンドとする。
【0035】
図3において、リタデーションをx方向で分布をとると、x=0付近では長軸方向の屈折率neでそろうため、(ne−no)×dをとる。x=lp/2付近では短軸方向の屈折率noでそろうため、0となる。
【0036】
GRINレンズの理想形は次式(2)に示す屈折率分布n(r)を持つことである。また、式(2)の屈折率分布を持つレンズの焦点距離はfは、次式(3)で表される。
【数2】
【0037】
図4は、図3と厚みが異なる平行平板のGRINレンズのダイレクタ分布を示す図である。ダイレクタ分布に影響を及ぼす要因は主に、電界分布である。電界分布が式(2)を満たすようなダイレクタ分布になるような電界であるとよい。より詳細には、液晶にかける電圧、誘電率の異方性、電極構造(レンズピッチ/レンズ厚み)等が要因としてあげられる。
【0038】
例えば、K15という液晶を用いた場合、(レンズピッチ/レンズ厚み)=3の時に、開口数が最も最大化される。この構造条件では、シミュレーションにより(レンズピッチ/レンズ厚み)が2から3の時に、レンズ性能が向上する傾向にある。最適値は液晶の種類、電極幅等によっても変化するため、実験、あるいはシミュレーションにより決定するとよい。
【0039】
図3は、レンズピッチ520um,液晶の厚み100umの時で、(レンズピッチ/レンズ厚み)=5.20の液晶のダイレクタ分布を示した模式図である。レンズ中央部でダイレクタが水平方向を向いている領域が大きいため、レンズの理想形状との差分が大きくなっている。
【0040】
一方、図4は、レンズピッチ520um,液晶の厚み150umの時で、(レンズピッチ/レンズ厚み)=3.46の液晶のダイレクタ分布を示した模式図である。レンズ中央部でダイレクタが水平方向を向いている領域が図3より小さく、レンズの理想形状との差分が小さくなっている。
【0041】
図3の構造と図4の構造とにおいて、液晶セルの水平方向にかける電界は、レンズピッチが同一なため同じである。垂直方向は、厚みが異なるため、電界が異なる。液晶の櫛型電極によるGRINレンズは、電界分布により液晶のダイレクタ分布が決まる。よって、(レンズピッチ/レンズ厚み)が一定値に近い方がレンズとしての性能が向上する。
【0042】
式(2)において、(レンズピッチ/レンズ厚み)=(2×r0/t)が一定とすると、焦点距離fはr0/(ne−no)に比例する。roが2倍になると、焦点距離もfも2倍となる。そのため、要素画像を構成する背面画像とレンズの距離をある位置に固定するとレンズピッチが異なる。よって、その焦点距離を一致させることは困難である。
【0043】
ひとつのGRINレンズで2視差とN視差を兼用すると、どちらかのレンズ性能を犠牲にすることになる。
そこで、GRINレンズの多層化すると良い。
【0044】
図5は、GRINレンズを多層化した場合の例を示す図である。図5では、N(>2)視差のGRINレンズが、観測者側である上側に位置し、2視差のGRINレンズが、観測者と反対側である下側に位置する。さらに、それぞれのレンズが3D画像を構成する要素画像を表示する2次元画像表示装置に光線が集光している様子を示す。
【0045】
ギャップg1はGRINレンズ(2視差)のレンズと要素画素との間の距離、ギャップg2はGRINレンズ(多視差)のレンズと要素画素との間の距離、光線18はレンズ効果によって屈折した光線、光線17は視差光線、幅Wpは背面FPDの1要素画像の幅、液晶の厚み24は、GRINレンズ(多視差)の液晶の厚みである。
【0046】
例えば、GRINレンズにおいて、N視差の裸眼3Dディスプレイを実現するためには、1サブピクセル幅Wpが1要素画像の場合には、レンズピッチがWp×Nになるようにするとよい。
【0047】
図6は、裸眼立体ディスプレイにおける視域角について説明する図である。レンズと要素画素との間のギャップの空気換算長をgとし、3Dが正常に見える視域角を2×θ4とすると、次式(4)が成り立つ。
【0048】
【数3】
そのため、視差数が多くなればなるほど、レンズ端で屈折するパワーを要する。また、図5及び図6を比較してわかるように、GRINレンズ(多視差)の焦点距離がf2、GRINレンズ(2視差)の焦点距離がf1の場合に、g2とf2とがほぼ等しくなる。さらに、g1とf1とがほぼ等しい場合に、要素画像1画素分を所望の方向に、輝度劣化なしに射出することができる。
【0049】
図7は、液晶の厚みtと視域角2θとの関係を示す図である。図7では、横軸が液晶の厚みであり、縦軸が視域角である。図7より、レンズピッチlpが大きくなればなるほど、同じ視域角2θを実現するためには液晶が厚くなる。液晶の厚みが100umより厚くなると、液晶の厚み方向における中央の液晶のダイレクタの向きの制御が困難になっていくため、液晶の厚みは薄い方が望ましい。
【0050】
9視差以上のGRINレンズで、自然で見やすいII方式立体ディスプレイを実現するための、液晶の厚みは、例えば視域角2θ>20度の場合、220um以上である。これは、レンズの性能に影響が生じる場合がある。
【0051】
そこで、本実施の形態では、9視差以上の多視差レンズをレンズ型枠から作成する複屈折レンズ、2視差のレンズをGRINレンズで作成する。
【0052】
図8ないし図10は、一のレンズで、2視差レンズと9視差レンズとを切り替えることを説明する図である。図8は、2視差レンズを実現している例を説明する図である。
【0053】
図8の構成は、FPD表示面1、偏光切替セル3、及び、複屈折レンズ8を有する。FPD表示面1は、要素画像を表示する2次元表示装置の表示面である。偏光切替セル3は、2視差モードと9視差モードとを切り替える。複屈折レンズ8は、レンズ型枠を有し、内部に液晶が充填されている。
【0054】
FPD表示面1に示す矢印4は、FPD表示面1の外側の偏光方向を表す。また、偏光切替セル3に示す矢印5は、下部透明基板26における配向方向(以下、「下側配向方向」という。)を表し、矢印6は、上部透明基板27配向方向(以下、「上側配向方向」とい。)を表す。また、矢印7は、偏光切替セル3から出射した光の偏光方向である。
【0055】
また、複数の楕円10は、偏光切替セル3の内部の液晶における屈折率が最大となる長軸方向を表す。
【0056】
複屈折レンズ8は、レンズ型枠12を有する。レンズ型枠の内部は一軸性複屈折を示す物質2が充填される。また、矢印11は、複屈折レンズ8から出射した光の偏光方向である。
【0057】
偏光方向は、FPD表示面1から射出される時は水平方向である。偏光切替セル3が有するGRINレンズでは液晶の長軸方向に入射するようにすることにより、光線が屈折する。また、複屈折レンズ8の液晶の長軸方向を垂直方向にすることにより、光線が屈折しないようにする。
【0058】
偏光切替セル3が有するGRINレンズの下部電極を、2つの櫛形電極26Aと26Bにし、互いに上と下とから挟み込む構成にするとよい。
【0059】
次に、電圧のかけ方を説明する。櫛型電極26Aと26Bとの間の電位差を、V−Ground1とし、V−Ground1に電圧をかける。さらに、下部電極と上部電極との間の電位差を、V−Ground2とし、V−Gound2に電圧をかける。ここで、Ground1−Ground2の間の電圧は同じ値でも異なる値でもよい。Ground1及びGround2は、液晶が立ち上がりはじめるしきい値電圧Vth以下である必要がある。以上の電圧制御は、図2に示す電圧駆動装置25が有する端子AとB、及び、AとDのそれぞれに対する電位差を制御することにより、実現することができる。
【0060】
なお、上部電極は全面電極、及び、櫛型電極の何れでもよいが、すべての電極に同一の電圧Ground2をかける。図8に示す例により、断面形状で図4に示すダイレクタ分布になり、偏光方向をレンズピッチ方向と水平方向にすることにより、断面形状に屈折率分布が生じる。
【0061】
ここで、電圧の値について、図9を用いて説明する。図9は、ダイレクタの傾きと屈折率とを示す図である。実際に光線が複屈折性物質を通った時の屈折率は、次式(5)で表される。
【数4】
【0062】
式(5)より、ダイレクタの傾きにより、屈折率分布を生じさせることができる。そこで、式(2)の屈折率分布を満たすように電圧を制御する。
【0063】
図10は、N視差レンズを実現する例を示す図である。N視差を発現するためには、ディスプレイを正面から見た場合の偏光方向を、水平方向から垂直方向に90度回転する。偏光切替セル3で、偏光方向を90度回転させることができる。図10において、偏光切替セル3に示す楕円10の向きが、下部透明基板26では水平方向であり、上部透明基板27では垂直方向である。
【0064】
これを実現するために、上側電極間に電圧をかけて垂直方向に電界が生じさせる。この時、下部透明基板26及び上部透明基板27の間にかける電圧(以下、「対向基板間電圧」という。)を、液晶が垂直方向に立ち上がらないように、Vth以下にする。そこで、対向基板間電圧をVth以下、2つの上側電極の間にかける電圧を2×Vthとすることにより、液晶の立ち上がりによる光抜けが生じないようにすることができる。
【0065】
以上の電圧制御は、図2に示す電圧駆動装置25が有する端子AとB、AとC又はD、及び、CとDのそれぞれに対する電位差を制御することにより、実現することができる。
【0066】
図11及び図12は、偏光方向を90度回転させるために、上部電極の2つの櫛型電極間に電圧2×vthをかけた時のダイレクタ分布を示す図である。図11及び図12は、ディスプレイを正面から見た場合の、偏光切替セル3を垂直方向に切断した時の断面図である。図5は、下部にグラウンド電極がある場合であり、図6は、下部にグラウンド電極がない場合である。この偏光切替モードでは、対向基板間にかける電圧はしきい値電圧以下であるため、配向膜による液晶の配向力の方が高い。そのため、下側電極の有無による液晶のダイレクタ分布は変化しないため、パターンの有無による劣化はないといえる。
【0067】
なお、2つの上部電極間の距離Spは、電極間距離をtとすると、GRINレンズの時の条件よりピッチの狭いSp=tとするとよい。
【0068】
ここで、上部電極を櫛型電極にすることにより、2視差モードの際に、上部電極が存在しない部分が生じる。上部電極のない領域が広いと、電圧Vがかかっている下部電極の直上でも、その領域の液晶が立ち上がらなくなる。
【0069】
図13は、ダミー電極を設ける例を示す図である。2視差モードの際に、ダミー電極28を、2つの上部電極27C及び27Dの間に設け、ダミー電極28にGround2をかける。N視差モードの際には、ダミー電極28には電圧をかけずに、2つの櫛型電極の間の電位差を2×vthとしてもよい。2視差モードの場合は、上側電極がない部分でも、左右対称な電界分布より、電圧Vがかかっている電極の直上は液晶のダイレクタが立ち上がる。
【0070】
また、液晶の厚みは、モーガン条件といわれる偏光方向を90度回転したときの光漏れが最も小さくなる条件にするとよい。すなわち、次式(6)及び式(7)を満たす厚さdを求めるとよい。
【0071】
【数5】
但し、λは、偏光切替セル3に入射する光の波長、
Δnは、偏光切替セル3内の液晶の長軸方向と短軸方向との屈折率の差、である。
【0072】
図14は、2Dモードの例を示す図である。下部電極26A及び26Bの電位差は0であり、上部電極27C及び27Dの電位差も0である。図13に示すように、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極の両方に電圧をかけないことにより、偏光方向が変化せず、また、屈折率分布も生じない。これにより、複屈折レンズ8に、液晶のダイレクタ方向の垂直方向の偏光が入射し、複屈折レンズ8では光線は屈折せず、背面にある高精細2Dの画像をそのまま見ることができる。
【0073】
図15は、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図である。図15において、電圧をかける場合を「ON」、電圧をかけないGroundの場合を「OFF」と表記する。偏光切替セル3の上部電極、下部電極のそれぞれにかける電圧のON,OFFにより、M(<N)視差モード、N視差モード、及び、2D表示モードの3つのモードを一のディスプレイで実現することができる。
【0074】
図16及び図17は、偏光切替セル3に印加する電圧を説明する概観図である。図16は、2視差モードの例であり、図17は、N視差モードの例である。図16では、2つの上部電極27C及び27Dの電位をGroundとし、下部電極26Aの電位をV、下部電極26Bの電位をGroundとする。これにより、液晶のダイレクタの向きが矢印で示すようになり、GRINレンズを実現することができる。
【0075】
図17では、上部電極27C及び27Dの間の電位差をVとし、下部電極26A及び26Bの間の電位差を、V/2とする。これにより、N視差モードの複屈折レンズを実現することができる。
【0076】
図18ないし図20は、電圧駆動装置25が有する端子毎に印加する電位を説明する図である。図18は、2視差モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図18に示すように、下部電極26Aの電位を、表示画面の1フレームを周期とする、振幅Vの矩形信号とし、他の端子BないしDの電位をGroundとすることにより、左右の視差を有する表示を実現することができる。
【0077】
図19は、N視差モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図19では、端子A及びBにより、下部電極26A及び26Bの電位を、表示画面の1フレームを周期とする、振幅Vth/2の矩形信号とする等電位に制御する。さらに、端子Cにより、上部電極27Cの電位を、振幅Vの矩形信号とし、端子Dにより、上部電極27Dの電位をGroundにする。これらの制御により、N視差の表示を実現することができる。
【0078】
図20は、高精細の2D表示モードを実現する電圧制御の例を示す図である。図20では、全ての端子の電位をGroundとする。
【0079】
図21ないし図24は、縦視差の有無を切り替える立体画像表示装置の例を示す図である。図21ないし図23は、それぞれ、2視差モード、N視差モード、及び、2D表示モードの例である。図21ないし図23では、下部透明基板26及び上部透明基板27が有する櫛形電極が、それぞれ、図8、図10、及び図14に示す立体画像表示装置100が有する櫛形電極に対して、90度回転した位置に設けられている。その他の構成は、図8ないし図14で説明した構成と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0080】
図24は、偏光切替セル3の上部電極、及び、下部電極のそれぞれに対し、モード毎に電圧をかけるか否かを示す図である。図24において、電圧をかける場合を「ON」、電圧をかけないGroundの場合を「OFF」と表記する。偏光切替セル3の上部電極、下部電極のそれぞれにかける電圧のON,OFFにより、縦視差のM(<N)視差モード、縦視差のN視差モード、及び、2D表示モードの3つのモードを一のディスプレイで実現することができる。
【0081】
図25は、補助電極を有する下部電極の例を示す図である。図25の下部電極は、図1ないし図24で説明した櫛形電極に加えて、補助電極を有する。図25では、下部電極26A及び26Bの間に、下部電極26Aに近い側から順に、3つの補助電極26cないし26eが設けられている。
【0082】
2視差モードの際には、例えば、下部電極26Aの電位がVであり、下部電極26Bの電位がGroundとなる。さらに、補助電極26cないし26eの電位をVとGroundの間の値とし、下部電極26Aに近いほど、大きい電位を有するように制御する。すなわち、V≧(26cの電位)≧(26dの電位)≧(26eの電位)≧Groundとする。これにより、下部電極26Aと下部電極26Bとの間の電位差をより細かく制御することができ、ダイレクタを好適に制御することができる。
【0083】
なお、下部電極の間毎の補助電極の個数は、一定にするとよい。図25では、間隔毎に、3個の補助電極が設けられている。間隔毎の補助電極の個数をk個とすると、一のGrinレンズに含まれる下部透明基板26の電極は、(2k+3)個となる。
【0084】
なお、上部電極にも、補助電極を設けてもよい。
【0085】
(コンピュータ等による実現)
なお、本発明の実施の形態に係る立体画像表示装置100の電圧駆動装置25は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等で実現されてもよい。また、本発明の実施形態に係る立体画像表示装置100の表示を制御する方法は、例えば、CPUがROMやハードディスク装置等に記憶されたプログラムに従い、RAM等のメインメモリをワークエリアとして使用し、実行される。
【0086】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る立体画像表示装置は、視差が互いに異なる複数のコンテンツを表示する際に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 FPD表示面
3 偏光切替セル
8 複屈折レンズ
12 レンズ型枠
25 電圧駆動装置
26A 下部電極
26B 下部電極
26 下部透明基板
27C 上部電極
27D 上部電極
27 上部透明基板
28 ダミー電極
100 立体画像表示装置
A 端子
B 端子
C 端子
D 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、
複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、
前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、
前記電極の一部を有する第一電極基板と、
前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、
一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、
を有することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第一電極基板と第二電極基板が有する複数の電極の間の距離は、前記第一電極基板と第二電極基板の間の距離以下であることを特徴とする請求項1記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
異なる前記電源供給線に接続される前記複数の電極毎に、電位を制御する電位制御部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記電位制御部は、前記第一電極基板が有する電極の電位を等電位とし、前記第二電極基板が有する電極の間に電位差を生じる制御をすることを特徴とする請求項3記載の立体画像表示装置。
【請求項1】
画素がマトリクス状に配列された画素面を有する要素画像表示部と、
複数の一軸性の複屈折レンズがアレイ状に配列されたレンズアレイと、
前記要素画像表示部と前記レンズアレイとの間に挟持され、異なる電源供給線に接続される複数の電極と、
前記電極の一部を有する第一電極基板と、
前記電極の他の一部を、前記第一基板に設けられた前記電極と略直交する方向に有する第二電極基板と、
一対の前記第一電極基板と第二電極基板に挟持され、印加される電圧により屈折率の異方性を生じる媒質と、
を有することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第一電極基板と第二電極基板が有する複数の電極の間の距離は、前記第一電極基板と第二電極基板の間の距離以下であることを特徴とする請求項1記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
異なる前記電源供給線に接続される前記複数の電極毎に、電位を制御する電位制御部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記電位制御部は、前記第一電極基板が有する電極の電位を等電位とし、前記第二電極基板が有する電極の間に電位差を生じる制御をすることを特徴とする請求項3記載の立体画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−224191(P2010−224191A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70955(P2009−70955)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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